説明

パイプ材の溝部成形方法

【課題】内壁上端のR形状が小さくなるように溝部を成形でき、実質的な溝部の深さを深くできるパイプ材の溝部成形方法を提供する。
【解決手段】ヘッドレストステイ用パイプ材60の外周面に溝部61,62を形成する成形方法であって、第一押込刃をその左右側面52a,52bが軸方向に垂直で左右の幅を凹部72の左右内壁72a,72b間の幅よりも幅広な矩形刃52とするとともに、第二押込刃をその右側面51が軸方向に垂直な傾斜刃51とし、さらに凹部72及び幅広凹部71の深さを、潰し込まれたヘッドレストステイ用パイプ材60の内周面が凹部72及び幅広凹部71の底面72c,71cに接触しないようにし、矩形刃52の左右側面52a,52bをそれぞれ凹部72の左右内壁72a,72bの左右外方に位置させ、傾斜刃51の右側面51bを幅広凹部71の右内壁71bの右外方に位置させた後、プレスする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ材の溝成形方法に関するものである。より詳細には、例えば、自動車のシートバックに取付けられるヘッドレストステイ用パイプ材に、当該ヘッドレストステイの上下方向の位置決めを行うための傾斜溝や抜け出しを防止するための矩形溝を成形する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のシートバックに取付けられるヘッドレストステイの脚部において、ヘッドレストステイの上下方向の位置決めを行うために傾斜溝や、ヘッドレストステイの抜け出しを防止するための矩形溝といった溝部が成形されている。これらの溝部は、抜け防止等の目的を達成するために、所定の深さ以上となるように成形されている。
一方、本出願人はこのようなパイプ材の溝部成形方法についての特許出願を既に行っている(特許文献1,特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3509722号公報
【特許文献2】特許第3706865号公報
【0004】
特許文献1には、図12及び図13に示すように、パイプ材10の空洞部内に、断面矩形状の凹部42と幅広凹部41が外周上面に形成された棒状の雌型40を挿入し、凹部42に対応する矩形刃52と幅広凹部41に対応する傾斜刃51とを有する雄型50を下方に移動させて、パイプ材10の外周面を凹部42及び幅広凹部41へ潰し込むことで、パイプ材10の外周面に矩形溝12や傾斜溝11といった溝部を形成するパイプ材の溝部成形方法が記載されている。そして、図14に示すようにこのパイプ材10を曲げることによって、ヘッドレストステイが製造される。
また、特許文献2には、この矩形刃52及び傾斜刃51を、パイプ材10の軸に平行な回転軸周りに回動自在な円柱刃及び円錐刃に置き換え、この円柱刃及び円錐刃でパイプ材10をプレスする方法が記載されている。
【0005】
なお、近年においては環境面等に配慮して自動車の燃費向上が求められているため、自動車を構成する各部品の軽量化が進んでいる。ヘッドレストステイに関しても例外ではなく、軽量にするために薄肉のパイプ材10が使用されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般にパイプ材10の外周面に成形可能な溝部11,12の深さは、パイプ材10の肉厚に比例する。つまり、より深い溝部11,12を形成しようとする場合には、パイプ材10が厚肉である必要がある。よって、溝部11,12を所定の深さより深く形成してヘッドレストステイがシートから抜け落ちないようにする点と、薄肉のパイプ材10を用いてヘッドレストステイを軽量にするという点とを両立させることは容易ではない。
【0007】
また、従来はパイプ材10のプレスされた部位が、雌型40の凹部42や幅広凹部41内部に押し込まれることに伴って、直接はプレスされてはいないが、パイプ材10のプレスされた近傍の部位も凹部42や幅広凹部41に引き込まれるように変形するため、形成される溝部11,12の内壁11b,12a,12b上端がR形状(曲面状)となってしまう。その結果、実質的な溝部11,12の深さはこのR形状の分だけ浅くなってしまうといった問題がある。したがって、このR形状の分だけ予め余分に溝部11,12を深く成形しなければならないが、先述の通り、溝部11,12を深く成形することは薄肉のパイプ材10では困難な場合が多い。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、従来に比べて内壁上端のR形状が小さくなるように溝部を成形でき、実質的な溝部の深さを深くできるパイプ材の溝部成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のパイプ材(60)の溝部(62)成形方法は、左右に軸が延びるパイプ材(60)の空洞内部に、左右の内壁(72a,72b)が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部(72)が外周上面に形成された棒状の雌型(70)を挿入し、前記凹部(72)に対応する押込刃を有する雄型(50)を下方に移動させて前記パイプ材(60)の外周面を前記凹部(72)へ潰し込み、前記パイプ材(60)の外周面に溝部(62)を形成する成形方法であって、前記雄型(50)の押込刃を、その左右側面(52a,52b)が前記軸方向に垂直で左右の幅を前記凹部(72)の左右内壁(72a,72b)間の幅よりも幅広な矩形刃(52)とするとともに、前記凹部(72)の深さを、前記パイプ材(60)の外周面を前記凹部(72)に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記パイプ材(60)の内周面が前記凹部(72)の底面(72c)に接触しないようにし、前記矩形刃(52)の左右側面(52a,52b)をそれぞれ前記凹部(72)の左右内壁(72a,72b)の左右外方に位置させた後、前記矩形刃(52)で前記パイプ材(60)をプレスして前記溝部(62)を形成することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載のパイプ材(60)の溝部(61)成形方法は、左右に軸が延びるパイプ材(60)の空洞内部に、左右の内壁(71a,71b)が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