説明

パターン位相差フィルムの作製方法、パターン位相差フィルム作製用金型の作製方法

【課題】パッシブ方式による3次元画像表示に適用するパターン位相差フィルムに関して、パターン位相差フィルムを容易かつ大量に作製することができるようにする。
【解決手段】第1のマスク29及び第2のマスクを順次使用した研磨により、各領域の凹凸形状を金型に作製する。このとき保護膜26を介した研磨により凹凸形状を作製した後、この保護膜26を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブ方式による3次元画像表示に適用するパターン位相差フィルムの製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイは、従来、2次元表示のものが主流であった。しかしながら、近年、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集めており、一部市販もされている。そして今後のフラットパネルディスプレイは3次元表示可能であることが当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
【0003】
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、何らかの方式で右目用の映像と、左目用の映像とを、それぞれ選択的に視聴者の右目及び左目に提供することが必要である。右目用の映像と左目用の映像とを選択的に提供する方法としては、例えば、パッシブ方式が知られている。このパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図11は、液晶表示パネルを使用したパッシブ方式の3次元表示の一例を示す概略図である。この図11の例では、垂直方向に連続する液晶表示パネルの画素を、順次交互に、右目用及び左目用に割り当て、それぞれ右目用及び左目用の画像データで駆動し、これにより右目用の映像と左目用の映像とを同時に表示する。また液晶表示パネルのパネル面にパターン位相差フィルムを配置し、右目用及び左目用の画素からの直線偏光による出射光を、右目用及び左目用で方向の異なる円偏光に変換する。これによりパッシブ方式では、対応する偏光フィルタを備えてなるめがねを装着して、右目用の映像と左目用の映像とをそれぞれ選択的に視聴者の右目及び左目に提供する。
【0004】
このパッシブ方式は、応答速度の低い液晶表示装置でも適用することができ、さらにパターン位相差フィルムと円偏光メガネとを用いた簡易な構成で3次元表示することができる。このようなことから、パッシブ方式の液晶表示装置は今後の表示装置の中心的存在となるものとして非常に注目されている。
【0005】
ところでパッシブ方式に係るパターン位相差フィルムは、画素の割り当てに対応して透過光に位相差を与えるパターン状の位相差層が必要である。このパターン位相差フィルムは、まだ広く研究、開発が行われておらず、標準的な技術としても確立されているものがないのが現状である。
【0006】
このパターン位相差フィルムに関して、特許文献1には、配向規制力を制御した光配向膜をガラス基板上に形成し、この光配向膜により液晶の配列をパターンニングする作製方法が開示されている。しかしながらこの特許文献1に開示の方法は、ガラス基板を使用することが必要であることから、パターン位相差フィルムが高価になり、大面積のものを大量生産し難い問題がある。
【0007】
またパターン位相差フィルムに関して、特許文献2には、レーザーの照射によりロール版の周囲に微細な凹凸形状を形成し、この凹凸形状を転写してパターン状に配向規制力を制御した光配向膜を作製する方法が開示されている。この特許文献2に開示の方法では、レーザーの走査によりロール版の全周に漏れ無くレーザーを照射することが必要である。従ってロール版の作製に時間を要する問題がある。また高価なレーザー加工装置を使用しなければならない問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−49865号公報
【特許文献2】特開2010−152296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、パッシブ方式による3次元画像表示に適用するパターン位相差フィルムに関して、パターン位相差フィルムを容易かつ大量に作製することができるパターン位相差フィルムの作製方法、パターン位相差フィルム作製用金型の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、保護膜を介して凹凸形状を作製した後、この保護膜を除去することにより、凹凸形状を作製する際の切削塵等の管理に関する手間を排除して生産効率を向上する、との着想に至り、本発明を完成するに至った。
【0011】
具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0012】
(1) 転写用金型に形成された凹凸形状を透明シート材に転写して配向膜を形成するパターン位相差フィルムの作製方法において、前記パターン位相差フィルムは、前記配向膜のパターンニングにより、右目用の透過光に、対応する位相差を与える右目用の領域と、左目用の透過光に、対応する位相差を与える左目用の領域とが、それぞれ帯状に順次交互に形成され、前記パターン位相差フィルムの作製方法は、前記転写用金型に係る母材上の、前記右目用の領域又は左目用の領域に対応する第1の領域に前記凹凸形状を作製する第1の凹凸形状作製工程と、前記母材上の、前記左目用の領域又は右目用の領域に対応する第2の領域に、前記凹凸形状を作製する第2の凹凸形状作製工程とを備え、前記第1及び第2の凹凸形状作製工程は、前記母材表面に成膜された、前記母材表面への研磨塵の付着を防止する保護膜の研磨により、前記保護膜を介して前記母材表面に形成される研磨痕により前記凹凸形状を作製することを特徴とするパターン位相差フィルムの作製方法。
【0013】
(2) 前記第1の凹凸形状作製工程は、前記母材の表面に前記第1の領域用の前記保護膜を作製する第1の保護膜作製工程と、前記第1の領域用の保護膜の上層に、前記第1の領域に対応する第1のマスクを作製する第1のマスク作製工程と、前記第1のマスクの上層側より、前記母材の全面を研磨する第1の研磨工程と、前記第1のマスク、前記第1の領域用の保護膜を除去する第1の除去工程とを備え、前記第2の凹凸形状作製工程は、前記母材の表面に前記第2の領域用の前記保護膜を作製する第2の保護膜作製工程と、前記第2の領域用の保護膜の上層に、前記第2の領域に対応する第2のマスクを作製する第2のマスク作製工程と、前記第2のマスクの上層側より、前記母材の全面を研磨する第2の研磨工程と、前記第2のマスク、前記第2の領域用の保護膜を除去する第2の除去工程とを備えることを特徴とする(1)に記載のパターン位相差フィルムの作製方法。
【0014】
(3) 前記第1の凹凸形状作製工程は、前記母材の表面に前記保護膜を作製する保護膜作製工程と、前記保護膜の上層に、前記第1の領域に対応する第1のマスクを作製する第1のマスク作製工程と、前記第1のマスクの上層側より、前記母材の全面を研磨する第1の研磨工程とを備え、前記第2の凹凸形状作製工程は、前記第1のマスクの上層に、前記第2のマスクの材料を成膜した後、前記第1のマスクを除去することにより、前記第2のマスクを作製する第2のマスク作製工程と、前記第2のマスクの上層側より、前記母材の全面を研磨する第2の研磨工程と、前記第2のマスク、前記保護膜を除去する除去工程とを備えることを特徴とする(1)に記載のパターン位相差フィルムの作製方法。
【0015】
(4) 表面に形成された凹凸形状の透明シート材への転写によりパターン位相差フィルムの配向膜を作製するパターン位相差フィルム作製用金型の作製方法であって、前記パターン位相差フィルムは、前記配向膜のパターンニングにより、右目用の透過光に、対応する位相差を与える右目用の領域と、左目用の透過光に、対応する位相差を与える左目用の領域とが、それぞれ帯状に順次交互に形成され、前記パターン位相差フィルム作製用金型の作製方法は、前記パターン位相差フィルム作製用金型の母材上の、前記右目用の領域又は左目用の領域に対応する第1の領域に、前記凹凸形状を作製する第1の凹凸形状作製工程と、前記母材上の、前記左目用の領域又は右目用の領域に対応する第2の領域に、前記凹凸形状を作製する第2の凹凸形状作製工程とを備え、前記第1及び第2の凹凸形状作製工程は、前記母材表面に成膜された、前記母材表面への研磨塵の付着を防止する保護膜の研磨により、前記保護膜を介して前記母材表面に形成される研磨痕により前記凹凸形状を作製することを特徴とするパターン位相差フィルム作製用金型の作製方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保護膜を介した研磨によりこの保護膜の下層表面に研磨痕により凹凸形状を作製することができ、保護膜を介した研磨により研磨塵が母材表面に付着しないようにすることができる。従ってこの研磨塵に係る管理を簡略化して簡易に金型を量産することができ、その結果、パッシブ方式による3次元画像表示に適用するパターン位相差フィルムに関して、容易かつ大量に作製することができる。また研磨塵の金型の付着による品質の劣化も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るパターン位相差フィルムを示す図である。
