説明

パイプベント構造

【課題】 工場において組み立てることができ、組み立てられた部材をトラックによる輸送可能とすることにより、橋梁の架設現場での組立・分解作業を短い工期で行うことができるようにするパイプベント構造を提供する。
【解決手段】 横継枠41〜44の所定のものに昇降自在に安全柵51を保持させる。安全柵51は、横継枠41〜44と共に架設現場に搬入される。横継枠41〜44を連結させてパイプベントを組み立てることにより、安全柵51は所定の位置に位置付けられる。安全柵51を上昇させて上部水平柵51bを対応するガセット42e、44eに固定すれば、安全柵51が所定の位置に設置された状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、橋梁を架設する際に、橋梁の桁や床版等の部材を仮受け支持するベント設備であって、支柱材に管状のパイプを用いたパイプベント構造に関し、特に組立の簡便化を図ったパイプベント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁を架設する工法として、桁や床版等の部材を陸上での運搬が可能な大きさのブロックに分割して架設現場に搬入し、分割されたブロックをベント設備上に設置してブロック同士を連結し、全ブロックの連結が完了した後にベント設備を分解、撤去することによるトラッククレーンベント工法がある。ベント設備は敷桁上に必要となる本数の支柱を矩形状に配して立設し、支柱同士を横つなぎ材で連結させ、隣接する支柱の上下部に掛けて斜方向にブレスを掛け渡して構成される。なお、支柱の上端部には枕桁を載置させ、この枕桁に桁や床版のブロック等を仮受けさせる。
【0003】
従来、この種のベント設備の支柱部材に、構造の任意性が高く、耐荷力が高い等の優れた特徴を備えた500角ベントが用いられる場合がある。しかし、
(1) 質量が大きいため運搬費が高い。
(2) 部品数が多く、出荷準備や積み込み・荷卸しや保守に手間を要し、その保管に広いヤードを必要とする。
(3) 部材種類が多く、形状の違いから混載した場合、輸送時の安定性に欠ける。
(4) 部品数が多く、組立・解体に時間を要す。
(5) 6mサイズが原則で、面材で組み立てると高所作業が多くなる。
(6) 任意構造に対応できる反面、現場単位で仕様が異なり安全性に特別な配慮を必要とする。
等の短所を備えている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示された発明は、支柱と横つなぎ材、ブレスとで構成された枠組み支保工の外側に階段部材を付設した構成に関するものであるが、ベント設備の工法として、前記支柱を構成する支柱部材と横つなぎ材、ブレスとからなるユニット化された枠状の枠部材を複数積層させ、上下の枠部材の支柱部材同士をボルトで固定して連結することで組み立てられる構造が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたベント設備では、隣接する支柱部材間にX字状にブレスが配置されている構造が採用されており、枠部材は大型となっているもので、6mサイズのものとなっている。このため、輸送の際に制約を受けることになり、各部材を分割した状態で搬入し、仮設現場で枠部材に組み立てることになる。したがって、輸送時には部品数が多くなり、混載されることになって安定性が損なわれるおそれがある。また、組み立てに時間を要し、撤去時の分解にも時間を要することになる。
【0006】
また、作業員の昇降用の階段部材を枠組み支保工の外側に付設させてあるため、階段部材を支持する部材をベント設備とは別途に必要とし、さらに部品数が増加して、輸送や組立、分解の際の手間を要することになる。
【0007】
このため、本願出願人は、部品数を減じると共に、ユニット部材のコンパクト化により、トラックにより輸送する際の積み付け・積み込み・荷卸しを効率化でき、輸送の際の安定性を確保できるパイプベント構造を提案した(特許文献2参照。)
【0008】