部(71)が外周上面に形成された棒状の雌型(70)を挿入し、前記凹部(71)に対応する押込刃を有する雄型(50)を下方に移動させた前記パイプ材(60)の外周面を前記凹部(71)へ潰し込み、前記パイプ材(60)の外周面に溝部(61)を形成する成形方法であって、前記雄型(50)の押込刃を、その右側面(51b)が前記軸方向に垂直で左側面(51a)から右側面(51b)下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から前記軸方向に平行に延びる水平面を有する傾斜刃(51)とするとともに、前記凹部(71)の深さを、前記パイプ材(60)の外周面を前記凹部(71)に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記パイプ材(60)の内周面が前記凹部(71)の底面(71c)に接触しないようにし、前記傾斜刃(51)の右側面(51b)を前記凹部(71)の右内壁(71b)の右外方に位置させた後、前記傾斜刃(51)で前記パイプ材(60)をプレスして前記溝部(61)を形成することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載のパイプ材(60)の溝部(62)成形方法は、左右に軸が延びるパイプ材(60)の空洞内部に、左右の内壁(72a,72b)が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部(72)が外周上面に形成された棒状の雌型(70)を挿入し、前記凹部(72)に対応する押込刃を有する雄型(50)を下方に移動させて前記パイプ材(60)の外周面を前記凹部(72)へ潰し込み、前記パイプ材(60)の外周面に溝部(62)を形成する成形方法であって、前記雄型(50)の押込刃を、前記軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた短円柱状で、その断面形状においてその左右側面(82a,82b)が前記軸方向に垂直で左右の幅を前記凹部(72)の左右内壁(72a,72b)間の幅よりも幅広な円柱刃(82)とするとともに、前記凹部(72)の深さを、前記パイプ材(60)の外周面を前記凹部(72)に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記パイプ材(60)の内周面が前記凹部(72)の底面(72c)に接触しないようにし、前記円柱刃(82)の左右側面(82a,82b)をそれぞれ前記凹部(72)の左右内壁(72a,72b)の左右外方に位置させた後、前記円柱刃(82)で前記パイプ材(60)をプレスして前記溝部(62)を形成する。
【0012】
また、請求項4に記載のパイプ材(60)の溝部(61)成形方法は、左右に軸が延びるパイプ材(60)の空洞内部に、左右の内壁(71a,71b)が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部(71)が外周上面に形成された棒状の雌型(70)を挿入し、前記凹部(71)に対応する押込刃を有する雄型(50)を下方に移動させた前記パイプ材(60)の外周面を前記凹部(71)へ潰し込み、前記パイプ材(60)の外周面に溝部(61)を形成する成形方法であって、前記雄型(50)の押込刃を、前記軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた円錐体形状で、その断面形状においてその右側面(81b)が前記軸方向に垂直で左側面(81a)から右側面(81b)下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から前記軸方向に平行に延びる水平面を有する円錐刃(81)とするとともに、前記凹部(71)の深さを、前記パイプ材(60)の外周面を前記凹部(71)に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記パイプ材(60)の内周面が前記凹部(71)の底面(71c)に接触しないようにし、前記円錐刃(81)の右側面(81b)を前記凹部(71)の右内壁(71b)の右外方に位置させた後、前記円錐刃(81)で前記パイプ材(60)をプレスして前記溝部(61)を形成することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載のパイプ材(60)の溝部(61,62)成形方法は、左右に軸が延びるヘッドレストステイ用パイプ材(60)の空洞内部に、左右の内壁(72a,72b)が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部(72)及びその凹部(72)よりも幅広の幅広凹部(71)が前記軸方向に離間した状態で外周上面に形成された棒状の雌型(70)を挿入し、前記凹部(72)及び前記幅広凹部(71)に対応する第一押込刃及び第二押込刃を有する雄型(50)を下方に移動させて前記ヘッドレストステイ用パイプ材(60)の外周面を前記凹部(72)へ潰し込み、前記ヘッドレストステイ用パイプ材(60)の外周面に溝部(61,62)を形成する成形方法であって、前記雄型(50)の第一押込刃を、その左右側面(52a,52b)が前記軸方向に垂直で左右の幅を前記凹部(72)の左右内壁(72a,72b)間の幅よりも幅広な矩形刃(52)とするとともに、前記雄型(50)の第二押込刃を、その右側面(51)が前記軸方向に垂直で左側面(51a)から右側面(51b)下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から前記軸方向に平行に延びる水平面を有する傾斜刃(51)とし、さらに、前記凹部(72)及び前記幅広凹部(71)の深さを、前記ヘッドレストステイ用パイプ材(60)の外周面を前記凹部(72)及び前記幅広凹部(71)に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記ヘッドレストステイ用パイプ材(60)の内周面が前記凹部(72)及び前記幅広凹部(71)の底面(72c,71c)に接触しないようにし、前記矩形刃(52)の左右側面(52a,52b)をそれぞれ前記凹部(72)の左右内壁(72a,72b)の左右外方に位置させるとともに、前記傾斜刃(51)の右側面(