説明

パターン形成方法

【課題】非吸収性の表面を有する媒体上に、パターン剥れが抑制されたパターンを液滴吐出法により形成する。
【解決手段】非吸収性の表面を有する媒体3上に機能性材料からなるパターンを形成するパターン形成方法であって、媒体3上に機能性材料を含有する液体材料52を液滴55として吐出する液滴吐出工程と、吐出された液滴55を乾燥させて機能性材料からなるドット80を形成する乾燥工程とを備え、液滴吐出工程は、乾燥後の隣り合うドット80同士が互いに重なる部分を有しないように液滴55を吐出することを特徴とするパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体(被吐出物)の表面にパターンを形成する方法のひとつとして、インクジェットヘッドのノズルから顔料等の機能性材料を含有する液状体を吐出して、媒体(被吐出物)上の任意の位置に該機能性材料等からなるドットを形成して、複数の該ドットによりパターンを構成させる液滴吐出(インクジェット)法がある。かかる液滴吐出法においては、隣り合うドットの一部が互いに重なり合うように形成する方法が提案されている(特許文献1)。かかる方法であれば、上述の機能性材料等からなるパターン中に媒体の表面が露出することを抑制でき、高品質のパターンを形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−211165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし近年では、ICパッケージのような非吸収性の表面を有する媒体上にパターンを形成する場合においても、上述の液滴吐出法が用いられている。かかる場合においては、隣り合うドットが重なり合うと密着性の問題が生じてくる。具体的には、上述の液状体が乾燥して機能性材料等からなるパターンとなる過程において、乾燥による収縮により該媒体との界面で応力が発生してパターン剥れを生じさせ得るという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるパターン形成方法は、非吸収性の表面を有する媒体上に機能性材料からなるパターンを形成するパターン形成方法であって、上記媒体上に機能性材料を含有する液体材料を液滴として吐出する液滴吐出工程と、吐出された上記液滴を乾燥させて上記機能性材料からなるドットを形成する乾燥工程とを備え、上記液滴吐出工程は、乾燥後の隣り合う上記ドット同士が互いに重なる部分を有しないように上記液滴を吐出することを特徴とする。
【0007】
このようなパターン形成方法であれば、上述のパターン内を全面的に機能性材料で塗りつぶす場合に比べて、ドットすなわち機能性材料からなる層と媒体の表面との間に発生する応力の最大値を低下させられる。したがって、非吸収性の表面を有する媒体に、パターン剥れの発生が低減された上述の機能性材料からなるパターンを形成できる。
【0008】
[適用例2]上述のパターン形成方法であって、上記液滴吐出工程は、複数の上記ドットが平面視で略同一の径を有する略円形のドットとなるように上記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【0009】
このようなパターン形成方法であれば、ドット間の隙間を均一化できる。したがって、全面的に塗りつぶしていないにもかかわらず、濃淡ムラの低減されたパターンを形成できる。
【0010】
[適用例3]上述のパターン形成方法であって、上記液滴吐出工程は、上記ドットの中心が正方形の頂点に位置するように前記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【0011】
このようなパターン形成方法であれば、上述したドット間の隙間をより一層均一化できる。したがって、より一層濃淡ムラの低減されたパターンを形成できる。
【0012】
[適用例4]上述のパターン形成方法であって、上記液滴吐出工程は、前記ドットの中心が正三角形の頂点に位置するように前記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【0013】
このようなパターン形成方法であれば、ドット間の隙間を均一化しつつパターン内おけるドット間の隙間、すなわち機能性材料層が形成されていない領域(領域の面積)を低減できる。したがって、濃淡ムラが低減されており、かつ充分な濃度を有するパターンを形成できる。
【0014】
[適用例5]上述のパターン形成方法であって、上記液滴吐出工程は、複数の上記ドットが2種類以上の径の異なるドットとなるように上記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【0015】
このようなパターン形成方法であれば、ドット間の隙間をより一層低減できるため、パターンの濃度を向上できる。
