説明

バンパ

【課題】自動車用のバンパを簡単に形成し、エネルギー吸収能力の部品特有の最適化をしつつ重量を低減する。
【解決手段】自動車用のバンパは、自動車のフレームのサイドメンバに対して横に固定可能なクロスメンバを有する。クロスメンバは、横断面を、1つのウェブ4と2つの脚を有するU字形に構成されている。クロスメンバのウェブ4は、自動車方向に向けられている。クロスメンバは、フロント側が開放している。中央の長手方向部分10のウェブ4は、自動車の方向に突出させられた補強ビード13を備える。クロスメンバは、中央の長手方向部分が細くなっており、その両終端部分の幅よりも小さい幅、BSMを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のバンパに関する。
【背景技術】
【0002】
バンパは、小さな衝突の衝撃エネルギーを受け止め、これにより、自動車の本来の支持構造ができるだけ損傷を受けないようにするために、自動車では、標準的にフロント側にもリヤ側にも取り付けられる。バンパは、通常は、1つのクロスメンバから成り、このクロスメンバは、クラッシュボックスが組み込まれて、自動車のフレームのサイドメンバに対して横に固定可能である。クロスメンバは、衝突により生じるエネルギーをクラッシュボックスに導入し、そこで、衝撃エネルギーを変形作業に変換するために使用される。
【0003】
異なるように形成された多数のバンパが公知である。特許文献1により、中空メンバとして形成された高剛性のクロスメンバを有するバンパが、従来技術の1つに数えられる。クロスメンバの横断面は、クロスメンバに負荷に応じた高いエネルギー吸収能力を与えるために、その全長にわたって変化する。
【0004】
特許文献2には、1つのウェブと2つの脚を有するU字形に構成された長手方向プロフィルを備えるクロスメンバを有するバンパが記載されている。クロスメンバのウェブは、自動車とは反対側の外面に配設されている。自動車側は、クロスメンバは、カバープレートによって閉鎖されている。特許文献3も、閉じたプロフィルとして形成されたクロスメンバを有するバンパを開示する。
【0005】
特許文献4から公知のバンパの場合、クロスメンバは、自動車とは反体側に配設されたウェブの中央の長手方向部分にビードを備える。ビードは、特許文献5から公知のバンパでも同様である。この場合、クロスメンバは、変形されたチューブによって構成されている。
【0006】
バンパは、法規制を、消費者保護機構によって提示された歩行者保護の要求と同様に満足しなければならない。更に、保険会社の格付け試験(RCAR,GDV)の要求も満足しなければならない。同時に、自動車製造者は、最適な構造空間利用、組立性、高いエネルギー吸収能力及びできるだけ少ない重量と許容可能なコストに応じた通常の要求を提示する。特に、CO2の排出を低減するための努力は、車両開発時の軽量構造への一貫した転換を要求する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,349,521号明細書
【特許文献2】欧州特許第1 730 002号明細書
【特許文献3】欧州特許第1 723 008号明細書
【特許文献4】国際公開第2006/126941号パンフレット
【特許文献5】独国特許第198 49 358号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、従来技術から出発して、本発明の根底にある課題は、自動車用のバンパを簡単に形成し、エネルギー吸収能力の部品特有の最適化をしつつ重量を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決策は、本発明によれば、請求項1に記載のバンパにある。
【0010】
本発明によるバンパの有利な形成及び発展形は、従属請求項1〜11に記載されている。
【0011】
バンパのクロスメンバは、1つのウェブと2つの脚を有するU字形に構成された横断面を備える。クロスメンバのウェブは、クロスメンバの、車両方向に向いた内側に配設されている。クロスメンバの開放側は、外方を向いている。その長手方向にわたって、クロスメンバは、凹に湾曲している。クロスメンバの中央の長手方向部分の補強ビードにより、抵抗モーメントと強度特性及び剛性特性に関する形状的構成が改善されるので、クロスメンバは、全体的に重量を低減させることができる。これは、特に、中央の長手方向部分のクロスメンバが、両終端部分の幅よりも小さい幅を備えることによっても得られる。中央の長手方向部分は、両終端部分に対して凹んでおり、中央の長手方向部分の足の幅は、両終端部分の幅よりも小さい。
【0012】
特に、補強ビードは、自動車の方向に突出させられている。中央の長手方向部分は、連続的に拡大する移行部分を介して終端部分に移行する。クロスメンバの外側にも、即ちクロスメンバの外端部にも、ビードを設けることができる。
【0013】
クロスメンバの各終端部分が、クラッシュボックス用の接続領域を備え、この接続領域に、クロスメンバの脚に対して凹んだ平坦な支持面が形成されている。クラッシュボックスを接続するための支持面との接続領域は、できるだけ小さい曲げモーメントでクラッシュボックスへの衝撃エネルギーの負荷に応じた導入を行なわせる。
