説明

パチンコ遊技機

【課題】パチンコ遊技の遊技性を損なうことなく、ハズレ確定した図柄生成行程が連続して実行されることによって遊技者のイライラ感が増大してしまうことを抑制し得るパチンコ遊技機を提案する。
【解決手段】ハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数が当選確率の逆数を超えることにより、相互に異なる複数の遅延期間のなかから一の遅延期間を抽出して有効とし、該遅延期間の経過に伴って、当該当選確率に比して当り確定する確率の高い当選確率の当選確率状態に変換するようにしたものであるから、当選確率が順次高くなるという新たな遊技と該当選確率が上昇する設定タイミングをランダムに決めるという新たな遊技とによって、当り確定を求める遊技者の期待感を効果的に刺激でき、遊技者の意欲を高めることができる。また、当選確率によるパチンコ遊技本来の遊技性も安定的に保たれ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、始動口への遊技球流入に伴って始動記憶を発生し、該始動記憶の消化により当り確定した場合に、大入賞口を開閉する特別遊技作動を実行するパチンコ遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機としては、始動口への遊技球流入に伴って発生した始動記憶を消化することによって、特別図柄を変動開始し、その停止図柄態様により当りが確定した場合に、大入賞口を開閉する開閉ラウンドを繰り返す特別遊技作動を実行するようにしたものが広く知られている。特別遊技作動が実行されている状態は、大入賞口への入賞に従って多くの賞球が発生し易いことから、遊技者にとって多大な利益を獲得できる機会である。
【0003】
ここで、一般的には、特別図柄を当り確定する停止図柄態様で停止する確率(以下、当選確率という)が予め設定されており、この当選確率に基づいて当り又はハズレを決定するように処理している。この当選確率は、特別図柄が当り確定する確率でしかなく、例えば1/100や1/300等のように予め設定されている場合に、特別図柄の変動回数(図柄生成行程の実行回数)100回や300回に一回の割合で必ず当りが発生することを保証するものでは無い。そのため、特別図柄の図柄生成行程の実行回数が前記100回や300回を超えても当り確定しない場合もあり得る。しかしながら、遊技者は、当選確率に基づく図柄生成行程の実行回数100回や300回等に対して一回の割合で当り確定するであろうと期待して遊技を行っていることがほとんどであることから、図柄生成行程の実行回数が増大しても当り発生しない場合には、焦りやイライラ感が誘発され易い。このような問題に対して、所定の天井条件が成立すると、当選確率と関係なく強制的に当り確定するようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1)。ここで、図柄生成行程の実行回数が所定回数に達することにより成立する天井条件を設定した構成とすれば、ハズレ確定する図柄生成行程の実行回数が増大しても、前記所定回数に達することによって当り確定が保証されていることから、前記した焦りやイライラ感を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−16703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の従来構成にあっては、天井条件の成立により当選確率と無関係に当り確定することから、ハズレ確定した図柄生成行程を実行した回数が増大した場合に必ず当り確定するものである。これは、遊技者に安心感を与えることができ、上記した焦りやイライラ感を抑制できるという効果を奏するものの、当選確率によって当り又はハズレのいずれかを確定するというパチンコ遊技本来の遊技性を損なうものであると言える。特に、上記した当選確率1/100や1/300に基づいて図柄生成行程の100回実行や300回実行によっても当りとならないことを天井条件として設定し、該天井条件の成立により強制的に当り確定するようにした構成の場合には、上述した当選確率の有する意義さえも無視したものとなっている。さらに、この場合には、ハズレ確定した図柄生成行程が100回や300回実行されれば、必ず当り確定することから、遊技者は図柄生成行程の実行回数を認識していれば容易に当り確定を予測できるため、パチンコ遊技の面白みさえも減退させてしまうという虞もある。
【0006】
本発明は、パチンコ遊技の遊技性を損なうことなく、ハズレ確定した図柄生成行程が連続して実行されることによって遊技者のイライラ感が増大してしまうことを抑制し得るパチンコ遊技機を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特別図柄を変動表示する図柄表示装置と、遊技球の入賞を検知する球検知手段を具備する始動口と、始動口の球検知手段が遊技球を検知することにより、所定数を上限として始動記憶を発生して記憶する始動記憶生成手段と、未消化の始動記憶を順次消化することにより、特別図柄を図柄表示装置で変動して当り又はハズレを確定する停止図柄態様で停止する一連の図柄生成行程を実行し、当り停止図柄態様が確定すると、大入賞口を所定態様で開閉する特別遊技作動を実行する遊技制御手段とを備えたパチンコ遊技機において、遊技制御手段は、相互に当選確率が異なる複数の当選確率状態に順次変更する処理であって、現状の当選確率状態でのハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数が当該当選確率状態の当選確率の逆数を超えると、予め定められた相互に異なる複数の遅延期間のなかから一の遅延期間を抽出して有効とし、該遅延期間の経過に伴って、当該当選確率に比して高い当選確率が定められた当選確率状態に変更する当選確率設定処理を備えたものであることを特徴とするパチンコ遊技機である。
【0008】
ここで、当選確率設定処理としては、図柄生成行程の連続実行回数が当選確率の逆数以上の所定回数に達すると、一の遅延期間を抽出するようにした処理が好適である。当選確率の逆数以上の所定回数としては、該逆数の次の整数である回数や、逆数に基づいて定める回数等を適宜設定可能である。但し、逆数以上の所定回数が、逆数に比して大きくなり過ぎないように、その上限を定めることが好ましく、例えば、逆数の1.1〜1.5倍を上限とすることが好適である。
【0009】
また、上記した当選確率の逆数としては、整数だけでなく、小数点以下を有する数となる場合もあり得る。例えば、当選確率を3/100とすれば、逆数は小数点以下を有する数となる。尚、当選確率を1/mとした場合には、抽選回数(試行回数)m回に対して、当り(事象)が一回起こり得る期待値として表される。すなわち、本発明の当選確率設定処理は、当選確率を1/mとした場合に、その逆数mを連続実行回数が超えることにより、一の遅延期間を抽出する処理を実行するものである。この場合の各当選確率としては、1/m、1/m、1/m・・・(m>m>m>・・・)として設定できる。
