パウチ容器
【課題】自立形態で容器の底となる部分に形成される印字部が載置面に接触して擦れることを抑制できるパウチ容器を提供することである。
【解決手段】パウチ容器10は、表面部、裏面部、及び表面部と裏面部との間に折り込まれた一対の側面ガゼット部を構成する一又は複数のシート材を備え、表面部及び裏面部を構成するシート材の下縁同士を接合する下縁シール部21が形成されたパウチ容器10であって、下縁シール部21の少なくとも一部が、該下縁シール部21の両端よりも上方に設けられている。下縁シール部21の内縁26は、その両端よりも中央が上方に大きく張り出した凸形状を有することが好適である。
【解決手段】パウチ容器10は、表面部、裏面部、及び表面部と裏面部との間に折り込まれた一対の側面ガゼット部を構成する一又は複数のシート材を備え、表面部及び裏面部を構成するシート材の下縁同士を接合する下縁シール部21が形成されたパウチ容器10であって、下縁シール部21の少なくとも一部が、該下縁シール部21の両端よりも上方に設けられている。下縁シール部21の内縁26は、その両端よりも中央が上方に大きく張り出した凸形状を有することが好適である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ容器に関し、より詳しくは、側面ガゼット部を備えたパウチ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
表面部、裏面部、及び表面部と裏面部との間に折り込まれた一対の側面ガゼット部を構成するシート材を備え、該シート材の周縁にシール部が形成されて容器内部空間が密閉されたサイドガゼットタイプのパウチ容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかるパウチ容器は、スポーツドリンク等の飲料、アイスクリームやゼリー等の食品などの容器として広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−344252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記構造のパウチ容器は、例えば、店頭での販売時において、商品陳列棚等の載置面上に自立した状態で陳列されるが、自立形態で容器の底となる部分には、製造年月日等をインクジェットプリンター等のノンインパクトプリンターで印字することが多く、この場合、かかる印字部が載置面に接触することで擦れて薄くなる或いは消えるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のパウチ容器は、表面部、裏面部、及び表面部と裏面部との間に折り込まれた一対の側面ガゼット部を構成する一又は複数のシート材を備え、表面部及び裏面部を構成するシート材の下縁同士を接合する下縁シール部が形成されたパウチ容器において、下縁シール部の少なくとも一部が、該下縁シール部の両端よりも上方に設けられていることを特徴とする。
【0006】
当該構成によれば、自立形態で容器の底が窪んで、容器の底と載置面との間に隙間が形成される。したがって、容器の底に形成される印字部が載置面に接触し難くなるため、印字部が載置面に擦れて薄くなることを抑制できる。
【0007】
本発明のパウチ容器において、下縁シール部は、パウチ容器の両側端部から略均等な位置に形成され、下縁シール部の内縁は、その両端よりも中央が大きく張り出した凸形状を有することが好適である。
印字部は容器の底の中央部に形成されることが好ましいが、当該構成によれば、容器の底の中央部が窪み易くなり、印字部が載置面に接触することをさらに抑制できる。
【0008】
本発明のパウチ容器において、凸形状は、上方に向かって湾曲した円弧形状を呈することが好適である。
当該構成では、例えば、容器の底の一部のみに深い窪みが形成された自立形態とはならず、容器の底の広範囲に亘って窪みを形成することができる。このため、容器の底の広範囲に印字部を形成した場合であっても、印字部が載置面に接触することを抑制できる。
【0009】
本発明のパウチ容器において、下縁シール部の外縁の少なくとも一部が、上方に窪んだ凹形状を有することが好適である。また、下縁シール部の上下方向のシール幅が、パウチ容器の幅方向に亘って略同一であることが特に好適である。
当該構成によれば、剛性の高い下縁シール部の面積を低減できるので、容器の底がより窪んだ状態を維持し易くなるとともに、下縁シール部の内縁に沿って折り曲げられたシート材が元の形状に戻ろうとする復元力(以下、「スプリングバックによる復元力」ともいう)が減少するため、より自立安定性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパウチ容器によれば、自立形態で容器の底となる部分に形成される印字部が載置面に接触して擦れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態であるパウチ容器の正面図であって、内容物を充填する前の形態を示す図である。
【図2】図1に示すパウチ容器の下部拡大図である。
【図3】本発明の実施形態であるパウチ容器の斜視図であって、内容物を充填した形態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態である内容物が充填されたパウチ容器を載置面上に自立させた様子を、従来のパウチ容器と比較して示す正面図である。
【図5】本発明の実施形態である内容物が充填されたパウチ容器を載置面上に自立させた様子を示す底面図である。
【図6】本発明の実施形態である内容物が充填されたパウチ容器を後方に傾けた状態で載置面上に自立させた様子を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態であるパウチ容器の第1の変形例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態であるパウチ容器の第2の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態であるパウチ容器の第3の変形例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態であるパウチ容器の第4の変形例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態であるパウチ容器の第5の変形例を示す図である。
【図12】本発明の実施形態であるパウチ容器の第6の変形例を示す図である。
【図13】本発明の実施形態であるパウチ容器の第7の変形例を示す図である。
【図14】本発明の実施形態であるパウチ容器の第8の変形例を示す図である。
【図15】従来のパウチ容器の正面図であって、内容物を充填する前の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下では、内容物を充填してパウチ容器を自立させた形態を「自立形態」と称する。パウチ容器の自立形態において、正面視鉛直方向に沿った方向を容器の「上下方向」とし、各シート材が積層される方向を容器の「表裏方向」とし、上下方向及び表裏方向に直交する方向を容器の「幅方向」とする。
【0013】
