説明

バーナの火炎監視装置

【課題】紫外線放電管の寿命を延ばすことができるようにした、バーナの火炎監視装置を提供する。
【解決手段】水素を含む化合物を成分として含む燃料を火炎を伴って燃焼させるバーナの、火炎を検出して監視する火炎監視装置100であって、少なくとも紫外線を透過する密閉容器1の中に陽極3及び陰極5と、ガス7とが封入された紫外線放電管10と、陽極3と陰極5との間に電圧を間欠的に印加する電圧印加手段と、火炎の状態を判断する状態判断部40と、を備える。また、電圧印加手段は、例えば、直流電源20と、高周波発振回路31及び低周波発振回路33を含む。この電圧印加手段は、状態判断部40が火炎の状態を不安定状態であると判断するときは電圧の印加周期をT1とし、状態判断部40が火炎の状態を安定状態であると判断するときは電圧の印加周期をT1よりも長いT2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナの火炎監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。即ち、特許文献1には、金属の光電効果とガス増幅を利用した紫外線放電管が開示されている。この紫外線放電管は、紫外線透過ガラス製の気密容器内に一対の電極(陽極及び陰極)と特殊なガスとを封入したものである。陽極及び陰極間に電圧を印加し、この状態で火炎などから放射される紫外線の光子が陰極に入射すると、光電子放出効果によって陰極表面から電子が放出される。そして、この電子放出がきっかけとなって放電が開始される。紫外線放電管は、その感度波長範囲が160〜300nm程度と狭く、可視光線の波長範囲と重ならないので、火炎の検出装置や監視装置として使用されている。
【0003】
なお、特許文献1には、このような紫外線放電管において、電圧の印加、非印加のデューティー比(即ち、第1の電圧の印加時間と、第2の電圧の印加時間との比)を可変とする構成が記載されている。また、このデューティー比を調整することによって、バックグラウンド放電(暗放電)を低減できることが記載されている。
一方、特許文献2には、紫外線検出器の寿命を判定する手段として、シャッタを開閉して、シャッタが閉じているときの紫外線検出器の放電を計測する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−132397号公報
【特許文献2】特開平2−97823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、紫外線放電管には寿命があることが知られており、それは、火炎の検知時間に比例することが経験的に知られていた。また、このような経験的知見から、紫外線放電管の寿命は、火炎から発する紫外線の光子を受けることによって、気密容器内の電極やガスが励起し劣化することによるもの、と考えられてきた。このような考察を裏付けることを目的として、過去にいくつかの実験もなされたが、何れも短時間の燃焼を繰り返すボイラなどを用いた実験であり、これらの実験の結果は、ばらつきが大きかったので、明確な原因は判明していなかった。
【0006】
そこで、本発明者らは、燃焼熱の供給源として同一構造のバーナを複数有し、24時間連続運転する炉を用いて実験を行った。この実験では、複数のバーナを同一条件で24時間連続燃焼させると共に、これら複数のバーナの各々に対して、同一構造の紫外線放電管をそれぞれ割り当てた。また、紫外線放電管の陽極及び陰極間(即ち、電極間)に印加する電圧の周期を各紫外線放電管で異なる値に設定した。そして、このような条件の下で、各紫外線放電管により、割り当てられたバーナの火炎を検知する実験を行った。
その結果、図7に示すように、紫外線放電管の寿命は、紫外線放電管の電極間に印加される電圧の周期にほぼ比例(即ち、周波数にほぼ反比例)するということが分かった。つまり、紫外線放電管の寿命は、受光によるものではなく、受光により電極間で生じる放電の回数(即ち、放電回数)によるものである、ということが分かった。
【0007】
図7についてより詳しく説明すると、横軸(X軸)は紫外線放電管の電極間に印加する電圧の周波数[Hz]を示し、縦軸(Y軸)は紫外線放電管の寿命[hr]を示す。図7中の各プロットは各周波数における実験結果の平均値であり、最小二乗法により、各プロットから近似式(1)を得た。
Y=374245*X−0.9013…(1)
