説明

バンパーホルダの取付構造

【課題】作業効率を低下させることなく、低コストでバンパーホルダのボルト挿入部に水が溜まることを防止できるバンパーホルダの取付構造を提供する。
【解決手段】車体1の車幅方向側面に位置するフェンダーパネル3の前端部3aに、ボルト6を用いて取付けられ、かつバンパーパネルを取付けるように構成されたバンパーホルダ5の取付構造であって、バンパーホルダ5に車幅方向外側から中央側に向かって凹んで形成されたボルト挿入部9が設けられ、ボルト挿入部9に、ボルト6のネジ部分6bを挿通可能とするように車幅方向に貫通するボルト挿通孔9eが設けられ、ボルト挿入部9の周壁9aの下方部分が、ボルト6の頭部6aに対応して形成され、ボルト挿入部9におけるボルト6の頭部6aの下方側かつ前方側に貫通孔9dが形成されている、バンパーホルダ5の取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の車幅方向側面に位置するフェンダーパネルの前端部にボルトを用いて取付けられ、かつバンパーパネルを取付けるように構成されたバンパーホルダの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両の車体前面下部にはバンパーパネルが設けられている。このバンパーパネルの車幅方向両端部は、車体の側面に沿って曲げて形成されている。この場合、バンパーパネルの車幅方向両端部は、車体の車幅方向側面に配置されたフェンダーパネルの前端部に隣接し、バンパーパネルの車幅方向両端部とフェンダーパネルの前端部との間に見切り部が形成されている。このような見切り部周辺におけるフェンダーパネルの前端部には、バンパーホルダが重ねて配置されており、このバンパーホルダにバンパーパネルの車幅方向端部が取付けられている。このようなバンパーホルダをフェンダーパネルに取付けるために、ボルトが用いられており、このボルトの取付作業を容易にして、作業効率を高めることが要求されている。
【0003】
このような要求に応ずるために、特許文献1のバンパーホルダでは、車幅方向に凹む円筒形状のボルト挿入部が形成され、このボルト挿入部にボルトを挿通するボルト挿通孔が車幅方向に貫通して形成されている。そのため、ボルト挿通孔にボルトを挿通して、バンパーホルダをフェンダーパネルに取付けた場合には、ボルトの頭部とボルト挿入部の周壁とが接近した状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−137338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バンパーパネルの車幅方向両端部とフェンダーパネルの前端部との間の見切り部からは車体内部に、水が侵入し易くなっている。そのため、特許文献1のバンパーホルダでは、侵入した水がボルト挿入部に入って溜まることがある。特に、ボルト挿入部の周壁とボルトの頭部とが接近した箇所に溜まった水には、表面張力が発生し易いので、このように溜まった水はボルト挿入部から抜け難くなっている。このようなボルト挿入部に溜まった水は、ボルトに錆びを発生させ、かつボルトの締付力を低下させるおそれがある。従来では、耐水性を考慮して、グレードの高いメッキ処理を施したボルトを用いていたが、このようなボルトは高価であるので、十分なコストダウンが図れなかった。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、作業効率を低下させることなく、低コストでバンパーホルダのボルト挿入部に水が溜まることを防止できるバンパーホルダの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するために、本発明のバンパーホルダの取付構造は、車体の車幅方向側面に位置するフェンダーパネルの前端部にボルトを用いて取付けられ、かつバンパーパネルを取付けるように構成されたバンパーホルダの取付構造であって、前記バンパーホルダに車幅方向外側から中央側に向かって凹んで形成されたボルト挿入部が設けられ、前記ボルト挿入部に、前記ボルトのネジ部分を挿通可能とするように車幅方向に貫通するボルト挿通孔が設けられ、前記ボルト挿入部の周壁の下方部分が、前記ボルトの頭部に対応して形成され、前記ボルト挿入部における前記ボルトの頭部の下方側かつ前方側に貫通孔が形成されている。
【0008】
本発明のバンパーホルダの取付構造では、前記貫通孔が前記ボルトの頭部より小さくなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明のバンパーホルダの取付構造は、車体の車幅方向側面に位置するフェンダーパネルの前端部にボルトを用いて取付けられ、かつバンパーパネルを取付けるように構成されたバンパーホルダの取付構造であって、前記バンパーホルダに車幅方向外側から中央側に向かって凹んで形成されたボルト挿入部が設けられ、前記ボルト挿入部に、前記ボルトのネジ部分を挿通可能とするように車幅方向に貫通するボルト挿通孔が設けられ、前記ボルト挿入部の周壁の下方部分が、前記ボルトの頭部に対応して形成され、前記ボルト挿入部における前記ボルトの頭部の下方側かつ前方側に貫通孔が形成されている。