一方、パイプベントには作業員の昇降のための階段や作業のための足場等が組み込まれるが、この種の足場のための足場板や階段はベント構造とは別に、例えば地上で組み立てられて、所定の位置にクレーン等により組み込まれる(特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−248628号公報
【特許文献2】特願2010−075755号
【特許文献3】特開平7−243205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
足場板等を地上で組み立てた後にクレーンで吊り上げて所定の位置に組み込むものでは、本願出願人が提案したパイプベントの可搬性を阻害してしまうことになる。また、足場板等をベントの構造体とは別に搬入しなければならないから、輸送の際のコンパクト化を図ることの支障となる。
【0011】
そこで、この発明は、良好な可搬性を確保して輸送の簡便化を図ることができると共に、現地における組立作業の簡素化を促進して、工期の短縮化とコストの削減を図ることができるパイプベント構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るパイプベント構造は、橋梁等の架設工事の際に、架設される部材を仮受けさせるベント設備であって、支柱材に鋼管を用い、複数の支柱部材を横継枠で連結させたパイプベント構造において、前記横継枠を上下の水平材と上下の横継枠間に掛け渡した斜材とにより構成し、前記横継枠に昇降自在に安全柵を支持させ、上昇時に該安全柵の上端部を止着させる掛止手段を、該横継枠の上方に配されているガセットに設け、前記安全柵は、前記横継枠の輸送時には下降させた位置に位置付かせ、ベントの組立時には上昇させて前記掛止手段により上端部を止着させることを特徴としている。
【0013】
すなわち、パイプベントを組み立てる横継枠に予め安全柵を該横継枠に昇降可能に支持させ、横継枠の輸送時には下降した位置にして該横継枠と重畳した状態として横継枠とと共に輸送される。現場にて各横継枠を連結させながら、安全柵を上昇させ、上端部を前記掛止手段に止着させれば、作業のための安全柵となる。
【発明の効果】
【0014】
また、請求項2の発明に係るパイプベント構造によれば、横継枠の輸送と共に安全柵も輸送されて現場に搬入される。そして、横継枠を組み立てることによりこの安全柵が所定の設置場所に位置付くから、搬入作業を簡素化することができる。所定の位置に位置付いた安全柵を上昇させて、上端部を前記掛止手段に止着させれば該安全柵が設置された状態となり、組み立て作業の簡便化を図ることができる。
【0015】
また、部材の外形寸法等を規格化することとなり、専用の収納フレームを用いて格納することもでき、さらに輸送時の安全性や部材の取り出しの効率化を果たすことができる。しかも、前記収納フレームに格納した状態で保管できるから、保管ヤードにおける保管スペースを縮減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係るパイプベント構造が備えた安全柵を示す正面図で、安全柵が下降した状態を、想像線で横継枠を併記して示している。
【図2】図1に示す安全柵を上昇させた状態を示している。
【図3】この発明に係るパイプベント構造が備えた足場板を所定の位置に設置した状態を示す平面図である。
【図4】図3に示す足場板の平面図である。
【図5】足場板を揺動可能に支持するヒンジ部を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図6】足場板の先端部を係合させる支持板を示す図である。
【図7】この発明に係るパイプベント構造を備えたベント設備の正面図である。
【図8】図7に示すベント設備の左側面図である。
【図9】この発明に係るパイプベント構造に適用する第1類型に属する横継枠の正面図である。
【図10】この発明に係るパイプベント構造に適用する第1類型に属する横継枠の正面図である。
【図11】この発明に係るパイプベント構造に適用する第2類型に属する横継枠の正面図である。
【図12】この発明に係るパイプベント構造に適用する第1類型に属する横継枠の正面図である。
【図13】支柱を構成する支柱部材の正面図であり、4種類の支柱部材を示している。