本発明は、このような実験結果に基づいてなされたものであって、紫外線放電管の寿命を延ばすことができるようにした、バーナの火炎監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るバーナの火炎監視装置は、水素を含む化合物を成分として含む燃料を火炎を伴って燃焼させるバーナの、前記火炎を検出して監視する火炎監視装置であって、少なくとも紫外線を透過する密閉容器の中に複数の電極と気体とが封入された紫外線放電管と、前記複数の電極間に電圧を間欠的に印加する電圧印加手段と、前記火炎の状態を判断する状態判断手段と、を備え、前記電圧印加手段は、前記状態判断手段が前記火炎の状態を不安定状態であると判断するときは前記電圧の印加周期を第1の周期とし、前記状態判断手段が前記火炎の状態を安定状態であると判断するときは前記電圧の印加周期を第2の周期とし、前記第2の周期は前記第1の周期よりも長いことを特徴とする。
【0009】
このような構成であれば、火炎の状態が安定状態であるときは、不安定状態であるときと比較して、電極間の放電回数を少なくすることができるので、紫外線放電管の寿命を延ばすことができる。特に、24時間連続運転を原則とする炉では、その燃焼期間の大部分が安定状態である。このため、本発明を上記の連続運転炉に適用した場合は、寿命延長の効果はいっそう顕著となる。
なお、「電圧印加手段」としては、例えば、後述の直流電源20、高周波発振回路31及び低周波発振回路33が該当する。また、「状態判断手段」としては、例えば、後述の状態判断部40が該当する。さらに、「第1の周期」としては、例えば、後述の周期T1が該当する。「第2の周期」としては、例えば、後述の周期T2が該当する。
【0010】
また、上記のバーナの火炎監視装置において、前記状態判断手段は、前記バーナの点火時からの経過時間が所定の値未満であるときは前記火炎の状態を不安定状態であると判断し、前記経過時間が所定の値以上であるときは前記火炎の状態を安定状態であると判断する、ことを特徴としてもよい。このような構成であれば、火炎の状態を精度良く、かつ簡単に判断することができる。なお、「所定の値」とは、例えば、バーナの点火時からの経過時間と、火炎の状態との関係を予め調査しておき、この調査の結果に基づいてユーザが任意に設定することができる値である。バーナの点火時からの経過時間と、火炎の状態との間には相関がある。点火直後の火炎の状態は不安定状態であるが、時間が経過するにつれて火炎の状態は安定状態となる傾向がある。
【0011】
また、上記のバーナの火炎監視装置において、前記状態判断手段は、前記バーナのバーナタイル温度が所定の値未満であるときは前記火炎の状態を不安定状態であると判断し、前記バーナタイル温度が所定の値以上であるときは前記火炎の状態を安定状態であると判断する、ことを特徴としてもよい。ここで、「バーナタイル」とは、例えば、火炎の形を整えるための耐火性の筒状部材である。バーナタイルは、バーナの火炎を噴出する側に配された状態で使用される。また、「バーナタイル温度」とは、バーナタイルの内部温度若しくはその表面温度或いはその近傍の温度のことを意味する。このような構成であれば、火炎の状態を精度良く、かつ簡単に判断することができる。
【0012】
また、上記のバーナの火炎監視装置において、前記バーナは、炉に対して燃焼熱を供給し、前記状態判断手段は、前記バーナによって燃焼熱が供給される前記炉の内部温度が所定の値未満であるときは前記火炎の状態を不安定状態であると判断し、前記内部温度が所定の値以上であるときは前記火炎の状態を安定状態であると判断する、ことを特徴としてもよい。このような構成であれば、火炎の状態を精度良く、かつ簡単に判断することができる。
【0013】
また、上記のバーナの火炎監視装置において、前記所定の値は、前記燃料の発火点以上の値であることを特徴としてもよい。ここで、「発火点」とは、火源がなくとも発火する最低温度のことを意味する。このような構成であれば、燃料ガスについて、不燃の可能性があるときは火炎の状態を不安定状態であると判断し、不燃の可能性がないときは火炎の状態を安定状態であると判断することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、紫外線放電管の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るバーナの火炎監視装置100の構成例を示す図。
【図2】紫外線放電管10の構成例を示す図。