そのため、前記ボルト挿入部に溜まった水が前記貫通孔から排出されることになる。特に、車両が前方に進行している状態から停止した際には、前記ボルト挿入部に溜まった水には、車両前方に移動しようとする慣性が作用するので、このような水が、前記ボルトの頭部の下方かつ前方に位置する前記貫通孔から、排出され易くなっている。その結果、前記ボルト挿入部から水が抜け易くなり、前記ボルト挿入部に水が溜まることを防止できる。従って、グレードの高いメッキ処理を施したボルトを用いずに、ボルトの錆び発生が防止され、かつボルトの締付力低下を防ぐことができて、コストダウンを図ることができる。また、前記ボルト挿入部の周壁の下方部分が、前記ボルトの頭部に対応して形成されているので、前記ボルトが挿入時に呼び込まれ易くなっており、作業効率を低下させることがない。よって、作業効率を低下させることなく、低コストで前記バンパーホルダのボルト挿入部に水が溜まることを防止できるバンパーホルダの取付構造を提供できる。
【0010】
本発明のバンパーホルダの取付構造では、前記貫通孔が前記ボルトの頭部より小さくなっているので、前記ボルトの取付作業中に前記ボルトが前記ボルト挿入部内に落下した場合でも、前記ボルトが前記貫通孔から車体内部に脱落することを防止できる。よって、作業効率を低下させることなく、低コストで前記バンパーホルダのボルト挿入部に水が溜まることを防止できるバンパーホルダの取付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るバンパーホルダの取付構造を用いた車体を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るバンパーホルダ周辺の構造を、バンパーパネルを取り外した状態で見た概略斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るバンパーホルダのボルト挿入部周辺を拡大した概略斜視図である。
【0012】
本発明の実施形態に係るバンパーホルダの取付構造について説明する。
図1を参照すると、車体1の前面下部にはバンパーパネル2が設けられており、バンパーパネル2の車幅方向両端部2aは、車体1の車幅方向側面に沿って曲げて形成されている。車体1の車幅方向側面にはフェンダーパネル3が設けられている。バンパーパネル2の車幅方向両端部2aとフェンダーパネル3とによって、車体1の車幅方向側面には見切り部4が形成されている。図1及び図2を参照すると、フェンダーパネル3の前端部3aには、バンパーホルダ5(図1で破線により示す)が配置されている。図2を参照すると、バンパーホルダ5は、ボルト6によってフェンダーパネル3の前端部3aに取付けられている。再び図1を参照すると、このバンパーホルダ5にバンパーパネル2の端部2aが取付けられている。車体1の前面上部には車幅方向左右一対のヘッドライト7が設けられており、バンパーパネル2とフェンダーパネル3とによって、フロントタイヤハウス8が形成されている。
【0013】
図2及び図3を参照して、フェンダーパネル3の詳細な構造を説明する。
図2を参照すると、フェンダーパネル3の前側上端部3bは、ヘッドライト7の車幅方向外側端部7aに沿って形成されている。図2及び図3を参照すると、フェンダーパネル3の前端部3a(図2で破線により示す)は、ヘッドライト7の車幅方向外側端部7aとフロントタイヤハウス8との間で車両前方側斜め上方に傾斜した方向に延び、車幅方向中央側に向かって凹むようにオフセットして形成されている。特に図3を参照すると、フェンダーパネル3の前端部3aは断面略L字状に形成されており、フェンダーパネル3の前端部3aには、車体側面に沿って配置され、かつバンパーホルダ5を取付ける取付部分3cと、当該取付部分3cに対して垂直方向に延びる壁部分3dとが設けられている。フェンダーパネル3の取付部分3cには、ボルト6を挿通するボルト挿通孔3eが形成されている。
【0014】
図2〜図4を参照して、バンパーホルダ5の詳細な構造を説明する。
図2を参照すると、バンパーホルダ5は、フェンダーパネル3の前端部3aに沿って細長形状に形成されている。図2〜図4を参照すると、バンパーホルダ5の車幅方向外側面5aには、車幅方向外側から中央側に向かって凹むようにボルト挿入部9が形成されている。図2及び図4を参照すると、ボルト挿入部9は、車幅方向外側から見て長径を上下方向に沿って配置した略楕円形状に形成されている。ボルト挿入部9の周壁9aの下方部分は、ボルト6の頭部6aの外周縁に対応して形成されている。図3を参照すると、ボルト挿入部9の周壁9aは、ボルト挿入部9の底面9bからボルト挿入部9の開口9cに向かうに連れてボルト挿入部9の外方に広がるように傾斜している。図3及び図4を参照すると、ボルト挿入部9におけるボルト6の頭部6aの下方側かつ前方側に、貫通孔9dが形成されている。貫通孔9dは、ボルト6が車体1の内部に落下しないように形成されており、図3を参照すると、一例として、貫通孔9dの車幅方向の長さLが、ボルト6の頭部6aの厚さTより小さくなっている。図4を参照すると、貫通孔9dは、ボルト挿入部9の周壁9aと底面9bとに跨って、かつ周壁9aの下方部分と前方部分との間に跨って配置されている。ボルト挿入部9の底面9bには、ボルト6のネジ部分6bを挿通可能とするように車幅方向に貫通するボルト挿通孔9eが形成されている。
【0015】
フェンダーパネル3の前端部3aの壁部分3d側に位置するバンパーホルダ5の側面5bには、バンパーパネル2の端部2aを取付可能とするように、複数のバンパー取付部5cが設けられている。複数のバンパー取付部5cは、互いにバンパーホルダ5の長手方向に間隔を空けて配置されている。また、バンパーホルダ5をフェンダーパネル3にボルト締結する前にバンパーホルダ5をフェンダーパネル3に仮止め可能とするように、バンパーホルダ5の側面5bに仮止め部5dが設けられている。
