説明

パイプカッター

【課題】そこで、本発明は、容易かつ迅速に効率良くパイプを切断することが可能なパイプカッターの提供を目的とする。
【解決手段】パイプPを切断する切断刃3を備え、切断刃3の刃先部31を送るための凸歯30が、非円形輪郭上に配置され、パイプPへの刃先部31の1サイクルごとの切り込み量が次第に増加するように切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道配管やガス配管等に用いられる樹脂製(塩化ビニル、ポリブデン、ポリエチレン等)のパイプを、切断する際に、特許文献1記載のような一対のレバーハンドルを開閉操作させ、切断刃(カッター刃)を刻み送り(ラチェット送り)して、1サイクル(1回の開閉操作)ごとに一定の切込量ずつパイプに食い込ませて切断するものがあった。
そして、刻み送りによる送りピッチ角度や1サイクルごとの切込量は、切断が困難な箇所を切断するのに適した角度や切込量で一定であった。
【特許文献1】特開2002ー233018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のパイプカッターは切断が困難な区間を切断するのに適した1サイクルあたりで小さな角度や切込量で切断刃を一定量で刻み送りする(送り揺動する)ため、1サイクルあたり大きな切込量で切断が可能な切断部であっても、切断が困難な箇所に対応した1サイクルあたり小さな切込量で切断刃を送り、作業効率が悪いという問題があった。つまり、パイプからの抵抗が少ない切断が容易な区間であってもレバーを繰り返し開閉操作し、小さな切込量で時間をかけて切断していた。
【0004】
そこで、本発明は、容易かつ迅速に効率良くパイプを切断することが可能なパイプカッターの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るパイプカッターは、パイプを切断する切断刃を備え、該切断刃の刃先部を送るための凸歯が、非円形輪郭上に配置され、上記パイプへの上記刃先部の1サイクルごとの切込量が次第に増加するように切断するものである。
【0006】
また、上記パイプを受けるパイプ受部を有する第1レバーと、該第1レバーに枢結される第2レバーと、該第1レバーに枢着されると共に上記凸歯を有する上記切断刃と、上記凸歯に係合する係止爪部を有する揺動係止片と、を備え、上記第1レバーと上記第2レバーとの開閉操作によって、上記切断刃は、上記揺動係止片によって送り揺動され、上記刃先部が上記パイプ受部に配設された該パイプに最初に食い込んだ開始状態から上記パイプを切断した切断完了状態までの切断送り区間内で、上記開閉操作によって揺動する上記刃先部の送りピッチ角度が次第に増加するように切断するものである。
【0007】
また、上記揺動係止片は、上記切断送り区間内で、上記凸歯との接触点を上記切断刃の枢着軸心に接近させながら、上記係止爪部を順次、上記凸歯に係合させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパイプカッターによれば、容易かつ迅速にパイプを切断できる。操作回数を減少させることができる。パイプ切断作業の効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1は、本発明のパイプカッターの実施の一形態を示す断面側面図である。
本発明のパイプカッターは、ガス配管や上下水道用配管に使用される、ポリエチレン管やポリブデン管、塩化ビニール管等の樹脂製のパイプや配管等を切断するものである。
図1に於て、樹脂製のパイプPの外周に沿うように支持可能なパイプ受部10を有する第1レバー1と、第1レバー1に枢結される第2レバー2と、パイプPを切断可能な切断刃3と、切断刃3の基端部3a側に一体状に形成されている複数の凸歯30…に順次係合する揺動係止片4と、凸歯30に係合して切断刃3の切断方向とは反対方向の揺動を阻止する阻止片5と、を備えている。
