説明

バーコード読み取り方法および装置

【課題】低コストかつ簡単なバーコード読み取り方法および装置を提供する。
【解決手段】該バーコード読み取り器は、正対する位置にあるバーコード貼付体のバーコードを読み取る際の設定条件として、読み取り距離に関する設定条件を切り換える機能を備え、該バーコード読み取り器と、該バーコード読み取り器と正対したときのバーコード貼付体との距離に関する情報を、バーコード貼付体を載置した回転台の回転角情報と対応させて予め記憶手段に記憶させておき、前記バーコード貼付体が前記バーコード読み取り器に正対したときの前記回転台の回転角情報から、前記回転台の回転角情報と対応させて予め記憶させたバーコード貼付体との距離に関する情報を前記記憶手段から読み出し、読み出された距離の情報に基づいて前記バーコード読み取り器の読み取り距離に関する設定条件を切り換えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学自動分析装置に用いられる試薬容器や試料容器に貼り付けられたバーコードを回転テーブル上で読み取るバーコード読み取り方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学自動分析装置で分析対象の試料や分析用試薬を配置するテーブルには、直線状に移動する方式のもの、回転方式によるもの、及びその他の方式によるものなどがあるが、少ない面積でより多くの試料容器や試薬容器を配置できる円形の回転テーブルが広く用いられてきた。
【0003】
その場合、図1に示すように、回転テーブル1上に置かれた試料容器や試薬容器ごとの形状の違いから、同心状で径の異なる円周上に配置された複数のバーコード貼付体2を周方向に移動させながら、バーコード読み取り器3でバーコードを読み取らなければならない場合があった。
【0004】
読み取り円周の径が異なるバーコードラベルを連続的に読み込む場合、従来は次のような方法で読み込みを行なっていた。
【0005】
方法1:バーコード読み取り器とバーコード貼付体との距離を自動的に判断し、バーコード読み取り器自身の読み取り距離設定条件(焦点距離)を自動的に設定して、バーコードラベルを読み取る。この動作を読み取り対象が変わるごとに行なって、常に最適な条件でバーコードラベルを読み取るようにする。(図2)
方法2:バーコード読み取り器とバーコード貼付体との距離がどのような距離であっても常にバーコードラベルが読み取れるように、バーコード読み取り器自身の読み取り距離設定条件(焦点距離)を予め中間的な条件に設定して、バーコードラベルを読み取るようにする。(図3)
方法3:バーコード読み取り器とバーコード貼付体との距離がどのような距離であっても常にバーコードラベルが読み取れるように、複数のバーコード読み取り器を用意し、それぞれのバーコード読み取り器の読み取り距離設定条件(焦点距離)を近距離用、中距離用、遠距離用に予め設定しておき、バーコード貼付体の設置環境に応じてバーコード読み取り器を使い分けるようにする。(図4)
【特許文献1】特開平6−230016号公報
【特許文献2】特開平9−72915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のバーコード読み取り方法には、次のような問題があった。
【0007】
方法1:バーコード読み取り器とバーコード貼付体との距離を自動的に判断し、バーコード読み取り器自身の読み取り距離設定条件(焦点距離)を自動的に設定するためには、時間がかかるため、回転テーブルが停止した状態で読み取りを行なわせる必要がある。従って、移動中のバーコードラベル、特に刻々と読み取り円周位置が変化する場合に対応ができない。
【0008】
方法2:バーコード読み取り器とバーコード貼付体との距離がどのような距離であっても常にバーコードラベルが読み取れるような中間的な条件設定を行なうことがむつかしいため、バーコードラベルの品質など不安定要素への許容度が低く、読み取りの失敗が多発する。また、バーコード読み取り器の読み取り距離設定条件(焦点距離)の影響を軽減するためには、バーコード読み取り器とバーコードラベルとの距離を大きく取る必要があり、その結果、装置の占有空間が大きくなってしまう。
【0009】
方法3:複数のバーコード読み取り器を用いると、コストがかかり、装置の占有空間も大きくなってしまう。
