説明

バンパビーム構造

【課題】サイドフレームに固定したボルトを用いてバンパビームの位置を決めることができ、左右のサイドフレームの外側へ曲がる変形を防止するバンパビーム構造を提供する。
【解決手段】バンパビーム構造は、左右のフロントサイドフレームにバンパビーム11を締結している。バンパビーム11は、右締結部28に位置決め孔31を有する。位置決め孔31は、締結孔32と、締結孔32に連ねて、必要に応じて規制を解除するよう開けた位置規制部35と、位置規制部35に連ねて中央側へ向けて長く開けた逃がし孔36と、からなる。位置規制部35は、締結孔32と逃がし孔36とで形成された対向する角部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の左右のサイドフレームに交差するように車幅方向に延びるバンパビームをボルトで締結したバンパビーム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バンパビーム構造には、バンパビームをサイドフレームにボルトで締結したものがある。
このバンパビーム構造は、バンパビームの位置を決めるために、バンパビームに位置決め孔を開けている。この位置決め孔をサイドフレームの前端から突出しているボルトに嵌めて締結している。
一方、ボルトは、ボルトから加わる所定の荷重で変形するサイドフレームの取付けベース部の中心に立設されている。
このバンパビーム構造では正面衝突したとき、バンパビームの車幅方向の荷重を取付けベース部が変形や破断することによって吸収するので、左右のサイドフレームに車幅方向の荷重が伝わらない(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、ボルトを立設している取付けベース部の周囲を所定の半径の溝で切り離し、一部のみを橋部で接合しているので、強度や振動の心配がある。
また、サイドフレームに所定の半径の溝を切削加工する必要がある。
位置決め用のボルトを残りのボルトと同様に取付け、位置決め孔に嵌合しても左右のサイドフレームに車幅方向の荷重が伝わらないようにすることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−306095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、サイドフレームに固定したボルトを用いてバンパビームの位置を決めることができ、左右のサイドフレームの外側へ曲がる変形を防止し、バンパビームの孔開け作業が容易なバンパビーム構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両のバンパ装置のバンパビームを車体の左のサイドフレーム及び右のサイドフレームに締結しているバンパビーム構造において、バンパビームは、車両平面視、アーチ状で、左のサイドフレームに締結する左締結部、右のサイドフレームに締結する右締結部のうち少なくとも一方の締結部に位置決め孔を有し、位置決め孔は、締結孔と、締結孔のうちバンパビームの中央側に連ねて、必要に応じて規制を解除するよう開けた位置規制部と、位置規制部に連ねて中央側へ向けて開けた逃がし孔と、からなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明では、逃がし孔は、締結孔に通す部材の外径より狭い幅を一定に形成した細長い孔であり、位置規制部は、締結孔と細長い孔とで形成された対向する角部であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、逃がし孔は、締結孔に通す部材の外径より内径が大きい真円孔であり、位置規制部は、締結孔と真円孔とで形成された対向する角部であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明では、逃がし孔は、締結孔に通す部材の外径より狭い幅で鋸歯状に突起を連続させた長い孔であり、位置規制部は、締結孔と長い孔とで形成された対向する角部であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、位置決め孔を除いた締結孔にサイドフレームに組付けるときの誤差を吸収する誤差吸収孔を開けていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、位置決め孔を除いた締結孔に連ねて第2の逃がし孔を開けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、バンパビームは、アーチ状で、左のサイドフレームに締結する左締結部、右のサイドフレームに締結する右締結部のうち少なくとも一方の締結部に位置決め孔を有し、位置決め孔は、締結孔と、締結孔のうちバンパビームの中央側に連ねて、必要に応じて規制を解除するよう開けた位置規制部と、位置規制部に連ねて中央側へ向けて開けた逃がし孔と、からなるので、左・右のサイドフレームにバンパビームを取付けるときに、締結孔に通す部材を締結孔に連なる位置規制部が導き、バンパビームの位置を決めることができる。
【0013】
一方、バンパビームに正面衝突時の衝撃力が入力され、バンパビームがアーチ状から直線状に変形し始めたときに、バンパビームの締結部が滑るようにスライドし始める。
続けて、ボルトに位置規制部が干渉し、干渉した後、バンパビームの伸びる力(車幅方向の力)で位置規制部の規制が解除される。
その結果、位置規制部に連なる逃がし孔がボルトに向かって移動して、バンパビームの伸びる力を吸収するので、左のサイドフレーム及び右のサイドフレームは車両の外側へ開かない。
つまり、左のサイドフレーム及び右のサイドフレームの外側へ曲がる変形を防止することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、逃がし孔は、締結孔に通す部材の外径より狭い幅を一定に形成した細長い孔であり、位置規制部は、締結孔と細長い孔とで形成された対向する角部なので、逃がし孔を一定の幅で加工するだけでよく、逃がし孔及び位置規制部をほぼ同時に得ることができ、逃がし孔及び位置規制部の孔開け作業は容易である。
【0015】
請求項3に係る発明では、逃がし孔は、締結孔に通す部材の外径より内径が大きい真円孔であり、位置規制部は、締結孔と真円孔とで形成された対向する角部なので、位置規制部が解除された後、締結孔に通す部材(ボルト)と逃がし孔との接触による抵抗が小さく、バンパビームの伸び、言い換えるとバンパビームの左右端側の車幅方向の移動は容易になる。
【0016】
請求項4に係る発明では、逃がし孔は、締結孔に通す部材の外径より狭い幅で鋸歯状に突起を連続させた長い孔であり、位置規制部は、締結孔と長い孔とで形成された対向する角部なので、位置規制部が解除された後、締結孔に通す部材(ボルト)と鋸歯状の突起が接触し、突起によってバンパビームの伸びる力、言い換えるとバンパビームの左右端側の車幅方向の移動する力を吸収することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、位置決め孔を除いた締結孔にサイドフレームに組付けるときの誤差を吸収する誤差吸収孔を開けているので、サイドフレームにバンパビームを組付ける組付け作業は容易になる。
【0018】
請求項6に係る発明では、位置決め孔を除いた締結孔に連ねて第2の逃がし孔を開けているので、位置決め孔を除いた締結孔がボルトに向かって移動すると、逃がし孔にボルトが入り、ボルトに拘束されない。その結果、左右のサイドフレームは車両の外側へ開かない。
つまり、左のサイドフレーム及び右のサイドフレームの変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係るバンパビーム構造を設けた車体の斜視図である。
【図2】実施例1に係るバンパビーム構造の平面図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】実施例1に係るバンパビーム構造の正面詳細図であり、図4(a)バンパビーム、図4(b)は別の締結孔を示す図である。
【図5】実施例1に係るバンパビーム構造の分解図である。
【図6】実施例1に係るバンパビーム構造の位置決め孔の詳細図である。
【図7】実施例1に係るバンパビーム構造のバンパビームの伸びを吸収する機構を説明する図である。
【図8】実施例2の位置決め孔の詳細図である。
【図9】実施例3の位置決め孔の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、実施例1、実施例2、実施例3で詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