【0016】
[適用例6]上述のパターン形成方法であって、上記液滴吐出工程は、径の大きなドットの中心が正方形の頂点に位置し、かつ、径の小さなドットの中心が該正方形の中心に位置するように上記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【0017】
このようなパターン形成方法であれば、ドットを規則的に形成しつつドット間の隙間を低減できる。したがって、濃淡ムラを低減させつつパターンの濃度を向上できる。
【0018】
[適用例7]上述のパターン形成方法であって、上記液滴吐出工程は、径の大きなドットの中心が正三角形の頂点に位置し、かつ、径の小さなドットの中心が該正三角形の中心に位置するように上記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【0019】
このようなパターン形成方法であれば、ドットを規則的に形成しつつドット間の隙間をより一層低減できる。したがって、濃淡ムラを低減させつつパターンの濃度をより一層向上できる。
【0020】
[適用例8]本適用例にかかるパターン形成方法は、非吸収性の表面を有する媒体上に、機能性材料を含有する液体材料を液滴として吐出する液滴吐出工程と、該液滴を乾燥させて、該液滴に含有されていた上記機能性材料からなるドットを複数個形成する乾燥工程と、を実施することにより、巨視的には上記機能性材料が略均一に分布するパターンを形成するパターン形成方法であって、上記液滴吐出工程は、複数のドットが互いに一部ずつ重なりあった一群のドットであり、かつ該一群のドット同士は略同一の構成を有する集合ドットを、該集合ドット同士は互いに所定の間隔をもって規則的に形成されるように上記液滴を吐出する工程であることを特徴とする。
【0021】
このようなパターン形成方法であれば、パターン剥がれの危険を一定に抑えつつパターン濃度をより一層向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】被パターン形成物としてのICパッケージが実装されたIC基板の概略図。
【図2】液滴吐出装置の概略を示す模式平面図。
【図3】(a)は吐出部の構成を示す概略斜視図、(b)はヘッドユニットをキャリッジ等と共に示す模式側面図、(c)はヘッドユニットのノズル側を示す模式平面図、(d)は液滴吐出ヘッドの構造を説明するための模式断面図。
【図4】第1の実施形態の製造方法で形成されたパターンのドットの分布を示す図。
【図5】第2の実施形態の製造方法で形成されたパターンのドットの分布を示す図。
【図6】第3の実施形態の製造方法で形成されたパターンのドットの分布を示す図。
【図7】第4の実施形態の製造方法で形成されたパターンのドットの分布を示す図。
【図8】第5の実施形態の製造方法で形成されたパターンのドットの分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態にかかるパターン形成方法について、図面を参照しつつ述べる。上述したように、本発明は機能性材料からなるパターンを非吸収性の表面を有する媒体に形成するものである。そこで、最初に被パターン形成物、すなわち非吸収性の表面を有する媒体の1例としてのICパッケージと、ドットの形成に用いる液滴吐出装置について説明する。そして、各実施形態の製造方法で形成されたパターンのドットの分布について説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際とは異ならしめてある。
【0024】
(第1の実施形態)
(ICパッケージ)
図1は、被パターン形成物としてのICパッケージ3が実装されたIC基板1の概略を示す図である。IC基板1は、ICパッケージ3と該ICパッケージが複数個実装された基板2とを含んでいる。ICパッケージ3は、パターン形成時においては、このように基板2上に複数個が規則的に実装された状態で一括して処理される。基板2は耐熱性が必要であり、ガラスエポキシ基板、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、紙エポキシ基板等が用いられている。そして、ICパッケージ3上には会社名4、機種コード5、製造番号6等の文字等が印字されている。かかる文字等を、本実施形態ではパターンと称している。かかるパターンは文字情報であるため、均一の濃度であること、すなわちパターン内が均一に塗りつぶされていることが好ましい。したがって、いわゆる画像等と異なり濃淡は不要である。
【0025】
ICパッケージ3の外装部は、SiO2フィラーを配合したエポキシ樹脂で形成されている。かかるエポキシ樹脂は非吸収性材料である。したがって、機能性材料としての顔料を含有する液体材料としての機能液52(図3参照)の液滴55(図3参照)を吐出した後に該液滴を乾燥させて、上述の顔料からなる層、すなわちパターンを形成した場合、該顔料はICパッケージ3に浸透せず表面にのみ分布する。