【0010】
第1レバー1は、パイプ受部10を一体状に形成している。また、切断刃3を、パイプ受部10とで挟んでパイプPを切断可能に、枢着軸11を介して枢着している。また、阻止片5を、切断刃3の凸歯30に係合可能に連結軸13を介して枢着している。
【0011】
第2レバー2は、第1レバー1に連結軸13を介して枢結(枢着)されている。つまり、第1レバー1及び第2レバー2は、連結軸13の連結軸心L3 廻りで、お互いの開閉方向に揺動可能なものである。また、揺動係止片4を、切断刃3の凸歯30に係合可能に枢結軸12を介して枢着している。また、揺動係止片4を凸歯30に係合する方向に常時弾発付勢する係止用弾発部材41を、枢結軸12に巻設するように取着している。また、阻止片5を凸歯30に係合する方向に常時弾発付勢する阻止用弾発部材51を、枢結軸12に巻設するように取着している。
【0012】
第2レバー2は、板状の第1リンク部材6の一方端部を、枢結軸12を介して、揺動自在に枢着している。第1リンク部材6の他方端部は、板状の第2リンク部材7に枢着されている。第2リンク部材7の一方端部は、切断刃3に枢着されている。
つまり、第1リンク部材6及び第2リンク部材7は、第2レバー2と切断刃3を連結連動させるリンク機構を形成している。そして、第1・2リンク部材6,7のリンク機構は、第2レバー2が第1レバー1に対して所定の開閉角度αを越えて開くと、パイプPから切断刃3の刃先部31を離間させるように設けられている。
【0013】
切断刃3は、パイプPを切断するための刃先部31を有している。第1レバー1に枢着軸11を介して揺動自在に枢着されている。枢着軸心L1 廻りに揺動自在なものである。また、刃先部31をパイプ受部10に接近させるように刻み送り(ラチェット送り)するための複数の凸歯30を、基端部3a側に一体状に設けている。
【0014】
揺動係止片4は、枢結軸12を介して、第2レバー2に枢着されている。枢結軸心L2 廻りに揺動自在なものである。切断刃3の凸歯30に係合可能な係止爪部40を有している。また、第1レバー1と第2レバー2とを所定の開閉角度α内で開閉操作すると、閉じ操作ごとに、切断刃3の凸歯30に係止爪部40を1つ1つ(順次)係合させながら、刃先部31をパイプPの切断方向に送っていく(送り揺動させる)ものである。言い換えると、切断刃3を、開閉操作ごと(1サイクルごと)にピッチ送り(刻み送り)するものである。また、所定の開閉角度αを越えて開き操作すると、凸歯30から係止爪部40が離脱するように配設されている。また、揺動係止片4は、板状の部材をU字状に折曲げ、係止爪部40を一体状に形成したものである。また、係止用弾発部材41によって、切断刃3の凸歯30方向へ常時弾発付勢されるものである。
【0015】
阻止片5は、連結軸13を介して、第1レバー1に枢着されている。連結軸13の連結軸心L3 廻りに揺動自在なものである。また、所定の開閉角度α内で、切断刃3の凸歯30に係合可能に配設されている。そして、第1レバー1と第2レバー2とを所定の開閉角度α内で開閉操作すると、切断刃3に常時接触しながら、係止片4に追従するように切断刃3の凸歯30に1つ1つ(順次)係合し、切断刃3がパイプPの切断方向とは逆方向に揺動するのを防止する(逆戻りを阻止する)ものである。また、所定の開閉角度αを越えて開き操作すると、凸歯30から離間するように配設されている。また、凸歯30との係合側とは反対の端部に、所定の傾倒姿勢で第2レバー2と当接する膨出部5aを有している。膨出部5aは、阻止片5が、連結軸心L3 廻りに揺動して、凸歯30に係合せずに、切断刃3方向へ(空振りして)傾倒するのを防止するものである。また、阻止用弾発部材51によって、切断刃3の凸歯30方向へ常時弾発付勢されるものである。
【0016】
ここで、切断刃3と凸歯30について図1と図2を用いて説明する。図2は、切断刃3の一例を示す側面図である。
凸歯30は、切断刃3の基端部3a側の外形輪郭上に設けられている。凸歯30が配設される外形輪郭は、非円形輪郭形状である。凸歯30は、切断刃3の枢着軸心L1 を中心とした円弧辺と円弧辺に接する直線とで形成されるJ字状の非円形輪郭上に、配置されている。
【0017】
次に、揺動係止爪部40と凸歯30との接触点Kと、枢着軸心L1 と接触点Kの接触距離(寸法)Sと、を用いて説明する。
刃先部31がパイプPに最初に食い込んだ切断の開始状態の際に係止爪部40が凸歯30に接触する第1接触点K1 から、刃先部31がパイプPの3分の1以上食い込んだ切断途中状態の際に係止爪部40が凸歯30に接触する第6接触点K6 までの間で、接触距離Sが次第に小さくなるように凸歯30を設けている。そして、第6接触点K6 からパイプPを切断した切断完了状態の際に係止爪部40が凸歯30に接触する第9接触点K9 までの接触距離Sは変化せず同じ長さ(接触距離Sが一定)となるように凸歯30を設けている。つまり、第1接触点K1 を有する凸歯30から第6接触点K6 を有する凸歯30までは、直線状に配置され、第6接触点K6 を有する凸歯30から第9接触点K9 を有する凸歯30までは枢着軸心L1 を中心とした円弧状に配置されている。
【0018】
また、枢着軸心L1 から各々の接触点K(K1 ,K2 ,…,K9 )を結ぶ補助線と、その補助線と隣合う補助線との角度をピッチ角度βとすると、第1接触点K1 から第6接触点K6 までの各々のピッチ角度β(β12,β23,β34,β45,β56,)を同じ大きさに形成している。
そして、第6接触点K6 から第9接触点K9 までの各々のピッチ角度β(β67,β78,β89)を、第1接触点K1 から第6接触点K6 までのピッチ角度β(β12,β23,β34,β45,β56,)よりも大きい角度、かつ、各々が同じ大きさの角度に形成している。
例えば、図2に於て、第1接触点K1 から第6接触点K6 までの各々のピッチ角度β(β12,β23,β34,β45,β56,)は、10°に形成されている。第6接触点K6 から第9接触点K9 までの各々のピッチ角度β(β67,β78,β89)は、11°に形成されている。
【0019】
さらに、切断刃3を、刃先部31がパイプPに最初に食い込んだ開始状態からパイプPを切断した切断完了状態までの切断送り区間での状態を用いて説明する。
図3は、開始状態の要部断面側面図である。なお、図3に於て、第1・2レバー1,2、切断刃3、係止片4、パイプP、以外は図示省略する。
【0020】
図3に於て、刃先部31がパイプPに最初に食い込んだ開始状態の際、第1レバー1及び第2レバー2は閉じた状態であって、このときの接触点Kを第1接触点K1 とし、刃先部31の刃先位置Qを第1刃先位置Q1 とする。
また、切断完了状態の際の刃先部31の刃先位置Qを第9刃先位置Q9 として、一点鎖線で示す。
また、次の接触点Kである第2接触点K2 に係止爪部40が当接し、刃先部31がパイプPに切れ込んだ際の刃先位置Qを第2刃先位置Q2 として一点鎖線で示す。
同様に、各々の接触点K3 ,K4 ,K5 ,K6 ,K7 ,K8 での刃先位置Qを第3・4・5・6・7・8刃先位置Q3 ,Q4 ,Q5 ,Q6 ,Q7 ,Q8 として一点鎖線で示す。 また、隣合う刃先位置Qの間の角度である刃先部31の各々の送りピッチ角度θ(θ12,θ23,θ34,θ45,θ56,θ67,θ78,θ89)を示す。
【0021】
係止爪部40が、第3接触点K3 から第4接触点K4 に移動した際に、刃先部31が、第3刃先位置Q3 から第4刃先位置Q4 に移動するときの送りピッチ角度θは、第3送りピッチ角度θ34である。
係止爪部40が、第4接触点K4 から第5接触点K5 に移動した際に、刃先部31が、第4刃先位置Q4 から第5刃先位置Q5 に移動するときの送りピッチ角度θは、第4送りピッチ角度θ45である。
