説明

バンド緊締履物

【課題】本発明は、リングに差し入れる差入れバンドの折返し部分を短く設計したものであっても、差入れバンドがリングから簡単に抜けないようにした履物を提供する。
【解決手段】履物1は、履物本体10の外側部及び内側部のいずれか一方に、直接的又は間接的に接合されたリング52と、他方に、接合された差入れバンド6とを有し、リングに差し入れた差入れバンド6の先端側部分を折り返してその基端側部分に係止することで足の甲部を緊締する履物であって、緊締解除時に、差入れバンドの基端側へリングを付勢する所定の長さの連結具7を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リングと差入れバンドとが対をなして、足の甲部を緊締するようにしたサンダル、靴などの履物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、履物の緊締具としては、靴紐を鳩目に通すタイプのもの、バンドに面ファスナー等の留め具を取り付けたタイプものが主流である。バンドを用いたタイプのものは、バンドを一方向に架け渡すタイプのものと、リングを介して折り返すタイプのものがある。
【0003】
また、バンドを折り返すタイプの緊締具は、履物本体の一方の側面にリングを設け、他方の側面に設けたバンドの先端側部分をリングに差し入れてから折り返し、折り返した部分をそのバンドの基端側部分に係止させて、足の甲部を緊締するようにした履物がよく知られている。
【0004】
このようにリングを利用した履物においては、差し入れるバンド(以下差入れバンドという)がリング部から抜けてしまうと、その都度差入れバンドをリングに差し入れなければならず、非常に面倒である。差入れバンドを抜け難いようにするため、折返し部分を長くする方法があるが、折返し部分が長いと歩行の障害になり、歩行の障害にならないようにするためには、折返し部分をできるだけ短くしたほうが良いことが知見された。
【0005】
ところで、リングを履物本体へ設ける方法として、履物本体にその基端部で接合したリング用バンドの先端にリングを設ける方法がある。そして、特に、このリング用バンドを、履物の内側と外側との間に跨がるように長くすると、リング用バンド自体の長さが長くなること、及び差入れバンドの折返し部分(先端側部分)の長さが短くなる傾向にあることから、より差入れバンドが抜けやすいという問題が知見された。リング部から差入れバンドを抜けないようにした技術としては、特許文献1〜3に記載されているような技術が知られている。
【特許文献1】実公昭58−51771号公報
【特許文献2】実公昭63−20325号公報
【特許文献3】実案新案登録第3010374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に記載の技術は、差入れバンドの先端側に別部材を設けるなどして、その部分がリングに引っかかって差入れバンドがリングから物理的に抜けないようにしたものである。しかしながら、このような部材を差入れバンドに設けると、部材自体によって美観を損ねることがあり、また、リング用バンドを履物の内側部と外側部とに跨るように構成した履物においては、前記部材が履物の底に近い位置に配置されることになるので、歩行の障害になる危険性がある。本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、リングに差し入れる差入れバンドの折返し部分を短く設計したものであっても、差入れバンドがリングから簡単に抜けないようにした履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバンド緊締履物は、履物本体の外側部及び内側部のいずれか一方に、直接的又は間接的に接合されたリングと、他方に、接合された差入れバンドとを有し、リングに差し入れた差入れバンドの先端側部分を折り返してその基端側部分に係止することで足の甲部を緊締する履物であって、緊締解除時に、差入れバンドの基端側へリングを付勢する所定の長さの連結具を設けたことを特徴とする。
【0008】
好ましい態様のバンド緊締履物は、リングが履物本体に接合されたリング用バンドの先端に設けてあり、リング用バンドを履物の内側部と外側部とに跨がるように構成したものである。また、上記連結具が、リングと差入れバンドの基端側部分とを連結している。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバンド緊締履物は、緊締解除時にリングを差入れバンドの基端側へ付勢する所定の長さの連結具を設けたので、緊締解除時のリング部に対する差戻し量が制限されて、差入れバンドの折返し部分(先端側部分)の長さが短くても差入れバンドが簡単にリングから抜けることはない。特に、リング用バンドが、履物の内側部と外側部とを跨がるように構成した履物の場合は、差入れバンドの折り返し部分の長さが短くなるので、バンド抜け防止の効果は顕著である。また、上記連結具が、リングと差入れバンドの基端側部分とを連結している履物の場合は、履着時には連結具が差入れバンドでほとんど隠されるようになるので、外観が良好になるとともに連結具が歩行の障害になることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のバンド緊締履物を実施例1及び実施例2の基づいて説明する。図1及び図2に示す履物はいずれも左足用のものである。