51b)を前記幅広凹部(71)の右内壁(71b)の右外方に位置させた後、前記矩形刃(52)及び傾斜刃(51)で前記ヘッドレストステイ用パイプ材(60)をプレスして前記溝部(61,62)を形成することを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載のパイプ材(60)の溝部(61,62)成形方法は、左右に軸が延びるヘッドレストステイ用パイプ材(60)の空洞内部に、左右の内壁(72a,72b)が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部(72)及びその凹部(72)よりも幅広の幅広凹部(71)が前記軸方向に離間した状態で外周上面に形成された棒状の雌型(70)を挿入し、前記凹部(72)及び前記幅広凹部(71)に対応する第一押込刃及び第二押込刃を有する雄型(50)を下方に移動させて前記ヘッドレストステイ用パイプ材(60)の外周面を前記凹部(72)へ潰し込み、前記ヘッドレストステイ用パイプ材(60)の外周面に溝部(61,62)を形成する成形方法であって、前記雄型(50)の第一押込刃を、前記軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた短円柱状で、その断面形状においてその左右側面(82a,82b)が前記軸方向に垂直で左右の幅を前記凹部(72)の左右内壁(72a,72b)間の幅よりも幅広な円柱刃(82)とするとともに、前記雄型(50)の第二押込刃を、前記軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた円錐体形状で、その断面形状においてその右側面(81b)が前記軸方向に垂直で左側面(81a)から右側面(81b)下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から前記軸方向に平行に延びる水平面を有する円錐刃(81)とし、さらに、前記凹部(72)及び前記幅広凹部(71)の深さを、前記ヘッドレストステイ用パイプ材(60)の外周面を前記凹部(72)及び前記幅広凹部(71)に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記ヘッドレストステイ用パイプ材(60)の内周面が前記凹部(72)及び前記幅広凹部(71)の底面(72c,71c)に接触しないようにし、前記円柱刃(82)の左右側面(82a,82b)をそれぞれ前記幅広凹部(71)の左右内壁(71a,71b)の左右外方に位置させるとともに、前記円錐刃(81)の右側面(81b)を前記幅広凹部(71)の右内壁(71b)の右外方に位置させた後、前記円柱刃(82)及び円錐刃(81)で前記ヘッドレストステイ用パイプ材(60)をプレスして前記溝部(61,62)を形成することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載のパイプ材(60)の溝部(61,62)成形方法は、前記凹部(72)の左右内壁(72a,72b)、前記幅広凹部(71)の左右内壁(71a,71b)のうち少なくとも一つの上端は、面取りされていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項8に記載のパイプ材(60)の溝部(61,62)成形方法は、前記矩形刃(52)の左右側面(52a,52b)、前記傾斜刃(51)の右側面(51b)、前記円柱刃(82)の左右側面(82a,82b)、前記円錐刃(81)の右側面(81b)のうち少なくとも一つの下端は、面取りされていることを特徴とする。
【0017】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に記載のパイプ材の溝部成形方法によれば、雄型の押込刃を、その左右側面が軸方向に垂直で左右の幅を凹部の左右内壁間の幅よりも幅広な矩形刃とし、矩形刃の左右側面をそれぞれ凹部の左右内壁の左右外方に位置させた後、矩形刃でパイプ材をプレスして溝部を形成するので、凹部の左右内壁の上面と軸方向に重なり合う、矩形刃でプレスされるパイプ材の部位は、凹部内に押し込まれるだけでなく、左右外方に対しても変形しようとする。よって、重なり合った部位に働く左右外方向きの力が、直接はプレスされていないパイプ材のプレスされた近傍の部位が凹部に引き込まれるように変形する力に作用するので、溝部の左右内壁上端は変形し難くR形状となり難い。また、仮にR形状となったとしても、従来に比べてR形状が小さい。したがって、薄肉のパイプ材であっても、溝部の実質的な深さを深く成形することができる。
また、凹部の深さを、パイプ材の外周面を凹部に潰し込んだ際に、潰し込まれたパイプ材の内周面が凹部の底面に接触しないようにしたので、パイプ材の内周面と凹部の底面との接触抵抗がなく、プレス後に小さな力で雌型をパイプ材から抜き出すことができる。
【0019】
また、請求項2に記載のパイプ材の溝部成形方法によれば、雄型の押込刃を、その右側面が軸方向に垂直で左側面から右側面下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から軸方向に平行に延びる水平面を有する傾斜刃とし、傾斜刃の右側面を凹部の右内壁の右外方に位置させた後、傾斜刃でパイプ材をプレスして溝部を形成するので、凹部の右内壁の上面と軸方向に重なり合う、矩形刃でプレスされるパイプ材の部位は、凹部内に押し込まれるだけでなく、右外方に対しても変形しようとする。よって、重なり合った部位に働く右外方向きの力が、直接はプレスされていないパイプ材のプレスされた近傍の部位が凹部に引き込まれるように変形する力に作用するので、溝部の右側内壁上端は変形し難くR形状となり難い。また、仮にR形状となったとしても、従来に比べてR形状が小さい。したがって、薄肉のパイプ材であっても、溝部の実質的な深さを深く成形することができる。
また、凹部の深さを、パイプ材の外周面を凹部に潰し込んだ際に、潰し込まれたパイプ材の内周面が凹部の底面に接触しないようにしたので、パイプ材の内周面と凹部の底面との接触抵抗がなく、プレス後に小さな力で雌型をパイプ材から抜き出すことができる。
【0020】
さらには、請求項1に記載のパイプ材の溝成形方法と、請求項2に記載のパイプ材の溝成形方法とを組み合わせることで(請求項5)、軸方向の幅が異なり、請求項1及び請求項2に記載の発明の作用効果を有する溝部をヘッドレストステイ用パイプ材に複数成形することができる。
