説明

パスボックス及びアイソレーター装置

【課題】外部とパスボックスとの間の外側搬入口からパスボックス内に物品を搬入し、この物品を作業室とパスボックスとの間の内側搬入口から作業室内に搬入するパスボックスにおいて、作業室内で取り扱われる有害な化学物質等がパスボックスを介して外部環境に漏洩することのないパスボックスを提供する。また、当該パスボックスを備えたアイソレーター装置を提供する。
【解決手段】パスボックスの周壁又は上壁には、パスボックスの内部に外気を吸気するための吸気口を設け、パスボックスの外側搬入口及び内側搬入口には、それぞれ、通気口を有する可撓性の開閉部材を備えることにより、作業室内の空気圧とパスボックス内の空気圧と外気圧とのバランスを保つことができ、常にパスボックス内から作業室内への空気の流れを維持して、有害な化学物質等が外部環境に漏洩することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄度の異なる2つの環境の間で物品を受け渡しするためのパスボックスに関するものであり、更に、当該パスボックスを備えたアイソレーター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体に有害な物質を取り扱う作業、例えば、医薬品の製造或いは研究開発段階の作業においては、有害な化学物質等の汚染から作業者を保護し、これらの有害な化学物質等が作業環境から外部環境に漏洩することを防止する必要がある。そのため、かかる作業を行う作業環境を作業室として密閉し、作業者はこの作業室の内部において防護服を着用して作業を行うことになる。この作業室は封じ込め室とも呼ばれ、吸排気装置の制御により、封じ込め室の空気圧を外部環境に対して常に負圧として、封じ込め室で取り扱われる化学物質等の外部環境への漏洩防止を図っている。
【0003】
一方、上記封じ込め室における作業よりも小規模な作業においては、作業室として小型のチャンバーを採用し、作業者はこのチャンバーの外部からグローブやハーフスーツを介して作業することのできるアイソレーター装置が使用される。このアイソレーター装置のチャンバーには、チャンバー内の空気から人体に有害な化学物質等を濾過するための吸排気装置が設けられている。これらのアイソレーター装置は、封じ込めアイソレーター装置と呼ばれ、この封じ込めアイソレーター装置においても、吸排気装置の制御により、チャンバー内の空気圧を外部環境に対して常に負圧として、チャンバーの内部で取り扱われる化学物質等の外部環境への漏洩防止を図っている。
【0004】
ここで、人体に有害な物質を取り扱う封じ込め室や封じ込めアイソレーター装置を使用した作業においては、作業中に必要な器具や化学物質を収容した容器等を外部から作業室内に搬入するなどの作業が必要となる場合がある。しかし、化学物質等の外部環境への漏洩防止の観点から、外部環境と作業室とを直接開放することができない。従って、このような場合には、封じ込め室の内部と外部との間、或いは、封じ込めアイソレーター装置のチャンバーと外部との間にパスボックスといわれる予備室を設置して、このパスボックスを介して器具や化学物質を収容した容器等を作業室内に搬入する。
【0005】
具体的には、まず、パスボックスの外側搬入扉を開けて目的物をパスボックス内に搬入する。次に、パスボックスの外側搬入扉を閉じて、今度は、パスボックスと作業室の間の内側搬入扉を開けて目的物を作業室内に移動する。そして、内側搬入扉を閉じることにより目的物を作業室内に搬入することができる。
【0006】
ここで、封じ込め室や封じ込めアイソレーター装置において、このパスボックスは、外部環境に開かれる外側搬入扉を有することから、パスボックス内の空気圧も外部環境に対して常に負圧とすることが必要である。特にパスボックスの外側搬入扉を開けた際に、パスボックス内の空気圧が外部環境の空気圧と同圧化して、作業室で取り扱われる有害な化学物質等がパスボックスを介して外部環境に漏洩しないようにする必要がある。
【0007】
この目的から、人体に対する有害性の高い物質を取り扱う封じ込め室や封じ込めアイソレーター装置においては、作業室に設けられた吸排気装置及び外部環境に設けられた吸排気装置とは独立して、パスボックス内にもパスボックス内の空気から人体に有害な化学物質等を濾過するための吸排気装置を設けることが考えられる。
【0008】
このように、作業室、外部環境及びパスボックスにそれぞれ独立した吸排気装置を設ける場合には、パスボックス内の空気圧を外部環境の空気圧より低く設定すると共に、作業室内の空気圧をパスボックス内の空気圧より更に低く設定する。このことにより、作業室内の空気はパスボックス内に流入しにくく、また、パスボックス内の空気は外部環境に流出しにくくなる。
【0009】
このような三重の吸排気装置による空気の濾過及び空気圧制御により、パスボックス内の汚染度は、作業室内の汚染度よりも軽減された状態を維持し、人体に有害な化学物質等が外部環境に漏洩することを防止することができると考えられる。
【0010】
しかし、作業室の吸排気装置に加え、パスボックスと外部環境とにそれぞれ独立した吸排気装置が設けられ、それぞれの空気圧が設定されている場合には、作業室内の空気圧、パスボックス内の空気圧及び外部環境の空気圧のバランス制御が難しい。
【0011】
特に、パスボックスの容積が作業室の容積に比較してかなり小さく、パスボックスと作業室との間の内側搬入扉を開ける際に、作業室内とパスボックス内との空気圧バランスが崩れやすい。同様に、パスボックスの外側搬入扉を開ける際に、外部環境とパスボックス内との空気圧バランスが崩れやすい。従って、このような場合に、人体に有害な物質がパスボックスの内部を汚染しパスボックスの外側搬入扉を介して外部環境に漏洩してしまう。
【0012】
このような場合に対応するものとして、複数の対象室を併設して、各対象室に吸排気装置を装備し、各対象室内の空気圧が異なる設定圧力に定められている場合に、各対象室内の空気圧を常にモニターすると共に、それぞれの吸排気装置を制御して各対象室内に吸排気される空気の量を常にコントロールする装置が、下記特許文献1の空調システムに提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−14523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上記特許文献1に記載の空調システムは、各対象室に室圧(空気圧)モニター装置を備え、この室圧モニター装置の情報を元に各吸排気装置を集中制御して、各対象室からの排気量を独立させて変化させるものである。即ち、各対象室の間の扉が開かれた場合に、各対象室内の空気圧バランスが崩れて各対象室の空気圧が均一化或いは逆転することのないように、空気圧の設定値の高い対象室からの排気量を減少させ、一方、空気圧の設定値の低い対象室からの排気量を増大させるように制御する。
【0015】
かかる空調システムは、各対象室に室圧モニター装置と吸排気量の制御可能な吸排気装置を備え、また、これらに連動した集中制御装置等を必要とする。従って、上記特許文献1に記載の空調システムは、複数の大きな作業室の間の空気圧バランスを制御する大掛かりなクリーンラボにおいては有効な方法である。
【0016】
しかし、上記特許文献1に記載の空調システムをパスボックスのような小空間を有する封じ込め室や、更に小規模な設備である封じ込めアイソレーター装置に設けるには限界があり、費用的にもスペース的にも難しいという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、封じ込め室や封じ込めアイソレーター装置に設けられるパスボックスにおいて、簡単な設備と構造とを有するのみで、作業室内の空気圧とパスボックス内の空気圧と外部環境の空気圧とのバランスを保つことができ、このことにより、常にパスボックス内から作業室内への空気の流れを維持して、パスボックスを介して作業室内で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩することのないパスボックスを提供することを目的とする。
【0018】
