説明

パイロット記号と非パイロット記号とを用いる周波数追跡

【課題】パイロット記号と非パイロット記号の双方を含む制御記号を用いる周波数追跡技法の提供。
【解決手段】受信された信号の周波数誤差を推定する際に、パイロット記号と非パイロット記号の双方を用いることが可能である。非パイロット記号がどれほどこの推定に寄与するかは、非パイロット記号の各々と関連する信頼水準にしたがって重み付けすることが可能である。ある場合では、非パイロット記号に対してソフト判定を発生して、次にこれをパイロット記号と共に用いて周波数追跡を実行する。このようにして、周波数追跡ループを改善することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【分野】
【0001】
本発明は、一般的には無線通信に関し、より詳しくは無線通信システムにおける周波数追跡に関する。
【背景】
【0002】
周波数分割多重アクセス方式(FDMA)、時分割多重アクセス方式(TDMA)および様々なスペクトル拡散技法を含む様々な多くの無線通信技法が開発されている。無線通信で一般的に用いられている1つのスペクトル拡散技法に、符号分割多重アクセス(CDMA)信号変調があるが、これは、多重通信情報をスペクトル拡散無線周波数(RF)信号を介して同時に送信するものである。CDMA技術を組み込んだ一部の例示の無線通信デバイスには、セルラー無線電話、携帯式コンピュータに組み込まれたPCMCIAカード、無線通信機能を備えた個人向け携帯型情報通信機器(PDA)およびそれらの類似物がある。
【0003】
CDMA技術と他の無線通信技術においては、受信された信号の周波数を監視し、これによってその信号を調整する目的で周波数追跡ループがしばしば実現される。特に、周波数誤差(すなわち周波数変動)は、システムのフォワードリンクまたは逆リンクを介して受信された搬送波信号中にはしばしば存在する。フォワードリンク(ときとして「ダウンリンク」と呼ばれる)とは、基地局から無線通信デバイス(WCD)に送られる信号のことである。逆リンク(ときとして「アップリンク」と呼ばれる)WCDから基地局に送られる信号のことである。
【0004】
これらは一般に、搬送波信号の好ましくない周波数変動を引き起こしかねない二つの主要な原因である。第1の原因は、一般に「ドプラー効果」または「ドプラーシフト」として知られているものである。このドプラー効果は、送信機と受信機との間の相対速度による受信信号の周波数変化として現れる。したがって、WCDが、信号を逆リンク上で送信しながら基地局から離れる方向に移動すると、基地局の受信機には、オリジナルの送出信号より周波数の低い、すなわち波長の長い信号が受信されることになる。WCDはしばしば車両や高速送信システム内で用いられるので、ドプラーシフトの補正は、強力で効果的な無線通信システムを維持する際にはきわめて重要な要因である。
【0005】
好ましくない周波数変動を引き起こしかねない第2の原因は、無線通信システム内の様々なデバイスのローカルクロック同士間の変動に関連する。本システム中の各デバイスは、一般的には、デバイス自身のローカルクロックをそのタイミング基準として利用する周波数シンセサイザを用いて搬送波信号を発生する。しかしながら、各ローカルクロックは、一般的に、未知のタイミング誤差を有している。特にWCDは、比較的低コストのローカルクロック、例えば、電圧制御式で温度補償型の水晶発振器(VCTCXO)となる。これらのローカルクロックは、搬送波信号中にかなりの周波数誤差を引き込みかねない。
【0006】
周波数誤差を突き止め、それによって信号を調整するために、周波数追跡ループが無線通信システム内のWCDと基地局内にしばしば備えられる。例えば、周波数弁別器を用いて、周波数誤差の推定値を計算することが可能である。特に、周波数弁別器は、残留周波数誤差推定値を計算して、それを累算器に送り、ここで、連続的に残留周波数誤差推定値を累算して、実際の周波数誤差を推定する。この累算された推定値はローテータ(rotator)により用いられ、受信信号の周波数を調整し、これによって、残留周波数誤差を減少させる。残留周波数誤差は結局、ほぼゼロに収束し、これで、累算された推定値は実際の周波数誤差にほぼ等しくなる。このようにして、フィードバックループは、受信された搬送波信号中の周波数誤差を補正することが可能となる。
【0007】
一般に、周波数追跡ループの性能を特徴付ける三つの周波数追跡ループ変数がある:ループの時定数、残留周波数誤差の標準偏差および同期引き込み範囲である。時定数は、周波数追跡ループが初期化されてから残留周波数誤差を約ゼロに減少させるのに要する時間の推定値または尺度である。ループは、例えば、レーキ(RAKE)受信機のフィンガーが最初に経路に割り当てられたときなどに初期化されることがある。同期引き込み範囲は、周波数追跡ループが対処し得る最大の周波数誤差を定める厳密な境界である。例えば、初期化された時に、残留周波数誤差が同期引き込み範囲より大きいと、周波数追跡ループは収束しない。
【0008】
一般に、時定数を最小化し、残留周波数誤差の標準偏差を最小化し、同期引き込み範囲を最大化することが好都合である。特に、時定数と標準偏差は、本システムの誤差率に影響するという意味で、システム性能に直接影響する。同期引き込み範囲は一般的に、無線通信デバイスが本システム中で効果的に通信することができる限度の相対速度を制限する。これらの三つの変数は、無線通信システムの設計者にとってはしばしば二律背反となる。
【0009】
パイロット記号は、しばしば、残留周波数誤差を推定するために用いられる。パイロット記号は、復調、例えば、逆拡散とウオルシュ(Walsh)/OVSFディカバリング(decovering)によって受信信号から抽出することが可能である。パイロット記号とは、一般に、従来はシステムの同期化を容易にするために用いられてきた制御記号のことである。パイロット記号は、一般的には、制御チャネルを介して送信される。残留周波数誤差の推定値を計算するには、第1のパイロット記号を第2のパイロット記号の共役複素数とクロス乗算して、連続する記号同士間の位相回転を計算すればよい。このようにして、残留周波数誤差の推定値を得て累算することが可能である。
【0010】
一部の無線通信システムの場合、他の制御記号、すなわち、非パイロット記号は、システム性能を向上させるために制御チャネル内で実現されてきた。例えば、W−CDMAでは、パイロット記号と非パイロット記号の双方が制御チャネル上で送信される。これは、周波数追跡ループを効果的に実現することに対する課題となるものである。特に、残留周波数誤差の標準偏差と時定数との所望の設計目標をW−CDMAで達成すると、その結果、同期引き込み範囲が小さくなりかねない。この同期引き込み範囲が小さくなったことを補償するために、従来は、複雑な探索機エレメントを用いて、複数の周波数オフセットを探索して、残留周波数誤差が同期引き込み範囲内に入るように保証する必要があった。それでも、このような複雑な探索機エレメントを用いても、無線通信デバイスが非常に高速、例えば、高速輸送システムに伴うような速度で走行している場合には、周波数追跡ループは収束しないことがある。
【発明の概要】
【0011】