【0021】
また、請求項3に記載のパイプ材の溝部成形方法によれば、雄型の押込刃を、軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた短円柱状で、その断面形状においてその左右側面が軸方向に垂直で左右の幅を凹部の左右内壁間の幅よりも幅広な円柱刃とし、円柱刃の左右側面をそれぞれ凹部の左右内壁の左右外方に位置させた後、円柱刃でパイプ材をプレスして溝部を形成するので、凹部の左右内壁の上面と軸方向に重なり合う、円柱刃でプレスされるパイプ材の部位は、凹部内に押し込まれるだけでなく、左右外方に対しても変形しようとする。よって、凹部の左右内壁の上面と円柱刃でプレスされるパイプ材とが重なり合った部位に働く左右外方向きの力が、直接はプレスされていないパイプ材のプレスされた近傍の部位が凹部に引き込まれるように変形する力に作用するので、雄型の押込刃が回動自在な円柱刃であっても、溝部の左右内壁上端は変形し難くR形状となり難い。
したがって、
【0022】
また、請求項4に記載のパイプ材の溝部成形方法によれば、雄型の押込刃を、軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた円錐体形状で、その断面形状においてその右側面が軸方向に垂直で左側面から右側面下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から軸方向に平行に延びる水平面を有する円錐刃とし、円錐刃の右側面を凹部の右内壁の右外方に位置させた後、円錐刃でパイプ材をプレスして溝部を形成するので、凹部の右内壁の上面と軸方向に重なり合う、円錐刃でプレスされるパイプ材の部位は、凹部内に押し込まれるだけでなく、右外方に対しても変形しようとする。よって、重なり合った部位に働く右外方向きの力が、直接はプレスされていないパイプ材のプレスされた近傍の部位が凹部に引き込まれるように変形する力に作用するので、雄型の押込刃が回動自在な円錐刃であっても、溝部の右側内壁上端は変形し難くR形状となり難い。
【0023】
さらには、請求項3に記載のパイプ材の溝成形方法と、請求項4に記載のパイプ材の溝成形方法とを組み合わせることで(請求項6)、軸方向の幅が異なり、請求項3及び請求項4に記載の発明の作用効果を有する溝部をヘッドレストステイ用パイプ材に複数成形することができる。
【0024】
また、請求項7に記載のパイプ材の溝部成形方法によれば、凹部の左右内壁、幅広凹部の左右内壁のうち少なくとも一つの上端は、面取りされているので、雌型とパイプ材との接触抵抗が小さくなる。よって、プレス後により小さな力で雌型をパイプ材から抜き出すことができる。
【0025】
また、請求項8に記載のパイプ材の溝部成形方法によれば、矩形刃の左右側面、傾斜刃の右側面、円柱刃の左右側面、円錐刃の右側面のうち少なくとも一つの下端は、面取りされているので、パイプ材の溝部下部の破断及びクラックを防止することができる。
【0026】
なお、本発明のパイプ材の溝部成形方法のように、雄型の押込刃が、その左右側面が軸方向に垂直で左右の幅を凹部の左右内壁間の幅よりも幅広とし、押込刃の左右側面をそれぞれ凹部の左右内壁の左右外方に位置させた後、押込刃でパイプ材をプレスして溝部を形成する点や、雄型の押込刃が、その右側面が前記軸方向に垂直で左側面から右側面下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から前記軸方向に平行に延びる水平面を有し、押込刃の右側面を凹部の右内壁の右外方に位置させた後、傾斜刃でパイプ材をプレスして溝部を形成する点は、上述した特許文献1及び特許文献2には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態に係るパイプ材の溝成形方法において、雄型でプレスする前の状態を示す側面断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るパイプ材の溝成形方法において、雄型でプレスした後の状態を示す側面断面図である。
【図3】図2に示す状態の要部拡大断面図である。
【図4】図2に示す状態の正面図である。
【図5】パイプ材各部位の変形を示す模式図であり、(a)は図2の状態を、(b)は図13の状態をそれぞれ示す。
【図6】本発明の他の実施形態に係るパイプ材の溝成形方法において、雄型でプレスした後の状態を示す側面断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係るパイプ材の溝成形方法を示す正面図である。
【図8】図7のパイプ材の溝成形方法において、雄型でプレスする前の状態を示す要部平面断面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態に係るパイプ材の溝成形方法を示す正面図である。
【図10】図9に示すパイプ材の溝成形方法に使用する板状刃を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図11】板状刃の他の実施形態を示すもので、(a)は直線状の傾斜面、(b)は曲線状の傾斜面を有するものの正面図である。
【図12】従来例に係るパイプ材の溝成形方法において、雄型でプレスする前の状態を示す側面断面図である。
【図13】従来例に係るパイプ材の溝形成方法において、雄型でプレスした後の状態を示す側面断面図である。
【図14】自動車のヘッドレストステイを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第一実施形態)
図1乃至図5を参照して、本発明の第一実施形態に係るパイプ材60の溝部成形方法を説明する。
このパイプ材60の溝部成形方法においては、パイプ材60と、パイプ材60をプレスする金型を使用する。そして、金型は、上型20、下型30、雌型70及び雌型70に対応した雄型50とを備え、雌型70と雄型50との位置関係等を特徴とするものである。
【0029】
パイプ材60は、図14に示すような自動車のヘッドレストステイの脚部を構成するものであり、肉厚は1.5mmである。また、このヘッドレストステイ用パイプ材60には、傾斜溝61と矩形溝62の二種類の溝部が形成される。
