説明

パイロクロア型酸化物の調製方法および燃料電池用電極触媒の製造方法

【課題】比表面積が大きく、なおかつ結晶性が高く、燃料電池用電極触媒として活性と耐酸性を両立し得るパイロクロア型酸化物の調製方法を提供する。
【解決手段】一般式A7−Z(A及びBは金属元素、Zは0以上1以下の数を表し、AはPb、Sn及びZnからなる群から選ばれる少なくとも一種を含み、BはRu、W、Mo、Ir、Rh、Mn、Cr及びReからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む。)で表されるパイロクロア型酸化物を沈殿形成により調製したのち、洗浄、乾燥工程を経て十分に不純物を除去したのち、制御された条件により焼成することにより、沈殿生成直後にアモルファス部分を含んでいたパイロクロア型酸化物の結晶性が増大し、粒子の凝集を抑制しながら耐酸性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用の白金代替電極触媒に関し、またその触媒として用いることのできるパイロクロア型酸化物に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素(燃料)と酸素とを電気化学的に反応させることにより発電させる装置である。この反応による生成物は原理的に水であることから環境への負荷が少なく、燃料電池は、家庭用コジェネレーションシステム用途として期待され開発が進められている。
【0003】
固体高分子形燃料電池の電極触媒として用いられる触媒成分としては、一般的に、PtまたはPt合金が用いられる(特許文献1)。しかしながら、Ptは非常に高価であり、資源的にも稀少な金属であるため、今後燃料電池の本格普及期を迎える際には、コストや資源の枯渇の観点から制約を受けることが危惧されている。Pt触媒の実用上の問題点としては、Ptをカソード用触媒として用いた場合にはカソード過電圧が大きく、このカソード過電圧による発電効率の低下が、燃料電池のエネルギー削減効果の限界因子になっている。Pt触媒は耐久性の観点からも、Pt触媒の長期間使用や頻繁な起動停止などにより、担体上のPt原子が電極層内の電解質物質中に溶出し、Pt粒子径の増大に伴うPt比表面積の減少によって性能低下をもたらすことが問題となっている。さらに、溶出したPt原子が電解質膜中で析出する、いわゆるPtバンド形成も耐久上の問題として認識されている。
【0004】
これらの課題を克服するため、高性能(カソード過電圧が少ない)かつ高耐久な(酸性電解質への溶解度が低い)非Pt系の電極触媒開発が求められている。
【0005】
非Pt電極触媒として、PbRu混合酸化物系やPbIr混合酸化物系などに代表されるパイロクロア型酸化物触媒が、燃料電池のカソードにおける酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction:ORR)に対して高い活性を示すことが既に報告されている。(非特許文献1および2)
ところで、一般に燃料電池用電極触媒が高いORR性能を発揮するためには、触媒比表面積あたりの活性が高いこと、触媒の比表面積が大きいこと、さらに酸化物系触媒の場合には、触媒自体の導電性が高いことが求められる。しかしながら、パイロクロア型酸化物触媒は、触媒調製時に粒子が凝集し易く、比表面積が小さいものしか得られない場合が多く、また酸化物自体の導電性が低いために、電極中の電子移動がORRの反応律速になる場合が多かった。
【0006】
本発明者らは、こうした従来のパイロクロア型酸化物触媒の調製時における粒子凝集を抑制するため、室温での沈殿形成反応により同触媒を合成する手法を見出している。さらに、電極触媒層における導電性を維持する目的で、触媒合成時に予めカーボン粉末等の導電性物質を鹸濁させた状態で沈殿形成を行うことで、得られる触媒と電極層バルク間の電子移動抵抗を低減し、結果として実際の膜電極複合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)中でも高いORR活性を発揮できる触媒の調製方法を検討してきた(特願2009−022876)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−36418号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Y.Shimizu et. al.,「ITE Letters on Batteries、 New Technologies & Medicine」Vol.4、2003年、p.582
【非特許文献2】河合秀樹等、「第49回電池討論会」、講演予稿集3A21、2008年、p.89〜92)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した調製方法は、室温付近で沈殿形成反応を行い、その後高温での焼成等が不要なプロセスであるため、高温での粒子凝集が防げる点で、より高温で触媒合成を行う方法に比べて優位性があった。(特許文献1)しかし一方で、得られる触媒がパイロクロア型酸化物としての結晶性が低く、触媒耐溶解性やORR活性維持の観点から改善の余地があった。