一般に、本発明は、パイロット記号と非パイロット記号の双方を含む制御記号を用いる周波数追跡技術に向けられている。特に、パイロット記号と非パイロット記号は双方共、受信信号の残留周波数誤差の推定に用いることが可能である。非パイロット記号がこの推定にどれほど寄与するかは、各非パイロット記号と関連する信頼水準にしたがって重み付けすることが可能である。このようにして、周波数追跡ループを改善することが可能である。
【0012】
パイロット記号とは、一般に、従来はシステムを容易に同期化するために用いられてきた制御記号のことであり、非パイロット記号とは、トランスポートフォーマット組み合わせインジケータ(TFC記号)、送信出力制御インジケータ(TPC記号)、フィードバックインジケータ(FBI記号)または、さらに、制御チャネル上で送信されるデータ記号さえも含む他の多くの考えられる記号の内のどれかのことである。本発明による技法では、連続する記号同士間の位相回転(phase rotation)を測定するために制御記号と関連するクロス積が計算される。パイロット記号は、このクロス積の計算に用いることが可能である。一方、非パイロット記号は、最初に、各非パイロット記号と関連する値に関する判定とこの判定における信頼を示す信頼水準との双方を組み込んだソフト判定に変換される。このソフト判定は、パイロット記号と共に、連続する記号同士間の位相回転を測定するためにクロス積を計算する際に用いることが可能である。
【0013】
連続する記号同士間の位相回転を測定するには、第1の集合を成す記号を第2の集合を成す記号の共役複素数とクロス乗算すればよい。しかしながら、上述したように、非パイロット記号は、クロス積の計算で用いられる以前にソフト判定に変換される。このようにして、残留周波数誤差の推定に対して非パイロット記号がどれほど効果的に貢献するかは、非パイロット記号と関連する信頼水準にしたがって重み付けされる。例えば、低い信号対雑音比と干渉比とで受信された非パイロット記号には低い重み付けをし、これによって、間違った推定値によって周波数追跡ループの効果的な実現が邪魔されないように保証する。
【0014】
例示の実施形態では、本発明は1つ以上の周波数追跡方法を指向している。例えば、ある方法は制御記号を第1の無線信号から得ることを含むが、ここで、制御記号はパイロット記号と非パイロット記号の双方を含んでいる。本方法はまた、第1の無線信号を周波数追跡するためにパイロット記号と非パイロット記号の双方を用いることを含む。1つの特定の実施形態では、本方法は、非パイロット記号に対するソフト判定を発生することを含む。例えば、各ソフト判定には、このソフト判定と関連する信頼水準を示す重みが組み込まれる。これで、パイロット記号とソフト判定とを用いて、第1の無線信号を周波数追跡することが可能となる。
【0015】
本方法は、例えば、無線通信システム内の様々なデバイス中で実施して、本システム内での周波数追跡機能を向上させることが可能である。例えば、一部の実施形態では、本発明は、基地局の一部または、代替例では、本システム内の無線通信デバイス(WCD)を形成する装置を指向する。本発明の多くの態様が基地局内での周波数追跡と関連させて本書では説明されているが、本発明はそれに限られないということに注意すべきである。一部の実施形態では、本発明は、基地局、WCDまたは多くの基地局やWCD内でさえも周波数追跡技法を実施する無線通信システムを指向する。
【0016】
本発明は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエアまたはこれらの任意の組み合わせで実現される。ソフトウエアで実現されると、本発明は、実行されると上記の方法の内の1つ以上を遂行するプログラムコードを担っているコンピュータ読みとり可能な媒体(a computer readable medium carrying program code)を指向する。
【0017】
本発明は、多くの長所を提供することが可能である。例えば、本発明によって、制御チャネル内にパイロット記号と非パイロット記号の双方を含む信号の周波数追跡を容易化することが可能である。特に、周波数追跡ループは、低い信頼水準を関連するソフト判定にはほとんどまたは全く重みを与えないこと、すなわち、相対的に低い出力または低い信号対雑音比および干渉比で受信された記号を保証することによって向上させることが可能である。
【0018】
本発明の別の長所は、周波数追跡ループの同期引き込み範囲を増大させることが可能であるということである。例えば、非パイロット記号を用い、これで、周波数追跡ループで用いられる任意の二つの連続する記号同士間のギャップを解消することによって、同期引き込み範囲を容易に増大させることが可能となる。特に、非パイロット記号を用いることによって、周波数弁別器は、新しい新規な組み合わせを含む互いに異なった様々なクロス積の組み合わせを実施して、同期引き込み範囲を増大させることが可能である。これで、周波数追跡ループ中に供給された残留周波数誤差が同期引き込み範囲内に入ることを保証するために従来用いられてきた複雑な探索機エレメントに対する必要性を回避することが可能となる。そのうえ、この改善は、残留周波数誤差の時定数にも標準偏差にも負の影響を及ぼすことはない。場合によっては、非パイロット記号が周波数追跡で用いられ、また、周波数弁別器にはギャップが導入されないので、残留周波数誤差の標準偏差を減少させ、これで、システム中のデータ誤差率を改善することが可能である。
【0019】
加えて、本発明を用いて、周波数追跡ループの同期引き込み範囲と時定数との間の二律背反を改善することが可能である。周波数追跡ループの同期引き込み範囲を増大させることによって、本発明は、同期引き込み範囲と最大残留周波数誤差との間の余裕を増加させることが可能である。この結果、周波数追跡ループの収束が早くなる、すなわち、周波数追跡ループの時定数が減少する。
【0020】
上記の実施形態および他の実施形態のさらなる詳細は、添付図面と以下の説明に記載されている。他の特徴、目的および長所は、説明と図面さらにクレームを読めば明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による無線通信システムを示すブロック図である。
【図2】本発明による周波数追跡技法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の様々な態様を実施するために用いることが可能な例示のハードウエアを示すブロック図である。
【図4】ソフト判定発生器の実施形態の詳細を示すブロック図である。
【図5】双曲正接演算の結果とこの双曲正接演算の適切な推定値とのグラフである。
【図6】累算器に接続された周波数弁別器の実施形態をさらに示すブロック図である。
【図7】本発明による周波数追跡技法を示すフローチャートである。
【図8】レーキ受信機内で本発明の様々な態様を実施するために用いることが可能な例示のハードウエアを示すブロック図である。
【図9】本発明による周波数追跡技法を示す別のフローチャートである。
【詳細な説明】
【0022】
以下の説明において、本発明の様々な態様を、逆リンク上で、例えば、無線通信デバイス(WCD)から基地局に送信された無線信号に関連して説明する。その場合、本発明では、基地局によって受信された信号を周波数追跡する。しかしながら、本発明はまた、無線通信システム内の他のデバイスによっても実施可能である。例えば、一部の実施形態では、本発明は、WCD中で実施可能である。その場合、WCDは、基地局から送られた信号を周波数追跡する。したがって、以下の説明は、無線通信システム内での周波数追跡を改善するために用いることが可能な周波数追跡技法の例示となることを意味するものである。