係止爪部40が、第5接触点K5 から第6接触点K6 に移動した際に、刃先部31が、第5刃先位置Q5 から第6刃先位置Q6 に移動するときの送りピッチ角度θは、第5送りピッチ角度θ56である。
係止爪部40が、第6接触点K6 から第7接触点K7 に移動した際に、刃先部31が、第6刃先位置Q6 から第7刃先位置Q7 に移動するときの送りピッチ角度θは、第6送りピッチ角度θ67である。
係止爪部40が、第7接触点K7 から第8接触点K8 に移動した際に、刃先部31が、第7刃先位置Q7 から第8刃先位置Q8 に移動するときの送りピッチ角度θは、第7送りピッチ角度θ78である。
【0022】
図2及び図3に於て、切断刃3は、枢着軸心L1 から接触点Kまでの接触距離Sとピッチ角度βとの組合せによって、第3送りピッチ角度θ34よりも、第4送りピッチ角度θ45の方が大きい角度となるように、形成されている。
また、第5送りピッチ角度θ56よりも、第6ピッチ送り角度θ65の方が大きい角度となるように、形成されている。
【0023】
つまり、本発明のパイプカッターは、パイプPを切断する際、刃先部31がパイプ受部10に配設されたパイプPに最初に食い込んだ開始状態からパイプPを切断した切断完了状態までの切断送り区間内で、送りピッチ角度θがパイプPへの刃先部31の1サイクル(1回の開閉操作)ごとの切込量が次第に増加するように切断するものである。また、刃先部31の送りピッチ角度θが次第に増加するように切断するものである。切断速度が増加するように切断する(送り揺動される)ものである。1サイクルとは、一定の開閉角度にて、第1・2レバー1 ,2の開閉操作を1回行うことである。
【0024】
また、切断刃3は、枢着軸心L1 から接触点Kまでの接触距離Sとピッチ角度βとの組合せによって、第4送りピッチ角度θ45と第5送りピッチ角度θ56が等しい角度となるように形成されている。
また、第6送りピッチ角度θ67と第7送りピッチ角度θ78が等しい角度となるように形成されている。
また、第7送りピッチ角度θ78と第8送りピッチ角度θ89が等しい角度となるように形成されている。
つまり、本発明のパイプカッターは、切断送り区間内の所定の送り区間では、一定の送りピッチ角度θで切断方向に揺動し、1サイクル(1回の開閉操作)ごとの切込量を一定として切断するものである。
【0025】
また、凸歯30は、切断の開始状態の第1接触点K1 から切断途中の第6接触点K6 までの切断送り区間において、接触点Kを、枢着軸心L1 に接近させながら係止爪部40に順次係合するものである。そして、切断途中の第6接触点K6 から切断完了状態までの切断送り区間において、係止爪部40が順次、係合した際に、枢着軸心L1 から各々の接触点Kの各々の接触距離Sが等しくなるように形成されているものである。
【0026】
言い換えると、係止片4は、切断送り区間内で、凸歯30との接触点Kを切断刃3の枢着軸心L1 に接近させながら、係止爪部40を順次、凸歯30に係合させるものである。
また、切断送り区間内の所定区間では、凸歯30との接触点Kを切断刃3の枢着軸心L1 から所定の距離を保持して、係止爪部40を順次、凸歯30に係合させるものである。
【0027】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、樹脂製のパイプ以外に、樹脂製の棒材や電線等を切断しても良い。また、切断するパイプの大きさ(外径)によって、ピッチ角度βが変化する接触点Kを変更しても良い。また、ピッチ角度βの値も設計変更自由である。
【0028】
上述した本発明のパイプカッターの使用方法(作用)について説明する。
第1レバー1のパイプ受部10に切断すべきパイプPを沿わせて支持し、第1レバー1及び第2レバー2を所定の開閉角度αの範囲内で開き操作する。
すると、図1に示すように、係止用弾発部材41によって弾発付勢される揺動係止片4の係止爪部41が切断刃3の凸歯30に係合する。また、阻止用弾発部材51によって弾発付勢される阻止片5が、次に係止爪部40が係合する(前の段階の)凸歯30に係合する。