【0010】
かかる本発明の構成にあっては、ハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数が当選確率の逆数を超えることによって、次の当選確率状態へ変更するという遊技を、抽出した遅延期間の経過に従って実行するようにしたものであり、該遅延期間の経過によって当選確率が高くなるという従来に無い新たな遊技を提供できる。ここで、遅延期間は抽出されることによってランダムに決まることから、当選確率を高くするタイミング(当選確率状態を変更するタイミング)が不確定な要素となっており、該タイミングを遊技者が予測することは難しい。これにより、連続実行回数の増加に伴って当選確率が順に高くなっていくことはわかっていても、そのタイミングが画一的でなくランダムに変わることから、当選確率の変更に対して遊技者の期待感を効果的に刺激でき、新たな興趣性が発揮され得る。すなわち、本発明の構成によれば、ハズレ確定した図柄生成行程が連続して実行された場合に、当選確率を順次高くするという遊技に、その高くなるタイミングをランダムに決定するという遊技が加わることから、当り確定へ向けた遊技者の意欲を高めることができる。
【0011】
さらに、上述したように、遊技者は、当選確率1/mに対して図柄生成行程のm回実行に一回の割合で当り確定するという期待を持っているが、実際にはm回以上の図柄生成行程が実行されても当り確定せずに、前記遊技者の期待を満足できない場合もあり得る。これに対して、本発明の構成では、当選確率(1/m)の逆数(m回)を図柄生成行程の連続実行回数が超えると、抽出した遅延期間が経過することによって当選確率が上昇することから、前記図柄生成行程のm回実行に対する遊技者の期待が満足されなくとも、当選確率の上昇により当り確定への期待感を刺激できるため、改めて遊技への意欲を高めることができる。以上のことから、ハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数が増大しても当り確定しないことによって生ずる焦りやイライラ感を抑制できる。
【0012】
さらに、当選確率設定処理は、当選確率を表す上記試行回数に相当する連続実行回数の図柄生成行程を実行した後に、次の当選確率状態に変更するように処理するものであるから、当選確率と無関係に当り確定させるという上述した従来構成とは異なる。すなわち、本発明の構成によれば、当選確率により当り確定を期待させる遊技性が安定かつ公平に保たれ、パチンコ遊技本来の遊技性が維持され得る。
【0013】
尚、本構成にあっては、ハズレ確定した図柄生成行程が連続して実行された場合に、その連続した回数を連続実行回数として定めていることから、図柄生成行程で当り確定すれば、前記連続実行回数をリセットする。また、抽出して決定した遅延期間中に実行される図柄生成行程であっても、当り確定することによって遅延期間と前記連続実行回数とをリセットする。そして、図柄生成行程で当り確定した場合には、これに伴って実行する特別遊技作動の満了後に、所定の当選確率の当選確率状態を設定して、連続実行回数の増加に伴って順次当選確率が高くなるように当選確率設定処理を実行するようにした構成が好適である。
【0014】
上述した本発明のパチンコ遊技機にあって、当選確率設定処理の遅延期間は、図柄生成行程の実行回数を計数することにより定められる期間であるとした構成が提案される。
【0015】
かかる構成によれば、当選確率を変更するタイミングが決まる遅延期間が、パチンコ遊技を遊技者が進行させていくことによって経過することとなるため、なかなか当り確定しない場合にあってもパチンコ遊技に対する遊技者の意欲を保ち易い。また、図柄生成行程の実行を求めて遊技球の発射が促進されるため、機台の稼動率を向上できるという作用効果も奏し得る。
【0016】
ここで、図柄生成行程の実行回数により定められる複数の遅延期間としては、各実行回数が、当選確率の逆数よりも少ない回数により定めた構成が好適である。さらには、当選確率の逆数に基づいて遅延期間である実行回数が定められている構成が好適であり、例えば、前記逆数に対する5%、10%、20%等のように遅延期間の実行回数が定められている構成が好ましく用いられる。
【0017】
上述した本発明のパチンコ遊技機にあって、遊技制御手段の当選確率設定処理は、相互に当選確率の異なる複数の当選確率状態をその当選確率に従って序列化し、遅延期間の経過に伴って、現状の当選確率に比して一つ高い当選確率の当選確率状態に変更するようにしたものである構成が提案される。
【0018】
かかる構成によれば、図柄生成行程の連続実行回数の増加に伴って当選確率状態を複数回変更することにより当選確率が段階的に高くなっていくことから、前記連続実行回数が増大しても遊技に対する遊技者の意欲を効果的に高めることができ、かつ該意欲を維持することができる。したがって、遊技者の意欲を高めて焦りやイライラ感を抑制するという、上述した本発明の作用効果が一層向上する。
【0019】
尚、序列化された当選確率状態の当選確率としては、前の当選確率状態に比して次が高くなっていれば良く、さらには、各当選確率毎に何らかの関係が設定されている構成が好適である。例えば、序列化された各当選確率が、一定の割合で高くなるように設定されている構成等が好適に用いられ得る。
【0020】
上述した本発明のパチンコ遊技機にあって、当選確率設定処理により抽出した遅延期間に従って決まる次の当選確率状態に変更する設定タイミングを報知する報知手段を備えている構成が提案される。
【0021】
ここで、報知手段により設定タイミングを報知する報知態様としては、LED等の点灯または点滅表示による報知態様、画像表示器の画面で所定の図柄を表示する報知態様、音声による報知態様等を適用可能である。例えば、遅延期間が図柄生成行程の実行回数を計数するものであるとした構成の場合には、該実行回数をカウントダウンしていくような報知態様とすることもできる。
【0022】
尚、報知手段が、設定タイミングの他に、遅延期間の経過態様や次に変換される当選確率等を報知するようにした構成も好適に用いられる。さらには、ハズレ確定した図柄生成行程が連続した実行回数を報知するようにしても良い。
【0023】
