説明

パネルおよびその製造方法

【課題】 木片と繊維強化樹脂とからなるパネルであって、木片と繊維強化樹脂との間に隙間が生じたり、木片がずれて段差が生じたりすることがなく、かつ剛性が高いパネルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 間隔をあけて配列された複数の木片11を、強化繊維を含み、かつ硬化性樹脂を硬化させた接着部12で一体化してなるパネル10;および、複数の木片11を間隔をあけて配列する工程と、木片11間の間隙に強化繊維および硬化性樹脂を存在させた状態で、硬化性樹脂を硬化させる工程とを有するパネル10の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂製の格子材(グレーチング)は、採光性、通風性等が要求される床材、壁面外装材、天井ルーバー、フェンス等に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
また、該格子材のマス目に木片を埋め込んだ、意匠性を重視したパネル(床材)が知られている。
【0003】
ところで、繊維強化樹脂製の格子材は、精度よく成形することが難しく、格子材のマス目の大きさおよび形状に若干のバラツキが生じる。そのため、マス目に木片を埋め込んだパネルを製造する際には、マス目よりひとまわり小さい木片を用いなければ、マス目に木片を埋め込むことができない。その結果、格子材と木片との間に隙間ができてしまい、水、ゴミ、埃等が溜まりやすい問題がある。
【0004】
また、マス目よりひとまわり小さい木片を格子材に接着剤で接着しているだけであり、接着強度にばらつきがある。そのため、接着強度が低い部分の木片にヒールのかかとが強く当たった場合等に、木片が下にずれて段差が生じる、さらには、木片が下に抜け落ちる問題がある。
【0005】
また、パネルの薄肉、軽量化のためには、パネルの厚さを薄くする必要がある。しかし、木片は格子材に接着剤で接着しているだけであるため、パネルの剛性の向上にはほとんど寄与していない。そのため、パネルが床材としての剛性を有するためには、パネルにある程度の厚さが必要とされる。
【特許文献1】特開2004−316413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、木片と繊維強化樹脂とからなるパネルであって、木片と繊維強化樹脂との間に隙間が生じたり、木片がずれて段差が生じたりすることがなく、かつ剛性が高いパネルおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパネルは、間隔をあけて配列された複数の木片を、強化繊維を含み、かつ硬化性樹脂を硬化させた接着部で一体化してなるものであることを特徴とする。
パネルの表面において、木片の露出面と接着部の露出面とが同一平面とされていることが好ましい。
本発明のパネルの製造方法は、複数の木片を間隔をあけて配列する工程と、木片間の間隙に強化繊維および硬化性樹脂を存在させた状態で、硬化性樹脂を硬化させる工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパネルは、木片と繊維強化樹脂との間に隙間が生じたり、木片がずれて段差が生じたりすることがなく、かつ剛性が高い。
本発明のパネルの製造方法によれば、木片と繊維強化樹脂との間に隙間が生じたり、木片がずれて段差が生じたりすることがなく、かつ剛性が高いパネルを容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<パネル>
図1は、本発明のパネルの一例を示す斜視図である。該パネル10は、縦方向および横方向に間隔をあけて配列された複数の直方体の木片11を、強化繊維を含み、かつ硬化性樹脂を硬化させた接着部12および周縁部13で一体化してなるものであり、該パネル10の表面において、木片11の露出面と接着部12の露出面と周縁部13とは同一平面とされている。
【0010】
(木片)
木片11は、パネル10と同じ厚さを有する直方体の木片である。木片11の大きさは、パネル10の大きさ、デザイン等に応じて適宜決定すればよい。
木片11としては、ムクの木材から切り出した木片;該木片に樹脂を含浸させた樹脂含浸木材;木材のチップを樹脂、ガラス等のバインダーで固めたブロック等が挙げられる。
【0011】
(接着部)
接着部12は、木片11間の間隙に、強化繊維および硬化性樹脂を存在させた状態で、硬化性樹脂を硬化させた繊維強化樹脂からなるものである。
接着部12の幅(すなわち木片11間の間隔)は、パネル10に要求される剛性、デザイン等に応じて適宜決定すればよい。接着部12の厚さ(高さ)は、木片11(パネル10)の厚さと同一である。
【0012】
接着部12は、格子状に形成されており、従来のパネルにおける繊維強化樹脂製の格子材(グレーチング)に類似している。しかし、従来のパネルにおける格子材が、単に木片を囲む枠材としての機能のみを果たしていたのに対し、本発明における接着部12は、その格子状の繊維強化樹脂全体が木片11同士を隙間なく強固に繋ぎ合わせる接着剤としての機能を新たに発揮している。
【0013】
