説明

バンドパスフィルタ回路

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、衛星放送受信機の第二中間周波におけるバンドパスフィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】衛星放送は放送衛星から放射される12GHz帯の電波をパラボラアンテナで収束した後に、低雑音コンバータによって1GHz帯の第一中間周波数に周波数変換し、同軸ケーブルを介して屋内に導かれ、選局及びFM復調の信号処理が行われて画像と音声を得ることにより受信できる。一般にFM復調信号処理は400MHz帯の第2中間周波回路で行われる。受信チャンネルの帯域幅は27MHzと定められており、帯域外の不要な妨害信号及び雑音を取り除くためにFM復調器の前に急峻な遮断特製を有するバンドパスフィルタ(以下BPFと略して記す)が必要である。このBPFの規格としては、図3に示すようなWARC−BSの混信保護比カーブがある。このBPFとしては、弾性表面波バンドパスフィルタ(以下ではSAW BPFと略して記す)が注目され始めている。
【0003】以下図面を参照しながら、上述した従来のSAW BPF回路について説明する。
【0004】図4は従来のSAW BPF回路を示すものである。図4において30は、SAW BPFである。31は、接地面である。32は、プリント基板である。33は、出力信号線である。34は、出力端子である。35,36は、接地端子である。37は、入力端子である。38は、入力信号線である。39は、プリント基板の孔である。
【0005】以上のように構成されたSAW BPF回路について、以下その動作について説明する。
【0006】入力信号は、入力信号線38によりSAW BPF30の入力端子37に導かれる。入力信号線38は接地面31、プリント基板基材32とともにマイクロストリップラインを形成しており、SAW BPF30の入力端子37まで一定の特性インピーダンスの伝送線路を形成できる。入力端子37からSAW BPF30に入力された電気信号は、内部において表面弾性波エネルギーに変換されて出力端子34に伝えられ、所望の通過帯域特性が得られる。出力端子34からマイクロストリップラインの出力信号線33に信号が導かれて後段の信号処理回路へ伝えられる。
【0007】近年、通信衛星(以下CSと記す)を用いたサ−ビスが拡大しつつあり、通信衛星を利用したテレビ放送サービスのための周波数割り当てが行われた。さて、周波数割り当てによれば、CSを用いたテレビ放送は12.5GHz帯(12.5〜12.75GHz)を使用し、ダウンコンバータの局部発振周波数は11.2GHzを使用することに定められた。一方放送衛星(以下BSと記す)を用いたテレビ放送は、ダウンコンバータの局部発振周波数は10.678GHzを使用している。またBSの場合、帯域幅は27MHzである。CSの場合、日本通信衛星(株)(JC−SAT)の衛星では、帯域幅は27MHzである。宇宙通信(株)(SCC)衛星では、帯域幅は31MHzである。よってBS及びCS放送を受信する受信機を考えた場合、帯域幅が27MHzと31MHzの2種類のSAW BPFが必要となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のように衛星放送受信機において、BS及びCS放送からの信号を受信しようとすると、それからの受信信号の、帯域幅やチャンネル間隔が異なるため、帯域幅が27MHzと31MHzの2種類のSAW BPFが必要であるという課題があった。
【0009】本発明は、上記課題に鑑み、1つのSAW BPFに帯域幅が27MHzと31MHzの2種類のBPFを有し、簡略化することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するための本発明のバンドパスフィルタ回路は、弾性表面波バンドパスフィルタと、前記弾性表面波バンドパスフィルタの入出力端子が挿入される孔と、出力端子と第2の入力端子間の中央部または、出力端子と第1の入力端子間の中央部または、第1の入力端子と第2の入力端子間の中央部のうち少なくとも1ヵ所に、前記入出力端子間距離の半分程度で、端が弾性表面波バンドパスフィルタの外囲器よりも外側へ出るような長孔が配置され、前記長孔の壁面が導電性メッキ処理がなされて電気的接地面と接続されている構造を有する両面銅張プリント基板とを備え、前記弾性表面波バンドパスフィルタの外囲器底部及び接地端子と前記プリント基板の孔の壁面とを半田付けにより電気的接続することから構成される。
【0011】
【作用】本発明は上記した構成によって、弾性表面波バンドパスフィルタ(以下SAWBPFと記す)の入出力端子はそれぞれプリント基板の配線パターンに接続されており、日本通信衛星(株)(JC−SAT)の衛星及びBSの帯域幅の27MHzのSAW BPFへの入力信号は、SAW BPFの第1の入力端子より入力され、SAW BPF内の帯域幅が27MHzのフィルタで信号処理されて出力端子より取り出され次段へと信号が伝達される。
【0012】また宇宙通信(株)(SCC)の衛星からの帯域幅が31MHzのSAW BPFへの入力信号は、SAW BPFの第2の入力端子より入力され、SAWBPF内の帯域幅が31MHzのフィルタで信号処理されて出力端子より取り出され次段へと信号が伝達される。
【0013】SAW BPFの入出力端子間の孔の壁面は導電性メッキ処理がなされて電気的接続面と接続されており、SAW BPFの外囲器とプリント基板とはフローディップにより半田付けされる。半田付け時において、プリント基板の複数の孔の外側は、SAW BPFの外囲器よりも外へ出ており、ガス抜きの役割を果たすので半田付けが確実に行われる。これによりSAW BPFの入出力端子間には半田の充満された孔が存在することにより、入出力端子間が効率よく分離されるので、入出力端子間の誘導は極力小さくなり、SAW BPF1つで、帯域幅が31MHzと27MHzの2つのフィルタをもつことが可能となり、装置がコンパクト化できる。
【0014】
【実施例】以下本発明の一実施例について図を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例におけるバンドパスフィルタ回路を示すものである。