更に、本発明は、上記パスボックスを備えてなるアイソレーター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、パスボックスに外部環境から外気を吸気する吸気口を設けると共に、パスボックスと外部環境との間に設けられた外側搬入口に、可撓性材料からなる開閉部材を設けることとした。その結果、封じ込め室の吸排気による負圧制御或いはアイソレーター装置のチャンバーに設けられた排気装置による排気のみで、常にパスボックス内から作業室内への空気の流れを維持し、作業室内とパスボックス内の封じ込め状態を確保して、本発明の目的を達成できることを見出して本発明の完成に至った。
【0020】
即ち、本発明に係るパスボックスは、請求項1の記載によれば、
物品の受け渡しをするための外側搬入口(80、180)及び内側搬入口(70、170)を周壁に有するパスボックスにおいて、
上記外側搬入口(80、180)及び上記内側搬入口(70、170)のそれぞれに各搬入口を閉じるように設けられた可撓性の開閉部材(72、82、172、182)と、
上記外側搬入口(80、180)に開閉可能に設けられた外側搬入扉(81、181)とを備えて、
上記周壁の他の部分又は上壁には吸気口(53、153)が設けられ、
上記可撓性の開閉部材(72、82、172、182)には通気口(72b、72c、82b、82c、172b、172c、182b、182c)が設けられてなることを特徴とする。
【0021】
上記構成によるパスボックスは、人体に有害な化学物質等を取り扱う封じ込め室或いは封じ込めアイソレーター装置のチャンバーに取り付けられる。これらの作業室は、その内部で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩することを防止するために、外気に対して室内の空気圧を負圧としている。このことにより、作業室は常に封じ込め状態を維持することができる。
【0022】
ここで、封じ込め状態を維持したまま、外部から作業室内に必要な器具等を搬入するにあたり、パスボックスを経由する。そのために、上記構成によるパスボックスは、その周壁に2つの搬入口を有し、外側搬入口は外部環境に対して開口し、一方、内側搬入口は作業室に開口するように取り付けられる。
【0023】
また、上記構成によるパスボックスは、外側搬入口に開閉可能な外側搬入扉を設ける。この外側搬入扉が閉鎖されることにより、有害な化学物質等が外部環境に漏洩することを防止する。一方、この外側搬入扉が開放されることにより、作業室内に搬入しようとする器具等をパスボックスの内部に搬入することができる。
【0024】
本発明においては、このパスボックスの周壁の他の部分又は上壁に吸気口を設けるようにする。ここで、作業室内の空気圧が負圧に維持されていることによって、外部環境の空気は、この吸気口を介してパスボックスの内部に吸気され、更に、パスボックスの内部から作業室内に吸気される。従って、作業室内とパスボックス内との空気圧は、常に作業室側が低い状態に維持されることになる。このことは、作業室側の吸排気手段による吸引によってもたらされるものであり、パスボックスに専用の排気手段を設けることを必要としない。
【0025】
また、本発明においては、外側搬入口及び内側搬入口にそれぞれ可撓性の開閉部材を設けるようにする。
【0026】
まず、内側搬入口に設けられた可撓性の開閉部材は、内側搬入口を閉じるようにして設けられているので、作業室とパスボックスの内部とが簡易的に区画されている。従って、作業室内で取り扱われる有害な化学物質等がパスボックスの内部に流入することが抑えられ、パスボックス内の汚染度は、作業室内の汚染度よりも軽度に維持されることになる。
【0027】
また、この開閉部材には通気口が設けられており、パスボックス内から作業室内への空気の流れが絞られて一定以上の流速を持つことになり、パスボックス内から作業室内への空気の流れが常に安定に維持される。
【0028】
更に、この開閉部材は可撓性を有し、その一部が撓むことにより、外部からパスボックス内へ搬入された器具等をパスボックス内から作業室内へ搬入する作業を容易にする。即ち、作業者は、搬入する器具等により内側搬入口に設けられた開閉部材を押圧して拡開しながら、当該器具等をパスボックスの内部から作業室内に差し入れることができる。搬入後は、開閉部材の撓みは解消し開閉部材が閉じることにより、元の簡易的な区画が復元される。
【0029】
このように、内側搬入口に設けられた開閉部材が拡開された状態においても、上記パスボックス内から作業室内への空気の流れは、乱れることなく常に安定に維持される。
【0030】
同様に、外側搬入口に設けられた可撓性の開閉部材は、外側搬入口を閉じるようにして設けられているので、外側搬入扉を開いて器具等をパスボックスの内部に搬入しようとするときにも、外部環境とパスボックスとが簡易的に区画され、パスボックス内から有害な化学物質等が外部環境に流出することを抑えられる。従って、外部環境を人体に有害な化学物質等の漏洩から保護することができる。
【0031】
また、この開閉部材には通気口が設けられており、外側搬入扉を開いたときには、外部環境からパスボックスの内部への空気の流れが絞られた状態で一定以上の流速をもって発生し、封じ込め状態が安定に維持される。このことは、パスボックス内から作業室内への空気の流れが常に維持されており、パスボックス内の空気圧が負圧となっていることによる。
【0032】
更に、この開閉部材も可撓性を有し、一部が撓むことにより、外部からパスボックスの内部への器具等の搬入を容易にする。即ち、作業者は、搬入する器具等により外側搬入口に設けられた開閉部材を押圧して拡開しながら、器具等をパスボックスの内部に差し入れることができる。搬入後は、開閉部材の撓みは解消し、開閉部材が閉じることにより、元の簡易的な区画が復元される。このパスボックス内に搬入された器具等は、上述のように、内側搬入口に設けられた内側開閉部材を介して作業室内に搬入される。
【0033】
このように、外側搬入口に設けられた開閉部材が拡開された状態においても、上記外部環境からパスボックスの内部への空気の流れは、乱れることなく常に安定に維持される。
【0034】
上記構成によれば、パスボックス内から作業室内への空気の流れを安定して維持することができ、更に、パスボックスを介して作業室内に器具等を搬入するためにパスボックスの外側搬入扉を開いたときにも、外部からパスボックスの内部への空気の流れが発生することにより、パスボックスを介して作業室内で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0035】
よって、本発明は、簡単な設備と構造とを有するのみで、作業室内の空気圧とパスボックス内の空気圧と外部環境の空気圧とのバランスを保つことができ、このことにより、常にパスボックス内から作業室内への空気の流れを維持して、パスボックスを介して作業室内で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩することのないパスボックスを提供することができる。
【0036】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載のパスボックスであって、
上記内側搬入口(70、170)に開閉可能に設けられた内側搬入扉(71、171)を備えて、
上記内側搬入扉には通気口(78、178)が設けられてなることを特徴とする。
【0037】
上記構成によれば、請求項1に記載のパスボックスに、新たに内側搬入扉を設けている。この内側搬入扉には通気口が設けられており、この通気口は、作業室内とパスボックスの内部とを連通させている。従って、内側搬入扉が閉鎖された状態においても、内側搬入扉に備えられた可撓性の開閉部材に設けられた通気口と内側搬入扉に設けられた通気口を介してパスボックス内から作業室内への空気の流れを維持することができる。
【0038】
また、内側搬入口に内側搬入扉を設けることにより、作業室内で取り扱われる有害な化学物質等によりパスボックス内が汚染されることを更に抑え、パスボックス内の汚染度がより軽減される。
【0039】
この内側搬入扉は、開閉可能に設けられており、パスボックスの内部から作業室内へ器具等を搬入する際には開放される。この内側搬入扉を開くことにより、上述のように、可撓性の開閉部材を介しての器具等の搬入を行うことができる。
【0040】
よって、請求項2に記載の発明においても、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0041】
