説明

パイプ材と取付座金の接合構造

【課題】接合品質に優れたパイプ材と取付座金の接合構造及びそれを用いた手摺り部材の提供を目的とする。
【解決手段】パイプ材の先端部に取付座金を接合する取付座金接合構造であって、前記取付座金はパイプ材の先端部を挿通した接合部を有し、前記接合部はパイプ材の外径に概ね合致した挿通部と内径が先端側に向けて拡径した拡径部を有し、パイプ材の先端部を取付座金の接合部に挿通した後に、当該先端部をカシメにより前記拡径部に沿って拡径することでフレアカシメ接合してあり、前記接合部は少なくとも1ヶ所以上において点付溶接がされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ材の先端部に取付座金を接合するための接合構造及び方法に関し、特に手摺り部材への適用に効果的である。
【背景技術】
【0002】
浴室、階段等の壁に手摺り部材を取り付ける場合に従来は、図7に示すように金属製のパイプ10の表面を樹脂11等で被覆したパイプ材の芯材の先端部10aをプレス成形した取付座金20の接合孔23に挿通し、取付座金20とパイプ材の先端部とを溶接した溶接部100にて連結していた。
また、パイプ材の先端部を拡径し、取付座金の接合孔23の内周面に合致させ、溶接することも行われている。
しかし、このような溶接(プラズマ溶接,スポット溶接等)方法による接合方法では、パイプ材の先端部と取付座金との間に隙間バラツキが生じやすいために、溶接時に孔明き、溶け落ち、ビードの欠落等の溶接欠陥が発生しやすいのみならず、熱影響によるヒズミ発生、取付座金の取付角度不良の発生原因ともなっていた。
【0003】
特許文献1にスラスト方向に段差を設けた薄肉管の継手部の構造を開示するが、軸廻り方向の接合強度が弱く、手摺り部材等に適用できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−82189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、接合品質に優れたパイプ材と取付座金の接合構造及びそれを用いた手摺り部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る取付座金接合構造は、パイプ材の先端部に取付座金を接合する取付座金接合構造であって、前記取付座金はパイプ材の先端部を挿通した接合部を有し、前記接合部はパイプ材の外径に概ね合致した挿通部と内径が先端側に向けて拡径した拡径部を有し、パイプ材の先端部を取付座金の接合部に挿通した後に、当該先端部をカシメにより前記拡径部に沿って拡径することでフレアカシメ接合してあり、前記接合部は少なくとも1ヶ所以上において点付溶接がされていることを特徴とする。
従来のようにパイプ材の先端部を取付座金の内周面に沿ってフレア形状にフレアカシメ接合しただけでは、軸廻り方向の接合強度を確保するのが難しかった。
そこで本発明は、フレアカシメによる接合部の少なくとも1ヶ所に点付溶接をしたものである。
これにより、図7に示した従来のようなビード溶接に比較して熱影響によるひずみも少なく、取付工数が小さくなる。
本発明において、取付座金の形状に制限がなく、例えば図1に示したように外周側に折り返した座部を有し、ビスやボルトにて取り付けるものでもよく、図6に示すように外周部にねじ部を形成し、相手側に螺着するものであってもよい。
断面円形のフレアカシメだけでは軸廻りの接合強度が弱い恐れがあるのを点付溶接で補った点に本発明の特徴があるが、フレアカシメだけ軸廻りの強度アップの方法として、パイプ材の先端部に取付座金を接合する取付座金接合構造であって、前記取付座金はパイプ材の先端部を挿通した接合部を有し、前記接合部は内周面に周廻り方向の凹凸形状を有し、前記パイプ材の先端部は接合部の内周面の凹凸形状に合せた異形フレアカシメにより取付座金と接合してもよい。
ここで異形フレアカシメとは、従来のフレア加工が周廻りにローラーを摺接させた、例えば技術文献1に開示するフレア加工であったのに対して、本発明はパイプ材の内側から外側に向けてポンチが花びらループ状にラジアル運動させることで周廻り異形状にフレア加工することで取付座金にカシメ加工することをいう。