【0010】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、比表面積が大きく、なおかつ結晶性が高い、下記に記載のパイロクロア型酸化物触媒の調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1)本発明の第1の態様は、パイロクロア型酸化物の調製方法である。当該パイロクロア型酸化物の調製方法は、
一般式A227-Z
(ただし、AおよびBはそれぞれ金属元素を表し、Zは0以上1以下の数を表し、
AはPb、SnおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも一種であるA1を含み、
BはRu、W、Mo、Ir、Rh、Mn、CrおよびReからなる群から選ばれる少なくとも一種であるB1を含む。)
で表されるパイロクロア型酸化物の調製方法であって、前記Aのハロゲン化物または硝酸塩と、前記Bの金属酸アルカリとの反応により、パイロクロア型酸化物の沈殿物を形成させる工程と、250℃以上900℃以下の温度で前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を焼成する工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
2)上記1)に記載のパイロクロア型酸化物の調製方法において、前記Aのハロゲン化物または硝酸塩の水溶液である第1の水溶液と、前記Bの金属酸アルカリ水溶液である第2の水溶液とを用意する工程と、前記第1の水溶液および前記第2の水溶液のうちの一方を他方の中に滴下して前記反応を行い、パイロクロア型酸化物の沈殿物を形成させる工程と、250℃以上900℃以下の温度で前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を焼成する工程とを備えてもよい。
【0013】
4)上記2)に記載のパイロクロア型酸化物の調製方法において、滴下により前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を形成させる工程の前に、前記第1の水溶液および第2の水溶液のいずれか一方に、あらかじめ導電性材料を分散させる工程をさらに備えてもよい。
【0014】
4)上記1)乃至3)のいずれかに記載のパイロクロア型酸化物の調製方法において、前記沈殿物を形成させる工程における反応温度が0℃以上60℃以下であってもよい。
【0015】
5)上記1)乃至4)のいずれかに記載のパイロクロア型酸化物の調製方法において、前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を焼成する工程を不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0016】
6)上記1)乃至5)のいずれかに記載のパイロクロア型酸化物の調製方法において、前記Aが前記A1とは異なる金属A2を含み、かつ/又は、前記Bが前記B1とは異なる金属B2を含み、
ここで、前記A2およびB2がそれぞれ独立して、
Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Os、Co、Rh、Ni、Pd、Cu、Al、Ga、In、Ge、As、Sb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0017】
7)上記1)乃至6)のいずれかに記載のパイロクロア型酸化物の調製方法において、前記Aの前駆体としてA(NOを用い、前記Bの前駆体としてKBOまたはNaBOを用いてもよい。
【0018】
8)上記7)に記載のパイロクロア型酸化物の調製方法において、前記A(NOが、少なくともPb(NOまたはSn(NOを含み、前記KBOがKRuOであり、前記NaBOがNaRuOであってもよい。
【0019】
9)本発明の第2の態様は、燃料電池用電極触媒の製造方法である。当該燃料電池用電極触媒の製造方法は、一般式A227-Z(ただし、AおよびBはそれぞれ金属元素を表し、Zは0以上1以下の数を表し、AはPb、SnおよびZnから選ばれる少なくとも一種であるA1を含み、BはRu、W、Mo、Ir、Rh、Mn、CrおよびReから選ばれる少なくとも一種であるB1を含む。)で表されるパイロクロア型酸化物を含む燃料電池用電極触媒を製造する方法であって、前記Aのハロゲン化物または硝酸塩と、前記Bの金属酸アルカリとの反応により沈殿物を形成させる工程と、窒素等の不活性ガス雰囲気中にて250℃以上900℃以下の温度で前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を焼成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
10)上記9)に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法において、前記Aのハロゲン化物または硝酸塩の水溶液である第1の水溶液と、前記Bの金属酸アルカリ水溶液である第2の水溶液とを用意する工程と、第1の水溶液および第2の水溶液のうちの一方を他方の中に滴下して前記反応を行い、パイロクロア型酸化物の沈殿物を形成させる工程と、250℃以上900℃以下の温度で前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を焼成する工程と、を備えてもよい。