傾斜溝61は、右内壁61bがヘッドレストステイ用パイプ材60の軸方向に垂直であって、右内壁61bよりも左方の外周上面から右内壁61b下部に向かって下降する斜面を有するもので、シートバック(図示せず)に取付けられた位置決めピン(図示せず)と係合してヘッドレストステイの上下方向の位置決めを行う。
矩形溝62は、左右の内壁62a,62bが軸方向に垂直な断面矩形状であって、位置決めピン(図示せず)と係合してヘッドレストステイの抜け出しを防止するものである。
【0030】
上型20と下型30は、ヘッドレストステイ用パイプ材60を上下から挟持して固定するものである。上型20には複数の型孔21が形成されており、型孔21に第一押込刃52と第二押込刃51が挿通されている。
【0031】
雌型70は、外径がヘッドレストステイ用パイプ材60の内径より若干小さい棒状であって、ヘッドレストステイ用パイプ材60のプレス前においては、ヘッドレストステイ用パイプ材60の空洞内部を軸方向に移動自在である。また、雌型70には、左右の内壁72a,72bが軸方向に垂直で断面矩形状の凹部72と、同じく左右の内壁71a,71bが軸方向に垂直な断面矩形状であり凹部72よりも軸方向に幅広の二つの幅広凹部71とが軸方向に離間した状態で外周上面に形成されている。つまり、凹部72の右側に二つの幅広凹部71が一直線上に並んでいる。ここで、凹部72の右内壁72bから右側に隣接する幅広凹部71の右内壁71bまでの長さは20mm、また、その幅広凹部71の右内壁71bからさらに右側に隣接する幅広凹部71の右内壁71bまでの長さも20mmである。また、凹部72の左右内壁72a,72b間の長さは1.8mmである。
凹部72の深さ及び幅広凹部71の深さは、ヘッドレストステイ用パイプ材60の外周面を凹部72及び幅広凹部71に潰し込んだ際に、潰し込まれたヘッドレストステイ用パイプ材60の内周面が凹部72及び幅広凹部71の底面72c,71cにそれぞれ接触しないように十分深くしている。
また、図4に示すように、雌型70の一方側面を切り欠いた切欠部76が形成されている。
【0032】
雄型50は、凹部72に対応する第一押込刃52と、幅広凹部71に対応する第二押込刃51を有する。ここでは第一押込刃52を、その左右側面52a,52bが軸方向に垂直で左右の幅を凹部72の左右内壁72a,72b間の幅よりも幅広な矩形刃52とする。具体的には、凹部72の左右内壁72a,72b間の幅は先述の通り1.8mmのところ、矩形刃52の左右の幅は2.0mmである。
また、第二押込刃51を、その右側面51b及び左側面が軸方向に垂直で左側面の下部から右側面51b下部に向かって下降する傾斜面と、その傾斜面の下降位置から軸方向に平行に延びる水平面を有する傾斜刃51とする。この傾斜刃51は、二つ形成されている幅広凹部71に対応して、矩形刃52の右側に二つ形成されている。矩形刃52の右側面52bから右側に隣接する傾斜刃51の右側面51bまでの長さは20mm、その傾斜刃51の右側面51bからさらに右側に隣接する傾斜刃51の右側面51bまでの長さも20mmである。
なお、矩形刃52及び傾斜刃51は、ヘッドレストステイ用パイプ材60に形成する溝部62,61の、図1の紙面手前から奥方向への長さよりも長く、同方向に延びる。
【0033】
このような金型を用いた、パイプ材60の溝部成形方法においては、まず、ヘッドレストステイ用パイプ材60を金型の上型20と下型30とで上下から挟持して固定するとともに、図1に示すように左右に軸が延びるヘッドレストステイ用パイプ材60の空洞内部に、雌型70を挿入する。
このとき、プレス後に図3のようになるように、矩形刃52の右側面52bを凹部72の右内壁72bの0.1mm右外方に位置させる。このように位置させると、矩形刃52の左側面は凹部72の左内壁の0.1mm左外方に位置することになる。同様に、傾斜刃51の右側面51bは幅広凹部71の右内壁71bの0.1mm右外方に位置する。このように矩形刃52及び傾斜刃51に対して凹部72及び幅広凹部71を確実に位置させるために、金型分野では公知の位置決め機構(図示しない)が使用される。
【0034】
次に、雄型50を垂直下方に移動させて、矩形刃52及び傾斜刃51でヘッドレストステイ用パイプ材60の外周面を凹部72及び幅広凹部71へ潰し込み、ヘッドレストステイ用パイプ材60の外周面に矩形溝62と傾斜溝61を形成する。
最後に雌型70の切欠部76が上方に向くように雌型70を90回転させ、雌型70をヘッドレストステイ用パイプ材60から抜き出す。
【0035】
以上のようなパイプ材60の溝部成形方法によれば、雄型50の第一押込刃52を、その左右側面52a,52bが軸方向に垂直で左右の幅を凹部72の左右内壁72a,72b間の幅よりも幅広な矩形刃52とし、矩形刃52の左右側面52a,52bをそれぞれ凹部72の左右内壁72a,72bの左右外方に位置させた後、矩形刃52でパイプ材60をプレスして矩形溝62を形成するので、図5(a)に示すように(図内の矢印はパイプ材各部内の応力を示す)、凹部72の左右内壁72a,72bの上面と軸方向に重なり合う、矩形刃52でプレスされるヘッドレストステイ用パイプ材60の部位は、凹部72内に押し込まれるだけでなく、左右外方に対しても変形しようとする。
また、第二押込刃51を、その右側面51bが軸方向に垂直で左側面の下部から右側面51b下部に向かって下降する傾斜面と、その傾斜面の下降位置から軸方向に平行に延びる水平面を有する傾斜刃51とし、傾斜刃51の右側面51bを幅広凹部71の右内壁71bの右外方に位置させた後、矩形刃52及び傾斜刃51でヘッドレストステイ用パイプ材60をプレスして溝部を形成するので、幅広凹部71の右内壁71bの上面と軸方向に重なり合う、傾斜刃51でプレスされるヘッドレストステイ用パイプ材60の部位は、幅広凹部71内に押し込まれるだけでなく、右外方に対しても変形しようとする。
【0036】