かかる本構成にあっては、抽出した当選確率状態を設定する設定タイミングを報知することによって、高い当選確率に変更される時点を遊技者がはっきりと知り得ることから、高い当選確率への変更に対する遊技者の期待感を一層効果的に刺激できる。特に、上記した遅延期間の経過態様も報知するようにした場合には、遅延期間が徐々に経過して設定タイミングに近づいていく様子を遊技者がはっきりと知得できるため、前記した期待感を刺激する効果がさらに高まる。これにより、ハズレ確定する図柄生成行程の連続実行回数が増大した場合に生じ得る当り確定への焦りやイライラ感を抑制する効果が一層向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上述したように、ハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数が当選確率の逆数を超えることにより、相互に異なる複数の遅延期間のなかから一の遅延期間を抽出して有効とし、該遅延期間の経過に伴って、当該当選確率に比して当り確定する確率の高い当選確率の当選確率状態に変更するようにしたものであるから、連続実行回数の増加に伴って当選確率が順に高くなるという遊技と、該当選確率を上昇するタイミングがランダムに決まるという遊技とによって、従来に無い新たな遊技を提供できる。この新たな遊技によって、当り確定を求める遊技者の期待感を効果的に刺激でき、遊技者の意欲を昂揚できる。さらに、本発明の構成では、ハズレ確定した図柄生成行程が連続することによって当選確率に基づく遊技者の期待が満足されなくとも、遅延期間の経過に従って当選確率が高くなることから、当り確定への期待感を刺激することができる。そして、当選確率により当り確定を期待させるパチンコ遊技本来の遊技性が安定的に保たれ得る。したがって、当選確率に基づいて当り又はハズレを確定するという遊技性を適正に維持しつつ、ハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数が増大した場合に生ずる焦りやイライラ感を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】パチンコ遊技機1の斜視図である。
【図2】遊技盤10の正面図である。
【図3】遊技を制御する制御回路を示すブロック図である。
【図4】入賞検知処理を示すフロー図である。
【図5】特別図柄処理を示すフロー図である。
【図6】始動記憶消化処理を示すフロー図である。
【図7】画像表示器14で、図柄生成行程の連続遅延回数を示すレベルゲージ図柄xと当選確率が上昇するタイミングを示す設定タイミング図柄yとの表示態様の一例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明にかかる実施例のパチンコ遊技機1を添付図面に従って説明する。
パチンコ遊技機1は、図1に示すように、遊技島設備(図示省略)に固定される外枠2と、この外枠2の前面開口部を覆う遊技機本体3とからなる。遊技機本体3は、中央上部の略円形の開口部に遊技盤10(図2参照)が取り付けられた前枠5を備え、この前枠5の一側縁がヒンジ部材4を介して外枠2に開閉可能に枢着されている。さらに前枠5には、遊技盤10を覆うガラス板6が設けられている。また、前枠5の下部には、上受皿7と下受皿8とが上下に列設されており、下受皿8の右側方に発射ハンドル9が突設される。
【0027】
図2は、遊技盤10の正面図である。遊技盤10の前面には、ガイドレール11によって略円形の遊技領域12が区画形成されている。遊技領域12の中央には、画像表示器14等の各種遊技部材を組み込んだセンターケース13が配設される。画像表示器14は、液晶表示器又はCRT表示器等からなり、その表示画面には演出図柄や各種演出画像等が表示される。
【0028】
画像表示器14の周囲に複数のLED(発光ダイオード)が配設されており、この複数のLEDのうち、右上部の六個は特別図柄表示装置15であり、下部右側の二個は普通図柄表示装置16である。また、下部中央の四個のLEDは、特別図柄の始動記憶(以下、特別始動記憶)を記憶保持している記憶個数(未消化数)を報知するための特別始動記憶数表示装置17であり、下部左側の四個は、普通図柄の始動記憶の記憶個数(未消化数)を報知するための普通始動記憶数表示装置18である。
【0029】
特別図柄表示装置15は、その六個のLEDの点灯態様によって特別図柄を表示するものである。後述するように、特別図柄表示装置15は、所定契機によって、各LEDを点滅させることにより夫々の特別図柄を変動させ、その後にいずれかのLEDが点灯した特別図柄の態様(停止図柄態様)で停止する。本実施例では、右端下側のLEDのみが点灯した停止図柄態様がハズレ停止図柄態様、それ以外の点灯による停止図柄態様が当り停止図柄態様として設定されており、特別図柄の当り停止図柄態様で停止表示された場合に、いわゆる「大当り」となって後述の特別遊技作動を実行する。
【0030】
一方、普通図柄表示装置16は、二個のLEDの点灯態様によって普通図柄を表示するものである。後述する普通始動ゲート19を遊技球が通過すると、このLEDが順次点滅することで普通図柄を変動させ、その後に点灯したLEDによって普通図柄の当り又はハズレを確定し、当りの場合に後述の普通電動役物20を拡開作動する。
【0031】
センターケース13の左側には普通始動ゲート19が設けられている。この普通始動ゲート19を遊技球が通過すると、普通始動ゲート19に具備された普通始動スイッチS2(図3参照)が遊技球を検知し、これに伴って上記の普通図柄表示装置16のLEDが点滅開始する。
【0032】
また、センターケース13の下方には、遊技球を流入可能とする始動口21を備えた普通電動役物20が配設されている。この始動口21の内部には、遊技球を検知する特別始動スイッチS1(図3参照)が配設されており、該始動口21への遊技球流入に伴って特別始動スイッチS1が遊技球を検知することによって特別図柄表示装置15のLEDが点滅開始する。この普通電動役物20は左右一対の開閉翼片を備えており、該開閉翼片が、上下方向に起立して一個の遊技球が上方から入賞可能な間隔となる起立位置と、該起立位置から左右両側に逆ハ字形に拡開して遊技球の入賞を容易とする傾動位置とに変換駆動されるようになっている。そして、前記普通図柄(図示せず)が所定の当り図柄態様で確定した場合に、普通電動役物ソレノイド(図示せず)を駆動源として開閉翼片が所定時間(約 0.2秒間)傾動位置に拡開されて、始動口21に遊技球が入り易い状態となる。
【0033】
さらに普通電動役物20の直下かつアウト口30の直上方位置には、大入賞口25を有する特別電動役物26が配設されている。この特別電動役物26は横長矩形状の開閉片27を具備している。開閉片27は内蔵する特別電動役物ソレノイドにより開閉制御され、これによって大入賞口25が開放状態と閉鎖状態に変換される。また、特別電動役物26の内部には入賞した遊技球を検知するカウントスイッチS3(図3参照)が設けられている。
【0034】
また、普通電動役物20の両側には一般入賞装置29が配設されており、遊技球が一般入賞装置29に入賞すると、一般入賞装置29に内蔵された一般入賞スイッチS4(図3参照)が球検知信号を出力し、かかる球検知信号に基づいて所定数の賞球が払い出される。
【0035】
尚、本実施例にあって、上記した普通電動役物20の始動口21が、本発明の始動口であり、普通電動役物20内に設けられた特別始動スイッチS1が、本発明にかかる球検知手段である。また、特別図柄表示装置15が、本発明の図柄表示装置である。
【0036】
次に、本実施例のパチンコ遊技機1の遊技作動を制御する制御回路を、図3を参照して説明する。
マイクロコンピュータを構成する主制御基板60には、パチンコ遊技機1の遊技作動等を制御するための基板回路が設けられている。この主制御基板60は、遊技の統括的な制御を実行するものである。この基板回路上には主制御用中央制御装置CPUが配設される。この主制御用中央制御装置CPUには、演算処理に用いる動作プログラムを格納する記憶装置ROMと、必要なデータを随時読み書きできる記憶装置RAMとが、データを読み書きするアドレスを指定する情報を一方的に伝えるアドレスバス(図示省略)と、データのやり取りを行うデータバス(図示省略)とを介して接続され、主制御基板60の基板回路を構成している。記憶装置ROMには、制御プログラムや、抽出データを参照して特別図柄の当落判定や該特別図柄の変動・停止態様、演出態様等を決定するための各種テーブルが格納されている。一方、記憶装置RAMには、各種球検知スイッチからの球検知信号等が一時的に記憶される記憶エリア、各種のタイマや乱数値、計数値等を構成するレジスタ領域、及びワークエリア等が設けられている。
【0037】
ここで、上記した各乱数テーブルとしては、大当り乱数テーブル、変動態様乱数テーブル等が設定されている。ここで、大当り乱数テーブルは0〜299の範囲の値により構成されており、特別始動スイッチS1がON作動した時点で前記範囲から乱数値が抽出される(図4の入賞検知処理参照)。そして抽出された大当り乱数値は、所定の当選値と比較され、抽出された大当り乱数値が当選値と一致していた場合には「当り(特別図柄の当選)」判定し、不一致であった場合には「ハズレ」判定する(図6の始動記憶消化処理参照)。本実施例にあっては、当り判定する確率(以下、当選確率という)を1/100に設定している。尚、この当選確率を、上記した特別遊技作動の満了から次に当り確定するまでの間で、例えば1/10の高確率とするようにしても良い。これは、確変遊技として公知であり、その詳細については省略する。
【0038】
大当り乱数値の他にも様々な乱数テーブル等が設定されており、特別始動スイッチS1をON作動した時点で、各乱数テーブルから夫々に乱数値が抽出される。そして、上記のように大当り乱数値によって当り又はハズレ判定すると、他の乱数値に従って、特別図柄表示装置15で表示する図柄態様や画像表示器14等で演出するための変動演出態様を選択して決定する。
【0039】
また、上記した主制御基板60の基板回路には、所定のクロックパルスを出力するクロック装置(図示省略)が設けられ、主制御用中央制御装置CPUに接続されている。そして主制御用中央制御装置CPUは、一定間隔のクロックパルスによって時系列的に演算処理を行い、一連の処理作動を順次実行する。また、このクロック装置により出力されたクロックパルスをカウントして、時間を計測するタイマTMも接続されている。
【0040】
ここで主制御用中央制御装置CPU、及び後述する各制御基板62〜68に設置される各中央制御装置CPUは、所定のデータの処理を行う演算ユニット(ALU)を連成した演算装置と、この演算装置に入出力するデータや読み込んだ命令を保管しておくレジスタと、命令を解読するデコーダ等によって構成されている。そして、この主制御用中央制御装置CPUは、所定の形式で生成したデータ又はコマンドを四つの制御基板62,63,64,68へ出力し、これらの制御基板62,63,64,68の中央制御装置CPUがこのデータ等に従って所定の制御を処理実行することとなる。
【0041】
また、この主制御基板60の基板回路には、主制御用中央制御装置CPUが周辺機器とデータ通信を行う入力ポート(図示省略)及び出力ポート(図示省略)が設けられており、この出力ポートを介して主制御基板60からの制御指令信号が、演出制御基板62、図柄制御基板63、払出制御基板64、及び発射制御基板68の各入力ポートに向け、一方向に出力されるように接続されている。また、主制御基板60の入力ポートには、盤面中継基板61を介して、特別始動スイッチS1や普通始動スイッチS2等の各種スイッチやセンサ等が接続されている。そして、主制御基板60が2msごとに、これらに内蔵された各スイッチの遊技球検出状態を調べ、遊技球検出があると、その球検出信号が波形整形回路により波形整形されて主制御用中央制御装置CPUに入力され、その情報を記憶装置RAMに記憶する。また、主制御基板60の出力ポートには、盤面中継基板61を介して普通電動役物ソレノイドや特別電動役物ソレノイド等が接続されており、主制御用中央制御装置CPUが所定の条件を選出した場合に、これらに内蔵されたソレノイドやモータを作動させる。
【0042】
上記の演出制御基板62には、パチンコ遊技機1で実行される演出全般を制御するための基板回路が設けられる。この基板回路は、演出を制御処理する演出制御用中央制御装置CPUに、多岐にわたる演出態様に関する固定データが格納された記憶装置ROMと、必要なデータを読み書きできる記憶装置RAMと、入力ポート及び出力ポートとが接続されて構成されている。演出制御基板62の出力ポートには、画像表示器14を制御する画像制御基板65、音声演出を制御する音源制御基板66、及びLEDランプによる演出を制御する光源制御基板67が接続されている。そして、演出制御基板62は、主制御基板60からの演出コマンドが入力ポートに入力されると、演出制御用中央制御装置CPUにおいて演算処理し、該演出コマンドで指示された演出態様を実行するために、画像制御基板65、音源制御基板66、及び光源制御基板67へ向けて制御コマンドを送信する。
【0043】
上記の画像制御基板65には、画像表示器14の表示態様を制御するための基板回路が設けられる。画像制御基板65は、演出制御基板62から入力されたデータ又はコマンドを演算処理し、所定の表示態様を表示するデータにしたがって表示用ドライバにより画像表示器14で所定態様を表出させる。
【0044】
上記の音源制御基板66には、図示しないスピーカから発生する効果音等を制御するための基板回路が設けられる。この音源制御基板66は、演出制御基板62から入力されたデータ又はコマンドを演算処理し、所定の音データにしたがってサウンドジェネレータによりスピーカで効果音を出力させる。
【0045】
上記の光源制御基板67には、遊技機本体3に配設された演出用ランプを制御するための基板回路が設けられている。この光源制御基板67は、演出制御基板62から入力されたデータ又はコマンドを演算処理し、所定の光データにしたがって光源作動基板により各種の演出用ランプを点灯、点滅させる。
【0046】
上記の図柄制御基板63には、特別図柄表示装置15、普通図柄表示装置16、特別始動記憶数表示装置17、普通始動記憶数表示装置18を制御するための基板回路が設けられている。この基板回路は、図柄制御用中央制御装置CPUに、各装置の動作プログラムや発光パターン等の固定データが格納された記憶装置ROMと、必要なデータを読み書きする記憶装置RAMと、入力ポート及び出力ポートとが接続されて構成されている。この図柄制御基板63は、図柄制御用中央制御装置CPUで、上記の主制御基板60から入力ポートを介して入力されたデータ又はコマンドを演算処理し、所定の光データを、出力ポートを介して、各装置のLEDを発光作動するドライバを配した図柄作動基板に出力し、この図柄作動基板が、各装置のLEDを点灯、点滅させる。
【0047】