【図14】図13における支柱部材の横断面図であり、(a)、(b)はそれぞれ図13におけるA−A線断面図とB−B線断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るパイプベント構造を具体的に説明する。
【0018】
図7は、この発明に係るパイプベント構造を備えたベント設備1の正面図であり、図8は左側面図である。このベント設備1は敷桁2に6本2列の支柱3が立設され、これら支柱3の間に横継枠4が掛け渡された構造とされている。正面視の6本の支柱3は、このベント設備1を組み立てる作業員が昇降する作業用の階段5が内側に配された2本の支柱3がほぼ等間隔に配されて作業部櫓とされ、3組の作業部櫓がほぼ等間隔に配されている。支柱3の上端に枕桁6が載置され、この枕桁6に主桁7を介して床版8が架設される。
【0019】
このベント設備1では、図7及び図8に示すように、横継枠4は、4種類の横継枠41〜44が組み合わされて構成されている。そして、図7の正面視の前記3組の作業部櫓の隣接する作業部櫓同士の支柱3間の寸法L1を、図8の側面視における2本の支柱3間の寸法L2と等しくして構成する。
【0020】
図9は第1類型に属する横継枠41の正面図であり、上下の水平材41a、41bと一対の斜材41cとにより形成されている。一対の斜材41cは、上側水平材41aの中央部のガセット41dと下側水平材41bのそれぞれの端部のガセット41fとに架け渡されて設けられて、対傾構方式に形成されている。また、上側水平材41aの両端部にはガセット41eが取り付けられており、このガセット41eと前記ガセット41fとを介して、後述する支柱部材と連結させるようにしてある。これらガセット41e、41fには、前記支柱3と連結させるボルトを挿通する複数個のボルト孔41gが一定のピッチで形成されている。前記水平材41a、41bは例えば100×100mmの等辺山形鋼により、前記斜材41cは例えば75×75mmの等辺山形鋼が用いられる。この横継枠41は、図7に示すように、幅方向が作業部櫓の支柱3間に架け渡される寸法とされており、端部に取り付けられたガセット41e、41fのボルト孔41gの水平方向寸法を1720mmとしてある。また、高さは水平材41a、41bの中心間で600mmとしてある。
【0021】
図10は第1類型に属する横継枠42の正面図であり、上下の水平材42a、42bと一対の斜材42cとにより形成されている。一対の斜材42cは、上側水平材42aの中央部のガセット42dと下側水平材42bのそれぞれの端部のガセット42fとに架け渡されて設けられて、対傾構方式に形成されている。また、上側水平材42aの両端部にはガセット42eが取り付けられており、このガセット42eと前記ガセット42fとを介して、後述する支柱部材と連結させるようにしてある。これらガセット42e、42fには、前記支柱3と連結させるボルトを挿通する複数個のボルト孔42gが一定のピッチで形成されている。前記水平材42a、42bは例えば100×100mmの等辺山形鋼により、前記斜材42cは例えば75×75mmの等辺山形鋼が用いられる。この横継枠42は、図7に示すように横継枠41と同様に、幅方向が1組の支柱3間に架け渡される寸法とされており、端部に取り付けられたガセット42e、42fのボルト孔42gの水平方向寸法を1720mmとしてある。また、高さは水平材42a、42bの中心間で1725mmとしてある。この横継枠42には上下方向の中間部に踏み板支持材42hが取り付けられている。
【0022】
図11は第2類型に属する横継枠43の正面図であり、上下の水平材43a、43bと二対の斜材43cとにより形成されている。二対の斜材43cは、上側水平材43aをほぼ四等分する位置の両側位置のガセット43dと、下側水平材43bの中央部のガセット43f、両端部のガセット43gとの間に交互に架け渡されて設けられて、対傾構方式に形成されている。また、上側水平材43aの両端部にはガセット43eが取り付けられており、このガセット43eと前記ガセット43gとを介して、後述する支柱部材と連結させるようにしてある。これらガセット43e、43gには、前記支柱3と連結させるボルトを挿通する複数個のボルト孔43hが一定のピッチで形成されている。前記水平材43a、43bは例えば100×100mmの等辺山形鋼により、前記斜材43cは例えば75×75mmの等辺山形鋼が用いられる。この横継枠43は、図7に示すように、幅方向が隣接する組の隣接する支柱3間に架け渡される寸法とされており、端部に取り付けられたガセット43e、43gのボルト孔43hの水平方向寸法を2720mmとしてある。また、高さは水平材43a、43bの中心間で600mmとしてある。
