説明

パウチ

【課題】比較的薄型のパウチにおいても自立性を持たせるようにすることを課題とする。
【解決手段】パウチの外縁と連続しないように切り込み線40が左右のサイドシール部31にそれぞれ対向して形成され、該切り込み線40の外側に位置する折り曲げ代部14を折り曲げ線43で表裏方向に折り曲げることで自立する。折り曲げ代部14を折り曲げることで形成される左右の孔に、内容物を絞り出す際に使用する治具を通すことができる。両切り込み線40間に位置する主部13の幅は上下方向中央部分が幅狭となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的薄型のパウチに関し、特に流動食用に適したパウチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1記載のように底部ガセットを有して自立性を持たせた、いわゆるスタンディングパウチが知られている。
【0003】
しかしながら、底部ガセット付きのスタンディングパウチは比較的厚いので、薄型の流動食用パウチとしては不向きである。また、流動食のような内容物の場合には底部ガセット付きでは内容物の絞り出し作業も行いにくい。
【0004】
従って、流動食のような内容物の充填用には、底部ガセットを有しない平パウチや薄型のサイドガセットパウチが多用されている。しかしながら、例えば医療現場では開封後にそのパウチを一旦立てておきたいことがあるが、これらの平パウチ等は自立性がないので、壁などに立てかけているのが現状であり、必ずしも作業性に優れているものではなく、平パウチ等のような比較的薄型のパウチにおいて自立性を有するものが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−318954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、比較的薄型のパウチにおいても自立性を持たせるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係るパウチは、パウチの外縁と連続しないように切り込み線がシール部に形成され、該切り込み線が形成されたシール部を表裏方向に折り曲げることで自立可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
該構成のパウチにあっては、切り込み線が形成されたシール部を表面側あるいは裏面側に向けて折り曲げることで自立させることができる。
【0009】
特に、左右のサイドシール部の少なくとも下側部分にそれぞれ切り込み線が対向するように形成されていることが好ましい。例えば、内容物が流動食である場合、絞り出し用治具を使用して流動食をパウチから絞り出すことがある。該治具はスリットが軸線方向に伸びて形成された棒状体を有していて、該スリットによって棒状体が半割状に二分されている。そして、該治具のスリットにパウチの下側部分を差し込み、治具をその軸線回りに回転させることで治具の周面にパウチを巻き付けながら内容物を絞り出すことができる。このように治具を使用する場合には、左右のサイドシール部における切り込み線の外側の領域をそれぞれ同じ方向(例えば表面側)に折り曲げ、治具のスリットにパウチの下側部分を差し込むと、折り曲げによって形成されて互いに対向する左右の孔に、治具の半割部分(スリットによって二分された棒状体の片方)を通すことができる。従って、治具を回転させてパウチを巻き付け始める際に、パウチが相対的に上側に移動して治具のスリットから抜けるということがなく、確実に巻き付け作業即ち内容物の絞り出し作業を行うことができる。
【0010】
また、左右両切り込み線はそれぞれサイドシール部の上側部分まで伸びていて、両切り込み線間の幅は上下方向中央部分が幅狭となっていることが好ましい。サイドシール部の上側部分まで切り込み線が伸びていると、折り曲げた左右のシール部を取手の如く一纏めにして持つこともできる。また、折り曲げた左右のシール部を持つのではなく、切り込み線の内側の部分であるパウチの主部を持つこともでき、その状態で内容物を手で絞り出すということもできる。このようにパウチの主部を把持する際に、両切り込み線間の幅即ちパウチの主部の幅が上下方向中央部分において幅狭となっていると、パウチの主部を把持しやすく内容物の絞り出し作業も楽に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、切り込み線によって自立性を有するので、自立性のある薄型パウチが得られ、特に流動食用に適していて、内容物の絞り出し作業の作業性にも優れている。また、切り込み線がパウチの外縁と連続していないので、パウチの切り込み線が外縁から連続する場合のように切り込み線からパウチに亀裂が入るということがなく、保管や輸送において安全である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態におけるスパウト付きのパウチを示す正面図。