【0014】
クロスメンバのエネルギー吸収能力と全体的な負荷特性は、それぞれ、脚の自由端に、この脚に対して横に向いたフロントウェブが続く場合に、更に向上させることができる。
【0015】
脚の長さを異なるように形成した場合も有利であり、特に、上の脚は、下の脚よりも長くすることができる。
【0016】
バンパの別の補強は、クロスメンバが、フロント側を閉鎖板によって閉鎖されている場合に得られる。閉鎖板は、閉じた構成を生じさせることができる。有利なことに、閉鎖板は、長手方向に分配配置された複数の開口を備え、これら開口は、周縁側を、内方にクロスメンバの方向に凹んだ環状のカラーによって制限されている。
【0017】
本発明を、以下で実施例に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるバンパのクロスメンバを斜め後から見た斜視図で示す。
【図2】図1のクロスメンバを平面図で示す。
【図3】クラッシュボックスを有する図1のバンパを示す。
【図4】クロスメンバがフロント側を閉鎖板によって閉鎖された、バンパの別の実施形の一部を斜視図で示す。
【図5】種々の切断線を図示したバンパの平面図を示す。
【図6】閉鎖板のない図5の切断線A−Aによるクロスメンバの横断面図を示す。
【図7】閉鎖板を有する図5の切断線A−Aによるクロスメンバの横断面図を示す。
【図8】閉鎖板のない図5の切断線B−Bによるクロスメンバの横断面図を示す。
【図9】閉鎖板を有する図5の切断線B−Bによるクロスメンバの横断面図を示す。
【図10】閉鎖板のない図5の切断線C−Cによるクロスメンバの横断面図を示す。
【図11】閉鎖板を有する図5の切断線C−Cによるクロスメンバの横断面図を示す。
【図12】閉鎖板を有する図5の切断線D−Dによるクロスメンバの横断面図を示す。
【図13】図5の切断線E−Eによるクロスメンバの横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜3は、ここに図示してない自動車のサイドメンバに対して横に固定可能なクロスメンバを有する自動車用のバンパ1を示す。クロスメンバ2は、図3に図示したクラッシュボックス3を介してサイドメンバに支持される。クラッシュボックス3は、クロスメンバ2に加えて、衝突により生じるエネルギーを、変形作業に変換することによって吸収すべきである。
【0020】
クロスメンバ2は、金属板から、特に鋼板から成り、1つのウェブ4と2つの脚5,6を有するU字形の横断面を備える(図5〜13)。クロスメンバ2のウェブ4は、クロスメンバ2の自動車方向に向いた側7に位置する。クロスメンバ2は、フロント側が開放している。
【0021】
図4に図示したバンパ8では、クロスメンバ2は、フロント側が、閉鎖板9によって閉鎖されている。その他、クロスメンバ2の構成は、バンパ1とバンパ8で同じである。
【0022】
その長手方向にわたって、クロスメンバ2は、凹に湾曲している。クロスメンバ2は、中央の長手方向部分10を有し、この長手方向部分の両側に、それぞれ終端部分11が続く。中央の長手方向部分10のクロスメンバ2は、両終端部分11に対して凹んでいる。中央の長手方向部分10の脚5’,6’は、終端部分11の脚5”,6”の幅BSEよりも小さい幅BSMを備える。図6〜13により、上の脚5もしくは5’及び5”が下の脚6もしくは6’及び6”よりも長く構成されていることが認められる。中央の長手方向部分10から両終端部分11への移行は、連続的であり、拡大する移行部分12を介して行なわれる。中央の長手方向部分10は、終端部分11の長さLのほぼ2倍長い長さLを備える。
【0023】
中央の長手方向部分10のクロスメンバ2のウェブ4は、自動車の方向に向かって突出させられた補強ビード13を備える。これは、特に図6〜9によっても明らかになる。補強ビード13は、中央の長手方向部分10の全長Lにわたって延在する。
【0024】
補強ビード13は、中央の長手方向部分10のクロスメンバ2に、高い抵抗モーメントと負荷に応じて設計された強度特性及び剛性特性を有する曲げ剛性の高い構成を与える。クロスメンバ2もしくはバンパ1,8のエネルギー吸収能力は、向上する。それにもかかわらず、クロスメンバ2は、特に中央の長手方向部分10が細くなる構成によって、重量が低減されるように設計することができる。
【0025】
補強ビード13からウェブ14への移行部14も、ウェブ14から脚5,6への移行部15も、Rをつけて延在することが認められる。脚5もしくは6の自由端16に、それぞれ、この自由単に対して横に外方に向いたフロントウェブ17が設けられている。この構成も、抵抗モーメントを向上させ、強度特性及び剛性特性を改善するために寄与する。
【0026】
クロスメンバ2の両終端部11に、それぞれ1つのクラッシュボックス3用の接続領域18が形成されている。接続領域18は、クロスメンバ2の脚5,6に対して凹んだ平坦な、クラッシュボックス3を接続するための支持面19を備える。クラッシュボックス3は、本質的に直角に構成された、サイドメンバ側のフランジプレート21を有する中空の変形プロフィル20を有する。クロスメンバ側では、クラッシュボックス3は、少なくとも上の舌状部22によって接続領域18を把持する。更に、クラッシュボックス3が剛性特性及び変形特性に影響を与えるための突出部23及びビード24を備えることが認められる。