【0023】
図12は第1類型に属する横継枠44の正面図であり、上下の水平材44a、44bと一対の斜材44cとにより形成されている。一対の斜材44cは、上側水平材44aの中央部のガセット44dと下側水平材44bのそれぞれの端部のガセット44fとに架け渡されて設けられて、対傾構方式に形成されている。また、上側水平材44aの両端部にはガセット44eが取り付けられており、このガセット44eと前記ガセット44fとを介して、後述する支柱部材と連結させるようにしてある。これらガセット44e、44fには、前記支柱3と連結させるボルトを挿通する複数個のボルト孔44gが一定のピッチで形成されている。前記水平材44a、44bは例えば100×100mmの等辺山形鋼により、前記斜材44cは例えば75×75mmの等辺山形鋼が用いられる。この横継枠44は、図7に示すように横継枠43と同様に、幅方向が隣接する組の隣接する支柱3間に架け渡される寸法とされており、端部に取り付けられたガセット44e、44fのボルト孔43gの水平方向寸法を2720mmとしてある。また、高さは水平材44a、44bの中心間で1725mmとしてある。この横継枠44には上下方向の中間部に踏み板支持材44hが取り付けられている。
【0024】
図13は前記支柱3を構成する支柱部材31〜34を示しており、図14は支柱部材の横断面図であり、図14(a)、(b)はそれぞれ、図13(a)におけるA−A線とB−B線に沿って切断した断面図である。図13(a)は長尺支柱部材31を、同(b)は第1中尺支柱部材32を、同(c)は第2中尺支柱部材33を、同(d)は短尺支柱部材34をそれぞれ示しており、いずれも図14に示す断面形状を備えている。これら支柱部材31〜34はいずれも管状のパイプ材を主体として構成されており、STK490によるφ139.8×6.6mmの鋼管が用いられている。
【0025】
図13(a)、(b)に示すように、長尺支柱部材31と第1中尺支柱部材32の上下端部には、図14(a)に示すボルト孔36aが形成された継ぎ手用フランジ36が取り付けられている。また、これら支柱部材31、32の中間部には一対のガセット37がそれぞれ取り付けられている。また、前記継ぎ手用フランジ36に隣接した部位にもガセット38が取り付けられている。前記長尺支柱部材31に取り付けられた一対のガセット37には、前記ボルト孔41g、42g、43h、44gと合致する位置にボルト孔37aが形成されている。そして、これら一対のガセット37は、前記横継枠42と横継枠44とのそれぞれの上下の水平材42a、42b、44a、44bの端部のガセット42e、42f、44e、44fを連結することができる位置に設けられている。また、前記第1中尺支柱部材32に取り付けられた一対のガセット37は、前記横継枠41と横継枠43とのそれぞれのガセット41e、41f、43e、43gを連結することができる位置に設けられている。
【0026】
また、図13(c)に示す第2中尺支柱部材33は、両端部に継ぎ手用フランジ36が取り付けられ、この継ぎ手用フランジ36に隣接した部位に、前記横継枠41と横継枠43とのそれぞれのガセット41e、41f、43e、43gを連結することができるガセット37が取り付けられている。
【0027】
図13(d)に示す短尺支柱部材34は、両端部に継ぎ手用フランジ36が取り付けられており、これら継ぎ手用フランジ36の間にガセット39が取り付けられている。このガセット39には、前記ボルト孔41g、42g、43h、44gと合致する位置にボルト孔39aが形成されていると共に、ボルト孔41g、42g、43h、44gの個数よりも多い個数で、これらボルト孔41g、42g、43h、44gのピッチと等しいピッチで形成されている。このため、このガセット39は、横継枠41、42、43、44のいずれのガセット41e、41f、42e、42f、43e、43g、44e、44fのいずれとも連結できるものであり、しかも、該ガセット39に対してガセット41e、41f、42e、42f、43e、43g、44e、44fを上下方向に位置をずらしても、ボルト孔39aのいずれかとボルト孔41g、42g、43h、44gとが合致することで連結させることができるようにしてある。