次に、第1レバー1及び第2レバー2を閉じ操作する。
すると、図3に示すように、切断刃3の刃先部31がパイプPに切り込む。第1レバー1及び第2レバー2を開閉操作することで、係止片4の係止爪部40が切断刃3の凸歯30に、開閉操作ごと(1サイクルごと)に順次係合し、切断刃3の刃先部31をパイプPに食い込ませて切断させる。また、図3に於て図示省略するが、この開閉操作の際に、阻止片5は、切断刃3の凸歯30に常時接触し、切断刃3の切断とは反対方向の揺動を阻止(規制)する。また、切断後、第1レバー1及び第2レバー2を所定の開閉角度αより大きく開き操作することで、図示省略の第1・2リンク部材6,7によって刃先部31がパイプPから離間する。
【0029】
ここで、切断刃3の刃先部31がパイプPに最初に食い込んだ開始状態からパイプPを切断した切断完了状態までの切断送り区間内で、切断刃3と揺動係止片4とについて説明する。
図4は、切断途中状態の要部断面側面図である。図5は、切断完了状態の要部断面側面図である。なお、図3〜図5に於て、第1・2レバー1,2、切断刃3、揺動係止片4、パイプP、以外は図示省略する。
【0030】
図3〜図5に於て、切断送り区間内で、第1接触点K1 から第9接触点K9 へ係止爪部40が順次、当接する。この際、切断刃3の刃先部31は、揺動係止片4によって刻み送り(送り揺動)される。
例えば、第4送りピッチ角度θ45は、第3送りピッチ角度θ34よりも大きい角度で送り揺動される。
第5送りピッチ角度θ56は、第4送りピッチ角度θ45と等しい角度で送り揺動される。 第6送りピッチ角度θ65は、第5送りピッチ角度θ56よりも、大きい角度で送り揺動される。
第7送りピッチ角度θ78は、第6送りピッチ角度θ67と等しい角度で送り揺動される。 第8送りピッチ角度θ89は、第7送りピッチ角度θ78と等しい角度で送り揺動される。
【0031】
ここで、従来のパイプカッターで、開始状態から切断完了状態まで等間隔の送りピッチ角度θ(等ピッチ)でパイプPを切断した際は、パイプPの切断が容易となる区間がある。例えば、パイプPの切断部が開口状となり易い区間や、パイプPの軸心方向からの押圧を切断刃3が受けにくい区間である。また、切断される断面積が減少する区間である。つまり、切断抵抗が小さく、1サイクルごとの切込量が大きくてもパイプPに切断刃3を十分に食い込ませることが可能な区間である。
【0032】
図3〜図5に於て、本発明のパイプカッターは、開始状態から切断完了状態までの切断送り区間内で、開始状態から切断完了状態に切断刃3が近づくにつれて、切断が容易となる区間近傍で、切断刃3の送りピッチ角度θ(1サイクルごとの切込量)が大きくなる。その後、大きくなった送りピッチ角度θ(1サイクルごとの切込量)で切断していく。そして、切断終了状態近傍のさらに切断が容易となる区間近傍で、送りピッチ角度θ(1サイクルごとの切込量)はさらに大きくなる。その後、さらに大きくなった送りピッチ角度θ(1サイクルごとの切込量)で切断していく。
【0033】
また、図4に於て、切断する際にパイプPから切断刃3が受ける抵抗が僅かにしか変化しないような(等ピッチで切断した際に切断条件が似ている)区間、例えば、第4切断位置Q4 から第6切断位置Q6 の間では、1サイクルごとの切込量(送りピッチ角度θ)は増加しない(第4送りピッチ角度θ45と第5送りピッチ角度θ56は等しい)。
つまり、切断の条件が大きく変化しない(良好とならない)区間で、1サイクルごとの切込量を増加させないので、作業者に負担や違和感を与えない。
【0034】
即ち、パイプPを切断する際、刃先部31がパイプ受部10に配設されたパイプPに最初に食い込んだ開始状態からパイプPを切断した切断完了状態までの切断送り区間内で、本発明のパイプカッターは、パイプPへの刃先部31の1サイクルごとの切込量が次第に増加するように切断する。また、刃先部31の送りピッチ角度θが次第に増加するように切断する。切断速度が増加するように切断する。不等ピッチで切断する。