図1〜図3を参照して、パウチ容器10の構成を説明する。
図1は、内容物が充填される前のパウチ容器10を示す。図2は、パウチ容器10の下部拡大図であって、仮想線α〜γを示す。図3は、内容物が充填されたパウチ容器10を示す。同図に示すパウチ容器10は、表面部、裏面部、及び表面部と裏面部との間に折り込まれた一対の側面ガゼット部を構成する一又は複数のシート材を備え、表面部及び裏面部を構成するシート材の下縁同士を接合する下縁シール部21が形成されたパウチ容器10であって、下縁シール部21の少なくとも一部が、該下縁シール部21の両端よりも上方に設けられている。
【0014】
パウチ容器10は、表面シート11と、裏面シート12と、一対の側面ガゼットシート13とを備える。表面シート11及び裏面シート12は、容器の表面部及び裏面部をそれぞれ構成するシート材であり、側面ガゼットシート13は、表面部と裏面部との間に折り込まれた側面ガゼット部を構成するシート材である。側面ガゼットシート13は、上下方向に沿って形成された折り目線14により、容器の内部側に向かって山折りに折り返されている。
【0015】
パウチ容器10は、一対の側面ガゼットシート13を互いに重ね合わされた表面シート11と裏面シート12との間に両側から挿入した状態で各シート材の端縁同士を接合するシール部を形成し、内容物が充填される容器内部空間を密閉した構造である。なお、充填される内容物としては、スポーツドリンク等の飲料、アイスクリームやゼリー等の食料を例示できるが、これらに限定されない。
【0016】
表面シート11及び裏面シート12は、上下方向にやや長く延びた略六角形状を呈する。これらは、略矩形形状のシート材の下端角部が斜めにカットされてカット部15が形成された形状である。また、詳しくは後述するが、表面シート11及び裏面シート12の下端部の幅方向中央部は、外形線が上方に窪んだ円弧形状を呈している。
一対の側面ガゼットシート13は、互いに同一形状、同一サイズを有し、その幅は表面シート11の幅の1/5〜1/3程度に設定される。側面ガゼットシート13は、折り目線14を展開した状態で下端部が略V字状にカットされた略五角形状を呈する。
【0017】
パウチ容器10は、上記シール部として、上縁シール部20と、下縁シール部21と、側縁シール部22と、サイド上縁シール部23と、サイド下縁シール部24とを有する。また、容器上端角部には、内容物の充填により側面ガゼットシート13の上端が展開しないように、側面ガゼットシート13の外面同士を接合した接着部25が設けられている。
【0018】
上縁シール部20及び下縁シール部21は、表面シート11と裏面シート12とが直接接合されて形成される。但し、上縁シール部20の一部において、表面シート11と裏面シート12との間には、後述のスパウト31が介在する。
側縁シール部22、サイド上縁シール部23、及びサイド下縁シール部24は、側面ガゼットシート13の周縁に形成されるシール部であり、側面ガゼットシート13と表面シート11、又は側面ガゼットシート13と裏面シート12とが接合されて形成される。
【0019】
パウチ容器10には、その上縁の幅方向中央部に、内容物の取り出し部である口栓30が設けられる。口栓30は、スパウト31と、スパウト31の口部に螺合されたキャップ32とで構成されており、スパウト31を表面シート11の上縁と裏面シート12の上縁との間に挟んで上縁シール部20を形成することにより取り付けられる。なお、口栓30は、その中心軸Xが容器の幅方向中央を通るように取り付けられる。
【0020】
パウチ容器10には、自立形態で容器の底となる部分に印字部40が形成されている。図1に例示する形態では、表面シート11の下部の幅方向中央部に印字部40を形成している。印字部40の表示内容としては、製造年月日や賞味期限、ロット番号等を例示できるが、これらに限定されない。例えば、文字だけでなく、模様を印字部40に設けてもよい。印字部40は、通常、表面シート11等の外面にインクジェットプリンター等のノンインパクトプリンターを用いて形成される。或いは、製造年月日等をノンインパクトプリンターにより印字したタックシールを貼着して、印字部40としてもよい。
【0021】
パウチ容器10に内容物を充填すると、表面シート11及び裏面シート12が互いに離間し、側面ガゼットシート13が展開して、特に容器の下部が膨らんだ形態となる。そして、表面シート11及び裏面シート12の下部側の1/4程度(仮想線γより下)が下方に回り込むように折れ曲がって容器の底を形成する。こうして、パウチ容器10の自立性が発現する。なお、内容物は、スパウト31から充填することができる。
【0022】
以下、パウチ容器10の上記各構成要素、特に下縁シール部21の構成について、さらに詳説する。
【0023】
シート材(表面シート11、裏面シート12、及び側面ガゼットシート13)は、パウチ容器10の壁面部を構成するシート状部材であって、通常、樹脂フィルムから構成される。シート材を構成する樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性など、包装体としての基本的な性能を備えることが要求される。また、上縁シール部20等のシール部は、通常、ヒートシールにより形成されるので、シート材には、ヒートシール性も要求される。シート材としては、ベースフィルム層と、ヒートシール性を付与するシーラント層とを有する複層シート材が好適であり、高いガスバリア性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラント層との間にガスバリア層を設けることが好適である。
【0024】
ここで、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層の構成材料を例示する。なお、これら各層の積層は、慣用のラミネート法、例えば、接着剤によるドライラミネーション、熱接着性層を挟んで熱により接着させる熱ラミネーションなどにより行うことができる。
【0025】
ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)など)、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66など)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルフォン(PES)及びエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0026】
シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0027】
ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着(又はスパッタリング)したフィルムが例示できる。
【0028】
シート材には、内容物の商品名や原材料・使用上の注意事項等の商品説明、その他各種デザインなどを表示するための印刷層(図示せず)を設けることができる。例えば、印刷層は、グラビア印刷等の公知の方法により、ベースフィルム層の内側の面に形成できる。
【0029】