【0023】
図1は、例示のスペクトル拡散無線通信システム2を示すブロック図であり、このシステム中では、基地局4が信号12〜14をWCD6から1つ以上の経路を介して受信する。特に、基地局4Aは、信号12AをWCD6Aから第1の経路を受信し、また、信号12Cを、障害物10からの信号12Bの反射によってもたらされた第2の経路を介して受信する。障害物10は、建築物、橋、車、さらに人物などのWCD6Aに近接して存在するなんらかの構造物である。
【0024】
基地局4Aもまた、信号13AをWCD6Bから第1の経路を介してWCD6Bから受信し、また、信号13Cを、障害物10からの信号13Bの反射によってもたらされた第2の経路を介して受信する。加えて、基地局4Aは信号14AをWCD14Aから受信する。基地局4Aは、レーキ受信機と呼ばれるものを実現して、様々なWCDおよび/または同一のWCDからしかし互いに異なった経路を介して受信した様々な信号を同時に追跡する。システム2は、任意の数のWCDと基地局とを含む。例えば、図示されているように、別の基地局4Bが信号13DをWCD6Bから受信する。加えて、基地局4Bは信号14BをWCD6Cから受信する。
【0025】
周波数誤差は、システム2のフォワードリンクまたは逆リンクを介して受信した搬送波信号中にしばしば存在する。例えば、様々な周波数誤差が一般的に、WCD6から基地局4に逆リンクを介して送られた信号12〜14中に存在するが、これは、ローカルクロックが変動するためとドプラー効果のためである。これらの周波数誤差を検出してそれを補償するには、基地局4は、以下に詳述する周波数追跡技法を実施すればよい。同様に、WCD6は、これと同じ周波数追跡技法を用いて、フォワードリンクを介して(基地局からWCDに対して)受信された信号中の周波数誤差を検出して補償する。
【0026】
WCD6の例には、セルラー無線電話、衛星無線電話、携帯式コンピュータ内に組み込まれたPCMCIAカード、無線通信機能を備えた個人向け携帯型情報通信機器(PDA)およびそれらの類似物がある。基地局4(ベーストランシーバシステムBTSと呼ばれることもある)は一般的には、基地局コントローラ8に接続されて、基地局4と公衆交換電話網(PSTN)13との間のインタフェースとなる。
【0027】
システム2は、例えば、(1)「TIA/EIA−95−Bデュアルモード広帯域スペクトル拡散セルラーシステム用移動局−基地局互換性規格(TIA/EIA-95-B Mobile Station-Base Station Compatibility Standard for Dual-Mode Wideband Spread Spectrum Cellular System)」(IS−95規格)、(2)「TIA/EIA−98−Cデュアルモード広帯域スペクトル拡散セルラー移動局用推奨最小規格(TIA-EIA-98-C Recommended Minimum Standard for Dual-Mode Wideband Spread Spectrum Cellular Mobile Station)」、(3)「第3世代移動体通信規格化プロジェクト(3rd Generation Partnership Project)」(3GPP)と呼ばれる組織により提供され、文書番号3G TS 25.211、3G TS 25.212、3G TS 25.213および3G TS 25.214を含む文書から集合として実現された基準、(4)「第3世代移動体通信規格化プロジェクト2(3rd Generation Partnership Project 2)」(3GPP2)と呼ばれる組織により提供され、「TR−45.5cdma2000スペクトル拡散システム用物理層規格(TR-45.5 Physical Layer Standard for cdma2000 Spread Spectrum Systems)」、「C.S0005−cdma2000スペクトル拡散システム用上位層(第3層)シグナリング規格(C.S0005-A Upper Layer(Layer 3) Signaling Standard for cdma2000 Spread Spectrum Systems)」および「C.S0024 CDMA2000高速パケットデータエアインタフェース仕様書(C.S0024 CDMA2000 High Rate Packet Data Air Interface Specification)」(CDMA2000規格)を含む一式の文書で具体化される規格、(5)TIA/EIA−IS−856、「CDMA2000高速パケットデータエアインタフェース仕様書(CDMA2000 High Rate Packet Data Air Interface Specification)」に文書化されるHDRシステム、および(6)他のいくつかの規格を含む1つまたは複数のCDMA規格に対応するように作られてよい。
【0028】
図2は、基地局4Aまたは4B(以後基地局4)中での受信信号の周波数追跡を改善するために用いることが可能な周波数追跡技法を示すフローチャートである。これまた、この技法は基地局4で実施して、WCD6A、6Bまたは6C(以後WCD6)から受信した信号を追跡して調整するものと記載されているが、本発明は、どの基地局4中でもまたはシステム2内のどのWCD6中でも実施可能である。
【0029】
図示するように、基地局4は無線信号12を受信する(21)。特に、信号12は、CDMA通信システムの制御チャネル信号を含み、また、一般的には「チップ」と呼ばれるパルスの列を含んでいる。信号12が受信されるに連れて、各チップは基地局4によって復調される(22)。例えば、信号12がスペクトル拡散CDMA信号である場合、復調するには、各チップに対して、疑似雑音(PN)コードを逆拡散して、直交コードをディカバリング(時として「ウオルシュディカバリング」(Walsh decovering)と呼ばれる)する。次に、復調の結果を収集して制御記号に分類する(23)。例えば、各制御記号は256の復調されたチップのストリームから得られる。
【0030】
制御記号は、パイロット記号または非パイロット記号というカテゴリに分類される。「スロット」とは、制御記号のグループであり、一般的には、10の制御記号を含むが、本発明はその点では制限されない。例えば、パイロット記号は一般的に、スロットの第1の数少ない制御記号を構成し、その他の制御記号は様々な非パイロット記号を含んでいる。以下に詳述するように、本発明によれば、入力信号の周波数追跡は、パイロット記号と非パイロット記号を用いて実行される。
【0031】
パイロット記号とは、システムの同期化を容易にするために用いられる制御記号のことである。従来、パイロット記号だけを用いて、送信済み信号の時間、周波数および/または位相を追跡してきた。しかしながら、本発明によれば、非パイロット記号もまた周波数追跡で用いられる。基地局4Aは、スロットのどの記号がパイロット記号であるかを判断するようにプログラムしたり設計したりすることが可能である。
