説明

パイル布及びこれを用いた布地製品

【課題】 末梢血流量の増加およびα波の増加など健康面に優れたパイル布及びこれを用いた布地製品の提供。
【解決手段】 本発明のパイル布は、ナノサイズのゲルマニウム粒子がパイル生地中に均一に付着している。かかるパイル布は、好ましくは、ナノサイズのゲルマニウム粒子の水分散液とバインダー樹脂を混合し、得られた樹脂混合液をパイル生地に噴霧することにより製造することができる。前記パイル布は、布地製品の中でも特に寝具類の構成布地として好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズのゲルマニウム粒子を利用したパイル布及びこれを用いた布地製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、肩こりや腰痛などの疼痛の改善を目的としたプリント生地としては、例えば、接触電位差を生じる半導体や遠赤外線を放射するセラミックス,鉱物などの物質を微粉末化し、該微粉末化した物質を熱転写接着剤に混入し、この熱転写接着剤を生地上に熱転写して熱転写接着剤層を形成したプリント生地が開示されている(特許文献1参照)。また、放射線を利用したものとしては、微粉末化した放射線鉱石を樹脂と混ぜ、溶融紡糸した繊維を生地にしたものも開示されている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−39407号公報
【特許文献2】特許第2101495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載のプリント生地では、接触電位差を生じる微粉末が熱転写接着剤層に混入されているが、該微粉末を生地中に均一に付着させることができれば、商品展開上応用範囲が広くなり、好都合となる。
【0005】
そこで、例えば、生地中に上記微粉末を均一に付着させた布地を製造する方法として、例えば、特許文献2に示されるように、原料樹脂と前記微粉末の混合液を紡糸して繊維化し、得られた繊維を使用して生地そのものを生産する方式(以下、「前加工方式」という)や、バインダー樹脂と前記微粉末の混合液を生地に噴霧したり、あるいは生地を前記混合液に含浸させる方式(以下、「後加工方式」という)が考えられる。
【0006】
ここで、前加工方式では、前記微粉末の付着ムラは生じず品質的に安定するという長所はあるものの、生産ロットが大きい、微粉末の混合できる量に限度がある、コスト高となる他天然樹脂には利用できないなどの欠点が一般的に考えられる。これに対し、後加工方式では、低コストかつ小ロットで生産できるとともに、天然繊維に加工できるという長所はあるものの、付着ムラが生じやすい、風合が損なわれやすい、洗濯後に微粉末が脱落しやすいなどの欠点が一般的に考えられる。すなわち、品質面を重視すれば前加工方式が有利であり、コスト面を重視すれば後加工方式が有利となる。
【0007】
また、生地中に前記微粉末を均一に付着させた布地を寝具類として用いる場合、肩こり等の痛みや不眠を改善するため、例えば、末梢血流量の増加作用および脳波におけるα波(以下、単に「α波」という)の増加作用など健康面に優れた機能を有することが必要となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、末梢血流量の増加およびα波の増加など健康面に優れたパイル布及びこれを用いた布地製品を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ナノサイズのゲルマニウム粒子に着目し、該粒子を上述した後加工方式によりパイル生地中に均一に付着させたパイル布とし、これを寝具の構成部材として用いることにより、被検者の末梢血流量が増加するとともに、α波も増加することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕 ナノサイズのゲルマニウム粒子がパイル生地中に均一に付着してなるパイル布、
〔2〕 前記ゲルマニウム粒子の粒径が1〜800nmである前記〔1〕記載のパイル布、
〔3〕 さらに、バインダー樹脂が付着してなる前記〔1〕または〔2〕記載のパイル布、
〔4〕 ナノサイズのゲルマニウム粒子の水分散液とバインダー樹脂を混合し、得られた樹脂混合液をパイル生地に噴霧することを特徴とするパイル布の製造方法、
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のパイル布を用いた布地製品、