【0028】
また、図7及び図8に示すように、このベント設備1には、正面視において支柱3の上端部を連結する横つなぎ材として作業部櫓の支柱3の間に横継材46が架け渡され、正面視の隣接した作業部櫓同士の間に位置する支柱3の間と、側面視の支柱3の間のそれぞれに横継材47が架け渡される。また、作業部櫓の部分であって横継枠が存しない部分には、安全柵51が配される。さらに、このベント設備1を組み立てる作業員の足場となる踏み板が前記踏み板支持材42h、44hを利用して架け渡される。
【0029】
図3は足場板61と階段5の部分を示す平面図である。足場板61は前記横継枠42の下側水平材42bにヒンジ61aを介して揺動自在に支持されており、この揺動により、少なくとも、横継枠42に沿った鉛直方向位置と該横継枠42に対して直交する水平方向位置との間を揺動するようにしてある。この水平方向位置に位置した状態で、この足場板61の先端部が、前記階段5の上端部と下端部とに臨む位置となるようにしてある。このときの先端部が位置する部分であって、該先端部の下側を臨む位置に支持板62が掛け渡され、この該先端部がこの支持板62に載置されて足場板61が階段5の踊り場として掛け渡されて配される。
【0030】
図4は前記足場板61の平面図であり、グレーチングのような格子状あるいは網目状に形成されている。足場板61の一端部に3個のヒンジ61aが配されており、図5に示すように、一対の支持突起61bを備えており、この支持突起61bの間に位置する1枚の支持突起(図示せず)が前記水平材42a、42bに取り付けられ、この支持突起を前記支持突起61bの間に位置させ支持ピン(図示せず)をこれら支持突起61bに挿通させれば、該ヒンジ61aを介して足場板61が揺動可能に横継枠42に支持される。また、図6は前記支持板62の平面図であり、両端部には横継枠44の水平材44a、44bに掛け渡した際に該水平材44a、44bに固定するための固定板62aが設けられている。
【0031】
図1及び図2は前記安全柵51を示す図であり、横継枠42に設けられている安全柵51を示している。なお、安全柵51は横継枠44にも設けられており、横継枠42用のものと横継枠44用のものとは、これら横継枠42、44の寸法等に応じて寸法等が異なっており、構造上は等しいものとなっている。図1はこの横継枠42を車両等で搬送する際における安全柵51の状態を示しており、図2はパイプベントが構築された際の状態を示している。この安全柵51は横継枠42の上側のガセット42eのそれぞれにはUボルト52によって一対の鉛直柵51aが昇降自在に保持されており、図1は最下位まで下降した状態を示している。一対の鉛直柵51aの上端部には上部水平柵51bが掛け渡された状態で固定されており、中間部には中間水平柵51cが掛け渡されている。この中間水平柵51cは前記鉛直柵51aに対して該鉛直柵51aの長手方向に摺動可能であり、鉛直柵51aの中央部に形成された透孔53aに合致する透孔(図示せず)が形成されており、これら透孔53aと中間水平柵51cに形成された透孔とに図示しない固定ボルトを挿通させてナットを締め付けることにより、これら鉛直柵51aと中間水平柵51cとを固定するようにしてある。図1では、中間水平柵51cが鉛直柵51aに固定されていない状態にある。
【0032】
前記上部水平柵51bの両端部には掛止手段を構成する固定用透孔53bが形成されており、鉛直柵51aを上昇させた場合には、この固定用透孔53bが、当該鉛直柵51aと前記Uボルト52を介して連繋させてあるガセット42eの上方に位置しているガセット42eに形成された掛止手段を構成する固定用透孔53cと合致し、これら固定用透孔53b、53cに掛止手段を構成する固定ボルトを挿通させてナットを締め付けることにより、上側水平枠51bがガセット42eに掛け渡されて固定され、安全柵51が固定された状態となる。