【0026】
(液滴吐出装置)
図2は、本実施形態にかかるパターン形成方法において液滴55を吐出するために用いる液滴吐出装置7の概略を示す模式平面図である。図示すように、液滴吐出装置7は主に供給部8、前処理部9、吐出部10、後処理部11、収納部12、搬送部13及び制御部14から構成されている。液滴吐出装置7は、平面視で供給部8、前処理部9、吐出部10、後処理部11、収納部12、及び制御部14が、搬送部13を中心にして時計回りの順に配置されて構成されている。供給部8、制御部14、収納部12が並ぶ方向をX方向とする。そして、鉛直方向をZ方向とする。X方向と直交する方向をY方向とし、Y方向には吐出部10と搬送部13とが並んで配置されている。
【0027】
供給部8は、複数のIC基板1を収納可能な収納容器を備えている。そして、供給部8は中継場所8aを備え、収納容器から中継場所8aへIC基板1を供給する。前処理部9はICパッケージ3の表面を改質する機能を有する。ここで改質とは、該表面の撥液性を緩和して、若干の親液性を付与することである。ただし、該表面が非吸収性であること自体は変わりない。かかる改質により、該表面に吐出された液滴55は、移動することが抑制されて安定した状態を保つようになる。前処理部9は中継場所9aを備え、処理前のIC基板1を中継場所9aから取り込んで表面の改質を行う。その後、前処理部9は処理後のIC基板1を中継場所9aに移動して、IC基板1を待機させる。
【0028】
吐出部10は、ICパッケージ3に液滴55を吐出する機能を有する。吐出部10は中継場所10aを備え、IC基板1を中継場所10aから移動して液滴55を吐出する。その後、吐出部10はIC基板1を中継場所10aに移動させて、該中継場所で待機させる。
【0029】
後処理部11は、ICパッケージ3の表面に吐出された機能液の液滴55を固化及び硬化して、該機能液に含有されている顔料からなる文字等のパターンを形成する機能を有する。後処理部11は、中継場所11aを備え、固化等の処理前のIC基板1を中継場所11aから取り込んで固化及び硬化処理を行う。その後、後処理部11は処理後のIC基板1を中継場所11aに移動して、IC基板1を待機させる。
【0030】
収納部12は、複数IC基板1を収納可能な収納容器を備えている。そして、収納部12は中継場所12aを備え、中継場所12aから収納容器へIC基板1を収納する。操作者はIC基板1が収納された収納容器を液滴吐出装置7から搬出する。
【0031】
液滴吐出装置7の中央の場所には搬送部13が配置されている。搬送部13は2つの腕部を備えたスカラー型ロボットが用いられている。そして、腕部の先端にはIC基板1を保持する保持部13aが設置されている。中継場所8a,9a,10a,11a,12aは保持部13aの移動範囲13b内に位置している。従って、保持部13aは中継場所8a,9a,10a,11a,12a間でIC基板1を移動させることができる。制御部14は液滴吐出装置7の全体の動作を制御する装置であり、該液滴吐出装置の各部の動作状況を管理する。そして、搬送部13にIC基板1を移動する指示信号を出力する。これにより、IC基板1は各部を順次通過してICパッケージ3の表面にパターンが形成される。
【0032】
(吐出部)
次に、IC基板1に機能液の液滴55を吐出してマークを形成する吐出部10について図3に従って説明する。
図3(a)は、吐出部10の構成を示す概略斜視図である。図示すように、吐出部10は、直方体形状に形成された基台35を備えている。液滴55(図3(d)参照)を吐出するときにヘッドユニット45と被吐出物すなわち被パターン形成物とが相対移動する方向を主走査方向とする。そして、主走査方向と直交する方向を副走査方向とする。本実施形態ではY方向を主走査方向とし、X方向を副走査方向としている。
【0033】
基台35の上面35aには、Y方向に延在する一対の案内レール36がY方向の全幅にわたり凸設されている。その基台35の上側には、一対の案内レール36に対応する図示しない直動機構を備えたステージ37が取付けられている。該直動機構には、リニアモーターあるいはネジ式直動機構等が用いられ、Y方向に沿って所定の速度で往動または復動が可能である。さらに、基台35の上面35aには、案内レール36と平行に主走査位置検出装置38が配置され、主走査位置検出装置38によりステージ37の位置が検出される。
【0034】
ステージ37の上面には載置面39が形成され、その載置面39には図示しない吸引式の基板チャック機構が設けられている。IC基板1は基板チャック機構により載置面39に固定される。
【0035】
ステージ37が−Y方向に位置するときの載置面39の場所が中継場所10aとなっている。この載置面39は保持部13aの動作範囲内に露出するように設置されている。従って、搬送部13は容易にIC基板1を載置面39に載置することができる。IC基板1に液滴55の吐出が行われた後、IC基板1は中継場所10aである載置面39上にて待機する。従って、搬送部13の保持部13aは容易にIC基板1を保持して移動することができる。
【0036】
基台35のX方向の両側には一対の支持台40が立設され、該一対の支持台40にはX方向に延在する案内部材41が形成されている。そして、該案内部材の下側にはX方向に延在する案内レール42がX方向の全幅にわたり形成されている。そして、キャリッジ43は該案内レールに沿って移動可能なように取り付けられている。キャリッジ43は直動機構を備えており、X方向に沿って走査移動が可能である。案内部材41とキャリッジ43との間には副走査位置検出装置44が配置され、キャリッジ43の位置が計測される。キャリッジ43の下側にはヘッドユニット45が設置され、ヘッドユニット45のステージ37側の面には後述する液滴吐出ヘッド47が配置されている。
【0037】
図3(b)は、ヘッドユニット45をキャリッジ43等と共に示す模式側面図である。図3(b)に示すようにキャリッジ43のIC基板1側にはヘッドユニット45と一対の紫外光照射ユニット46が配置されている。ヘッドユニット45のIC基板1側には液滴55を吐出する3個の液滴吐出ヘッド47が配置されている。液滴吐出ヘッド47の個数は特に限定されず、吐出する機能液の種類に合わせて設定できる。
【0038】
紫外光照射ユニット46は、吐出された液滴55、すなわち吐出された機能液を硬化させる紫外光を照射するための発光ユニットと放熱板等から構成されている。発光ユニットには、紫外光を発光するLED(Light Emitting Diode)素子が多数配置されている。キャリッジ43の上方には機能液を収容する収容タンク48が配置されている。液滴吐出ヘッド47と収容タンク48とは図示しないチューブにより接続され、収容タンク48内の機能液がチューブを介して液滴吐出ヘッド47に供給される。
【0039】
機能液は樹脂材料、硬化剤としての光重合開始剤、溶媒または分散媒を主材料とする。かかる主材料に、機能性材料としての顔料等の色素を加えて機能液となる。顔料に代えて染料を用いてもよい。機能液の樹脂材料は樹脂膜を形成する材料である。樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによりポリマーとなる材料であれば特に限定されない。さらに、粘性の小さい樹脂材料が好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。モノマーの形態であればさらに好ましい。光重合開始剤はポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤であり、例えば、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール等を用いることができる。溶媒または分散媒は樹脂材料の粘度を調整するものである。機能液を液滴吐出ヘッド47から吐出し易い粘度にすることにより、液滴吐出ヘッド47は安定して機能液を吐出することができるようになる。
【0040】
図3(c)は、ヘッドユニット45のノズル50側を示す模式平面図である。図3(c)に示すように、ヘッドユニット45には表面にノズルプレート49を備える液滴吐出ヘッド47が配置されている。ノズルプレート49には複数のノズル50が規則的に形成されている。本実施形態においては、1枚のノズルプレート49にはノズル50が1列配置(形成)されているが、後述するように2列以上の配置も可能である。また2枚以上のノズルプレート49を組み合わせて1つの液滴吐出ヘッド47としても良い。紫外光照射ユニット46の下面には、照射口46aが形成されている。かかる照射口46aから、IC基板1に向けて紫外光が照射される。
【0041】
図3(d)は、液滴吐出ヘッド47の構造を説明するための模式断面図である。図3(d)に示すように、液滴吐出ヘッド47はノズルプレート49を備え、ノズルプレート49にはノズル50が形成されている。ノズルプレート49の上側であってノズル50と相対する位置にはノズル50と連通するキャビティ51が形成されている。そして、液滴吐出ヘッド47のキャビティ51には機能液52が供給されている。
【0042】
キャビティ51の上側には上下方向に振動してキャビティ51内の容積を拡大縮小する振動板53が配置されている。振動板53の上側でキャビティ51と対向する場所には振動板53を振動させる圧電素子54が配置されている。圧電素子54が振動板53を振動させると振動板53がキャビティ51内の容積を拡大縮小してキャビティ51を加圧する。その結果、キャビティ51内の圧力が変動し、キャビティ51内に供給された機能液52はノズル50を通って吐出される。液滴吐出ヘッド47が制御部14(図2参照)から圧電素子54を制御駆動するためのノズル駆動信号を受けると、圧電素子54が伸張して、振動板53がキャビティ51内の容積を縮小する。その結果、液滴吐出ヘッド47のノズル50から縮小した容積分の機能液52が液滴55となって、基板2上に実装されたICパッケージ3(図1参照)に向けて吐出される。
【0043】
ICパッケージ3に吐出された液滴55は、紫外光照射ユニット46が照射する紫外光によって、半硬化される。ここで、「半硬化」とは、機能液52の流動性が失われて、液滴55が吐出された箇所から動かないような状態にすることを意味している。上述したように機能液52は光重合開始剤を含有しており、紫外光により、吐出された液滴55は表面から硬化が開始される。その結果、液滴55は流動性が失われて、平面視で略円形の状態を保つ。かかる略円形を保つ半硬化状態の機能液を形成させるまでの工程が液滴吐出工程である。
【0044】
上述の半硬化状態のパターンが形成された段階のICパッケージ3は基板2上に実装された状態で後処理部11に搬送される。そして、該後処理部において再度の紫外光の照射及び/又は加熱処理が実施されて機能液52から溶媒あるいは分散媒が殆んど除去される。その結果、吐出された液滴55は略円形に分布する顔料を含有する樹脂材料となる。かかる、略円形の顔料を含有する硬化された樹脂材料の層がドット80(後述する図4参照)である。そして、かかる半硬化状態の液滴55を硬化させる工程が乾燥工程である。
【0045】
ドットが集合することで、上述の会社名4、機種コード5、製造番号6等の文字(図1参照)、すなわちパターンが形成される。すなわち、本実施形態では、平面的に配置された複数のドットからパターンが形成される。本実施形態のパターンは上述の文字等であるため、ドットは巨視的にはパターン内に略均一に分布するように形成されており、パターン内における濃淡は存在しない。本実施形態の製造方法は、かかるドットを微視的には互いに重なる部分を有しないように形成することで、ICパッケージ3のような非吸収性の表面を有する媒体上に形成されたパターンにおけるパターン剥れ等を低減している。
【0046】
(ドット分布)
図4は、本実施形態にかかる製造方法で形成されたパターンのドットの分布を示す図である。本図及び後述する各実施形態におけるドットの分布を示す図は、パターンの一部を抜き出して拡大したものである。上述したように、本実施形態及び後述する各実施形態においてドットはパターン内において巨視的には略均一に分布しているため、一部を抜き出して示すことでパターン内の全体の分布を示すことができる。
【0047】
図示するように、本実施形態においてドット80は、直交する2方向において互いに均一な間隔を有するように形成されている。すなわち、本実施形態のパターン形成方法は、パターン内に同一寸法の正方形が縦横に隙間なく配列された正方形網が存在すると仮定した場合において、ドット80を各々の該ドットの中心(重心)が正方形の頂点に位置するように形成している。すなわち、本実施形態では各ドット80は、パターン内において互いに重なることなく、かつ大きな空白部を生じさせないように形成されている。
【0048】
上述したように、ドット80は吐出された後の液滴55を乾燥させて形成される。そして、かかる乾燥工程において溶媒等が除去されるため体積が若干縮小する。一方、下地であるICパッケージ3はかかる乾燥工程においても縮小しない。また、上述したように、該ICパッケージの表面は非吸収性である。したがって、ドット80とICパッケージ3の表面との間には応力が発生する。かかる応力はドット80の面積が広いほど大きくなり、一定の範囲を超えるとドット80のICパッケージ3の表面からの分離、すなわちパターン剥れを生じさせる。
【0049】
本実施形態のパターン形成方法であれば、ドット80が互いに重ならないように形成されるため、上述の応力が所定の範囲を超えることがない。したがって、乾燥工程により生じる応力に起因するパターン剥れを抑制できる。また、各ドット80が規則的に形成されるため、パターン内において広い空白部が生じない。したがって、パターン内を塗りつぶすようドット80を形成していないにもかかわらず、極端に広い空白部が生じることがない。すなわち、本実施形態のパターン形成方法であれば、液滴吐出法によって非吸収性の表面を持つ媒体上にパターンを形成する場合において密度の濃いパターンを、パターン剥がれの発生を抑制しつつ形成できる。
【0050】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態にかかる製造方法で形成されたパターンのドットの分布を示す図である。上述の第1の実施形態と同じく、パターンの一部を抜き出して拡大したものを示している。
【0051】
図示するように、本実施形態のパターン形成方法は、ドット80を、該ドットの中心が正三角形の頂点に位置するように形成している。すなわち、本実施形態のパターン形成方法は、パターン内に同一寸法の正三角形が縦横に隙間なく配列された正三角形網が存在すると仮定した場合において、ドット80を、各々の該ドットの中心が正三角形の頂点に位置するように形成している。
【0052】
このようなパターン形成方法であれば、1つのドット80を基準とした場合において隣り合う6つのドット80との間隔を同一にでき、隣り合うドット80間の隙間をより一層均一化できる。したがって、ドット80を、互いに重ならせることなく、かつパターン内に占める空白部の面積がより一層縮小するように形成できる。したがって、非吸収性の表面を持つ媒体上にパターンを形成する場合において、より一層密度の濃いパターンをパターン剥がれの発生を抑制しつつ形成できる。
【0053】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態にかかる製造方法で形成されたパターンを示す図である。上述の第1の実施形態と同じく、パターンの一部を抜き出して拡大したものを示している。
【0054】
本実施形態のパターン方法は、パターンを、大径ドット81と小径ドット82との2種類のドットを規則的に組み合せて形成していることに特徴がある。双方の種類のドット(81,82)は、夫々の種類毎に、中心が上述の正方形網の頂点に位置するように形成されている。そして、一方の種類のドットの中心で構成される正方形の中心に、他方の種類のドットの中心が重なるように形成されている。
【0055】
本実施形態のパターン形成方法は、大径ドット81を規則的に形成したうえで、該大径ドットの隙間に小径ドット82を形成することで、パターン内に占める空白部の面積をより一層縮小している。したがって、非吸収性の表面を持つ媒体、すなわちICパッケージ3上にパターンを形成する場合において、より一層密度の濃いパターンをパターン剥がれの発生を抑制しつつ形成できる。
【0056】
(第4の実施形態)
図7は、第4の実施形態にかかるパターン形成方法で形成されたパターンを示す図である。本実施形態のパターン形成方法は、上述の第3の実施形態と同様に、パターンを大径ドット81と小径ドット82との2種類のドットを規則的に組み合せて形成している。そして、双方の種類のドット(81,82)は、夫々の種類毎に中心が上述の正三角形網の頂点に位置するように形成されている。そして、一方の種類のドットの中心で構成される正三角形の中心に、他方の種類のドットの中心が重なるように形成されている。
【0057】
このようなパターン形成方法であれば、上述の第3の実施形態と同様に、大径ドット81の隙間に小径ドット82を形成することで、パターン内に占める空白部の面積をより一層縮小できる。そして上述の第2の実施形態と同様に、ドット(81,82)を頂点が正三角形網を構成するように形成するため、より一層密度の濃いパターンをパターン剥がれの発生を抑制しつつ形成できる。
【0058】
(第5の実施形態)
図8は、第5の実施形態にかかるパターン形成方法で形成されたパターンのドットの分布を示す図である。本実施形態のパターン形成方法は、上述の第1〜第4の実施形態とは異なり、ドット80を互いに一部ずつ重なり合うように形成している。すなわち本実施形態のパターン形成方法によれば、ドット80は、互いに一部ずつ重なり合うように一方向に数個が連続的に形成されて列状の集合ドット83を構成している。そして、かかる集合ドット83が規則的に並べられて、パターンが構成されている。
【0059】
上述したように、ドット80が非吸収性の表面を持つ媒体上に互いに重なり合って所定の範囲を塗りつぶすように形成されると、該媒体との間の応力が増大してパターン剥がれの危険性が増大する。しかし、重なり合う部分をわずかな範囲に押さえれば、上述の応力の増大は最小限に抑制できる。また、集合ドット83を構成するドット80の個数を制限することでも、上述の応力の増大を抑制できる。一方で、本実施形態の形成方法によれば、少なくとも図示する列方向におけるドット80間の隙間を大きく低減できる。したがって、非吸収性の表面を持つ媒体上にパターンを形成する場合において、パターン剥がれの可能性を一定の範囲内に抑制しつつ、より一層密度の濃いパターンを形成できる。
【0060】
(変形例)
本発明の実施の形態は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えた変形例として実施することも可能である。変形例としてのパターン形成方法を、以下に述べる。
【0061】
(変形例1)
上述の第5の実施形態では、集合ドット83を一列に形成されたドット80で構成している。しかし、集合ドット83を、中心が三角形等の多角形を構成するように配置された複数のドット80で構成することも可能である。かかる構成の集合ドット83であれば、ドット80の重なり合う方向が分散されるため、上述の応力を抑制でき、パターン剥がれの可能性も低減できる。
【0062】
(変形例2)
上述の第1〜第5の実施形態では、ドット80等を媒体上に規則的に形成してパターンを形成している。しかし、ドット80等を、互いに重ならせないということのみを定めて、他には規則性を持たずに、すなわちランダムに形成しても良い。かかる構成でもドット80等と媒体との間に生じる応力を低減できるため、パターン剥がれの危険性を低減できる。
【符号の説明】
【0063】
1…IC基板、2…基板、3…ICパッケージ、4…パターンとしての会社名、5…パターンとしての機種コード、6…パターンとしての製造番号、7…液滴吐出装置、8…供給部、9…前処理部、10…吐出部、11…後処理部、12…収納部、13…搬送部、14…制御部、35…基台、36…案内レール、37…ステージ、38…主走査位置検出装置、39…載置面、40…支持台、41…案内部材、42…案内レール、43…キャリッジ、44…副走査位置検出装置、45…ヘッドユニット、46…紫外光照射ユニット、47…液滴吐出ヘッド、48…収容タンク、49…ノズルプレート、50…ノズル、51…キャビティ、52…機能性材料を含有する液体材料としての機能液、53…振動板、54…圧電素子、55…液滴、80…ドット、81…大径ドット、82…小径ドット、83…集合ドット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非吸収性の表面を有する媒体上に機能性材料からなるパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記媒体上に機能性材料を含有する液体材料を液滴として吐出する液滴吐出工程と、
吐出された前記液滴を乾燥させて前記機能性材料からなるドットを形成する乾燥工程とを備え、
前記液滴吐出工程は、乾燥後の隣り合う前記ドット同士が互いに重なる部分を有しないように前記液滴を吐出することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法であって、
前記液滴吐出工程は、複数の前記ドットが平面視で略同一の径を有する略円形のドットとなるように前記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン形成方法であって、
前記液滴吐出工程は、前記ドットの中心が正方形の頂点に位置するように前記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項2に記載のパターン形成方法であって、
前記液滴吐出工程は、前記ドットの中心が正三角形の頂点に位置するように前記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項2に記載のパターン形成方法であって、
前記液滴吐出工程は、複数の前記ドットが2種類以上の径の異なるドットとなるように前記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載のパターン形成方法であって、
前記液滴吐出工程は、径の大きなドットの中心が正方形の頂点に位置し、かつ、径の小さなドットの中心が該正方形の中心に位置するように前記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項5に記載のパターン形成方法であって、
前記液滴吐出工程は、径の大きなドットの中心が正三角形の頂点に位置し、かつ、径の小さなドットの中心が該正三角形の中心に位置するように前記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
非吸収性の表面を有する媒体上に、機能性材料を含有する液体材料を液滴として吐出する液滴吐出工程と、該液滴を乾燥させて、該液滴に含有されていた前記機能性材料からなるドットを複数個形成する乾燥工程と、を実施することにより、巨視的には前記機能性材料が略均一に分布するパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記液滴吐出工程は、複数のドットが互いに一部ずつ重なりあった一群のドットであり、かつ該一群のドット同士は略同一の構成を有する集合ドットを、該集合ドット同士は互いに所定の間隔をもって規則的に形成されるように前記液滴を吐出する工程であることを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−143323(P2011−143323A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3687(P2010−3687)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】