〔6〕 布地製品が寝具類である前記〔5〕記載の布地製品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ナノサイズのゲルマニウム粒子がパイル生地中に均一に付着しているので、末梢血流量の増加およびα波の増加など健康面に優れたパイル布及びこれを用いた布地製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のパイル布は、ナノサイズのゲルマニウム(Ge)粒子がパイル生地中に均一に付着してなる点に特徴を有する。
【0013】
本明細書において「パイル生地」とは、ナノサイズのGe粒子を付着させる前のパイル生地をいい、「パイル布」とは、該パイル生地に対して前記Ge粒子を付着させたものをいう。本発明で適用可能なパイル生地は公知のパイル生地であれば特に限定されず、製造されるパイル布の用途に応じて、天然繊維、再生繊維、半合成繊維または合成繊維などを織布、編布または不織布などに加工して、該布の両面または片面にパイルを形成させたものが用いられる。なお、ナノサイズのGe粒子は、上記のパイル生地以外にも、例えば、寝具類の表地や裏地に適用される三次元立体構造布(具体的には、敷布団の表地や裏地に適用される、いわゆる立体ハニカム)に対しても付着させることができる。
【0014】
ナノサイズのGe粒子(以下、「ナノGe粒子」と略す場合がある)とは、ナノサイズの粒径を有するGe粒子をいう。該ナノGe粒子の粒径は、900nm以下であれば特に限定されないが、通常、1〜800nmが好ましく、1〜500nmが更に好ましく、1〜100nmが特に好ましい。ここで、ナノGe粒子の粒径は、操作型電子顕微鏡(SEM)を使用してGe粒子のナノレベルオーダーの粒度分布を調べることにより行なう。そして、粒度分布がほぼ単分散の場合は、当該分布の中で最も度数の大きい粒径をナノGe粒子の粒径とする。一方、粒度分布が多分散の場合は、その平均値をナノGe粒子の粒径とする。なお、実施態様によっては、ナノGe粒子の粒径を測定したときに、1μm以上の粒子が含まれる場合もあるが、かかる場合でも本発明におけるナノGe粒子の粒径は、ナノレベルオーダー(1〜999nm)の粒度分布を基準にして算出される。
【0015】
ナノGe粒子を生地中に均一に付着させる方法は、該Ge粒子の水分散液を用いること以外は特に限定されず、付着方法としては、パイル生地を該水分散液中に浸漬する方法、該水分散液をパイル生地に噴霧する方法などが挙げられる。これらの中でも、前記Ge粒子の付着量をできるだけ少なくして不用な生地の裏面等に付着させず、かつ生地全体を均一に付着させる場合、前記水分散液をパイル生地の利用面にのみ噴霧する方法が好ましい。
【0016】
ナノGe粒子の水分散液は、公知の方法、例えば、気相中に高温で蒸発させたGeの蒸気を供給し、ガス分子との衝突により急冷させて微粒子を形成する気相法、Geイオンを溶解した溶液に還元剤を添加してGeイオンの還元を行なう溶液法(液相法)、水中アーク放電による溶融法などにより合成できる。また、上記の方法により製造されたナノGe粒子の水分散液には、通常副生成物である塩や分解生成物などが溶解しているが、本発明では、かかる副生成物を、例えば限外ろ過法、電気透析法等の公知の方法により除去して、純水中にナノGe粒子のみが実質的に分散している分散液を使用することが好ましい。
【0017】
また、本発明では、ナノGe粒子の水分散液にバインダー樹脂を添加・混合し、得られた樹脂混合液をパイル生地中に付着させるようにしてもよい。バインダー樹脂としては、パイル生地に対するナノGe粒子の付着力を高める樹脂成分であれば特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、ナノGe粒子の付着力を高めるとともに、製造されるパイル布の風合に優れる点で、シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0018】
本発明のパイル布を製造するにあたっては、上述したナノGe粒子の水分散液または該水分散液と前記バインダー樹脂を混合した樹脂混合液を上述したごとくパイル生地中に均一に付着させ、次いで乾燥を行なう。乾燥条件は特に限定されないが、通常、110〜160℃で5〜30分間乾燥させることが好ましい。
【0019】