【図2】図1のパターン位相差フィルムの製造方法の説明に供する図である。
【図3】図2の続きを示す図である。
【図4】図2の金型の製造方法の説明に供する図である。
【図5】図4の続きを示す図である。
【図6】図5の続きを示す図である。
【図7】図6の続きを示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造に使用する金型作製工程を示す図である。
【図9】図8の続きを示す図である。
【図10】図9の続きを示す図である。
【図11】パッシブ方式による3次元画像表示の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るパターン位相差フィルムを示す図である。パターン位相差フィルム1は、透明シート材による基材2に配向膜3、位相差層4が順次作製される。パターン位相差フィルム1は、位相差層4が液晶材料により形成され、この液晶材料の配向を配向膜3の配向規制力によりパターンニングする。なおこの液晶分子の配向を図1では細長い楕円により示す。このパターンニングにより、パターン位相差フィルム1は、液晶表示パネルにおける画素の割り当てに対応して、一定の幅により、右目用の領域Aと、左目用の領域Bとが順次交互に帯状に形成され、右目用及び左目用の画素からの出射光にそれぞれ対応する位相差を与える。
【0020】
パターン位相差フィルム1は、基材2の表面に紫外線硬化樹脂5が塗布された後、この紫外線硬化樹脂5の表面に微細な凹凸形状が形成され、これにより紫外線硬化樹脂を介して基材2の表面に凹凸形状が形成される。パターン位相差フィルム1は、この紫外線硬化樹脂5の表面の凹凸形状により配向膜3が形成される。この凹凸形状は、一方向に延長する多数のすじによるすじ状模様により形成され、各すじの延長方向が、配向膜3近傍における液晶材料の配向方向と一致する一方向に設定される。従ってこの紫外線硬化樹脂5の表面に形成される凹凸形状は、このすじの延長方向が、右目用及び左目用の領域A及びBで、90度異なる方向となるように、かつ各領域の延長方向に対して45度傾くように形成される。なおこの各領域の延長方向に対する傾きにあっては、基材2のリタデーションが無視できない程度に大きい場合には、リタデーション値に応じて、適宜、増減される。
【0021】
図2は、このパターン位相差フィルム1の製造工程を示す図である。この製造工程は、基材2が所定形状により供給され(図2(a))、この基材2の表面に紫外線硬化樹脂5が所定膜厚により塗布される(図2(b))。続いてこの紫外線硬化樹脂5の表面に金型14が押し付けられる(図3(c))。ここで金型14は、配向膜3に係る凹凸形状が表面に形成された転写用金型である。この製造工程は、紫外線硬化樹脂5を金型14により押圧した状態で、紫外線の照射により紫外線硬化樹脂5を硬化し、これにより紫外線硬化樹脂5の表面に配向膜3に係る凹凸形状を作製する。
【0022】
その後、図3に示すように、この製造工程は、金型14から基材2を取り外して配向膜3に液晶材料を塗布した後、紫外線の照射により液晶材料を硬化させ、これにより位相差層4を作製する。パターン位相差フィルム1は、その後、必要に応じて粘着層、反射防止層等が形成された後、所望の大きさに切断して作製される。これによりパターン位相差フィルム1は、平盤による金型14を用いた凹凸形状の転写により、基材2を処理して効率良く作製される。
【0023】
図4は、金型14の作製手順を示す図である。この作製工程では、表面を研磨した母材25に第1の保護膜26が作製される(図4(a))。ここで母材25は、DLC(ダイアモンドライクカーボン)が適用されるものの、金型用の各種金属材料等を広く適用することができる。第1の保護膜26は、母材25の表面に金型14に係る凹凸形状を作製する際に、母材25の表面への研磨塵等の付着を防止する膜であり、この第1の保護膜26を介して研磨して、第1の保護膜26の下層の母材25の表面に、凹凸形状を作製することが可能な材料が適用される。具体的に、第1の保護膜26は、いわゆる軟らかい金属を使用して薄い膜厚により作製され、この実施の形態では、銅を用いて膜厚0.1〔μm〕により作製される。
【0024】
続いてこの工程は、第1のマスクを母材25の表面に作製する。ここでこの第1のマスクは、右目用の領域A及び左目用の領域Bの一方の領域に対応する部位をマスクするマスクであって、凹凸面作製時に使用するマスクである。具体的に、この工程は、全面にレジスト膜27を成膜した後(図4(b))、露光処理、現像処理、洗浄処理により、マスクする部位のみレジスト膜27を除去する(図4(c))。なおレジスト膜27は、ポジ型、ネガ型の何れを適用しても良い。続いてこの工程は、図5に示すように、全面に、第1のマスク材料膜29を成膜する(図5(d))。ここでこのマスク材料膜29は、凹凸形状を作製する際の研磨処理において、下層に凹凸形状が発生しないように、マスクした部位を保護する保護膜として機能する。従ってこの第1のマスク材料膜29は、硬い金属により作製され、この実施形態ではクロム膜をスパッタリングにより成膜して作製される。
【0025】
続いてこの工程は、レジスト膜27を除去し、これにより第1の保護膜26を局所的に露出させる(図5(e))。これらによりこの工程は、第1のマスク材料護膜29をパターンニングして第1のマスクを作製する。続いてこの工程は、表面を研磨し、全面に凹凸形状を形成する(図5(f))。なおこの研磨方法としては、砥石研磨、ペーパー研磨、テープ研磨等、配向膜の作製技術に係る各種の手法を広く適用することができる。ここで母材25は、第1のマスク材料膜29による第1のマスクが設けられていることにより、この第1のマスクでマスクされていない箇所において、第1の保護膜26が選択的に研磨処理される。その結果、この第1の保護膜26が選択的に研磨処理された下層である母材25の表面に、研磨痕が作製されることになる。この工程では、この研磨痕が、パターン位相差フィルムの右目用の領域又は左目用の領域に対応する凹凸形状となるように、研磨処理が実行される。この研磨の際に、研磨塵が発生するものの、この実施形態では、母材25の表面が第1の保護膜26により覆われていることにより、この研磨塵については、母材25の表面への付着が防止される。従ってこの工程では、この研磨塵に関する管理を従来に比して格段的に簡略化することができ、その結果、簡易な工程によりパターン位相差フィルムを量産することができる。また簡易な管理によっても研磨塵の付着を防止できることにより、金型への研磨塵の付着による品質の低下を有効に回避することができる。
【0026】
続いてこの工程は、第1のマスク材料膜29、第1の保護膜26がエッチングにより除去される(図5(g))。ここまでの一連の処理により、この工程は、パターン位相差フィルム1の右目用の領域又は左目用の領域に対応する領域について、母材25の表面に凹凸形状を作製する。この工程では、同様の処理の繰り返しにより、残る領域について、同様に、母材25の表面に凹凸形状を作製し、金型14を作製する。
【0027】
すなわちこの工程は、続いて、全面に第2の保護膜36、レジスト膜37を順次作製する(図6(h))。ここでこの第2の保護膜は、残りの領域に関して、第1の保護膜26と同一の機能を担う保護膜であり、第1の保護膜26と同一に作製される。またレジスト膜37は、レジスト膜27と同一に作製される。続いてこの工程は、レジスト膜37の露光処理、現像処理、洗浄処理により、残りの領域にレジスト膜37を選択的に取り残す(図6(i))。続いてこの工程は、全面に、第2のマスク材料膜39が作製され(図6(j))、図7に示すように、レジスト膜37の除去により、残りの領域について第2の保護膜36を露出させた第2のマスクを作製する(図7(k))。続いてこの工程は、全面を研磨処理し、これにより残りの領域について、母材25の表面に対応する凹凸形状を作製する(図7(l))。而してこの残りの領域についても、この実施形態では、研磨塵の管理を従来に比して格段的に低減して母材25の表面への付着を防止でき、これにより簡易な工程により高品質のパターン位相差フィルムを量産することができる。
【0028】
続いてこの工程は、第2のマスク材料膜39、第2の保護膜36をエッチングにより除去し、これにより金型14が完成する(図7(m))。
【0029】
この実施形態では、保護膜を介した研磨によりこの保護膜の下層表面に研磨痕により凹凸形状を作製することができ、研磨塵が母材表面に付着しないようにすることができる。従ってこの研磨塵に係る管理を簡略化して簡易に金型を量産することができ、その結果、パッシブ方式による3次元画像表示に適用するパターン位相差フィルムに関して、容易かつ大量に作製することができる。また研磨塵の金型への付着による品質の劣化も防止することができる。
【0030】
より具体的に、領域毎に、対応するマスクにより凹凸形状を作製するようにして、領域毎に保護膜を作製することにより、一度、研磨に供した保護膜を、この保護膜に付着した研磨塵等を共に除去して、この保護膜に付着した切削塵が後工程に影響を与えないようにすることができ、これによっても一段と簡易かつ確実に高品質の金型を作製することができる。
【0031】
〔第2実施形態〕
図8〜図10は、本発明の第2実施形態に係る金型の作製工程を示す図である。この第2実施形態では、この図8〜図10の工程により生産された金型を使用する点を除いて、第1実施形態と同一に構成される。
【0032】
ここでこの作製工程では、表面を研磨したDLCによる母材25に、銅により第1の保護膜26(図8(a))、レジスト膜27が順次作製される(図8(b))。また露光処理、現像処理、洗浄処理によりレジスト膜27がパターンニングされた後(図8(c))、全面に、クロムによる第1のマスク材料膜29が成膜される(図9(d))。続いてレジスト膜27の除去により第1のマスクが作製される(図9(e))。この作製工程は、この第1のマスクを使用して全面を研磨し、このマスクに係る領域に凹凸形状を作製する(図9(f))。
【0033】
続いてこの工程は、この第1のマスクを残したまま、全面に第2のマスク材料膜41を成膜する(図10(g))。続いて第1のマスクに係るマスク材料膜29をエッチングにより除去し、これにより第2のマスク材料膜41により第2のマスクを作製する(図10(h)。しかしてこの第2のマスク材料膜41にあっても、後述する凹凸形状を作製する際の保護膜として機能することから、硬い材料が適用される。またこの工程では、第1のマスクに係るマスク材料膜29を選択的に除去して、マスク材料膜41により第2のマスクを作製することから、第1のマスクに係るマスク材料膜29とは異なる材料であって、マスク材料膜29を選択的にエッチング可能な、マスク材料膜29とは異なる材料がマスク材料膜41に適用される。具体的にこの実施形態では、チタンがマスク材料膜41に適用され、スパッタリングにより成膜される。なおこれらによりマスク材料膜41は、マスク材料膜29に適用する材料との関係により種々の金属材料を適用することができる。
【0034】
続いてこの工程は、全面を研磨して残りの領域の凹凸形状を作製した後(図10(i))、第2のマスク材料膜41、保護膜26をエッチングにより除去して金型44が作製される(図10(j))。
【0035】
この実施形態では、第1のマスクを利用して第2のマスクを作製する場合でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
また第1及び第2のマスクを使用した凹凸形状の作製において、保護膜を兼用できることにより、工程を簡略化することができる。
【0037】
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更し、さらに組み合わせることができる。
【0038】
また上述の実施形態では、研磨により微細な凹凸形状を作製する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばラビング処理により凹凸形状を作製する場合にも広く適用することができる。
【0039】
また上述の実施形態では、平板の金型作製に本発明を適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ロール版の作製にも適用することができる。
【0040】
また上述の実施形態では、液晶表示パネルの使用を前提としたパターン位相差フィルムを作製する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネルの使用を前提に、偏光フィルタを一体に設ける場合にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 パターン位相差フィルム
2 基材
3 配向膜
4 位相差層
5 紫外線硬化樹脂
14、44 金型
25 母材
26、36 保護膜
27、37 レジスト膜