このような異形フレアカシメに上記の点付溶接を組み合せてもよい。
【0007】
本発明において、取付座金は、外周側に折り返した座部とパイプ材の先端部を接合する接合部とを有し、前記接合部はパイプ材の外径に概ね合致した挿通部と座部側に向けて内径が徐々に拡径した拡径部を有し、前記拡径部の内周面に周廻り方向の凹凸形状を有するようにしてもよい。
【0008】
このような接合方法としては、取付座金は、外周側に折り返した座部とパイプ材の先端部を接合する接合部とを有し、前記接合部はパイプ材の外径に概ね合致した挿通部と座部側に向けて内径が徐々に拡径した拡径部を有し、前記拡径部の内周面に周廻り方向の凹凸形状を有し、パイプ材の先端部を前記接合部の内周部に挿入し、ラジアル方向に部分的にパンチング可能なラジアルパンチング装置を用いて、前記パイプ材の先端部を前記取付座金の拡径部の凹凸形状に合せて異形状にフレアカシメをする例が挙げられる。
これにより軸廻り方向の接合強度も高く、手摺り部材に適用すると手摺りに加わる引張り荷重、圧縮荷重及びそれらの繰り返し荷重に対して充分に品質を満足する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る接合構造は従来のビード溶接による熱影響が無く、取付座金の取付角度が安定し、接合強度も高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は接合前の取付座金の正面図とA−A線断面図及びパイプ材の断面図を示す。(b)はラジアルパンチング装置を用いてフレアカシメ加工している状態の模式図を示す。(c)は接合後の正面図と断面図を示す。
【図2】(a)は取付座金とパイプ材の接合前のB−B線断面図を示し、(b)は接合後の断面図を示す。
【図3】(a)は取付座金とパイプ材の接合前の外観図を示し、(b)は接合後の外観図を示す。
【図4】異形のフレアカシメからなる接合部に点付溶接を組み合せた例を示す。
【図5】断面円形状のフレアカシメからなる接合部に点付溶接を組み合せた例を示す。
【図6】L字形状に曲げ加工したパイプ材の先端部におねじ形状からなる取付座金を接合した例を示し、(a)は接合前、(b)はパイプ材の先端部を挿通部に挿入した状態、(c)はフレアカシメ及び点付溶接した状態を示す。
【図7】従来の溶接による取付座金とパイプ材の接合例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る接合構造例を図1〜図6に示す手摺り部材を例に説明するが、本発明は取付座部を有する取付座金とパイプ材との接合分野において広く適用でき、手摺り部材に限定されない。
【0012】
パイプ材10は金属製であり、手摺り部材等の分野では樹脂製の被覆部11にて外周部が被覆されている場合が多い。
取付座金20は金属板等を用いてプレス成形等にて製作されている。
また、必要に応じて亜鉛メッキ等の表面処理、防錆処理等をしてある。
取付座金20は内側にパイプ材10の先端部10aを挿入するための接合孔23と浴室、階段等の壁部に固定するための座部22を有する。
接合孔23はパイプ材の先端部10aの内径に概ね合致する円筒状の挿通部23cとこの挿通部23cから座部22側に向けて徐々に拡径した拡径部23bを有する。
拡径部23bは取付座金20のプレス成形時に同時成形した凹部24と凸部25とを周廻りに交互に有する。
本実施例では凹部24を4ヶ所に設けた例になっているが、凹部24の数に限定はない。
また、座部22は取付孔21を有する。
【0013】
図1(b)に示すようにパイプ材の先端部10aを取付座金20の接合部23aの内側に挿入した状態でラジアルパンチング装置30のポンチ31をパイプ材10の内側に配置する。
ラジアルパンチング装置30は、ポンチ31のラジアル方向の動きによりパイプ材10の内側を局部的にパンチングできるものであれば特に限定はない。
本実施例はポンチ31を装着したツールホルダ32とこのツールホルダ32を球面凹部に沿って遊星歯車機構による偏心移動させながら保持するプレッシャー33を有する。
ポンチ31の先端部は花びらのようなループを描きながらパイプ材10の先端部10aの内側を局部的にパンチングし、取付座金20の凹部24及び凸部25の異形状に沿ってフレアカシメする。
