説明

パケット応答方法及び装置

【課題】 パケットの情報から、優先的に返信を返すパケットと返さないパケットに区別し、優先的なパケットには十分な負荷に耐えうるようにし、そうでないものには、必要最低限の負荷に耐えうるように区別する。
【解決手段】 本発明は、受信した前記パケットの情報に基づいて、パケットの特徴を保持するデータベースを参照して、パケットの特徴(送信元アドレス等)を照合し、優先であれば優先キューに、非優先であれば非優先キューに登録し、優先的に返信パケットを返信するか否かの判断を行い、優先的に返すべきパケットから返信パケットを返信する。また、当該処理を行う装置の負荷状態に応じて、優先的ではないパケットの返信の可否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケット応答方法及び装置に係り、特に、ネットワーク上に存在する宛先不明のパケットに対して、パケットを返信するためのパケット応答方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク上の宛先不明パケットに対して、パケットを返信するパケット応答技術として、伝送制御プロトコルのTCP(Transmission Control Protocol)リセット返信装置を設置するようなことが考えられる(例えば、特許文献1参照)。当該リセット返信装置は、ノードからネットワークアクセスシステム上のWWWサーバなどへのTCPセッション確立要求パケットを受信し、当該TCPセッション確立要求パケットの宛先アドレス(WWWサーバ)への接続経路の有無を判定し、接続経路がない場合には、その宛先アドレスではTCPセッションを確立できないことを通知するTCPリセットパケットをTCPセッション確立要求パケットの送信元のノードに返信するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4472651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のインターネットでは、IPv4アドレスによるパケット転送が主流である。しかし、IPv4アドレスが枯渇し、インターネットに接続する装置はIPv6アドレスの具備が進むものと考えられる。
【0005】
IPv4アドレスとIPv6アドレスは併用可能であり、IPv4アドレスとIPv6アドレスの両方が具備されている装置では一般的にはIPv6アドレスが優先的に利用され、IPv6アドレスによる相手先への到達ができない場合は、IPv4アドレスを利用する機構を備えている。
【0006】
また、IPv4アドレスとIPv6アドレスの両方が具備されている装置がIPv6アドレスによる相手先への到達ができないと判断することを促進するためには、ネットワーク側には、到達できない旨(ICMPのnetwork unreachableやTCPのTCP RESET)を返信する機構を備える必要がある。
【0007】
しかし、IPv6アドレスへの置き換えが進むと、IPv6パケット量が増え、当該機構を上記のような到達できない旨を返信する機構には多大な負荷がかかり、その対策として、負荷に見合う当該機構を備えた装置を増設するコストの面で課題がある。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、パケットの情報から、優先的に返信を返すパケットと返さないパケットに区別し、優先的なパケットには十分な負荷に耐えうるようにし、そうでないものには、必要最低限の負荷に耐えうるように区別することで当該機構を備えた装置の増設数の低減を行うことが可能なパケット応答方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、ネットワーク上に存在する宛先不明のパケットに対して、パケットを返信するためのパケット応答方法であって、
パケット受信手段が、パケットを受信するパケット受信ステップと、
照合手段が、受信した前記パケットの情報に基づいて、パケットの特徴を保持するデータベースを参照して、パケットの特徴を照合する照合ステップと、
パケット返信手段が、前記照合ステップの結果に基づいて、優先的に返信パケットを返信するか否かの判断を行い、優先的に返すべきパケットから返信パケットを返信するパケット返信ステップと、を行う。
【0010】
また、前記照合ステップにおいて、
照合するパケットの特徴として、送信元アドレス、送信先アドレス、プロトコル、送信元ポート番号、送信先ポート番号のいずれか1つ以上を用いて照合する。
【0011】
また、前記照合ステップにおいて、
照合するパケットの特徴として、トラヒッククラス、または、メディアタイプを用いて照合する。
【0012】
また、前記パケット返信ステップにおいて、当該処理を行う装置の負荷状態に応じて、優先的ではないパケットの返信の可否を判定する。