上記の払出制御基板64には、遊技球の貸球や賞球等の払出しを制御するための基板回路が設けられている。この払出制御基板64は、主制御基板60から入力されたデータ又はコマンドを演算処理し、所定のデータにしたがって貸球ユニットや賞球ユニット等の各種ソレノイドを作動し、所定の貸球や賞球の払出しを実行する。また、払出制御基板64は、プリペイドカードの読込みや書込みを行うプリペイドカードユニットがCR接続基板を介して接続され、遊技球の残球データ等をやり取りする。
【0048】
上記の発射制御基板68には、球発射装置41を制御するための基板回路が設けられている。この発射制御基板68は、発射ハンドル9からの入力信号に応じた電圧強度で球発射装置41を駆動することにより、発射ハンドル9の回動角度に応じた強さで遊技球を打圧発射する。
【0049】
次に、本実施例のパチンコ遊技機1の作動概要について説明する。なお、本実施例のパチンコ遊技機1の基本的な作動は、既存のパチンコ遊技機と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0050】
遊技者による発射ハンドル9の回動操作に従って球発射装置41により遊技球が発射されると、該遊技球が遊技盤10の遊技領域12を転動流下する。そして、遊技球が上記の普通電動役物20の始動口21へ流入すると、各種テーブルから乱数抽選が行われて特別図柄用の特別始動記憶を発生する(図4の入賞検知処理参照)。そして、特別始動記憶の消化に伴って特別図柄表示装置15でLEDが点滅して特別図柄が変動開始する(図5の特別図柄処理参照)。変動開始から所定時間経過すると、特別図柄が変動停止して停止図柄態様を確定する。このように、特別始動記憶の消化によって特別図柄の変動開始から確定停止までの一連の図柄生成行程を実行する。ここで、特別図柄の停止図柄態様が当り停止図柄態様であると「大当り」となり、後述の特別遊技作動を実行する。
【0051】
上記の特別始動記憶は、記憶装置ROMに格納された特別図柄用の各種テーブルから夫々抽出した複数の乱数値によるデータ集合体で構成されており、該複数の乱数値は始動口21に流入した遊技球を普通電動役物20に内蔵された特別始動スイッチS1が検知することによって夫々抽出される(図4の入賞検知処理参照)。特別始動記憶を構成する各乱数値としては、特別図柄の当落判定や図柄の変動・停止態様、演出態様等を決定するためのものである。この特別始動記憶を消化することにより(図6の始動記憶消化処理参照)、当該始動記憶の大当り乱数値を当落判定し、その判定結果が当りであると、その他の乱数値に従って当り停止図柄態様や図柄生成行程で実行する演出(変動演出態様)の変動演出パターンを選定する処理(図6中の変動演出態様選定処理)を行う。そして、図柄生成行程では、特別図柄表示装置15で特別図柄を変動して停止すると共に、画像表示器14等で変動演出パターンに従って変動演出態様を実行する(図5の特別図柄処理参照)。
【0052】
特別図柄表示装置15で変動した特別図柄が当り停止図柄態様で確定停止すると、図示しない大入賞口処理に従って特別遊技作動を実行する。特別遊技作動は、大入賞口25が開閉する開閉ラウンドを所定回数実行する作動であり、上述したように、特別図柄が当り停止図柄態様で停止して大当りとなることにより開始する。その後、所定回数の開閉ラウンドを満了することにより当該特別遊技作動を満了する。ここで、一回の開閉ラウンドは、大入賞口25の30秒間開放または9個の入賞のいずれか一方を満足することにより満了する。特別遊技作動では、この開閉ラウンドを16回繰り返し実行する。このような特別遊技作動の実行中には、大入賞口25へ100個以上の入賞が期待でき、遊技者は多量の賞球を獲得できる。
【0053】
一方、始動口21への入賞によって生成された特別始動記憶は、当該特別始動記憶の消化により図柄生成行程が開始されるまで、記憶装置RAMに設定された特別始動記憶領域に記憶保持される。具体的には、特別図柄の変動中および特別遊技作動の実行状態で生成された特別始動記憶は直ぐに消化されず、前記特別始動記憶領域に記憶保持される。ここで、特別始動記憶領域には所定個数(4個)の特別始動記憶を保持可能となっている。そして、特別始動記憶領域に記憶保持されている未消化の特別始動記憶の記憶個数を、上記した特別始動記憶数表示装置17の点灯数によって報知する。尚、特別始動記憶領域に保持されている未消化の特別始動記憶を消化する場合には、該特別始動記憶を読み込み且つ特別始動記憶領域から消去し、特別始動記憶数表示装置17のLEDを一個消灯する。
【0054】
尚、上記した主制御基板60、音源制御基板66、光源制御基板67により、本発明にかかる始動記憶発生手段が構成されており、上記した図4の入賞検知処理を実行する。また、主制御基板60、演出制御基板62(画像制御基板65、音源制御基板66、光源制御基板67)により、本発明にかかる遊技制御手段が構成されており、図5の特別図柄処理や特別遊技作動を実行する大入賞口処理(図示せず)等を実行する。
【0055】
次に本発明の要部について説明する。
本実施例のパチンコ遊技機1では、ハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数Kが所定回数(抽出回数)に達すると、後述する遅延回数値を抽出し、ハズレ確定した図柄生成行程の連続遅延回数Jが遅延回数値に達すると、後述する当選有効値Fに1加算して有効とした当選値群により当落判定を行うようにしたものである。かかる処理は、主に図6の始動記憶消化処理により実行する。
【0056】
上記の連続実行回数Kは、ハズレ確定した図柄生成行程が連続して実行された場合に、その連続した回数を累積して計数したものであり、当り確定する図柄生成行程が実行されることによってリセットされる。本実施例では、図6の始動記憶消化処理により、特別始動記憶を消化する毎に連続実行回数Kに1加算して累積し、大当り乱数値を当落判定した結果がハズレであった場合には維持し、当りであった場合にはリセットする。
【0057】
上記した当選有効値Fにより定まる複数の当選値群は、それぞれに複数の当選値が予め定められており、消化した特別始動記憶の大当り乱数値が前記当選値と一致するか否かによって当落判定する処理に用いられる。本実施例にあって、大当り乱数値は、上述したように、0〜299の300個の値により構成される大当り乱数テーブルのなかから抽出されるものであることから、前記各当選値群を夫々構成する当選値は、前記0〜299のいずれかの値として定められている。そして、大当り乱数テーブルの300個と前記当選値の個数とに従って、各当選値群毎に当選確率が定まっている。
【0058】
本実施例にあっては、当選値群として5種類を設定している。各当選値群とそれぞれの当選確率は以下の通りである。
(1)第一当選値群:予め定めた三個の当選値(例えば「7,77,177」)、当選確率1/100(=3/300)
(2)第二当選値群:予め定めた六個の当選値(例えば「7,77,107,177,207,277」)、当選確率1/50(=6/300)
(3)第三当選値群:予め定めた九個の当選値、当選確率1/33.3・・・(=9/300)