【0010】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、読み取り距離の異なるバーコード貼付体のバーコードを1台のバーコード読み取り器で読み取ることのできる、低コストかつ簡単なバーコード読み取り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明にかかるバーコード読み取り方法は、
同心円状で径の異なる円周上に配置された複数のバーコード貼付体を周方向に移動させながらバーコード読み取り器でバーコードを読み取るバーコード読み取り方法において、
該バーコード読み取り器は、正対する位置にあるバーコード貼付体のバーコードを読み取る際の設定条件として、読み取り距離を含む読み取り位置に固有の設定条件を切り換える機能を備え、
前記固有の設定条件を、バーコード貼付体を載置した回転台の回転角情報と対応させて予め記憶手段に記憶させておき、
前記バーコード貼付体が前記バーコード読み取り器に正対したときの前記回転台の回転角情報から、前記回転台の回転角情報と対応させて予め記憶させた前記固有の設定条件を前記記憶手段から読み出し、読み出された情報に基づいて前記バーコード読み取り器の設定条件を切り換えるようにしたことを特徴としている。
【0012】
また、前記バーコード貼付体を載置した回転台の回転角情報は、該回転台を回転させる駆動機構に備えられたロータリーエンコーダーの回転角情報または該駆動機構に与えられる回転駆動指令に基づいて求めることを特徴している。
【0013】
また、前記バーコード貼付体は、生化学自動分析装置の試薬容器または試料容器であることを特徴としている。
【0014】
また、本発明にかかるバーコード読み取り装置は、
同心円状で径の異なる円周上に複数のバーコード貼付体を載置して周方向に移動させる回転台と、
該回転台上の正対する位置にあるバーコード貼付体のバーコードを、読み取り距離に関する設定条件を切り換えながら読み取るバーコード読み取り器と、
前記バーコード貼付体を載置した前記回転台の回転角情報を、前記バーコード貼付体が前記バーコード読み取り器と正対するたびに読み取る回転角読み取り手段、または前記回転台の回転角情報を出力する回転駆動指令手段と、
前記正対するバーコード貼付体と前記バーコード読み取り器との距離に関する情報を、前記バーコード貼付体を載置した前記回転台の回転角情報と対応させて予め記憶しておく記憶手段と、
前記バーコード貼付体が前記バーコード読み取り器に正対したときの前記回転台の回転角情報に基づいて、前記回転台の回転角情報と対応させて予め記憶させたバーコード読み取り器とバーコード貼付体との距離に関する情報を前記記憶手段から読み出し、読み出された距離に関する情報に基づいて、前記バーコード読み取り器の読み取り距離に関する設定条件を切り換える制御手段と
を備えたことを特徴としている。
【0015】
また、前記回転角読み取り手段は、前記回転台を回転させる駆動機構に備えられたロータリーエンコーダーであることを特徴としている。
【0016】
また、前記バーコード貼付体は、生化学自動分析装置の試薬容器または試料容器であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバーコード読み取り方法によれば、
同心円状で径の異なる円周上に配置された複数のバーコード貼付体を周方向に移動させながらバーコード読み取り器でバーコードを読み取るバーコード読み取り方法において、
該バーコード読み取り器は、正対する位置にあるバーコード貼付体のバーコードを読み取る際の設定条件として、読み取り距離を含む読み取り位置に固有の設定条件を切り換える機能を備え、
前記固有の設定条件を、バーコード貼付体を載置した回転台の回転角情報と対応させて予め記憶手段に記憶させておき、
前記バーコード貼付体が前記バーコード読み取り器に正対したときの前記回転台の回転角情報から、前記回転台の回転角情報と対応させて予め記憶させた前記固有の設定条件を前記記憶手段から読み出し、読み出された情報に基づいて前記バーコード読み取り器の設定条件を切り換えるようにしたので、
読み取り距離の異なるバーコード貼付体のバーコードを1台のバーコード読み取り器で読み取ることのできる、低コストかつ簡単なバーコード読み取り方法を提供することが可能になった。
【0018】
また、本発明のバーコード読み取り装置によれば、
同心円状で径の異なる円周上に複数のバーコード貼付体を載置して周方向に移動させる回転台と、
該回転台上の正対する位置にあるバーコード貼付体のバーコードを、読み取り距離に関する設定条件を切り換えながら読み取るバーコード読み取り器と、
前記バーコード貼付体を載置した前記回転台の回転角情報を、前記バーコード貼付体が前記バーコード読み取り器と正対するたびに読み取る回転角読み取り手段、または前記回転台の回転角情報を出力する回転駆動指令手段と、
前記正対するバーコード貼付体と前記バーコード読み取り器との距離に関する情報を、前記バーコード貼付体を載置した前記回転台の回転角情報と対応させて予め記憶しておく記憶手段と、
前記バーコード貼付体が前記バーコード読み取り器に正対したときの前記回転台の回転角情報に基づいて、前記回転台の回転角情報と対応させて予め記憶させたバーコード読み取り器とバーコード貼付体との距離に関する情報を前記記憶手段から読み出し、読み出された距離に関する情報に基づいて、前記バーコード読み取り器の読み取り距離に関する設定条件を切り換える制御手段と
を備えたので、
読み取り距離の異なるバーコード貼付体のバーコードを1台のバーコード読み取り器で読み取ることのできる、低コストかつ簡単なバーコード読み取り装置を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図5は、本発明にかかる新しいバーコード読み取り方法および装置の一実施例である。試料容器や試薬容器などのバーコード貼付体2は、回転テーブル1上に径の異なる同心円状に載置されている。本発明は、同心円状で径の異なる円周上に配置された複数のバーコード貼付体2を周方向に移動させながら、バーコード読み取り器3でバーコードラベルを読み取る際に用いられるバーコード読み取り方法である。
【0021】
同心円状で径の異なる円周上に配置された複数のバーコード貼付体2には、例えば最外周の円周1に沿って置かれたもの、中間の円周2に沿って置かれたもの、最内周の円周3に沿って置かれたものの、合計3種類があるものとする。
【0022】
回転テーブル1の回転軸部には、図示しないモータなどの回転駆動機構とともにロータリーエンコーダーが取り付けられていて、回転テーブル1の回転角情報が正確に読み取られるように構成されている。また、バーコード貼付体2ごとにバーコード読み取り器3との距離が異なっているが、このバーコード貼付体2とバーコード読み取り器3との距離に関する情報(円周1、円周2、円周3のいずれに属するか)や視野角情報など読み取り位置に固有の情報は、前記ロータリーエンコーダーから読み取られる回転テーブル1の回転角情報と対応させて、回転テーブル1とバーコード読み取り器3を制御する外部制御装置4(例えばCPUなど)に接続された記憶装置5(例えばハードディスクなど)の内部にセットで記憶されている。
【0023】
本発明のバーコード読み取り方法は、次の動作により実施される。
【0024】
工程1:回転テーブル1が回転動作を始める。
【0025】
工程2:回転テーブル1の回転角情報を外部制御装置4がロータリーエンコーダーから受信する。
【0026】
工程3:ロータリーエンコーダーの回転角情報に基づいて、外部制御装置4がバーコード貼付体2とバーコード読み取り器3との距離情報を記憶装置5から読み出して認識する。
【0027】
工程4:外部制御装置4からバーコード読み取り器3へ読み取り距離に関する設定条件を送信し、バーコード読み取り器3の設定条件を変更・設定する。
【0028】
工程5:変更・設定された条件でバーコード読み取り器3が所定の読み取り距離に設置されたバーコードを読み取る。
【0029】
工程6:工程1に戻る。以下、工程1〜工程6を繰り返す。
【0030】
尚、回転テーブル1の回転角情報は、ロータリーエンコーダーから受信する方法によって得るのではなく、図示しない回転駆動指令機構から回転テーブル1の回転駆動を制御する図示しない回転駆動制御機構に対して与えられる回転駆動指令に基づいて得るように構成しても良い。
【0031】
このように構成することにより、バーコード読み取り器3の設定が、各バーコードラベル設定位置で適正となるため、他の読み取り方法に比べて、次のような長所がある。
【0032】
長所1:1台のバーコード読み取り器のみをバーコード貼付体の近傍に設置すれば良いため、コストと占有空間の削減ができる。
【0033】
長所2:読み取り条件の設定が自動設定であるため、設定の待ち時間が不要で、読み取り時間を大幅に短縮できる。
【0034】
長所3:外乱への余裕があるため、読み取り失敗の危険を軽減でき、また、バーコードラベルの許容品質が広がる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
生化学自動分析装置に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来のバーコードラベル設置状況の一例を示す図である。
【図2】従来のバーコード読み取り方法の一例を示す図である。
【図3】従来のバーコード読み取り方法の一例を示す図である。
【図4】従来のバーコード読み取り方法の一例を示す図である。
【図5】本発明にかかるバーコード読み取り装置の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1:回転テーブル、2:バーコード貼付体、3:バーコード読み取り器、4:外部制御装置、5:記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心円状で径の異なる円周上に配置された複数のバーコード貼付体を周方向に移動させながらバーコード読み取り器でバーコードを読み取るバーコード読み取り方法において、
該バーコード読み取り器は、正対する位置にあるバーコード貼付体のバーコードを読み取る際の設定条件として、読み取り距離を含む読み取り位置に固有の設定条件を切り換える機能を備え、
前記固有の設定条件を、バーコード貼付体を載置した回転台の回転角情報と対応させて予め記憶手段に記憶させておき、
前記バーコード貼付体が前記バーコード読み取り器に正対したときの前記回転台の回転角情報から、前記回転台の回転角情報と対応させて予め記憶させた前記固有の設定条件を前記記憶手段から読み出し、読み出された情報に基づいて前記バーコード読み取り器の設定条件を切り換えるようにしたことを特徴とするバーコード読み取り方法。
【請求項2】
前記バーコード貼付体を載置した回転台の回転角情報は、該回転台を回転させる駆動機構に備えられたロータリーエンコーダーの回転角情報または該駆動機構に与えられる回転駆動指令に基づいて求めることを特徴とする請求項1記載のバーコード読み取り方法。
【請求項3】
前記バーコード貼付体は、生化学自動分析装置の試薬容器または試料容器であることを特徴とする請求項1または2記載のバーコード読み取り方法。
【請求項4】
同心円状で径の異なる円周上に複数のバーコード貼付体を載置して周方向に移動させる回転台と、
該回転台上の正対する位置にあるバーコード貼付体のバーコードを、読み取り距離に関する設定条件を切り換えながら読み取るバーコード読み取り器と、
前記バーコード貼付体を載置した前記回転台の回転角情報を、前記バーコード貼付体が前記バーコード読み取り器と正対するたびに読み取る回転角読み取り手段、または前記回転台の回転角情報を出力する回転駆動指令手段と、
前記正対するバーコード貼付体と前記バーコード読み取り器との距離に関する情報を、前記バーコード貼付体を載置した前記回転台の回転角情報と対応させて予め記憶しておく記憶手段と、
前記バーコード貼付体が前記バーコード読み取り器に正対したときの前記回転台の回転角情報に基づいて、前記回転台の回転角情報と対応させて予め記憶させたバーコード読み取り器とバーコード貼付体との距離に関する情報を前記記憶手段から読み出し、読み出された距離に関する情報に基づいて、前記バーコード読み取り器の読み取り距離に関する設定条件を切り換える制御手段と
を備えたことを特徴とするバーコード読み取り装置。
【請求項5】
前記回転角読み取り手段は、前記回転台を回転させる駆動機構に備えられたロータリーエンコーダーであることを特徴とする請求項4記載のバーコード読み取り装置。
【請求項6】
前記バーコード貼付体は、生化学自動分析装置の試薬容器または試料容器であることを特徴とする請求項4または5記載のバーコード読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−121915(P2009−121915A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295475(P2007−295475)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】