バンパステイの取り付け構造およびバンパステイ
【課題】ステイを、バンパ補強材の前面壁側からの作業によって、サイドメンバ先端部側とバンパ補強材の後面壁側とに機械的に接合できる、バンパステイの取り付け構造およびバンパステイを提供することを目的とする。
【解決手段】 車体のバンパ補強材後面壁12側とサイドメンバ先端部21側とに各々接合されるバンパステイ1の取り付け構造であって、バンパステイ1は、アルミニウム合金板を成形したカップ形状からなり、このカップの底部2にボルト穴6を設け、バンパ補強材10の前面壁11側と後面壁12側とに各々設けた作業用開口穴13、14と、バンパステイのカップ開口部3とを通じた、バンパ補強材の前面壁11側からの接合作業によって、ボルト穴6を介して、カップ底部2側がサイドメンバ先端部21側にボルトにて接合されるとともに、カップのフランジ4を介して、カップ開口部3側がバンパ補強材の後面壁12側に接合されることである。
【解決手段】 車体のバンパ補強材後面壁12側とサイドメンバ先端部21側とに各々接合されるバンパステイ1の取り付け構造であって、バンパステイ1は、アルミニウム合金板を成形したカップ形状からなり、このカップの底部2にボルト穴6を設け、バンパ補強材10の前面壁11側と後面壁12側とに各々設けた作業用開口穴13、14と、バンパステイのカップ開口部3とを通じた、バンパ補強材の前面壁11側からの接合作業によって、ボルト穴6を介して、カップ底部2側がサイドメンバ先端部21側にボルトにて接合されるとともに、カップのフランジ4を介して、カップ開口部3側がバンパ補強材の後面壁12側に接合されることである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は取り付け性および衝突エネルギ吸収性に優れたバンパステイの取り付け構造およびバンパステイに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の前端 (フロント) および後端 (リア) に取り付けられているバンパの内部には、強度補強材としてのバンパ補強材 (バンパリインフォースメントあるいはバンパアマチャアなどとも言う) が設けられている。
【0003】
車両の衝突時の乗員への衝撃を緩和するために、車両のバンパ補強材と、車体側のサイドメンバ(サイドフレームとも言う)との間に、塑性変形可能なクラッシュボックス(衝撃エネルギ吸収体)として、バンパステイ(以下単にステイとも言う)を介在させた例が、従来から提案されている。このステイは、元々バンパ補強材の後面からの支持部材 (車体連結用部材) としても役割を持つ。
【0004】
従来から、軽量化のために、鋼製に代わる、アルミニウム合金製ステイとして、押出中空形材などを用いたステイが種々提案、採用されている。この押出中空形材などを用いた従来のステイは、以下の二つのタイプに大別される。
1.車体前後方向を押出方向とするステイ(以下、縦圧壊型ステイと言う)
2.車体左右あるいは上下方向を押出方向とするステイ(以下、横圧壊型ステイと言う)
【0005】
上記縦圧壊型ステイは、衝突方向に直交する断面を閉断面構造にすることが可能であり、同一強度を得ることを考えれば、横圧壊型ステイに比べて軽量化が可能である。しかし、バンパ後面あるいはサイドメンバと接合するための取付フランジを溶接などにより接合する必要がある。このため、コストが高くなるという問題がある。
【0006】
上記横圧壊型ステイは、取り付け面に合わせたフランジを予め形成して押出することが可能であるが、前述のように強度が低くなるため、重量が重くなるという問題があり、重量、取り付け性、コスト全てを満足することは難しいといえる。
【0007】
これに対し、アルミニウム合金製ステイとして、元板であるアルミニウム合金板をプレス成形したステイが実用化できれば、ステイ自体の製造がより容易となる。また、板をプレス成形したステイでは、ステイ取り付け孔の設置のために十分大きな幅を持ったフランジの形成が容易となる利点も大きい。
【0008】
このような板を成形したステイとして、例えば、特許文献1には、アルミニウム合金製のステイなどとして、衝突方向に対して高さ方向が平行となるように設置される円錐台形状の吸収部材からなるエネルギ吸収部材であって、吸収部材の、上面半径R、底面半径r、高さhが特定の関係を満たすようなエネルギ吸収部材が提案されている。
【0009】
このステイは円錐台形状からなり、バンパ補強材側(衝突方向前面側)に円錐台の頂部(有底部)が、サイドメンバの先端側(後面側)に円錐台の底部(開口部)が、各々向くように配置している。そして、円錐台の底部側(開口部側)に、平板形状の取付部材を、円錐台と一体にではなく、更に別途、円錐台の底部として設けてフランジとなし、サイドメンバ先端部のフランジとの取付に利用するものである。
【0010】
また、特許文献2には、鋼板の深絞り成形により、底付きの管体(カップ形状)を形成したクラッシュボックスが提案されている。このステイは、底部側をバンパ補強材側に配置し、管体開口側をサイドメンバ先端部側に配置して用いる。そして、ステイ管体開口側には、管体開口側が後方のサイドメンバの内部に後方に向けて入り込み、かつU字状に反転してバンパ補強材側の方向に向き直り、再びサイドメンバ先端部側に戻る「円弧状変形部」を設けている。この「円弧状変形部」は、その先端部に、更に、サイドメンバ先端部の外方へ拡がるフランジに沿って、外方へ拡がるフランジを形成している。
【0011】
このステイでは、前記底部はバンパ補強材との取付に利用するとともに、前記フランジはサイドメンバ先端部のフランジとの取付に利用される。そして、前面側のバンパ補強材に衝撃荷重が作用すると、サイドメンバの内部に入り込んでいる前記U字状「円弧状変形部」が、新たなU字状円弧状の変形部を作りながら、この変形部をサイドメンバの内部へ順次送り込んでいく変形を行う。即ち、ステイ管体がサイドメンバの内部へと後退する形で変形を行い、衝撃エネルギを吸収するものである。
【0012】
特許文献1のアルミニウム合金製ステイは、円錐台形状部分に対して、円錐台の底部側(開口部側)に、平板形状の取付部材を、円錐台底部として別途に設けている。このため、線からなる円錐台の底部側と、面からなる平板形状の取付部材との取り付け方が難しく、実用的な接合強度を得ることが困難である。したがって、円錐台形状部分の変形による衝撃エネルギの吸収を行なう以前に、この接合部分から破断し、実際にはエネルギ吸収ができない。
【0013】
また、特許文献2の鋼製ステイは、元板である鋼板の深絞り成形により製作できる点は、ステイ製作コスト低減の利点が大きい。しかし、サイドメンバの内部に入り込んでいるU字状「円弧状変形部」は、単に板状部であり、連続的に曲げ−曲げ戻し変形を受けることで、衝突時の安定した荷重を得ようとするものである。しかし、このような鋼製ではなく、鋼に比して局部伸びがほとんど無いアルミ材料への適用を想定した場合、この「円弧状変形部」は容易に破壊、破断されやすくなる。したがって、アルミ材料では、前記ステイの変位による衝撃エネルギの吸収を行なう以前に破壊され、実際にはエネルギ吸収が難しい。
【0014】
このように、特許文献1、2からは、アルミニウム合金板を用いるにしても、鋼板を用いるにしても、元板をプレス成形したステイを用いる場合には、実際問題として、衝突時のエネルギを吸収しうるステイ構造とすることが難しいことが分かる。
【0015】
これに対して、特許文献3によって、衝突時のエネルギを吸収しうる、アルミニウム合金板をプレス成形して製造したステイが提案されている。これは、ステイをアルミニウム合金板を成形したカップ形状とし、このカップは、底部と、開口部と、これら底部と開口部とをつなぐ略円筒状の縦壁とからなり、底部はその周縁部に亙って円弧状のコ−ナRを有して縦壁に繋がり、開口部周縁部は外方に張出したフランジを一体に形成してなるものである。そして、このステイは、カップ底部をバンパ補強材の後面壁側に取り付けるとともに、カップ開口部を前記フランジを介してサイドフレーム先端部側に取り付けられる。
【特許文献1】特開平8−207679号公報
【特許文献2】特開2003−312400号公報
【特許文献3】特開2006−347527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献3のようなステイであれば、より薄肉、軽量化した上で、衝突荷重の吸収が可能となる。また、元板であるアルミニウム合金板のプレス成形によりステイを製作でき、ステイ製作コストの低減や製作効率の向上などの利点が大きい。
【0017】
ただ、このステイ40は、図12に示すように、カップ底部2をバンパ補強材10の後面壁12側に取り付けるとともに、カップ開口部3側をフランジ4を介してサイドフレーム20の先端部(フランジ)21側に取り付ける構造となっている。このために、先ず、図12に示す、カップ底部2をバンパ補強材10の後面壁12側のボルト穴15に、ボルト16によって取り付けを行う。その後で、カップ開口部3側を、フランジ4を介して、サイドフレーム先端部21側へ、ボルト23により取り付け作業を行う必要(制約)がある。
【0018】
即ち、サイドフレーム先端部21側への取り付け作業を先ず行った場合には、カップ開口部3側がサイドフレーム先端部側21によって閉じられた閉断面となる。このために、カップ底部2側をバンパ補強材10の後面壁11側に、ボルト7によって取り付けにくくなる。また、これらバンパ補強材10の後面壁11側と、サイドフレーム先端部側21への取り付け作業を各々別個に行う必要性もある。
【0019】
これに対して、バンパ補強材10の前面壁側と後面壁側11とに、接合作業用開口穴を各々設け、バンパ補強材10の前面壁側(前面側)からの接合作業によって、バンパステイ1を、サイドメンバ先端部側とバンパ補強材の後面壁側とに、ボルトなどによって機械的な接合ができれば、このステイの取り付け作業が至って簡便となる。つまり、カップ底部2にボルト穴15を設けるとともに、カップ内側にナットAを溶接し、バンパ補強材の衝突面側から作業穴Bを通じてボルト16によって取り付けを行うことが望ましい。しかし、特許文献3のようなステイの場合には、カップ高さが高くなるほど、閉断面空間の内側にナットを溶接することが難しくなるという問題がある。
【0020】
この点に鑑み、本発明は、より薄肉、軽量化した上で、衝突荷重の吸収が可能な、アルミニウム合金板を成形して製造した、前記カップ状ステイの改良に係る。即ち、このようなステイを、バンパ補強材の前面壁側(前面側)からの接合作業によって、サイドメンバ先端部側とバンパ補強材の後面壁側とに機械的に接合できる、バンパステイの取り付け構造およびバンパステイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するための、本発明バンパステイの取り付け構造の要旨は、自動車車体のバンパ補強材とサイドメンバとの間に配置されて、前記バンパ補強材の後面壁側と前記サイドメンバ先端部側とに各々接合されるバンパステイの取り付け構造であって、バンパステイは、アルミニウム合金板を成形したカップ形状からなり、このカップは、底部と、この底部周縁部から立ち上がる筒状の縦壁と、この縦壁周縁部によって形成された筒状の開口部と、前記縦壁周縁部から外方に張出すとともに縦壁周縁部に亙って設けられたフランジとが一体に形成された全体形状からなり、前記カップの底部にボルト穴を設け、前記バンパ補強材の前面壁側と後面壁側とに各々設けた接合作業用開口穴と前記バンパステイのカップ開口部とを通じた、前記バンパ補強材の前面壁側からの各接合作業によって、前記カップ底部に設けたボルト穴を介して、前記カップ底部側がサイドメンバ先端部側にボルトにて接合されるとともに、前記カップのフランジを介して、前記カップ開口部側がバンパ補強材の後面壁側に接合されることである。
【0022】
ここで、前記バンパステイにおけるカップの筒状の縦壁が、底部周縁部から外方に拡がるように斜めに立ち上がっており、前記カップ底部は合計3個以上のボルト穴を車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて延在させる面積を有していることが好ましい。また、前記バンパステイが、前記カップにおけるフランジ外縁部を車体前後方向に折り曲げたフランジ片を設けていることが好ましい。
【0023】
また、上記目的を達成するための、本発明バンパステイの要旨は、上記バンパステイの取り付け構造に用いられるバンパステイであって、アルミニウム合金板を成形したカップ形状からなり、このカップは、底部と、この底部周縁部から立ち上がる筒状の縦壁と、この縦壁周縁部によって形成された筒状の開口部と、前記縦壁周縁部から外方に張出すとともに縦壁周縁部に亙って設けられたフランジとが一体に形成された全体形状からなり、前記カップの底部にボルト穴を設けたことである。
【0024】