【0032】
非パイロット記号とは、他のすべての制御記号、すなわち、パイロット記号ではない制御記号のことである。例えば、非パイロット記号には、データがデータチャネル上でどのように編成されているかに付いての情報を伝達するトランスポートフォーマット合成インジケータ(TFC記号)、出力制御コマンドを伝達する送信出力制御インジケータ(TPC記号)、様々なフィードバック情報を伝達するフィードバックインジケータ(FBI記号)、制御チャネル上で送信されるデータ記号または、パイロット記号ではない他のなんらかの制御記号が含まれる。基地局4Aは、スロットのどの記号がどの非パイロット記号に対応するかを把握するようにプログラムしたり設計したりすることが可能である。
【0033】
本発明によれば、ソフト判定は、非パイロット記号の各々に対して計算される(24)。このソフト判定は、非パイロット記号中に表されている値に関する判断と非パイロット記号と関連する信頼係数との双方を組み込むことが可能である。例えば、以下に詳述するように、双曲正接関数またはその近似式を用いて、ソフト判定を発生させることが可能である。すると、パイロット記号とソフト判定とを用いて周波数追跡をすることが可能となる(25)。例えば、一部の実施形態では、パイロット記号とソフト判定とを、互いに異なった様々なクロス乗算演算の内の1つで用いて、容易に残留周波数誤差の推定値を計算することが可能である。次に、残留周波数誤差推定値を累算して、信号12と関連する周波数誤差の推定値とする。従来の周波数追跡技法では、周波数追跡に非パイロット記号を無視してきた。しかしながら、本発明では、非パイロット記号を用いてソフト判定を発生され、これをパイロット記号と共に用いて、周波数追跡の能力を改善することが可能である。
【0034】
残留周波数誤差推定値の累算は、残留周波数誤差がゼロに収束するように無期限に継続する。累算された周波数誤差もまた、フィードバック信号として基地局4内のローテータに送ることが可能である(26)。代替例では、この累算された周波数誤差は、基地局4内のローテータによって必要に応じてアクセス可能である。どちらの場合も、閉ループフィードバックシステムが確立される。言い換えれば、信号から復調されたパイロット記号と非パイロット記号とを継続的に使用して、残留周波数誤差推定値を決定する。残留周波数誤差推定値は、累算されると、信号の実際の誤差の収束推定値に近づく。次に、累算推定値をローテータが継続的に用いることによって、信号周波数を調整する。
【0035】
図3は、本発明の様々な態様を実施するために用いることが可能な例示のハードウエアのブロック図である。これまた、図3のハードウエアが、基地局4の一構成部分として記述されているが;しかしながら、類似のハードウエアによってWCD6の一部を形成して、周波数誤差を推定し、これによって、WCD6によって受信された信号の信号周波数を調整することも可能である。基地局4は、IS−95、IS−98、W−CDMA、CDMA2000またはその類似物、例えば、FDMA基準もしくは設計、TDMA基準もしくは設計またはCDMA基準もしくは設計を含む1つ以上の無線基準または設計をサポートするように設計される。
【0036】
図3に示すように、基地局4のハードウエアには、アンテナ31に結合された送受信機32(トランシーバ)が含まれる。CDMA通信システムの制御チャネル信号などの入力RF信号が受信されると、送受信機32はこの受信信号を調節する、例えば、この信号をフィルタリングし、増幅し、ディジタル化してから、このディジタル化された信号をローテータ33に渡す。ローテータ33は、信号の周波数を調整して、ローカルクロックの変動とドプラーシフトによってもたらされた周波数誤差を補償する。以下に詳述するように、基地局4は、パイロット記号と非パイロット記号の双方を用いる周波数追跡ループを実現して、周波数誤差を推定する。ローテータ33は、周波数追跡ループの一部を形成しており、また、具体的には推定された周波数誤差を用い、それによって、受信信号を調整する。
【0037】
受信信号は、その周波数が調整されたら、復調器34に送られる。復調器34は、各チップに対してPNコードを逆拡散して直交コードをディカバリングすることなどによって、信号のチップを個別に復調する。次に、復調の結果を、記号発生器35によって制御記号に分類する。これで、記号発生器35は、制御記号をディジタル信号プロセッサ(DSP)38に渡すことが可能となり、このプロセッサは記号検出、デコーディングまたはデータリカバリを実行する。
【0038】
W−CDMAの場合、制御記号は一般的には式(1)で定義される:
【数1】

【0039】
式中、yiは制御記号を表し、
はスロット中の制御記号の数を表し、
はスロット中のパイロット記号の数を表し、
Aはチャネル振幅を表し、
φはチャネル位相を表し、
はn〜CN(0,2σ)という特性を有し、独立して同様に分布している(IID)チャネル雑音であり、
は非パイロット記号(すなわち、b∈{−1,1})とIIDの値であり、
jは√−1を表す。
【0040】
記号発生器35はまた、制御記号をソフト判定発生器36に渡す。ソフト判定発生器36は、パイロット記号と非パイロット記号を識別して区別することが可能なハードウエアを含んでいる。例えば、上述したように、W−CDMAでは、パイロット記号はスロットに対して第1の少数の制御記号を含んでいる。その場合、ソフト判定発生器36は、パイロット記号を、各スロットのこれらの第1の制御記号として識別する。ソフト判定発生器36は、パイロット記号を操作しないで、単に、それを周波数弁別器37に渡す。しかしながら、非制御記号の場合、ソフト判定発生器36は各記号を操作して、ソフト判定を発生する。これで、これらのソフト判定を、非パイロット記号の代わりに周波数弁別器37に渡すことが可能となる。
【0041】
特に、ソフト判定発生器36は、非パイロット記号を識別すると、記号が1または−1であるかの判定と記号が1または−1であるかのこの判定の信頼水準の双方を組み込んだソフト判定を発生する。このようにして、周波数弁別器37に渡されたソフト判定を、非パイロット記号と関連した信頼水準にしたがって重み付けすることが可能である。例えば、信頼水準は受信信号と関連する出力レベルまたはこの信号に関連する信号対雑音比と干渉比の関数である。1つの特定の例では、ソフト判定は、双曲正接関数を適用することによって発生する。他の実施形態では、ソフト判定は単に、重み付けされた非パイロット記号を表している。ソフト判定発生器のさらなる詳細は以下に記載する。
【0042】
周波数弁別器37は、受信信号と関連する誤差を、パイロット記号とソフト判定発生器36が発生したソフト判定とを用いて推定する。例えば、様々な実施形態では、周波数弁別器37は、残留周波数誤差を、記号をクロス乗算することおよび/またはソフト判定で連続する記号同士間の位相差を決定することによって推定する。場合によっては、周波数弁別器37は、記号の集合をクロス乗算することおよび/またはソフト判定して位相差を決定する。特に、記号の集合とソフト判定とは、周波数追跡ループの同期引き込み範囲を増大させるように定めることが可能である。代替例では、周波数弁別器37は、クロス乗算以外の技法を用いて残留周波数誤差を推定する。例えば、周波数弁別器37は、パイロット記号の高速フーリエ変換(FFT)を取ることと非パイロット記号と関連するソフト判定とによって残留周波数誤差を推定する。加えて、残留周波数誤差を推定する他の方法も、周波数弁別器37によって用いられる。重要なことは、非パイロット記号を用いるため、連続する記号同士間のギャップがなく、これによって、記号の集合および/またはソフト判定を、同期引き込み範囲を増大させるように定めることが許容されることである。