また、本発明に係るパスボックスは、請求項3の記載によれば、
物品の受け渡しをするための外側搬入口(80、180)及び内側搬入口(70、170)を周壁に有するパスボックスにおいて、
上記外側搬入口(80、180)に当該搬入口を閉じるように設けられた可撓性の開閉部材(82、182)と、
上記外側搬入口(80、180)に開閉可能に設けられた外側搬入扉(81、181)と、
上記内側搬入口(70、170)に開閉可能に設けられた内側搬入扉(71、171)とを備えて、
上記周壁の他の部分又は上壁には吸気口(53、153)が設けられ、
上記可撓性の開閉部材(82、182)には通気口(82b、82c、182b、182c)が設けられ、
上記内側搬入扉(71、171)には通気口(78、178)が設けられてなることを特徴とする。
【0042】
上記構成によれば、本発明は、請求項1に記載のパスボックスに対して、内側搬入口には可撓性の開閉部材を設けず、その代りに内側搬入扉を設けている。この内側搬入扉には通気口が設けられており、この通気口は、作業室内とパスボックスの内部とを連通させている。従って、内側搬入扉が閉鎖された状態においても、この内側搬入扉に設けられた通気口を介してパスボックス内から作業室内への空気の流れを維持することができる。
【0043】
この内側搬入扉は、開閉可能に設けられており、パスボックスから作業室内へ器具等を搬入する際には開放される。この内側搬入扉を開くことにより、内側搬入口を介しての器具等の搬入を行うことができる。
【0044】
また、上記請求項1に記載の発明と同様に、外側搬入口には、可撓性の開閉部材が外側搬入口を閉じるようにして設けられている。このことにより、外側搬入扉を開いて器具等をパスボックスの内部に搬入しようとするときにも、外部環境とパスボックスとが簡易的に区画され、パスボックス内から有害な化学物質等が外部に流出することを抑えられる。従って、外部環境を人体に有害な化学物質等の漏洩から保護することができる。
【0045】
また、この開閉部材に設けられた通気口によって、外側搬入扉を開いたときには、外部からパスボックスの内部への空気の流れが絞られた状態で一定以上の流速をもって発生し、封じ込め状態が安定に維持される。
【0046】
よって、請求項3に記載の発明においても、簡単な設備と構造とを有するのみで、作業室内の空気圧とパスボックス内の空気圧と外部環境の空気圧とのバランスを保つことができ、このことにより、常にパスボックス内から作業室内への空気の流れを維持して、パスボックスを介して作業室で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩することのないパスボックスを提供することができる。
【0047】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1から3のいずれか1つに記載のパスボックスであって、
上記可撓性の開閉部材は、可撓性シート(72、82、172、182)からなり、
上記可撓性シート(72、82、172、182)は、その中央部から周縁部に向けて切り割り(72b、72c、82b、82c、172b、172c、182b、182c)をいれてなることを特徴とする。
【0048】
上記構成によれば、可撓性の開閉部材として、可撓性シートを用いるようにしてもよい。この可撓性シートは、その中央部から周縁部に向けて切り割りを入れている。この切り割りが、上記開閉部材に設けられた通気口として作用する。また、この切り割りによって、可撓性シートの一部が撓むことにより、器具等の搬入を容易にする。即ち、作業者は、搬入する器具等により可撓性シートを押圧して拡開しながら、器具等を差し入れることができる。搬入後は、可撓性シートの撓みは解消し、可撓性シートが閉じることにより、元の簡易的な区画が復元される。
【0049】
よって、請求項4に記載の発明においても、請求項1から3のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0050】
なお、本発明において、可撓性の開閉部材又は可撓性シートの形状及び厚さは、可撓性を有して上記簡易的な区画を維持して、且つ、押圧による拡開と、その後の復元が容易なものであればどのようなものであってもよい。例えば、可撓性の開閉部材又は可撓性シートに用いられる材料としては、良好な弾性を有する種々のゴムシートを用いることができる。
【0051】
また、本発明に係るアイソレーター装置は、請求項5の記載によれば、
外気を吸気する吸気口(14)を有するチャンバー(10)と、
上記チャンバー(10)の内部の空気を排気する排気手段(30、40)と、
上記チャンバーの周壁に外付けされたパスボックス(C)とを備えたアイソレーター装置において、
上記パスボックス(C)は、請求項1〜4のいずれか1つに記載のパスボックスであって、
上記外側搬入口(80)は、上記パスボックス(C)の内部と外気とを連通させるように設けられ、
上記内側搬入口(70)は、上記チャンバー(10)と上記パスボックス(C)との外付け部(55)に形成されて上記チャンバー(10)の内部と上記パスボックス(C)の内部とを連通させるように設けられ、
上記パスボックス(C)に設けられた吸気口(53)は、上記パスボックス(C)の内部と外気とを連通させるように設けられてなることを特徴とする。
【0052】
上記構成によれば、上記アイソレーター装置は、チャンバーに設けられた吸気口から外気を吸気し、チャンバー内の空気を排気手段により排気して、チャンバー内の空気圧を負圧としている。この負圧の作用で、チャンバー内で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩することのない封じ込め状態を維持している。ここで、封じ込め状態を維持したまま、外部からチャンバーの内部に必要な器具等を搬入するにあたり、パスボックスを経由する。
【0053】
本発明に係るアイソレーター装置においては、パスボックスとして請求項1〜4のいずれか1つに記載のパスボックスを用いる。このパスボックスがその周壁に有する2つの搬入口のうち、外側搬入口は外部環境に対して開口し、一方、内側搬入口はチャンバーの内部に開口するように取り付けられる。
【0054】
また、パスボックスの外側搬入口には、外側搬入扉が開閉可能に設けられ、この外側搬入扉が閉鎖されることにより、有害な化学物質等が外部環境に漏洩することを防止する。一方、この外側搬入扉が開放されることにより、チャンバーの内部に搬入しようとする器具等をパスボックスの内部に搬入することができる。
【0055】
また、本発明に係るアイソレーター装置に用いられるパスボックスには、上述のように吸気口が設けられており、このパスボックスに設けられた吸気口は、パスボックスの内部と外気とを連通させるように設けられ、この吸気口から吸気された空気は、上記チャンバー内の空気圧が負圧に維持されていることによって、パスボックスの内部からチャンバーの内部に吸気される。
【0056】
従って、チャンバー内とパスボックス内の空気圧は、常にチャンバー側が低い状態を維持することができる。これは、チャンバー側の排気手段による吸引によってもたらされるものであり、パスボックスに専用の排気手段を設けることを必要としない。
【0057】
本発明に係るアイソレーター装置において、十分な封じ込め状態を維持するためには、チャンバー内の空気圧を外部環境の空気圧に対して、−10Paより低くすることがよく、更に、−30Paより低くするようにしてもよい。チャンバー内の空気圧を−10Paより低くすることにより、パスボックスの内部からチャンバーの内部への空気の流れが安定し、特に、パスボックスの外側搬入扉を開いてパスボックス内が外部環境に曝されたときにも、パスボックスの内部からチャンバーの内部への空気の流れを維持して、パスボックスを介して有害な化学物質等が外部環境に漏洩することを防止することができる。
【0058】
なお、本発明に係るアイソレーター装置におけるパスボックスを介した空気の流れは、上記請求項1〜4で説明したことと同様である。
【0059】
よって、本発明は、簡単な設備と構造とを有するのみで、チャンバー内の空気圧とパスボックス内の空気圧と外部環境の空気圧とのバランスを保つことができ、このことにより、常にパスボックス内からチャンバー内への空気の流れを維持して、パスボックスを介してチャンバー内で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩することのないパスボックを備えたアイソレーター装置を提供することができる。