ここで、前記バンパステイにおけるカップの筒状の縦壁が、底部周縁部から外方に拡がるように斜めに立ち上がっており、前記カップ底部は合計3個以上のボルト穴を車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて延在させる面積を有していることが好ましい。また、前記バンパステイが、前記カップにおけるフランジ外縁部を車体前後方向に折り曲げたフランジ片を設けていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、ステイを、アルミニウム合金の平板を、張出あるいは深絞りなどでプレス成形あるいは電磁成形して、上記要旨のカップ形状とする。これによって、元板であるアルミニウム合金板の成形からステイを製作でき、接合コストの低減により、ステイ製作コストの低減をすることができる。また、生産効率の良いプレス成形あるいは電磁成形で製作可能であることから、製作効率の向上などの利点が大きい。
【0026】
本発明では、更に、上記要旨の通り、このカップの形状を、底部と、この底部周縁部から立ち上がる筒状の縦壁と、この縦壁周縁部によって形成された開口部と、前記縦壁周縁部から外方に張出すとともに縦壁周縁部に亙って設けられたフランジとを一体に形成(成形)してなるものとする。これによって、ステイにおけるカップの全体変形により衝突荷重を吸収するようにする。
【0027】
上記外方に張出したフランジは、成形により、カップに一体に形成してなるため、前記特許文献1のような、カップとフランジとを接合する問題や、両者の接合強度が弱くなる問題もない。この上で、本発明では、前記特許文献3とは、バンパステイの車体前後方向の向きを逆にして、前記カップ底部側がサイドメンバ先端部側に接合されるとともに、前記カップ開口部側がバンパ補強材の後面壁側に接合されるようにする。より具体的には、前記カップ底部に設けたボルト穴を介して、前記カップ底部側がサイドメンバ先端部側にボルトにて接合されるとともに、前記カップのフランジを介して、前記カップ開口部側がバンパ補強材の後面壁側に接合されるようにする。
【0028】
これによって、前記バンパ補強材の前面壁側からの各接合作業によって、バンパステイを、バンパ補強材の後面壁側の他に、サイドメンバ先端部側と接合することが可能となる。即ち、前記カップ底部側をサイドメンバ先端部側にボルトにて接合するとともに、前記カップのフランジを介して、前記カップ開口部側をバンパ補強材の後面壁側に接合することができるようになる。このように接合する場合、ボルト接合に必要な溶接ナットあるいはスタッドボルトは、必要があればステイのカップ周円部のフランジにのみ設ければ良く、溶接接合が行いにくいカップ底部内側裏側に取り付ける必要はなくなり、作業性をかなり良くすることができる。
【0029】
更に、開口部をバンパ補強材側に接合することで、衝突時の変形荷重を高くすることが可能となり、これによるエネルギ吸収性能向上効果も期待できる。すなわち、開口部をバンパ補強材にした場合、バンパ補強材とステイとの車体幅方向内側の取り付け位置はサイドメンバ側の取り付け位置に比べて、より車体内側になる。つまり、バンパ補強材中央付近への加重入力に対して、より近い位置をステイによって支持することが可能となる。このことにより、バンパ補強材の変形荷重が高くなり、衝突エネルギ吸収ストロークを短く、エネルギ吸収性能を向上させる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。図1は本発明に係るバンパステイの取り付け構造の一実施態様を示す斜視図、図2は図1のバンパステイ取り付け後の構造を示す平面図である。図3は本発明に係るバンパステイの取り付け構造の他の実施態様を示す斜視図、図4は図3のバンパステイ取り付け後の構造を示す平面図である。
【0031】
(バンパステイの取り付け構造)
図1〜4においては、自動車のフロント側のバンパ装置内において、バンパステイ1を、バンパ補強材10とサイドメンバ20との間に配置し、取り付けた態様を示している。勿論、図1〜4の態様は、自動車のリア側のバンパ装置にも適用できる。
【0032】
なお、図1〜4においては、図の上下方向が自動車車体の前後方向、図の左右方向が自動車車体の幅方向である。また、図1〜4においては、バンパステイの取り付け構造の右側部分のみを示している。即ち、この右側部分のバンパステイの取り付け構造と左右対称の形で、左側部分にも、同じバンパステイの取り付け構造が設けられている。
【0033】
(バンパ補強材)
ここで、これら図1〜4に示すバンパ補強材10の態様は、長手方向(車体方向、図の左右方向)に亙って直線的ではない。即ち、直線的な中央部10aの両端に車体側へ曲げられた、直線的または曲線的な湾曲部 (屈曲部) 10bを有するか、全体が車体側へ湾曲しているバンパ補強材 (湾曲型バンパ補強材) の後面壁12に対して、ステイを取り付ける態様を示す。また、図1〜4に示すバンパ補強材10は、前面壁(車体前面側の壁)11と、後面壁(車体後面側の壁)12の他に、これらをつないで車体長手方向に延在するウエブ18、19と、中リブ17とを有する、横方向断面が日型の中空構造ものを示している。
【0034】
本発明では、バンパ補強材10の態様は、図1〜4に示すバンパ補強材に限定されるものではなく、この他、口型、田型の中空構造や、あるいは開断面構造など、公知の断面形状のものが適宜使用できる。また、材質も、汎用されている公知の鋼製あるいはアルミニウム合金製のものが適宜使用できる。ただ、車体の軽量化や衝突エネルギの吸収性からすると、アルミニウム合金製のバンパ補強材が好ましい。
【0035】
(ステイの接合方法)
図1、3を用いてステイ1の取り付け方の詳細を説明する。なお、この取り付け方は、前記した、図示しないバンパ補強材10の左側部分のバンパステイの取り付け型でも同じである。図1、3に示すように、バンパ補強材10の湾曲部10bにおける後面壁12には、前面壁11に設けられた比較的大きな、接合作業用穴(貫通穴)13に対応して、比較的大きな接合作業用穴(貫通穴)14が設けられている。これらの接合作業用穴13、14を介して、バンパ補強材10の前面壁11側(作業穴14)からの、図1、3に矢印で各々示す、各接合作業によって、ステイ1のカップ底部2側がサイドメンバ先端部21側に接合されるとともに、ステイ1のカップフランジ4を介して、カップ開口部3側がバンパ補強材10の後面壁12側に接合される。
【0036】
(サイドメンバとの接合)
一方、ステイ1側には、各ステイ例とも共通して、カップ底部2にボルト穴(貫通穴)6、6が設けられている。バンパ補強材10の前面壁11側からの、接合作業用穴13と後面壁12の接合作業用穴14とを通じた、矢印で示す各接合作業によって、このボルト穴6、6と、サイドメンバ20先端部21側に設けたボルト穴22、22とを各々係合させる。次いで、これらボルト穴6、22同士に、ボルト23を各々貫通させ、図2、4に接合後を示すように、ステイ1のカップ底部2とサイドメンバ先端部21とをボルト接合する。
【0037】
(バンパ補強材との接合)
また、ステイ1のフランジ4には、選択的に、ボルト穴(貫通穴)7、7が設けられている。バンパ補強材10の前面壁11側からの、接合作業用穴13と後面壁12の接合作業用穴14とを通じた、矢印で示す各接合作業によって、このボルト穴7、7と、バンパ補強材の後面壁12に設けたボルト穴15、15とを各々係合させる。次いで、これらボルト穴7、15同士に、ボルト16を各々貫通させ、ステイ1のフランジ4とバンパ補強材の後面壁12とをボルト接合し、図2、4に接合後を示すように、カップ開口部3側がバンパ補強材10の後面壁12側に接合される。
【0038】
なお、ステイ1のフランジ4とバンパ補強材10の後面壁12との接合では、ボルト接合(フランジ4のボルト穴7、7)が必須ではなく、このボルト接合に替えて、あるいはこのボルト接合に加えて、ステイ1のフランジ4とバンパ補強材10の後面壁12とを溶接接合しても良い。このように、本発明ステイ1では、カップ開口部3側がバンパ補強材10の背面壁12側と接合される。このため、前記特許文献3に示されるような、カップ底部がバンパ補強材と接合される構造に比べて、より車体内側の位置で、ステイ1とバンパ補強材10を接合することが可能となる。このため、車体衝突時に荷重が入力されやすい、バンパ補強材10の中央近傍をより近い位置で支持し、衝突時の平均荷重を大きくすることが可能となる。つまり、衝突エネルギの吸収ストロークを短くできるという大きな利点がある。
【0039】
(図5の態様)
これらの接合手段として、通常のボルトによる接合を示しているが、この他スタッドボルトなど、他の機械的な接合手段を用いる(置き換え、あるいは併用)ことも可能である。例えば、図5は、他の態様は全て図3と同じで、ステイ1とサイドメンバ20との取り付けボルトを、頂点部に車両牽引用フック31を設け、底部にサイドメンバ20との締結用ネジ32を設けたボルト構造に置き換えている点のみが相違する。この図5に示すような、車両牽引用フック31を設けたボルト構造に置き換えれば、ステイ1のボルト穴6aを介して、ボルト23を貫通させ、サイドメンバ先端部21(22a)への結合と、牽引フック31の取り付けとを同時に行うことが可能となり、取付の効率化も図れる。同時に、牽引フック31が、バンパ補強材10ではなく、より強度の高いサイドメンバ20に直接接合可能となることによる取付強度向上効果も得ることができる。なお、ステイ1の、この他のサイドメンバ先端部21との接合や、フランジ4とバンパ補強材10の後面壁12との接合は、図2の場合と同様である。
【0040】
このようにステイを配置することで、カップ底部2が衝突荷重に対する後面側(サイドメンバ側)、カップ開口部3側が衝突荷重に対する前面側(バンパ補強材側)となる。したがって、衝突荷重の負荷時に、カップ底部3とカップ開口部3とをつないで構成される筒状の縦壁5の外方への拡大変形や、カップ底部2の後面側への(凹み)変形などによる、ステイ(カップ)の全体変形により、衝突荷重を吸収することができる。
【0041】
(バンパステイ)
本発明に係るバンパステイについて以下に説明する。図1〜4において、ステイ1は、平板状のアルミニウム合金板(圧延板や押出板)をプレス成形、あるいは電磁成形して、略円錐台形状のカップに成形されたものである。これによって、ステイを、元板であるアルミニウム合金板の成形により製作でき、ステイ製作コストの低減や製作効率の向上などの利点が大きい。なお、平板状のアルミニウム合金板のステイ1への成形に際しては、電磁成形なども使用できるが、プレス成形が形状精度や簡便さの点で好ましい。
【0042】
(ステイカップ形状)
図1〜4のカップは、共通して、底壁である底部2と、この底部2の周縁部2aから立ち上がる縦壁5と、この縦壁5の周縁部によって形成された開口部3と、縦壁周縁部5aから外方に張出すとともに縦壁周縁部5aの周方向に亙って設けられたフランジ4とが一体に形成されて構成される。
【0043】
ステイ1は、フランジ4を介して、開口部3側が、バンパ補強材端部10bの、車体後方に向かって湾曲あるいは傾斜した後面壁12側に取り付けられる。このため、ステイ1の各カップ形状は、この後面壁12の形状に対応した、湾曲あるいは傾斜した形状を有する。より具体的には、車体幅方向に平行な底部2に対して、図1〜4では、車体幅方向内側(図の左側)の縦壁5が、車体幅方向外側(図の右側)の縦壁5よりも長く、縦壁5、開口部3、フランジ4とが、順次、車体幅方向外側(図の右側)に向けて傾斜した形状を有する。
【0044】
これに対し、中央部や端部も含めて真っ直ぐな、直線的なバンパ補強材 (直線型バンパ補強材) に対して取り付けるためには、ステイ1のフランジ4乃至開口部3の面を、バンパ補強材端部10bの後面壁12面と平行(略水平)にする。言い換えると、車体幅方向に平行な底部2と同様に、縦壁5、開口部3、フランジ4とを車体幅方向に平行とする。
【0045】
一方、ステイ1の底部2も、サイドメンバ20の先端部21側に取り付けられるために、このサイドメンバ20の先端部21の形状に対応した形状を有する。。より具体的には、車体幅方向に平行なサイドメンバ20の先端部21に対して、車体幅方向に平行な形状を有する。このように、ステイ1における底部2、縦壁5、開口部3、フランジ4の面の各形状は、接合されるバンパ補強材後面壁12側や、サイドメンバ先端部21の形状に応じて、適宜選択される。
【0046】
(衝突荷重吸収形状)
図1〜4のカップは、カップの筒状の縦壁5が、底部周縁部2aから外方に拡がるように斜めに立ち上がっている。この結果、カップは、底部2の幅(径)が、開口部3の幅(径)よりも狭幅(小径)となって、円筒状の縦壁5を図の上方(フロントバンパでは車体前面側)に向かって拡がる、円錐台形状乃至末広がり形状となっている。
【0047】
衝突時のエネルギ吸収効率を高めるためには、衝突時の「最大荷重」を低く、「平均荷重」を上げることが望まれる。この点、カップ(ステイ)を、このような円錐台形状乃至末広がり形状とすることによって、プレス成形における破断を防止するとともに、底部2の幅(径)と開口部3の幅(径)とが略同じ場合に比して、円錐台形状の傾斜部が初期不整の役割を果たし、衝突荷重負荷時の初期ピークを下げる効果が得られる。これにより、最大荷重を低く抑えることで、ステイより後方の部品の破損を抑制するとともに、円筒状の縦壁5の外方への拡大変形(末広がり変形)や、狭幅の底部の後面側への変形などによる、ステイの全体変形により、ステイ全体が変形荷重を受け持つ。このため、平均荷重も増加し、より多くの衝突荷重を吸収することができる。