よって、図5(b)に示す従来のように、矩形刃52の軸方向の幅と凹部42の軸方向の幅とが等しいため、パイプ材10のプレスされた部位が凹部42内部に押し込まれることに伴って、直接はプレスされていない、パイプ材10のプレスされた近傍の部位も円滑に凹部42に引き込まれるように変形する場合とは異なり、本実施形態においては、凹部72及び幅広凹部71における重なり合った部位に働く左右外方向きの力が、直接はプレスされていないヘッドレストステイ用パイプ材60のプレスされた近傍の部位が凹部72及び幅広凹部71に引き込まれるように変形する力に作用するので、矩形溝62の左右内壁62a,62b上端及び傾斜溝61の右内壁61b上端は変形し難くR形状となり難い。また、仮にR形状となったとしても、従来に比べてR形状が小さい。具体的には、従来のR形状が0.3mm(R0.3)程度であったところ、本実施形態におけるR形状は0.1mm(R0.1)以下となった。したがって、薄肉のヘッドレストステイ用パイプ材60であっても、矩形溝62及び傾斜溝61の実質的な深さを深く成形することができるので、自動車の衝突事故が起きてしまった場合でもヘッドレストステイがシートから抜け落ち難い。
【0037】
また、凹部72及び幅広凹部71の深さを、パイプ材60の外周面を凹部72及び幅広凹部71に潰し込んだ際に、潰し込まれたパイプ材60の内周面が凹部72及び幅広凹部71の底面72c,71cに接触しないようにしたので、パイプ材60の内周面と凹部72及び幅広凹部71の底面72c,71cとの接触抵抗がなく、プレス後に小さな力で雌型70をヘッドレストステイ用パイプ材60から抜き出すことができる。
【0038】
なお、図6に示すように、凹部72の左右内壁72a,72b、及び幅広凹部71の右内壁71bの上端は、矩形刃52や傾斜刃51との軸方向の重なり量分(ここでは0.1mm)程度、R形状加工、又は面取りされていてもよい。こうすることで、雌型70とヘッドレストステイ用パイプ材60との接触抵抗が小さくなるので、プレス後により小さな力で雌型70をヘッドレストステイ用パイプ材60から抜き出すことができる。
また、矩形刃52の左右側面52a,52b、及び傾斜刃51の右側面51bの下端は、凹部72や幅広凹部71の内壁72a,72b,71bとの軸方向の重なり量分(ここでは0.1mm)程度、R形状加工、又は面取りされていてもよい。こうすることで、ヘッドレストステイ用パイプ材60の矩形溝62及び傾斜溝61下部の破断及びクラックを防止することができる。
【0039】
(第二実施形態)
次に図7と図8を参照して、本発明の第二実施形態に係るパイプ材60の溝部成形方法を説明する。なお、第一実施形態と同一部分には同一符号を付した。
本実施形態の第一実施形態との違いは、雄型80の押込刃81,82とそれに伴う金型の部分であり、その他の構成要素に関しては第一実施形態と同一である。
【0040】
上型20と雄型80との間、及び上型20と下型30との間にはそれぞれ緩衝材として渦巻きバネ90,91が設けられている。
雄型80は、凹部72に対応する第一押込刃82と、幅広凹部71に対応する第二押込刃81を有する。ここで雄型80の第一押込刃82は、軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた短円柱状の円柱刃82である。その断面形状においては、その左右側面82a,82bが軸方向に垂直で、左右の幅は凹部72の左右内壁72a,72b間の幅よりも幅広で2.0mmである。
また、第二押込刃51は、軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた円錐体形状の円錐刃81である。その断面形状においてはその右側面81bが軸方向に垂直であって、左側面81aから右側面81b下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から軸方向に平行に延びる水平面を有する。この円錐刃81は、幅広凹部71が二つ形成されていることに対応して、円柱刃82の右側に二つ形成されている。
【0041】
そして、円柱刃82の右側面82bは凹部72の右内壁72bの0.1mm右外方に位置し、円柱刃82の左側面82aは凹部72の左内壁72aの0.1mm左外方に位置している。これと同時に、円錐刃81の右側面81bは幅広凹部71の右内壁71bの0.1mm右外方に位置している。
【0042】
本実施形態に係る溝部成形方法でも、まずヘッドレストステイ用パイプ材60を金型で固定し、ヘッドレストステイ用パイプ材60の空洞内部に雌型70を挿入する。
そして、雄型80を下方に移動させて、転動する円柱刃82及び円錐刃81でヘッドレストステイ用パイプ材60の外周面を潰し込み、矩形溝62と傾斜溝61を形成する。
最後に雌型70をヘッドレストステイ用パイプ材60から抜き出す。
【0043】
以上のようなパイプ材60の溝部成形方法によれば、回動するタイプの押込刃81,82であっても、第一実施形態に係る押込刃51,52でプレスする場合と同様に、凹部72及び幅広凹部71における、円柱刃82及び円錐刃81が凹部72及び幅広凹部71と軸方向に重なり合った部位に働く左右外方向きの力が、直接はプレスされていないヘッドレストステイ用パイプ材60のプレスされた近傍の部位が凹部72及び幅広凹部71に引き込まれるように変形する力に作用するので、矩形溝62の左右内壁62a,62b上端及び傾斜溝61の右内壁61b上端は変形し難くR形状となり難い。
【0044】
ここで、第二実施形態における円柱刃82に代えて、図9に示す、回動しない長尺板状の板状刃83としてもよい。この板状刃83を、円柱刃82同様に垂直方向へ加工させてヘッドレストステイ用パイプ材60の外周面を凹部72に潰し込む。この板状刃83は、図10に示すように、板状刃83の下端部のヘッドレストステイ用パイプ材60に当接する傾斜面84aが直線状である。
また、図11に示すように、板状刃84の傾斜面84aを曲線状とすることもできる。この場合、ヘッドレストステイ用パイプ材60の外周面を、徐々に変形することができるので、ヘッドレストステイ用パイプ材60に偏肉部を形成することなく、溝部61,62を形成することができる。
【0045】
なお、第一、第二実施形態において、便宜上左右を決めて説明しているが、例えば図1の紙面裏側から見た場合には左右逆になることは言うまでもない。上下についても同様である。
また、ヘッドレストステイ用パイプ材60に溝部61,62を形成するとしたが、これに限られるものではなく、他の用途で使用されるパイプ材60であってもよい。
また、雄型50,80を下降させてプレスしたが、これに限られるものではなく、雌型70や下型30とともにパイプ材60を、雄型50,80に向かって上昇させてプレスしてもよい。
【0046】
また、第一実施形態において、雄型50は矩形刃52と傾斜刃51を備えるとしたが、パイプ材60の用途によっては、どちらか一方だけを備えている雄型50であってもよい。