【0060】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るパスボックス及び当該パスボックスを備えたアイソレーター装置の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】(A)は、図1に示すパスボックスの内側搬入口を搬入室の内部側から見た正面図であり、(B)は、正面図(A)においてX−X線に沿った断面図である。
【図3】図1に示すパスボックスの内側搬入口にゴムシートを取付ける構造を分解図で示す斜視図である。
【図4】図1に示すパスボックスの内側搬入口をチャンバーの内部側から見て、内側搬入扉を開いた状態を示す斜視図である。
【図5】(A)は、図1に示すパスボックスの外側搬入口を搬入室の内部側から見た正面図であり、(B)は、正面図(A)においてY−Y線に沿った断面図である。
【図6】図1に示すアイソレーター装置において、通常の作業状態を示す断面図である。
【図7】図1に示すアイソレーター装置において、外部から搬入室の内部に器具を搬入するために、外側搬入扉を開いた状態を示す断面図である。
【図8】図1に示すアイソレーター装置において、外部から搬入室の内部に器具を搬入した状態を示す断面図である。
【図9】図1に示すアイソレーター装置において、搬入室の内部に器具を搬入し、外側搬入扉を閉じた状態を示す断面図である。
【図10】図1に示すアイソレーター装置において、搬入室の内部からチャンバーの内部に器具を搬入するために、内側搬入扉を開いた状態を示す断面図である。
【図11】図1に示すアイソレーター装置において、搬入室の内部からチャンバーの内部に器具を搬入した状態を示す断面図である。
【図12】図1に示すアイソレーター装置において、チャンバーの内部に器具を搬入し、内側搬入扉を閉じた状態を示す断面図である。
【図13】本発明に係るパスボックスの第2実施形態を示す正面図である。
【図14】図13に示すパスボックスを封じ込め室に設けた状態を示す概略図である。
【図15】図13に示すパスボックスの内側搬入口を封じ込め室の内部側から見て、内側搬入扉を開いた状態を示す斜視図である。
【図16】図13に示すパスボックスの外側搬入口を準備室の内部側から見て、外側搬入扉を開いた状態を示す斜視図である。
【図17】上記各実施形態の変形例に係る可撓性シートの異なる構造(A)〜(F)を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明を各実施形態により説明する。
(第1実施形態)
本発明に係るパスボックス及び当該パスボックスを備えたアイソレーター装置の第1実施形態を図面に従って説明する。図1に示すように、アイソレーター装置は、床面上に載置される架台Aと、この架台Aの上に乗載されるアイソレーター本体Bと、このアイソレーター本体Bの右側面の壁部に接合されたパスボックスCとにより構成されている。
【0063】
架台Aは、周囲をステンレス製金属板からなる壁材で覆われ、その内部は電装及び機械室を兼ねており、この架台Aの正面の壁部には、制御盤Dが組み込まれている。
【0064】
アイソレーター本体Bは、チャンバー10と、吸気用のフィルターユニット20と、排気用のフィルターユニット30と、チャンバー内の空気をフィルターユニット30で濾過したのち外部に排気するためのブロワー40とにより構成されている。
【0065】
チャンバー10は、ステンレス製の箱体からなり、作業者が作業を行う外部環境とは気密的に遮蔽されており、このチャンバー10は、内部を洗浄する洗浄液用スプレーノズル及び排水溝(いずれも図示せず)を備えている。
【0066】
チャンバー10の正面の壁部には、内部を視認できる透明なガラス窓11が設けられている。このガラス窓11は、外部とチャンバー10の内部とを連通させる4つの作業用開口部12a、12b、12c、12dを有する。これらの作業用開口部12a、12b、12c、12dには、それぞれ、樹脂製のグローブ13a、13b、13c、13d(図示せず)が気密的に取り付けられている。
【0067】
チャンバー10の上面の壁部には、外気をチャンバー10の内部に吸気するための吸気口14(図示せず)が開口している。この吸気口14には、フィルターユニット20がチャンバー10の外部側に垂直方向に接続している。このフィルターユニット20の内部には、外部からチャンバー10の内部に吸気する空気を濾過するためのHEPAフィルターからなるフィルター21が充填されている。
【0068】
また、チャンバー10の左側面の壁部には、排気口15(図示せず)が開口している。この排気口15には、フィルターユニット30がチャンバー外側に水平方向に接続している。このフィルターユニット30の内部には、チャンバー10の内部から外部に排気する空気を濾過するためのHEPAフィルターからなるフィルター31a、31bが充填されている。また、フィルターユニット30は、配管41によって、チャンバー10の上面の壁部に設置されたブロワー40に連通されている。
【0069】
ここで、フィルターユニット30は、2つのフィルター31a、31bを直列に収納している。これは、チャンバー10からの排気中には、人体に有害な化学物質が多く含まれており、これを除去して封じ込め状態を維持するために必要とされるからである。
【0070】
また、チャンバー10の左側面の壁部には、外部取出口16が設けられている。この外部取出口16は、チャンバー外側に外バッグ17を付設し、チャンバー外への使用済み器具や使用済フィルターの取り出し等に使用される。
【0071】
パスボックスCは、ステンレス製の箱体からなる搬入室50と、吸気用のフィルターユニット60とにより構成されている。
【0072】
搬入室50は、作業者が作業を行う外部環境とは気密的に遮蔽されており、この搬入室50の正面の壁部には、外部と搬入室50の内部とを連通させる1つの作業用開口部51が開口する。この作業用開口部51には、樹脂製のグローブ52(図示せず)が気密的に取り付けられている。
【0073】
搬入室50の上面の壁部には、吸気口53(図示せず)が開口している。この吸気口53には、フィルターユニット60が搬入室50の外部側に垂直方向に接続している。このフィルターユニット60の内部には、外部から搬入室50の内部に吸気する空気を濾過するためのHEPAフィルターからなるフィルター61が充填されている。
【0074】
また、搬入室50の左側面の壁部は、チャンバー10の右側面の壁部に外付けされ、この外付け部には、搬入室50の内部とチャンバー10の内部とを連通させる内側搬入口70が開口している。この内側搬入口70には、チャンバー10の内部側に開閉可能な内側搬入扉71(後述する)が設けられている。また、内側搬入口70には、搬入室50の内部側において内側搬入扉71と対面する位置にゴムシート72(後述する)が内側搬入口70を閉じるように設けられている。このゴムシート72は、本発明における可撓性シートに該当する。
【0075】
一方、搬入室50の右側面の壁部には、外気と搬入室50の内部とを連通させる外側搬入口80が開口している。この外側搬入口80には、搬入室50の外部側に開閉可能な外側搬入扉81(後述する)が気密的に設けられている。また、外側搬入口80には、搬入室50の内部側において外側搬入扉81と対面する位置にゴムシート82(後述する)が外側搬入口80を閉じるように設けられている。このゴムシート82は、本発明における可撓性シートに該当する。
【0076】
ここで、内側搬入口70に設けられた内側搬入扉71及びゴムシート72について説明する。図2において、チャンバー10の側面の壁部18とパスボックスCの側面の壁部54とが接合されてパスボックスCをチャンバー10に外付けしている。この外付け部55の壁部18には、内側搬入口70が開口している。この内側搬入口70には、チャンバー10の内部側に内側搬入扉71が設けられ、一方、搬入室50の内部側にゴムシート72が内側搬入扉71と対面する位置に設けられている。
【0077】