【発明の効果】
【0013】
上記のように本発明では、パケットの情報から、優先的に返信を返すパケットと返さないパケットに区別し、優先的なパケットには十分な負荷に耐えうるようにし、そうでないものには、必要最低限の負荷に耐えうるように区別することで当該機構を備えた装置の増設数の低減を行うことが可能になる。これにより、ネットワーク上に存在する宛先不明パケットに対して、パケットを返信するパケット応答技術において、IPv6アドレスへの置き換えが進み、IPv6パケットが増えた際の対策として、パケットを返信する機構を備えた装置を増設するコストを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態におけるパケット応答装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるパケット応答装置のフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施例のシステム構成図である。
【図4】本発明の第2の実施例のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態におけるパケット応答装置の構成を示す。
【0017】
同図に示すパケット応答装置は、パケット受信部10、照合・判定部20、優先情報データベース30、パケット登録部40、メモリ50、送信制御部60から構成される。
【0018】
優先情報データベース30は、IPv6アドレスによる相手先への到達ができないことを通知すべきパケットの特性として、ネットワーク接続される装置の識別情報(アドレス)と「優先」「非優先」の種別が格納されており、照合・判定部20が当該優先情報データベース30を参照することにより、送信元のパケットのアドレスに対応する種別が「優先」であるか否かを判定する。これにより、「優先」である場合には、パケット登録部40がメモリ50の優先キューに返信パケット登録する。
【0019】
また、メモリ50には、優先的に返信を返すパケットを格納する優先キューと、それ以外のパケットを格納する非優先キューを有する。
【0020】
図2は、本発明の一実施の形態におけるパケット応答装置のフローチャートである。
【0021】
パケット応答装置において、パケット受信部10がネットワークを介してパケットを受信する(ステップ1)。次に、照合・判定部20は、受信したパケットの送信元アドレスに基づいて優先情報データベース30の情報を照合する(ステップ2)。照合・判定部20は、照合した結果、"優先"であるかを判断し(ステップ3)、優先であれば、パケット登録部40がメモリ50の優先キューに返信パケットを登録する(ステップ4)。そうでなければ("非優先")、メモリ50の非優先キューが空いているかを判断し(ステップ5)、空いていれば、非優先キューに返信パケットを登録する(ステップ6)。送信制御部60は、優先キュー、及び、非優先キューではキューにパケットがあれば(ステップ7)、そのパケットを送信し(ステップ8)、なければ、パケットがキューに登録されるまで待つ(ステップ9)。
【実施例】
【0022】
[第1の実施例]
図3は、本発明の第1の実施例のシステム構成図である。
【0023】
同図に示すシステムにおいて、IPv4アドレスとIPv6アドレスの両方が具備されている装置1〜装置100が接続されているネットワーク1がある。このネットワーク1には、IPv4インターネットのみに接続されている。ネットワーク1内には、前述した図1に示す講師を有するパケット応答装置101が導入されており、ネットワーク1はIPv6パケットがパケット応答装置101に到達するように設定されている。
【0024】
パケット応答装置101には同時50台の装置までの性能を持つパケット返信機能をもっている。パケット応答装置101の優先情報データベース30は、装置1〜20の送信元アドレスからは"優先"と登録されている。また、パケット応答装置101は優先的にパケットを返信するために、メモリ50内に2つのキューをもっており、一つ目のキュー(以下優先キュー)は優先登録されている数20台、もうひとつのキュー(以下非優先キュー)はパケット応答装置101の最大性能50台からを一つ目キューからの残り30台に設定される。
【0025】
装置201はIPv4インターネットとIPv6インターネットにつながれている。装置1〜装置100は装置201のIPv4アドレスとIPv6アドレスを、DNS等のアドレス解決技術によって知ることができるとする。
【0026】