このようにして製造されたパイル布を身体に直接または間接に接するようにして安静を保った状態で使用すると、血流量が増加するとともに、α波の割合が増加するなど健康面に優れた効果を発揮する。したがって、本発明のパイル布の用途は上記の使用態様で用いられる限り特に限定されず、例えば、寝具類(布団、枕、パジャマなど)、衣服類(衣服、マフラー、帽子など)、マット・敷物類(座布団、カーペット、ジュータンなど)などの布地製品を構成するパイル布として好適である。これらの中でも全身に接するようにして使用できる点で、布団の構成布地として用いれば、上記の効果が大きくなるので特に好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、試験例などにより本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの試験例などにより限定されるものではない。
【0021】
1.パイル布、布地製品の作製例
<掛布団用パイル布、掛布団の作製例>
(掛布団用パイル布の作製例1)
(株)セラテック製のナノGe粒子水分散液(粒径:50nm,濃度:111ppm,ナノメタル水溶液(商品名))にシリコーン樹脂を4重量%(終濃度)混合して樹脂混合液を得た。次いで、150cm×210cmの片面パイル生地(ウールDEイオンコットンミックスボア(商品名),大東紡寝装(株)製,綿30%、ウール25%、アクリル系繊維45%)に対して前記樹脂混合液を100cc/mになるように噴霧し、その後140℃で10分間乾燥させて掛布団用パイル布1を作製した。ICP発光分析装置を用いて分析した結果、得られた掛布団用パイル布1の単位面積重量に含まれるナノGe粒子の付着量は2.5ppmを示した。また、掛布団用パイル布1は、全面にわたって噴霧処理前と同じクリーム色を呈していた。このことから、ナノGe粒子は外観上無色透明であることが確認された。
【0022】
(掛布団の作製例1)
綿100%の生地を表地、上記掛布団用パイル布1を裏地とし、アクリル系繊維とポリエステルを半分ずつ計126g詰めることにより150cm×210cmの掛布団1を作製した。
【0023】
(掛布団用パイル布の作製例2)
(株)セラテック製のGe粉末(粒径:20μm)を水に添加、混合して1500ppmとし、次いでシリコーン樹脂を混合して得られた樹脂混合液(終濃度:4重量%)を用いた以外は、上記掛布団用パイル布の作製例1と同様に行なった。以下、得られた掛布団用パイル布を掛布団用パイル布2という。ICP発光分析装置を用いて分析した結果、得られた掛布団用パイル布2の単位面積重量に含まれるGe粒子の付着量は2.9ppmを示した。また、掛布団用パイル布2は、外観上噴霧処理前のクリーム色に所々細かな黒色が散在していた。このことから、粒径20μmのGe粒子を用いると、Ge粒子の黒色が目立ち、ムラ付きが生じることが確認された。
【0024】
(掛布団の作製例2)
上記掛布団用パイル布2を用いた以外は、上記掛布団の作製例1と同様に行なった。以下、得られた掛布団を掛布団2という。
【0025】
<敷パッド用パイル布、敷パッドの作製例>
(敷パッド用パイル布の作製例1)
(株)セラテック製のナノGe粒子水分散液(粒径:50nm,濃度:111ppm,ナノメタル水溶液(商品名))にシリコーン樹脂を4重量%(終濃度)混合して樹脂混合液を得た。次いで、100cm×205cmの片面パイル生地(ウールDEイオンボア(商品名),大東紡寝装(株)製,ウール30%、アクリル系繊維70%)に対して前記樹脂混合液を100cc/mになるように噴霧し、その後140℃で10分間乾燥させて敷パッド用パイル布1を作製した。
【0026】
(敷パッドの作製例1)
上記敷パッド用パイル布1を表地、ハニカム構造の立体編地(綿25%、ナイロン40%、ポリエステル35%)を裏地とし、アクリル系繊維とポリエステルをそれぞれ半分ずつ計1000g詰めることにより100cm×205cmの敷パッド1を作製した。
【0027】
(敷パッド用パイル布の作製例2)
(株)セラテック製のGe粉末(粒径:20μm)を水に添加、混合して1500ppmとし、次いでシリコーン樹脂を混合して得た樹脂混合液(終濃度:4重量%)を用いた以外は、上記敷パッド用パイル布の作製例1と同様に行なった。以下、得られた敷パッド用パイル布を敷パッド用パイル布2という。
【0028】
(敷パッドの作製例2)
上記敷パッド用パイル布2を用いた以外は、上記敷パッドの作製例1と同様に行なった。以下、得られた敷パッドを敷パッド2という。
【0029】
2.末梢血流量の測定
(実施例1)