(4)第四当選値群:予め定めた十二個の当選値、当選確率1/25(=12/300)
(5)第五当選値群:予め定めた十五個の当選値、当選確率1/20(=15/300)
【0059】
ここで、第一〜第五当選値群は、相互に異なる当選確率となるように、夫々に異なる個数の当選値が設定されている。そして、第一当選値群から第五当選値群までは、昇順に当選確率が高くなるように序列化されており、これに従って各当選値群を構成する当選値の個数が定められている。
【0060】
図6の始動記憶消化処理では、第一〜第五当選値群のいずれか一つを有効として当落判定を行うようにしており、該有効とする処理に上記の当選有効値Fを用いる。この当選有効値Fは、「0」〜「5」までのいずれかの値をとり、上記した連続遅延回数Jが遅延回数値に達する毎に1加算する。そして、当選有効値Fがとる「1」〜「5」値は、第一〜第五当選値群と夫々に対応するように定められている。すなわち、F=1の場合には第一当選値群を、F=2の場合には第二当選値群を、F=3の場合には第三当選値群を、F=4の場合には第四当選値群を、F=5の場合には第五当選値群を有効とするように、各F値と当選値群とが一対一に対応して定められている。さらに、当選有効値Fは、図柄生成行程で当り確定した場合にリセットされて「0」となり、当り確定により実行した特別遊技作動の満了に伴って当選有効値F=1としている。
【0061】
また、上記の連続実行回数Kが当選確率の逆数を超える所定回数(以下、抽出回数という)となると、遅延回数値を抽出する遅延回数値抽選処理(図6参照)を行う。この遅延回数値抽選処理を実施するための抽出回数としては、上記した第一〜第四当選値群の各当選確率の逆数を超える整数によって定められるようにしている。本実施例にあっては、前記各当選確率の逆数の次の整数を前記抽出回数とするようにしている。具体的には、第一〜第五当選値群の各当選確率の逆数が(100/F)となることから、第一当選値群の場合は、当選有効値F=1であることから、逆数が100であり、抽出回数が101回である。第二当選値群の場合は、当選有効値F=2により、逆数が50、抽出回数が51回である。第三当選値群の場合は、当選有効値F=3により、逆数が33.3・・・、抽出回数が34回である。第四当選値群の場合は、当選有効値F=4により、逆数が25、抽出回数が26回である。このような各抽出回数に上記した連続実行回数Kが達したことを判定する処理として、該連続実行回数K>前記逆数(=100/F)を用いている。これにより、上記した当選有効値Fに従って連続実行回数Kと抽出回数とを安定かつ正確に判定することができる。尚、本実施例では、第五当選値群よりも高い当選確率の当選値群を設定していないことから、当選確率値F=5の場合には前記判定する処理を行わないようにしている。
【0062】
一方、上記した遅延回数値は、所定の個数単位毎にまとめられて複数の遅延値群を夫々構成している。本実施例では、遅延値群として四種類設定しており、各遅延値群を構成する遅延回数値は以下の通りであり、各遅延値群のいずれにも、相互に異なる五つの遅延回数値が設定されている。
(1)第一遅延値群:遅延回数値=10,15,20,25,30
(2)第二遅延値群:遅延回数値=8,11,14,17,20
(3)第三遅延値群:遅延回数値=4,7,10,13,16
(4)第四遅延値群:遅延回数値=3,5,7,9,11
【0063】
これら第一〜第四遅延値群のいずれか一つを選定し、選定した遅延値群のなかから一つの遅延回数値を抽出する処理が、上記した図6の始動記憶消化処理の遅延回数値抽選処理により実行される。この遅延回数値抽選処理では、上記した当選有効値Fに従って、第一〜第四遅延値群のいずれか一つを選定する。ここで、当選有効値Fのとる「1」〜「4」と第一〜第四遅延値群とがそれぞれ一対一で対応しており、当選有効値F=1の場合には第一遅延値群を選定し、F=2の場合には第二遅延値群を選定し、F=3の場合には第三遅延値群を選定し、F=4の場合には第四遅延値群を選定する。このように第一〜第四遅延値群のいずれかを選定すると、選定した遅延値群のなかから一の遅延回数値を抽出して決定する。尚、当選有効値F=5の場合には、上述したように、これ以上、当選確率が向上しないことから、遅延回数値抽選処理も実行しない。
【0064】
尚、第一〜第四遅延値群を夫々構成する遅延回数値としては、当選有効値Fに基づいて設定されている。具体的には、遅延値群を選定する当選有効値Fに1加算した次の当選有効値Fにより定まる当選確率の逆数を超えず且つ該逆数の10〜70%の範囲内とするように、各遅延値群を構成する複数の遅延回数値を設定している。
【0065】
図6の始動記憶消化処理では、遅延回数値抽選処理により遅延回数値を決定すると、遅延フラグ=1として、ハズレ確定する図柄生成行程が連続した回数を連続遅延回数Jとして計数開始する。この連続遅延回数Jが前記遅延回数値に達すると、当選有効値Fに1加算して新たな当選有効値Fを定めて有効とする。そして、新たに有効とした当選有効値Fに従って当選値群を有効とし、特別始動記憶の大当り乱数値を当落判定する。これにより当選確率が高くなることから、図柄生成行程で当り確定し易くなる。
【0066】
また、本実施例では、未消化の特別始動記憶を記憶せず且つ遊技球を発射しない状況となると、その経過時間を計測し、該経過時間が所定時間に達すると、当選有効値F、連続実行回数K、遅延回数値、および連続遅延回数Jをリセットするようにしている。これにより、遊技者が交代する等した場合に、前の遊技者が行っていた遊技によって、後の遊技者が利益を受けてしまうことを防止している。ここで、リセットするために設定する経過時間の所定時間としては、5分間や10分間のように適宜設定可能である。
【0067】
また、本実施例では、図7のように、画像表示器14の画面上に上記した連続遅延回数Jをレベルゲージ図柄xにより表示する。このレベルゲージ図柄xは、連続実行回数Kが上記の抽出回数に達することにより遅延回数値抽選処理で遅延回数値を決定すると、画像表示器14の画面上に表出し、連続遅延回数Jが遅延回数値に達するまで、該連続遅延回数Jを表示する。すなわち、図柄生成行程がハズレ確定して満了する毎に、これに伴って増加した連続遅延回数Jを、レベルゲージ図柄xにより表示していく。また、このレベルゲージ図柄xに付随するように、次に当選確率を上昇するタイミング(以下、設定タイミングという)を示す設定タイミング図柄yを表示する。この設定タイミング図柄yは、上記した遅延回数値抽選処理により決定した遅延回数値に相当する位置を、前記レベルゲージ図柄xで指し示すように表示される。設定タイミング図柄yも、レベルゲージ図柄xと同様に、連続実行回数Kが上記の抽出回数に達することにより表出する。このようなレベルゲージ図柄xと設定タイミング図柄yとの表示処理は、図5の特別図柄処理の実行回数表示処理により行う。
【0068】