上縁シール部20等の各シール部は、ヒートシールにより形成されることが好適である。ヒートシールによるシール部は、各シート材のシーラント層が容器の内側となるように重ね合わせて熱圧着することで形成できる。
【0030】
パウチ容器10は、下縁シール部21の構成が従来のパウチ容器300(図15参照)と大きく異なる。
下縁シール部21は、表面シート11及び裏面シート12の下縁同士を直接ヒートシールして形成されるシール部であって、一対のサイド下縁シール部24の間に形成される。また、下縁シール部21は、容器の両側端部から略均等な位置に形成され、下縁シール部21の幅方向中央を口栓30の中心軸Xが通る。
【0031】
下縁シール部21は、その少なくとも一部が、下縁シール部21の両端よりも上方に設けられている。図1に例示する形態では、下縁シール部21の内縁26が上方に張り出した凸形状を有する。内縁26は、全体的に上方に向かって張り出しており、その両端よりも中央が大きく張り出した凸形状を有する。内縁26の凸形状(以下、「内縁凸形状」と称する)の張り出し長さが最大となる頂点Pは、中心軸Xとの交点、即ち容器の幅方向中央に位置する。
【0032】
下縁シール部21の内縁凸形状は、上方に向かって湾曲した円弧形状を呈する。より詳しくは、中心軸Xに対して左右対称となるように湾曲した円弧形状を呈する。換言すると、内縁26は、一対の側面ガゼットシート13の各折り目線14を結ぶ容器内部空間の下端部の輪郭線であるから、かかる輪郭線が円弧形状であるとも言える。
【0033】
内縁凸形状の最大張り出し長さL1は、内縁26の下端から仮想線αまでの長さL2の1/4〜1/3程度とすることが好適である。ここで、仮想線αとは、各サイド下縁シール部24の上端同士を結ぶ直線である。長さL1をこの範囲に設定すれば、印字部40の保護及び自立性の観点から適度な窪み29が容器の底に形成される。なお、長さL1を長くするほど、窪み29が容器の上方まで延びやすくなる。
【0034】
さらに、下縁シール部21は、外縁27の少なくとも一部が、上方に窪んだ凹形状を有する。図1に例示する形態では、下縁シール部21の上下方向のシール幅が、容器の幅方向に亘って略同一である。つまり、下縁シール部21の外縁27は、内縁26と略平行となるように窪んだ凹形状を有する。外縁27の凹形状(以下、「外縁凹形状」と称する)は、中心軸Xに対して左右対称となるように湾曲した円弧形状を呈し、その窪みが最大となる部分は、頂点Pと同様に中心軸Xとの交点に位置する。なお、内縁26と外縁27とが「略平行」とは、実質的に平行とみなすことができる状態を含み、例えば、内縁26の接線と外縁27の接線との傾きのズレが10°未満となる状態を含む。
【0035】
パウチ容器10では、円弧形状を呈する外縁27に沿って表面シート11及び裏面シート12がカットされており、容器下端部の幅方向中央部は、外形線が上方に窪んだ円弧形状を呈する。換言すると、パウチ容器10は、上方に向かって湾曲した円弧形状の容器下端部に沿って形成されたR状の下縁シール部21を有する。
【0036】
また、パウチ容器10では、容器内部空間の下端部において、内縁26の両端に接する部分が平面視略V字状に窪んだ凹状空間28が形成される。凹状空間28は、下縁シール部21とサイド下縁シール部24との境界位置において、最も大きく窪んでいる。
【0037】
次に、上記構成を備えるパウチ容器10の製造方法の一例について説明する。
【0038】
まず初めに、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層を含む複層シート材の長尺体(表面シート11及び裏面シート12の長尺体)を、例えば、接着剤を用いたドライラミネートにより作製する。続いて、表面シート11及び裏面シート12の長尺体を重ね合わせ、その長手方向に沿った両端から折り目線14で折り返された側面ガゼットシート13の長尺体を挿入する。そして、長尺体の長手方向に沿った両端をヒートシールして側縁シール部22を形成する。
【0039】
続いて、側縁シール部22を形成したシート材の長尺体を、例えば、ダイカットロールを用いて、個々の容器サイズにカットすると共に、容器下端部にカット部15及び上記円弧形状を形成する。そして、シート材の下縁をヒートシールして、下縁シール部21及びサイド下縁シール部24を形成する。なお、シート材を溶断して、これらシール部と同時に、カット部15等を形成してもよい。シート材の上縁は、スパウト31を挟み込んだ状態でヒートシールして、上縁シール部20及びサイド上縁シール部23を形成する。
【0040】
最後に、スパウト31から容器内部空間に内容物を充填し、スパウト31にキャップ32を取り付ける。こうして、内容物が密閉されたパウチ容器10が得られる。内容物を充填すると、上記のように、表面シート11及び裏面シート12の下部側の1/4程度が下方に回り込むように折れ曲がって容器の底を形成する。このとき、頂点Qを含む仮想線γで示すような折り目線が形成される。パウチ容器10は、その製造において新たな付帯設備を必要とせず、既存の製袋機を使用して容易に製造できる。
【0041】
次に、図4〜図6を参照して、上記構成を備えるパウチ容器10の自立形態を説明しながら、パウチ容器10の作用効果について詳説する。
図4は、内容物が充填されたパウチ容器10を載置面200上に自立させた様子を、従来のパウチ容器300と比較して示す正面図であり、図5は、図4に示すパウチ容器10の底面図である。図6は、内容物が充填されたパウチ容器10を後方に傾けた状態で載置面200上に自立させた様子を示す斜視図である。
【0042】
図4(a)に示すように、パウチ容器10の自立形態では、下縁シール部21の内縁凸形状に起因して容器の底が窪むことにより、容器の底と載置面200との間に隙間Sが形成される。このため、容器の底となる部分に形成された印字部40が載置面200に接触し難くなり、印字部40が載置面200に擦れて薄くなることを抑制できる。
一方、図4(b)に示すように、従来のパウチ容器300の自立形態では、容器の底と載置面200とが隙間なく接触している。
【0043】
図5に示すように、容器の底に形成される窪み29は、例えば、内縁凸形状の頂点Pから表面シート11の上方に向かって、具体的には、折り目線である仮想線γの頂点Qに向かって形成される線状の窪みを含み、該線状の窪みに対して左右対称となるように略三角形状に広がって形成される。かかる略三角形状は、例えば、仮想線γの頂点Qと、下縁シール部21の両端とを頂点とする。そして、表面シート11の各サイド下縁シール部24及びその近傍(例えば、楕円で囲んだ部分)が載置面200に接触して脚部となる。
頂点Pに接する容器内部空間は、内縁凸形状の両端に接する容器内部空間と比べて、表面シート11及び裏面シート12が離間し難くなるため、内容物は内縁凸形状の両端に接する容器内部空間に流動し易くなる。これにより、頂点Pの近傍において窪み29が形成され、表面シート11の各サイド下縁シール部24及びその近傍が脚部となる。また、パウチ容器10の内縁凸形状は、下縁シール部21の全幅に亘って緩やかに湾曲した円弧形状を呈するため、印字部40の全体を載置面200に接触し難くする幅広の窪み29が形成される。
【0044】