実施例1に係るバンパビーム構造は、図1に示すように、バンパビーム11を車体12のフロントボデー13に必要に応じて移動するように取付けている。
バンパビーム11は、正面衝突したときに、車幅方向に伸びてフロントボデー13を押す。以降で具体的に説明していく。
【0022】
車体12は、フロントボデー13を備え、フロントボデー13は、左右にサイドフレーム(フロントサイドフレーム)15、16を有している。
フロントサイドフレーム15、16はエンジンなどの装置を支持する。
フロントサイドフレーム15、16の前端18には連結部材22(図2参照)を介してバンパ装置21のバンパビーム11を取付けている。
【0023】
バンパ装置21は、フロントサイドフレーム15、16の前端18(詳しくは連結部材22)に取付けたバンパビーム11と、このバンパビーム11に支持されてバンパビーム11をカバーするバンパ表皮部材(図に示していない)と、を備える。
【0024】
次に、バンパビーム構造の主要構成を図1〜図6で説明する。図2は図面の上が車両の前である。
【0025】
バンパビーム構造は、車両25のバンパ装置21のバンパビーム11を車体12の左のサイドフレーム(フロントサイドフレーム)15及び右のサイドフレーム(フロントサイドフレーム)16に締結している。
【0026】
バンパビーム11は、車両25平面視(図2の視点)、アーチ状で、左のサイドフレーム15に締結する左締結部27、右のサイドフレーム16に締結する右締結部28のうち少なくとも一方の締結部、ここでは右締結部28に位置決め孔31を有する。
【0027】
位置決め孔31は、図6に示す通り、締結孔32と、締結孔32のうちバンパビーム11の中央(中央部33(図2参照))側の面34に連ねて、必要に応じて規制を解除するよう開けた位置規制部35と、位置規制部35に連ねて中央側へ向けて長く開けた逃がし孔36と、からなる。
【0028】
逃がし孔36は、締結孔32に通す部材(ボルト)38の外径より狭い幅を一定に形成した細長い孔である。
ボルト38は、既存のボルトである。これらのボルト38のうち、位置決め孔31に通すものをボルト38aとする。
【0029】
位置規制部35は、締結孔32と細長い孔(逃がし孔36)とで形成された対向する角部(一方の角部35a、他方の角部35b)である。
【0030】
図4に示す通り、位置決め孔31を除いた締結孔(第2の締結孔41)にサイドフレーム15、16に組付けるときの誤差を吸収する誤差吸収孔42を開けている。
なお、第2の締結孔41は詳細には図4(b)に示す形状である。
【0031】
位置決め孔31を除いた締結孔(第2の締結孔)41をバンパビーム11の左の左締結部27に設けた。
さらに、位置決め孔31を除いた締結孔(第3の締結孔)44を、位置決め孔31を開けたバンパビーム11の右締結部28に設けた。
なお、第3の締結孔44は詳細には図5に示す形状である。
【0032】
そして、位置決め孔31を除いた締結孔(第2の締結孔)41に連ねて第2の逃がし孔46を開けている。
位置決め孔31を除いた締結孔(第3の締結孔)44に連ねて第3の逃がし孔47(図5参照)を開けている。
【0033】
次に、バンパビーム11を詳しく説明する。
バンパビーム11は、アルミニウム製である(アルミニウム合金製を含む)。
押し出し成形した長尺なものから成形素材を一直線に形成した後、成形素材を塑性加工している。
【0034】
バンパビーム11は、図3に示す通り、断面形状が閉断面で目の字状である。そして、長辺内壁部51、長辺外壁部52、短辺天部53、短辺底部54、内部に設けた第1仕切り壁55、第2仕切り壁56からなる。
第1仕切り壁55、第2仕切り壁56で上中空部61、下中空部62、中央中空部63が形成されている。
【0035】
バンパビーム11は、図2に示す通り、ビーム中央部65を成形素材時の一直線とし、両側を折り曲げることで左前方突出湾曲部66、右前方突出湾曲部67を形成したものである。
【0036】
言い換えると、車両25平面視(図2の視点)、左の連結部材22から車両25前方へ且つ車幅の中央へ向け斜めに延ばした左前方突出湾曲部66が形成されている。