本実施例の構成にあって、連続実行回数Kが本発明にかかるハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数である。また、連続遅延回数Jを計数することが、本発明にかかる遅延期間を定めるための、ハズレ確定した図柄生成行程の実行回数を計数することであり、連続遅延回数Jにより計数される遅延回数値によって、本発明の遅延期間が定められ、複数の遅延期間が予め設定されている。また、当選有効値Fに従って第一〜第五当選値群のいずれかを有効としていることから、第一〜第五当選値群のいずれかを有効としている状態がそれぞれ本発明にかかる当選確率状態である。すなわち、本実施例にあっては、第一〜第五当選値群のいずれかを有効とする状態として五つの当選確率状態が設定可能となっている。そして、当選有効値Fが「1」〜「5」のいずれかに変換されることによって、前記の当選確率状態を順次変更する。また、前記の当選値群や遅延回数値を抽出して、大当り乱数値を当落判定する始動記憶消化処理(特別図柄処理)により、本発明にかかる当選確率設定処理が構成されている。一方、上記した設定タイミング図柄yを表示する実行回数表示処理が主制御基板60および演出制御基板62により処理実行されるようにしており、主制御基板60、演出制御基板62、および画像表示器14により、本発明にかかる報知手段が構成されている。ここで、設定タイミング図柄yにより、前記した当選確率状態を設定する設定タイミングを報知している。
【0069】
本発明にかかる当選確率設定処理を構成する図6の始動記憶消化処理について、遊技の進行に従って説明する。
図柄生成行程の当り確定により連続実行回数K、当選有効値F、連続遅延回数J、および遅延フラグがリセットされ、特別遊技作動が満了した状態で、未消化の特別始動記憶が記憶されていると、図6の始動記憶消化処理により、特別始動記憶を消化して、連続実行回数Kに1加算して当選有効値F=1により第一当選値群を有効として大当り乱数値を当落判定する。この当落判定の結果がハズレであると、前記連続実行回数Kを維持し、図柄生成行程を実行してハズレ確定する。当選有効値F=1の状態では、第一当選値群により当選確率1/100であることから、抽出回数101回に連続実行回数Kが達するまで、特別始動記憶の消化毎に大当り乱数値を第一当選値群により当落判定する。この当選有効値F=1の状態で、図柄生成行程でハズレ確定が連続して、連続実行回数Kが抽選回数101回に達すると、遅延回数値抽選処理により、当選有効値F=1に従って第一遅延値群を選定して当該遅延値群のなかから一の遅延回数値を抽出して決定する。さらに、遅延フラグ=1、連続遅延回数J=0、連続実行回数K=0とする。尚、当選有効値F=1は維持されていることから、引き続き第一当選値群により当落判定を行う。遅延フラグ=1となると、画像表示器14で連続遅延回数Jを表示するレベルゲージ図柄xと遅延回数値に相当する位置を指し示す設定タイミング図柄yとが表示される(図7参照)。レベルゲージ図柄xは、遅延フラグ=1の状態で連続遅延回数Jの増加に伴って増加表示される。この遅延フラグ=1の状態で、特別始動記憶を消化すると、連続遅延回数Jに1加算し、該連続遅延回数Jが遅延回数値に達したか否かを判定する。連続遅延回数Jが遅延回数値に達していなければ、現状の当選有効値F=1を維持する。この後、特別始動記憶の消化により連続遅延回数Jが増加し、遅延回数値に達すると、当選有効値Fに1加算して新たな当選有効値F=2を設定する。そして、当選有効値F=2に従って第二当選値群を有効とし、当該当選値群により当落判定を行う。連続遅延回数Jが遅延回数値に達したことは、レベルゲージ図柄xの増加表示と設定タイミング図柄yの表示位置とによって遊技者に報知される。これにより、遊技者は、当選確率が高くなったことを容易かつ明確に知得できる。
【0070】
ここで、遅延回数値抽選処理と、当選有効値Fに従って第一〜第五当選値群を順次有効とする処理とについて詳述する。上述したように連続実行回数Kが抽出回数101回に達すると、遅延回数値抽選処理により、当選有効値F=1に従って第一遅延値群を選定し、該第一遅延値群を構成する「10」,「15」,「20」,「25」,「30」のなかから一の遅延回数値を抽出する。例えば、遅延回数値=20を抽出した場合には、特別始動記憶を消化する毎に、連続遅延回数Jを累積加算し、該連続遅延回数Jが20回(遅延回数値)に達するまで、当選有効値F=1により第一当選値群に従って当落判定する。この後、図柄生成行程で当り確定せずに連続遅延回数Jが20回に達すると、当選有効値Fに1加算して新たな当選有効値F=2を有効とし、連続遅延回数J=0および遅延フラグ=0とする。そして、当選有効値F=2により第二当選値群を有効として、該第二当選値群に従って大当り乱数値を当落判定する。これにより、当選確率=1/100から当選確率=1/50に高くなる(次の当選確率状態に変更する)。
【0071】
遅延フラグ=1の状態では、ハズレ確定した図柄生成行程を上記した連続遅延回数Jにより計数すると共に連続実行回数Kによっても計数する。そして、連続実行回数Kは遅延フラグ=0となってもリセットされず、その後も計数されていく。当選有効値F=2の状態で連続実行回数Kが抽出回数51回に達すると、遅延回数値抽出処理により、第二遅延値群を選定し、当該第二遅延値群のなかから一の遅延回数値を抽出する。例えば、遅延回数値=11を抽出した場合には、連続遅延回数Jが11回(遅延回数値)に達するまで、第二当選値群に従って当落判定する。この後、連続遅延回数Jが11回に達すると、当選有効値Fに1加算して新たな当選有効値F=3を有効とし、第三当選値群により当落判定を行う。これにより、当選確率=1/33.3・・・となる。
【0072】
同様に、ハズレ確定した図柄生成行程が連続することにより、遅延回数値抽出処理により遅延回数値を抽出し、これに基づいて当選有効値Fに1加算する処理を順次実行していく。このような処理を、特別始動記憶の消化により当り確定するまで繰返し実行する。尚、当選有効値F=4で連続実行回数Kが抽出回数26回に達し、これに伴って抽出した遅延回数値に連続遅延回数Jが達して当選有効値F=5とした場合には、第五当選値群により当落判定する処理を当り確定するまで行う。すなわち、第五当選値群による当選確率=1/20が上限である。
【0073】
また、遅延フラグ=1の状態で、連続遅延回数Jが遅延回数値に達する前に、大当り乱数値を当り判定すると、連続実行回数K=0、当選有効値F=0、連続遅延回数J=0、および遅延フラグ=0とする。また、本実施例にあって、連続実行回数Kは、抽出回数に達するとリセットされ、遅延フラグ=1の状態では連続遅延回数Jと独立して計数される。そのため、連続遅延回数Jが遅延回数値に達して当選有効値Fに1加算された時点では、すでに連続実行回数Kが遅延回数値分だけ増加していることとなる。
【0074】