パウチ容器10の自立形態では、容器下端部近傍に、頂点Pを通り容器の幅方向に沿った折り目線が形成され、該折り目線より下部が、例えば、裏面シート12側に折り曲げられる。この折り目線が形成される位置を仮想線βで示す(図1,5参照)。なお、仮想線βに沿った折り目線が形成される裏面シート12側の窪み29は、通常、表面シート11側の窪み29よりも小さくなる。折り曲げられた部分には、スプリングバックによる復元力が作用するが、パウチ容器10では、底の中央部が窪んで、該中央部で載置面200に作用するスプリングバックによる復元力を低減できるため、安定した自立性を確保できる。
【0045】
図6に示すように、パウチ容器10は、後方に傾いた状態でも安定に自立できる。パウチ容器10では、上記スプリングバックによる復元力が、容器の底の中央部で低減され幅方向両側にバランス良く存在する。また、パウチ容器10には、容器内部空間の下端部にシール部よりも柔軟な凹状空間28が形成される。このため、容器の底の幅方向両側には適度な反発力が存在し、パウチ容器10は、やや後方に傾いた状態で安定に自立する。これにより、例えば、表面シート11に付された商品名等の商品デザインが見易くなり、ディスプレイ性が良好になる。
【0046】
上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。
以下、設計変更例(変形例)を例示する。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素には、同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0047】
図7は、第1の変形例であるパウチ容器50の正面図であって、内容物を充填する前の形態を示す図である。
パウチ容器50は、カット部15を有さず、表面シート51、裏面シート52、及び側面ガゼットシート53が略矩形状を有する。パウチ容器50では、パウチ容器10と比較してサイド下縁シール部54の面積が大きく、また、側面ガゼットシート53の下端が展開しないように側面ガゼットシート53の外面同士を接合した接着部55が設けられている。
【0048】
図8〜図10は、第2〜第4の変形例であるパウチ容器60〜80の正面図であって、内容物を充填する前の形態を示す図である。同図(後の図11〜図14も同様)では、容器の底となる部分のみを拡大して示している。
パウチ容器60〜80は、いずれも下縁シール部の内縁の中央部近傍が局部的に上方に張り出した凸形状を有する。パウチ容器60において、内縁シール部61の内縁62は、パウチ容器10と同様に、上方に向かって湾曲した円弧形状を呈する。一方、パウチ容器70,80において、内縁シール部71,81の内縁72,82は、いずれも非円弧形状を呈する。内縁72は、頂点が尖った逆V字状の凸形状であり、内縁82は、上端が幅方向に平行な直線状となった凸形状である。なお、パウチ容器60〜80は、下縁シール部の上下方向のシール幅が、容器の幅方向に亘って略同一となる点で、パウチ容器10と共通する。
パウチ容器60〜80の自立形態では、容器の底の中央部に大きな窪みが形成され易いため、例えば、印字部40の幅が小さい場合に有効である。
【0049】
図11〜図14は、第5〜第8の変形例であるパウチ容器90〜120の正面図であって、内容物を充填する前の形態を示す図である。
パウチ容器90〜120は、いずれも容器下端部の外形線が非円弧形状であり、容器の幅方向に平行な直線状である。パウチ容器90は、下縁シール部91の内縁92と外縁93とがいずれも円弧形状を呈し、下縁シール部91の上下方向のシール幅が容器の幅方向に亘って略同一である点で、上記実施形態と共通する。但し、外縁93の外側に表面シート11及び裏面シート12がカットされずに残った非シール部94を有する点で上記実施形態と異なる。また、パウチ容器100は、下縁シール部101の内縁102が円弧形状を呈し、外縁103は外形線と一致して直線状を呈する。つまり、下縁シール部101の上下方向のシール幅が、容器の幅方向に亘って略同一ではなく、下縁シール部101は略半円形状となる。
【0050】
パウチ容器110の下縁シール部111は、その上下方向のシール幅が、容器の幅方向中央部において僅かに広くなった形状を有する。つまり、下縁シール部111の内縁112の中央部が上方に小さく張り出している。このように小さく張り出した内縁凸形状によっても容器の底に窪みを形成することができる。
【0051】
パウチ容器120の下縁シール部121は、下端シール部122と、スポットシール部123とを含む。下端シール部122は、その内縁124及び外縁125が、いずれも容器の幅方向に略平行な直線状を呈する。スポットシール部123は、容器の幅方向中央部において、下端シール部122から上方に離間した位置に設けられる。スポットシール部123は、容器の下端から20mm以下の範囲であって、下端シール部122の内縁124からの距離が、内縁124から仮想線αまでの長さの1/4〜1/3程度となる位置に設けられることが好適である。パウチ容器120では、スポットシール部123によって容器の底に窪みを形成することができる。
【0052】
なお、上記では、表面シート、裏面シート、及び側面ガゼットシートからパウチ容器を構成するものとして説明したが、1枚のシート材を折り曲げて、表面部、裏面部、及び側面ガゼット部を構成する形態であってもよい。
【0053】
また、上記では、下縁シール部の外縁が凹形状を有する場合において、下縁シール部の上下方向のシール幅が、容器の幅方向に亘って略同一である形態を例示したが、上下方向のシール幅は異なっていてもよい。つまり、内縁凸形状に対応しない位置に外縁凹形状が形成されてもよく、更には下縁シール部の上下方向のシール幅が、容器の幅方向に亘って同一でない形態であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 パウチ容器、11 表面シート、12 裏面シート、13 側面ガゼットシート、14 折り目線、15 カット部、20 上縁シール部、21 下縁シール部、22 側縁シール部、23 サイド上縁シール部、24 サイド下縁シール部、25 接着部、26 内縁、27 外縁、28 凹状空間、29 窪み、30 口栓、31 スパウト、32 キャップ、40 印字部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ容器に関し、より詳しくは、側面ガゼット部を備えたパウチ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