ここで、可撓性のゴムシートに用いられるゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム等があり、これらの中でも、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴムがより好ましい。これらのゴムは、単独であるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0078】
なお、本第1実施形態においては、ゴムシート72には、厚み3mmのクロロプレンゴム(CR)のシートを使用した。
【0079】
ゴムシート72は、図3に示すように、4片の略台形のゴムシートからなり、二つの固定枠73a及び73bに挟持された状態でボルト73cとナット73dとによって固定されて一体化している。この固定された状態で、ゴムシート72の中央部には、4つの先端部72aで囲まれた小円形の開口部72bが形成され、この開口部72bから周縁部に向かって4本のスリット72cが形成されている。
【0080】
この小円形の開口部72b及び4本のスリット72cは、本発明における内側開閉部材が有する通気口に該当する。この通気口(開口部72b及びスリット72c)は、搬入室50の内部からチャンバー10の内部への空気の流れを維持して、搬入室50を介してチャンバー10の内部で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩するのを防止している。
【0081】
ゴムシート72は、上述の一体化した状態で、壁部18に取り付けられ、支軸74を介して搬入室50の内部側にスイング式に開閉する。このように、ゴムシート72が一体化した状態で開閉することにより、チャンバー10及び搬入室50の内部を洗浄するときに、装置内部の洗浄不良や洗浄液の滞留がなくなり有効である。
【0082】
一方、内側搬入扉71は、図3及び図4に示すように、扉板75とパッキン76と把手77とからなり、扉板75の下部には、通気口78が設けられている。この通気口78は、内側搬入扉71が閉じている状態においても、搬入室50の内部からゴムシート72の通気口(開口部72b及びスリット72c)を介してチャンバー10の内部への空気の流れを維持するために有効である。
【0083】
この内側搬入扉71は、パッキン76によって壁部18に取り付けられ、支軸79を介してチャンバー10の内部側にスイング式に開閉する。作業者は、搬入室50の内部からチャンバー10の内部に器具等を搬入する際に内側搬入扉71を開く。また、内側搬入扉71が開閉することは、チャンバー10及び搬入室50の内部を洗浄するときにも有効である。
【0084】
次に、外側搬入口80に設けられた外側搬入扉81及びゴムシート82について説明する。図5において、パスボックスCの側面の壁部56には、外側搬入口80が開口している。この外側搬入口80には、搬入室50の外部側に外側搬入扉81が設けられ、一方、搬入室50の内部側にゴムシート82が外側搬入扉81と対面する位置に設けられている。本第1実施形態においては、ゴムシート82には、上記ゴムシート72と同じ、厚み3mmのクロロプレンゴム(CR)のシートを使用した。
【0085】
ゴムシート82は、上述の内側搬入口70に設けられたゴムシート72(図3参照)と同様に、4片の略台形のゴムシートからなり、二つの固定枠83a及び83bに挟持された状態でボルト83cとナット83dとによって固定されて一体化している。この固定された状態で、ゴムシート82の中央部には、4つの先端部82aで囲まれた小円形の開口部82bが形成され、この開口部82bから周縁部に向かって4本のスリット82cが形成されている。
【0086】
この小円形の開口部82b及び4本のスリット82cは、本発明における外側開閉部材が有する通気口に該当する。この通気口(開口部82b及びスリット82c)は、器具等を搬入室50の内部に搬入するために外側搬入扉81を開いた際に、外部から搬入室50の内部への空気の流れを発生し、搬入室50を介してチャンバー10の内部で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩することを防止している。
【0087】
ゴムシート82は、上述のゴムシート72(図3参照)と同様に一体化した状態で、壁部56に取り付けられ、支軸84を介して搬入室50の内部側にスイング式に開閉する。このように、ゴムシート82が一体化した状態で開閉することにより、搬入室50の内部を洗浄するときに、装置内部の洗浄不良や洗浄液の滞留がなくなり有効である。
【0088】
一方、外側搬入扉81は、図5(B)に示すように、扉板85とパッキン86と把手87とからなるが、上述の内側搬入扉71(図2及び図3参照)とは異なり、扉板85には通気口が設けられていない。従って、この外側搬入扉81は、パッキン86によって壁部56に気密的に取り付けられ、支軸(図示しない)を介して搬入室50の外部側にスイング式に開閉する。従って、外部から搬入室50の内部に器具等を搬入する際には、外側搬入扉81を開くようにする。
【0089】
ここで、上述のように構成した本第1実施形態に係るアイソレーター装置において、チャンバーの外部からパスボックスを介してチャンバーの内部に、器具を搬入する作業について、図6〜図12を用いて説明する。
【0090】
図6は、本第1実施形態に係るアイソレーター装置(図1参照)の正面を概略的に示した断面図であり、この状態が、アイソレーター装置による通常の作業状態を示している。この図6においては、パスボックスCの内側搬入口70に設けられた内側搬入扉71及び外側搬入口80に設けられた外側搬入扉81は、共に閉ざされており、チャンバー10及び搬入室50は、共に封じ込め状態を維持している。
【0091】
このとき、チャンバー10の内部には、吸気用のフィルターユニット20を介して外部の空気がフィルター21によって濾過されて吸気されている。一方、搬入室50の内部には、吸気用のフィルターユニット60を介して外部の空気がフィルター61によって濾過されて吸気されている。この搬入室50の内部に吸気された空気は、ゴムシート72の通気口(開口部72b及びスリット72c)及び内側搬入扉71の通気口78を介して、チャンバー10の内部に吸気される。これらチャンバー10の内部に吸気された空気は、チャンバー10の内部で取り扱われる人体に有害な化学物質等に曝されている。この空気は、排気用のフィルターユニット30を介してフィルター31a、31bによって濾過されてから、安全な空気として外部環境に排気される。
【0092】
この一連の吸気及び排気される空気の動きは、チャンバー10の上面の壁部に設置された排気用のブロワー40による吸引によって行われている。本第1実施形態においては、図6に示す内側搬入扉71及び外側搬入扉81が共に閉ざされた状態において、チャンバー10の内部の空気圧は、大気圧に対して−30Paであった。このとき、搬入室50の内部の空気圧は、大気圧に対して−25Paであり、高圧の搬入室50の内部から低圧のチャンバー10の内部へ空気が流入する状態を維持している。
【0093】
このチャンバー10の内部の−30Paという空気圧は、排気用のブロワー40による吸引力によってもたらされるものであり、搬入室50の内部の−25Paという空気圧は、ゴムシート72の通気口(開口部72b及びスリット72c)及び内側搬入扉71の通気口78による空気抵抗によってもたらされるものである。
【0094】
このように、アイソレーター装置による通常の作業状態(図6参照)においては、吸気用のフィルターユニット20及びフィルターユニット60による空気抵抗、通気口(開口部72b及びスリット72c)及び通気口78による空気抵抗、並びに、排気用のフィルターユニット30による空気抵抗が、排気用のブロワー40による吸引力とバランスして、チャンバー10の内部の−30Paという空気圧と搬入室50の内部の−25Paという空気圧とを維持している。
【0095】
このように、チャンバー10の内部と搬入室50の内部との空気圧がバランスすることにより、搬入室50の内部の空気は、搬入室50の内部からチャンバー10の内部に流入する。よって、人体に有害な化学物質等は、チャンバー10の内部及び搬入室50の内部に封じ込められた状態を維持することになる。また、外部に向かって開かれる外側搬入扉81を有する搬入室50の内部の汚染度は、チャンバー10の内部の汚染度に比べて低い状態となり、人体に有害な化学物質等が外部環境を汚染することがないようにされている。