【0033】
以上により構成される構成されるベント設備1を組み立てるには、前記横継枠41〜44のいずれも工場で予め組み立て、これらをトラックで輸送する。この場合、横継枠41〜44はほぼ以下の寸法(水平方向×高さ)であるから、
横継枠41 1720mm×600mm
横継枠42 1720mm×1725mm
横継枠43 2720mm×600mm
横継枠44 2720mm×1725mm
横継枠44が最大のものであり、いずれもトラックに積載して運搬することが可能である。また、必要な高さを組み立てることができる組み合わせでこれら横継枠41〜44と、必要な横継枠41〜44を連結するのに要する支柱部材31〜34を架設現場まで輸送する。さらに、前記安全柵51と足場板61とも横継枠42、44と共に輸送されて架設現場に搬入される。
【0034】
架設現場では横継枠41〜44に対応する支柱部材31〜34を、横継枠41〜44のガセット41e、41f、42e、42f、43f、43g、44e、44fと支柱部材31〜34のガセット37とをそれぞれのボルト孔41g、42g、43f、44gとボルト孔37aとを介してボルト・ナットにより固定する。ベント設備1が所望の高さとなるように、支柱部材31〜34を継ぎ手用フランジ36をボルト孔36aを介してボルト・ナットにより固定して組み合わせて積み上げる。また、ベント設備1が所望の長さと幅となるように、支柱部材31〜34を挟んで横継枠41〜44を組み合わせる。
【0035】
図7及び図8に示すベント設備1は、幅3000mm、長さ12000mm、高さ18750mmの大きさのものを示している。すなわち、隣接する作業部櫓間の距離L1と幅L2を3000mmとし、作業部櫓の幅L3を2000mmとして長さを12000mmとしてある。このベント設備1では、6本の長尺支柱部材31を2列にして4段に配し、その上部に第1中尺支柱部材32を2段にして配し、その上部に1段の第2中尺支柱部材33を配し、その上部に1段の短尺支柱部材34を配してある。ベント設備1の前記階段5が内側に配される作業部櫓を構成する組の2本の支柱3に、下から順に横継枠42が4段に積み上げられる。また、これらの作業部櫓同士の間の部分には、上下に重ねられた長尺支柱部材31のガセット37を介して横継枠44が組み込まれる。すなわち、図7に示すように、上下方向で、横継枠42と横継枠44とが水平方向の位置をずらして交互に組み込まれる。このため、長尺支柱部材31に取り付けられたガセット37間の距離と、この長尺支柱部材31を重ねた状態における下位に位置した長尺支柱部材31の上側のガセット37と上位に位置した長尺支柱部材31の下側のガセット37との間の距離を等しくしてある。なお、この長さ方向に配される横継枠44には前記踏み板支持材44hは設けられていない。また、図8に示すように、幅方向では、横継枠44が4段に積み上げられる。
【0036】
前記横継枠42を支持した長尺支柱部材31の上部に積み上げられた2段の第1中尺支柱部材32には前記横継枠41が連結されており、この第1中尺支柱部材32に積み上げられた1段の第2中尺支柱部材33には横継枠41が連結されている。この第2中尺支柱部材33に積み上げられた前記短尺支柱部材34には横継材46が組み込まれている。
【0037】
また、前記横継枠44の最上位のものは、その上側のガセット44eは前記第1中尺支柱部材32の下側のガセット37に連結されて組み込まれている。このため、長尺支柱部材31に取り付けられたガセット37間の距離と、長尺支柱部材31に第1中尺支柱部材32を重ねた状態で、長尺支柱部材31の上側のガセット37と第1中尺支柱部材32の下側のガセット37との間の距離を等しくしてある。そして、横継枠44の上方には、前記2段に積み上げられた第1中尺支柱部材32に前記横継枠43がそれぞれ連結されている。さらに、この横継枠43の上には前記短尺支柱部材34に横継材47が架け渡されている。
【0038】
また、幅方向では、図8に示すように、前記2段に積まれた第1中尺支柱部材32とその上に積まれた1段の第2中尺支柱部材33には、横継枠43が組み込まれる。さらに、前記第2中尺支柱部材33の上に積まれた短尺支柱部材34には横継材47が架け渡される。