さらには、パイプ材60の用途に応じて矩形刃52や傾斜刃51の数を増減させてもよい。もちろんこのとき、矩形刃52に凹部72を、傾斜刃51に幅広凹部71をそれぞれ対応させて数を増減させるとともに、矩形刃52に対する凹部72の位置や傾斜刃51に対する幅広凹部71の位置を合わせる必要がある。
また、凹部72の左右内壁72a,72bと矩形刃52との軸方向の重なり量や、幅広凹部71の右内壁71bと傾斜刃51との軸方向の重なり量を0.1mmとしたが、これはパイプ材60の肉厚が1.5mmのときの最適な値であって、この重なり量を0.15mmとしてもよい。但し、この重なり量が0.1mmよりも小さくなると、それに伴って溝部61,62上端のR形状が大きくなる。一方、この重なりが大きくなり過ぎると、パイプ材60における重なり部分の下面と、雌型70との密着性(接触抵抗)が上がるので、パイプ材60から雌型70を引き抜く際の90度の回転に大きな力を必要としてしまう。
【0047】
さらに、凹部72の左右内壁72a,72b及び幅広凹部71の左右内壁71a,71bの上端全てにおいてR形状加工、又は面取りをしたとしたが、全ての内壁72a,72b,71a,71b上端にこれらの加工を施さなくても一定の効果はある。
同様に、矩形刃52の左右側面52a,52b、及び傾斜刃51の右側面51bの下端におけるR形状加工、又は面取りも、全ての側面52a,52b,51b下端に加工が施さなくてもよい。
【0048】
また、第二実施形態において、雄型50は円柱刃82と円錐刃81を備えるとしたが、パイプ材60の用途によっては、どちらか一方だけを備えている雄型50であってもよい。
さらには、パイプ材60の用途に応じて円柱刃82や円錐刃81の数を増減させてもよい。
【0049】
また、凹部72の左右内壁72a,72bと円柱刃82との軸方向の重なり量や、幅広凹部71の右内壁71bと円錐刃81との軸方向の重なり量に関しても、矩形刃52や傾斜刃51の場合と同様に、適宜変更できる。
また、第二実施形態においても第一実施形態と同様に、凹部72の左右内壁72a,72b及び幅広凹部71の左右内壁71a,71bのうち、少なくとも一つの上端をR形状加工、又は面取りを施すことができ、また矩形刃52の左右側面52a,52b、及び傾斜刃51の右側面51bのうち、少なくとも一つの下端にR形状加工、又は面取りを施してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 ヘッドレストステイ用パイプ材(パイプ材)
11 傾斜溝(溝部)
11b 右内壁
12 矩形溝(溝部)
12a 左内壁
12b 右内壁
20 上型
21 型孔
30 下型
40 雌型
41 幅広凹部
42 凹部
50 雄型
51 傾斜刃(第二押込刃)
51a 左側面
51b 右側面
52 矩形刃(第一押込刃)
52a 左側面
52b 右側面
60 ヘッドレストステイ用パイプ材(パイプ材)
61 傾斜溝(溝部)
61b 右内壁
62 矩形溝(溝部)
62a 左内壁
62b 右内壁
70 雌型
71 幅広凹部(凹部)
71a 左内壁
71b 右内壁
71c 底面
72 凹部
72a 左内壁
72b 右内壁
72c 底面
76 切欠部
80 雄型
81 円錐刃(第二押込刃)
81a 左側面
81b 右側面
82 円柱刃(第一押込刃)
82a 左側面
82b 右側面
83 板状刃
84 板状刃
84a 傾斜面
90 渦巻きバネ
91 渦巻きバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に軸が延びるパイプ材の空洞内部に、左右の内壁が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部が外周上面に形成された棒状の雌型を挿入し、前記凹部に対応する押込刃を有する雄型を下方に移動させて前記パイプ材の外周面を前記凹部へ潰し込み、前記パイプ材の外周面に溝部を形成する成形方法であって、
前記雄型の押込刃を、その左右側面が前記軸方向に垂直で左右の幅を前記凹部の左右内壁間の幅よりも幅広な矩形刃とするとともに、前記凹部の深さを、前記パイプ材の外周面を前記凹部に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記パイプ材の内周面が前記凹部の底面に接触しないようにし、
前記矩形刃の左右側面をそれぞれ前記凹部の左右内壁の左右外方に位置させた後、前記矩形刃で前記パイプ材をプレスして前記溝部を形成することを特徴とするパイプ材の溝部成形方法。
【請求項2】
左右に軸が延びるパイプ材の空洞内部に、左右の内壁が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部が外周上面に形成された棒状の雌型を挿入し、前記凹部に対応する押込刃を有する雄型を下方に移動させた前記パイプ材の外周面を前記凹部へ潰し込み、前記パイプ材の外周面に溝部を形成する成形方法であって、
前記雄型の押込刃を、その右側面が前記軸方向に垂直で左側面から右側面下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から前記軸方向に平行に延びる水平面を有する傾斜刃とするとともに、前記凹部の深さを、前記パイプ材の外周面を前記凹部に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記パイプ材の内周面が前記凹部の底面に接触しないようにし、
前記傾斜刃の右側面を前記凹部の右内壁の右外方に位置させた後、前記傾斜刃で前記パイプ材をプレスして前記溝部を形成することを特徴とするパイプ材の溝部成形方法。
【請求項3】
左右に軸が延びるパイプ材の空洞内部に、左右の内壁が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部が外周上面に形成された棒状の雌型を挿入し、前記凹部に対応する押込刃を有する雄型を下方に移動させて前記パイプ材の外周面を前記凹部へ潰し込み、前記パイプ材の外周面に溝部を形成する成形方法であって、
前記雄型の押込刃を、前記軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた短円柱状で、その断面形状においてその左右側面が前記軸方向に垂直で左右の幅を前記凹部の左右内壁間の幅よりも幅広な円柱刃とするとともに、前記凹部の深さを、前記パイプ材の外周面を前記凹部に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記パイプ材の内周面が前記凹部の底面に接触しないようにし、