一方、右の連結部材22から車両25前方へ且つ車幅の中央へ向け斜めに延ばした右前方突出湾曲部67が形成されている。
そして、左前方突出湾曲部66から右前方突出湾曲部67までビーム中央部65を一直線に延ばしている。
【0037】
バンパビーム11は、車両25正面視(図4の視点)、一直線に形成されて、水平に連結部材22に締結されている。
なお、「連結部材22に締結されている」とは、バンパビーム11はフロントサイドフレーム15、16に締結されているということである。
【0038】
連結部材22はフロントサイドフレーム15、16に取付けるフランジ71を有し、フランジ71に締結用の孔72を開けた。
連結部材22は、図5に示すように、面91にバンパビーム11用のボルト38を4本、車両25前方へ向け突出させている。
【0039】
ボルト38の間隔は、上下の間隔と左右の間隔をほぼ一致させている。
これらのボルト38で左前方突出湾曲部66及び右前方突出湾曲部67を固定している。
【0040】
左前方突出湾曲部66は、左締結部27を有する(図2、図4参照)。
左締結部27は、長辺内壁部51のうち連結部材22にボルト38の軸力で押圧される押圧部74と、この押圧部74に開けた第2の締結孔41と、第2の締結孔41とほぼ同心に、長辺外壁部52に開けた工具通し孔75と、からなる。
【0041】
第2の締結孔41は、ボルト38に同心に開けられている。この第2の締結孔41に連ねてバンパビーム11の中央部33へ向かって第2の逃がし孔46が開けられている。
第2の逃がし孔46は第2の締結孔41の直径と同じ幅である。
【0042】
第2の締結孔41に連ねて車両25の外側へ向かって誤差吸収孔42が開けられている。
誤差吸収孔42は第2の締結孔41の直径と同じ幅である。
第2の締結孔41は上中空部61に2個、下中空部62に2個配置されている。
【0043】
右前方突出湾曲部67は、右締結部28を有する。
右締結部28は、長辺内壁部51のうち連結部材22にボルト38の軸力で押圧される押圧部81と、この押圧部81に開けた位置決め孔31と、第3の締結孔44と、第3の締結孔44とほぼ同心に、長辺外壁部52に開けた工具通し孔83と、からなる。
【0044】
次に、位置決め孔31及び第3の締結孔44をより詳しく説明する。
位置決め孔31は、上中空部61に1個配置されている。すなわち、バンパビーム11の上縁からバンパビーム11の高さの25%程度の位置に配置されている。
【0045】
第3の締結孔44は、図5に示す通り、ボルト38に同心に開けられている。この第3の締結孔44に連ねてバンパビーム11の中央部33へ向かって第3の逃がし孔47が開けられている。
そして、上中空部61に1個、下中空部62に2個配置されている。
【0046】
第3の締結孔44は、合計3個形成されている。これらを個別に説明する。
ここでは、車両25正面視(図4の視点)、位置決め孔31の中心軸線Eを水平にし、この水平な中心軸線Eとの交点を半径の中心とする締結孔44a(図5も参照)、位置決め孔31(詳しくは締結孔32(図5参照)の下方に開けた締結孔44b、この締結孔44bを通る水平線と締結孔44aを通る垂直線との交点を半径中心とする締結孔44cの3個である。
【0047】
位置決め孔31から締結孔44aまでの間隔は、バンパビーム11の高さの50%程度である。
これらの締結孔44b及び締結孔44cがバンパビーム11の下縁からバンパビーム11の高さの25%程度の位置に配置されている。
なお、第2の締結孔41の間隔は、第3の締結孔44の間隔とほぼ一致している。
【0048】
次に、バンパビーム構造の組付け要領を簡単に説明する(図4、図5、図6参照)。
まず、車体12のサイドフレーム(詳しくは連結部材22のボルト38)の先端へ向かってバンパビーム11を移動させる(図5参照)。
【0049】
続けて、ボルト38aにバンパビーム11の位置決め孔31に設けた締結孔32を図5の矢印a1のように嵌める(図6参照)。バンパビーム11の位置が定まる。車両25の左右方向(Y軸方向)の位置、車両25の上下方向(Z軸方向)の位置が決まる。
【0050】
位置決め孔31の嵌合とほぼ同時に、残りのボルト38にそれぞれ第2の締結孔41、第3の締結孔44を嵌める。
【0051】
その際、ボルト38の位置やバンパビーム11の第2の締結孔41に誤差があると、第2の締結孔41に連続する誤差吸収孔42にボルト38が嵌るので、バンパビーム11に干渉しない。