強化繊維としては、ガラス繊維;炭素繊維;金属繊維;アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素等のセラミック繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維等の合成樹脂繊維等が挙げられる。これらのうち、強度、製造コスト、成形性等の点で、ガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維としては、連続繊維(長繊維)が好ましく、E−ガラス繊維等からなるヤーン、モノフィラメント、ロービングがより好ましく、フィラメント径6〜30μm(好ましくは11〜27μm)、ストランド番手1000〜5000texのガラスロービングが特に好ましい。
【0014】
硬化性樹脂としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂には、必要に応じて、促進剤、硬化剤、着色剤、充填剤等の添加剤を添加してもよい。
【0015】
接着部12は、着色されていてもよいし、着色されていないなくてもよい。また、接着部12が光透過性を有している場合、パネル10の一方(床下等)からライトアップした際に、接着部12のみが光を透過し、パネル10が格子状に発光するという効果が得られる。
【0016】
(周縁部)
周縁部13は、配列された木片11群の周囲に、強化繊維および硬化性樹脂を存在させた状態で、硬化性樹脂を硬化させた繊維強化樹脂からなるものである。
周縁部13の幅は、パネル10に要求される剛性、デザイン等に応じて適宜決定すればよい。周縁部13の厚さ(高さ)は、木片11(パネル10)の厚さと同一である。
周縁部13は、接着部12と同時に形成されるものである。周縁部13を構成する強化繊維および硬化性樹脂としては、接着部12と同じものが挙げられる。
【0017】
<パネルの製造方法>
パネル10は、例えば図2に示すように、底板の周縁に外枠21が設けられた型20の内側に、複数の木片11を縦方向および横方向に間隔をあけて配列し、木片11間の間隙22および木片と外枠21との間隙23に、強化繊維および硬化性樹脂を存在させた状態で、硬化性樹脂を硬化させて接着部および周縁部を形成し、木片11を接着部および周縁部とともに型20から脱型することにより製造される。
【0018】
型20としては、従来の繊維強化樹脂製の格子材(グレーチング)の製造に用いられる型と同じものを用いることができる。すなわち、従来の繊維強化樹脂製の格子材を製造する際に、型20内に中型として配置される、格子材のマス目に対応する駒を、木片11に置き換えるだけでよい。
【0019】
強化繊維の配置および硬化性樹脂の充填は、(i)まず、間隙22および間隙23に硬化性樹脂を充填した後、強化繊維を配置することによって行ってもよく、(ii)まず、間隙22および間隙23に強化繊維を配置した後、硬化性樹脂を充填することによって行ってもよい。
強化繊維の配置は、例えば、型20のコーナーを始点とし、間隙23に連続繊維を縦方向または横方向に延在させ、型20の端に位置する木片11においてコの字形に折り返し、間隙22にさらに延在させる。この操作を、縦方向および横方向に何度も繰り返すことにより、間隙22および間隙23に連続繊維が積層された状態で格子状に配置される。
【0020】
強化繊維の配置の際、強化繊維に硬化性樹脂を塗布し、強化繊維を硬化性樹脂で濡らした状態で、間隙22および間隙23に配置してもよい。強化繊維を硬化性樹脂であらかじめ濡らしておくことにより、強化繊維と硬化性樹脂との含浸性が良好となる。
硬化性樹脂の硬化は、硬化性樹脂の種類に応じて、熱または光によって行う。
【0021】
型20から脱型されたパネル10の表面をベルトサンダー等の機械式研磨機(アミテック(株)製ワイドベルトサンダーWSA−130DS)等によって切削および/または研磨することによって、パネル10の表面を平滑化したり、パネル10の厚さを調整したりしてもよい。また、型20が木材の場合、パネル10と型20の底板とを分離することなく、底板を切削および/または研磨して取り除くと同時に、パネル10の表面を切削および/または研磨してもよい。
【0022】
以上説明したパネル10にあっては、間隔をあけて配列された木片11を、強化繊維を含み、かつ硬化性樹脂を硬化させた接着部12および周縁部13で一体化したものであるため、木片11と繊維強化樹脂(接着部12および周縁部13)との間に隙間が生じることがない。よって、木片11と繊維強化樹脂との間に水、ゴミ、埃等が溜まることがない。
【0023】
また、パネル10にあっては、木片11と繊維強化樹脂(接着部12および周縁部13)との間に隙間がないため、木片11と繊維強化樹脂との間で高い接着力が得られる。よって、木片11にヒールのかかとが強く当たった場合等に、木片11が下にずれて段差が生じたり、木片11が下に抜け落ちたりすることがない。
【0024】
また、パネル10にあっては、木片11と繊維強化樹脂(接着部12および周縁部13)との間に隙間がない状態で、木片11と繊維強化樹脂とが一体化されているため、剛性が高い。よって、パネル10の薄肉、軽量化が可能である。
また、以上説明したパネル10の製造方法にあっては、従来の繊維強化樹脂製の格子材(グレーチング)と同じ製造設備、方法を用いることができるため、パネル10を、特別な設備、方法を用いることなく容易に得ることができる。
【0025】