【0096】
ここで、アイソレーター装置の封じ込めを維持した状態で、作業者は、チャンバーの内部に搬入する器具Eを外側搬入扉81の外に準備する(図6参照)。
【0097】
次に、作業者は、外側搬入扉81を開く(図7参照)。この状態においても、チャンバー10の内部の空気圧は、排気用のブロワー40による吸引力によって、−30Paを維持している。一方、搬入室50の内部の空気圧は、外側搬入扉81が開かれることによって、−5Paから−10Paの間で変化するが、依然として負圧を維持している。これは、外側搬入口80に設けられたゴムシート82の通気口(開口部82b及びスリット82c)による空気抵抗によってもたらされるものであり、上述の内側搬入口70における搬入室50の内部からチャンバー10の内部への空気の流れが、ゴムシート72の通気口(開口部72b及びスリット72c)及び内側搬入扉71の通気口78を介して、常に維持されているからである。
【0098】
ここで、搬入室50の内部の空気圧が−25Paから−5Pa〜−10Paに変化するのは、空気がゴムシート82の通気口(開口部82b及びスリット82c)を介して外部から直接吸気されることにより、フィルターユニット60を介しての吸気が少なくなるからである。これは、フィルターユニット60による空気抵抗が通気口(開口部82b及びスリット82c)の空気抵抗より大きいことによる。
【0099】
この状態(図7参照)においては、外側搬入扉81が開かれているが、外側搬入口80をゴムシート82が簡易的に閉じており、外側搬入口80が完全に開かれて大気圧に曝されることが避けられる。更に、搬入室50の内部の空気圧が負圧を維持していることにより、通気口(開口部82b及びスリット82c)における空気の流れは、所定の流速で搬入室50に流入する。
【0100】
その他の吸気及び排気される空気の動きは通常の作業状態(図6参照)と同様に行われ、フィルターユニット30を介してフィルター31a、31bによって濾過されて外部環境に排気される。よって、チャンバー10の内部と搬入室50の内部との空気圧及び外部の大気圧がバランスすることにより、外部の空気は搬入室50の内部に流入し、また、搬入室50の内部の空気は、搬入室50の内部からチャンバー10の内部に流入する。よって、人体に有害な化学物質等は、チャンバー10及び搬入室50の内部に封じ込められた状態を維持することになる。
【0101】
次に、作業者は、搬入室50の外部からゴムシート82を器具Eにより押圧して拡開しながら、器具Eを搬入室50の内部に差し入れる。一方、作業者は、搬入室50の正面の壁部に設けられたグローブ52(図示せず)を介して、搬入室50の内部から器具Eを受け取り、搬入室50の内部に搬入する(図8参照)。
【0102】
その他の吸気及び排気の空気の動きは、図7に示した状態と同様であり、チャンバー10の内部の空気圧は、−30Paを維持しており、一方、搬入室50の内部の空気圧は、−5Pa〜−10Paである。よって、この状態(図8参照)においても、チャンバー10の内部と搬入室50の内部との空気圧及び外部の大気圧がバランスすることにより、外部の空気は搬入室50の内部に流入し、また、搬入室50の内部の空気は、搬入室50の内部からチャンバー10の内部に流入する。よって、人体に有害な化学物質等は、チャンバー10及び搬入室50の内部に封じ込められた状態を維持することになる。
【0103】
次に、作業者は、器具Eを搬入室50の内部に搬入した状態で、外側搬入扉81を閉じる(図9参照)。これにより、ゴムシート82を介しての外部からの吸気は停止し、これに代わって、少なくなっていたフィルターユニット60を介しての吸気が多くなる。この状態においては、チャンバー10の内部の空気圧は、排気用のブロワー40による吸引力によって、−30Paを維持し、一方、搬入室50の内部の空気圧は、外側搬入扉71を閉じることによって、−25Paに変化する。
【0104】
この状態は、アイソレーター装置による通常の作業状態(図6参照)と同様の状態である。よって、この状態(図9参照)においても、チャンバー10の内部と搬入室50の内部との空気圧がバランスすることにより、搬入室50の内部の空気は、搬入室50の内部からチャンバー10の内部に流入する。よって、人体に有害な化学物質等は、チャンバー10及び搬入室50の内部に封じ込められた状態を維持することになる。
【0105】
次に、作業者は、内側搬入扉71をチャンバー10の内部側に開く(図10参照)。この状態においても、チャンバー10の内部の空気圧は、排気用のブロワー40による吸引力によって、−30Paを維持している。一方、搬入室50の内部の空気圧は、内側搬入扉71が開かれても変化することはなく、−25Paを維持している。これは、内側搬入扉71には常に通気口78が開口しており、搬入室50の内部からチャンバー10の内部への空気の流れが、内側搬入扉71の開閉によって大きく影響されることがないからである。この内側搬入扉71を開いた状態においても、ゴムシート72によってチャンバー10の内部で取り扱われる有害な化学物質等が搬入室50の内部を汚染することを防止している。
【0106】
この状態は、アイソレーター装置による通常の作業状態(図6参照)と変わることはなく、この状態(図10参照)においても、チャンバー10の内部と搬入室50の内部との空気圧がバランスすることにより、搬入室50の内部の空気は、搬入室50の内部からチャンバー10の内部に流入する。よって、人体に有害な化学物質等は、チャンバー10及び搬入室50の内部に封じ込められた状態を維持することになる。
【0107】
次に、作業者は、搬入室50の正面の壁部に設けられたグローブ52(図示せず)を介して、搬入室50の内部からゴムシート72を器具Eにより押圧して拡開しながら、器具Eをチャンバー10の内部に差し入れる。一方、作業者は、チャンバー10の正面の壁部のガラス窓11に設けられたグローブ13a(図示せず)を介して、チャンバー10の内部から器具Eを受け取り、チャンバー10の内部に搬入する(図11参照)。
【0108】
この状態における吸気及び排気の空気の動きは、図10に示す状態と同様であり、チャンバー10の内部の空気圧は、−30Paを維持しており、一方、搬入室50の内部の空気圧は、−25Paである。よって、この状態(図11参照)においても、チャンバー10の内部と搬入室50の内部との空気圧がバランスすることにより、搬入室50の内部の空気は、搬入室50の内部からチャンバー10の内部に流入する。よって、人体に有害な化学物質等は、チャンバー10及び搬入室50の内部に封じ込められた状態を維持することになる。
【0109】
最後に、作業者は、器具Eをチャンバー10の内部に搬入した状態で、内側搬入扉71を閉じる(図12参照)。この状態は、アイソレーター装置による通常の作業状態(図6参照)と同じであり、チャンバー10の内部の空気圧は、排気用のブロワー40による吸引力によって、−30Paを維持し、一方、搬入室50の内部の空気圧は、−25Paを維持している。
【0110】
この状態(図12参照)においては、チャンバー10の内部と搬入室50の内部との空気圧がバランスすることにより、搬入室50の内部の空気は、搬入室50の内部からチャンバー10の内部に流入する。よって、人体に有害な化学物質等は、チャンバー10及び搬入室50の内部に封じ込められた状態を維持することになり、人体に有害な化学物質等が外部環境を汚染することなく、器具Eをチャンバー10の内部に搬入することができる。
(第2実施形態)
次に、封じ込め室に備えられた本発明に係るパスボックスの第2実施形態を図面に従って説明する。本第2実施形態においては、パスボックスは、その内部で人体に有害な化学物質等を取り扱う封じ込め室120とこの封じ込め室120に隣接する準備室130との境界に設けられている(図14参照)。
【0111】
パスボックスは、図13に示すように、床面上に載置される架台110と、この架台110の上に乗載されるパスボックス本体100とにより構成されている。架台110は、パスボックス本体100を床面上の所定の高さに設置するための4本の支柱111と当該支柱を安定させるために各支柱を連結する連結部材112とからなる。
【0112】