【図2】同実施形態におけるパウチの自立状態を示す斜視図。
【図3】同実施形態におけるパウチの一使用状態を示す正面図。
【図4】同実施形態におけるパウチの一使用状態を示す要部側面図。
【図5】本発明の他の実施形態におけるスパウト付きのパウチを示す正面図。
【図6】同実施形態におけるパウチの自立状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態にかかるスパウト付きのパウチについて図1乃至図4を参酌しつつ説明する。図1に示すスパウト付きのパウチは、種々の内容物、特に流動食を内容物として収容するのに適した平パウチであって、表裏一対のシート片11,12の周縁部をヒートシールすることにより袋状に形成されて内容物を収容可能なパウチ本体1と、該パウチ本体1の上端部に取り付けられて内容物の充填及びその取り出しに使用されるスパウト2と備えている。
【0014】
パウチ本体1は、底部及びサイドにガセットを有しない平パウチであって、上下方向に長い略長方形状に形成されてその周縁部がヒートシールされたものである。図1及び図3において多数のドットを付している領域がヒートシールされたシール部である。即ち、パウチ本体1のシール部は、底部シール部30と、左右一対のサイドシール部31と、スパウト2が装着されている上端シール部32とからなる。尚、該スパウト2は、三方がヒートシールされて上端部がヒートシールされずに開口する状態のパウチ本体1に挿入され、パウチ本体1の上端部をヒートシールする際に同時にヒートシールされてパウチ本体1に固着される。
【0015】
また、左右一対のサイドシール部31は、底部シール部30や上端シール部32よりもその幅が広く形成されており、更には上下方向に沿って幅一定に形成されている。そして、左右一対のサイドシール部31には、それぞれ切り込み線40が形成されている。該切り込み線40は、左右対称形状に形成されており、詳細には、左右方向(パウチの幅方向)に伸びる横線部41と、上下方向に伸びる縦線部42とからなる。縦線部42はサイドシール部31の略全長に亘って伸びていて、その上下方向の中央部分において内向きに凹んだ曲線状に形成されている。また、該縦線部42の上下両端からそれぞれ内向きに横線部41が形成され、該横線部41は直線状に形成されている。従って、切り込み線40は、縦線部42と上下一対の横線部41とから全体として略コの字状あるいは略Σ状に形成されている。尚、縦線部42と横線部41の境界部分は円弧状となっている。また、切り込み線40はその全長に亘って表裏方向(厚み方向)に貫通したものとなっている。以上のようにサイドシール部31に切り込み線40が形成されることにより、パウチ本体1は、両切り込み線40の内側(両切り込み線40間)に位置する主部13と、両切り込み線40の外側に位置する略コの字状の左右一対の折り曲げ代部14とに、大きく分けられることになり、主部13は正面視において略鼓形状となっている。
【0016】
ここで、パウチ本体1を構成するシートとしては、例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムや二軸延伸ポリアミドフィルム等よりなる外層と、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンやメタロセン系ポリエチレン等の熱融着性樹脂よりなる内層とを備えた多層ラミネートフィルムが使用され、また、エチレンビニルアルコール共重合体やアルミニウム箔、酸化ケイ素等の無機物を蒸着したフィルム等のような、ガスバリア性フィルム等を更に積層したものも好適であり、特に医療に使用されることが多い流動食用にはアルミニウム箔等のガスバリア性フィルムを積層したものが好ましい。
【0017】
前記スパウト2は、パウチ本体1を構成するシートの内面にヒートシール可能な合成樹脂(ポリエチレンやポリプロピレン等の熱融着性樹脂)から形成されており、一般には成形により一体的に形成される。該スパウト2は、具体的には、パウチ本体1の上端部において表裏一対のシート片11,12に狭持されるようにヒートシールにより固着される取付部20と、該取付部20からパウチ本体1の外部即ち上方に突出するように形成された口部21と、取付部20からパウチ本体1の内部(収容空間)即ち下方に突出するように形成された内方延在部22とを備えている。尚、取付部20は、中央から両側部にかけて徐々に前後方向の厚みが薄くなった横断面視略舟形の形状となっている。また、口部21には、その上端開口を封止するためのキャップ23が螺着されると共に、その下側には上下一対の矩形の鍔部25,26が形成されている。内方延在部22は、下方に向けて徐々に先細りとなる板状部22aと、該板状部22aの表裏両面それぞれの幅方向中央に立設されてその突出量が下方に向けて徐々に低くなった縦リブ22bとから、全体として横断面視略十字状に形成されている。また、板状部22aの根元部分には半円状の貫通孔22cが形成されており、パウチ本体1の内容物は、この貫通孔22cから取付部20及び口部21の連通孔(図示しない)を通って口部21の上端開口から外部へと排出されることになる。
【0018】
尚、このスパウト付きのパウチは、上端部が開口した三方シール状態のパウチ本体1にスパウト2を差し込んでパウチ本体1の上端部を封着すると共にスパウト2を固着し、その後、スパウト2から内容物を充填した後にキャップ23を装着するのであるが、このスパウト2をパウチ本体1に装着する前に予めパウチ本体1に切り込み線40を例えばダイカッター(打ち抜き)やトムソン刃等により形成しておくことが好ましい。
【0019】
以上のように構成されたスパウト付きのパウチにあっては、輸送時や保管時には図1のような未折り曲げ状態にある。従って、既にリブ等の凹凸形状がサイドシール部等に形成されている形態に比べると表面の凹凸がなく、周囲の物に引っかかったりしにくくて輸送や保管に便利である。
【0020】
そして、使用に際しては切り込み線40の両端を起点とした上下方向に伸びる折り曲げ線43(図1に二点鎖線で示している)で左右一対の折り曲げ代部14を表面側あるいは裏面側に折り曲げることができる。例えば裏面側に折り曲げると図2及び図3に示すようになって、折り曲げられた左右の折り曲げ代部14によってパウチを自立させることが可能になる。例えば内容物として流動食を収容するものである場合、キャップ23を外してスパウト2を開口させ、そのスパウト2に図示しないアダプターを介してチューブを接続するという作業が行われるが、その接続の際に一旦パウチを自立させておくことができるので、チューブの接続作業をスムーズに行うことができる。
【0021】
また、図3及び図4に二点鎖線にて示しているような絞り出し用治具100を使用して流動食をパウチから絞り出すことも行われる。該治具100は、図4のようにスリット101が軸線方向に伸びて形成された棒状体を有していて、該スリット101によって棒状体が半割状に二分されたものである。図2のように左右の折り曲げ代部14を折り曲げると、この折り曲げによって互いに対向する左右一対の縦長の孔44が形成される。従って、図4のように治具100のスリット101にパウチ本体1の主部13を差し込むと、図3及び図4のように治具100の半割部分(スリット101によって二分された棒状体の片方)が左右の孔44を貫通することになる。従って、治具100が両折り曲げ代部14によって支えられた状態となって下方に治具100が抜け落ちるということがなく、容易に治具100を回転させてその周面にパウチ本体1を巻き付けて内容物を絞り出すということができる。また、パウチ本体1が平パウチであるので底部ガセットを有する形態に比して薄型であり、治具100のスリット101に主部13を容易に差し込んで絞り出すことができる。
【0022】
更に、切り込み線40がパウチ本体1の下側部分のみならず上側部分まで伸びていてサイドシール部31の略全長に亘って形成されているので、折り曲げた左右の折り曲げ代部14を取手のように一纏めにして掴んでパウチを持つこともできる。
【0023】
また、パウチ本体1の主部13を直接把持して持つこともでき、その状態で内容物を手で絞り出すということもできる。その際、図2のようにパウチの主部13の幅が上下方向中央部分において幅狭となっているので、パウチ本体1の主部13を把持しやすく、内容物の絞り出し作業を楽に行うことができる。
【0024】
更に、切り込み線40の縦線部42と横線部41との境界部分が円弧状になっているので、主部13の四隅も先鋭な形状にはならず、そこに手が当たって痛くなるということもない。
【0025】
尚、本実施形態では、切り込み線40の縦線部42を曲線状としたが、例えば、上下方向の中央部分でくの字状に屈曲する上下二つの直線から縦線部42を構成したり、あるいは、滑らかな曲線状ではなく波形としたりしてもよい。
【0026】
また、縦線部42を直線状とすることもできる。但し、上述のように上下方向中央分において主部13が幅狭となるように縦線部42を形成すれば、主部13を把持しやすいため好ましい。