【0021】
11)上記10に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法において、前記第1の水溶液および第2の水溶液のいずれか一方に、あらかじめ導電性材料を分散させた上で、前記滴下を行うことにより、
前記パイロクロア型酸化物を導電性材料上に形成させてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一形態によれば、比表面積がより大きく、なおかつ結晶性の高いパイロクロア型酸化物の調製方法が提供される。
【0023】
本発明の別の形態によれば、高比表面積と高結晶性を併せ持ち、さらに導電性物質との電気的接触に優れるパイロクロア型酸化物を含む組成物の調製方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】組成がPbRu7−z(A=Pb、B=Ru)で表される酸化物のTG−DTA測定結果を示すグラフである。
【図2】焼成前のパイロクロア型酸化物のXRD測定結果を示すグラフである。
【図3】焼成後のパイロクロア型酸化物のXRD測定結果を示すグラフである。
【図4】焼成前のパイロクロア型酸化物のTEM像である。
【図5】焼成後のパイロクロア型酸化物のTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0026】
本発明によれば、パイロクロア型酸化物触媒を、略室温で、液相中で生成させることができる。沈殿形成に関わる溶液反応を、室温付近という温和な条件で行うことにより、特許文献1に代表される従来のパイロクロア型酸化物触媒の調製方法よりも、沈殿形成直後の粒子径が小さい酸化物を得ることができる。生成中の粒成長を抑制することができる。
【0027】
略室温で形成された沈殿は、すでに一部がパイロクロア型酸化物の状態になっており、このままでも電極触媒としての活性を示すことが確認されているが、パイロクロア型酸化物の組成や沈殿形成の条件によっては、沈殿形成、ないしはその後の洗浄や乾燥操作だけでは十分にパイロクロア型結晶にならない場合があった。
【0028】
一般に酸化物系触媒では、結晶化しないアモルファスの状態では、電極触媒層に含まれる電解質物質の酸性や、発電中の電位、カソード触媒の場合には酸化雰囲気等の反応条件で酸化物金属の溶出や、酸化数の変化が生じ、使用経過とともに電極活性が損なわれる場合が多い。結晶性を高めることは、これらの耐久上の懸念を改善するための手段である。
【0029】
具体的には、結晶/アモルファスの混合状態として得られた沈殿後の組成物を、水洗により不純物を除去したのち、乾燥工程によりあらかた水分を除去し、その後に空気あるいは窒素などの不活性ガス雰囲気下で改めて焼成することで、沈殿形成直後に得られた微細な粒子径をある程度維持しつつ、結晶性を高めることができる。
【0030】
なお本発明においては、Aのハロゲン化物または硝酸塩を、Aの前駆体と呼ぶことがあり、Bの金属酸アルカリを、Bの前駆体と呼ぶことがある。
【0031】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0032】
(沈殿形成反応によるパイロクロア型酸化物の合成)
まず、本発明のパイロクロア型酸化物を、沈殿形成反応によって合成する方法について説明する。
【0033】
(基本的パイロクロア型酸化物沈殿形成方法)
ここでは、一般式A7−Zで表されるパイロクロア型酸化物であって、AはPb、SnおよびZnから選ばれる少なくとも一種(Aという)であり、BはRu、W、Mo、Ir、Rh、Mn、CrおよびReから選ばれる少なくとも一種(Bという)であるものを製造する。
【0034】
前記金属Aのハロゲン化物または硝酸塩の水溶液(第1の水溶液)中に、前記金属Bの金属酸アルカリの水溶液(第2の水溶液)を滴下する。または、前記金属Bの金属酸アルカリの水溶液(第2の水溶液)中に、前記金属Aのハロゲン化物または硝酸塩の水溶液(第1の水溶液)を滴下する。これにより、金属Aのハロゲン化物または硝酸塩と、金属Bの金属酸アルカリとを反応させ、沈殿物を形成させることができる。
【0035】
この際、第1の水溶液と第2の水溶液のうちの、滴下する水溶液の使用量は、もう一方の水溶液の使用量の略化学量論量であることが好ましい。ここでの化学量論量とは、最終生成物として得られるパイロクロア型酸化物の組成に含まれる金属A、Bの量論比を意味し、必ずしも酸・塩基反応の中和点とは一致しない。また、必要に応じて、AまたはBを含む塩のどちらかを過剰に用いることが、反応完結に必要な場合もあるが、この場合であっても、過剰に加える化学種が、化学量論(stoichiometry)の1.2倍を超えないことが好ましい。
【0036】
パイロクロア型酸化物調製における反応温度は略室温が好ましい。略室温とは、具体的には、0℃以上60℃以下、好ましくは10℃以上50℃以下を意味する。反応温度を0℃以上、さらには10℃以上とすることで、前記AおよびBの前駆体の、水溶液における溶解度の低下を抑制し、反応中および滴下中に前駆体が析出することを優れて防止することができる。反応温度を60℃以下、さらには50℃以下とすることで、得られるパイロクロア化合物の沈殿が凝集して比表面積が低下することを優れて防止することができる。
【0037】