表面部、裏面部、及び表面部と裏面部との間に折り込まれた一対の側面ガゼット部を構成するシート材を備え、該シート材の周縁にシール部が形成されて容器内部空間が密閉されたサイドガゼットタイプのパウチ容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかるパウチ容器は、スポーツドリンク等の飲料、アイスクリームやゼリー等の食品などの容器として広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−344252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記構造のパウチ容器は、例えば、店頭での販売時において、商品陳列棚等の載置面上に自立した状態で陳列されるが、自立形態で容器の底となる部分には、製造年月日等をインクジェットプリンター等のノンインパクトプリンターで印字することが多く、この場合、かかる印字部が載置面に接触することで擦れて薄くなる或いは消えるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のパウチ容器は、表面部、裏面部、及び表面部と裏面部との間に折り込まれた一対の側面ガゼット部を構成する一又は複数のシート材を備え、表面部及び裏面部を構成するシート材の下縁同士を接合する下縁シール部が形成されたパウチ容器において、下縁シール部の少なくとも一部が、該下縁シール部の両端よりも上方に設けられていることを特徴とする。
【0006】
当該構成によれば、自立形態で容器の底が窪んで、容器の底と載置面との間に隙間が形成される。したがって、容器の底に形成される印字部が載置面に接触し難くなるため、印字部が載置面に擦れて薄くなることを抑制できる。
【0007】
本発明のパウチ容器において、下縁シール部は、パウチ容器の両側端部から略均等な位置に形成され、下縁シール部の内縁は、その両端よりも中央が大きく張り出した凸形状を有することが好適である。
印字部は容器の底の中央部に形成されることが好ましいが、当該構成によれば、容器の底の中央部が窪み易くなり、印字部が載置面に接触することをさらに抑制できる。
【0008】
本発明のパウチ容器において、凸形状は、上方に向かって湾曲した円弧形状を呈することが好適である。
当該構成では、例えば、容器の底の一部のみに深い窪みが形成された自立形態とはならず、容器の底の広範囲に亘って窪みを形成することができる。このため、容器の底の広範囲に印字部を形成した場合であっても、印字部が載置面に接触することを抑制できる。
【0009】
本発明のパウチ容器において、下縁シール部の外縁の少なくとも一部が、上方に窪んだ凹形状を有することが好適である。また、下縁シール部の上下方向のシール幅が、パウチ容器の幅方向に亘って略同一であることが特に好適である。
当該構成によれば、剛性の高い下縁シール部の面積を低減できるので、容器の底がより窪んだ状態を維持し易くなるとともに、下縁シール部の内縁に沿って折り曲げられたシート材が元の形状に戻ろうとする復元力(以下、「スプリングバックによる復元力」ともいう)が減少するため、より自立安定性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパウチ容器によれば、自立形態で容器の底となる部分に形成される印字部が載置面に接触して擦れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態であるパウチ容器の正面図であって、内容物を充填する前の形態を示す図である。
【図2】図1に示すパウチ容器の下部拡大図である。
【図3】本発明の実施形態であるパウチ容器の斜視図であって、内容物を充填した形態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態である内容物が充填されたパウチ容器を載置面上に自立させた様子を、従来のパウチ容器と比較して示す正面図である。
【図5】本発明の実施形態である内容物が充填されたパウチ容器を載置面上に自立させた様子を示す底面図である。
【図6】本発明の実施形態である内容物が充填されたパウチ容器を後方に傾けた状態で載置面上に自立させた様子を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態であるパウチ容器の第1の変形例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態であるパウチ容器の第2の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態であるパウチ容器の第3の変形例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態であるパウチ容器の第4の変形例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態であるパウチ容器の第5の変形例を示す図である。
【図12】本発明の実施形態であるパウチ容器の第6の変形例を示す図である。
【図13】本発明の実施形態であるパウチ容器の第7の変形例を示す図である。
【図14】本発明の実施形態であるパウチ容器の第8の変形例を示す図である。
【図15】従来のパウチ容器の正面図であって、内容物を充填する前の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下では、内容物を充填してパウチ容器を自立させた形態を「自立形態」と称する。パウチ容器の自立形態において、正面視鉛直方向に沿った方向を容器の「上下方向」とし、各シート材が積層される方向を容器の「表裏方向」とし、上下方向及び表裏方向に直交する方向を容器の「幅方向」とする。
【0013】
図1〜図3を参照して、パウチ容器10の構成を説明する。
図1は、内容物が充填される前のパウチ容器10を示す。図2は、パウチ容器10の下部拡大図であって、仮想線α〜γを示す。図3は、内容物が充填されたパウチ容器10を示す。同図に示すパウチ容器10は、表面部、裏面部、及び表面部と裏面部との間に折り込まれた一対の側面ガゼット部を構成する一又は複数のシート材を備え、表面部及び裏面部を構成するシート材の下縁同士を接合する下縁シール部21が形成されたパウチ容器10であって、下縁シール部21の少なくとも一部が、該下縁シール部21の両端よりも上方に設けられている。
【0014】
パウチ容器10は、表面シート11と、裏面シート12と、一対の側面ガゼットシート13とを備える。表面シート11及び裏面シート12は、容器の表面部及び裏面部をそれぞれ構成するシート材であり、側面ガゼットシート13は、表面部と裏面部との間に折り込まれた側面ガゼット部を構成するシート材である。側面ガゼットシート13は、上下方向に沿って形成された折り目線14により、容器の内部側に向かって山折りに折り返されている。
【0015】
パウチ容器10は、一対の側面ガゼットシート13を互いに重ね合わされた表面シート11と裏面シート12との間に両側から挿入した状態で各シート材の端縁同士を接合するシール部を形成し、内容物が充填される容器内部空間を密閉した構造である。なお、充填される内容物としては、スポーツドリンク等の飲料、アイスクリームやゼリー等の食料を例示できるが、これらに限定されない。
【0016】
表面シート11及び裏面シート12は、上下方向にやや長く延びた略六角形状を呈する。これらは、略矩形形状のシート材の下端角部が斜めにカットされてカット部15が形成された形状である。また、詳しくは後述するが、表面シート11及び裏面シート12の下端部の幅方向中央部は、外形線が上方に窪んだ円弧形状を呈している。
一対の側面ガゼットシート13は、互いに同一形状、同一サイズを有し、その幅は表面シート11の幅の1/5〜1/3程度に設定される。側面ガゼットシート13は、折り目線14を展開した状態で下端部が略V字状にカットされた略五角形状を呈する。
【0017】