【0048】
ここで、衝突荷重のエネルギ吸収効果を向上させるためには、ある程度の縦壁5の成形高さ(カップの高さ、ステイの車体長手方向の長さ)を有するとともに、カップ底部2の周縁部2aから縦壁5が立ち上がるコーナ部分に、ある程度のコーナR(肩R)をもたせることが望ましい。これにより、最大荷重を低く抑えることで、ステイより後方の部品の破損を抑制するとともに、衝突荷重負荷時の周縁部2aの破損を抑制して、ステイの全体変形により、より多くの衝突荷重を吸収することができる。また、上記素材板からのカップ成形も容易となる。
【0049】
勿論、これらの衝突荷重のエネルギ吸収効果を向上させるために、成形ステイ全体形状が設計される。底部2の幅(径)、底部の周縁部2aに亙っての縦壁5とのコ−ナRの大きさ、開口部3の幅(径)、縦壁5(ステイ)の高さ、フランジ幅などを、自動車の車種や要求衝突荷重吸収性能と、アルミニウム合金板の板厚、強度などの条件に応じて、各々設計する。
【0050】
このような一体型のカップ形状によって、ステイにおけるカップの全体変形により、衝突荷重を吸収できる。また、別々のカップとフランジとを溶接などにより接合する問題や、両者の接合強度が弱くなり、そこから破断して、衝突荷重のエネルギ吸収効果が低下する問題もない。
【0051】
(ステイボルト穴)
図1〜4のステイ1では、共通して、カップ底部2に設けられた貫通穴6、6はボルト穴であり、これによって、ステイ1は、カップ底部2側がサイドメンバ20先端部21側のボルト穴22、22と、各々にボルト23、23にて各々接合される。
【0052】
また、図1〜4のステイ1では、共通して、フランジ4に設けられた貫通穴7、7はボルト穴であり、これによって、ステイ1は、フランジ4側がバンパ補強材10の後面壁12側のボルト穴15、15と、各々にボルト16、16にて各々接合される。
【0053】
(底部形状)
カップ底部2(あるいは開口部3)の平面形状は、必ずしも円形状である必要はなく、また、カップの形状(横断面形状)も必ずしも円筒状である必要はない。これらの平面形状は、プレス成形できるものであれば、接合されるサイドメンバ先端部21や、カップ底部に作成されるボルト穴(締結ボルト)の位置に応じて、適宜選択される。例えば、底部2の平面形状を、楕円形状あるいは方形、多角などの角形状、あるいは、これらの形状に近いような略円形の形状として良い。したがって、縦壁5も、この底部2の平面形状に応じた筒状形状となる。このように、底部2の平面形状や周方向の形状などの面形状は、前記した通り、サイドメンバに接合可能なように、サイドメンバ先端部21の形状に対応させる。
【0054】
(略円形カップ形状)
ここで、図1、2のステイ1のカップ形状では、カップ底部2は略円形で、この底部2の略円形周縁部2aから立ち上がる縦壁5も略円筒状、この縦壁1aの周縁部によって形成された開口部3も略円形、縦壁周縁部5aから外方に張出すとともに縦壁周縁部5aの周方向に亙って設けられたフランジ4も略円形となる。このような単純形状のステイ1は素材板からの成形も容易である。
【0055】
(方形カップ形状)
一方、図3、4に示すステイ1は、カップ底部2のうち、車体幅方向の内側部分(図の左側)は略半円状形状であり、車体幅方向の外側部分(図の右側)は略方形(角形)形状である。この図3、4に示すカップ形状のステイ1の方が、図1、2のカップ形状のステイ1よりも、カップ底部2の面積を大きくすることができる。このため、ステイ1をサイドメンバ20先端部21側に接合する際の、カップ底部2に設けるボルト穴6、6の数を多く設けることが可能であり、接合強度を増すことができる。因みに、図1、2のカップ形状においてカップ径をφ100mmと仮定した場合、カップ底部2に設けるボルト穴6、6は2個が限界である。これに対して、図3、4のカップ形状では、カップ底部2の面積を図1、2の場合よりも大きくでき、カップ底部2のボルト穴6、6は3個以上設けることができる。サイドメンバ20先端部21との接合強度を確保するためには、カップ底部2には車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて合計3個以上のボルト穴を設けることが好ましい。このため、この図3、4のように、カップ底部2は、合計3個以上のボルト穴を、車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて延在させるだけの面積を有していることが好ましい。
【0056】
更に、この図3、4に示すステイ1は、車体幅方向の内側部分(図の左側)方向に拡がる縦壁5の部分の長さを長くして、より車体幅方向の内側部分(図の左側)方向に拡がるようにしている。これによって、バンパ補強材10のより中央部10側(車体幅方向の内側部分)に、後面側から支持するステイ1が存在することとなり、よりバンパ補強材の内側(中央部側)を支持することが可能となる。これによって、衝突時の平均荷重を向上させることが可能であり、バンパ補強材10の変形荷重が高くなり、衝突エネルギ吸収ストロークを短くできる利点がある。同時に、ステイ1のプレス成形を想定した場合、ステイ1の縦壁5の角度も緩やかになり、ステイ1の成形が容易になるという利点も得られる。
【0057】
(底部補強)
本発明では、板から成形するカップ底部2部分の板厚(厚み)は、軽量化の観点からも、そう厚くなく、後述する通り、4mm以下程度である。ただ、このように厚みが薄いと、衝突荷重の大きさにもよるが、条件によっては、衝突荷重負荷時にボルト穴の破断が生じる可能性がある。このようなボルト穴の破断を防止するためには、図9に示すように、カップ底部2を補強することが好ましい。
【0058】
図10では、カップ底部2に、カップ底部2の形状や補強必要部分の形状に対応した、補強板乃至補強材30を内側(開口部3側)から積層して、カップ底部2部分の、特に、ボルト穴設置部分の、板厚(厚み)を厚くしている。これによって、カップ底部2部分の、特に、ボルト穴設置部分の強度、剛性を向上させ、衝突荷重負荷時に、ボルト穴の破断が生じるのを防止している。
【0059】
ここで、補強板乃至補強材30の材質は、その板厚と同様に、衝突荷重負荷量に応じたカップ底部2の必要強度特性から、ボルト穴の破断を防止できるだけ強度特性を向上できる材質、板厚が選択される。この点、補強板乃至補強材は、ステイ1と同じあるいは同種のアルミニウム合金材が好ましく、重量増加抑制の観点からは、カップ底部2の板厚(厚み)以上に厚くする必要はない。なお、補強板乃至補強材の材質は、樹脂、鋼材などのステイに対する異材でも良いが、その板厚の選択と同様に、あまり重量を増加させないことが好ましい。また、補強板乃至補強材30の断面形状は、平坦状でなくても、凹凸や段差を有しても良い。更に、補強板乃至補強材30は、カップ底部2に単に積層してもよく、接着剤などで接合しても良い。
【0060】
(フランジ形状)
フランジ4の周囲形状は、前記した通り、バンパ補強材後面壁12の接合面形状や、接合用ボルト穴などの設計に応じて、成形可能な形状が適宜選択できる。また、開口部3の周縁部3aの全周乃至全部に亙って設けずとも、必要周縁部部位に部分的に設けることも可能である。このような、フランジ4や、底部2などの略円錐台カップ形状を、自由に作り分けられる点が、成形ステイの利点でもある。
【0061】
本発明に係る成形ステイによれば、これらステイ接合用の貫通孔を十分設けられるだけの余地のある、底部2の幅(径)やフランジ4の幅(径)をとれる利点がある。更に、これら接合用の貫通穴は、例えば、プレス成形により、ステイ縦壁部分を形成した後、プレスせん断加工により設けることも可能である。この場合には、不必要なフランジ部分を同時に切除することでさらに軽量化できるという利点もある。
【0062】
(フランジの曲げ剛性向上)
図1〜4で示したフランジ4は平坦な形状をしているが、このフランジ4(ステイ)の、衝突荷重負荷に対する曲げ剛性を向上させるために、カップにおけるフランジ外縁部を車体前後方向に略90度折り曲げたフランジ片を設けることが好ましい。これによって、フランジ4(ステイ)の剛性を高め、曲げ剛性を向上させることができ、結果として、ステイ1の衝突荷重のエネルギ吸収性能をより向上させることができる。
【0063】
図6〜9はこのようなフランジの曲げ剛性を向上させた態様を示している。図6、7はバンパステイの態様を斜視図で示し、図8、9は、各々図6、7のバンパステイをバンパ補強材側に取り付けた態様を側面図で示している。
【0064】
図6は、フランジ4の外縁部の内、車体上下方向側(図の上下方向側)の部分を、ともに車体後方側(図6の下方側、図8の右方側)に向けて略90度折り曲げた、二つのフランジ片8、8(折り曲げ部)を設けている。図7は、フランジ4の外縁部の内、車体上下方向側(図の上下方向側)の部分を、図6とは逆に、ともに車体前面側(図6の上方側、図9の左方側)に向けて略90度折り曲げた、二つのフランジ片8、8(折り曲げ部)を設けている。図6、7のバンパステイの、その他の形状は図1のバンパステイと基本的に同じである。
【0065】
バンパ補強材側へ取り付けられたフランジ4には、衝突時に大きな曲げモーメントが加わる。図1〜4のように、フランジ4が平板状である場合、衝突荷重の大きさによっては、この曲げモーメントに対するフランジ4の強度、剛性が不足し、変形しやすくなる。このフランジ4の変形が生じた場合、本発明のステイ(カップ)の全体変形によらず、フランジ4の変形により、バンパ補強材が回転変形し、衝突時の変形量が大きくなる可能性が生じる。
【0066】
このような場合には、フランジ4の変形を防止するために、フランジ4の剛性を高めることが有効である。この手段として、フランジ4の板厚をもっと厚くする手段があるが、ステイ1の軽量化や素材板からのステイの成形性が犠牲になるために、有効な手段とは言い難い。この点、フランジ外縁部を車体前後方向に折り曲げたフランジ片を設ける手段は、ステイ1の軽量化や素材板からのステイの成形性が犠牲にならない点で有効な手段である。
【0067】
フランジ片8、8の、折り曲げ部位、個数、幅、長さ、角度などは、フランジの曲げ剛性の必要向上量から適宜選択される。フランジ片8、8の折り曲げ方向や折り曲げ角度をともに同じとする必要はなく、例えば、折り曲げ方向を互いに逆とするなど、互いに形状や条件を変えても良い。
【0068】
図8は図6のバンパステイを、図9は図7のバンパステイを、フランジ4を介して、各々中リブ17を有する断面日型のバンパ補強材10の後面壁12に取り付けた態様を示している。ここで、図9の場合、ともに車体前面側(図7の上方側、図9の左方側)に向けて略90度折り曲げた二つのフランジ片8、8によって、バンパ補強材10を横抱きにしている。このような横抱き型の場合には、二つのフランジ片8、8が重なる、バンパ補強材10のウエブ18、19部分が、厚肉となって、衝突荷重のエネルギ吸収効果をより向上できる。また、逆に、二つのフランジ片8、8が重なる、バンパ補強材10のウエブ18、19部分を薄肉化して、軽量化することもできる。また、車体衝突の際、バンパ補強材は、主に、車体高さ方向を軸方向とする回転変形が生じやすいことから、この折り曲げ部はこの変形に抗するように設けることが望ましく、図9のフランジ片8、8のように、バンパ補強材10の少なくとも車体上下方向端部に設けていることが望ましい。
【0069】
(縦壁の剛性向上)
縦壁5の厚み(板厚)や重量を増加させずに、縦壁5の剛性を向上させる手段として、張出リブ9を縦壁5に設けても良い。これによって、同じ厚みであれば、図1〜4の平滑、平坦な縦壁5に比して、ステイ1の衝突荷重のエネルギ吸収性能をより向上させることができる。
【0070】
図11に斜視図で示すバンパステイ1は、縦壁5の高さ方向に延在するとともに、開口部3の内側に向かって凸状に張り出した、張出リブ9を、筒状縦壁5の周方向に亙って、間隔を開けて、複数個設けている。これらの張出リブ9は、元板であるアルミニウム合金板の成形により、ステイ(カップ縦壁5)を成形する際に、材料流入による座屈しわの形成効果を利用して同時に、一体に設けても良いし、プレス深絞り成形の後、縦壁部に略垂直方向からのプレス成形により設けてもよい。
【0071】
図11のバンパステイ1は、衝突時に圧縮荷重が加わる車体内側のカップ(縦壁)5に、局所的に曲げ変形を防止する張出リブ9リブが設け、局所的に径(幅)が大きくなっている。これにより、この張出リブ9の無い場合に比べて、縦壁部5の曲げ変形に対する抵抗力を増加させ、ステイの曲げ剛性が大きくなり、縦壁部5の曲げ変形に伴う極端な荷重低下や、変形開始加重の低下を防止することができるという利点がある。また、元板であるアルミニウム合金板の成形によりステイを製作する際に、この張出リブ9を設定したことで、成形における絞り抵抗力が小さくなり、アルミニウム合金平板を成形して上記カップ形状とする際の、底部2周縁部2aにおける成形割れを防止できる利点もある。