【0043】
残留周波数誤差推定値を表すクロス積は、周波数弁別器37から出力されて、累算器39で累算されて、受信信号と関連する実際の周波数誤差の推定値を定量化する。場合によっては、累算器39は、コマンドをローテータ33に出力して、ローテータ33に対して、受信信号の周波数を調整するように指示し、場合によっては、ローテータ33が周波数累算器39にアクセスして、適切な周波数調整値を決定する。周波数弁別器37のさらなる詳細を以下に説明する。
【0044】
図4は、ソフト判定発生器36の一実施形態を示すより詳細なブロック図である。図4に示すように、ソフト判定発生器36は、記号識別器41と双曲正接ユニット42とを含んでいる。記号識別器41は、入力してくる記号(43で示す)がパイロット記号であるか非パイロット記号であるかを判断する。場合によっては、記号識別器41は単に、記号をそれが受信されると追跡して、所与のスロットに対する特定の記号をパイロット記号と識別する。例えば、W−CDMAの逆リンク制御チャネルでは、制御記号は、一般的に10個の制御記号を含むスロットに分類する。各スロットの第1の少数制御記号は一般的に、パイロット記号に対応する。したがって、その場合、記号識別器41は、入力記号を追跡して、各スロットの第1の記号と、そのスロットのパイロット記号と、そのスロットの非パイロット記号とを識別することが可能である。
【0045】
入力記号は、それがパイロット記号であれば、なんら操作されることなくソフト判定発生器36から出力される(44で示す)。しかしながら、入力記号は、それが非パイロット記号であれば、双曲正接ユニット42に送られる(45で示す)。双曲正接ユニット42は1つの例示ハードウエアであり、これは、非パイロット記号を操作して、この非パイロット記号と関連する値の表示と判定中の信頼水準を示す重み係数との双方を組み込んだソフト判定を発生することが可能である。
【0046】
双曲正接ユニット42は非パイロット記号を受信して、この非パイロット記号に対して双曲正接演算(またはその近似演算)を実行する。特に、双曲正接ユニット42は、式(2)にしたがって双曲正接演算を実行する:
非パイロット記号のソフト判定=ytanh(Re{y*AejΦ/σ}) 式(2)
ほとんどの場合、AとΦの正確な値は受信器においては未知であり、したがって、AejΦの推定値を双曲正接の計算に用いることが可能である。すなわち、式(3)のようになる:
非パイロット記号のソフト判定=tanh(Re{y*f/σ}) 式(3)
ここで、fはパイロットフィルタの出力などのAejΦの推定値である。双曲正接計算の結果として、信号対雑音比と干渉比が高い、すなわち、σが低い値である場合、非パイロット記号が正確に受信された可能性が高く、この記号はより大きい重み付け、例えば、±1.0に近い重みを付けられる。逆に、信号対雑音比が低い、すなわち、σが高い値であると、非パイロット記号が正確に受信された可能性は低く、この値は低い重み、例えば、±0.0に近い重みを付けられる。2001年4月に提出された同時係属、同一譲受の米国出願第09/826,130号には、パイロットフィルタで用いられる双曲正接関数の詳細な誘導式、すなわち、(Re{y*AejΦ/σ})が記載されている。
【0047】
図5は、非パイロット記号と関連するソフト判定を誘導するために用いることが可能な双曲正接関数のグラフである。双曲正接関数は、様々な仕方で実現可能であり、その中には、ハードウエア、ソフトウエアもしくはファームウエアとして実現されるアルゴリズムやルックアップテーブルを用いる方法などがある。複雑さを減少させるために、双曲正接関数50は、区分的線形関数(piece-wise linear function)52で近似されてもよい。
【0048】
双曲正接関数ユニット42の実施例をさらに簡略化するには、係数をLビットに定量化すればよいが、ここで、Lは式(2)中の乗算演算の複雑さを減少させるために選択された整数であり得る。例えば、Lが5と選択されると、係数は、+/−{0、1/4、1/2、3/4および1}という9個の可能な値に定量化される。この係数の定量化によって、双曲正接ユニット42の実施例を大幅に簡略化することが可能である。シミュレーションの結果、双曲正接関数を区分的線形な関数で近似させ、また、係数を9個の可能な値に定量化しても、周波数追跡ループの性能の劣化の程度は無視され得ることが分かった。
【0049】
図6は、周波数弁別器37と累算器39の一実施形態を示すより詳細なブロック図である。特に、周波数弁別器37は、クロス積発生器61と共役複素数発生器62とを含んでいる。クロス積発生器61は、連続する記号または連続する記号の集合と直前の記号の共役複素数とをクロス乗算する。共役複素数発生器62は、クロス積発生器61で用いられる入力記号の共役複素数を発生する。クロス乗算の結果は、連続する記号または連続する記号の集合同士間の位相差を表している。クロス積発生器61の演算結果は、累算器39中に累算されて、周波数誤差の引き続き推定する。この累算された周波数誤差は一般的には、周波数追跡ループを数多く繰り返して通過する内に収束する。言い換えれば、ローテータ33は受信信号の周波数を累算された推定値を用いて調整するので、この累算推定値は一般的に、ある時間が経過すると収束する。周波数追跡ループが収束するのに要するこの経過時間は、周波数追跡ループの時定数と呼ばれる。上述したように、他の実施態様では、周波数弁別器37は、残留周波数誤差をクロス乗算以外の技法を用いて推定する。その場合、代替のハードウエアを、クロス積発生器61と共役複素数発生器62との代わりに用いて、この代替の技法を実現する。
【0050】
この時定数を減少させると非常に有利となるが、それは、そうするとその結果、受信信号が短時間で適切な周波数となるように調整されるからである。本発明は、同期引き込み範囲と最大周波数誤差との間の余裕を増加させるが、それは、非パイロット記号を無視するのではなくそれを利用するからである。その結果、周波数追跡ループの時定数が減少する。
【0051】
ある実施形態では、累算器39は、周波数誤差の累算推定値にしたがってローテータ33にコマンドを出力する。別の実施形態では、累算器39は単に、累算された推定値を記憶するだけで、ローテータ33はこの記憶された推定値に必要に応じてアクセスする。どちらの場合も、推定値はパイロット記号と非パイロット記号の双方を用いて発生されるので、周波数追跡ループの性能は向上する。
【0052】
上述したように、クロス積発生器61は、連続する記号または連続する記号の集合と直前の記号の共役複素数とをクロス乗算する。特に、クロス乗算は、パイロット記号と、非パイロット記号に対して発生されたソフト判定とを用いて実行される。例えば、制御記号のスロットは次のように表される:
P1P2P3P4P5P6NP1NP2NP3NP4