【0039】
そして、前記最上位の短尺支柱部材34に枕桁6が架け渡され、この枕桁6に主桁7が積み重ねられ、この主桁7に床版8が架設される。
【0040】
架設現場に搬入された横継枠41〜44と支柱31〜34等を組み立ててパイプベントを構築する際、下位に位置している横継枠42に支持されている足場板61を順次組み立てながら行う。この足場板61を組み立てるには、前記支持板62を横継枠44の下側水平材44bに掛け渡す。この支持板62は作業員により搬入されるものであるが、人力で搬入することができる重量のもので十分である。前記足場板61をヒンジ61aを中心として揺動させて、横継枠44に掛け渡された支持板62に該足場板61の先端部を載置させれば、足場板61が設置された状態となる。すなわち、クレーン等の荷役機器を利用しなくとも、足場板61を所定の位置に設置することができる。
【0041】
また、前記安全柵51は、前記横継枠42、44が組み立てられたならば、前記鉛直柵51aを前記Uボルト52に対して上昇させて、前記上部水平柵51bの両端部の固定用透孔53bをガセット42e、44eの固定用透孔53cと合致させて、固定ボルトにより固定する。また、前記中間水平柵51cの図示しない透孔を鉛直柵51aの透孔53aに合致させて固定ボルトで固定する。これにより、安全柵51を所定の位置に設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明に係るパイプベント構造によれば、予め工場において組み立てた横継枠をトラックで橋梁の架設現場に輸送できるので、いわゆるプレハブ化されることにより、ベント設備の組立・分解の工期を短縮することができ、パイプベントに組み込まれる足場板や安全柵を予め横継枠に保持させることにより、これらの部材の搬入の簡素化を図ることができ、橋梁の建設の簡便化や工期の短縮化に寄与する。
【符号の説明】
【0043】
1 ベント設備
2 敷桁
3 支柱
41〜44 横継枠
41a 上側水平材
41b 下側水平材
41c 斜材
42a 上側水平材
42b 下側水平材
42c 斜材
43a 上側水平材
43b 下側水平材
43c 斜材
44a 上側水平材
44b 下側水平材
44c 斜材
46 横継材
47 横継材
5 階段
6 枕桁
7 主桁
8 床版
51 安全柵
51a 鉛直柵
51b 上部水平柵
51c 中間水平柵
52 Uボルト
53a 透孔
53b 固定用透孔
61 足場板
61a ヒンジ
62 支持板
62a 固定板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁等の架設工事の際に、架設される部材を仮受けさせるベント設備であって、支柱材に鋼管を用い、複数の支柱部材を横継枠で連結させたパイプベント構造において、
前記横継枠を上下の水平材と上下の横継枠間に掛け渡した斜材とにより構成し、
前記横継枠に昇降自在に安全柵を支持させ、上昇時に該安全柵の上端部を止着させる掛止手段を、該横継枠の上方に配されているガセットに設け、
前記安全柵は、前記横継枠の輸送時には下降させた位置に位置付かせ、ベントの組立時には上昇させて前記掛止手段により上端部を止着させることを特徴とするパイプベント構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−72278(P2013−72278A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134334(P2012−134334)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【分割の表示】特願2011−213312(P2011−213312)の分割
【原出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(592242822)三井造船鉄構工事株式会社 (7)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】