パウチ容器10は、上記シール部として、上縁シール部20と、下縁シール部21と、側縁シール部22と、サイド上縁シール部23と、サイド下縁シール部24とを有する。また、容器上端角部には、内容物の充填により側面ガゼットシート13の上端が展開しないように、側面ガゼットシート13の外面同士を接合した接着部25が設けられている。
【0018】
上縁シール部20及び下縁シール部21は、表面シート11と裏面シート12とが直接接合されて形成される。但し、上縁シール部20の一部において、表面シート11と裏面シート12との間には、後述のスパウト31が介在する。
側縁シール部22、サイド上縁シール部23、及びサイド下縁シール部24は、側面ガゼットシート13の周縁に形成されるシール部であり、側面ガゼットシート13と表面シート11、又は側面ガゼットシート13と裏面シート12とが接合されて形成される。
【0019】
パウチ容器10には、その上縁の幅方向中央部に、内容物の取り出し部である口栓30が設けられる。口栓30は、スパウト31と、スパウト31の口部に螺合されたキャップ32とで構成されており、スパウト31を表面シート11の上縁と裏面シート12の上縁との間に挟んで上縁シール部20を形成することにより取り付けられる。なお、口栓30は、その中心軸Xが容器の幅方向中央を通るように取り付けられる。
【0020】
パウチ容器10には、自立形態で容器の底となる部分に印字部40が形成されている。図1に例示する形態では、表面シート11の下部の幅方向中央部に印字部40を形成している。印字部40の表示内容としては、製造年月日や賞味期限、ロット番号等を例示できるが、これらに限定されない。例えば、文字だけでなく、模様を印字部40に設けてもよい。印字部40は、通常、表面シート11等の外面にインクジェットプリンター等のノンインパクトプリンターを用いて形成される。或いは、製造年月日等をノンインパクトプリンターにより印字したタックシールを貼着して、印字部40としてもよい。
【0021】
パウチ容器10に内容物を充填すると、表面シート11及び裏面シート12が互いに離間し、側面ガゼットシート13が展開して、特に容器の下部が膨らんだ形態となる。そして、表面シート11及び裏面シート12の下部側の1/4程度(仮想線γより下)が下方に回り込むように折れ曲がって容器の底を形成する。こうして、パウチ容器10の自立性が発現する。なお、内容物は、スパウト31から充填することができる。
【0022】
以下、パウチ容器10の上記各構成要素、特に下縁シール部21の構成について、さらに詳説する。
【0023】
シート材(表面シート11、裏面シート12、及び側面ガゼットシート13)は、パウチ容器10の壁面部を構成するシート状部材であって、通常、樹脂フィルムから構成される。シート材を構成する樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性など、包装体としての基本的な性能を備えることが要求される。また、上縁シール部20等のシール部は、通常、ヒートシールにより形成されるので、シート材には、ヒートシール性も要求される。シート材としては、ベースフィルム層と、ヒートシール性を付与するシーラント層とを有する複層シート材が好適であり、高いガスバリア性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラント層との間にガスバリア層を設けることが好適である。
【0024】
ここで、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層の構成材料を例示する。なお、これら各層の積層は、慣用のラミネート法、例えば、接着剤によるドライラミネーション、熱接着性層を挟んで熱により接着させる熱ラミネーションなどにより行うことができる。
【0025】
ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)など)、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66など)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルフォン(PES)及びエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0026】
シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0027】
ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着(又はスパッタリング)したフィルムが例示できる。
【0028】
シート材には、内容物の商品名や原材料・使用上の注意事項等の商品説明、その他各種デザインなどを表示するための印刷層(図示せず)を設けることができる。例えば、印刷層は、グラビア印刷等の公知の方法により、ベースフィルム層の内側の面に形成できる。
【0029】
上縁シール部20等の各シール部は、ヒートシールにより形成されることが好適である。ヒートシールによるシール部は、各シート材のシーラント層が容器の内側となるように重ね合わせて熱圧着することで形成できる。
【0030】
パウチ容器10は、下縁シール部21の構成が従来のパウチ容器300(図15参照)と大きく異なる。
下縁シール部21は、表面シート11及び裏面シート12の下縁同士を直接ヒートシールして形成されるシール部であって、一対のサイド下縁シール部24の間に形成される。また、下縁シール部21は、容器の両側端部から略均等な位置に形成され、下縁シール部21の幅方向中央を口栓30の中心軸Xが通る。
【0031】
下縁シール部21は、その少なくとも一部が、下縁シール部21の両端よりも上方に設けられている。図1に例示する形態では、下縁シール部21の内縁26が上方に張り出した凸形状を有する。内縁26は、全体的に上方に向かって張り出しており、その両端よりも中央が大きく張り出した凸形状を有する。内縁26の凸形状(以下、「内縁凸形状」と称する)の張り出し長さが最大となる頂点Pは、中心軸Xとの交点、即ち容器の幅方向中央に位置する。
【0032】
下縁シール部21の内縁凸形状は、上方に向かって湾曲した円弧形状を呈する。より詳しくは、中心軸Xに対して左右対称となるように湾曲した円弧形状を呈する。換言すると、内縁26は、一対の側面ガゼットシート13の各折り目線14を結ぶ容器内部空間の下端部の輪郭線であるから、かかる輪郭線が円弧形状であるとも言える。
【0033】
内縁凸形状の最大張り出し長さL1は、内縁26の下端から仮想線αまでの長さL2の1/4〜1/3程度とすることが好適である。ここで、仮想線αとは、各サイド下縁シール部24の上端同士を結ぶ直線である。長さL1をこの範囲に設定すれば、印字部40の保護及び自立性の観点から適度な窪み29が容器の底に形成される。なお、長さL1を長くするほど、窪み29が容器の上方まで延びやすくなる。
【0034】