封じ込め室120と準備室130との境界には、この両室を気密的に遮蔽する壁部140があり、この壁部140に開口する開口部141には、パスボックス本体100が両室にそれぞれ突出するように配設され、架台110によって、準備室130の床面上に載置されている(図14参照)。
【0113】
封じ込め室120は、準備室130とは気密的に遮蔽されており、この封じ込め室120の内部では、防護服を着用した作業員121が人体に有害な化学物質等を取り扱う作業を行っている。封じ込め室120の上壁には、フィルターユニットを備えた吸排気装置122が設けられ、この吸排気装置122は、封じ込め室120の内部の空気を吸排気し、封じ込め室120の空気圧が常に準備室130の空気圧よりも負圧となるように制御している。この吸排気装置122には、吸排気する空気を濾過するためのHEPAフィルターからなるフィルター(図示しない)が充填されている。このことにより、封じ込め室120で取り扱われる人体に有害な化学物質等が準備室130や外部環境に漏洩することを防止している。
【0114】
準備室130においては、防護服を着用しない作業員131が封じ込め室120で使用する器具等を封じ込め室120に搬入する準備を行っている。準備室130の上壁には、フィルターユニットを備えた吸排気装置132が設けられ、この吸排気装置132は、準備室130の内部の空気を吸排気し、準備室130の空気圧が常に封じ込め室120の空気圧よりも正圧となるように制御している。なお、図14においては、封じ込め室120と準備室130との出入り口及び作業器具等は図示していない。
【0115】
パスボックス本体100は、図13に示すように、ステンレス製の箱体からなる搬入室150と、吸気用のフィルターユニット160とにより構成されている。
【0116】
搬入室150の上面の壁部には、吸気口153(図示せず)が開口している。この吸気口153には、フィルターユニット160が搬入室150の外部側に垂直方向に接続している。このフィルターユニット160の内部には、準備室130から搬入室150の内部に吸気する空気を濾過するためのHEPAフィルターからなるフィルター161が充填されている。
【0117】
また、搬入室150の左側面の壁部151には、封じ込め室120の内部と搬入室150の内部とを連通させる内側搬入口170が開口している(図13参照)。この内側搬入口170には、封じ込め室120の内部側に開閉可能な内側搬入扉171が設けられている。また、内側搬入口170には、搬入室150の内部側において内側搬入扉171と対面する位置にゴムシート172が内側搬入口170を閉じるように設けられている。
【0118】
内側搬入扉171は、図15に示すように、扉板175とパッキン176と把手177(図示せず)とからなり、扉板175の下部には、通気口178が設けられている。この通気口178は、内側搬入扉171が閉じている状態においても、搬入室150の内部から封じ込め室120の内部への空気の流れを維持するために有効である。
【0119】
この内側搬入扉171は、パッキン176によって搬入室150の左側面の壁部151に取り付けられ、支軸179を介して封じ込め室120の内部側にスイング式に開閉する。従って、封じ込め室120の内部で作業する作業者121は、内側搬入扉171を開くことにより、搬入室150の内部から封じ込め室120の内部に器具等を搬入することができる。
【0120】
ゴムシート172は、本発明における可撓性シートに該当し、このゴムシート172には、厚み3mmのクロロプレンゴム(CR)のシートを使用した。また、本第2実施形態に係るゴムシート172の構造は、上記第1実施形態に係るゴムシート72の構造と同様であり(図2及び図3参照)、4片の略台形のゴムシートが二つの固定枠に挟持された状態で固定されて一体化した状態で、搬入室150の左側面の壁部151に取り付けられ、支軸174(図示せず)を介して搬入室150の内部側にスイング式に開閉する。
【0121】
このゴムシート172に形成された小円形の開口部172b及び4本のスリット172cは、本発明における内側開閉部材が有する通気口に該当する(図15参照)。この通気口は、搬入室150の内部から封じ込め室120の内部への空気の流れを維持して、搬入室150を介して封じ込め室120の内部で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩するのを防止している。
【0122】
一方、搬入室150の右側面の壁部152には、準備室130の内部と搬入室150の内部とを連通させる外側搬入口180が開口している(図13参照)。この外側搬入口180には、準備室130の内部側に開閉可能な外側搬入扉181が気密的に設けられている。また、外側搬入口180には、搬入室150の内部側において外側搬入扉181と対面する位置にゴムシート182が外側搬入口180を閉じるように設けられている。
【0123】
外側搬入扉181は、図16に示すように、扉板185とパッキン186と把手187(図示せず)とからなるが、上述の内側搬入扉171(図15参照)とは異なり、扉板185には通気口が設けられていない。従って、この外側搬入扉181は、パッキン186によって搬入室150の右側面の壁部152に気密的に取り付けられ、支軸189を介して準備室130の内部側にスイング式に開閉する。従って、準備室130の内部で作業する作業者131は、外側搬入扉181を開くことにより、準備室130の内部から搬入室150の内部に器具等を搬入することができる。
【0124】
ゴムシート182は、本発明における可撓性シートに該当し、このゴムシート182には、厚み3mmのクロロプレンゴム(CR)のシートを使用した。また、本第2実施形態に係るゴムシート182の構造は、上記第1実施形態に係るゴムシート82の構造と同様であり(図3及び図5参照)、4片の略台形のゴムシートが二つの固定枠に挟持された状態で固定されて一体化した状態で、搬入室150の右側面の壁部152に取り付けられ、支軸184(図示せず)を介して搬入室150の内部側にスイング式に開閉する。
【0125】
このゴムシート182に形成された小円形の開口部182b及び4本のスリット182cは、本発明における外側開閉部材が有する通気口に該当する(図16参照)。この通気口は、器具等を搬入室150の内部に搬入するために外側搬入扉181を開いた際に、準備室130から搬入室150の内部への空気の流れを発生し、搬入室150を介して封じ込め室120の内部で取り扱われる有害な化学物質等が準備室130に漏洩することを防止している。
【0126】
上述のように構成したパスボックスを備えた封じ込め室において、準備室からパスボックスを介して封じ込め室の内部に器具等を搬入する作業については、上記第1実施形態における搬入作業(図6〜図12参照)と同様に行うことができる。
【0127】
但し、本第2実施形態においては、外側搬入扉181を開放して器具等を準備室130から搬入室150の内部に搬入する作業は、準備室130の作業員131が行い、一方、内側搬入扉171を開放して器具等を搬入室150から封じ込め室120の内部に搬入する作業は、封じ込め室120の作業員121が行うことになる。
【0128】
上述のように構成された各実施形態に係るパスボックス或いは当該パスボックスを備えたアイソレーター装置は、簡単な設備及び構造を有している。また、これらのパスボックス或いはアイソレーター装置は、作業室内の空気圧とパスボックスの搬入室内の空気圧と外部環境の空気圧とのバランスを維持して、常にパスボックスの搬入室の内部から作業室内へ空気が流れるようにすることができる。
【0129】
特に、外部からパスボックスの搬入室を介して作業室内へ作業に必要な器具等を搬入する作業において、外側搬入扉を開いたときは、外部から外側搬入口に設けられたゴムシートの通気口を介して作業室内への空気の流れが発生し、また、内側搬入扉を開いたときにも、搬入室の内部から作業室内への空気の流れを常に維持することができるので、搬入室を介して作業室内で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0130】
従って、本発明によって、極めて毒性の高い化学物質等を作業室に封じ込め、有害な化学物質等の汚染から作業者を保護し、これらの有害な化学物質等が外部環境に漏洩することを防止するために使用される封じ込め室での作業或いは封じ込めアイソレーター装置を使用した作業において、パスボックスを介して、作業中に必要な器具や化学物質を収容した容器等を外部から作業室内に搬入する作業を安全に行うことができる。
