説明

バンパーホルダー

【課題】バンパーの組付作業を容易に行うことができ、かつ、見切り精度を向上可能なバンパーホルダーを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかるバンパーホルダー200は、車両100にバンパー110を取付けるためのバンパーホルダーにおいて、サイドボディアウターパネル140の外面142および、外面の下端144から車内側に延びているフランジ146に沿って連続して配置されバンパーを内側から支持する支持部210と、支持部から連続しサイドボディアウターパネルのフランジよりも車内側に延びている先端部220とを備え、先端部は、フランジの車内側の縁部146a付近を軸として車内側から車外側に先端部を折り曲げてフランジを挟み込ませるヒンジ形状を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両にバンパーを取付けるためのバンパーホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の前面または後面にはバンパーが取付けられる。バンパーは、車幅方向に延びる縦壁部と、縦壁部の両端から車両側に延びる側壁部とを有している。バンパーの側壁部は、車両に取付けられた状態で車体ボディを覆う形状を有する。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、車両にバンパーを取付けるための構成が開示されている。特許文献1には、バンパーの側壁部に車体内側に張り出すフランジと、このフランジの形状に沿って延びるステーとを備え、バンパーのフランジとステーとを重ね合わせた上で、バンパーの側壁部と車体ボディとをビスで固定する構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、バンパーの側壁部に沿って延びるバンパーサポート部材を備え、車体側面のリヤフェンダ部の下端にバンパーサポート部材を取付けて、さらに、バンパーサポート部材でバンパーの側壁部の上縁を係合支持する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−98918号公報
【特許文献2】特開2006−282120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようにバンパーの側壁部と車体ボディとをビスで固定するには、バンパーのフランジとステーとの確実な位置合わせが必要となる。しかし、ステーの形状によっては位置合わせが容易ではなく、バンパーを車体ボディに組付ける組付作業が困難になることや、見切り精度が低下することがある。
【0007】
特許文献2では、上記バンパーサポート部材は、車体側面のリヤフェンダ部の下端に設置された状態で、バンパーの側壁部の上縁を係合支持する。このため、バンパーサポート部材は、リヤフェンダの下端だけでなく、バンパーの側壁部の上縁の形状にも対応しなければならず、バンパーサポート部材の形状によっては、上記組付作業が困難となることや、見切り精度が低下することがある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、バンパーの組付作業を容易に行うことができ、かつ、見切り精度を向上可能なバンパーホルダーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるバンパーホルダーの代表的な構成は、車両にバンパーを取付けるためのバンパーホルダーにおいて、車両の外面および、外面の下端から車内側に延びている下面に沿って連続して配置されバンパーを内側から支持する支持部と、支持部から連続し車両の下面よりも車内側に延びている先端部とを備え、先端部は、下面の車内側の縁部付近を軸として車内側から車外側に先端部を折り曲げて下面を挟み込ませるヒンジ形状を有することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、車両の外面の下端から車内側に延びている下面を、ヒンジ形状により折り曲げられた先端部と支持部とで挟み込むので、車両の下面に対するバンパーホルダーの位置合わせが容易となり、組付工数も低減する。よって、バンパーを車両に取付ける取付作業が容易となり、また、見切り精度も向上する。さらに、バンパーホルダーは、先端部にヒンジ形状を成型すればよく、部品コストも低減できる。
【0011】
先端部に形成され、先端部を折り曲げた状態で車両の下面に設けられた取付穴と重なる第1孔部と、支持部に形成され、取付穴と重なる第2孔部と、第1孔部の周縁に形成されたリブとをさらに備えるとよい。これにより、ヒンジ形状の先端部を折り曲げた場合に、先端部の第1孔部の周縁に形成されたリブが、支持部の第2孔部に挿入されることになり、車両の下面に対するバンパーホルダーの位置合わせが確実に行われる。したがって、バンパーの取付作業で見切り精度がさらに向上する。