さらに、下縁シール部21は、外縁27の少なくとも一部が、上方に窪んだ凹形状を有する。図1に例示する形態では、下縁シール部21の上下方向のシール幅が、容器の幅方向に亘って略同一である。つまり、下縁シール部21の外縁27は、内縁26と略平行となるように窪んだ凹形状を有する。外縁27の凹形状(以下、「外縁凹形状」と称する)は、中心軸Xに対して左右対称となるように湾曲した円弧形状を呈し、その窪みが最大となる部分は、頂点Pと同様に中心軸Xとの交点に位置する。なお、内縁26と外縁27とが「略平行」とは、実質的に平行とみなすことができる状態を含み、例えば、内縁26の接線と外縁27の接線との傾きのズレが10°未満となる状態を含む。
【0035】
パウチ容器10では、円弧形状を呈する外縁27に沿って表面シート11及び裏面シート12がカットされており、容器下端部の幅方向中央部は、外形線が上方に窪んだ円弧形状を呈する。換言すると、パウチ容器10は、上方に向かって湾曲した円弧形状の容器下端部に沿って形成されたR状の下縁シール部21を有する。
【0036】
また、パウチ容器10では、容器内部空間の下端部において、内縁26の両端に接する部分が平面視略V字状に窪んだ凹状空間28が形成される。凹状空間28は、下縁シール部21とサイド下縁シール部24との境界位置において、最も大きく窪んでいる。
【0037】
次に、上記構成を備えるパウチ容器10の製造方法の一例について説明する。
【0038】
まず初めに、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層を含む複層シート材の長尺体(表面シート11及び裏面シート12の長尺体)を、例えば、接着剤を用いたドライラミネートにより作製する。続いて、表面シート11及び裏面シート12の長尺体を重ね合わせ、その長手方向に沿った両端から折り目線14で折り返された側面ガゼットシート13の長尺体を挿入する。そして、長尺体の長手方向に沿った両端をヒートシールして側縁シール部22を形成する。
【0039】
続いて、側縁シール部22を形成したシート材の長尺体を、例えば、ダイカットロールを用いて、個々の容器サイズにカットすると共に、容器下端部にカット部15及び上記円弧形状を形成する。そして、シート材の下縁をヒートシールして、下縁シール部21及びサイド下縁シール部24を形成する。なお、シート材を溶断して、これらシール部と同時に、カット部15等を形成してもよい。シート材の上縁は、スパウト31を挟み込んだ状態でヒートシールして、上縁シール部20及びサイド上縁シール部23を形成する。
【0040】
最後に、スパウト31から容器内部空間に内容物を充填し、スパウト31にキャップ32を取り付ける。こうして、内容物が密閉されたパウチ容器10が得られる。内容物を充填すると、上記のように、表面シート11及び裏面シート12の下部側の1/4程度が下方に回り込むように折れ曲がって容器の底を形成する。このとき、頂点Qを含む仮想線γで示すような折り目線が形成される。パウチ容器10は、その製造において新たな付帯設備を必要とせず、既存の製袋機を使用して容易に製造できる。
【0041】
次に、図4〜図6を参照して、上記構成を備えるパウチ容器10の自立形態を説明しながら、パウチ容器10の作用効果について詳説する。
図4は、内容物が充填されたパウチ容器10を載置面200上に自立させた様子を、従来のパウチ容器300と比較して示す正面図であり、図5は、図4に示すパウチ容器10の底面図である。図6は、内容物が充填されたパウチ容器10を後方に傾けた状態で載置面200上に自立させた様子を示す斜視図である。
【0042】
図4(a)に示すように、パウチ容器10の自立形態では、下縁シール部21の内縁凸形状に起因して容器の底が窪むことにより、容器の底と載置面200との間に隙間Sが形成される。このため、容器の底となる部分に形成された印字部40が載置面200に接触し難くなり、印字部40が載置面200に擦れて薄くなることを抑制できる。
一方、図4(b)に示すように、従来のパウチ容器300の自立形態では、容器の底と載置面200とが隙間なく接触している。
【0043】
図5に示すように、容器の底に形成される窪み29は、例えば、内縁凸形状の頂点Pから表面シート11の上方に向かって、具体的には、折り目線である仮想線γの頂点Qに向かって形成される線状の窪みを含み、該線状の窪みに対して左右対称となるように略三角形状に広がって形成される。かかる略三角形状は、例えば、仮想線γの頂点Qと、下縁シール部21の両端とを頂点とする。そして、表面シート11の各サイド下縁シール部24及びその近傍(例えば、楕円で囲んだ部分)が載置面200に接触して脚部となる。
頂点Pに接する容器内部空間は、内縁凸形状の両端に接する容器内部空間と比べて、表面シート11及び裏面シート12が離間し難くなるため、内容物は内縁凸形状の両端に接する容器内部空間に流動し易くなる。これにより、頂点Pの近傍において窪み29が形成され、表面シート11の各サイド下縁シール部24及びその近傍が脚部となる。また、パウチ容器10の内縁凸形状は、下縁シール部21の全幅に亘って緩やかに湾曲した円弧形状を呈するため、印字部40の全体を載置面200に接触し難くする幅広の窪み29が形成される。
【0044】
パウチ容器10の自立形態では、容器下端部近傍に、頂点Pを通り容器の幅方向に沿った折り目線が形成され、該折り目線より下部が、例えば、裏面シート12側に折り曲げられる。この折り目線が形成される位置を仮想線βで示す(図1,5参照)。なお、仮想線βに沿った折り目線が形成される裏面シート12側の窪み29は、通常、表面シート11側の窪み29よりも小さくなる。折り曲げられた部分には、スプリングバックによる復元力が作用するが、パウチ容器10では、底の中央部が窪んで、該中央部で載置面200に作用するスプリングバックによる復元力を低減できるため、安定した自立性を確保できる。
【0045】
図6に示すように、パウチ容器10は、後方に傾いた状態でも安定に自立できる。パウチ容器10では、上記スプリングバックによる復元力が、容器の底の中央部で低減され幅方向両側にバランス良く存在する。また、パウチ容器10には、容器内部空間の下端部にシール部よりも柔軟な凹状空間28が形成される。このため、容器の底の幅方向両側には適度な反発力が存在し、パウチ容器10は、やや後方に傾いた状態で安定に自立する。これにより、例えば、表面シート11に付された商品名等の商品デザインが見易くなり、ディスプレイ性が良好になる。
【0046】
上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。
以下、設計変更例(変形例)を例示する。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素には、同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0047】
図7は、第1の変形例であるパウチ容器50の正面図であって、内容物を充填する前の形態を示す図である。
パウチ容器50は、カット部15を有さず、表面シート51、裏面シート52、及び側面ガゼットシート53が略矩形状を有する。パウチ容器50では、パウチ容器10と比較してサイド下縁シール部54の面積が大きく、また、側面ガゼットシート53の下端が展開しないように側面ガゼットシート53の外面同士を接合した接着部55が設けられている。
【0048】
図8〜図10は、第2〜第4の変形例であるパウチ容器60〜80の正面図であって、内容物を充填する前の形態を示す図である。同図(後の図11〜図14も同様)では、容器の底となる部分のみを拡大して示している。