【0011】
まず、実施例1の履物1に基づいて具体的に説明する。この際、大きく分けて履物1は、リング付きバンド5(リング用バンド51の先端にリング52を設けたもの)、差入れバンド6、連結具7、及びこれら以外の部分である履物本体10とで構成されるものとして説明する。
【0012】
履物本体10は、甲皮2の下周縁に底3を接合した部分に、足の甲部に対応する箇所に舌片4を設けてなる。舌片4は、履口から連続して開口する甲開口部分を履物の内部側から覆うようにしている。
【0013】
履物本体10には、バンドとして、履物の内側部にその基端側が接合されたリング付きバンド5と、履物1の外側部にその基端側が接合された差入れバンド6とが設けてある。リング付きバンド5は、リング用バンド51の先端にリング52を設けたものであり、リング用バンド51は、履物1の内側部と外側部とに跨るように構成されている。なお、履物の内側部とは、履物を左右に分けて見たときに母趾側にある部分をいい、履物の外側部とは、小趾側にある部分をいう。したがって、甲皮2においては、内側にある部分を内側甲皮部2a、外側にある部分を外側甲皮部2bという。
【0014】
リング52は、合成樹脂や金属などの硬質の材料でリング状に成形した部材などで構成することができるが、リング用バンドと一体成形してもよい。また、リングと差入れバンドとの関係においては、リングは差入れバンドにスムーズに出し入れ可能なように、リングの最大内径より、差入れバンドの幅を小さくすることが好ましい。
【0015】
また、履物1において、リング付きバンド5は底3の上面部にまで基端が延びて底に接合され、差入れバンド6も底3の上面部にまで基端が延びて底に接合している。ただし、本発明において、サンダルタイプのものは別として、これらバンドは、必ずしも底3の上面部まで延びている必要はない。
【0016】
実施例1のような態様の履物の特徴点は、緊締解除時に、所定長さの連結具7により、リング52を差入れバンドの基端側へ付勢(引っ張る)ようになっている点である。この構成により、リングに対する差入れバンドの差戻し量を制限してリングから差入れバンド6が抜けないようにしている。すなわち、緊締解除時、差入れバンドの差戻し量を制限して、差入れバンドの先端がリングに差し入れられた状態を維持するようにしている。履物1においては、リング部52と差入れバンド6の基端側部分とを、所定長さの連結具7によって連結することによって、リング部52が履物本体10から遠くに離れるのを制限している。
【0017】
なお、緊締解除時に、リング52を差入れバンドの基端側へ付勢する別の手段としては、図3に示すようにリング用バンド51の先端の内面部分と外側甲皮部2bとを所定長さの連結具によって連結する方法もある。なお、図3は、説明のために差入れバンドの先端側の作図を省いてある。
【0018】
ここで、実施例1のような態様の履物においては、連結具の連結端の一端(図1の履物では符号Xの位置)は、リング52あるいはリング用バンド51の先端の位置に繋がれていることが好ましく、履物に足を差し入れてバンドを締めた状態(緊締状態)において、他端(図1の履物では符号Yの位置)は、前記一端の位置に一致、すなわち重なり合うように差入れバンド6の基端側部分に繋がれていることが好ましい。この一端と他端の位置のズレは、履物の足長サイズに対する割合(緊締状態での一端と他端の距離/履物の足長サイズ)で0〜5%であることが好ましい。このズレが大きいと連結具の長さを長くしなければならず、連結具7が歩行の障害になることがある。
【0019】
また、実施例1のような態様の履物において、連結具の連結端間(図1の符号Xと符号Yとの間)の正味長さは、履物の足長サイズに対する割合で8〜20%であることが好ましい。連結具の長さがあまり短いと、緊締解除時に履口をあまり広げることができず履物の履き脱ぎ性を悪化させる。連結具の長さがあまり長いと、差入れバンドが抜けやすくなるとともに、連結具が下記に述べる係止具の表面に被さりやすくなってバンドの係止を阻害することがある。また、履物の緊締状態と、緊締解除状態にして履口を最大限に広げたときとでは、連結具の連結端間の距離の変化が、履物の足長サイズに対する割合で8〜15%であることが好ましい。連結端間の距離の変化があまり小さいと履物の履き脱ぎ性を悪化させ、あまり大きいと差入れバンドが抜けやすくなる。
【0020】
連結具7は、合皮、ゴム、布地等の柔軟性のものも使用できるが、紡績糸やフィラメント糸で編み込んだものなどのなるべく伸縮性のないものが好ましく、形状は扁平状であることが好ましい。
【0021】
履物1においては、差入れバンド6は、リング52に先端部分が差し入れられて折り返されるものである。そして、緊締状態におけるこの先端部分の長さは、履物の足長サイズに対する割合で20%以上であることが好ましい。この長さがあまり短いと、バンドの緊締操作が行いづらい。
【0022】
差入れバンドの先端側部分及び基端側部分には、係止具がそれぞれ縫着等により取り付けられている。係止具としては、面ファスナー、ホックなどの着脱自在のものが用いられる。履物1においては、差入れバンドの先端側部分に、面ファスナー8が取り付けられており、その基端側部分に、面ファスナー9が取り付けられている。履物1においては、面ファスナー8として雌型のものを用い、面ファスナー9としては雄型のものを用いることが好ましい。このようにすれば、履物を履くときにおいて、差入れバンドの先端側部分をつまんで両方の面ファスナーを対向させてこれらで差入れバンドを係止させようとしたとき、面ファスナー8が雌形なので差入れバンドを操作する先端側部分に連結具が張り付くことなく上記係止がスムーズに行える。