装置1から装置201に通信する場合は、装置1は装置201のDNS等のアドレス解決技術によりIPv4アドレスとIPv6アドレスを取得する。装置1は装置201のIPv6アドレスを使って、装置201への通信を試みる。装置1からのIPv6パケットはネットワーク1を通じてパケット応答装置101に到達する。パケット応答装置101の照合・判定部20において、装置1からのIPv6パケットのアドレスに基づいて当該パケット応答装置101の優先情報データベース30を参照する。参照した結果、優先情報データベース30に、"優先"が設定されていた場合は、優先的に返信すると判断し、パケット登録部40により優先キューに登録される。パケット応答装置101は、送信制御部60からキューに応じて「パケットが到達できない」旨を示すパケットを返信する。
【0027】
これにより、装置1はネットワーク1からの相手先に「パケットが到達できない」旨を示すパケットを受け取ることにより、IPv6アドレスを用いた接続をあきらめ、IPv4アドレスを用いた接続を試みる。その結果、IPv4インターネット経由で装置101に到達する。
【0028】
装置21から装置201に通信する場合は、上記の装置1からの同様の手順で、非優先キューに登録され、パケットが返信される。
【0029】
装置1〜装置100が同時に、装置201に通信しようとする場合は、装置1〜装置20のすべては優先キューに登録され、パケットは返信されるが、装置21〜装置100の30台については非優先キューに登録され、パケットは返信されるが、残りの50台については非優先キューに登録することはできないため、パケットは返信されないことになる。
【0030】
このように、パケット応答装置101の性能以上のパケットが到達しても、優先されたパケットについてはすべて返信し、そうでないものは性能限界まで返信することとなる。この実施例では、優先された装置1〜20には返信パケットが必ず到着するが、優先情報データベース30のレコードを変更することで装置1〜20のいずれかの装置を非優先にしたり、装置1〜20以外のいずれかの装置を優先にしたりすることが可能である。
【0031】
また、本実施例では、パケットの情報として送信元アドレスを用いてデータベースを参照する例を示したが、それに加えて、送信先アドレス、プロトコル、送信元ポート番号、送信先ポート番号を1つ以上用いて、優先、非優先を区別することも可能である。
【0032】
また、本実施例ではパケット応答装置101は最大性能50台としているが、装置のCPU使用量、メモリ使用量などの装置状態を監視し、装置負荷が高いときは優先のみキューに入れ、低いときは優先と非優先の両方をキューに入れることも可能である。
【0033】
[第2の実施例]
図4は、本発明の第2の実施の例のシステム構成を示す。
【0034】
同図に示すシステムおいて、IPv4アドレスとIPv6アドレスの両方が具備されている装置301〜装置400が接続されているネットワーク2がある。このネットワーク2には、IPv4インターネットのみに接続されている。ネットワーク2内には、本発明のパケット応答装置401が導入されており、ネットワーク1はIPv6パケットがパケット応答装置401に到達するように設定されている。パケット応答装置401には同時50台の装置までの性能を持つパケット返信機能をもっているものとする。
【0035】
装置501〜装置503はIPv4インターネットとIPv6インターネットにつながれている。装置501は、インターネット電話サービス、装置502は映像配信サービス、装置503はインターネットWebサービス、をそれぞれ提供している。
【0036】
装置301〜装置400は装置501〜装置503のIPv4アドレスとIPv6アドレスを、DNS等のアドレス解決技術によって知ることができるとする。また、装置301〜装置400はインターネット電話サービス、映像配信サービス、インターネットWebサービス、を区別するため、IPv6ヘッダにあるトラヒッククラスを用いて、それぞれのサービスを識別できるようにして、パケットを発信する。
【0037】
パケット応答装置401の優先情報データベース30には、トラヒッククラスが、「インターネット電話サービス」と「映像配信サービス」については優先と登録されている。また、パケット応答装置401は優先的にパケットを返信するために、2つのキューをもっており、一つ目のキュー(以下「優先キュー」と記す)には20台、もうひとつのキュー(以下「非優先キュー」と記す)には装置401の"最大性能50台から"を優先キーから"残り30台"に設定される。
【0038】
装置301から装置501に通信する場合は、装置301は装置501のDNS等のアドレス解決技術によりIPv4アドレスとIPv6アドレスを取得する。装置301は装置501のIPv6アドレスを使って、トラヒッククラスを「インターネット電話サービス」として、装置501への通信を試みる。装置301からのIPv6パケットはネットワーク2を通じてパケット応答装置401に到達する。
【0039】