式中、YP1〜YP6はパイロット記号を表し、YNP1〜YNP4は非パイロット記号を表す。非パイロット記号に対するソフト判定を発生したら、すでに概略を述べたように、ソフト判定をY’NP1、Y’NP2、Y’NP3およびY’NP4で表すものとする。したがって、クロス積発生器中に供給される記号(この場合、パイロット記号と、非パイロット記号に対するソフト判定とである)は次のように表すことが可能である:
P1P2P3P4P5P6Y‘NP1Y’NP2Y‘NP3Y’NP4
クロス積発生器61は、実現例によって、多くの様々なクロス乗算の内のどれかを実行するようにプログラムしたり設計したりすることが可能である。例えば、ある1つの場合では、クロス積発生器61は、YP2(X)YP1を実行するが、ここで、YP1はYP1の共役複素数である。この場合、クロス席発生器61はまた、YP3(X)YP2、YP4(X)YP3などを実行する。
【0053】
別の例では、クロス積発生器61は、(YP3+YP4)(X)(YP1+YP2、(YP5+YP6)(X)(YP3+YP4、(Y’NP1+Y’NP2)(X)(YP5+YP6などの記号の集合をクロス乗算するようにプログラムしたり設計したりすることが可能である。加えて、クロス乗算されるこれらの記号の集合は、(YP3+YP4+YP5)(X)(YP1+YP2+YP3、(YP5+YP6+YNP1)(X)(YP3+YP4+YP5などの共通の記号を有することがある。互いに異なった集合をいくつでも、クロス積発生器61で用いられる目的で定義することが可能である。一般に、クロス乗算で用いるより大きいまたはより多くの複雑な集合を定義することによって、周波数追跡ループにおける標準偏差を減少させることが可能である。しかしながら、これらの集合が適切に選ばれないと、時定数が増大する。したがって、記号の集合は、これらの変数を念頭に置いてどのような具体的な実施例に対しても最適に定義することが可能である。本発明では非パイロット記号を無視しないでこれを利用するので、考えられるクロス積の数がかなり増加させると長所となる。そのうえ、クロス積発生器61はなんらギャップを含まない記号の連続的なストリームを受信するので、クロス積の組み合わせを、同期引き込み範囲が増大するように定義することが可能である。
【0054】
図7は、本発明によるフローチャートである。図示するように、送受信器32は、アンテナ31が捕獲した無線信号を受信する(71)。送受信器32は、信号をフィルタリング、スケーリングおよび/またはディジタル化することによって調節する。次に、制御信号を、このディジタル信号を復調器34で復調し、また、復調されたディジタル信号を記号発生器35で発生することによって得る(72)。制御記号には、パイロット記号と非パイロット記号の双方が含まれる。ソフト判定発生器36が次に、非パイロット記号に対するソフト判定を発生する(74)。クロス積発生器61は、パイロット記号とソフト判定とを用いてクロス積を計算する(75)。このクロス積はフィルタリングや類似の処理を施され、次に、累算器39で累算される(77)。
【0055】
信号がまだ受信され続けている場合(71)、ローテータ33は、累算されたクロス積を用いて周波数を調整することが可能である。例えば、累算器39は、コマンドをローテータ33に出力したり、また、代替例では、ローテータ33が累算器39から周波数推定値にアクセスしたりする。どちらの場合も、周波数調整の機能が改善されるが、それは、周波数追跡ループがパイロット記号と非パイロット記号の双方を用いて、信号中の残留周波数誤差を推定する。
【0056】
図8は、本発明の一実施形態による、基地局4のハードウエアの一部のより詳細なブロック図である。特に、図4は、様々な経路を追跡するために多くの「フィンガー」(finger)81A〜81C(以後フィンガー81)を含む「レーキ受信器」の一部を形成するハードウエアを示している。レーキ受信器のフィンガーによって追跡される様々な経路は、様々なソースから送られた信号または同じソースから送られているが1つ以上の物体から反射された信号、すなわち、多経路信号に対応している。各フィンガー81は、所与の経路に対応する信号中のチップを逆拡散したりディカバリングしたりする自分自身の復調器34A〜34Cを含む。各フィンガー81はまた、チップを制御記号に分類する別個の記号発生器35A〜35Cを含んでいる。これらの制御記号は多くの方法で用いることが可能である。その内の1つの用法は、記号発生器35A〜35Cからの記号を記号コンバイナー82で合成して、例えば、各ソースに対して個々の記号を発生する。次に、各ソースに対する記号をDSP38に送って、制御記号の検出やデコーディングをして、例えば、TPCビットを検出したりTFCビットをデコーディングしたりする。
【0057】
制御記号を記号コンバイナー82に送ることの他に、記号発生器35A〜35Cはまた、制御記号をソフト発生器(SOFT DEC.GEN.35A〜36C)に送る。各ソフト発生器36は、各フィンガーに対して非パイロット記号に対するソフト判定を発生する。次に、ソフト判定とパイロット記号を周波数弁別器(FREQ.DESCR.37A〜37C)に送って、クロス乗算などによって残留周波数誤差推定値を計算し、次に累算器(ACCUM.39A〜39C)に送って上述したように累算することが可能である。各フィンガーに対してこの累算された推定値は次にそれぞれローテータ33A〜33Cを用いて、様々なフィンガー81によって追跡された信号中の周波数誤差を補償することが可能である。言い換えれば、レーキ受信器の各フィンガー81は、本発明による周波数追跡技法を実施することが可能である。
【0058】
図9は、本発明による周波数追跡技法を示す別のフローチャートである。図示するように、信号が受信され(91)、この信号から制御記号が得られる(92)。各制御記号に対して、それがパイロット記号か非パイロット記号かに付いて判断される(93)。制御記号がパイロット記号であれば(93)、直接にそれを用いて残留周波数誤差を推定する(94)。非パイロット記号もまた、間接的ではあるが、用いて残留周波数誤差を推定する。特に、制御記号が非パイロット記号であれば、ソフト判定を発生し(95)、このソフト判定を用いて、残留周波数誤差を推定する(94)。このソフト判定は、例えば、すでに概略を述べたように双曲正接関数を用いる方法を含めて多くの方法で発生することが可能である。ソフト判定を発生する別の方法には、符号関数を用いて、記号が1を表しているか−1を表しているかを決定し、この決定に対して重みを割り当てる方法がある。この重みは、例えば、シミュレーションによって決定されたエントリを有するルックアップテーブルにアクセスすることによって割り当てることが可能である。代替例では、この重みは、1つ以上の定数を割り当てたり、重みをアルゴリズムによって発生したりして割り当てることが可能である。
【0059】
残留周波数誤差を推定したら(94)、残留誤差を残留誤差の累算値に加算する(96)。この累算値は受信信号中の誤差の推定値を表す。この信号がまだ受信中であれば(97)、この信号の周波数を累算された周波数誤差にしたがって調整することが可能である(98)。このプロセスは、もはや信号が受信されていない状態になる(97)まで無期限に続く。言い換えれば、本発明は閉じた周波数追跡ループとして実施することが可能である。残留周波数誤差推定値は、正確な周波数調整値に収束するように累算することが可能である。