これで、バンパビーム11の位置決めは自動的に完了する。
【0052】
最後に、ボルト38にナット87をねじ込む。
その際、当然、ナット87を所望の力(例えばトルク管理)で締めることで、ボルト38に所望の軸力を発生させる。
これでバンパビーム構造の組付けが完了したことになる。
【0053】
次に、バンパビーム構造の作用を説明する。
位置決めの機構に続けて誤差を吸収する機構を説明し、最後に、伸びを吸収する機構を説明する(図2、図5、図6、図7参照)。
【0054】
組付け要領で説明したように、バンパビーム構造では、締結孔32及び位置規制部35によってボルト38aを基準にバンパビーム11を導くことができ、バンパビーム11の2軸(Y軸方向、Z軸方向)の位置を定めることができる。
つまり、バンパビーム11の位置決め作業は容易である。
【0055】
また、バンパビーム構造では、ボルト38の誤差や第2の締結孔41の誤差があると、第2の締結孔41に連続する誤差吸収孔42にボルト38が嵌るので、ボルト38にバンパビーム11が干渉しない。
従って、サイドフレーム(フロントサイドフレーム)15、16にバンパビーム11を組付ける組付け作業は容易になる。
【0056】
バンパビーム構造は車両25の正面に衝撃(荷重)が入力されると、バンパビーム11は締結している左・右のフロントサイドフレーム15、16との間で滑るので、左・右のフロントサイドフレーム15、16は車両25の外側(図2の矢印a2の方向)へ曲がらない。
【0057】
詳しくは、衝撃力が矢印a3(図1、図2)のように入力されると、バンパビーム11は変形しつつ車両25後方へ後退し始めるので、車両25の外側へ伸び始める(図2の矢印a4の方向)。
【0058】
伸び始めて、力が締結力(軸力)を超えると、バンパビーム11の左締結部27、右締結部28にそれぞれ設けた押圧部74、押圧部81は連結部材22の面91を滑り始めるので、ボルト38aに位置規制部35(図6参照)が干渉する。
【0059】
引き続きバンパビーム11がアーチ状から、図2の二点鎖線で示す一直線になるまでの変形の過程で、バンパビーム11の伸びる力が位置規制部35に加わる。
その結果、位置規制部35は、図7に示す通り、変形し、規制を解除するので、続けて、逃がし孔36がボルト38aに接触しつつ矢印a5のようにスライドする。
【0060】
その際、逃がし孔36はボルト38aとの接触によって、押し開かれるように変形するが、この逃がし孔36が変形する力はバンパビーム11を拘束するものではない。
【0061】
この過程と同じタイミングで、右の第3の締結孔44は、図4、図5に示すように、バンパビーム11とともに移動すると、第3の逃がし孔47にボルト38が入るので、第3の締結孔44はボルト38に干渉しない。
【0062】
一方、左の第2の締結孔41は、図4に示すように、バンパビーム11とともに移動すると、第2の逃がし孔46にボルト38が入るので、第2の締結孔41はボルト38に干渉しない。
【0063】
つまり、ボルト38に、左右のサイドフレーム15、16を車両25の外側へ(図2の矢印a2の方向)曲げる力が入力されない。
従って、左のサイドフレーム15及び右のサイドフレーム16の曲がりを防止することができる。
【実施例2】
【0064】
次に、実施例2に係るバンパビーム構造を図8で説明する。図8は図6に対応する図である。上記図1〜7に示す実施例1と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0065】
実施例2に係るバンパビーム構造は、位置決め孔31Bを備えることを特徴とする。
位置決め孔31Bは、逃がし孔36Bと、位置規制部35Bと、を備える。
【0066】
逃がし孔36Bは、締結孔32に通す部材(ボルト)38の外径より内径が大きい真円孔である。
位置規制部35Bは、締結孔32と真円孔(逃がし孔36B)とで形成された対向する角部(一方の角部35Ba、他方の角部35Bb)である。
【0067】
実施例2に係るバンパビーム構造は、実施例1に係るバンパビーム構造と同様の作用、効果を発揮する。
【0068】
また、実施例2はボルト38と逃がし孔36Bとの接触による抵抗が小さく、バンパビーム11の移動が容易になる。
【実施例3】
【0069】