【0012】
支持部は、折り曲げられた状態の先端部の戻りを規制する位置規制部を備えるとよい。これにより、先端部の戻りが規制されるから、バンパーホルダーは、位置合わせした状態で車両の下面に確実に取付けられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バンパーの組付作業を容易に行うことができ、かつ、見切り精度を向上可能なバンパーホルダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態におけるバンパーホルダーを用いてバンパーが取付けられた車両、およびバンパーホルダーを説明する図である。
【図2】図1(b)のバンパーホルダーにバンパーが取付けられた状態での断面を示す図である。
【図3】図1(b)のバンパーホルダーを折り曲げた状態を示す図である。
【図4】車両にバンパーを取付ける様子を示す図である。
【図5】比較例のバンパーホルダーを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態におけるバンパーホルダーを用いてバンパーが取付けられた車両、およびバンパーホルダーを説明する図である。図1(a)は、本実施形態におけるバンパーホルダーを用いてバンパーが取付けられた車両を示す図である。図1(b)は、図1(a)の車両からバンパーを除いた状態で、図1(a)中、点線で囲んだ領域Aを拡大して示す図である。
【0017】
車両100の後面102には、リアバンパー(以下、バンパー110という)が取り付けられている。バンパー110は、例えば樹脂製の成形品であり、図1(a)に示すように、縦壁部120と側壁部130とを備える。縦壁部120は、車幅方向に延びていて、車両100の後面102にほぼ平行に取り付けられている。側壁部130は、縦壁部120の車幅方向の両端から車両側(図中、車両前方側)に延びていて、車両100のサイドボディアウターパネル140(図1(b)参照)を覆う形状を有している。
【0018】
サイドボディアウターパネル140は、図1(b)に示すように、外面142の下端144から車内側に延びている下面(フランジ146)を備える。また、サイドボディアウターパネル140には、バンパーホルダー200が取り付けられている。
【0019】
図2は、図1(b)のバンパーホルダー200にバンパー110が取り付けられた状態での断面を示す図である。図2(a)および図2(b)は、バンパー110が取付けられた状態で、図1(b)のB−B線およびC−C線に沿った断面をそれぞれ示す図である。図3は、図1(b)のバンパーホルダー200を折り曲げた状態を示す図である。図3(a)は、折り曲げられたバンパーホルダー200を車外側から見た状態を示す図である。図3(b)は、折り曲げられたバンパーホルダー200を図3(a)の矢印Zに示す方向から見た状態を示す図である。図4は、車両100にバンパー110を取付ける様子を示す図である。
【0020】
バンパーホルダー200は、サイドボディアウターパネル140にバンパー110を取付けるために用いられる部材であって、支持部210と先端部220とを備えている。支持部210は、サイドボディアウターパネル140のフランジ146に沿って連続して配置されていて(図1(b)参照)、図2(a)に示すように、バンパー110を車内側から支持する。
【0021】
サイドボディアウターパネル140の車内側の面142aには、ホイールハウスアウターパネル150が接続されていて(図2(a)および図3(b)参照)、フランジ146には取付穴148が設けられている。また、バンパー110の側壁部130の下面132には、上記フランジ146に設けられた取付穴148と重なる位置に孔部134が形成されている。さらに、バンパー110の側壁部130の下面132とバンパーホルダー200の支持部210との間には、バンパー110の側壁部130の下面132の縁部132aよりも車内側に延びるリアフェンダーライニング160が配置されている(図2参照)。リアフェンダーライニング160には、上記取付穴148および孔部134と重なる位置に他の孔部162が形成されている。
【0022】
バンパーホルダー200の先端部220は、図2(a)に示すように、支持部210から連続していて、サイドボディアウターパネル140のフランジ146の車内側の縁部146aよりも車内側に延びている。先端部220は、いわゆる樹脂ヒンジ(PPヒンジ、あるいはインテグラルヒンジとも称される)であり、図2(a)に示すヒンジ形状を有している。