敷パッド1を敷き、その上に成年男子(46歳,身長160cm,体重52kg,BMI指数:20.3)を被検者として仰向けに寝てもらい、掛布団1を上から掛け、レーザー血流計(ALF21D,(株)アドバンス製)の測定プローブを該被検者の左手中指に取り付けた。そして、このまま安静状態を保ち、前記プローブを取り付けてから10分間経過した時点を測定開始時とし、該測定開始時、10分後、20分後および30分後の末梢血流量を、測定時間2分間で測定した。結果を図1に示す。
【0030】
(比較例1)
敷パッドと掛布団として敷パッド2と掛布団2を用いた以外は実施例1と同様に行なった。結果を図1に示す。
【0031】
図1より、測定開始時から30分後まで、実施例1の末梢血流量は、比較例1の末梢血流量に比べて常に5ml/min/100g以上大きい値を示した。
【0032】
3.脳波の測定
(実施例2)
上記「2.末梢血流量の測定」の実施例1と同期して上記と同一被検者の後頭部左側と右側の脳波を測定した。すなわち、脳波の測定にあたっては、前記レーザー血流計の測定プローブを被検者の左手中指に取り付ける際に、脳波測定機器(Neurofax EFG-2110,日本光電工業(株)製)の測定センサーを前記被検者の後頭部左側と右側にそれぞれ取り付け、このまま安静状態を保ち、前記センサーを取り付けてから10分間経過した時点を測定開始時とし、該測定開始時、10分後、20分後および30分後の脳波を、測定時間2分間で測定した。30分後の測定結果を図2に示す。
【0033】
(比較例2)
敷パッドと掛布団として敷パッド2と掛布団2を用いた以外は実施例2と同様に行ない、上記「2.末梢血流量の測定」の比較例1と同期して被検者の後頭部左側と右側の脳波を測定した。30分後の測定結果を図2に示す。
【0034】
後頭部左側(図2(a)参照)について、脳波のうちδ波、θ波、α波およびβ波の構成割合をみると、実施例2ではリラックス状態を示すα波(8Hz以上で13Hz以下)の割合が42%と最も高い値を示したのに対し、比較例2ではα波の割合が10%にとどまった。また、後頭部右側(図2(b)参照)についても同様の傾向を示した。これらの結果より、実施例2のように本件発明に係る寝具を使用することで、リラックス状態が高まることが確認された。
【0035】
4.脱着度の測定
掛布団用布地1と掛布団用布地2をそれぞれ5回繰り返して洗濯し、洗濯後におけるGe粒子の付着量を上記「1.布地、布地製品の作製例」と同様にICP発光分析装置を用いて分析した。その結果、掛布団用布地1の洗濯後におけるGe粒子の付着量は2.3ppm(洗濯前:2.5ppm)を示したのに対し、掛布団用布地2の洗濯後におけるGe粒子の付着量は1.8ppm(洗濯前:2.9ppm)を示した。このことから、ナノGe粒子を用いると、洗濯に対する脱着が少なくなることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】末梢血流量の測定結果を示した図である。
【図2】後頭部の脳波測定結果を示す図であり、(a)は後頭部左側の測定結果を示し、(b)は後頭部右側の測定結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノサイズのゲルマニウム粒子がパイル生地中に均一に付着してなるパイル布。
【請求項2】
前記ゲルマニウム粒子の粒径が1〜800nmである請求項1記載のパイル布。
【請求項3】
さらに、バインダー樹脂が付着してなる請求項1または2記載のパイル布。
【請求項4】
ナノサイズのゲルマニウム粒子の水分散液とバインダー樹脂を混合し、得られた樹脂混合液をパイル生地に噴霧することを特徴とするパイル布の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のパイル布を用いた布地製品。
【請求項6】
布地製品が寝具類である請求項5記載の布地製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−51396(P2007−51396A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238218(P2005−238218)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(500365878)株式会社オーエムジー (1)
【出願人】(593206609)大東紡寝装株式会社 (2)
【Fターム(参考)】