【0060】
ハードウエアとして実現されるような様々な周波数追跡技法を説明した。しかしながら、これらの技法は、そうではなくてソフトウエアや、ファームウエアや、ハードウエアとソフトウエアのなんらかの組み合わせとして実施することが可能である。ソフトウエアで実施する場合、その技法はプログラムコードとして実現して、最初に、ハードドライブもしくは時期、光、光磁気、位相変化または他のディスクもしくはテープ媒体などのコンピュータ読みとり可能媒体上に記憶しておく。例えば、このプログラムコードをメモリ中にロードし、次に、プロセッサ中で実行することが可能である。代替例では、プログラムコードをEEPROMなどの電子式コンピュータ読みとり可能媒体からメモリ中にロードしたり、ネットワーク接続でダウンロードしたりする。ダウンロードされたら、プログラムコードは最初に搬送波に埋め込んでまたは別様に電磁気信号に乗せて送信される。プログラムコードはプログラム中に特徴として実現して、広範囲にわたる機能性を提供するようにしてもよい。
【0061】
本発明をプログラムコードとして実施する場合、このプログラムコードを実行するプロセッサはマイクロプロセッサという形態を取って、無線コンピュータ、WCD、基地局またはその類似物と一体化されたりその一部を形成したりすることが可能である。このメモリには、上記の様々な技法を実行するためにプロセッサによってアクセスされて実行されるプログラムコードを記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)がある。
【0062】
例示のハードウエア実施例には、DSP、特定用途向けIC(ASIC)、フィールドプログラム可能ゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能ロジックデバイス、特定設計されたハードウエアコンポーネントまたはこれらの何らかの組み合わせ内の実現例が含まれる。
【0063】
本発明による実施例を多く説明した。例えば、無線通信システムで用いられる周波数追跡技法を説明した。本発明の多くの態様を、基地局で受信された信号の周波数誤差を追跡してその周波数を調整するための基地局で実行される態様として説明した。しかしながら、上述したように、本発明はまた、例えば、WCDを含む無線通信システム中の他のいずれかのデバイスとしても実現可能である。W−CDMAでは、基地局からWCDに至るフォワードリンク中の制御チャネル信号は一般的にはパイロット記号しか含んでおらず、したがって、W−CDMAのフォワードリンク中では、周波数追跡のためにパイロット記号と非パイロット記号の双方が必要とされることはない。しかしながら、まだ開発されていない基準などの他の基準には、フォワードリンク中の制御チャネル信号内の非パイロット記号を含む。その場合、本発明は、基地局からWCDが受信した信号の周波数追跡機能が改善される。
【0064】
本発明をWCDとして実現すると、周波数追跡技法を、入力してくる信号の周波数を調整すること、また、たぶん、WCDの電圧制御発振器(VCO)への閉フィードバックループとして用いることの双方の目的で使用可能である。このVCOは一般的には、WCD内の周波数シンセサイザとして実現して、受信された信号をベースバンドに混合する。フォワードリンクの制御チャネルが非パイロット記号を含む場合、本書に記載する周波数追跡技法は、改善されたフィードバックをVCOに供給することによってWCDを改善するように実施することが可能である。
【0065】
加えて、本発明の精神と範囲を逸脱することなく他の様々な修正を施される。例えば、ディジタルフィルタなどの他の様々なコンポーネントを周波数追跡ループなしで実現して性能を向上させることが可能である。そのうえ、一部の実施形態では、パイロット記号に対するソフト判定を発生し、それによって、パイロット記号を重み付けすると長所となる。加えて、ソフト判定やパイロット記号もしくは非パイロット記号に対する重み係数を計算する他の技法も使用可能である。また、非パイロット記号には、例えば、制御チャネル上で転送されるデータ記号を含む様々な記号のどれでも含まれる。加えて、本書に記載するクロス乗算技法の代わりに残留周波数誤差を推定する他の方法を用いてもよい。スペクトル拡散信号を用いないシステムを含む他の無線通信システムでも、本書に記載する周波数追跡技法が利用される。したがって、上記の実施形態および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線信号から、パイロット記号と非パイロット記号とを含む制御記号を得ることと、
前記第1の無線信号の周波数追跡を実行するために、前記パイロット記号と前記非パイロット記号の両方を用いることと、
を備える方法。
【請求項2】
周波数追跡のために前記パイロット記号と前記非パイロット記号を用いることは、前記非パイロット記号に対するソフト判定を発生することと、前記第1の無線信号の周波数追跡を実行するために前記パイロット記号と前記ソフト判定とを用いることと、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非パイロット記号に対してソフト判定を発生することは、各非パイロット記号を重み付けすること、を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ソフト判定は、重み係数を乗算された非パイロット記号を備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
周波数追跡のために前記パイロット記号と前記ソフト判定を用いることは、クロス積を計算して残留周波数誤差を発生すること、を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記クロス積を計算することは、前記パイロット記号の内の1つに前記ソフト判定の内の1つの共役複素数をクロス乗算すること、を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記クロス積を計算することは、前記ソフト判定の内の1つに前記パイロット記号の内の1つの共役複素数をクロス乗算すること、を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記クロス積を計算することは、前記パイロット記号と前記ソフト判定とから成る第1の集合に、前記パイロット記号と前記ソフト判定から成る第2の集合の共役複素数をクロス乗算すること、を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の集合と前記第2の集合は、少なくとも1つの共通記号を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記共通記号は、前記第1の集合中での最初の記号であり、また、前記第2の集合中での最後の記号である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記周波数追跡に応答して前記第1の無線信号の周波数を調整すること、をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ソフト判定には、前記記号が1であるか−1であるかに関する判定と、前記記号が1であるか−1であるかに関する判定の信頼水準と、が含まれる、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記ソフト判定を発生することは、双曲正接関数を適用して前記ソフト判定を計算すること、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記ソフト判定を発生することは、双曲正接関数の近似式を適用して前記ソフト判定を計算すること、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記ソフト判定を発生することは、符号関数を用いて、前記非パイロット記号が1であるか−1であるかに関する前記判定を計算すること、を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の無線信号は、スペクトル拡散CDMA信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