【0023】
次に、実施例2の履物11に基づいて具体的に説明する。この際、大きく分けて履物11は、リング53、差入れバンド16、連結具17、及びこれら以外の部分である履物本体20とで構成されるものとして説明する。なお、図1の履物と共通するところは説明を省略する。
【0024】
履物本体20には、履物11の内側部に直接に接合されたリング53と、履物11の外側部にその基端側が接合された差入れバンド16とが設けてある。
【0025】
実施例2のような態様の履物の特徴点も、緊締解除時に、所定長さの連結具17により、リング53を差入れバンドの基端側へ付勢(引っ張る)ようになっている点である。この構成により、リングに対する差入れバンドの差戻し量を制限してリングから差入れバンド16が抜けないようにしている。すなわち、緊締解除時、差入れバンドの差戻し量を制限して、差入れバンドの先端がリングに差し入れられた状態を維持するようにしている。
【0026】
ここで、実施例2のような態様の履物においては、連結具の連結端の一端(図2の履物では符号Xの位置)は、リング53の位置に繋がれていることが好ましく、履物に足を差し入れてバンドを締めた状態(緊締状態)において、他端(図2の履物では符号Yの位置)は、前記一端の位置に一致するように差入れバンド16の基端側部分に繋がれていることが好ましい。この一端と他端の位置のズレは、履物の足長サイズに対する割合(緊締状態での一端と他端の距離/履物の足長サイズ)で0〜5%であることが好ましい。このズレが大きいと連結具の長さを長くしなければならず、連結具17が歩行の障害になることがある。
【0027】
実施例2のような態様の履物においても、連結具の連結端間(図2の符号Xと符号Yとの間)の正味長さは、履物の足長サイズに対する割合で8〜20%であることが好ましい。連結具の長さがあまり長いと、差入れバンドが抜けやすくなるとともに、連結具が下記に述べる係止具の表面に被さりやすくなってバンドの係止を阻害することがある。また、履物の緊締状態と緊締解除状態にして履口を最大限に広げたときとでは、連結具の連結端間の距離の変化が、履物の足長サイズに対する割合で8〜15%であることが好ましい。連結端間の距離の変化があまり小さいと履物の履き脱ぎ性を悪化させ、あまり大きいと差入れバンドが抜けやすくなる。
【0028】
以上、本発明を実施例の履物1、履物11に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、リング付きバンドは、その基端側が履物の外側部に接合されたものであってもよく、また、リング用バンドが、履物の内側部と外側部を跨がるように構成されることを必須としない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例の履物を外側面から見たときの説明図
【図2】本発明の別の実施例の履物を上面から見たときの説明図
【図3】本発明の実施例の履物の連結具の別の取り付け方法の説明図
【符号の説明】
【0030】
1・・・本発明の履物、2・・・甲皮、4・・・舌片、5・・・リング付きバンド、6・・・差入れバンド、7・・・連結具、8・・・面ファスナー、9・・・面ファスナー、10・・・履物本体、11・・・本発明の別の履物、12・・・甲皮、16・・・差入れバンド、17・・・連結具、18・・・面ファスナー、19・・・面ファスナー、20・・・履物本体、51・・・リング用バンド、52・・・リング、53・・・リング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物本体の外側部及び内側部のいずれか一方に、直接的又は間接的に接合されたリングと、他方に、接合された差入れバンドとを有し、リングに差し入れた差入れバンドの先端側部分を折り返してその基端側部分に係止することで足の甲部を緊締する履物であって、
緊締解除時に、リングを差入れバンドの基端側へ付勢する所定の長さの連結具を設けたことを特徴とするバンド緊締履物。
【請求項2】
リングは履物本体に接合されたリング用バンドの先端に設けてあり、リング用バンドを履物の内側部と外側部とに跨がるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のバンド緊締履物。
【請求項3】
上記連結具が、リングと差入れバンドの基端側部分とを連結していることを特徴とする請求項1又は2に記載のバンド緊締履物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−206726(P2008−206726A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46408(P2007−46408)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年2月5日 アキレス株式会社発行の「DYMOCO(Dynamic Move control system」に発表
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】