なお、本発明のパネルは、図1に示すパネル10に限定はされず、間隔をあけて配列された複数の木片を、強化繊維を含み、かつ硬化性樹脂を硬化させた接着部で一体化したものであれば、どのような形態のものでもよい。
例えば、図3に示すように、縦方向の次の段の木片11を横方向にずらして配列してもよい。
また、パネル表面に露出した木片の形状も、図1に示すような長方形に限定されず、三角形、正方形、六角形、円形、星形、図4に示すような波形等、任意の形状とすることができる。本発明のパネルの製造方法によれば、様々な木片の形状に容易に対応できるという利点がある。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を示す。
まず、ヒバの乾燥材を切断して縦25mm、横85mm、高さ30mmの直方体の木片を複数作製した。
縦1802.5mm、横902.5mm、厚さ3mmの化粧合板からなる底板を、化粧面を上にして水平な台の上に置き、この上に、木片を、縦方向および横方向に5mm間隔をあけて、かつ底板の周縁部に木片の存在しない部分が5mm幅で形成されるように、木工用ボンドで底板に接着固定ながら配列した。
【0027】
ついで、長さ902.5mm、幅50mm、厚さ3mmの化粧合板、および長さ1802.5mm、幅50mm、厚さ3mmの化粧合板を、それぞれ2枚ずつ用意し、化粧面が内側となるように、木工用ボンドで底板の側面に接着固定し、図5に示すような底板24と外枠21とからなる型20を作製した。この状態で1日放置し、木工用ボンドを固化させた。
ついで、底板と外枠との間の隙間に油粘土をすり込み、隙間を埋めた。さらに、外枠の内面(化粧面)に離型剤(ヘンケルジャパン(株)製、商品名「FREKOTE700NC」)を塗布し、乾燥させた。
【0028】
液状の不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製、4001A)に促進剤(ナフテン酸コバルト)を0.3phr添加してよく撹拌し、ついで硬化剤(過酸化物)を1.5phr添加して撹拌し、硬化性樹脂を調製した。
ついで、図6に示すように、硬化性樹脂30を、底板24上に配列された木片11間の間隙22および木片11と外枠21との間隙23に、底板24の表面からの液面までの高さが25mmとなるように、流し込んだ。
【0029】
ついで、ガラス繊維の長繊維(2400tex)を6本束ねた繊維束を、図7に示す矢印線のように、型のコーナーを始点とし、間隙23に繊維束を横方向に延在させ、型20の端に位置する木片11においてコの字形に折り返し、間隙22にさらに繊維束を横方向に延在させた。この操作を、縦方向および横方向に繰り返すことによって、木片間の間隙および木片と外枠との間隙に繊維束を配置し、硬化性樹脂中に沈めた。木片間の間隙および木片と外枠との間隙に、繊維束が6段重るまで、図7に示すように繊維束を引き回した。
そのまま室温で6時間放置し、硬化性樹脂を硬化させた。
【0030】
硬化性樹脂が硬化した後、外枠を引き剥がすことによって、図8に示すような、間隔をあけて配列された複数の木片11を、強化繊維31を含み、かつ硬化性樹脂を硬化させた接着部12および周縁部13で一体化してなり、かつ下面に底板24が接着した複合材32を得た。
【0031】
該複合材の上下面を、機械式研磨機(アミテック社製、ワイドベルトサンダーSER−130AV)を用いて研磨した。まず、接着部よりも上面に突出した木片を、木片と接着部とが同一平面なるまで研磨した。ついで、上下面を反転して底板を上面にし、底板がなくなるまで底板を研磨し、パネルを得た。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のパネルは、意匠性に優れた床材、壁材等としてたいへん有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のパネルの一例を示す斜視図である。
【図2】型の内側に複数の木片を縦方向および横方向に間隔をあけて配列した様子を示す斜視図である。
【図3】本発明のパネルの他の例を示す上面図である。
【図4】本発明のパネルの他の例を示す上面図である。
【図5】本発明のパネルの製造における一工程を示す側断面図である。
【図6】本発明のパネルの製造における一工程を示す側断面図である。
【図7】木片間の間隙および木片と外枠との間隙への繊維束の引き回し方の一例を示す概略上面図である。
【図8】本発明のパネルの製造における一工程を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 パネル
11 木片
12 接着部
22 間隙
30 硬化性樹脂
31 繊維束(強化繊維)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて配列された複数の木片を、強化繊維を含み、かつ硬化性樹脂を硬化させた接着部で一体化してなるパネル。
【請求項2】
パネルの表面において、木片の露出面と接着部の露出面とが同一平面とされている、請求項1記載のパネル。
【請求項3】
複数の木片を間隔をあけて配列する工程と、
木片間の間隙に強化繊維および硬化性樹脂を存在させた状態で、硬化性樹脂を硬化させる工程と
を有するパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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