金属塩水溶液(第1の水溶液および第2の水溶液)の、使用する際の温度も、前駆体析出防止の観点から0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、沈殿凝集防止の観点から60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。
【0038】
また、この滴下中は、マグネティックスターラー、メカニカル攪拌羽根等で略均一な分散状態になるよう絶えず攪拌することが好ましい。この際、混合物の物理的な混合状態の均一化の目的で、必要に応じて純水(イオン交換水)を適宜追加してもよい。
【0039】
金属塩水溶液の濃度(第1の水溶液中の金属Aのハロゲン化物もしくは硝酸塩の濃度、および、第2の水溶液中の酸アルカリ金属塩の濃度)は、好ましくは5から500mmol/L、より好ましくは10から300mmol/Lの範囲である。水溶液濃度が5mmol/L以上である場合、反応スケールに対して収量が少なくなって効率的でなくなることを容易に防止できる。また500mmol/L以下である場合、水溶液自体が析出などの観点から不安定になることを容易に抑制でき、沈殿時に局所的に反応が起こることによって凝集が加速されることを容易に抑制することができる。
【0040】
(Aサイト及び/またはBサイトの一部を他の金属で置換する場合)
本実施の形態に係るパイロクロア型酸化物は、上に述べた基本的パイロクロア型酸化物調製方法で得られるパイロクロア型酸化物(A=A、B=B)において、Aサイトの一部及び/又はBサイトの一部を、他の金属で置換(ドープともいう)した組成を有する。このドープにより、触媒活性を向上できる場合があり、この目的で、この形態が有効である。
【0041】
つまりこの形態では、前記Aが前記A1とは異なる金属(A2という)を含み、かつ/又は、前記Bが前記B1とは異なる金属(B2という)を含む(以下場合によりA2およびB2をドープ金属という)。
【0042】
金属AおよびBは、それぞれ独立して、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Os、Co、Rh、Ni、Pd、Cu、Al、Ga、In、Ge、As、Sb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選ばれる少なくとも一種であることがこのましい。これらの金属は1種単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
これらドープ金属は、パイロクロア型酸化物の調製の際に、金属A2であれば原料である前記金属A1のハロゲン化物または硝酸塩の水溶液に予め溶解しておくことができる。
【0044】
また金属Bであれば、原料である前記金属Bの金属酸アルカリの水溶液に、予め溶解しておくことができる。これらAおよびはBいずれも塩の形でそれぞれの水溶液に溶解させることができる。金属Aの塩としては、Aの金属塩が溶解している水溶液中に安定して溶解可能なものを使用することができる。また金属Bの塩としては、Bの金属塩が溶解している水溶液中に安定して溶解可能なものを使用することができる。例えば、Aの塩として、Aのハロゲン化物または硝酸塩を用いることができ、Bの塩としてはBの金属酸アルカリを用いることができる。
【0045】
これらドープ金属添加量については、例えば、化学式がA2−X2−Y7−Z(但し0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1)となるよう調節することができる。
【0046】
本発明において、パイロクロア型酸化物は、液相中略室温で合成することができる。パイロクロア型酸化物のBET比表面積が20m/g以上であることが望ましく、本発明によってこのような比表面積のパイロクロア型酸化物を得ることができる。
【0047】
(触媒担体に担持する場合)
本発明により製造されるパイロクロア型酸化物は、電極反応を促進させるための触媒として有用である。パイロクロア型酸化物にカーボン等の固体導電性材料を混合してこのような電極触媒として用いることにより、電極反応に好適な電子導電性が確保され、また、燃料ガスまたは酸化剤ガスなどの反応ガスを好適に拡散させるための空孔を確保することができる。したがって、得られる電極触媒の酸素還元活性の更なる向上を図ることができる。
【0048】
前記パイロクロア型酸化物および前記固体導電性材料は、乳鉢やボールミルなどの混合機で物理的に混合されて用いてもよいが、好ましくは、前記パイロクロア型酸化物と前記導電性材料とが、合成時の沈殿形成段階から共存し、前記導電性材料がパイロクロア型酸化物沈殿の担体の役割を果たすことが好ましい。このように固体導電性材料を担体として機能させることにより、前記パイロクロア型酸化物の分散性を高めることができ、より触媒比表面積の大きく、安定性の高い、高活性な触媒を得ることができる。
【0049】
前記固体導電性材料としては、合成時に用いられる溶媒である水に不溶である固体、特には固体粒子を用いることができる。固体導電性材料は、適度な粒子径と比表面積をもつ多孔体であることが好ましい。この観点から主にカーボンを主成分とするものが好ましく用いられるが、パイロクロア型酸化物を所望の分散状態で担持できるものであれば、その材料は特に限定はされない。また、導電性のほか、ある程度のプロトン伝導性を持つか、または、プロトンを伝導する媒体を保持できるとさらに好ましい。この観点から、カーボンブラックなどの多孔性カーボン担体が好ましく用いられる。