【0016】
図3を参照して、ヘッドライト7の詳細な構造を説明する。
ヘッドライト7の車幅方向外側下方部分には、フェンダーパネル3の前端部3aに対応して取付部7bが設けられている。ヘッドライト7の取付部7bには、フェンダーパネル3のボルト挿通孔3eに対応して、ボルト挿通孔7cが形成されている。
【0017】
ここで、バンパーパネル2、フェンダーパネル3、及びバンパーホルダ5の取付方法について説明する。
フェンダーパネル3の前端部3aのボルト挿通孔3eを、ヘッドライト7の取付部7bのボルト挿通孔7cに一致させるように、フェンダーパネル3を車体1に取付ける。バンパーホルダ5の仮止め部5dによって、バンパーホルダ5をフェンダーパネル2に仮止めする。仮止めされたバンパーホルダ5のボルト挿入部9にボルト6を挿入し、ボルト6のネジ部分6bを、バンパーホルダ5のボルト挿通孔9eと、フェンダーパネル3のボルト挿通孔3eと、ヘッドライト7のボルト挿通孔7cとに挿通して、締め付ける。このようなボルト締結によって、バンパーホルダ5のバンパーホルダ取付部5cに、バンパーパネル2の端部2aが取付けられて、バンパーパネル2の端部2aとフェンダーパネル3の前端部3aの壁部分3dとの間に、見切り部4が形成されることとなる。その結果、ボルト6の頭部6aがバンパーホルダ5のボルト挿入部9の底面9bと当接した状態で、バンパーホルダ5がフェンダーパネル2に取付けられることになる。
【0018】
以上のように本発明の実施形態によれば、ボルト挿入部9に溜まった水が貫通孔9dから排出されることになる。特に、車両が前方に進行している状態から停止した際には、ボルト挿入部9に溜まった水には、車両前方に移動しようとする慣性が作用するので、このような水が、ボルト6の頭部6aの下方かつ前方に位置する貫通孔9dから、排出され易くなっている。従って、ボルト挿入部9から水が抜け易くなり、ボルト挿入部9に水が溜まることを防止できる。よって、グレードの高いメッキ処理を施したボルトを用いずに、ボルト6の錆び発生が防止され、かつボルト6の締付力低下を防ぐことができて、コストダウンを図ることができる。また、ボルト挿入部9の周壁9aの下方部分が、ボルト6の頭部6aに対応して形成されているので、ボルト6が挿入時に呼び込まれ易くなっており、作業効率を低下させることがない。よって、作業効率を低下させることなく、低コストでバンパーホルダ5のボルト挿入部9に水が溜まることを防止できるバンパーホルダ5の取付構造を提供できる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、貫通孔9dの車幅方向の長さLが、ボルト6の頭部6aより小さくなっているので、ボルト6の取付作業中にボルト6がボルト挿入部9内に落下した場合でも、ボルト6が貫通孔9dから車体1内部に脱落することを防止できる。よって、作業効率を低下させることなく、低コストでバンパーホルダ5のボルト挿入部9に水が溜まることを防止できるバンパーホルダ5の取付構造を提供できる。
【0020】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0021】
例えば、本発明の実施形態の第1変形例として、貫通孔9dの車幅方向の長さが、ボルト6の頭部の直径より小さくなっていてもよい。
【0022】
本発明の第2変形例として、車両前後方向の長さが、ボルト6の頭部6aの厚さ又は直径より小さくなっていてもよい。本発明の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0023】
1 車体
2 バンパーパネル
2a 車幅方向端部
3 フェンダーパネル
3a 前端部
3b 前側上端部
3c 取付部分
3d 壁部分
3e ボルト挿通孔
5 バンパーホルダ
5c バンパー取付部
6 ボルト
6a 頭部
6b ネジ部
9 ボルト挿入部
9a 周壁
9d 貫通孔
9e ボルト挿通孔
L 長さ
T 厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の車幅方向側面に位置するフェンダーパネルの前端部にボルトを用いて取付けられ、かつバンパーパネルを取付けるように構成されたバンパーホルダの取付構造であって、
前記バンパーホルダに車幅方向外側から中央側に向かって凹んで形成されたボルト挿入部が設けられ、
前記ボルト挿入部に、前記ボルトのネジ部分を挿通可能とするように車幅方向に貫通するボルト挿通孔が設けられ、
前記ボルト挿入部の周壁の下方部分が、前記ボルトの頭部に対応して形成され、
前記ボルト挿入部における前記ボルトの頭部の下方側かつ前方側に貫通孔が形成されていることを特徴とする、バンパーホルダの取付構造。
【請求項2】
前記貫通孔が前記ボルトの頭部より小さくなっていることを特徴とする、請求項1に記載のバンパーホルダの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−131401(P2012−131401A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285920(P2010−285920)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)