【0072】
このような効果を得るために、張出リブ9は、筒状縦壁5の周方向に亙って、最低1個以上設けることが好ましい。この張出リブ9設け方は、衝突荷重がより負荷される、縦壁5の車体幅方向の内側方向(図の左側)部分に偏って設けても良い。あるいは、底部2を等分割する形で縦壁5の周方向に亙って均等に分散して設けても良い。
【0073】
(ステイの厚みと強度特性)
ステイ1の厚み(素材板の板厚)は、軽量化のためには4mm以下とすることが好ましい。板厚が4mmを超えた場合には、鋼製ステイに代わっての軽量化効果が薄くなる。また、素材板のステイへの成形も難しくなる。そして、このような薄肉条件下で、ステイ1の高エネルギ吸収量を保障するためには、ステイ1(素材アルミニウム合金板)の0.2%耐力が190MPa以上の高強度であることが好ましい。例えば、素材板のアルミニウム合金が5182−O材であっても、大きな性能低下はないことから、素材耐力にそれほどこだわる必要はないが、高い方が望ましいのは確かである。また、バンパ材であることから、T6、T7処理の適用も可能であり、素材板が6000系アルミニウム合金であっても、0.2%耐力を270MPa程度まで増加させることも可能である。
【0074】
バンパ補強材側の取り付け部である上記フランジ4の接合部7、15には、衝突時に大きな曲げモーメントが加わる場合が多い。これに対して、上記カップ底部2(サイドメンバ側の接合部)は、カップ底部2の周縁部に亙って筒状の縦壁5で外周を囲まれていることから、ボルト接合部6、22(締結部)への荷重およびモーメント入力に対して変形が生じにくい。
【0075】
一方のサイドメンバ20側の取付部であるカップ底部2のボルト接合部6、22には、車体前後方向への全面圧縮あるいは全面引張(オフセット衝突における衝突面の逆側)力を受けることが多い。しかし、このサイドメンバ20側の接合部に加わる変形力は、前記した通り、締結ボルト部近傍の強度に大きく依存する。 3点程度のボルト接合を想定し、オフセット衝突におけるこの部位の破断を防止する必要があるとすれば、前記した6000系アルミニウム合金ステイの0.2%耐力:190MPa程度を前提とすると、カップ底部2の厚みを2mm以上とすることが望ましい。
【0076】
このような条件と、ステイへのプレス成形性とを満たすアルミニウム合金としては、特に、Al−Mg−Si系の、JIS乃至AA規格で言う、6000系熱処理型アルミニウム合金とすることが好ましい。なお、Al−Mg−Zn系の7000系熱処理型アルミニウム合金も使用できるが、6000系よりは入手が難しい。また、特にある程度ステイの長さを確保するためには、プレス成形性の良い(伸びが高い)O、T1、T4状態でプレス成形し、成形時の破断を防止することが望ましい。また、プレス成形を施した部品に熱処理を施すことで、製品としての強度を確保することが望ましい。このためには、前記6000系の熱処理型アルミニウム合金を用いることが望ましい。ここで、加える熱処理は、焼付け塗装処理あるいはT5、T6処理など、必要となる素材強度に応じて便宜選択される。なお、バンパ補強材とステイとの接合に溶接接合を行うとすれば、6000系合金に比べて溶接性に優れるAl−Mg系の5000系合金の適用が望ましい。この場合、プレス成形後の熱処理による強度向上などの効果は得られないが、その分厚肉にすることで、同等程度の強度部品を得ることは可能である。
【0077】
通常の自動車車体用のステイであれば、板厚が4mm以下で、0.2%耐力が190MPa以上であることを前提に、底部2の幅(径)は50〜160mm程度、底部2の周縁部2aに亙ってのコ−ナ部の肩Rは5〜30mm程度、開口部周縁部3aと縦壁5とをつなぐコ−ナ部の肩Rは5〜30mm程度、縦壁5(ステイ)の高さは10〜100mm程度、フランジ4の大きさは、ボルトなど機械的な接合が可能な範囲から選択される。
【0078】
(ステイの成形)
ステイへの素材アルミニウム合金板からの成形は、通常のプレス成形機および条件範囲を用いて可能である。即ち、アルミニウム合金素材板の上方側に、雌型金型と板押さえとを設け、下方側に雄型金型(ポンチ)を設ける。そして、雌型金型と板押さえを相対的に下降させて、アルミニウム合金平板を雄型金型(ポンチ)に押圧して、ステイのカップ形状を一体に成形する。前記した補強リブ9を設ける場合には、雌型金型のカップ形状における筒状の縦壁5と対応する縦壁部に所望形状の縦溝を設ければ良い。
【実施例】
【0079】
前記図1、3(接合後は図2、4)に示したアルミニウム合金ステイ1の取り付け構造(接合)の衝突荷重エネルギ吸収性を、FEM解析によって変形荷重−背面変位関係を求め、評価した。
【0080】
衝突荷重エネルギ吸収性フラットバリヤ衝突を模擬した衝突解析(バンパ補強材中央部に前面側から荷重付加)を行い、荷重エネルギ吸収性能を調査した。この際、解析の前提として、FEM解析には、汎用の動的陽解法ソフトLS−DYNAを用いた。なお、解析にあたり、車重は1.1tonf、衝突速度は8km/hとした。また、図1、3のステイ1とも、共通して、カップ底部2側をサイドメンバに替わる剛体側に設け、カップフランジ4(カップ開口部3側)をバンパ補強材の後面壁12側に設けた態様とした。
【0081】
対象としたステイ形状は、図1、3のステイ1とも、共通して厚み3mm、図1の重量は180g/個とした。図3のステイ1の重量は220g/個とした。図1のステイにおける底部2はΦ90mmの円形状とした。また、図3のステイにおける底部2は、車体幅方向の内側部分(図の左側)の略半円状形状部分はΦ90mmの半円形状とし、車体幅方向右側は、コーナR15mmの、一辺が90mmの略方形(角形)の半形状とした。
【0082】
縦壁5の高さは、図1、3のステイ1とも、共通して、カップ部縦壁の車体幅方向の内側部分(図の左側)は最も長い(高い)部分で47mm、カップ底部のフランジ面に対する角度は13DEG.として、形成される開口部3やフランジ4をバンパ補強材傾斜後面に合わせて傾斜させた平坦形状とした。縦壁部分と底面およびフランジ面をつなぐ肩Rは8mmとした。フランジ4は、図1、3のステイ1とも、共通して、幅が略30mmとした。素材板は、共通して、アルミ6000系調質材であり、T4調質材で成形した後、焼付け塗装処理を行っている。これにより、素材0.2%耐力は190MPaとした。
【0083】
バンパ補強材10の形状は、断面日型状の中空押出形材で、後面壁の高さ(長さ)125mm、幅58mm、幅方向長さ1300mm(中央の直線部10a長さ450mm、曲げ角度13DEG.)とした。アルミニウム合金は0.2%耐力が310MPaの7000系アルミニウム合金とした。
【0084】
バンパ補強材10の前面壁11側の接合作業用穴13と後面壁12の接合作業用穴14は、共通してφ30mmの円形とした。また、ステイ1はバンパ補強材10の後面壁12の両端から内側に60mm入った部分にステイ中央部がくるように設けた。
【0085】
図1、3における全てのボルト穴6、7、15、22の穴径は共通してΦ16mmとし、M8ボルトにより接合している。
【0086】
比較例として、縦圧壊型の円筒ステイの取り付け構造とした。この比較例は、円筒状ステイの両端部に各々取り付けフランジを接合した形状とした。バンパ背面側との取り付けフランジを板厚4mm、耐力90MPaの5000系O材、サイドメンバ側の取り付けフランジを板厚3mm、耐力90MPaの5000系O材、円筒ステイは板厚2mmで、0.2%耐力が190MPaの6000系アルミニウム合金とした。この比較例ステイの重量は約330g/個である。比較例ステイの接合態様は、取り付けフランジを4点のボルト止めで、サイドメンバおよびバンパ補強材に各々接合しているものとした。ボルト穴とボルトとの条件は図1、3における発明例と同じとした。
【0087】
表1に解析結果を示す。この表1から明らかな通り、本発明ステイ取り付け構造は、約200gと非常に軽量であっても、比較材である一般的な縦圧壊ステイに比べて変形荷重が同等で、かつ衝突後の最大変形量が小さくできていることがわかる。これにより、衝突初期のエネルギ吸収量が増加し、衝突時の変形量も小さくでき、かつ大幅な軽量化にもなっていることがわかる。
【0088】
本発明ステイ取り付け構造は、よりステイの(素材)強度を高くすれば、より厚みを薄くできて軽量化を図れるか、同じ板厚では、更にエネルギ吸収量を大きくすることも可能である。
【0089】
また、比較例の場合、ステイに開口部3が無いので、バンパ補強材10の前面壁11側の接合作業用穴13と後面壁12の接合作業用穴14とを設けても、本発明ステイ取り付け構造のように、前記バンパ補強材の前面壁側からの接合作業によって、特に、ステイをサイドメンバ先端部側に接合できないことが明らかである。
【0090】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明は、より薄肉、軽量化した上で、衝突荷重の吸収が可能な、アルミニウム合金板を成形して製造したカップ状ステイを、バンパ補強材の前面壁側(前面側)からの作業によって、サイドメンバ先端部側とバンパ補強材の後面壁側とに機械的に接合できる、バンパステイの取り付け構造およびバンパステイを提供することができる。したがって、取り付け作業性がよく、軽量化要求と衝突時のエネルギ吸収性などの要求のある、自動車のバンパステイ乃至バンパ装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明バンパステイの取り付け構造の一実施態様を示す斜視図である。
【図2】図1の取り付け後の態様を示す平面図である。
【図3】本発明バンパステイの取り付け構造の他の実施態様を示す斜視図である。
【図4】図2の取り付け後の態様を示す平面図である。
【図5】本発明バンパステイの取り付け構造の他の実施態様を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るバンパステイの別の実施態様を示す斜視図である。
【図7】本発明に係るバンパステイの別の実施態様を示す斜視図である。
【図8】図5のバンパステイの取り付け構造を示す側面図である。
【図9】図6のバンパステイの取り付け構造を示す側面図である。
【図10】本発明に係るバンパステイの別の実施態様を示す斜視図である。
【図11】本発明に係るバンパステイの別の実施態様を示す斜視図である。
【図12】従来のバンパステイの取り付け構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
1:ステイ、2:ステイ底部、3:ステイ開口部、4:フランジ、5:縦壁、
6、7:ボルト穴、8:フランジ片、9:縦リブ、10:バンパ補強材、
11:前面壁、12:後面壁、13、14:接合作業用穴、15:ボルト穴、
16:ボルト、20:サイドメンバ、21サイドメンバ先端部、
22:ボルト穴、23:ボルト、
【技術分野】
【0001】
本発明は取り付け性および衝突エネルギ吸収性に優れたバンパステイの取り付け構造およびバンパステイに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の前端 (フロント) および後端 (リア) に取り付けられているバンパの内部には、強度補強材としてのバンパ補強材 (バンパリインフォースメントあるいはバンパアマチャアなどとも言う) が設けられている。
【0003】
車両の衝突時の乗員への衝撃を緩和するために、車両のバンパ補強材と、車体側のサイドメンバ(サイドフレームとも言う)との間に、塑性変形可能なクラッシュボックス(衝撃エネルギ吸収体)として、バンパステイ(以下単にステイとも言う)を介在させた例が、従来から提案されている。このステイは、元々バンパ補強材の後面からの支持部材 (車体連結用部材) としても役割を持つ。
【0004】
従来から、軽量化のために、鋼製に代わる、アルミニウム合金製ステイとして、押出中空形材などを用いたステイが種々提案、採用されている。この押出中空形材などを用いた従来のステイは、以下の二つのタイプに大別される。
1.車体前後方向を押出方向とするステイ(以下、縦圧壊型ステイと言う)
2.車体左右あるいは上下方向を押出方向とするステイ(以下、横圧壊型ステイと言う)
【0005】
上記縦圧壊型ステイは、衝突方向に直交する断面を閉断面構造にすることが可能であり、同一強度を得ることを考えれば、横圧壊型ステイに比べて軽量化が可能である。しかし、バンパ後面あるいはサイドメンバと接合するための取付フランジを溶接などにより接合する必要がある。このため、コストが高くなるという問題がある。
【0006】
上記横圧壊型ステイは、取り付け面に合わせたフランジを予め形成して押出することが可能であるが、前述のように強度が低くなるため、重量が重くなるという問題があり、重量、取り付け性、コスト全てを満足することは難しいといえる。
【0007】
これに対し、アルミニウム合金製ステイとして、元板であるアルミニウム合金板をプレス成形したステイが実用化できれば、ステイ自体の製造がより容易となる。また、板をプレス成形したステイでは、ステイ取り付け孔の設置のために十分大きな幅を持ったフランジの形成が容易となる利点も大きい。
【0008】
このような板を成形したステイとして、例えば、特許文献1には、アルミニウム合金製のステイなどとして、衝突方向に対して高さ方向が平行となるように設置される円錐台形状の吸収部材からなるエネルギ吸収部材であって、吸収部材の、上面半径R、底面半径r、高さhが特定の関係を満たすようなエネルギ吸収部材が提案されている。
【0009】
このステイは円錐台形状からなり、バンパ補強材側(衝突方向前面側)に円錐台の頂部(有底部)が、サイドメンバの先端側(後面側)に円錐台の底部(開口部)が、各々向くように配置している。そして、円錐台の底部側(開口部側)に、平板形状の取付部材を、円錐台と一体にではなく、更に別途、円錐台の底部として設けてフランジとなし、サイドメンバ先端部のフランジとの取付に利用するものである。
【0010】
また、特許文献2には、鋼板の深絞り成形により、底付きの管体(カップ形状)を形成したクラッシュボックスが提案されている。このステイは、底部側をバンパ補強材側に配置し、管体開口側をサイドメンバ先端部側に配置して用いる。そして、ステイ管体開口側には、管体開口側が後方のサイドメンバの内部に後方に向けて入り込み、かつU字状に反転してバンパ補強材側の方向に向き直り、再びサイドメンバ先端部側に戻る「円弧状変形部」を設けている。この「円弧状変形部」は、その先端部に、更に、サイドメンバ先端部の外方へ拡がるフランジに沿って、外方へ拡がるフランジを形成している。
【0011】
このステイでは、前記底部はバンパ補強材との取付に利用するとともに、前記フランジはサイドメンバ先端部のフランジとの取付に利用される。そして、前面側のバンパ補強材に衝撃荷重が作用すると、サイドメンバの内部に入り込んでいる前記U字状「円弧状変形部」が、新たなU字状円弧状の変形部を作りながら、この変形部をサイドメンバの内部へ順次送り込んでいく変形を行う。即ち、ステイ管体がサイドメンバの内部へと後退する形で変形を行い、衝撃エネルギを吸収するものである。
【0012】
特許文献1のアルミニウム合金製ステイは、円錐台形状部分に対して、円錐台の底部側(開口部側)に、平板形状の取付部材を、円錐台底部として別途に設けている。このため、線からなる円錐台の底部側と、面からなる平板形状の取付部材との取り付け方が難しく、実用的な接合強度を得ることが困難である。したがって、円錐台形状部分の変形による衝撃エネルギの吸収を行なう以前に、この接合部分から破断し、実際にはエネルギ吸収ができない。
【0013】
また、特許文献2の鋼製ステイは、元板である鋼板の深絞り成形により製作できる点は、ステイ製作コスト低減の利点が大きい。しかし、サイドメンバの内部に入り込んでいるU字状「円弧状変形部」は、単に板状部であり、連続的に曲げ−曲げ戻し変形を受けることで、衝突時の安定した荷重を得ようとするものである。しかし、このような鋼製ではなく、鋼に比して局部伸びがほとんど無いアルミ材料への適用を想定した場合、この「円弧状変形部」は容易に破壊、破断されやすくなる。したがって、アルミ材料では、前記ステイの変位による衝撃エネルギの吸収を行なう以前に破壊され、実際にはエネルギ吸収が難しい。
【0014】
このように、特許文献1、2からは、アルミニウム合金板を用いるにしても、鋼板を用いるにしても、元板をプレス成形したステイを用いる場合には、実際問題として、衝突時のエネルギを吸収しうるステイ構造とすることが難しいことが分かる。
【0015】
これに対して、特許文献3によって、衝突時のエネルギを吸収しうる、アルミニウム合金板をプレス成形して製造したステイが提案されている。これは、ステイをアルミニウム合金板を成形したカップ形状とし、このカップは、底部と、開口部と、これら底部と開口部とをつなぐ略円筒状の縦壁とからなり、底部はその周縁部に亙って円弧状のコ−ナRを有して縦壁に繋がり、開口部周縁部は外方に張出したフランジを一体に形成してなるものである。そして、このステイは、カップ底部をバンパ補強材の後面壁側に取り付けるとともに、カップ開口部を前記フランジを介してサイドフレーム先端部側に取り付けられる。
【特許文献1】特開平8−207679号公報
【特許文献2】特開2003−312400号公報
【特許文献3】特開2006−347527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献3のようなステイであれば、より薄肉、軽量化した上で、衝突荷重の吸収が可能となる。また、元板であるアルミニウム合金板のプレス成形によりステイを製作でき、ステイ製作コストの低減や製作効率の向上などの利点が大きい。
【0017】
ただ、このステイ40は、図12に示すように、カップ底部2をバンパ補強材10の後面壁12側に取り付けるとともに、カップ開口部3側をフランジ4を介してサイドフレーム20の先端部(フランジ)21側に取り付ける構造となっている。このために、先ず、図12に示す、カップ底部2をバンパ補強材10の後面壁12側のボルト穴15に、ボルト16によって取り付けを行う。その後で、カップ開口部3側を、フランジ4を介して、サイドフレーム先端部21側へ、ボルト23により取り付け作業を行う必要(制約)がある。
【0018】
即ち、サイドフレーム先端部21側への取り付け作業を先ず行った場合には、カップ開口部3側がサイドフレーム先端部側21によって閉じられた閉断面となる。このために、カップ底部2側をバンパ補強材10の後面壁11側に、ボルト7によって取り付けにくくなる。また、これらバンパ補強材10の後面壁11側と、サイドフレーム先端部側21への取り付け作業を各々別個に行う必要性もある。
【0019】
これに対して、バンパ補強材10の前面壁側と後面壁側11とに、接合作業用開口穴を各々設け、バンパ補強材10の前面壁側(前面側)からの接合作業によって、バンパステイ1を、サイドメンバ先端部側とバンパ補強材の後面壁側とに、ボルトなどによって機械的な接合ができれば、このステイの取り付け作業が至って簡便となる。つまり、カップ底部2にボルト穴15を設けるとともに、カップ内側にナットAを溶接し、バンパ補強材の衝突面側から作業穴Bを通じてボルト16によって取り付けを行うことが望ましい。しかし、特許文献3のようなステイの場合には、カップ高さが高くなるほど、閉断面空間の内側にナットを溶接することが難しくなるという問題がある。
【0020】
この点に鑑み、本発明は、より薄肉、軽量化した上で、衝突荷重の吸収が可能な、アルミニウム合金板を成形して製造した、前記カップ状ステイの改良に係る。即ち、このようなステイを、バンパ補強材の前面壁側(前面側)からの接合作業によって、サイドメンバ先端部側とバンパ補強材の後面壁側とに機械的に接合できる、バンパステイの取り付け構造およびバンパステイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するための、本発明バンパステイの取り付け構造の要旨は、自動車車体のバンパ補強材とサイドメンバとの間に配置されて、前記バンパ補強材の後面壁側と前記サイドメンバ先端部側とに各々接合されるバンパステイの取り付け構造であって、バンパステイは、アルミニウム合金板を成形したカップ形状からなり、このカップは、底部と、この底部周縁部から立ち上がる筒状の縦壁と、この縦壁周縁部によって形成された筒状の開口部と、前記縦壁周縁部から外方に張出すとともに縦壁周縁部に亙って設けられたフランジとが一体に形成された全体形状からなり、前記カップの底部にボルト穴を設け、前記バンパ補強材の前面壁側と後面壁側とに各々設けた接合作業用開口穴と前記バンパステイのカップ開口部とを通じた、前記バンパ補強材の前面壁側からの各接合作業によって、前記カップ底部に設けたボルト穴を介して、前記カップ底部側がサイドメンバ先端部側にボルトにて接合されるとともに、前記カップのフランジを介して、前記カップ開口部側がバンパ補強材の後面壁側に接合されることである。
【0022】
ここで、前記バンパステイにおけるカップの筒状の縦壁が、底部周縁部から外方に拡がるように斜めに立ち上がっており、前記カップ底部は合計3個以上のボルト穴を車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて延在させる面積を有していることが好ましい。また、前記バンパステイが、前記カップにおけるフランジ外縁部を車体前後方向に折り曲げたフランジ片を設けていることが好ましい。
【0023】
また、上記目的を達成するための、本発明バンパステイの要旨は、上記バンパステイの取り付け構造に用いられるバンパステイであって、アルミニウム合金板を成形したカップ形状からなり、このカップは、底部と、この底部周縁部から立ち上がる筒状の縦壁と、この縦壁周縁部によって形成された筒状の開口部と、前記縦壁周縁部から外方に張出すとともに縦壁周縁部に亙って設けられたフランジとが一体に形成された全体形状からなり、前記カップの底部にボルト穴を設けたことである。
【0024】
ここで、前記バンパステイにおけるカップの筒状の縦壁が、底部周縁部から外方に拡がるように斜めに立ち上がっており、前記カップ底部は合計3個以上のボルト穴を車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて延在させる面積を有していることが好ましい。また、前記バンパステイが、前記カップにおけるフランジ外縁部を車体前後方向に折り曲げたフランジ片を設けていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、ステイを、アルミニウム合金の平板を、張出あるいは深絞りなどでプレス成形あるいは電磁成形して、上記要旨のカップ形状とする。これによって、元板であるアルミニウム合金板の成形からステイを製作でき、接合コストの低減により、ステイ製作コストの低減をすることができる。また、生産効率の良いプレス成形あるいは電磁成形で製作可能であることから、製作効率の向上などの利点が大きい。
【0026】
本発明では、更に、上記要旨の通り、このカップの形状を、底部と、この底部周縁部から立ち上がる筒状の縦壁と、この縦壁周縁部によって形成された開口部と、前記縦壁周縁部から外方に張出すとともに縦壁周縁部に亙って設けられたフランジとを一体に形成(成形)してなるものとする。これによって、ステイにおけるカップの全体変形により衝突荷重を吸収するようにする。
【0027】
上記外方に張出したフランジは、成形により、カップに一体に形成してなるため、前記特許文献1のような、カップとフランジとを接合する問題や、両者の接合強度が弱くなる問題もない。この上で、本発明では、前記特許文献3とは、バンパステイの車体前後方向の向きを逆にして、前記カップ底部側がサイドメンバ先端部側に接合されるとともに、前記カップ開口部側がバンパ補強材の後面壁側に接合されるようにする。より具体的には、前記カップ底部に設けたボルト穴を介して、前記カップ底部側がサイドメンバ先端部側にボルトにて接合されるとともに、前記カップのフランジを介して、前記カップ開口部側がバンパ補強材の後面壁側に接合されるようにする。
【0028】
これによって、前記バンパ補強材の前面壁側からの各接合作業によって、バンパステイを、バンパ補強材の後面壁側の他に、サイドメンバ先端部側と接合することが可能となる。即ち、前記カップ底部側をサイドメンバ先端部側にボルトにて接合するとともに、前記カップのフランジを介して、前記カップ開口部側をバンパ補強材の後面壁側に接合することができるようになる。このように接合する場合、ボルト接合に必要な溶接ナットあるいはスタッドボルトは、必要があればステイのカップ周円部のフランジにのみ設ければ良く、溶接接合が行いにくいカップ底部内側裏側に取り付ける必要はなくなり、作業性をかなり良くすることができる。
【0029】
更に、開口部をバンパ補強材側に接合することで、衝突時の変形荷重を高くすることが可能となり、これによるエネルギ吸収性能向上効果も期待できる。すなわち、開口部をバンパ補強材にした場合、バンパ補強材とステイとの車体幅方向内側の取り付け位置はサイドメンバ側の取り付け位置に比べて、より車体内側になる。つまり、バンパ補強材中央付近への加重入力に対して、より近い位置をステイによって支持することが可能となる。このことにより、バンパ補強材の変形荷重が高くなり、衝突エネルギ吸収ストロークを短く、エネルギ吸収性能を向上させる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。図1は本発明に係るバンパステイの取り付け構造の一実施態様を示す斜視図、図2は図1のバンパステイ取り付け後の構造を示す平面図である。図3は本発明に係るバンパステイの取り付け構造の他の実施態様を示す斜視図、図4は図3のバンパステイ取り付け後の構造を示す平面図である。
【0031】
(バンパステイの取り付け構造)