【0050】
前記導電性材料として、カーボンを主成分とするものとしては、具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、バルカン、ブラックパール、黒鉛化アセチレンブラック、黒鉛化バルカン、黒鉛化ケッチェンブラック、黒鉛化ブラックパール、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリル等よりなる群から選択される1種または2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0051】
前記導電性材料のBET比表面積は、パイロクロア型酸化物を高分散に担持させる観点から好ましくは80m/g以上とするのがよい。前記比表面積が80m2/g以上であると、前記導電性材料への触媒成分の分散性が好適であり、好適な発電性能が得られる。
【0052】
また、前記導電性材料の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さおよび触媒利用率を適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均直径を5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。なお、導電性材料の平均直径は、TEM観察によって測定、算出することができる。
【0053】
導電性材料担持パイロクロア型酸化物触媒において、パイロクロア型酸化物の含有量は、パイロクロア型酸化物と導電性材料の合計量に対して、好ましくは5〜90質量%とするのがよい。前記含有量が90質量%以下であると、触媒成分の導電性材料上での分散度を良好にすることが容易で、担持量の増加による発電性能向上効果が好適に得られる。また、前記担持量が5質量%以上であると、単位質量あたりの触媒活性が好適であり、所望の触媒活性を得るために多量の電極触媒が必要となることを容易に抑制することができる。
【0054】
これら導電性材料は、パイロクロア型酸化物の調製の際に、原料である前記金属Aのハロゲン化物または硝酸塩の水溶液(第1の水溶液)に、または、前記金属Bの金属酸アルカリの水溶液(第2の水溶液)に、予め分散させておくことができる。
【0055】
(沈殿形成後の後処理)
こうしてパイロクロア型酸化物、あるいはその導電性材料との組成物を沈殿として形成した後、濾別や遠心分離等で、反応系中からパイロクロア型酸化物を含む沈殿物を分離回収することができる。得られたパイロクロア型酸化物は、通常、黒色または茶褐色の固体である。得られたパイロクロア型酸化物を、純水等の洗浄媒を通水または鹸濁/濾過の繰り返し等の手法により洗浄し、沈殿形成時に副生する残留イオンなどの不純物を除くことが好ましい。このときの温度も略室温でよい。
【0056】
洗浄後に分離回収されたパイロクロア型酸化物沈殿は、通常乾燥工程により含有する水分をあらかた除去する。乾燥には、流通式乾燥炉やスチームドライヤーなど、一般的に空気や窒素などのガスを流通させながら、あるいは減圧下で沈殿を加熱しうる手段であれば用いることができる。乾燥の際の温度は、後に説明する焼成の温度よりも低いことが好ましい。具体的には、60℃以上200℃以下、好ましくは80℃以上150℃以下の範囲である。60℃よりも低い場合、沈殿物から水分を効率的に除去できないために乾燥に時間を要し、200℃を超える場合には、沈殿が水分を含む状態で加熱されることになるため、酸化物の粒子が凝集する虞がある。
【0057】
乾燥時間については、上記乾燥手段や温度により一概には言えないが、通常1分から72時間、好ましくは5分から36時間、さらに好ましくは10分から24時間の範囲である。1分より短い場合には、効率的な乾燥手段を用いたとしても十分に水分を除去できない虞があり、72時間を超える場合には製造負荷の点で好ましくないばかりでなく、乾燥中の酸化物粒子凝集が懸念される。
【0058】
このような乾燥工程後に、沈殿として得られたパイロクロア型酸化物は、乾燥した粉末として得ることができる。乾燥の度合いは高い方が好ましく、日本工業規格における熱重量損失(Loss Of Ignition:LOI)で通常10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下の範囲である。LOIが10%以上では明らかに乾燥不足であり、このまま次の焼成工程へ移行すると、焼成の初期段階で酸化物粒子の凝集が懸念される。
【0059】
(焼成工程)
本発明の調製方法によって得られるパイロクロア型酸化物は、その低温での合成条件ゆえ、沈殿として形成された酸化物の状態では粒子径の小さい状態が得られている。しかしながら前述のように、沈殿形成、洗浄濾過、乾燥工程を経ただけでは、パイロクロア酸化物の組成や沈殿形成条件によってはパイロクロア型酸化物としての十分な結晶性を有していない場合が多く、この状態からさらに焼成処理をすることで、高温による粒子凝集を抑制しながら、沈殿後のパイロクロア型酸化物の結晶性を高めることができる。以下にその具体的な方法について説明する。
【0060】
まず沈殿後の酸化物を加熱するに先立って、酸化物が十分に乾燥していることが必須である。先に述べた通り、LOIが高い高含水率の状態から焼成を行うと、水熱反応により酸化物粒子間での凝集が促進されることが知られているため、焼成前の状態でなるべく乾燥していることが好ましい。
【0061】
焼成は、空気中で行うのが最も簡便であるが、以下に示す理由がある場合には、窒素や、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気または流通下で行うことが好ましい場合もある。
【0062】
不活性ガス中で処理することが好ましい場合とは、上述の導電性材料との組成物において、該導電性材料としてカーボンなどの可燃性物質を用いる場合や、パイロクロア酸化物の平均酸化数を空気焼成によって上げたくない場合などである。いずれの場合にも、しかるべき不活性ガスにより焼成系内の雰囲気を置換、あるいは流通により不活性ガス雰囲気に保つことで、焼成系中の酸素を一定濃度以下まで遮断することが好ましい。不活性ガスを用いる際の該酸素濃度としては、上記酸素遮断の必要要件によって一概には言えないが、通常1%以下、好ましくは5,000ppm以下、さらに好ましくは1,000ppm以下の範囲である。
【0063】
これらの焼成条件で焼成を行う温度と時間について説明する。本発明における焼成は、沈殿として得られた粗パイロクロア型酸化物の結晶性を高めることが目的であるため、必然的にその焼成条件は、アモルファス状態から結晶層への転移温度以上で行うことが好ましい。焼成に先んじては、示差熱量計(DSC)や熱重量分析(TG−DTA)により結晶転移温度や重量減少開始温度に関して知見を得ることが好ましい。一例としてPbRu7−z(A=Pb、B=Ru)なる組成の酸化物の場合を述べる。図1は、組成がPbRu7−z(A=Pb、B=Ru)で表される酸化物のTG−DTA測定結果を示すグラフである。図1に示すように、沈殿・洗浄・乾燥後の酸化物はTG−DTA測定において100℃付近から緩やかな重量減少、300℃付近ではステップ的な重量減少、さらに500℃以上でも若干の重量減少が観測される。この結果を考慮して、たとえば350℃と600℃の2条件を焼成温度として選定した。
【0064】
焼成温度の最適値は上述のようにパイロクロア型酸化物組成と、沈殿形成後の状態に依存するため一概には言えないが、通常250℃から900℃、好ましくは300℃から700℃の範囲である。250℃以下では結晶化という観点から不十分である場合が多く、900℃を超える温度を与えると、いかに乾燥後の酸化物と言えども粒子凝集が避けられない場合が多く、いずれの場合も好ましくない。
【0065】
焼成時間についても同様に一義的な範囲設定は困難であるが、通常5分から36時間、好ましくは10分から24時間の範囲である。5分以下では十分な焼成効果が得られない虞があり、36時間を超える場合には生産性が悪いだけでなく、粒子凝集が進む虞がある。
【0066】
図2および図3は、それぞれ、焼成前および焼成後のパイロクロア型酸化物のXRD測定結果を示すグラフである。図2および図3に示すように、焼成前のパイロクロア型酸化物ではアモルファス相が多くピークがブロードであったのに対し、焼成後のパイロクロア型酸化物では明らかにパイロクロア型の結晶格子に由来するピークがシャープに変化する。
【0067】
図4および図5は、それぞれ、焼成前および焼成後のパイロクロア型酸化物のTEM像である。図4および図5に示すように、適切な焼成条件により焼成したパイロクロア型酸化物では、焼成前のパイロクロア型酸化物に比べて結晶化度増大によるコントラスト上昇は見られるものの、粒子径としては顕著な増大が見られない。
【0068】
上述の焼成により結晶化度が増大したパイロクロア型酸化物を1N硝酸に24時間浸漬させたのち上澄みをICP発光分析法により元素定量することで酸に対する溶解性を調べると、未焼成に比べて焼成後の酸化物は明らかに耐酸性が向上しており、パーフルオロスルフォン酸等の強酸性電解質を用いる燃料電池の電極触媒に用いる場合にも、長期耐久性が期待できる。
【0069】
本発明により得られるパイロクロア型酸化物は、従来固体高分子形燃料電池に用いられている電極触媒、たとえば導電性材料に貴金属粒子および/または貴金属合金粒子を担持させた電極触媒の代替として、あるいは、従来型触媒の組成物の一部、すなわち従来型触媒に混合して、燃料電池用電極触媒として用いることができる。
【0070】
なお、本発明のパイロクロア型酸化物触媒を燃料電池の電極に適用する場合には、アノード、カソードのいずれに対して用いても良く、またアノード、カソードの両極に用いてもよい。
【0071】
本発明により製造されるパイロクロア型酸化物の用途は、上記では固体高分子形燃料電池における電極触媒を例に挙げて説明したが、これに限定されず、アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池、ダイレクトメタノール燃料電池、ダイレクト有機ハイドライド燃料電池、マイクロ燃料電池などの各種燃料電池における電極触媒として用いることができる。さらに、一定の高温安定性を有する触媒系であれば、固体酸化物形燃料電池や溶融炭酸塩形燃料電池などの、いわゆる高温型燃料電池への適用可能性もある。また、燃料電池用電極触媒に限定されることもなく、電気分解によるガス発生装置等他の用途にも適宜用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
(実施例1−1)パイロクロア型酸化物PbRu7−Zの調製
硝酸鉛(II)(Pb(NO)を純水に溶解した0.5mol/Lの硝酸鉛(II)水溶液をビーカー内に投入し、室温(約25℃)にて攪拌しながら、ルテニウム酸カリウム(KRuO)を純水に溶解した0.5mol/Lのルテニウム酸カリウム水溶液を、PbとRuのモル比が1:1となるよう滴下した。その後、上記ビーカー内に生成した沈殿物を、濾別し、純水で洗浄し、生成したパイロクロア型酸化物を取り出し、空気流通下120℃で12時間乾燥させた。乾燥後生成物のLOIは3.5%、BET比表面積は69m/gであった。また、XRDによる結晶構造解析を試みたが、この段階ではピークがブロードで特定の結晶構造へ帰属することが出来なかった。
【0074】
この生成物を磁製るつぼに移し、マッフル炉で空気焼成を行った。焼成は、150℃で1時間、5℃/分で400℃まで昇温して、その温度で6時間保持したのち、室温まで降下させて取り出した。BET比表面積は62m/gで、XRDではパイロクロア格子に特有なピークが観察された。また本測定によるピーク半値幅とScherrerの式から求められる平均粒子径は10nm程度であり、焼成による粒子凝集はほとんど起きていないことが確認された。
【0075】
(実施例1−2)パイロクロア型酸化物Sn2Ru27-Zの調製
硝酸スズ(II)(Sn(NO32)を純水に溶解した0.5mol/Lの硝酸スズ(II)水溶液をビーカー内に投入し、室温(約25℃)にて攪拌しながら、ルテニウム酸カリウム(K2RuO4)を純水に溶解した0.5mol/Lのルテニウム酸カリウム水溶液を、SnとRuのモル比が1:1となるよう滴下した。その後、上記ビーカー内に生成した沈殿物を、濾別し、純水で洗浄し、生成したパイロクロア型酸化物を取り出し、空気流通下120℃で12時間乾燥させた。乾燥後生成物のLOIは2.7%、BET比表面積は47m/gであった。また、XRDによる結晶構造解析を試みたが、この段階ではピークがブロードで特定の結晶構造へ帰属することが出来なかった。
【0076】
この生成物を磁製るつぼに移し、マッフル炉で空気焼成を行った。焼成は、150℃で1時間、5℃/分で600℃まで昇温して、その温度で8時間保持したのち、室温まで降下させて取り出した。BET比表面積は37m/gで、XRDではパイロクロア格子に特有なピークが観察された。また本測定によるピーク半値幅とScherrerの式から求められる平均粒子径は15nm程度であり、焼成による粒子凝集はほとんど起きていないことが確認された。
【0077】
またこの酸化物1gを1N塩酸100mLに鹸濁し、室温で72時間攪拌したのちに上澄みをICP発光分析法により元素分析したところ、パイロクロア型酸化物の構成元素であるPb、Ruの元素濃度はともに0.1原子%以下であった。
【0078】
(実施例2−1)カーボン担持パイロクロア型酸化物PbRu7−Z/Cの調製
硝酸鉛(II)(Pb(NO)を純水に溶解した0.5mol/Lの硝酸鉛(II)水溶液をビーカー内に投入し、室温(約25℃)にて攪拌しながら、カーボン粉末を分散させた。カーボン粉末としては、田中貴金属工業(株)より入手した、比表面積が800m/gのケッチェンブラックを用いた。ここへ、攪拌を続けながら、ルテニウム酸カリウム(K2RuO4)を純水に溶解した0.5mol/Lのルテニウム酸カリウム水溶液を滴下した。
【0079】
その後、上記ビーカー内に生成した沈殿物を、濾別し、純水で洗浄し、真空(100torr)下80℃で8時間乾燥させた。乾燥後生成物のLOIは6.8%、BET比表面積は85m2/gであった。また、XRDによる結晶構造解析を試みたところ、カーボン(グラファイト構造)に由来するピークのみが観測され、パイロクロア型酸化物に由来するピークは同定できなかった。
【0080】
この生成物を、目皿つき石英管にグラスウールを充填した反応管に移し、ヘリウムガスを100mL/分で流通しながら周囲を電気炉で加熱し、不活性ガス焼成を行った。焼成は、室温から3時間かけて350℃まで昇温し、その後その温度で6時間保持したのち、室温まで降下させて取り出した。BET比表面積は95m2/gで、XRDではグラファイト構造のブロードなハローに加えてパイロクロア格子に特有なピークが観察された。また本測定によるピーク半値幅とScherrerの式から求められる平均粒子径は約5nmであり、焼成による粒子凝集はほとんど起きていないことが確認された。
【0081】
(比較例1)パイロクロア型酸化物PbRu7−Zの焼成を行わない場合
実施例1−1の方法で生成した沈殿物を、濾別し、純水洗浄、乾燥させただけのパイロクロア型酸化物を取り出し、この酸化物1gを1N塩酸100mLに鹸濁し、室温で72時間攪拌すると、上澄みが明らかにRuイオンに由来する赤茶色を示し、上澄みをICP発光分析法により元素分析したところ、パイロクロア型酸化物の構成元素であるPbの元素濃度は11.7原子%、Ruの元素濃度は7.6原子%であった。
【0082】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式A7−Z
(ただし、AおよびBはそれぞれ金属元素を表し、Zは0以上1以下の数を表し、