パケット応答装置401は、装置301から受信したIPv6のパケットに基づいて、優先情報データベース30の装置301からのトラヒッククラスを参照する。参照した結果、「インターネット電話サービス」を利用しようとしている装置301は優先的に返信すると判断されると、パケット登録部40は、優先キューに登録する。パケット応答装置401は、送信制御部60からキューに応じて「パケットが到達できない」旨を示すパケットを返信する。
【0040】
装置301はネットワーク2からの相手先に「パケットが到達できない」旨を示すパケットを受け取ることにより、IPv6アドレスを用いた接続をあきらめ、IPv4アドレスを用いた接続を試みる。その結果、IPv4インターネット経由で装置501に到達する。
【0041】
装置301から装置503に通信する場合は装置501宛へと同様の手順で、「インターネットWebサービス」として、発信し、パケット応答装置401では非優先キューに登録され、パケットが返信される。
【0042】
装置301〜装置400が同時に、装置501〜装置503のいずれかに通信しようとする場合は、「インターネット電話サービス」と「映像配信サービス」になる装置501〜装置502宛のパケットは優先キューに入り、パケットは返信され、「インターネットWebサービス」になる装置502宛のパケットついては、非優先キューに入り、パケットは返信される。このとき、「インターネットWebサービス」が30台を超え、非優先キューに登録することができない場合は、超えた分については、パケットは返信されないことになる。
【0043】
この例では、サービスの種別にトラヒッククラスを用いているが、マルチメディアのセッション制御するSIPのm=行などで具備されている、メディアタイプを用いて、優先、非優先を区別することも可能である。
【0044】
なお、図1に示すパケット応答装置の構成要素の動作をプログラムとして構築し、パケット応答装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0045】
なお、本発明は、上記の実施の形態及び実施例に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 パケット受信部
20 照合・判定部
30 優先情報データベース
40 パケット登録部
50 メモリ
60 送信制御部
1〜100,201,301〜400,501 装置
101,401 パケット応答装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上に存在する宛先不明のパケットに対して、パケットを返信するためのパケット応答方法であって、
パケット受信手段が、パケットを受信するパケット受信ステップと、
照合手段が、受信した前記パケットの情報に基づいて、パケットの特徴を保持するデータベースを参照して、パケットの特徴を照合する照合ステップと、
パケット返信手段が、前記照合ステップの結果に基づいて、優先的に返信パケットを返信するか否かの判断を行い、優先的に返すべきパケットから返信パケットを返信するパケット返信ステップと、
を行うことを特徴とするパケット応答方法。
【請求項2】
前記照合ステップにおいて、
照合するパケットの特徴として、送信元アドレス、送信先アドレス、プロトコル、送信元ポート番号、送信先ポート番号のいずれか1つ以上を用いて照合する
請求項1記載のパケット応答方法。
【請求項3】
前記照合ステップにおいて、
照合するパケットの特徴として、トラヒッククラス、または、メディアタイプを用いて照合する
請求項1記載のパケット応答方法。
【請求項4】
前記パケット返信ステップにおいて、
当該処理を行う装置の負荷状態に応じて、優先的ではないパケットの返信の可否を判定する
請求項1記載のパケット応答方法。
【請求項5】
ネットワーク上に存在する宛先不明のパケットに対して、パケットを返信するためのパケット応答装置であって、
パケットを受信するパケット受信手段と、
受信した前記パケットの情報に基づいて、パケットの特徴を保持するデータベースを参照して、パケットの特徴を照合する照合手段と、
前記照合手段の結果に基づいて、優先的に返信パケットを返信するか否かの判断を行い、優先的に返すべきパケットから返信パケットを返信するパケット返信手段と、
を有することを特徴とするパケット応答装置。
【請求項6】
前記照合手段は、
照合するパケットの特徴として、送信元アドレス、送信先アドレス、プロトコル、送信元ポート番号、送信先ポート番号のいずれか1つ以上を用いて照合する手段を含む
請求項5記載のパケット応答装置。
【請求項7】
前記照合手段は、
照合するパケットの特徴として、トラヒッククラス、または、メディアタイプを用いて照合する手段を含む
請求項5記載のパケット応答装置。
【請求項8】
前記パケット返信手段は、
当該処理を行う装置の負荷状態に応じて、優先的ではないパケットの返信の可否を判定する手段を含む
請求項5記載のパケット応答装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate