説明

パッケージ用リッド及びその製造方法

【課題】 リッドにろう材を薄く高精度に形成し、パッケージの低背化を達成する。
【解決手段】
電子部品2を収納するパッケージ1において、ケース3の開口部4を気密に封止するリッド5の製造にあたり、出発材料としてリッド5を多数個取りできる大きさの金属板を用いる。金属板の表面にマスキング層を設け、これに多数の環状開口部を形成する。各開口部と対応する部位において、金属板の表面にろう材9をAu‐Sn合金めっきにより析出させる。マスキング層を金属板から剥離した後に、金属板の不要部を切断又はエッチングにより除去し、一枚の金属板から多数のリッドを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収納するパッケージにおいて、ケースの開口部を気密に封止するパッケージ用リッドと、このリッドの製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のリッドをそれ自体に設けたろう材でケースに接着してパッケージを構成する技術が知られている。例えば、図6(a)に示すように、低融点金属泊をプレスで打ち抜いて環状のろう材箔51を成形し、(b)に示すように、ろう材箔51をリフローしてリッド52の表面に溶着し、(c)に示すように、リッド52をろう材箔51によってケース53に接着する技術が知られている。しかし、この従来技術によると、以下のような問題点があった。
【0003】
(1)ろう材箔51を打ち抜くために、比較的厚い金属泊を用いる必要があり、パッケージの低背化が制限される。
(2)ろう材箔51の取扱いが困難で、リッド52に対する位置決め精度が悪く、リッド52の製造能率も低下する。
(3)リフローによってろう材箔51の形状が乱れ、ろう材の一部がケース53の内面に付着する可能性がある。
【0004】
また、従来、図7に示すように、スクリーン印刷によって導電性ペースト55をマスク56の開口部57に充填して、リッド58の表面にろう材層59を塗着する技術も知られている。しかし、この従来技術によると、以下のような問題点があった。
【0005】
(4)ろう材層59の薄形化が制限されるうえ、厚さの調整も困難である。
(5)導電性ペースト55が開口部57から滲出しやすく、ろう材層59の形状精度が悪くなる。
(6)リッド58の加熱封着時に導電性ペースト55中の有機成分がガス化し、そのアウトガスがパッケージ内の電子部品に悪影響を及ぼす。
【0006】
さらに、従来、金属製の蓋体にろう材を圧延により被着したリッドが提案されている。例えば、特許文献1には、複数のNi基金属を積層してなる蓋体にろう材箔を圧延により接合して、ケースに対するろう材の密着性を高める技術が記載されている。特許文献2には、コバールからなる蓋体に銅層とろう材層を圧延によりクラッド化することで、アウトガスの発生を防止する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2000−164746号公報
【特許文献2】特開2003−158211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、ろう材を圧延により被着したリッドは、以下のような問題点があった。
(7)ろう材として冷間圧接性のよくない材料を用いた場合に、蓋体に対するろう材の接合力が不充分になる。
(8)蓋体の全面にろう材を被着するため、ろう材にAu又はAgの貴金属材料を用いた場合に材料コストが高くつくうえ、熱拡散を見込んで接着温度を高める必要があって、ケースや電子部品に熱ダメージを与えるおそれがある。
(9)圧延に大規模な設備が必要で、リッドの製造コストが高くつく。
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、ろう材を薄く高精度に形成できるパッケージ用リッド、及び、このリッドを能率よく安価に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のパッケージ用リッドは、電子部品を収納するパッケージにおいて、ケースの開口部を気密に封止するリッドであって、金属製の蓋体と、蓋体をケースに接着するろう材とを備え、ろう材をめっきにより蓋体の周縁部に環状に形成したことを特徴とする。
【0010】
ここで、パッケージは、内部に収めた電子部品と共に各種の電子デバイスを構成する容器であって、ケースとリッドとから構成される。電子部品としては、例えば、水晶発振子、圧電振動子やSAWフィルタ等の圧電部品、弾性表面波素子、光学素子、ICチップ、トランジスタ、抵抗、コンデンサ、ダイオード等を挙げることができる。パッケージに一種類の電子部品を収納してもよく、複数種の電子部品を収納してもよい。
【0011】
ケースの形状は、特に限定されず、キャビティ形、フラット形、H形等を例示できる。ケースの成形材料としては、例えば、高温焼成セラミック(HTCC)、低温焼成セラミック(LTCC)、液晶ポリマー(LCP)、テフロン(登録商標)、フッ素樹脂、ガラスエポキシ等、各種の絶縁材料を使用できる。また、ケースとして、内層回路を備えた多層構造の容器を使用することも可能である。
【0012】
リッドは、ケースの開口部を気密に封止する部材であって、蓋体とろう材とから構成される。蓋体には、ろう材接合面の平滑度及び放熱効果の高い金属材料が用いられる。例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)等の金属板を好ましく使用できる。蓋体の形状は、パッケージの低背化に有利なフラット形が好ましい。ただし、ケースがフラット形である場合は、周囲にフランジ部を備えた帽子形の蓋体も使用可能である。
【0013】
ろう材は、蓋体をケースの開口部側の端面に気密接合する封止材であって、蓋体の周縁部に電解めっき又は無電解めっきによって環状に形成される。ろう材の形状は、ケースの端面に一致又は相似する環状であれば特に限定されないが、一般的には四角環状である。ろう材を蓋体の表面に直接形成してもよく、NiやAu等からなる下地めっき層を介して形成してもよい。また、ろう材の酸化を防止するために、その表面(ケースと相対する面)にNi、Au等の酸化防止皮膜をめっきしてもよい。
【0014】
ろう材のめっき材料には、例えば、Au、Au‐Sn合金、Ag‐Sn合金、Sn‐Zn合金、半田等の低融点金属材料を使用できる。特に、Au‐Sn合金は、半田と比較し融点が高く、デバイス実装時の熱で溶け出すおそれがなく、パッケージの高気密化に有利である。また、Au‐Sn合金は、Auと比較し安価であり、半田と異なり有害な鉛を含まず、ケースへの接着に際しアウトガスの発生量も少ない。具体的には、融点が217〜320℃で、Snの含有率が10〜90重量%の金すず合金又はすず金合金を好ましく使用できる。
【0015】
本発明によるパッケージ用リッドの製造方法は、電子部品を収納するパッケージにおいて、ケースの開口部を気密に封止するリッドの製造にあたって、該リッドを複数取り可能な大きさの金属板を用い、金属板の表面に複数の環状開口部を備えたマスキング層を設け、環状開口部と対応する部位で金属板の表面にろう材をめっきにより形成し、マスキング層を金属板から剥離した後に、金属板の不要部を除去し、一枚の金属板から複数のリッドを製造することを特徴とする。
【0016】
ここで、金属板としては、一枚から多数のリッドを取得できる大きさのフープ材又はシート材を使用できる。金属板に対するろう材の濡れ性をよくするために、金属板の表面にNiやAu等の下地めっき層を設けてもよい。ろう材のめっき材料には、上述した理由でAu‐Sn合金を用いるのが好ましい。また、金属板の不要部を除去する前に、金属板を加熱して、金属板とろう材に含まれる有機成分をガス化除去する工程を設けるのが好ましい。こうすれば、有機成分をリッドの製造過程でパージし、リッドの封着時におけるアウトガスの発生量をより効果的に抑制することができる。
【0017】
金属板の不要部(目地部)を除去する工程では、例えば、金属板の不要部を切断により除去する方法を採用できる。この方法によれば、プレス機又はレーザー加工機等を用いて、蓋体の周縁をシャープに切断して、外形精度の高いリッドをより安価に製造することができる。また、金属板の不要部をエッチングにより除去する方法を採用してもよい。この場合は、リッドに付着した異物をエッチングと同時に洗浄できるうえ、リッドを比較的小規模の設備で製造できる利点がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明のリッドによれば、ろう材をめっきにより薄く、かつ高精度に形成でき、パッケージの微細化、精密化を容易に達成できるという効果がある。また、本発明の製造方法によれば、一枚の金属板から多数のリッドを能率よく安価に製造できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1,図2に示すように、この実施形態のパッケージ1は、電子部品2を収納するケース3と、ケース3の開口部4を気密に封止するリッド5とから構成されている。ケース3は低温焼成セラミック材料等で平面四角形に成形され、その内側に電子部品2が設置されるキャビティ6が設けられ、周壁の上端面(開口部4側の端面)にNi下地のAuめっきからなるメタライズ層7が被着されている。
【0020】
リッド5は、ケース3より若干小さい面積の蓋体8と、蓋体8をケース3に接着するろう材9とを備えている。蓋体8は、例えば、コバールからなる厚さ30〜200μmのシート材(非連続材)を縦2mm、横2.5mmの大きさに切断して成形され、その表面及び裏面に下地Niめっき層10が設けられている。蓋体8の周縁部表面には、Niめっき層10を介してAuめっき層11が被着されるとともに、Auめっき層11を介してろう材9が電解めっきにより四角環状に形成されている。そして、ろう材9をメタライズ層7に溶着することにより、リッド5がケース3に封着されている。
【0021】
この実施形態では、ろう材9のめっき材料に、融点が217〜320℃で、Snの含有率が10〜90重量%のAu‐Sn合金が用いられている。ろう材9の厚さは1〜50μmであり、Auめっき層11の厚さは0.01μmであり、下地Niめっき層10の厚さは0.1〜5μmであり、メタライズ層7の厚さは0.3〜3.0μmである。また、リッド5をケース3に封着するにあたっては、熱圧着、電子ビーム溶接、シーム溶接等の手段が用いられている。
【0022】
上記のように構成されたパッケージ1において、次に、リッド5の製造方法を図3の(a)〜(f)に示す工程順に説明する。
(a)リッド5を多数個取り可能な大きさの金属板13(コバール製シート材)を出発材料として用い、その表面及び裏面に下地Niめっき層10を形成する。
(b)金属板13の表面及び裏面に露光フィルムからなるマスキング層14を被着し、表面側(ろう材接合面側)のマスキング層14を露光して、四角環状の開口部15を多数形成する。なお、マスキング層14に液状レジストを用いてもよい。
(c)金属板13をめっき槽に搬入し、環状開口部15と対応する部位において、金属板13の表面にAuのフラッシュめっきによりAuめっき層11を形成する。
【0023】
(d)次に、Au‐Sn合金をめっき材料として用い、金属板13の表面にろう材9を電解めっきにより形成する。
(e)続いて、マスキング層14を金属板13から剥離した後に、その金属板13を加熱し、金属板13とろう材9に含まれる有機成分をガス化除去する。これにより、図4に示すように、金属板13の多数の領域(環状開口部15と同数の領域)に四角環状のろう材9が形成される。図4において、16はAuめっき層11及びろう材9のめっき電極を示す。
(f)その後、蓋体8の外形線に沿って金属板13をプレス機で打ち抜き、金属板13の不要部(図4に示す目地部)を切断により除去して、一枚の金属板13から多数のリッド5を製造する。
【0024】
なお、上記(a)〜(e)の工程を経た後に、図5に示すように、金属板13の不要部をエッチングにより除去することもできる。この場合は、金属板13の表面にレジストを被着し、金属板13の不要部を液相又は気相エッチングにより除去し、多数のリッド5を成形し、隣接するリッド5の間に溝18と接続部19とを形成する。そして、各リッド5を接続部19により一括した状態で、金属板13を次の封着工程に搬入し、接続部19を切除して、リッド5を金属板13から切り離し、そのリッド5をケース3に封着する。
【0025】
上記構成のリッド5及びその製造方法によれば、次のような効果が得られる。
(イ)ろう材9をめっきにより形成するので、ケース3とリッド5の接着層を薄くして、パッケージ1の低背化を達成できる。
(ロ)パッケージ1の設置条件、蓋体8の厚さ又は面積等に応じ、接着層の厚さを容易に調整できる。
(ハ)ろう材9のめっき材料をマスキング層14の環状開口部15に析出させるので、金属板13の正確な位置にろう材9を形成できる。
(ニ)また、低融点合金箔やスクリーン印刷による場合と比較し、ろう材9の形状精度が格段に向上する。
【0026】
(ホ)めっき材料にAu‐Sn合金を用いたので、導電性ペーストと比較し、リッド封着時におけるアウトガスの発生量が大幅に減少する。
(ヘ)ろう材9を環状に形成したので、Au‐Sn合金の使用量を節減し、材料コストを抑えることができる。
(ト)また、リッド封着時にろう材9を効率よく加熱して、電子部品2やケース3に与える熱ダメージを軽減できる。
(チ)圧延による場合と比較し、蓋体8に対するろう材9の接合力が強化される。
(リ)圧延による場合と比較し、リッド5を小規模な設備で安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示すパッケージの分解斜視図である。
【図2】パッケージの組立断面図である。
【図3】リッドの製造工程を示す断面図である。
【図4】多数のろう材がめっきにより形成された金属板を示す斜視図である。
【図5】不要部がエッチングにより除去された金属板を示す斜視図である。
【図6】従来技術を説明する工程図である。
【図7】別の従来技術を説明する工程図である。
【符号の説明】
【0028】
1 パッケージ
2 電子部品
3 ケース
4 開口部
5 リッド
6 キャビティ
7 メタライズ層
8 蓋体
9 ろう材
10 下地Niめっき層
11 Auめっき層
13 金属板
14 マスキング層
15 環状開口部
16 めっき電極
18 溝
19 接続部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収納するパッケージにおいて、ケースの開口部を気密に封止するリッドであって、金属製の蓋体と、蓋体をケースに接着するろう材とを備え、ろう材をめっきにより蓋体の周縁部に環状に形成したことを特徴とするパッケージ用リッド。
【請求項2】
電子部品を収納するパッケージにおいて、ケースの開口部を気密に封止するリッドの製造方法であって、該リッドを複数取り可能な大きさの金属板を用い、金属板の表面に複数の環状開口部を備えたマスキング層を設け、環状開口部と対応する部位で金属板の表面にろう材をめっきにより形成し、マスキング層を金属板から剥離した後に、金属板の不要部を除去し、一枚の金属板から複数のリッドを製造することを特徴とするパッケージ用リッドの製造方法。
【請求項3】
前記ろう材のめっき材料にAu‐Sn合金を用いた請求項2記載のパッケージ用リッドの製造方法。
【請求項4】
前記金属板の不要部を切断により除去する請求項2又は3記載のパッケージ用リッドの製造方法。
【請求項5】
前記金属板の不要部をエッチングにより除去する請求項2又は3記載のパッケージ用リッドの製造方法。
【請求項6】
前記金属板の不要部を除去する前に、金属板を加熱して、金属板とろう材に含まれる有機成分をガス化除去する請求項2〜5のいずれか一項に記載のパッケージ用リッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−156513(P2006−156513A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341490(P2004−341490)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(503207913)株式会社SOHKi (13)