ここで凹部24の部分は凸部25の部分に比較してフレア加工量が多く、強いフレアカシメ部10bを形成する。
これにより図1(c),図2(b)に示すように取付座金20とパイプ材10とが接合される。
【0014】
図4は、取付座金20とパイプ材10の先端部10aを異形フレアカシメ接合した後に、接合部の1ヶ所にて点付溶接による点付溶接部10cを形成した例である。
これにより、異形フレアカシメと点付溶接によりさらに軸廻りの接合強度が向上する。
なお、点付溶接は1ヶ所のみで充分であるが、必要に応じて溶接ヶ所を増やしてもよい。
点付溶接にて軸廻りの接合強度を上げることができるから図5に示すように、円形状の通常のフレア加工によるフレアカシメ部10dと点付溶接部10cとを組み合せてもよい。
また、図6に示すように外周にねじ部26を有する取付座金20aを用いた螺着構造でもよい。
【符号の説明】
【0015】
10 パイプ材
10a 先端部
10b フレアカシメ部
10c 点付溶接部
11 被覆部
20 取付座金
21 取付孔
22 座部
23 接合孔
23a 接合部
23b 拡径部
23c 挿通部
24 凹部
25 凸部
26 ねじ部
30 ラジアルパンチング装置
31 ポンチ
32 ツールホルダ
33 プレッシャー
100 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ材の先端部に取付座金を接合する取付座金接合構造であって、
前記取付座金はパイプ材の先端部を挿通した接合部を有し、
前記接合部はパイプ材の外径に概ね合致した挿通部と内径が先端側に向けて拡径した拡径部を有し、
パイプ材の先端部を取付座金の接合部に挿通した後に、当該先端部をカシメにより前記拡径部に沿って拡径することでフレアカシメ接合してあり、
前記接合部は少なくとも1ヶ所以上において点付溶接がされていることを特徴とする取付座金接合構造。
【請求項2】
パイプ材の先端部に取付座金を接合する取付座金接合構造であって、
前記取付座金はパイプ材の先端部を挿通した接合部を有し、
前記接合部は内周面に周廻り方向の凹凸形状を有し、
前記パイプ材の先端部は接合部の内周面の凹凸形状に合せた異形フレアカシメにより取付座金と接合されていることを特徴とする取付座金接合構造。
【請求項3】
前記接合部は、少なくとも1ヶ所以上において点付溶接がされていることを特徴とする請求項2記載の取付座金接合構造。
【請求項4】
前記取付座金は、外周側に折り返した座部とパイプ材の先端部を接合する接合部とを有し、
前記接合部はパイプ材の外径に概ね合致した挿通部と座部側に向けて内径が徐々に拡径した拡径部を有し、
前記拡径部の内周面に周廻り方向の凹凸形状を有することを特徴とする請求項3記載の取付座金接合構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の取付座金接合構造を有することを特徴とする手摺り部材。
【請求項6】
取付座金は、パイプ材の先端部を接合する接合部を有し、
前記接合部はパイプ材の外径に概ね合致した挿通部と座部側に向けて内径が徐々に拡径した拡径部を有し、
前記拡径部の内周面に周廻り方向の凹凸形状を有し、パイプ材の先端部を前記接合部の内周部に挿入し、
ラジアル方向に部分的にパンチング可能なラジアルパンチング装置を用いて、前記パイプ材の先端部を前記取付座金の拡径部の凹凸形状に合せて異形状にフレアカシメをすることを特徴とするパイプ材先端部への取付座金の接合方法。
【請求項7】
前記異形状にフレアカシメをした後に、前記接合部の少なくとも1ヶ所以上において点付溶接をすることを特徴とする請求項6記載のパイプ材先端部への取付座金の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−66935(P2013−66935A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175480(P2012−175480)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000240949)片山工業株式会社 (42)