【0023】
ヒンジ形状を有する先端部220は、サイドボディアウターパネル140のフランジ146の車内側の縁部146a付近を軸Dとして、図1(b)および図2(a)の矢印Eで示す方向に曲げられる。なお、図2(a)では、曲げられる前の状態の先端部220を点線で示していて、また、曲げられた状態の先端部220を実線で示している。
【0024】
さらに、先端部220は、第1孔部222と、第1孔部222の周縁に形成されたリブ224と、一対の凸部226a、226b(図2(b)参照)とを備える。第1孔部222は、先端部220を折り曲げた状態で(図2(a)中、実線)、サイドボディアウターパネル140のフランジ146に設けられた取付穴148と重なる位置に形成されている。また、この取付穴148には、ボルト300が挿入される(図2および図4参照)。
【0025】
支持部210は、上記取付穴148と重なる位置に形成された第2孔部212と、図2(b)および図3(b)に示す一対の爪部214a、214bとを備える。支持部210の第2孔部212には、先端部220が折り曲げられた状態でリブ224が挿入され、位置決めが行われる。さらに、一対の爪部214a、214bは、先端部220が折り曲げられた状態で、支持部210の一対の凸部226a、226bと係合することで、先端部220の戻りを規制する。
【0026】
以下、バンパーホルダー200を用いて車両100にバンパー110を組付ける組付作業について説明する。まず、サイドボディアウターパネル140の外面142、下端144およびフランジ146に沿って、バンパーホルダー200を配置する。このとき、サイドボディアウターパネル140のフランジ146の縁部146a付近に、ヒンジ形状の先端部220の軸Dが位置するように位置合わせを行う。
【0027】
次に、図1(b)および図2に示すように、ヒンジ形状の先端部220を矢印Eの方向に折り曲げて、先端部220のリブ224を支持部210の第2孔部212に挿入する。このとき、サイドボディアウターパネル140のフランジ146は、ヒンジ形状により折り曲げられた先端部220と支持部210とで挟み込まれる。さらに、折り曲げた状態の先端部220の一対の凸部226a、226bと、支持部210の一対の爪部214a、214bとを係合させることで(図2(b)参照)、サイドボディアウターパネル140に対するバンパーホルダー200の位置合わせが確実に行われる。
【0028】
続いて、サイドボディアウターパネル140およびバンパーホルダー200を覆うように、バンパー110の側壁部130を配置し、さらに、矢印Fに示すように、バンパー110の側壁部130の下面132の孔部134にボルト300を挿入して締結する。ボルト300は、上記したリアフェンダーライニング160の孔部162、バンパーホルダー200の支持部210の第2孔部212、およびサイドボディアウターパネル140の取付穴148に挿入される。このとき、ボルト300は、例えばバンパーホルダー200の先端部220の第1孔部222と螺合している。このようにして、バンパーホルダー200を用いたバンパー110の組付作業が完了する。
【0029】
次に、比較例のバンパーホルダーを説明する。図5は、比較例のバンパーホルダーを説明する図である。図5(a)は、サイドボディアウターパネル140に比較例のバンパーホルダーを取り付けた状態を示す図である。図5(b)は、図5(a)に続いてバンパー110を取り付けた状態を示す図である。なお、図中では、本実施形態に示す部材と同一部材には同一符号を付し、説明を適宜省略する。
【0030】
比較例のバンパーホルダー200Aは、ヒンジ形状を有する先端部220を備えていない点、支持部210がサイドボディアウターパネル140の外面142のみに位置している点で、本実施形態におけるバンパーホルダー200と異なる。
【0031】
バンパーホルダー200Aを用いたバンパー110の組付作業について説明する。まず、サイドボディアウターパネル140の外面142にバンパーホルダー200Aを取り付ける。次に、サイドボディアウターパネル140の下端144から車内側に延びたフランジ146に設けられた取付穴148に、樹脂ナット310を取付ける(図5(a)参照)。
【0032】
続いて、図5(b)に示すように、サイドボディアウターパネル140およびバンパーホルダー200Aを覆うように、バンパー110の側壁部130を配置する。さらに、バンパー110の側壁部130の下面132の孔部134にボルト300を挿入して締結することで、バンパー110の組付作業が完了する。
【0033】