このように本実施例のパチンコ遊技機1では、ハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数Kが当選確率の逆数を超えた所定回数(抽出回数)に達すると、遅延回数値を抽出し、該抽出した遅延回数値に連続遅延回数Jが達すると、現状の当選確率よりも高い当選確率の当選値群を有効として当落判定するようにしていることから、当選確率の上昇に対する期待感を遊技者に生じさせると共に、該当選確率を上昇する設定タイミングが不確定なことによる興趣性を付与できることから、従来に無い新たな遊技を提供することができる。ここで、当選確率が高くなる設定タイミングを定める遅延回数値がランダムに抽出されて決定することから、遊技者が設定タイミングを予め予測することが難しく、該タイミングが訪れることに対する遊技者の期待感を効果的に刺激できる。そして、前記設定タイミングが訪れれば、予め序列化された当選確率に順次変更して該当選確率が高くなることから、当選確率の上昇を遊技者は期待しつつ遊技を行うことができ、遊技に対する遊技者の意欲を高め得る。これによって、ハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数の増大によって生ずる遊技者の焦りやイライラ感を抑制することができる。
【0075】
また、本実施例では、遅延回数値抽出処理を行うための抽出回数を、現状の当選確率の逆数を超えた次の整数として設定し、該抽出回数に達することによって画像表示器14でレベルゲージ図柄xと設定タイミング図柄yとを表示して当選確率が上昇する設定タイミングを報知するようにしていることから、当選確率1/mをm回の図柄生成行程で一回の割合で当り確定するものと考えている遊技者の期待が満足されない場合に、上記した遊技者の意欲を効果的に高めることができ、イライラ感の増大を抑制する効果が高い。また、本実施例では、当選確率が順に高くなるように序列化された第一〜第五当選値群を順次有効とするようにしていることから、前記設定タイミングが訪れる毎に、段々と当選確率が高くなる。そのため、ハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数Kが増大しても、遊技者の意欲を高め得る。また、本実施例では、当選確率を高くする設定タイミングを定める遅延回数値を、次に有効とする当選確率により定まる抽出回数よりも少ない回数から抽出するようにしていることから、該遅延回数値が、前記した遊技者の期待するm回を超えない。そのため、前記した遊技者の期待が満足されない場合も該遊技者の意欲を高め得るという本発明の作用効果がより適正に発揮される。
【0076】
さらにまた、本実施例では、上記した第一〜第五当選値群は、夫々に当選確率を1以下に設定したものであり、第五当選値群の当選確率(=1/20)を上限としている。すなわち、特別始動記憶の消化によって当り確定が約束されているものではない。したがって、本実施例によれば、当選確率に従って当り又はハズレの判定を行うというパチンコ遊技本来の遊技性が保たれ得る。
【0077】
一方、上述した本実施例にあっては、夫々に異なる当選確率である第一〜第五当選値群を順次有効として当落判定を行うようにしたものであり、五種類の当選確率を設定しているが、これと異なる複数の当選確率を設定する構成としても良い。例えば、第一、第二当選値群の二種類の当選確率を設定した構成や、第一〜第三当選値群の三種類の当選確率を設定した構成等とすることができる。さらには、六種類や七種類の当選確率を設定した構成としても良い。また、当選確率についても、各当選値群が序列化するように適宜設定できる。
【0078】
また、上述した本実施例にあっては、現状の当選確率(当選有効値F)に基づいて遅延値群を選定し、選定した遅延値群のなかから一の遅延回数値を抽出するようにしたものであり、各遅延値群毎に五種類の遅延回数値を設定しているが、これと異なる複数の遅延値群を設定することもできる。例えば、各遅延値群を構成する遅延回数値を、三種類、七種類などのように、適宜設定可能である。また、複数の遅延値群を選定することなく、遅延回数値を抽出するようにしても良い。例えば、抽出した当選値群によって定まる確率抽出回数の割合として複数設定し、そのなかから一を抽出するようにしても良い。
【0079】
また、上述した本実施例にあっては、現状の当選確率の逆数以上の所定回数を抽出回数として設定した構成であるが、この所定回数は適宜設定可能である。例えば、当選確率の逆数を超えた5回目や10回目等の整数回数を設定しても良い。
【0080】
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、上述の実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 パチンコ遊技機
15 特別図柄表示装置(図柄表示装置)
21 始動口
25 大入賞口
S1 特別始動スイッチ(球検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特別図柄を変動表示する図柄表示装置と、
遊技球の入賞を検知する球検知手段を具備する始動口と、
始動口の球検知手段が遊技球を検知することにより、所定数を上限として始動記憶を発生して記憶する始動記憶生成手段と、
未消化の始動記憶を順次消化することにより、特別図柄を図柄表示装置で変動して当り又はハズレを確定する停止図柄態様で停止する一連の図柄生成行程を実行し、当り停止図柄態様が確定すると、大入賞口を所定態様で開閉する特別遊技作動を実行する遊技制御手段と
を備えたパチンコ遊技機において、
遊技制御手段は、
相互に当選確率が異なる複数の当選確率状態に順次変更する処理であって、
現状の当選確率状態でのハズレ確定した図柄生成行程の連続実行回数が当該当選確率状態の当選確率の逆数を超えると、予め定められた相互に異なる複数の遅延期間のなかから一の遅延期間を抽出して有効とし、該遅延期間の経過に伴って、当該当選確率に比して高い当選確率が定められた当選確率状態に変更する当選確率設定処理を備えたものであることを特徴とするパチンコ遊技機。
【請求項2】
当選確率設定処理の遅延期間は、図柄生成行程の実行回数を計数することにより定められる期間であることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ遊技機。
【請求項3】
遊技制御手段の当選確率設定処理は、
相互に当選確率の異なる複数の当選確率状態をその当選確率に従って序列化し、遅延期間の経過に伴って、現状の当選確率に比して一つ高い当選確率の当選確率状態に変更するようにしたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパチンコ遊技機。
【請求項4】
当選確率設定処理により抽出した遅延期間に従って決まる次の当選確率状態に変更する設定タイミングを報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のパチンコ遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−81567(P2013−81567A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222445(P2011−222445)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(591142909)マルホン工業株式会社 (524)
【Fターム(参考)】