【図3】高周波発振回路31及び低周波発振回路33の出力波形の一例を示す図。
【図4】火炎の状態を判断する状態判断手段の一例(その1)を示す図。
【図5】火炎の状態を判断する状態判断手段の一例(その2)を示す図。
【図6】火炎の状態を判断する状態判断手段の一例(その3)を示す図。
【図7】本発明者らが行った実験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成で同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係るバーナの火炎監視装置100の構成例を示す図である。ここで、バーナは、水素を含む化合物を成分として含む燃料(例えば、メタンを始めとする炭化水素)を、火炎を伴って燃焼させる(即ち、有炎燃焼させる)ものであり、火炎監視装置100は、このバーナの火炎を検出して監視するものである。
【0017】
図1に示すように、この火炎監視装置100は、紫外線放電管10と、直流電源20と、高周波発振回路31と、低周波発振回路33と、状態判断部40と、スイッチ素子41と、トランジスタ51と、コンデンサ53、55と、昇圧トランス58と、ダイオード54及び抵抗素子57と、を有する。
これらの中で、紫外線放電管10は、バーナの火炎から放出される紫外線(即ち、UV)を検出するための検出器である。図2に示すように、この紫外線放電管10は、例えば、内側と外側との間で少なくとも紫外線を透過する密閉容器1と、この密閉容器1内に配置され、封入された陽極3及び陰極5と、を有する。陽極3と陰極5は、一定の距離を置いて対向して配置されている。また、この密閉容器1内には、陽極3及び陰極5と共にガス(例えば、アルゴンを始めとする希ガスの混合気)7が封入されている。
【0018】
図1に戻って、直流電源20は、昇圧トランス58の一次側に電圧を印加し、二次側に生じる高電圧を紫外線放電管10が有する陽極と陰極との間(即ち、電極間)に印加するものである。後述するように、この直流電源20から出力される電圧は、トランジスタ51がオン、オフを繰り返すことにより例えば矩形波に変換される。そして、変換された矩形波は、昇圧トランス58を介して紫外線放電管10の陽極と、これと並列に配されたコンデンサ53の一端とに印加される。昇圧トランス58の二次側電圧の値は、例えば300[V]である。また、コンデンサ53の容量値は例えば20[pF]である。直流電源20の電圧は例えば5[V]である。
【0019】
高周波発振回路31は、高周波の波形信号を発生させる回路である。例えば図3(a)に示すように、高周波発振回路31は、高周波の波形信号として、周期T1の矩形波を発生させる。また、低周波発振回路33は、低周波の波形信号を発生させる回路である。例えば図3(b)に示すように、低周波発振回路33は、低周波の波形信号として、周期T2の矩形波を発生させる。ここで、T1<T2である。一例を挙げると、T1は0.05[秒]であり、T2は0.5[秒]である(即ち、高周波発振回路31は例えば20[Hz]の発振を行い、低周波発振回路33は例えば2[Hz]の発振を行う。)。
【0020】
図1において、この高周波発振回路31から出力される高周波の矩形波、又は、低周波発振回路33から出力される低周波の矩形波の何れか一方が、トランジスタ51のベースに印加されることにより、トランジスタ51がオンする。例えば、高周波の矩形波と低周波の矩形波は、Hのレベルが互いに同じ値となっており、且つ、Lのレベルも互いに同じ値となっている。そして、Hのレベルはトランジスタ51の閾値電圧以上の値であり、Lのレベルはトランジスタ51の閾値電圧未満の値となっている。
状態判断部40は、所定の判断材料に基づいて、バーナの火炎の状態を安定状態又は不安定状態の何れか一方であると判断するものである。例えば、状態判断部40は、バーナの点火時からの経過時間、又は、バーナタイル温度若しくは炉の内部温度(即ち、炉内温度)等に基づいて、上記の判断を行う。
【0021】
詳しく説明すると、例えば図4に示すように、状態判断部40は計時部61と有線又は無線によって信号の送受可能に接続されている。ここで、計時部61は、図示しない点火装置が作動してバーナ70に点火された時(即ち、バーナ70の点火時)からの経過時間を計測するものである。状態判断部40は、この計時部61から送信されてくる信号(即ち、経過時間に関する情報)に基づいて、バーナ70の火炎の状態を判断する。一例を挙げると、状態判断部40は、バーナ70の点火時からの経過時間が5[分]以上であるときは火炎の状態は安定状態であると判断し、経過時間が5[分]未満であるときは火炎の状態は不安定状態であると判断する。