【0035】
また、切断送り区間内の所定の区間では1サイクルごとの切込量を一定で切断する。切断刃3が一定の送りピッチ角度θで切断方向に揺動する。等ピッチで切断する。
即ち、パイプPの切断抵抗に応じた(対応した)適切な送りピッチ角度θを段階的に使い分けて切断する。
【0036】
次に、揺動係止片4は、切断の開始状態の第1接触点K1 から切断途中の第6接触点K6 までの切断送り区間において、接触点Kを、枢着軸心L1 に接近させながら係止爪部40を順次、凸歯30に係合する。接触距離Sが次第に小さくなるように凸歯30に係合する。
そして、切断途中の第6接触点K6 から切断完了状態までの切断送り区間において、接触点Kを、枢着軸心L1 から一定の接触距離Sを保持しながら係止爪部40を順次、凸歯30に係合する。
【0037】
ここで、図3〜図5に於て、係止片4の枢結軸心L2 と接触点Kとを結ぶ補助線に対して、枢着軸心L1 から垂線を引いた際の長さ(距離)を、垂線寸法Tとする。
図3に於て、揺動係止片4の枢結軸心L2 と第1接触点K1 とを結ぶ補助線に対して、枢着軸心L1 から垂線を引いた長さを第1垂線寸法T1 とする。
また、図4に於て、揺動係止片4の枢結軸心L2 と第5接触点K5 とを結ぶ補助線に対して、枢着軸心L1 から垂線を引いた長さを第5垂線寸法T5 とする。
また、図5に於て、揺動係止片4の取結軸心L2 と第9接触点K9 とを結ぶ補助線に対して、枢着軸心L1 から垂線を引いた長さを第9垂線寸法T9 とする。
【0038】
凸歯30がJ字状の非円形輪郭状に配置されているので、垂線寸法Tは、揺動係止片4が、直線の外形輪郭上に配置されている凸歯30と接触していく際は、次第に小さくなる。そして、円弧状の外形輪郭上に配置されている凸歯30と接触していく際は、所定の垂線寸法Tのまま一定である。
即ち、本発明のパイプカッターは、接触点Kを力点とし、揺動軸心L1 を支点として、テコの原理を利用し、切断送り区間内の各々の切断位置Q1 …で、第1・2レバー1,2の閉じ操作から揺動係止片4を介して切断刃3の基端部3aに伝達される力(切断刃3を切断方向に送り揺動しようとする力)を、各々の切断位置Q1 …で切断刃3がパイプPに切り込むために適した切断力に変換させる。
【0039】
以上のように本発明は、パイプPを切断する切断刃3を備え、切断刃3の刃先部31を送るための凸歯30が、非円形輪郭上に配置され、パイプPへの刃先部31の1サイクルごとの切込量が次第に増加するように切断するので、従来よりも少ない開閉操作(サイクル数)でパイプPを切断できる。第1・2レバー1,2の開閉操作速度が一定の場合に、刃先部31の速度が次第に増加するように切断して迅速にパイプPを切断できる。即ち、切断開始状態は大きな回転トルクを発生して強力にパイプPを切り始め、その後は、パイプPがその切断面にてV字状に開いてゆくので、小さな回転トルクにて速く切断できて、パイプ切断作業の効率を向上できる。
【0040】
また、パイプPを受けるパイプ受部10を有する第1レバー1と、第1レバー1に枢結される第2レバー2と、第1レバー1に枢着されると共に凸歯30を有する切断刃3と、凸歯30に係合する係止爪部40を有する揺動係止片4と、を備え、第1レバー1と第2レバー2との開閉操作によって、切断刃3は、揺動係止片4によって送り揺動され、刃先部31がパイプ受部10に配設されたパイプPに最初に食い込んだ開始状態からパイプPを切断した切断完了状態までの切断送り区間内で、開閉操作によって揺動する刃先部31の送りピッチ角度θが次第に増加するように切断するので、従来よりも少ない開閉操作(サイクル数)でパイプPを切断できる。パイプPを迅速に切断できる。パイプPをスムーズに切断できる。また、送りピッチ角度θが切断条件(摩擦抵抗等)に対応し、開閉操作ごとに作業者が受ける力がバラつかず、操作する力を調整せずに一定の力で操作できる。パイプ切断作業の効率を向上できる。
