説明

バンパ装置

【課題】
衝突の衝撃力を効率良くクラッシュボックスに伝えるバンパ装置を提供すること。
【解決手段】
車両幅方向両側部が車両前後方向内側へ傾斜するバンパリィンフォース10の傾斜部11の車両前後方向内側に、略車両前後方向に配設され管体27からなるクラッシュボックス20が取り付けられるバンパ装置100であって、管体27の車両前後方向外側の端部21の少なくとも一部21aが傾斜部11の車両前後方向外側面15から突出していることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体からなるクラッシュボックスを備えるバンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のバンパリィンフォースとサイドフレームとの間に、鋼板の深絞り成形により得られた底部付きの管体からなるクラッシュボックスを設け、衝突エネルギーを吸収するバンパ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−312400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両デザインのため、車両幅方向両側が車両前後方向内側へ傾斜するバンパリィンフォースがある。このようなバンパリィンフォースの傾斜部に特許文献1のクラッシュボックスを取り付けるとき、底部の深絞り成形の限界により、バンパリィンフォースの傾斜部とクラッシュボックスの底部の傾斜を同じにすることが難しく傾斜部と底部の間に隙間が発生する場合がある。このような場合、バンパリィンフォースが隙間分変形しなければクラシュボックスの変形が開始しないため、衝突の衝撃力はクラッシュボックスに効率良く伝わらない恐れがある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、衝突の衝撃力を効率良くクラッシュボックスに伝えるバンパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために本発明にて講じた第1の技術的手段は、車両幅方向両側部が車両前後方向内側へ傾斜するバンパリィンフォースの傾斜部の車両前後方向内側に、略車両前後方向に配設され管体からなるクラッシュボックスが取り付けられるバンパ装置であって、前記管体の車両前後方向外側の端部の少なくとも一部が前記傾斜部の車両前後方向外側面から突出していることを特徴とするバンパ装置としたことである。
【0007】
第2の技術的手段は、請求項1において、前記端部の全周が、前記バンパリィンフォースの車両前後方向外側面から突出していることである。
【0008】
第3の技術的手段は、請求項1または請求項2において、前記管体の車両前後方向外側の端部は、有底形状を呈していることである。
【0009】
第4の技術的手段は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、前記クラッシュボックスは、前記バンパリィンフォースを貫通していることである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によると、衝突の対象物とクラッシュボックスの端部が直接当接することができるため、効率良く衝突の衝撃力をクラッシュボックスに伝えることができる。
【0011】
請求項2の発明によると、衝突の対象物とクラッシュボックスの当接範囲を端部の全周に拡大できるため、効率良く衝突の衝撃力をクラッシュボックスに伝えることができる。
【0012】
請求項3の発明によると、衝突の対象物とクラッシュボックスの当接範囲を端部の底部に拡大できるため、効率良く衝突の衝撃力をクラッシュボックスに伝えることができる。
【0013】
請求項4の発明によると、クラッシュボックスをバンパリィンフォースに貫通して配設するため、バンパ装置を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例に係るバンパ装置の車両幅方向面図。
【図2】図1のI−I断面図。
【図3】本発明の第2の実施例に係るバンパ装置の車両幅方向面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施例を図1および図2に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施例を示すバンパ装置100の車両幅方向断面図である。図2は、図1のI−I断面を示す。
【0017】
バンパ装置100は、主にバンパリィンフォース10およびクラッシュボックス20から構成される。
【0018】
バンパリィンフォース10は、車両幅方向に延在するように配設され、車両デザインのため車両幅方向両側部(傾斜部)11が車両前後方向内側へ傾斜している。断面は、矩形を3個積み重ねた形状(目の字形状)を呈し、車両上下方向の中央の矩形部12に、車両前後方向に貫通する貫通孔13が設けられている。
【0019】
クラッシュボックス20は、略車両前後方向に延在するように配設されている。クラッシュボックス20は、深絞り加工により成形され、主に管体27からなり、車両前後方向外側の端部21に底部(底面)22が形成され、車両前後方向内側が開口し開口縁23より環状の折り返し部24を介し側方に延在するフランジ25を有する。クラッシュボックス20の車両前後方向途中には、ブラケット30が傾斜部11の車両前後方向内側面14に沿って車両幅方向に延在し設けられている。クラッシュボックス20に車両前後方向に衝突の衝撃力が加わると、折り返し部23が車両前後方向内側に移動変形し、衝突エネルギーを吸収する。