【0131】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
1.上記各実施形態においては、可撓性の開閉部材として、4片からなる可撓性シートであって、その中央部に小円形の開口部を有するゴムシートを採用するものであるが、これに限定するものではなく、例えば、図17に示す構造を有する可撓性シート、或いは、その他の構造を有する可撓性の開閉部材を採用するものであってもよい。図17において、(A)は、上記各実施形態に係るゴムシートと同様の構造を有する可撓性シートの正面図である。これに対して、(B)は、中央部の開口部を小円形に代えて四角形とするものである。(C)は、中央部の開口部を有さないものである。(D)は、4片の可撓性シートが部分的な重畳部を形成し、その中央部に四角形の開口部を有するものである。(E)は、1枚の可撓性シートの中央部にX字型の4本のスリットを有するものである。(F)は、1枚の可撓性シートの中央部に8本のスリットを有するものである。ここで、可撓性シートは、4片からなるものではなく、何片からなる可撓性シートであってもよい。また、1枚の可撓性シートが有するスリットの数は、4本又は8本でなくてもよく、何本であってもよい。
2.上記各実施形態においては、内側搬入扉に設けられた通気口の大きさを固定するものであるが、この通気口の開口面積を変化できる構造とすることにより、搬入室の内部から作業室内へ流れる空気の流量を調節できるようにして、作業室内の空気圧を調整するようにしてもよい。
3.上記各実施形態においては、内側搬入扉に設けられた通気口を内側搬入扉の下部に設けるものであるが、これに限定するものではなく、内側搬入扉の中央部など、他のいずれの位置に設けるようにしてもよい。
4.上記各実施形態においては、内側搬入扉及び外側搬入扉としてスイング扉を採用するものであるが、これに限定するものではなく、シャッター式の扉など、どのようなものを採用するようにしてもよい。
5.上記各実施形態においては、作業室と搬入室との間の内側搬入口に、内側搬入扉と可撓性シートとしてのゴムシートとの両方が設けられているが、内側搬入扉を設けずに、可撓性シートのみを設けるようにしてもよい。
6.上記各実施形態においては、作業室と搬入室との間の内側搬入口に、内側搬入扉と可撓性シートとしてのゴムシートとの両方が設けられているが、可撓性シートを設けずに、内側搬入扉のみを設けるようにしてもよい。
7.上記第1実施形態においては、アイソレーター装置のチャンバー内の空気圧は、排気用のブロワーによる吸引力によって−30Paを維持し、一方、パスボックスの搬入室の空気圧は−25Paを維持するものであるが、これらの室内の空気圧は、これに限定されるものではなく、排気用ブロワーの出力等により適宜変更するようにしてもよい。
8.上記第1実施形態に係るアイソレーター装置と他のアイソレーター装置とを連接して、一連の作業を連続して行えるようにしてもよい。
9.上記第1実施形態において、チャンバーには4つのグローブが装着され、また、搬入室には1つのグローブが装着されているが、チャンバー及び搬入室に装着するグローブの数は、これらに限るものではない。また、グローブに代えて、ハーフスーツ等を装着するようにしてもよい。
10.上記第1実施形態においては、チャンバーの周壁の扉については説明していないが、正面のガラス窓、側面又は背面の壁部を開閉可能な扉とすることができる。このように扉を設けることで、封じ込め状態を開放した際の内部の保守点検等の作業を容易に行うことができる。
11.上記第1実施形態においては、吸気用及び排気用の各フィルターユニットの位置は、チャンバーの側壁又は上壁の他の位置に設けてもよい。
12.吸気用又は排気用のフィルターユニットに装着するフィルターの数は、1セット又は2セットに限定するものではなく、3セット以上を使用するものであってもよい。また、1セットと2セットの組合せに限定するものではない。
13.吸気用又は排気用のフィルターユニットに装着するフィルターは、HEPAフィルターでなくてもよく、作業室で使用する化学物質等の有害な物質に合わせて、適宜選定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明に係るパスボックス或いは当該パスボックスを備えたアイソレーター装置は、簡単な設備と構造とを有するのみで、作業室内の空気圧とパスボックス内の空気圧と外部環境の空気圧とのバランスを保つことができ、このことにより、常にパスボックス内から作業室内への空気の流れを維持して、パスボックスを介して作業室内で取り扱われる有害な化学物質等が外部環境に漏洩することを防止することができる。
【0133】
このことにより、医薬品の製造或いは研究開発段階で人体に有害な化学物質を取り扱う作業、医学や生物学の実験において毒性の強い微生物を取り扱う作業、或いは、放射性物質を取り扱う作業など、封じ込め状態を維持する必要のある多くの作業に対して、本発明は有効に利用できるものである。
【符号の説明】
【0134】
A…架台、B…アイソレーター本体、C…パスボックス、D…制御盤、E…器具、10…チャンバー、20、30、60、160…フィルターユニット、40…ブロワー、50、150…搬入室、70、170…内側搬入口、80、180…外側搬入口、71、171…内側搬入扉、81、181…外側搬入扉、72、82、172、182…ゴムシート、100…パスボックス本体、110…パスボックスの架台、120…封じ込め室、130…準備室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の受け渡しをするための外側搬入口及び内側搬入口を周壁に有するパスボックスにおいて、
前記外側搬入口及び前記内側搬入口のそれぞれに各搬入口を閉じるように設けられた可撓性の開閉部材と、
前記外側搬入口に開閉可能に設けられた外側搬入扉とを備えて、
前記周壁の他の部分又は上壁には吸気口が設けられ、
前記可撓性の開閉部材には通気口が設けられてなることを特徴とするパスボックス。
【請求項2】
前記内側搬入口に開閉可能に設けられた内側搬入扉を備えて、
前記内側搬入扉には通気口が設けられてなることを特徴とする請求項1に記載のパスボックス。
【請求項3】
物品の受け渡しをするための外側搬入口及び内側搬入口を周壁に有するパスボックスにおいて、
前記外側搬入口に当該搬入口を閉じるように設けられた可撓性の開閉部材と、
前記外側搬入口に開閉可能に設けられた外側搬入扉と、
前記内側搬入口に開閉可能に設けられた内側搬入扉とを備えて、
前記周壁の他の部分又は上壁には吸気口が設けられ、
前記可撓性の開閉部材には通気口が設けられ、
前記内側搬入扉には通気口が設けられてなることを特徴とするパスボックス。
【請求項4】
前記可撓性の開閉部材は、可撓性シートからなり、
前記可撓性シートは、その中央部から周縁部に向けて切り割りをいれてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のパスボックス。
【請求項5】
外気を吸気する吸気口を有するチャンバーと、
前記チャンバーの内部の空気を排気する排気手段と、
前記チャンバーの周壁に外付けされたパスボックスとを備えたアイソレーター装置において、
前記パスボックスは、請求項1〜4のいずれか1つに記載のパスボックスであって、
前記外側搬入口は、前記パスボックスの内部と外気とを連通させるように設けられ、
前記内側搬入口は、前記チャンバーと前記パスボックスとの外付け部に形成されて前記チャンバーの内部と前記パスボックスの内部とを連通させるように設けられ、
前記パスボックスに設けられた吸気口は、前記パスボックスの内部と外気とを連通させるように設けられてなることを特徴とするアイソレーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−203755(P2010−203755A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152403(P2009−152403)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(599053643)株式会社エアレックス (29)
【Fターム(参考)】