【0041】
また、揺動係止片4は、切断送り区間内で、凸歯30との接触点Kを切断刃3の枢着軸心L1 に接近させながら、係止爪部40を順次、凸歯30に係合させるので、刃先部31の送りピッチ角度θが次第に増加するように切断刃3を揺動させ、迅速にパイプ等を切断できる。従来よりも少ない開閉操作(開閉数)でパイプPを切断できる。開閉操作ごとに作業者が受ける力がバラつかず、操作する力を調整せずに一定の力で操作できる。パイプ切断作業の効率を向上できる。
【0042】
また、従来のパイプカッターが、最初の切断に適した送りピッチ角度θが8°として、最初に切り込んだ開始状態から、均等な8°ずつの送りピッチ角度で10回の開閉操作(10回のサイクル)を行い切断を完了していたとすると、本発明のパイプカッターは、送りピッチ角度θを8°から次第に11°へと増加させることで、8回以内の開閉操作で切断が可能になる。即ち、パイプPを切断する際に、合計11回の開閉操作から合計9回の開閉操作に減少できる。約2割の工数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の一形態を示す要部断面側面図である。
【図2】切断刃の一例を示す側面図である。
【図3】作用を説明する切断の開始状態の要部断面側面図である。
【図4】作用を説明する切断の途中状態の要部断面側面図である。
【図5】作用を説明する切断完了状態の要部断面側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 第1レバー
2 第2レバー
3 切断刃
4 係止片
10 パイプ受部
30 凸歯
31 刃先部
40 係止爪部
1 枢着軸心
K 接触点
P パイプ
θ 送りピッチ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ(P)を切断する切断刃(3)を備え、該切断刃(3)の刃先部(31)を送るための凸歯(30)が、非円形輪郭上に配置され、上記パイプ(P)への上記刃先部(31)の1サイクルごとの切込量が次第に増加するように切断することを特徴とするパイプカッター。
【請求項2】
上記パイプ(P)を受けるパイプ受部(10)を有する第1レバー(1)と、該第1レバー(1)に枢結される第2レバー(2)と、該第1レバー(1)に枢着されると共に上記凸歯(30)を有する上記切断刃(3)と、上記凸歯(30)に係合する係止爪部(40)を有する揺動係止片(4)と、を備え、
上記第1レバー(1)と上記第2レバー(2)との開閉操作によって、上記切断刃(3)は、上記揺動係止片(4)によって送り揺動され、
上記刃先部(31)が上記パイプ受部(10)に配設された該パイプ(P)に最初に食い込んだ開始状態から上記パイプ(P)を切断した切断完了状態までの切断送り区間内で、上記開閉操作によって揺動する上記刃先部(31)の送りピッチ角度(θ)が次第に増加するように切断する請求項1記載のパイプカッター。
【請求項3】
上記揺動係止片(4)は、上記切断送り区間内で、上記凸歯(30)との接触点(K)を上記切断刃(3)の枢着軸心(L1 )に接近させながら、上記係止爪部(40)を順次、凸歯(30)に係合させる請求項2記載のパイプカッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−183462(P2009−183462A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26531(P2008−26531)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(390013480)花園工具株式会社 (3)
【Fターム(参考)】