【0015】図1において、1はSAW BPFある。2は接地面である。3はプリント基板である。4は第2の入力信号線である。5は第2の入力端子である。6は接地端子である。7は出力端子である。8は出力信号線である。9,10,11は孔である。12は第1の入力信号線である。13は第1の入力端子である。
【0016】図2は本発明の一実施例におけるバンドパスフィルタ回路の周波数特性図を示すものである。
【0017】以上のように構成されたSAW BPF回路について、以下その動作について説明する。
【0018】日本通信衛星(株)(JC−SAT)の衛星及びBSの帯域幅の27MHzのSAW BPF1への入力信号は、第1の入力信号線12よりSAW BPF1の第1の入力端子13に導かれる。そしてSAW BPF1内の帯域幅が27MHzのフィルタで信号処理されて出力端子7より取り出され次段へと信号が伝達される。
【0019】また宇宙通信(株)(SCC)の衛星からの帯域幅が31MHzのSAW BPF1への入力信号は、第2の入力信号線4よりSAW BPF1の第2の入力端子5に導かれる。そしてSAW BPF1内の帯域幅が31MHzのフィルタで信号処理されて出力端子7より取り出され次段へと信号が伝達される。
【0020】入力信号線4,12は接地面2、プリント基板基材3とともにマイクロストリップラインを形成しており、SAW BPF1の入力端子5,13まで一定の特性インピ−ダンスの伝送線路を形成できる。
【0021】入力端子5,13からSAW BPF1に入力された電気信号は、内部において表面弾性波エネルギ−に変換されて出力端子7に伝えられ、所望の通過帯域特性が得られる。出力端子7からマイクロストリップラインの出力信号線8に信号が導かれて後段の信号処理回路へ伝えられる。
【0022】図1においてSAW BPF1の入出力端子間の孔9,10,11は、半田の吸い上がりを良くするために狭すぎることもなくまた広すぎることもないように、また吸い上がった半田が入出力端子に接触しないように、入出力端子間の半分程度の大きさの孔とし、SAW BPF1の入出力端子間の孔9,10,11のまわりの箔を削った構造にした。
【0023】SAW BPF1の入出力端子間の孔9,10,11の壁面は導電性メッキ処理がなされて電気的接続面と接続されており、SAW BPF1の外囲器とプリント基板3とはフローディップにより半田付けされる。半田付け時において、プリント基板3の複数の孔9,10,11の一部は、SAW BPF1の外囲器よりも外へ出ており、ガス抜きの役割を果たすので半田付けが確実に行われる。これによりSAW BPF1の入出力端子間には半田の充満された孔9,10,11が存在することにより、入出力端子間が効率よく分離されるので、入出力端子間の誘導は極力小さくなる。図2に示す周波数特性図から分かるように、帯域内リップルも小さく、帯域外減衰量も約35dB以上の良好な特性が得られている。またSAW BPF1つで、帯域幅が31MHzと27MHzの2つのフィルタをもっており簡略化される。
【0024】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、SAW BPFの入出力端子間の孔の壁面は導電性メッキ処理がなされて電気的接続面と接続されており、SAW BPFの外囲器とプリント基板とはフローディップにより半田付けされる。半田付け時において、プリント基板の複数の孔の一部は、SAW BPFの外囲器よりも外へ出ており、ガス抜きの役割を果たすので半田付けが確実に行われる。
【0025】これによりSAW BPFの入出力端子間には半田の充満された孔が存在することにより、入出力端子間が効率よく分離されるので、入出力端子間の誘導は極力小さくなり、SAW BPF1つで、帯域幅が31MHzと27MHzの2つのフィルタをもっており簡略化される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の一実施例におけるBPF回路の側断面図
(b)同平面図
【図2】(a)(b)本発明の一実施例におけるバンドパスフィルタ回路の周波数特性図
【図3】衛星放送受信機のBPFに必要な規格を示すWARC−BSの混信保護比カーブ
【図4】(a)従来例におけるSAW BPF回路の側断面図
(b)同平面図
【符号の説明】
1 SAW BPF
2 接地面
3 プリント基板
4 第2の入力信号線
5 第2の入力端子
6 接地端子
7 出力端子
8 出力信号線
9,10,11 孔
12 第1の入力信号線
13 第1の入力端子
30 SAW BPF
31 接地面
32 プリント基板
33 出力信号線
34 出力端子
35,36 接地端子
37 入力端子
38 入力信号線
39 プリント基板の孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 弾性表面波バンドパスフィルタと、前記弾性表面波バンドパスフィルタの入出力端子が挿入される孔と、出力端子と第2の入力端子間の中央部または、出力端子と第1の入力端子間の中央部または、第1の入力端子と第2の入力端子間の中央部のうち、少なくとも1ヵ所に、前記入出力端子間距離の半分程度で、端が弾性表面波バンドパスフィルタの外囲器よりも外側へ出るような長孔が配置され、前記長孔の壁面が導電性メッキ処理がなされて電気的接地面と接続されている構造を有する両面銅張プリント基板とを備え、前記弾性表面波バンドパスフィルタの外囲器底部及び接地端子と前記プリント基板の孔の壁面とを半田付けにより電気的接続を行い、前記弾性表面波バンドパスフィルタの入出力端子を前記プリント基板の配線パターンに接続してなるバンドパスフィルタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3018737号(P3018737)
【登録日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【発行日】平成12年3月13日(2000.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−130407
【出願日】平成4年5月22日(1992.5.22)
【公開番号】特開平5−327530
【公開日】平成5年12月10日(1993.12.10)
【審査請求日】平成10年4月3日(1998.4.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【参考文献】
【文献】特開 平4−53305(JP,A)
【文献】特開 平4−233310(JP,A)
【文献】特開 平2−72710(JP,A)