図1〜4においては、自動車のフロント側のバンパ装置内において、バンパステイ1を、バンパ補強材10とサイドメンバ20との間に配置し、取り付けた態様を示している。勿論、図1〜4の態様は、自動車のリア側のバンパ装置にも適用できる。
【0032】
なお、図1〜4においては、図の上下方向が自動車車体の前後方向、図の左右方向が自動車車体の幅方向である。また、図1〜4においては、バンパステイの取り付け構造の右側部分のみを示している。即ち、この右側部分のバンパステイの取り付け構造と左右対称の形で、左側部分にも、同じバンパステイの取り付け構造が設けられている。
【0033】
(バンパ補強材)
ここで、これら図1〜4に示すバンパ補強材10の態様は、長手方向(車体方向、図の左右方向)に亙って直線的ではない。即ち、直線的な中央部10aの両端に車体側へ曲げられた、直線的または曲線的な湾曲部 (屈曲部) 10bを有するか、全体が車体側へ湾曲しているバンパ補強材 (湾曲型バンパ補強材) の後面壁12に対して、ステイを取り付ける態様を示す。また、図1〜4に示すバンパ補強材10は、前面壁(車体前面側の壁)11と、後面壁(車体後面側の壁)12の他に、これらをつないで車体長手方向に延在するウエブ18、19と、中リブ17とを有する、横方向断面が日型の中空構造ものを示している。
【0034】
本発明では、バンパ補強材10の態様は、図1〜4に示すバンパ補強材に限定されるものではなく、この他、口型、田型の中空構造や、あるいは開断面構造など、公知の断面形状のものが適宜使用できる。また、材質も、汎用されている公知の鋼製あるいはアルミニウム合金製のものが適宜使用できる。ただ、車体の軽量化や衝突エネルギの吸収性からすると、アルミニウム合金製のバンパ補強材が好ましい。
【0035】
(ステイの接合方法)
図1、3を用いてステイ1の取り付け方の詳細を説明する。なお、この取り付け方は、前記した、図示しないバンパ補強材10の左側部分のバンパステイの取り付け型でも同じである。図1、3に示すように、バンパ補強材10の湾曲部10bにおける後面壁12には、前面壁11に設けられた比較的大きな、接合作業用穴(貫通穴)13に対応して、比較的大きな接合作業用穴(貫通穴)14が設けられている。これらの接合作業用穴13、14を介して、バンパ補強材10の前面壁11側(作業穴14)からの、図1、3に矢印で各々示す、各接合作業によって、ステイ1のカップ底部2側がサイドメンバ先端部21側に接合されるとともに、ステイ1のカップフランジ4を介して、カップ開口部3側がバンパ補強材10の後面壁12側に接合される。
【0036】
(サイドメンバとの接合)
一方、ステイ1側には、各ステイ例とも共通して、カップ底部2にボルト穴(貫通穴)6、6が設けられている。バンパ補強材10の前面壁11側からの、接合作業用穴13と後面壁12の接合作業用穴14とを通じた、矢印で示す各接合作業によって、このボルト穴6、6と、サイドメンバ20先端部21側に設けたボルト穴22、22とを各々係合させる。次いで、これらボルト穴6、22同士に、ボルト23を各々貫通させ、図2、4に接合後を示すように、ステイ1のカップ底部2とサイドメンバ先端部21とをボルト接合する。
【0037】
(バンパ補強材との接合)
また、ステイ1のフランジ4には、選択的に、ボルト穴(貫通穴)7、7が設けられている。バンパ補強材10の前面壁11側からの、接合作業用穴13と後面壁12の接合作業用穴14とを通じた、矢印で示す各接合作業によって、このボルト穴7、7と、バンパ補強材の後面壁12に設けたボルト穴15、15とを各々係合させる。次いで、これらボルト穴7、15同士に、ボルト16を各々貫通させ、ステイ1のフランジ4とバンパ補強材の後面壁12とをボルト接合し、図2、4に接合後を示すように、カップ開口部3側がバンパ補強材10の後面壁12側に接合される。
【0038】
なお、ステイ1のフランジ4とバンパ補強材10の後面壁12との接合では、ボルト接合(フランジ4のボルト穴7、7)が必須ではなく、このボルト接合に替えて、あるいはこのボルト接合に加えて、ステイ1のフランジ4とバンパ補強材10の後面壁12とを溶接接合しても良い。このように、本発明ステイ1では、カップ開口部3側がバンパ補強材10の背面壁12側と接合される。このため、前記特許文献3に示されるような、カップ底部がバンパ補強材と接合される構造に比べて、より車体内側の位置で、ステイ1とバンパ補強材10を接合することが可能となる。このため、車体衝突時に荷重が入力されやすい、バンパ補強材10の中央近傍をより近い位置で支持し、衝突時の平均荷重を大きくすることが可能となる。つまり、衝突エネルギの吸収ストロークを短くできるという大きな利点がある。
【0039】
(図5の態様)
これらの接合手段として、通常のボルトによる接合を示しているが、この他スタッドボルトなど、他の機械的な接合手段を用いる(置き換え、あるいは併用)ことも可能である。例えば、図5は、他の態様は全て図3と同じで、ステイ1とサイドメンバ20との取り付けボルトを、頂点部に車両牽引用フック31を設け、底部にサイドメンバ20との締結用ネジ32を設けたボルト構造に置き換えている点のみが相違する。この図5に示すような、車両牽引用フック31を設けたボルト構造に置き換えれば、ステイ1のボルト穴6aを介して、ボルト23を貫通させ、サイドメンバ先端部21(22a)への結合と、牽引フック31の取り付けとを同時に行うことが可能となり、取付の効率化も図れる。同時に、牽引フック31が、バンパ補強材10ではなく、より強度の高いサイドメンバ20に直接接合可能となることによる取付強度向上効果も得ることができる。なお、ステイ1の、この他のサイドメンバ先端部21との接合や、フランジ4とバンパ補強材10の後面壁12との接合は、図2の場合と同様である。
【0040】
このようにステイを配置することで、カップ底部2が衝突荷重に対する後面側(サイドメンバ側)、カップ開口部3側が衝突荷重に対する前面側(バンパ補強材側)となる。したがって、衝突荷重の負荷時に、カップ底部3とカップ開口部3とをつないで構成される筒状の縦壁5の外方への拡大変形や、カップ底部2の後面側への(凹み)変形などによる、ステイ(カップ)の全体変形により、衝突荷重を吸収することができる。
【0041】
(バンパステイ)
本発明に係るバンパステイについて以下に説明する。図1〜4において、ステイ1は、平板状のアルミニウム合金板(圧延板や押出板)をプレス成形、あるいは電磁成形して、略円錐台形状のカップに成形されたものである。これによって、ステイを、元板であるアルミニウム合金板の成形により製作でき、ステイ製作コストの低減や製作効率の向上などの利点が大きい。なお、平板状のアルミニウム合金板のステイ1への成形に際しては、電磁成形なども使用できるが、プレス成形が形状精度や簡便さの点で好ましい。
【0042】
(ステイカップ形状)
図1〜4のカップは、共通して、底壁である底部2と、この底部2の周縁部2aから立ち上がる縦壁5と、この縦壁5の周縁部によって形成された開口部3と、縦壁周縁部5aから外方に張出すとともに縦壁周縁部5aの周方向に亙って設けられたフランジ4とが一体に形成されて構成される。
【0043】
ステイ1は、フランジ4を介して、開口部3側が、バンパ補強材端部10bの、車体後方に向かって湾曲あるいは傾斜した後面壁12側に取り付けられる。このため、ステイ1の各カップ形状は、この後面壁12の形状に対応した、湾曲あるいは傾斜した形状を有する。より具体的には、車体幅方向に平行な底部2に対して、図1〜4では、車体幅方向内側(図の左側)の縦壁5が、車体幅方向外側(図の右側)の縦壁5よりも長く、縦壁5、開口部3、フランジ4とが、順次、車体幅方向外側(図の右側)に向けて傾斜した形状を有する。
【0044】
これに対し、中央部や端部も含めて真っ直ぐな、直線的なバンパ補強材 (直線型バンパ補強材) に対して取り付けるためには、ステイ1のフランジ4乃至開口部3の面を、バンパ補強材端部10bの後面壁12面と平行(略水平)にする。言い換えると、車体幅方向に平行な底部2と同様に、縦壁5、開口部3、フランジ4とを車体幅方向に平行とする。
【0045】
一方、ステイ1の底部2も、サイドメンバ20の先端部21側に取り付けられるために、このサイドメンバ20の先端部21の形状に対応した形状を有する。。より具体的には、車体幅方向に平行なサイドメンバ20の先端部21に対して、車体幅方向に平行な形状を有する。このように、ステイ1における底部2、縦壁5、開口部3、フランジ4の面の各形状は、接合されるバンパ補強材後面壁12側や、サイドメンバ先端部21の形状に応じて、適宜選択される。
【0046】
(衝突荷重吸収形状)
図1〜4のカップは、カップの筒状の縦壁5が、底部周縁部2aから外方に拡がるように斜めに立ち上がっている。この結果、カップは、底部2の幅(径)が、開口部3の幅(径)よりも狭幅(小径)となって、円筒状の縦壁5を図の上方(フロントバンパでは車体前面側)に向かって拡がる、円錐台形状乃至末広がり形状となっている。
【0047】
衝突時のエネルギ吸収効率を高めるためには、衝突時の「最大荷重」を低く、「平均荷重」を上げることが望まれる。この点、カップ(ステイ)を、このような円錐台形状乃至末広がり形状とすることによって、プレス成形における破断を防止するとともに、底部2の幅(径)と開口部3の幅(径)とが略同じ場合に比して、円錐台形状の傾斜部が初期不整の役割を果たし、衝突荷重負荷時の初期ピークを下げる効果が得られる。これにより、最大荷重を低く抑えることで、ステイより後方の部品の破損を抑制するとともに、円筒状の縦壁5の外方への拡大変形(末広がり変形)や、狭幅の底部の後面側への変形などによる、ステイの全体変形により、ステイ全体が変形荷重を受け持つ。このため、平均荷重も増加し、より多くの衝突荷重を吸収することができる。
【0048】
ここで、衝突荷重のエネルギ吸収効果を向上させるためには、ある程度の縦壁5の成形高さ(カップの高さ、ステイの車体長手方向の長さ)を有するとともに、カップ底部2の周縁部2aから縦壁5が立ち上がるコーナ部分に、ある程度のコーナR(肩R)をもたせることが望ましい。これにより、最大荷重を低く抑えることで、ステイより後方の部品の破損を抑制するとともに、衝突荷重負荷時の周縁部2aの破損を抑制して、ステイの全体変形により、より多くの衝突荷重を吸収することができる。また、上記素材板からのカップ成形も容易となる。
【0049】
勿論、これらの衝突荷重のエネルギ吸収効果を向上させるために、成形ステイ全体形状が設計される。底部2の幅(径)、底部の周縁部2aに亙っての縦壁5とのコ−ナRの大きさ、開口部3の幅(径)、縦壁5(ステイ)の高さ、フランジ幅などを、自動車の車種や要求衝突荷重吸収性能と、アルミニウム合金板の板厚、強度などの条件に応じて、各々設計する。
【0050】
このような一体型のカップ形状によって、ステイにおけるカップの全体変形により、衝突荷重を吸収できる。また、別々のカップとフランジとを溶接などにより接合する問題や、両者の接合強度が弱くなり、そこから破断して、衝突荷重のエネルギ吸収効果が低下する問題もない。
【0051】
(ステイボルト穴)
図1〜4のステイ1では、共通して、カップ底部2に設けられた貫通穴6、6はボルト穴であり、これによって、ステイ1は、カップ底部2側がサイドメンバ20先端部21側のボルト穴22、22と、各々にボルト23、23にて各々接合される。
【0052】
また、図1〜4のステイ1では、共通して、フランジ4に設けられた貫通穴7、7はボルト穴であり、これによって、ステイ1は、フランジ4側がバンパ補強材10の後面壁12側のボルト穴15、15と、各々にボルト16、16にて各々接合される。
【0053】
(底部形状)
カップ底部2(あるいは開口部3)の平面形状は、必ずしも円形状である必要はなく、また、カップの形状(横断面形状)も必ずしも円筒状である必要はない。これらの平面形状は、プレス成形できるものであれば、接合されるサイドメンバ先端部21や、カップ底部に作成されるボルト穴(締結ボルト)の位置に応じて、適宜選択される。例えば、底部2の平面形状を、楕円形状あるいは方形、多角などの角形状、あるいは、これらの形状に近いような略円形の形状として良い。したがって、縦壁5も、この底部2の平面形状に応じた筒状形状となる。このように、底部2の平面形状や周方向の形状などの面形状は、前記した通り、サイドメンバに接合可能なように、サイドメンバ先端部21の形状に対応させる。
【0054】
(略円形カップ形状)
ここで、図1、2のステイ1のカップ形状では、カップ底部2は略円形で、この底部2の略円形周縁部2aから立ち上がる縦壁5も略円筒状、この縦壁1aの周縁部によって形成された開口部3も略円形、縦壁周縁部5aから外方に張出すとともに縦壁周縁部5aの周方向に亙って設けられたフランジ4も略円形となる。このような単純形状のステイ1は素材板からの成形も容易である。
【0055】
(方形カップ形状)