【0027】
両終端部分11の自由端25もビード26を備える。ビード26は、外方に、即ち自動車から離れる方向に向くように突出させられている。
【0028】
図1に、図面の左側の接続領域18が牽引フック用の貫通穴27を備えることが認められる。
【0029】
既に述べたように、バンパ8のクロスメンバ2は、フロント側が閉鎖板9によって閉鎖されている。閉鎖板9の長手方向にわたって、複数の開口28が設けられており、これら開口は、周縁側をクロスメンバ2の方向に凹んだ環状のカラー29によって制限されている。クラッシュボックス3の領域の閉鎖板9は、シャーレ状に凹んでおり、牽引フック用の貫通穴31が設けられた底を有する。貫通穴31が本質的に開口28よりも小さいことが認められる。最後に、図4には、閉鎖板9がクロスメンバ2の端部にまで延在することが認められる。自由端25は、覆われてない。
【符号の説明】
【0030】
1 バンパ
2 クロスメンバ
3 クラッシュボックス
4 ウェブ
5 脚
5’ 脚
5” 脚
6 脚
6’ 脚
6” 脚
7 側
8 バンパ
9 閉鎖板
10 中央の長手方向部分
11 終端部分
12 移行部分
13 補強ビード
14 移行部
15 移行部
16 5もしくは6の自由端
17 フロントウェブ
18 接続領域
19 支持面
20 変形プロフィル
21 フランジプレート
22 舌状部
23 突出部
24 ビード
25 11の端部
26 ビード
27 貫通穴
28 開口
29 カラー
30 底
31 貫通穴
SM
SE
10の長さ
11の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフレームのサイドメンバに対して横に固定可能なクロスメンバ(2)を有し、このクロスメンバが、横断面をU字形に構成され、1つのウェブ(4)と2つの脚(5,5’,5”;6,6’,6”)を備え、クロスメンバ(2)のウェブ(4)が、自動車方向に向けられている、自動車用のバンパにおいて、
ウェブ(4)が、中央の長手方向部分(10)に補強ビード(13)を備えることを特徴とするバンパ。
【請求項2】
中央の長手方向部分(10)のクロスメンバ(2)が、両終端部分(11)の幅よりも小さい幅を備えることを特徴とする請求項1に記載のバンパ。
【請求項3】
中央の長手方向部分(10)の脚(5’,6’)の幅(BSM)が、両終端部分(11)の脚(5”,6”)の幅(BSE)よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のバンパ。
【請求項4】
補強ビード(13)が、自動車の方向に突出させられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のバンパ。
【請求項5】
脚(5,6)の自由端(16)に、この脚に対して横に向いたフロントウェブ(17)が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のバンパ。
【請求項6】
クロスメンバ(2)の各終端部分(11)が、クラッシュボックス(3)用の接続領域(18)を備え、この接続領域(18)に、クロスメンバ(2)の脚(5”,6”)に対して凹んだ平坦な支持面(19)が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のバンパ。
【請求項7】
両終端部分(11)の端部(25)に、ビード(26)が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のバンパ。
【請求項8】
中央の長手方向部分(10)が、連続的に拡大する移行部分(12)を介して終端部分に移行することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のバンパ。
【請求項9】
上の脚(5,5’,5”)が、下の脚(6,6’,6”)よりも長いことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のバンパ。
【請求項10】
クロスメンバ(2)が、フロント側を閉鎖板(9)によって閉鎖されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のバンパ。
【請求項11】
閉鎖板(9)に複数の開口(28)が設けられており、これら開口(28)が、周縁側をクロスメンバ(2)の方向に凹んだ環状のカラー(29)によって制限されていることを特徴とする請求項10に記載のバンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−126153(P2010−126153A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266904(P2009−266904)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany