説明

バーチカルブラインド用スラット生地の製法

【課題】複数条のバーチカルブラインド用スラットを1枚の編地として完成後、糸の破断なしで複数条に分割成形する製法を確立する。
【解決手段】複数条のバーチカルブラインド用スラット生地を長さ方向に平行に並べて同時に編成する過程で隣り合うスラット生地とスラット生地の間に解し鎖編み糸を配置し、その左右に挿入糸を設け、スラット生地と解し鎖編み糸を係止させ、解し鎖編み糸の張力を弛めると同時にその両脇に配した2本の挿入糸の張力を強め変形させて一枚の編地に編成完成後、解し鎖編み糸を解くことで複数のスラット生地に分割することを手段とするバーチカルブラインド用スラット生地の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバーチカルブラインドに使用される経て編みスラットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般のカーテンは、カーテンにドレープ状の襞をつくり美観の向上を図っているが、そのため収納にスペースを要し、また外光等の微妙な調整は不可能である。バーチカルブラインドはスラットの角度を変えることによって、外からの光や視線を調整することが可能であり、収納もコンパクトに行える。そのため、近年このバーチカルブラインド式カーテンが広く使用されるようになってきた。このバーチカルブラインドのスラットには薄鋼板が使用されていた。しかし近年は色柄、風合い、透け感、透過性等のニーズから繊維製のスラットが求められている。
【0003】
【特許文献1】特許 第3586833
繊維製のスラットに関する従来技術として上記の特許がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術である特許文献1(第3586833)には次のような欠点があった。
1)複数条のバーチカルブラインド部の短冊状スラット生地を連結する際、スラット生地 よりも引っ張り強度の弱い裂き糸を用いるために、経て編み後の後工程において生地 にテンションがかかった場合に裂ける恐れがあり、裂けた場合はその後の工程に支障 が起きることになる。従来技術として上記の特許文献1に示された図1を本願では従 来技術として図6として示した。従来技術の詳細説明は省略するが図6の連結用編糸 24が一枚の経編地を複数条のスラットに分割する際に緊張破断されるもので上記の 引っ張り強度の弱い裂き糸に相当する。
2)複数条のスラット生地を1枚の経て編地として編成後、連結用編み糸を緊張破断して 複数条スラットに分割するため、破断によるための糸くず等による塵埃の発生や分割 部の破断端部の糸の凹凸による美観に問題があった。
3)複数条スラットに分割する方式が破断によるため生地にストレスを与え、スラット本 体にダメージを与える可能性を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明を実現するには以下の手段による。
「手段1」
複数条のバーチカルブラインド用スラット生地を長さ方向に平行に並べて同時に編成する過程において平行に並んで隣り合うスラット生地とスラット生地の間に解し鎖編み糸を配置し、その左右に挿入糸を設け、スラット生地と解し鎖編みを係止させ、複数条のスラット生地を1枚の経編み地として編成することを手段としたバーチカルブラインド用スラット生地の製法。
「手段2」
手段1において解し鎖編み糸を解すことでその一枚の経編み地を複数条のスラットに分割することを手段としたバーチカルブラインド用スラント生地の製法。
「手段3」
手段1及び2において解し鎖編み糸の左右に配置した各挿入糸の張力を解し鎖編み糸をバーチカルブラインド用長さ方向と直角方向に変形させるように強めて、解し鎖編み糸を解して複数のスラット生地に分割した際に、挿入糸の張力を強めた効果により挿入糸がスラット生地からはみ出さないようにしたことを手段とするバーチカルブラインド用スラット生地の製法。
「手段4」
手段1から3において、解し鎖編み糸の色をスラット生地構成挿入糸やスラット生地構成鎖編み糸と異ならせたことを手段としたバーチカルブラインド用スラット生地の製法。
【発明の効果】
【0006】
1)本発明の請求項1によれば平行に並んで隣り合うスラット生地とスラット生地の間に配置した解し鎖編み糸、及びその左右に配置した挿入糸は特に弱い糸を使用しなくてもよいので、経て編み後の後工程において生地にテンションがかかった場合に裂けることがない。
2)本発明の請求項2及び3によれば複数条スラットを分割生成するには単に糸を解すだけで糸等の破断が無い。また複数条に分割後の分割端には挿入糸の張力を強めた効果により挿入糸がスラット生地からはみ出さないようにしたことにより挿入糸がスラット生地からはみ出さず、美観も向上する。
3)本発明の請求項2及び3によれば複数条に分割時、糸の破断が無いため、糸くず等の 発生が抑えられる。
4)本発明の請求項1乃至3によれば複数条に分割するのが糸を解すことで行われるので 従来の裂く方式に対し生地部へのストレスが少なく品質が安定し、また請求項4によ れば解し鎖編み糸の色をスラット生地編み糸と相違させることで分割個所が明瞭とな り作業性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面によって説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は本発明による、複数条のバーチカルブラインド用スラット生地を1枚の経編み地として編成する本発明の構成を示した図である。即ち複数条のバーチカルブラインド用スラット生地は、構成するスラット生地構成鎖編み糸1を使用し、長さ方向に平行に並べて編み、スラット生地構成挿入糸2を用いて、図1に示したように同時に編成される。その過程において平行に並んで隣り合うスラット生地とスラット生地の間に解し鎖編み糸4を配置し、その左右に挿入糸3を設け、スラット生地と解し鎖編み糸4を係止させ、1枚の編地を形成する。
図1では解し鎖編み糸4部を中心として左右が対称に構成されるので右サイドには挿入糸3と同じ挿入糸、スラット生地を構成するスラット生地構成鎖編み糸1、スラット生地構成挿入糸2等の部品番号付与は図から省略してある。このようにして複数条のスラット生地を1枚の経編み地として編成する。その経編み地にはバインダーを付与し、またはその経編み地を過熱してセットすることで所望のバーチカルブラインド用スラット生地を製作するものである。図1でスラット生地構成鎖編み糸1とスラット生地構成挿入糸2で構成する部分は通常の編み組織であり分割したい個所を決めて解し鎖編み糸4とその左右に2本の挿入糸3とを図1の様に配置したものである。生地編み方向は図1の下部から上方向である。またバインダーを付与し、またはその経編み地を過熱してセットする目的は分割されたスラット生地部の伸縮、ねじれやそり等を防ぎ形状を固定し美観を高めるためである。尚本発明に関する説明で用いた上述した部品番号1から4は図1から図5に適応するものであり図6の部品番号とは無関係でる。前述した従来技術で説明した図6ではその中に記載された部品番号24のみを使用した。
【0009】
更に図1の編成する過程において図2に示すように解し鎖編み糸4の張力を弛めると同時にその両脇に配した2本の挿入糸3の張力を強めると解し鎖編み糸4の形状は図1に示す形から図2に示す形状に大きく変形する。このように挿入糸3の張力を通常のスラット生地構成挿入糸2より強める目的は解し鎖編み糸4を大きく変形させて、挿入糸の張力を強めた効果により挿入糸がスラット生地からはみ出さないようにするためである。
【0010】
目的の生地が編みあがった後、図3に示すように解し鎖編み糸4の編み終わり部の糸を解すことにより挿入糸3を破断することなく解し鎖編み糸4の両サイドの生地を分割するものである。解し鎖編み糸4は所謂鎖編み構成のため編み終わり端を引くことで一本の連続した糸として抜き去ることが出来るものである。そして解し鎖編み糸4を抜き去り、生地を分割した様子を示したのが図4であり、抜き去った解し鎖編み糸4は点線で示したものである。このとき挿入糸3はスラット生地構成挿入糸2比べて張力を強めた効果によりスラット生地構成挿入糸2が図のように横方向に大きく蛇行しているのに対し、挿入糸3は経て方向の直線に近づくため、スラット生地からはみ出さないことになる。
【0011】
このようにして所望の長さまで編みあがった後で所望の幅に分割することで、経て方向に短冊状に分割したバーチカルブラインドのスラットが得られる。図5は図4の分割後の図であり、中央部の空間から右の生地には構成糸に図1と同じく番号付与は省略してあるが、中央部の空間から分割された2つの生地は左右に対称な構成となっている。このようにして複数条の経て方向に短冊状に分割したバーチカルブラインドのスラットが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明により作られるバーチカルブラインドのスラットは実用性、優美性、品質の均一性、安価性を備えたものであるので、工業的に大きな貢献が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の構成を示す図
【図2】本発明の図1の構成で2種類の糸の張力を変えた図
【図3】本発明の図2の状態から編み糸を解す過程の図
【図4】本発明の図3の状態から編み糸を解した後の図
【図5】本発明の手段により編み糸を解した後の分割が終了した図
【図6】従来技術の構成を示す図
【符号の説明】
【0014】
1 : スラット生地構成鎖編み糸
2 : スラット生地構成挿入糸
3 : 挿入糸
4 : 解し鎖編み糸
24 : 連結用編糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数条のバーチカルブラインド用スラット生地を長さ方向に平行に並べて同時に編成する過程において平行に並んで隣り合うスラット生地とスラット生地の間に解し鎖編み糸を配置し、その左右に挿入糸を設け、スラット生地と解し鎖編み糸を係止させ、複数条のスラット生地を1枚の経編み地として編成することを特徴としたバーチカルブラインド用スラット生地の製法。
【請求項2】
請求項1において該解し鎖編み糸を解すことでその一枚の経編み地を複数条のスラットに分割することを特徴としたバーチカルブラインド用スラット生地の製法。
【請求項3】
請求項1及び2において該解し鎖編み糸の左右に配置した挿入糸の張力を該解し鎖編み糸をバーチカルブラインド用長さ方向と直角方向に変形させるようにその張力を強めて、解し鎖編み糸を解して複数条のスラット生地に分割した際に、挿入糸の張力を強めた効果により挿入糸がスラット生地からはみ出さないようにしたことを特徴とするバーチカルブラインド用スラット生地の製法。
【請求項4】
請求項1から3において、該解し鎖編み糸の色をスラット生地構成挿入糸やスラット生地構成鎖編み糸と異ならせたことを特徴としたバーチカルブラインド用スラット生地の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−327313(P2007−327313A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184907(P2006−184907)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(593071823)株式会社黒沢レ−ス (13)
【Fターム(参考)】