前記円柱刃の左右側面をそれぞれ前記凹部の左右内壁の左右外方に位置させた後、前記円柱刃で前記パイプ材をプレスして前記溝部を形成することを特徴とするパイプ材の溝部成形方法。
【請求項4】
左右に軸が延びるパイプ材の空洞内部に、左右の内壁が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部が外周上面に形成された棒状の雌型を挿入し、前記凹部に対応する押込刃を有する雄型を下方に移動させた前記パイプ材の外周面を前記凹部へ潰し込み、前記パイプ材の外周面に溝部を形成する成形方法であって、
前記雄型の押込刃を、前記軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた円錐体形状で、その断面形状においてその右側面が前記軸方向に垂直で左側面から右側面下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から前記軸方向に平行に延びる水平面を有する円錐刃とするとともに、前記凹部の深さを、前記パイプ材の外周面を前記凹部に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記パイプ材の内周面が前記凹部の底面に接触しないようにし、
前記円錐刃の右側面を前記凹部の右内壁の右外方に位置させた後、前記円錐刃で前記パイプ材をプレスして前記溝部を形成することを特徴とするパイプ材の溝部成形方法。
【請求項5】
左右に軸が延びるヘッドレストステイ用パイプ材の空洞内部に、左右の内壁が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部及びその凹部よりも幅広の幅広凹部が前記軸方向に離間した状態で外周上面に形成された棒状の雌型を挿入し、前記凹部及び前記幅広凹部に対応する第一押込刃及び第二押込刃を有する雄型を下方に移動させて前記ヘッドレストステイ用パイプ材の外周面を前記凹部へ潰し込み、前記ヘッドレストステイ用パイプ材の外周面に溝部を形成する成形方法であって、
前記雄型の第一押込刃を、その左右側面が前記軸方向に垂直で左右の幅を前記凹部の左右内壁間の幅よりも幅広な矩形刃とするとともに、前記雄型の第二押込刃を、その右側面が前記軸方向に垂直で左側面から右側面下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から前記軸方向に平行に延びる水平面を有する傾斜刃とし、さらに、前記凹部及び前記幅広凹部の深さを、前記ヘッドレストステイ用パイプ材の外周面を前記凹部及び前記幅広凹部に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記ヘッドレストステイ用パイプ材の内周面が前記凹部及び前記幅広凹部の底面に接触しないようにし、
前記矩形刃の左右側面をそれぞれ前記凹部の左右内壁の左右外方に位置させるとともに、前記傾斜刃の右側面を前記幅広凹部の右内壁の右外方に位置させた後、前記矩形刃及び傾斜刃で前記ヘッドレストステイ用パイプ材をプレスして前記溝部を形成することを特徴とするパイプ材の溝部成形方法。
【請求項6】
左右に軸が延びるヘッドレストステイ用パイプ材の空洞内部に、左右の内壁が前記軸方向に垂直で断面矩形状の凹部及びその凹部よりも幅広の幅広凹部が前記軸方向に離間した状態で外周上面に形成された棒状の雌型を挿入し、前記凹部及び前記幅広凹部に対応する第一押込刃及び第二押込刃を有する雄型を下方に移動させて前記ヘッドレストステイ用パイプ材の外周面を前記凹部へ潰し込み、前記ヘッドレストステイ用パイプ材の外周面に溝部を形成する成形方法であって、
前記雄型の第一押込刃を、前記軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた短円柱状で、その断面形状においてその左右側面が前記軸方向に垂直で左右の幅を前記凹部の左右内壁間の幅よりも幅広な円柱刃とするとともに、前記雄型の第二押込刃を、前記軸に平行な回転軸の周りに回動自在に取付けられた円錐体形状で、その断面形状においてその右側面が前記軸方向に垂直で左側面から右側面下部に向かって下降する傾斜面とその傾斜面の下降位置から前記軸方向に平行に延びる水平面を有する円錐刃とし、さらに、前記凹部及び前記幅広凹部の深さを、前記ヘッドレストステイ用パイプ材の外周面を前記凹部及び前記幅広凹部に潰し込んだ際に、潰し込まれた前記ヘッドレストステイ用パイプ材の内周面が前記凹部及び前記幅広凹部の底面に接触しないようにし、
前記円柱刃の左右側面をそれぞれ前記幅広凹部の左右内壁の左右外方に位置させるとともに、前記円錐刃の右側面を前記幅広凹部の右内壁の右外方に位置させた後、前記円柱刃及び円錐刃で前記ヘッドレストステイ用パイプ材をプレスして前記溝部を形成することを特徴とするパイプ材の溝部成形方法。
【請求項7】
前記凹部の左右内壁、前記幅広凹部の左右内壁のうち少なくとも一つの上端は、面取りされていることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載のパイプ材の溝部成形方法。
【請求項8】
前記矩形刃の左右側面、前記傾斜刃の右側面、前記円柱刃の左右側面、前記円錐刃の右側面のうち少なくとも一つの下端は、面取りされていることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一つに記載のパイプ材の溝部成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−88178(P2011−88178A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242897(P2009−242897)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【特許番号】特許第4477695号(P4477695)
【特許公報発行日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(500400102)有限会社オダ技商 (5)