AはPb、SnおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも一種であるA1を含み、
BはRu、W、Mo、Ir、Rh、Mn、CrおよびReからなる群から選ばれる少なくとも一種であるB1を含む。)
で表されるパイロクロア型酸化物の調製方法であって、
前記Aのハロゲン化物または硝酸塩と、前記Bの金属酸アルカリとの反応により、パイロクロア型酸化物の沈殿物を形成させる工程と、
250℃以上900℃以下の温度で前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を焼成する工程とを備えることを特徴とするパイロクロア型酸化物の調製方法。
【請求項2】
前記Aのハロゲン化物または硝酸塩の水溶液である第1の水溶液と、前記Bの金属酸アルカリ水溶液である第2の水溶液とを用意する工程と、
前記第1の水溶液および前記第2の水溶液のうちの一方を他方の中に滴下して前記反応を行い、パイロクロア型酸化物の沈殿物を形成させる工程と、
250℃以上900℃以下の温度で前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を焼成する工程と、
を備える請求項1に記載のパイロクロア型酸化物の調製方法。
【請求項3】
滴下により前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を形成させる工程の前に、
前記第1の水溶液および第2の水溶液のいずれか一方に、あらかじめ導電性材料を分散させる工程をさらに備える請求項2に記載のパイロクロア型酸化物の調製方法。
【請求項4】
前記沈殿物を形成させる工程における反応温度が0℃以上60℃以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパイロクロア型酸化物の調製方法。
【請求項5】
前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を焼成する工程を不活性ガス雰囲気中で行う請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパイロクロア型酸化物の調製方法。
【請求項6】
前記Aが前記A1とは異なる金属A2を含み、かつ/または、前記Bが前記B1とは異
なる金属B2を含み、
前記A2およびB2がそれぞれ独立して、
Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Os、Co、Rh、Ni、Pd、Cu、Al、Ga、In、Ge、As、Sb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパイロクロア型酸化物の調製方法。
【請求項7】
前記Aの前駆体としてA(NOを用い、
前記Bの前駆体としてKBOまたはNaBOを用いる請求項1乃至6のいずれか1項に記載のパイロクロア型酸化物の調製方法。
【請求項8】
前記A(NOが、少なくともPb(NOまたはSn(NOを含み、
前記KBOがKRuOであり、前記NaBOがNaRuOである請求項7に記載のパイロクロア型酸化物の調製方法。
【請求項9】
一般式A7−Z
(ただし、AおよびBはそれぞれ金属元素を表し、Zは0以上1以下の数を表し、
AはPb、SnおよびZnから選ばれる少なくとも一種であるAを含み、BはRu、W
、Mo、Ir、Rh、Mn、CrおよびReから選ばれる少なくとも一種であるBを含
む。)
で表されるパイロクロア型酸化物を含む燃料電池用電極触媒を製造する方法であって、
前記Aのハロゲン化物または硝酸塩と、前記Bの金属酸アルカリとの反応により沈殿物を形成させる工程と、窒素 等の不活性ガス雰囲気中にて250℃以上900℃以下の温度で前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を焼成する工程と、を備えることを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項10】
前記Aのハロゲン化物または硝酸塩の水溶液である第1の水溶液と、前記Bの金属酸アルカリ水溶液である第2の水溶液とを用意する工程と、
前記第1の水溶液および前記第2の水溶液のうちの一方を他方の中に滴下して前記反応を行い、パイロクロア型酸化物の沈殿物を形成させる工程と、
250℃以上900℃以下の温度で前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を焼成する工程と、を備える請求項9に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項11】
滴下により前記パイロクロア型酸化物の沈殿物を形成させる工程の前に、
前記第1の水溶液および第2の水溶液のいずれか一方に、あらかじめ導電性材料を分散させる工程をさらに備える請求項10に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−49075(P2012−49075A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192287(P2010−192287)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】