一方、図3、4に示すステイ1は、カップ底部2のうち、車体幅方向の内側部分(図の左側)は略半円状形状であり、車体幅方向の外側部分(図の右側)は略方形(角形)形状である。この図3、4に示すカップ形状のステイ1の方が、図1、2のカップ形状のステイ1よりも、カップ底部2の面積を大きくすることができる。このため、ステイ1をサイドメンバ20先端部21側に接合する際の、カップ底部2に設けるボルト穴6、6の数を多く設けることが可能であり、接合強度を増すことができる。因みに、図1、2のカップ形状においてカップ径をφ100mmと仮定した場合、カップ底部2に設けるボルト穴6、6は2個が限界である。これに対して、図3、4のカップ形状では、カップ底部2の面積を図1、2の場合よりも大きくでき、カップ底部2のボルト穴6、6は3個以上設けることができる。サイドメンバ20先端部21との接合強度を確保するためには、カップ底部2には車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて合計3個以上のボルト穴を設けることが好ましい。このため、この図3、4のように、カップ底部2は、合計3個以上のボルト穴を、車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて延在させるだけの面積を有していることが好ましい。
【0056】
更に、この図3、4に示すステイ1は、車体幅方向の内側部分(図の左側)方向に拡がる縦壁5の部分の長さを長くして、より車体幅方向の内側部分(図の左側)方向に拡がるようにしている。これによって、バンパ補強材10のより中央部10側(車体幅方向の内側部分)に、後面側から支持するステイ1が存在することとなり、よりバンパ補強材の内側(中央部側)を支持することが可能となる。これによって、衝突時の平均荷重を向上させることが可能であり、バンパ補強材10の変形荷重が高くなり、衝突エネルギ吸収ストロークを短くできる利点がある。同時に、ステイ1のプレス成形を想定した場合、ステイ1の縦壁5の角度も緩やかになり、ステイ1の成形が容易になるという利点も得られる。
【0057】
(底部補強)
本発明では、板から成形するカップ底部2部分の板厚(厚み)は、軽量化の観点からも、そう厚くなく、後述する通り、4mm以下程度である。ただ、このように厚みが薄いと、衝突荷重の大きさにもよるが、条件によっては、衝突荷重負荷時にボルト穴の破断が生じる可能性がある。このようなボルト穴の破断を防止するためには、図9に示すように、カップ底部2を補強することが好ましい。
【0058】
図10では、カップ底部2に、カップ底部2の形状や補強必要部分の形状に対応した、補強板乃至補強材30を内側(開口部3側)から積層して、カップ底部2部分の、特に、ボルト穴設置部分の、板厚(厚み)を厚くしている。これによって、カップ底部2部分の、特に、ボルト穴設置部分の強度、剛性を向上させ、衝突荷重負荷時に、ボルト穴の破断が生じるのを防止している。
【0059】
ここで、補強板乃至補強材30の材質は、その板厚と同様に、衝突荷重負荷量に応じたカップ底部2の必要強度特性から、ボルト穴の破断を防止できるだけ強度特性を向上できる材質、板厚が選択される。この点、補強板乃至補強材は、ステイ1と同じあるいは同種のアルミニウム合金材が好ましく、重量増加抑制の観点からは、カップ底部2の板厚(厚み)以上に厚くする必要はない。なお、補強板乃至補強材の材質は、樹脂、鋼材などのステイに対する異材でも良いが、その板厚の選択と同様に、あまり重量を増加させないことが好ましい。また、補強板乃至補強材30の断面形状は、平坦状でなくても、凹凸や段差を有しても良い。更に、補強板乃至補強材30は、カップ底部2に単に積層してもよく、接着剤などで接合しても良い。
【0060】
(フランジ形状)
フランジ4の周囲形状は、前記した通り、バンパ補強材後面壁12の接合面形状や、接合用ボルト穴などの設計に応じて、成形可能な形状が適宜選択できる。また、開口部3の周縁部3aの全周乃至全部に亙って設けずとも、必要周縁部部位に部分的に設けることも可能である。このような、フランジ4や、底部2などの略円錐台カップ形状を、自由に作り分けられる点が、成形ステイの利点でもある。
【0061】
本発明に係る成形ステイによれば、これらステイ接合用の貫通孔を十分設けられるだけの余地のある、底部2の幅(径)やフランジ4の幅(径)をとれる利点がある。更に、これら接合用の貫通穴は、例えば、プレス成形により、ステイ縦壁部分を形成した後、プレスせん断加工により設けることも可能である。この場合には、不必要なフランジ部分を同時に切除することでさらに軽量化できるという利点もある。
【0062】
(フランジの曲げ剛性向上)
図1〜4で示したフランジ4は平坦な形状をしているが、このフランジ4(ステイ)の、衝突荷重負荷に対する曲げ剛性を向上させるために、カップにおけるフランジ外縁部を車体前後方向に略90度折り曲げたフランジ片を設けることが好ましい。これによって、フランジ4(ステイ)の剛性を高め、曲げ剛性を向上させることができ、結果として、ステイ1の衝突荷重のエネルギ吸収性能をより向上させることができる。
【0063】
図6〜9はこのようなフランジの曲げ剛性を向上させた態様を示している。図6、7はバンパステイの態様を斜視図で示し、図8、9は、各々図6、7のバンパステイをバンパ補強材側に取り付けた態様を側面図で示している。
【0064】
図6は、フランジ4の外縁部の内、車体上下方向側(図の上下方向側)の部分を、ともに車体後方側(図6の下方側、図8の右方側)に向けて略90度折り曲げた、二つのフランジ片8、8(折り曲げ部)を設けている。図7は、フランジ4の外縁部の内、車体上下方向側(図の上下方向側)の部分を、図6とは逆に、ともに車体前面側(図6の上方側、図9の左方側)に向けて略90度折り曲げた、二つのフランジ片8、8(折り曲げ部)を設けている。図6、7のバンパステイの、その他の形状は図1のバンパステイと基本的に同じである。
【0065】
バンパ補強材側へ取り付けられたフランジ4には、衝突時に大きな曲げモーメントが加わる。図1〜4のように、フランジ4が平板状である場合、衝突荷重の大きさによっては、この曲げモーメントに対するフランジ4の強度、剛性が不足し、変形しやすくなる。このフランジ4の変形が生じた場合、本発明のステイ(カップ)の全体変形によらず、フランジ4の変形により、バンパ補強材が回転変形し、衝突時の変形量が大きくなる可能性が生じる。
【0066】
このような場合には、フランジ4の変形を防止するために、フランジ4の剛性を高めることが有効である。この手段として、フランジ4の板厚をもっと厚くする手段があるが、ステイ1の軽量化や素材板からのステイの成形性が犠牲になるために、有効な手段とは言い難い。この点、フランジ外縁部を車体前後方向に折り曲げたフランジ片を設ける手段は、ステイ1の軽量化や素材板からのステイの成形性が犠牲にならない点で有効な手段である。
【0067】
フランジ片8、8の、折り曲げ部位、個数、幅、長さ、角度などは、フランジの曲げ剛性の必要向上量から適宜選択される。フランジ片8、8の折り曲げ方向や折り曲げ角度をともに同じとする必要はなく、例えば、折り曲げ方向を互いに逆とするなど、互いに形状や条件を変えても良い。
【0068】
図8は図6のバンパステイを、図9は図7のバンパステイを、フランジ4を介して、各々中リブ17を有する断面日型のバンパ補強材10の後面壁12に取り付けた態様を示している。ここで、図9の場合、ともに車体前面側(図7の上方側、図9の左方側)に向けて略90度折り曲げた二つのフランジ片8、8によって、バンパ補強材10を横抱きにしている。このような横抱き型の場合には、二つのフランジ片8、8が重なる、バンパ補強材10のウエブ18、19部分が、厚肉となって、衝突荷重のエネルギ吸収効果をより向上できる。また、逆に、二つのフランジ片8、8が重なる、バンパ補強材10のウエブ18、19部分を薄肉化して、軽量化することもできる。また、車体衝突の際、バンパ補強材は、主に、車体高さ方向を軸方向とする回転変形が生じやすいことから、この折り曲げ部はこの変形に抗するように設けることが望ましく、図9のフランジ片8、8のように、バンパ補強材10の少なくとも車体上下方向端部に設けていることが望ましい。
【0069】
(縦壁の剛性向上)
縦壁5の厚み(板厚)や重量を増加させずに、縦壁5の剛性を向上させる手段として、張出リブ9を縦壁5に設けても良い。これによって、同じ厚みであれば、図1〜4の平滑、平坦な縦壁5に比して、ステイ1の衝突荷重のエネルギ吸収性能をより向上させることができる。
【0070】
図11に斜視図で示すバンパステイ1は、縦壁5の高さ方向に延在するとともに、開口部3の内側に向かって凸状に張り出した、張出リブ9を、筒状縦壁5の周方向に亙って、間隔を開けて、複数個設けている。これらの張出リブ9は、元板であるアルミニウム合金板の成形により、ステイ(カップ縦壁5)を成形する際に、材料流入による座屈しわの形成効果を利用して同時に、一体に設けても良いし、プレス深絞り成形の後、縦壁部に略垂直方向からのプレス成形により設けてもよい。
【0071】
図11のバンパステイ1は、衝突時に圧縮荷重が加わる車体内側のカップ(縦壁)5に、局所的に曲げ変形を防止する張出リブ9リブが設け、局所的に径(幅)が大きくなっている。これにより、この張出リブ9の無い場合に比べて、縦壁部5の曲げ変形に対する抵抗力を増加させ、ステイの曲げ剛性が大きくなり、縦壁部5の曲げ変形に伴う極端な荷重低下や、変形開始加重の低下を防止することができるという利点がある。また、元板であるアルミニウム合金板の成形によりステイを製作する際に、この張出リブ9を設定したことで、成形における絞り抵抗力が小さくなり、アルミニウム合金平板を成形して上記カップ形状とする際の、底部2周縁部2aにおける成形割れを防止できる利点もある。
【0072】
このような効果を得るために、張出リブ9は、筒状縦壁5の周方向に亙って、最低1個以上設けることが好ましい。この張出リブ9設け方は、衝突荷重がより負荷される、縦壁5の車体幅方向の内側方向(図の左側)部分に偏って設けても良い。あるいは、底部2を等分割する形で縦壁5の周方向に亙って均等に分散して設けても良い。
【0073】
(ステイの厚みと強度特性)
ステイ1の厚み(素材板の板厚)は、軽量化のためには4mm以下とすることが好ましい。板厚が4mmを超えた場合には、鋼製ステイに代わっての軽量化効果が薄くなる。また、素材板のステイへの成形も難しくなる。そして、このような薄肉条件下で、ステイ1の高エネルギ吸収量を保障するためには、ステイ1(素材アルミニウム合金板)の0.2%耐力が190MPa以上の高強度であることが好ましい。例えば、素材板のアルミニウム合金が5182−O材であっても、大きな性能低下はないことから、素材耐力にそれほどこだわる必要はないが、高い方が望ましいのは確かである。また、バンパ材であることから、T6、T7処理の適用も可能であり、素材板が6000系アルミニウム合金であっても、0.2%耐力を270MPa程度まで増加させることも可能である。
【0074】
バンパ補強材側の取り付け部である上記フランジ4の接合部7、15には、衝突時に大きな曲げモーメントが加わる場合が多い。これに対して、上記カップ底部2(サイドメンバ側の接合部)は、カップ底部2の周縁部に亙って筒状の縦壁5で外周を囲まれていることから、ボルト接合部6、22(締結部)への荷重およびモーメント入力に対して変形が生じにくい。
【0075】
一方のサイドメンバ20側の取付部であるカップ底部2のボルト接合部6、22には、車体前後方向への全面圧縮あるいは全面引張(オフセット衝突における衝突面の逆側)力を受けることが多い。しかし、このサイドメンバ20側の接合部に加わる変形力は、前記した通り、締結ボルト部近傍の強度に大きく依存する。 3点程度のボルト接合を想定し、オフセット衝突におけるこの部位の破断を防止する必要があるとすれば、前記した6000系アルミニウム合金ステイの0.2%耐力:190MPa程度を前提とすると、カップ底部2の厚みを2mm以上とすることが望ましい。
【0076】
このような条件と、ステイへのプレス成形性とを満たすアルミニウム合金としては、特に、Al−Mg−Si系の、JIS乃至AA規格で言う、6000系熱処理型アルミニウム合金とすることが好ましい。なお、Al−Mg−Zn系の7000系熱処理型アルミニウム合金も使用できるが、6000系よりは入手が難しい。また、特にある程度ステイの長さを確保するためには、プレス成形性の良い(伸びが高い)O、T1、T4状態でプレス成形し、成形時の破断を防止することが望ましい。また、プレス成形を施した部品に熱処理を施すことで、製品としての強度を確保することが望ましい。このためには、前記6000系の熱処理型アルミニウム合金を用いることが望ましい。ここで、加える熱処理は、焼付け塗装処理あるいはT5、T6処理など、必要となる素材強度に応じて便宜選択される。なお、バンパ補強材とステイとの接合に溶接接合を行うとすれば、6000系合金に比べて溶接性に優れるAl−Mg系の5000系合金の適用が望ましい。この場合、プレス成形後の熱処理による強度向上などの効果は得られないが、その分厚肉にすることで、同等程度の強度部品を得ることは可能である。
【0077】