実施例3に係るバンパビーム構造を図9で説明する。図9は図6に対応する図である。上記図1〜7に示す実施例1と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0070】
実施例3に係るバンパビーム構造は、位置決め孔31Cを備えることを特徴とする。
位置決め孔31Cは、逃がし孔36Cと、位置規制部35Cと、を備える。
【0071】
逃がし孔36Cは、締結孔32に通す部材(ボルト)38の外径より狭い幅で鋸歯状に突起101を連続させた長い孔である。
位置規制部35Cは、締結孔32と長い孔とで形成された対向する角部(一方の角部35Ca、他方の角部35Cb)である。
【0072】
実施例3に係るバンパビーム構造は、実施例1に係るバンパビーム構造と同様の作用、効果を発揮する。
【0073】
また、実施例3はボルト38と鋸歯状の突起101によって移動の力を吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のバンパビーム構造は、車両に好適である。
【符号の説明】
【0075】
11…バンパビーム、12…車体、15…左のサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、16…右のサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、21…バンパ装置、25…車両、27…左締結部、28…右締結部、31…位置決め孔、32…締結孔、33…バンパビームの中央(中央部)、34…締結孔のうちバンパビームの中央側の面、35…位置規制部、35a…一方の角部、35b…他方の角部、36…逃がし孔、38…締結孔に通す部材(ボルト)、41…位置決め孔を除いた締結孔(第2の締結孔)、42…誤差吸収孔、44…位置決め孔を除いた締結孔(第3の締結孔)、46…第2の逃がし孔、101…鋸歯状の突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバンパ装置のバンパビームを車体の左のサイドフレーム及び右のサイドフレームに締結しているバンパビーム構造において、
前記バンパビームは、車両平面視、アーチ状で、前記左のサイドフレームに締結する左締結部、右のサイドフレームに締結する右締結部のうち少なくとも一方の締結部に位置決め孔を有し、
前記位置決め孔は、締結孔と、該締結孔のうち前記バンパビームの中央側に連ねて、必要に応じて規制を解除するよう開けた位置規制部と、該位置規制部に連ねて前記中央側へ向けて開けた逃がし孔と、からなることを特徴とするバンパビーム構造。
【請求項2】
前記逃がし孔は、前記締結孔に通す部材の外径より狭い幅を一定に形成した細長い孔であり、
前記位置規制部は、前記締結孔と前記細長い孔とで形成された対向する角部であることを特徴とする請求項1記載のバンパビーム構造。
【請求項3】
前記逃がし孔は、前記締結孔に通す部材の外径より内径が大きい真円孔であり、
前記位置規制部は、前記締結孔と前記真円孔とで形成された対向する角部であることを特徴とする請求項1記載のバンパビーム構造。
【請求項4】
前記逃がし孔は、前記締結孔に通す部材の外径より狭い幅で鋸歯状に突起を連続させた長い孔であり、
前記位置規制部は、前記締結孔と前記長い孔とで形成された対向する角部であることを特徴とする請求項1記載のバンパビーム構造。
【請求項5】
前記位置決め孔を除いた締結孔に前記サイドフレームに組付けるときの誤差を吸収する誤差吸収孔を開けていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバンパビーム構造。
【請求項6】
前記位置決め孔を除いた締結孔に連ねて第2の逃がし孔を開けていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のバンパビーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−183876(P2011−183876A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49302(P2010−49302)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)