各非パイロット記号を重み付けすることは、前記第1の無線信号の強度にしたがって各非パイロット記号に重み付けすること、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
各非パイロット記号を重み付けすることは、前記第1の無線信号と関連する信号対雑音比と干渉比とにしたがって各非パイロット記号に重み付けすること、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項19】
クロス積を計算して残留周波数誤差を計算することと、前記クロス積を累算して前記第1の無線信号の周波数誤差の推定値を計算することと、をさらに備える請求項5に記載の方法。
【請求項20】
前記非パイロット記号は、トランスポートフォーマット組み合わせインジケータ、送信出力制御インジケータ、およびフィードバックインジケータ、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
第1の無線信号から、パイロット記号と非パイロットとを含む制御記号を得ることと、
各非パイロット記号に重み係数を割り当てることと、
前記第1の無線信号の周波数追跡を実行するために、前記パイロット記号と重み付けされた非パイロット記号とを用いることと、
を備える方法。
【請求項22】
実行されると、
第1の無線信号から、パイロット記号と非パイロット記号とを含む制御記号を獲得し、
前記パイロット記号と前記非パイロット記号とを用いて前記第1の無線信号の周波数追跡を実行する、
プログラムコード、を担持するコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項23】
信号の信号周波数を調整するローテータと、
前記信号と関連する周波数誤差の推定値を提供する前記ローテータへのフィードバックループであり、前記フィードバックループが、パイロット記号と非パイロット記号とを用いて前記周波数誤差の前記推定値を発生する、前記フィードバックループと、
を備える装置。
【請求項24】
前記信号を前記ローテータに送る前に前記信号を受信して調節する送受信器と、
前記ローテータが前記信号の信号周波数を調整した後に前記信号を復調する復調器と、
前記パイロット記号と前記非パイロット記号とを得る記号発生器と、
前記パイロット記号と前記非パイロット記号とを処理するディジタル信号プロセッサと、
をさらに備える請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記フィードバックループは周波数弁別器と累算器とを含み、前記周波数弁別器は、前記パイロット記号と前記非パイロット記号を用いて残留周波数誤差推定値を計算して、前記残留周波数誤差推定値を前記累算器に送って、前記周波数誤差の前記推定値を発生する、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記フィードバックループは、前記非パイロット記号に対するソフト判定を発生するソフト判定発生器を含み、前記周波数弁別器が残留周波数誤差推定値を前記パイロット記号と前記ソフト判定を用いて計算する、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記ソフト判定発生器は、前記ソフト判定を発生する双曲正接ユニットを含む、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記周波数弁別器は、残留周波数誤差を推定するクロス積発生器を含む、請求項25に記載の装置。
【請求項29】
前記装置はレーキ受信器の一部を形成し、
前記装置は、
複数のフィンガーによって追跡された複数の信号の信号周波数を調整する複数のローテータと、
前記信号と関連した周波数誤差の推定値を提供する前記複数のローテータへの複数のフィードバックループであり、前記フィードバックループが、パイロット記号と非パイロット記号を用いて前記周波数誤差の前記推定値を発生する、前記複数のフィードバックループと、
をさらに備える、
請求項23に記載の装置。
【請求項30】
アンテナと、
信号を受信して前記信号を調節する、前記アンテナに結合された送受信器と、
前記信号の周波数を調整する、前記送受信器に結合されたローテータと、
前記信号を復調する、前記ローテータに結合された復調器と、
前記復調された信号から制御記号を得る、前記復調器に結合された記号発生器であり、前記制御記号にはパイロット記号と非パイロット記号とが含まれる、前記記号発生器と、
前記非パイロット記号に対するソフト判定を発生する、前記記号発生器に結合されたソフト判定発生器と、
前記パイロット記号と前記ソフト判定を用いて残留周波数誤差推定値を計算する、前記ソフト発生器に結合された周波数弁別器と、
前記信号と関連する誤差推定値を累算する、前記周波数弁別器と前記ローテータとに結合された累算器であり、前記ローテータが、前記信号と関連する前記誤差推定値に基づいて前記信号の周波数を調整する、前記累算器と、
を備える装置。
【請求項31】
前記装置はレーキ受信器の一部を形成し、
前記装置は、
複数の信号を追跡する複数のフィンガーであり、前記フィンガーの各々が、ローテータと、前記ローテータに結合された復調器と、前記復調器に結合された記号発生器と、前記記号発生器に結合されたソフト判定発生器と、前記ソフト発生器に結合された周波数弁別器と、前記周波数弁別器と前記ローテータとに結合された累算器とを含む、前記複数のフィンガー、
をさらに備える、
請求項30に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−223606(P2011−223606A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−127176(P2011−127176)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【分割の表示】特願2009−183184(P2009−183184)の分割
【原出願日】平成14年11月7日(2002.11.7)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】