通常の自動車車体用のステイであれば、板厚が4mm以下で、0.2%耐力が190MPa以上であることを前提に、底部2の幅(径)は50〜160mm程度、底部2の周縁部2aに亙ってのコ−ナ部の肩Rは5〜30mm程度、開口部周縁部3aと縦壁5とをつなぐコ−ナ部の肩Rは5〜30mm程度、縦壁5(ステイ)の高さは10〜100mm程度、フランジ4の大きさは、ボルトなど機械的な接合が可能な範囲から選択される。
【0078】
(ステイの成形)
ステイへの素材アルミニウム合金板からの成形は、通常のプレス成形機および条件範囲を用いて可能である。即ち、アルミニウム合金素材板の上方側に、雌型金型と板押さえとを設け、下方側に雄型金型(ポンチ)を設ける。そして、雌型金型と板押さえを相対的に下降させて、アルミニウム合金平板を雄型金型(ポンチ)に押圧して、ステイのカップ形状を一体に成形する。前記した補強リブ9を設ける場合には、雌型金型のカップ形状における筒状の縦壁5と対応する縦壁部に所望形状の縦溝を設ければ良い。
【実施例】
【0079】
前記図1、3(接合後は図2、4)に示したアルミニウム合金ステイ1の取り付け構造(接合)の衝突荷重エネルギ吸収性を、FEM解析によって変形荷重−背面変位関係を求め、評価した。
【0080】
衝突荷重エネルギ吸収性フラットバリヤ衝突を模擬した衝突解析(バンパ補強材中央部に前面側から荷重付加)を行い、荷重エネルギ吸収性能を調査した。この際、解析の前提として、FEM解析には、汎用の動的陽解法ソフトLS−DYNAを用いた。なお、解析にあたり、車重は1.1tonf、衝突速度は8km/hとした。また、図1、3のステイ1とも、共通して、カップ底部2側をサイドメンバに替わる剛体側に設け、カップフランジ4(カップ開口部3側)をバンパ補強材の後面壁12側に設けた態様とした。
【0081】
対象としたステイ形状は、図1、3のステイ1とも、共通して厚み3mm、図1の重量は180g/個とした。図3のステイ1の重量は220g/個とした。図1のステイにおける底部2はΦ90mmの円形状とした。また、図3のステイにおける底部2は、車体幅方向の内側部分(図の左側)の略半円状形状部分はΦ90mmの半円形状とし、車体幅方向右側は、コーナR15mmの、一辺が90mmの略方形(角形)の半形状とした。
【0082】
縦壁5の高さは、図1、3のステイ1とも、共通して、カップ部縦壁の車体幅方向の内側部分(図の左側)は最も長い(高い)部分で47mm、カップ底部のフランジ面に対する角度は13DEG.として、形成される開口部3やフランジ4をバンパ補強材傾斜後面に合わせて傾斜させた平坦形状とした。縦壁部分と底面およびフランジ面をつなぐ肩Rは8mmとした。フランジ4は、図1、3のステイ1とも、共通して、幅が略30mmとした。素材板は、共通して、アルミ6000系調質材であり、T4調質材で成形した後、焼付け塗装処理を行っている。これにより、素材0.2%耐力は190MPaとした。
【0083】
バンパ補強材10の形状は、断面日型状の中空押出形材で、後面壁の高さ(長さ)125mm、幅58mm、幅方向長さ1300mm(中央の直線部10a長さ450mm、曲げ角度13DEG.)とした。アルミニウム合金は0.2%耐力が310MPaの7000系アルミニウム合金とした。
【0084】
バンパ補強材10の前面壁11側の接合作業用穴13と後面壁12の接合作業用穴14は、共通してφ30mmの円形とした。また、ステイ1はバンパ補強材10の後面壁12の両端から内側に60mm入った部分にステイ中央部がくるように設けた。
【0085】
図1、3における全てのボルト穴6、7、15、22の穴径は共通してΦ16mmとし、M8ボルトにより接合している。
【0086】
比較例として、縦圧壊型の円筒ステイの取り付け構造とした。この比較例は、円筒状ステイの両端部に各々取り付けフランジを接合した形状とした。バンパ背面側との取り付けフランジを板厚4mm、耐力90MPaの5000系O材、サイドメンバ側の取り付けフランジを板厚3mm、耐力90MPaの5000系O材、円筒ステイは板厚2mmで、0.2%耐力が190MPaの6000系アルミニウム合金とした。この比較例ステイの重量は約330g/個である。比較例ステイの接合態様は、取り付けフランジを4点のボルト止めで、サイドメンバおよびバンパ補強材に各々接合しているものとした。ボルト穴とボルトとの条件は図1、3における発明例と同じとした。
【0087】
表1に解析結果を示す。この表1から明らかな通り、本発明ステイ取り付け構造は、約200gと非常に軽量であっても、比較材である一般的な縦圧壊ステイに比べて変形荷重が同等で、かつ衝突後の最大変形量が小さくできていることがわかる。これにより、衝突初期のエネルギ吸収量が増加し、衝突時の変形量も小さくでき、かつ大幅な軽量化にもなっていることがわかる。
【0088】
本発明ステイ取り付け構造は、よりステイの(素材)強度を高くすれば、より厚みを薄くできて軽量化を図れるか、同じ板厚では、更にエネルギ吸収量を大きくすることも可能である。
【0089】
また、比較例の場合、ステイに開口部3が無いので、バンパ補強材10の前面壁11側の接合作業用穴13と後面壁12の接合作業用穴14とを設けても、本発明ステイ取り付け構造のように、前記バンパ補強材の前面壁側からの接合作業によって、特に、ステイをサイドメンバ先端部側に接合できないことが明らかである。
【0090】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明は、より薄肉、軽量化した上で、衝突荷重の吸収が可能な、アルミニウム合金板を成形して製造したカップ状ステイを、バンパ補強材の前面壁側(前面側)からの作業によって、サイドメンバ先端部側とバンパ補強材の後面壁側とに機械的に接合できる、バンパステイの取り付け構造およびバンパステイを提供することができる。したがって、取り付け作業性がよく、軽量化要求と衝突時のエネルギ吸収性などの要求のある、自動車のバンパステイ乃至バンパ装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明バンパステイの取り付け構造の一実施態様を示す斜視図である。
【図2】図1の取り付け後の態様を示す平面図である。
【図3】本発明バンパステイの取り付け構造の他の実施態様を示す斜視図である。
【図4】図2の取り付け後の態様を示す平面図である。
【図5】本発明バンパステイの取り付け構造の他の実施態様を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るバンパステイの別の実施態様を示す斜視図である。
【図7】本発明に係るバンパステイの別の実施態様を示す斜視図である。
【図8】図5のバンパステイの取り付け構造を示す側面図である。
【図9】図6のバンパステイの取り付け構造を示す側面図である。
【図10】本発明に係るバンパステイの別の実施態様を示す斜視図である。
【図11】本発明に係るバンパステイの別の実施態様を示す斜視図である。
【図12】従来のバンパステイの取り付け構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
1:ステイ、2:ステイ底部、3:ステイ開口部、4:フランジ、5:縦壁、
6、7:ボルト穴、8:フランジ片、9:縦リブ、10:バンパ補強材、
11:前面壁、12:後面壁、13、14:接合作業用穴、15:ボルト穴、
16:ボルト、20:サイドメンバ、21サイドメンバ先端部、
22:ボルト穴、23:ボルト、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車車体のバンパ補強材とサイドメンバとの間に配置されて、前記バンパ補強材の後面壁側と前記サイドメンバ先端部側とに各々接合されるバンパステイの取り付け構造であって、バンパステイは、アルミニウム合金板を成形したカップ形状からなり、このカップは、底部と、この底部周縁部から立ち上がる筒状の縦壁と、この縦壁周縁部によって形成された筒状の開口部と、前記縦壁周縁部から外方に張出すとともに縦壁周縁部に亙って設けられたフランジとが一体に形成された全体形状からなり、前記カップの底部にボルト穴を設け、前記バンパ補強材の前面壁側と後面壁側とに各々設けた接合作業用開口穴と前記バンパステイのカップ開口部とを通じた、前記バンパ補強材の前面壁側からの各接合作業によって、前記カップ底部に設けたボルト穴を介して、前記カップ底部側がサイドメンバ先端部側にボルトにて接合されるとともに、前記カップのフランジを介して、前記カップ開口部側がバンパ補強材の後面壁側に接合されることを特徴とするバンパステイの取り付け構造。
【請求項2】
前記バンパステイにおけるカップの筒状の縦壁が、底部周縁部から外方に拡がるように斜めに立ち上がっており、前記カップ底部は合計3個以上のボルト穴を車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて延在させる面積を有している請求項1に記載のバンパステイの取り付け構造。
【請求項3】
前記バンパステイが、前記カップにおけるフランジ外縁部を車体前後方向に折り曲げたフランジ片を設けている請求項1または2に記載のバンパステイの取り付け構造。
【請求項4】
請求項1のバンパステイの取り付け構造に用いられるバンパステイであって、アルミニウム合金板を成形したカップ形状からなり、このカップは、底部と、この底部周縁部から立ち上がる筒状の縦壁と、この縦壁周縁部によって形成された筒状の開口部と、前記縦壁周縁部から外方に張出すとともに縦壁周縁部に亙って設けられたフランジとが一体に形成された全体形状からなり、前記カップの底部にボルト穴を設けたことを特徴とするバンパステイ。
【請求項5】
前記バンパステイにおけるカップの筒状の縦壁が、底部周縁部から外方に拡がるように斜めに立ち上がっており、前記カップ底部は合計3個以上のボルト穴を車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて延在させる面積を有している請求項4に記載のバンパステイ。
【請求項6】
前記バンパステイが、前記カップにおけるフランジ外縁部を車体前後方向に折り曲げたフランジ片を設けている請求項4または5に記載のバンパステイ。
【請求項1】
自動車車体のバンパ補強材とサイドメンバとの間に配置されて、前記バンパ補強材の後面壁側と前記サイドメンバ先端部側とに各々接合されるバンパステイの取り付け構造であって、バンパステイは、アルミニウム合金板を成形したカップ形状からなり、このカップは、底部と、この底部周縁部から立ち上がる筒状の縦壁と、この縦壁周縁部によって形成された筒状の開口部と、前記縦壁周縁部から外方に張出すとともに縦壁周縁部に亙って設けられたフランジとが一体に形成された全体形状からなり、前記カップの底部にボルト穴を設け、前記バンパ補強材の前面壁側と後面壁側とに各々設けた接合作業用開口穴と前記バンパステイのカップ開口部とを通じた、前記バンパ補強材の前面壁側からの各接合作業によって、前記カップ底部に設けたボルト穴を介して、前記カップ底部側がサイドメンバ先端部側にボルトにて接合されるとともに、前記カップのフランジを介して、前記カップ開口部側がバンパ補強材の後面壁側に接合されることを特徴とするバンパステイの取り付け構造。
【請求項2】
前記バンパステイにおけるカップの筒状の縦壁が、底部周縁部から外方に拡がるように斜めに立ち上がっており、前記カップ底部は合計3個以上のボルト穴を車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて延在させる面積を有している請求項1に記載のバンパステイの取り付け構造。
【請求項3】
前記バンパステイが、前記カップにおけるフランジ外縁部を車体前後方向に折り曲げたフランジ片を設けている請求項1または2に記載のバンパステイの取り付け構造。
【請求項4】
請求項1のバンパステイの取り付け構造に用いられるバンパステイであって、アルミニウム合金板を成形したカップ形状からなり、このカップは、底部と、この底部周縁部から立ち上がる筒状の縦壁と、この縦壁周縁部によって形成された筒状の開口部と、前記縦壁周縁部から外方に張出すとともに縦壁周縁部に亙って設けられたフランジとが一体に形成された全体形状からなり、前記カップの底部にボルト穴を設けたことを特徴とするバンパステイ。
【請求項5】
前記バンパステイにおけるカップの筒状の縦壁が、底部周縁部から外方に拡がるように斜めに立ち上がっており、前記カップ底部は合計3個以上のボルト穴を車体幅方向と車体上下方向とに間隔をおいて延在させる面積を有している請求項4に記載のバンパステイ。
【請求項6】
前記バンパステイが、前記カップにおけるフランジ外縁部を車体前後方向に折り曲げたフランジ片を設けている請求項4または5に記載のバンパステイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−195224(P2008−195224A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32343(P2007−32343)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
[ Back to top ]