【0022】
又は、例えば図5に示すように、バーナタイル71の内部若しくはその表面或いはその近傍には温度測定部81が配置されており、状態判断部40はこの温度測定部81と有線又は無線によって信号の送受可能に接続されている。ここで、バーナタイル71とは、燃焼により生じる熱の一部を火炎基部に還流し、火炎を安定させるための耐火性の筒状部材である。例えば図5に示すように、バーナ70は、固定具73により、炉壁91を貫通する貫通穴内に固定され、バーナ70の先端(即ち、火炎の噴射口)にバーナタイル71が取り付けられている。バーナタイル71の先端は炉の内部(即ち、炉内)92に面しており、炉内92に向けて火炎を保炎しつつ放出できるようになっている。
【0023】
温度測定部81は、このようなバーナタイル71の内部温度若しくはその表面温度或いはその近傍の温度(即ち、バーナタイル温度)を測定し、その測定結果を示す信号を状態判断部40に向けて送信する。状態判断部40は、温度測定部81から送信されてくる信号(即ち、バーナタイル温度に関する情報)に基づいて、バーナ70の火炎の状態を判断する。一例を挙げると、状態判断部40は、バーナタイル温度が760[℃]以上であるときは火炎の状態は安定状態であると判断し、バーナタイル温度が760[℃]未満であるときは火炎の状態は不安定状態であると判断する。ここで、760[℃]は、バーナ70に供給される燃料(例えば、天然ガス)の発火点以上の値である。なお、温度測定部81は、例えば熱電対である。
【0024】
若しくは、例えば図6に示すように、炉内92には温度測定部83が配置されており、状態判断部40はこの温度測定部83と有線又は無線によって信号の送受可能に接続されている。温度測定部83は、例えば熱電対である。そして、この温度測定部83から送信されてくる信号(即ち、炉内温度に関する情報)に基づいて、バーナ70の火炎の状態を判断する。一例を挙げると、状態判断部40は、炉内温度が760[℃]以上であるときは火炎の状態は安定状態であると判断し、炉内温度が760[℃]未満であるときは火炎の状態は不安定状態であると判断する。
【0025】
或いは、上記の経過時間、又は、バーナタイル温度若しくは炉内温度のうちの何れか2つ以上の情報を組み合わせて、火炎の状態を判断してもよい。一例を挙げると、状態判断部40は、バーナ70の点火時からの経過時間が5[分]以上であり、且つ、バーナタイル温度(若しくは、炉内温度)が760[℃]以上であるときは火炎の状態は安定状態であると判断し、それ以外の場合は火炎の状態は不安定状態であると判断する。つまり、時間と温度の両方を見て、火炎の状態を判断する。また、他の例を挙げると、状態判断部40は、バーナタイル温度と炉内温度の両方が760[℃]以上であるときは火炎の状態は安定状態であると判断し、それ以外の場合は火炎の状態は不安定状態であると判断する。つまり、複数箇所の温度を見て、火炎の状態を判断する。
【0026】
次に、図1に示す火炎監視装置100の各要素の接続関係について説明する。直流電源20の正極は、昇圧トランス58の一次側を介してトランジスタ51のコレクタと、昇圧トランス58の二次側は、ダイオード54を介して、コンデンサ53及び紫外線放電管10に接続されている。また、直流電源20の正極は、スイッチ素子41を介して、高周波発振回路31の入力側の端子、又は、低周波発振回路33の入力側の端子の何れか一方とも選択的に接続されるようになっている。スイッチ素子41と状態判断部40は、有線又は無線によって信号の送受可能に接続されており、状態判断部40から出力される制御信号に基づいて、スイッチ素子41の接続先が切り替わるようになっている。
【0027】
紫外線放電管10の陰極は、コンデンサ55の一端と、抵抗素子57の一端とにそれぞれ接続されている。また、コンデンサ53、55の他端と、抵抗素子57の他端と、トランジスタ51のエミッタは、直流電源20の負極にそれぞれ接続されている。なお、直流電源20の負極は、例えば接地電位に固定されている。また、高周波発振回路31の出力側の端子と低周波発振回路33の出力側の端子は、トランジスタ51のベースにそれぞれ接続されている。
【0028】
次に、図1に示した火炎監視装置100の動作例について説明する。
上記のように、バーナの点火時からの経過時間、又は、バーナタイルの温度若しくは炉内温度等に基づいて、状態判断部40が火炎の状態を不安定状態であると判断すると、スイッチ素子41の接続先は高周波発振回路31となり、スイッチ素子41を介して直流電源20の正極は高周波発振回路31の入力側の端子に接続される。これにより、高周波発振回路31は例えば20[Hz]の周波数で発振を行い、トランジスタ51は20[Hz]の周波数に同期してオン、オフを繰り返す。トランジスタ51が20[Hz]の周波数に同期してオン、オフを繰り返すことにより、直流電源20の正極と負極は20[Hz]の周波数に同期して短絡される。これにより、直流電源20から出力された電圧は昇圧トランス58により例えば周期が20[Hz]の高電圧パルスに変換され、この変換された電圧がダイオード54を介してコンデンサ53に蓄電され、紫外線放電管10の陽極に印加される。
【0029】
一方、状態判断部40が火炎の状態を安定状態であると判断すると、スイッチ素子41の接続先は低周波発振回路33となり、スイッチ素子41を介して直流電源20の正極は低周波発振回路33の入力側の端子に接続される。これにより、低周波発振回路33は例えば2[Hz]の周波数で発振を行い、トランジスタ51は2[Hz]の周波数に同期してオン、オフを繰り返す。トランジスタ51が2[Hz]の周波数に同期してオン、オフを繰り返すことにより、直流電源20の正極と負極は2[Hz]の周波数に同期して短絡される。これにより、直流電源20から出力された電圧は昇圧トランス58により例えば周期が2[Hz]の高電圧パルスに変換され、この変換された電圧がダイオード54を介してコンデンサ53に蓄電され、紫外線放電管10に印加される。
【0030】
このように、状態判断部40が火炎の状態を不安定状態であると判断しているとき、又は安定状態であると判断しているときの何れにおいても、火炎中の励起OHラジカルから放出される紫外線の光子が紫外線放電管10の陰極に入射すると、図2に示すように、紫外線放電管10の陰極5から光電子が放出され、放出された光電子は電極間の電圧により加速しながら陽極3に向かって進む。この紫外化学発光は、火炎に特有の高エネルギーのものなので、赤熱した炉壁などから発する赤外可視光とは明瞭に区別できるので、火炎のみを確実に検出できる。陽極3に向かって加速しながら進む光電子は、紫外線放電管10に封入されたガスの分子と衝突してこれを電離させ、別の電子を放出させる。このように電子が加速と衝突を繰り返すことにより、電極間に電流(即ち、放電電流)iが流れ、図1に示したコンデンサ53に蓄えられた電荷が放出される。そして、コンデンサ55の両端と抵抗素子57の両端とに短い時間パルス電圧を発生させる。
【0031】
また、この放電により、コンデンサ53に蓄えられた電荷が消費され、紫外線放電管10の電極間の電圧は放電維持電圧(即ち、放電を維持可能な電圧)以下に下がり、放電が停止する。そして、コンデンサ53は、矩形波の電圧が印加されることによって再び充電され、コンデンサ53の両端の電圧は上昇する。これにより、紫外線放電管10の電極間の電圧は放電開始電圧(即ち、放電を開始可能な電圧)以上となり、紫外線の入射によって放電可能となる。この繰り返しで、紫外線放電管10は、紫外線の有無をパルス電圧で出力させる。このパルス電圧は出力端子59から出力される。火炎監視装置100は、この出力端子59から出力されるパルス電圧に基づいて、火炎を検出する。
【0032】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、火炎の状態が安定状態であるときは、不安定状態であるときと比較して、電極間の放電回数を少なくすることができるので、紫外線放電管10の寿命を延ばすことができる。例えば、安定状態であると判断されているときの電圧印加周期を0.05[秒]から0.5[秒]に10倍伸ばすことにより、その間の寿命を約10倍に延ばすことができる。これにより、紫外線放電管10の長寿命化を実現することができる。特に、24時間連続運転を原則とする炉では、その燃焼期間の大部分が安定状態であるため、寿命延長の効果はいっそう顕著である。
火炎の状態が不安定状態であるときは、火炎の不検出は吹き消えの可能性が高く、未燃のガスが発生して爆発の危険性が高まるため、燃料ガスを速やかに遮断するなどの措置が必要である。
【0033】
一方、火炎の状態が安定状態であるときは、火炎の不検出は吹き消えには直結しない。未燃のガスは発生せず爆発の危険性はないため、その措置に緊急性はない。しかし、安定状態であるときの火炎の不検出は、万一火炎が消えた時には、不完全燃焼による炭化水素やアルデヒド、一酸化炭素などを生じ排気の清浄性を損なう可能性があるため、監視は必要である。そこで、安定状態であるときの電圧の印加周期を、不安定状態であるときの印加周期と比較して長くなるように変更することにより、バーナの安全性・排気清浄性と、紫外線放電管の長寿命化を両立させることができる。
【0034】
なお、上記の実施の形態では、密閉容器の中に封入された「複数の電極」として、陽極3と陰極5とがそれぞれ一つずつ対向した状態で配置された構成を示したが、これはあくまで一例である。本発明では、一つの密閉容器1内に、陽極3と陰極5とがそれぞれ複数ずつ配置された構成であってもよい。或いは、陽極3と陰極5のうちの一方が一つ配置され、他方が複数配置された構成であってもよい。何れの場合も、陽極3と陰極5とが一定の距離を置いて対向して配置されていれば、陽極5に紫外線の光子が入射することにより、電極間に電流(即ち、放電電流)iが流れるため、上記の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 密閉容器
3 陽極
5 陰極
7 ガス
10 紫外線放電管
20 直流電源
31 高周波発振回路
33 低周波発振回路
40 状態判断部
41 スイッチ素子
51 トランジスタ
53、55 コンデンサ
57 抵抗素子
59 出力端子
61 計時部
70 バーナ
71 バーナタイル
73 固定具
81、83 温度測定部
91 炉壁
92 炉内
100 火炎監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含む化合物を成分として含む燃料を火炎を伴って燃焼させるバーナの、前記火炎を検出して監視する火炎監視装置であって、
少なくとも紫外線を透過する密閉容器の中に複数の電極と気体とが封入された紫外線放電管と、
前記複数の電極間に電圧を間欠的に印加する電圧印加手段と、
前記火炎の状態を判断する状態判断手段と、を備え、
前記電圧印加手段は、
前記状態判断手段が前記火炎の状態を不安定状態であると判断するときは前記電圧の印加周期を第1の周期とし、前記状態判断手段が前記火炎の状態を安定状態であると判断するときは前記電圧の印加周期を第2の周期とし、
前記第2の周期は前記第1の周期よりも長いことを特徴とするバーナの火炎監視装置。
【請求項2】
前記状態判断手段は、
前記バーナの点火時からの経過時間が所定の値未満であるときは前記火炎の状態を不安定状態であると判断し、前記経過時間が所定の値以上であるときは前記火炎の状態を安定状態であると判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のバーナの火炎監視装置。
【請求項3】
前記状態判断手段は、
前記バーナのバーナタイル温度が所定の値未満であるときは前記火炎の状態を不安定状態であると判断し、
前記バーナタイル温度が所定の値以上であるときは前記火炎の状態を安定状態であると判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のバーナの火炎監視装置。
【請求項4】
前記バーナは、炉に対して燃焼熱を供給し、
前記状態判断手段は、
前記バーナによって燃焼熱が供給される前記炉の内部温度が所定の値未満であるときは前記火炎の状態を不安定状態であると判断し、前記内部温度が所定の値以上であるときは前記火炎の状態を安定状態であると判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のバーナの火炎監視装置。
【請求項5】
前記所定の値は、前記燃料の発火点以上の値であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のバーナの火炎監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−67942(P2012−67942A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211302(P2010−211302)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】