29、39、41 マスク材料膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写用金型に形成された凹凸形状を透明シート材に転写して配向膜を形成するパターン位相差フィルムの作製方法において、
前記パターン位相差フィルムは、
前記配向膜のパターンニングにより、右目用の透過光に、対応する位相差を与える右目用の領域と、左目用の透過光に、対応する位相差を与える左目用の領域とが、それぞれ帯状に順次交互に形成され、
前記パターン位相差フィルムの作製方法は、
前記転写用金型に係る母材上の、前記右目用の領域又は左目用の領域に対応する第1の領域に前記凹凸形状を作製する第1の凹凸形状作製工程と、
前記母材上の、前記左目用の領域又は右目用の領域に対応する第2の領域に、前記凹凸形状を作製する第2の凹凸形状作製工程とを備え、
前記第1及び第2の凹凸形状作製工程は、
前記母材表面に成膜された、前記母材表面への研磨塵の付着を防止する保護膜の研磨により、前記保護膜を介して前記母材表面に形成される研磨痕により前記凹凸形状を作製する
ことを特徴とするパターン位相差フィルムの作製方法。
【請求項2】
前記第1の凹凸形状作製工程は、
前記母材の表面に前記第1の領域用の前記保護膜を作製する第1の保護膜作製工程と、
前記第1の領域用の保護膜の上層に、前記第1の領域に対応する第1のマスクを作製する第1のマスク作製工程と、
前記第1のマスクの上層側より、前記母材の全面を研磨する第1の研磨工程と、
前記第1のマスク、前記第1の領域用の保護膜を除去する第1の除去工程とを備え、
前記第2の凹凸形状作製工程は、
前記母材の表面に前記第2の領域用の前記保護膜を作製する第2の保護膜作製工程と、
前記第2の領域用の保護膜の上層に、前記第2の領域に対応する第2のマスクを作製する第2のマスク作製工程と、
前記第2のマスクの上層側より、前記母材の全面を研磨する第2の研磨工程と、
前記第2のマスク、前記第2の領域用の保護膜を除去する第2の除去工程とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のパターン位相差フィルムの作製方法。
【請求項3】
前記第1の凹凸形状作製工程は、
前記母材の表面に前記保護膜を作製する保護膜作製工程と、
前記保護膜の上層に、前記第1の領域に対応する第1のマスクを作製する第1のマスク作製工程と、
前記第1のマスクの上層側より、前記母材の全面を研磨する第1の研磨工程とを備え、
前記第2の凹凸形状作製工程は、
前記第1のマスクの上層に、前記第2のマスクの材料を成膜した後、前記第1のマスクを除去することにより、前記第2のマスクを作製する第2のマスク作製工程と、
前記第2のマスクの上層側より、前記母材の全面を研磨する第2の研磨工程と、
前記第2のマスク、前記保護膜を除去する除去工程とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のパターン位相差フィルムの作製方法。
【請求項4】
表面に形成された凹凸形状の透明シート材への転写によりパターン位相差フィルムの配向膜を作製するパターン位相差フィルム作製用金型の作製方法であって、
前記パターン位相差フィルムは、
前記配向膜のパターンニングにより、右目用の透過光に、対応する位相差を与える右目用の領域と、左目用の透過光に、対応する位相差を与える左目用の領域とが、それぞれ帯状に順次交互に形成され、
前記パターン位相差フィルム作製用金型の作製方法は、
前記パターン位相差フィルム作製用金型の母材上の、前記右目用の領域又は左目用の領域に対応する第1の領域に、前記凹凸形状を作製する第1の凹凸形状作製工程と、
前記母材上の、前記左目用の領域又は右目用の領域に対応する第2の領域に、前記凹凸形状を作製する第2の凹凸形状作製工程とを備え、
前記第1及び第2の凹凸形状作製工程は、
前記母材表面に成膜された、前記母材表面への研磨塵の付着を防止する保護膜の研磨により、前記保護膜を介して前記母材表面に形成される研磨痕により前記凹凸形状を作製する
ことを特徴とするパターン位相差フィルム作製用金型の作製方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−247508(P2012−247508A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117482(P2011−117482)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】