パウチ容器60〜80は、いずれも下縁シール部の内縁の中央部近傍が局部的に上方に張り出した凸形状を有する。パウチ容器60において、内縁シール部61の内縁62は、パウチ容器10と同様に、上方に向かって湾曲した円弧形状を呈する。一方、パウチ容器70,80において、内縁シール部71,81の内縁72,82は、いずれも非円弧形状を呈する。内縁72は、頂点が尖った逆V字状の凸形状であり、内縁82は、上端が幅方向に平行な直線状となった凸形状である。なお、パウチ容器60〜80は、下縁シール部の上下方向のシール幅が、容器の幅方向に亘って略同一となる点で、パウチ容器10と共通する。
パウチ容器60〜80の自立形態では、容器の底の中央部に大きな窪みが形成され易いため、例えば、印字部40の幅が小さい場合に有効である。
【0049】
図11〜図14は、第5〜第8の変形例であるパウチ容器90〜120の正面図であって、内容物を充填する前の形態を示す図である。
パウチ容器90〜120は、いずれも容器下端部の外形線が非円弧形状であり、容器の幅方向に平行な直線状である。パウチ容器90は、下縁シール部91の内縁92と外縁93とがいずれも円弧形状を呈し、下縁シール部91の上下方向のシール幅が容器の幅方向に亘って略同一である点で、上記実施形態と共通する。但し、外縁93の外側に表面シート11及び裏面シート12がカットされずに残った非シール部94を有する点で上記実施形態と異なる。また、パウチ容器100は、下縁シール部101の内縁102が円弧形状を呈し、外縁103は外形線と一致して直線状を呈する。つまり、下縁シール部101の上下方向のシール幅が、容器の幅方向に亘って略同一ではなく、下縁シール部101は略半円形状となる。
【0050】
パウチ容器110の下縁シール部111は、その上下方向のシール幅が、容器の幅方向中央部において僅かに広くなった形状を有する。つまり、下縁シール部111の内縁112の中央部が上方に小さく張り出している。このように小さく張り出した内縁凸形状によっても容器の底に窪みを形成することができる。
【0051】
パウチ容器120の下縁シール部121は、下端シール部122と、スポットシール部123とを含む。下端シール部122は、その内縁124及び外縁125が、いずれも容器の幅方向に略平行な直線状を呈する。スポットシール部123は、容器の幅方向中央部において、下端シール部122から上方に離間した位置に設けられる。スポットシール部123は、容器の下端から20mm以下の範囲であって、下端シール部122の内縁124からの距離が、内縁124から仮想線αまでの長さの1/4〜1/3程度となる位置に設けられることが好適である。パウチ容器120では、スポットシール部123によって容器の底に窪みを形成することができる。
【0052】
なお、上記では、表面シート、裏面シート、及び側面ガゼットシートからパウチ容器を構成するものとして説明したが、1枚のシート材を折り曲げて、表面部、裏面部、及び側面ガゼット部を構成する形態であってもよい。
【0053】
また、上記では、下縁シール部の外縁が凹形状を有する場合において、下縁シール部の上下方向のシール幅が、容器の幅方向に亘って略同一である形態を例示したが、上下方向のシール幅は異なっていてもよい。つまり、内縁凸形状に対応しない位置に外縁凹形状が形成されてもよく、更には下縁シール部の上下方向のシール幅が、容器の幅方向に亘って同一でない形態であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 パウチ容器、11 表面シート、12 裏面シート、13 側面ガゼットシート、14 折り目線、15 カット部、20 上縁シール部、21 下縁シール部、22 側縁シール部、23 サイド上縁シール部、24 サイド下縁シール部、25 接着部、26 内縁、27 外縁、28 凹状空間、29 窪み、30 口栓、31 スパウト、32 キャップ、40 印字部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面部、裏面部、及び表面部と裏面部との間に折り込まれた一対の側面ガゼット部を構成する一又は複数のシート材を備え、表面部及び裏面部を構成するシート材の下縁同士を接合する下縁シール部が形成されたパウチ容器において、
下縁シール部の少なくとも一部が、該下縁シール部の両端よりも上方に設けられていることを特徴とするパウチ容器。
【請求項2】
請求項1に記載のパウチ容器において、
下縁シール部は、パウチ容器の両側端部から略均等な位置に形成され、
下縁シール部の内縁は、その両端よりも中央が上方に大きく張り出した凸形状を有することを特徴とするパウチ容器。
【請求項3】
請求項2に記載のパウチ容器において、
凸形状は、上方に向かって湾曲した円弧形状を呈することを特徴とするパウチ容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパウチ容器において、
下縁シール部の外縁の少なくとも一部が、上方に窪んだ凹形状を有することを特徴とするパウチ容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパウチ容器において、
下縁シール部の上下方向のシール幅が、パウチ容器の幅方向に亘って略同一であることを特徴とするパウチ容器。
【請求項1】
表面部、裏面部、及び表面部と裏面部との間に折り込まれた一対の側面ガゼット部を構成する一又は複数のシート材を備え、表面部及び裏面部を構成するシート材の下縁同士を接合する下縁シール部が形成されたパウチ容器において、
下縁シール部の少なくとも一部が、該下縁シール部の両端よりも上方に設けられていることを特徴とするパウチ容器。
【請求項2】
請求項1に記載のパウチ容器において、
下縁シール部は、パウチ容器の両側端部から略均等な位置に形成され、
下縁シール部の内縁は、その両端よりも中央が上方に大きく張り出した凸形状を有することを特徴とするパウチ容器。
【請求項3】
請求項2に記載のパウチ容器において、
凸形状は、上方に向かって湾曲した円弧形状を呈することを特徴とするパウチ容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパウチ容器において、
下縁シール部の外縁の少なくとも一部が、上方に窪んだ凹形状を有することを特徴とするパウチ容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパウチ容器において、
下縁シール部の上下方向のシール幅が、パウチ容器の幅方向に亘って略同一であることを特徴とするパウチ容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−49461(P2013−49461A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188446(P2011−188446)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】
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