【0027】
また更に、左右の切り込み線40を左右対称形状としたが、左右非対称としても無論よく、左右の切り込み線40の上下方向の長さが互いに異なっていてもよい。更に、左右の切り込み線40をパウチ本体1の下側部分にのみ形成してもよく、逆に、上側部分と下側部分にそれぞれ分離独立した切り込み線40を形成してもよい。
【0028】
尚、縦線部42と横線部41とからなる切り込み線40とするのではなく、縦線部42のみの切り込み線40としてもよく、切り込み線40の形状は任意である。
【0029】
また、サイドシール部31に切り込み線40を形成する他、あるいは、それと共に底部シール部30に切り込み線40を形成することもできる。例えば、図5に示すスパウト付きのパウチは、浅い(即ち幅の比較的狭い)サイドガセットを有するものであって、その底部シール部30に切り込み線50が形成されている。尚、図5においてもシール部には多数のドットを付している。そして、切り込み線50は、左右一対の縦線部52と両縦線部52の下端同士を左右に連結する横線部51とから全体としてコの字状に形成されている。底部シール部30において切り込み線50の外側の領域55と内側の領域56を、二点鎖線で示す横方向に伸びる折り曲げ線53にてそれぞれ表裏方向に折り曲げると自立させることができる。即ち、図6のように底部シール部30における切り込み線50の外側の領域55と内側の領域56を互いに逆向きに折り曲げて側面視ハの字状の脚とすることでパウチを自立させることができる。
【0030】
このように、平パウチやサイドガセットパウチなど、パウチの形態についても種々の形態のものに適用可能であって、本来自立性を有しない形態のパウチに自立性を持たせることができる。
【0031】
尚、上記実施形態では全長に亘って貫通した切り込み線について説明したが、厚み方向の途中まで形成された切り込み線とし、折り曲げ時に手で切断するようにしてもよい。また、全長のうちの一部分を貫通させずに残した不連続な切り込み線として同じく折り曲げ時に手でその不連続な部分を切断するようにしてもよい。このように厚み方向の途中まで形成した切り込み線や不連続な部分を有する切り込み線として使用時である折り曲げ時において切断するようにすれば、折り曲げるまでの保管時や輸送時においてシール部が折れ曲がりにくくなってパウチの形状が安定するので、保管や輸送が便利になる。
【0032】
また、切り込み線の両端に貫通した小孔を形成してもよい。上述したように切り込み線はパウチ本体1の外縁に達していないので、そもそも切り込み線の両端からパウチ本体1に亀裂が入るということは起こりにくいけれども、切り込み線の両端に小孔を形成すれば、より一層確実に亀裂の発生を防止することができる。
【0033】
尚、スパウト付きのパウチについて説明したが、スパウト2を有しないパウチにも適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 パウチ本体
2 スパウト
11 表側のシート片
12 裏側のシート片
13 主部
14 折り曲げ代部
15 サイドガセット
20 取付部
21 口部
22 内方延在部
22a 板状部
22b 縦リブ
22c 貫通孔
23 キャップ
25 鍔部
26 鍔部
30 底部シール部
31 サイドシール部
32 上端シール部
40 切り込み線
41 横線部
42 縦線部
43 折り曲げ線
44 孔
50 切り込み線
51 横線部
52 縦線部
53 折り曲げ線
55 外側の領域
56 内側の領域
100 治具
101 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウチの外縁と連続しないように切り込み線がシール部に形成され、該切り込み線が形成されたシール部を表裏方向に折り曲げることで自立可能に構成されていることを特徴とするパウチ。
【請求項2】
左右のサイドシール部の少なくとも下側部分にそれぞれ切り込み線が対向するように形成されている請求項1記載のパウチ。
【請求項3】
左右両切り込み線はそれぞれサイドシール部の上側部分まで伸びていて、両切り込み線間の幅は上下方向中央部分が幅狭となっている請求項2記載のパウチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−280397(P2010−280397A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133521(P2009−133521)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】