しかし、この組付作業では、サイドボディアウターパネル140に取付ける樹脂ナット310が必要となり、部品コストが増加してしまう。また、見切り精度が現物合わせにより調整されることから、別部品である樹脂ナット310を用いることで見切り精度が低下する。さらに、樹脂ナット310をサイドボディアウターパネル140に取付ける分、工数が増加してしまう。
【0034】
これに対して、本実施形態におけるバンパーホルダー200では、ヒンジ形状により折り曲げられた先端部220と支持部210とで、サイドボディアウターパネル140のフランジ146を挟み込むだけで、サイドボディアウターパネル140に対する位置合わせを確実に行うことができる。このため、バンパー110の組付作業を容易に行うことができ、また、サイドボディアウターパネル140とバンパー110との見切り精度も向上する。なお、見切り精度は、バンパー110の側壁部130のうち下面132から車内側に延びた縁部132aがホイールアーチ部に位置していて、このホイールアーチ部でボルト締結が行われることからも向上する。
【0035】
また、組付作業での上記樹脂ナット310が不要となり、組付工数だけでなく部品コストも低減できる。さらに、バンパーホルダー200は、先端部220にヒンジ形状を成型するだけでよく、生産コストが増加することもない。
【0036】
また、バンパーホルダー200では、ヒンジ形状の先端部220を折り曲げることで、先端部220のリブ224が支持部210の第2孔部212に挿入され、さらに、先端部220の一対の凸部226a、226bが支持部210の一対の爪部214a、214bと係合する。このため、バンパーホルダー200を位置決めした状態で、サイドボディアウターパネル140のフランジ146に確実に組付けることができる。
【0037】
さらに、バンパーホルダー200の先端部220にヒンジ形状を形成して、サイドボディアウターパネル140のフランジ146を先端部220と支持部210とで挟み込むことから、フランジ146の曲げ角度に設計上の自由度が増して、サイドボディアウターパネル140の成形性が向上する。
【0038】
なお、上記実施形態では、バンパーホルダー200を用いて、車両100の後面102にリアバンパー110を組付ける例を示したが、これに限られず、フロントバンパーのフェンダーとの締結に対して適用してもよい。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、車両にバンパーを取付けるためのバンパーホルダーに利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
100…車両、102…後面、110…バンパー、120…縦壁部、130…側壁部、132…下面、132a…縁部、134…孔部、140…サイドボディアウターパネル、142…外面、144…下端、146…フランジ、146a…縁部、148…取付穴、150…ホイールハウスアウターパネル、160…リアフェンダーライニング、162…孔部、200…バンパーホルダー、210…支持部、212…第2孔部、214a、214b…爪部、220…先端部、222…第1孔部、224…リブ、226a、226b…凸部、300…ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両にバンパーを取付けるためのバンパーホルダーにおいて、
前記車両の外面および、該外面の下端から車内側に延びている下面に沿って連続して配置され前記バンパーを内側から支持する支持部と、
前記支持部から連続し前記車両の下面よりも車内側に延びている先端部とを備え、
前記先端部は、前記下面の車内側の縁部付近を軸として車内側から車外側に該先端部を折り曲げて前記下面を挟み込ませるヒンジ形状を有することを特徴とするバンパーホルダー。
【請求項2】
前記先端部に形成され、該先端部を前記折り曲げた状態で前記車両の下面に設けられた取付穴と重なる第1孔部と、
前記支持部に形成され、前記取付穴と重なる第2孔部と、
前記第1孔部の周縁に形成されたリブとをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のバンパーホルダー。
【請求項3】
前記支持部は、前記折り曲げられた状態の前記先端部の戻りを規制する位置規制部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のバンパーホルダー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−162167(P2012−162167A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23734(P2011−23734)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)