【0020】
クラッシュボックス20は、バンパリィンフォース10の貫通孔13に挿入され、ブラケット30を介してバンパリィンフォース10に固定され、フランジ25を介してサイドメンバー(図示せず)に固定される。クラッシュボックス20の端部21の全周26および底部22は、傾斜部11の車両前後方向外側面15から突出してバンパリィンフォース10に取り付けられる。
【0021】
ブラケット30とクラッシュボックス20は溶接により固定され、フランジ25とサイドメンバーはボルト締結により固定される。尚、ブラケット30とクラッシュボックス20およびフランジ25とサイドメンバーのそれぞれの固定方法は、溶接およびボルト締結に限定されず、他の方法を用いても良い。
【0022】
本実施のバンパ装置100の作用を説明する。
【0023】
例えば、車両幅方向に対して挟み角度が10°である衝突バリアBにバンパ装置100が当接(衝突)した場合、バンパリィンフォース10の傾斜部11の車両前後方向外側面15から突出するクラッシュボックス20の底部22が衝突バリアBに直接当接する。当接と共に(同時に)衝突の衝撃力が折り返し部24に加わり、折り返し部24が衝突エネルギーを吸収しながら、車両前後方向内側に移動変形する。このように、衝突の衝撃力は効率良くクラッシュボックス20に伝えられる。衝突バリア(衝突の対象物)Bとクラッシュボックス20の当接範囲が端部21の全周26および底部22に拡大できるため、効率良く衝突の衝撃力がクラッシュボックス20に伝えられることができる。
【0024】
尚、バンパリィンフォース10の断面は、矩形を2個積み重ねた形状(日の字形状)若しくは単一の矩形形状(口の字形状)または波型の断面形状であっても良い。また、クラッシュボックス20は段付の管体(段付深絞り、段付パイプなど)であっても良い。また、クラッシュボックス20の車両前後方向外側の端部21は、底部22が無く、開口していても良い。
【0025】
次に、本発明の第2の実施例を図3に基づいて説明する。
【0026】
図3は、本発明の第2の実施例を示すバンパ装置200の断面図である。第2の実施例は、第1の実施例に対して、クラッシュボックス220の管体227の端部221の一部221aが、バンパリィンフォース210の傾斜部211の車両前後方向外側面215から突出していることが異なる。
【0027】
衝突バリアBにバンパ装置200が当接(衝突)した場合、バンパリィンフォース210の傾斜部(車両幅方向両側部)211の車両前後方向外側面215から突出するクラッシュボックス220の端部221(底部222)の一部221aが衝突バリアBに直接当接する。当接と共に(同時に)衝突の衝撃力が折り返し部224に加わり、折り返し部224が衝突エネルギーを吸収しながら、車両前後方向内側に移動変形する。
【0028】
尚、クラッシュボックスは、バンパリィンフォースの車両上下方向上側または下側に取り付けられても良い。
【0029】
尚、バンパリィンフォース及びクラッシュボックスは車両前側に取り付けられても良いし、車両後側に取り付けられても良い。例えば、車両前側(車両後側)に取付けられた場合、車両前後方向内側(車両前後方向外側)は車両後方側であり、車両前後方向外側(車両前後方向内側)は車両前方側である。
【符号の説明】
【0030】
10、210・・・バンパリィンフォース
11、211・・・傾斜部(車両幅方向両側部)
20、220・・・クラッシュボックス
21、221・・・端部
26・・・全周
27、227・・・管体
100、200・・・バンパ装置
227a・・・一部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向両側部が車両前後方向内側へ傾斜するバンパリィンフォースの傾斜部の車両前後方向内側に、略車両前後方向に配設され管体からなるクラッシュボックスが取り付けられるバンパ装置であって、
前記管体の車両前後方向外側の端部の少なくとも一部が前記傾斜部の車両前後方向外側面から突出していることを特徴とするバンパ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記端部の全周が、前記バンパリィンフォースの車両前後方向外側面から突出していることを特徴とするバンパ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記管体の車両前後方向外側の端部は、有底形状を呈していることを特徴とするバンパ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記クラッシュボックスは、前記バンパリィンフォースを貫通していることを特徴とするバンパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−57112(P2011−57112A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210051(P2009−210051)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)