説明

パネル型エアフィルタ

【課題】ランニングコストを大幅に削減することができるとともに、エアフィルタ材の再生のための清掃作業を簡易かつスムーズに行うことのできるパネル型エアフィルタを提供すること。
【解決手段】エアフィルタ材2をフィルタ枠3内に配置してなるパネル型エアフィルタ1において、エアフィルタ材2を、網目状の基布2aと、その基布2aに編み込まれ、基布2aの表面上に刷子状にフィルタ層を形成するパイル2bとよりなるものとし、このエアフィルタ材2をその基布2a側から支えるためにフィルタ枠3内に架設された骨材9に対して、エアフィルタ材2を留め金具10により結束固定するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃を捕集するパネル型エアフィルタに関し、特に、濾過面に付着した塵埃を掃除機等による清掃で簡単に再生可能なエアフィルタ材を具備したパネル型エアフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図4(a)、(b)に示すようなパネル型エアフィルタ101がある。
このパネル型エアフィルタ101は、合成繊維製不織布よりなるエアフィルタ材102と、このエアフィルタ材102の外周を着脱可能に保持するフィルタ枠103とを備えて構成されている。
図4(b)に示すように、フィルタ枠103内には、エアフィルタ材102をその非濾過面側から支えるために、縦横に所要の骨材104が架設されている。
また、図4(a)に示すように、フィルタ枠103には、エアフィルタ材102をその濾過面側から骨材104に押さえ付けて保形するために、所要の押さえ部材105が組み付けられている。
【0003】
ところで、このパネル型エアフィルタ101においては、使用に伴ってエアフィルタ材102の目詰まりが生じれば、フィルタ枠103からエアフィルタ材102を取り外して水洗や高圧蒸気の噴霧等による洗浄作業を行い、エアフィルタ材102を再生するようにしている。
また、一般に、エアフィルタ材102を構成する合成繊維製不織布は、合成繊維同士をバインダー剤で結合してなるものであるから、水洗や高圧蒸気の噴霧等による洗浄作業を行う毎にバインダー剤が徐々に欠落してフィルタ面の所々が剥離していき、遂にはフィルタがボロボロになって捕集効率が低下するので、通常、水洗や高圧蒸気の噴霧等による洗浄作業を3〜5回程度行えば、新品のものと交換する必要があった。
【0004】
このため、このパネル型エアフィルタ101は、エアフィルタ材102を再生するにあたってエアフィルタ材102に対して水洗や高圧蒸気の噴霧等手間のかかる洗浄作業が必要であるという問題に加えて、このような洗浄作業を3〜5回程度行えば、新品のものと交換しなければならず、ランニングコストが嵩むという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、エアフィルタ材102に代えて、本出願人が特許文献1にて既に提案している再生式エアフィルタ材を用いることが考えられる。
この特許文献1に係る再生式エアフィルタ材は、網目状の基布と、その基布に編み込まれ、基布の表面上に刷子状にフィルタ層を形成するパイルとより構成されているので、合成繊維製不織布で構成されたエアフィルタ材102と比較してその耐久性が格段に優れている。
また、パイルに付着した塵埃を掃除機による吸引作業で容易に除去することができるので、簡単に再生することができる。
したがって、エアフィルタ材102に代えて特許文献1に係る再生式エアフィルタ材を用いる構成を採用することにより、簡易な清掃作業で再生することができるとともに、ランニングコストを大幅に削減することができる。
【特許文献1】特許第3510146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図4(a)、(b)に示されるパネル型エアフィルタ101におけるエアフィルタ材102に代えて特許文献1に係る再生式エアフィルタ材を用いた場合であっても、この特許文献1に係る再生式エアフィルタ材を保形するために、該再生式エアフィルタ材をその濾過面側から骨材104に押さえ付ける押さえ部材105が必要であることには変わりがない。
【0007】
このため、図4(a)、(b)に示されるパネル型エアフィルタ101におけるエアフィルタ材102に代えて特許文献1に係る再生式エアフィルタ材を適用したパネル型エアフィルタでは、掃除機による濾過面の清掃作業の際に、押さえ部材105が邪魔となり、清掃作業をスムーズに行うことができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来のパネル型エアフィルタの有する問題点に鑑み、ランニングコストを大幅に削減することができるとともに、エアフィルタ材の再生のための清掃作業を簡易かつスムーズに行うことのできるパネル型エアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のパネル型エアフィルタは、エアフィルタ材をフィルタ枠内に配置してなるパネル型エアフィルタであって、エアフィルタ材が、網目状の基布と、その基布に編み込まれ、基布の表面上に刷子状にフィルタ層を形成するパイルとよりなり、このエアフィルタ材をその基布側から支えるためにフィルタ枠内に架設された骨材に対して、該エアフィルタ材を結束部材により結束固定したことを特徴とする。
【0010】
この場合において、結束部材は、骨材と、基布を構成する編成糸とに巻き掛け装着される留め金具とすることができる。
【0011】
また、結束部材は、骨材と、基布を構成する編成糸とに巻き掛け装着されるインシュロックとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパネル型エアフィルタによれば、エアフィルタ材として、網目状の基布と、その基布に編み込まれ、基布の表面上に刷子状にフィルタ層を形成するパイルとより構成される耐久性に優れたエアフィルタ材が用いられているので、合成繊維製不織布よりなるエアフィルタ材102が用いられた従来のパネル型エアフィルタ101と比較してランニングコストを大幅に削減することができる。
また、エアフィルタ材の基布側においてフィルタ枠内に架設された骨材に対して該エアフィルタ材が結束部材により結束固定されるので、従来、掃除機による清掃作業の邪魔となっていた押さえ部材105が不要となり、清掃作業を簡易かつスムーズに行うことができる。
また、エアフィルタ材が骨材に対して結束部材により結束固定されることでその形状が安定的に保持されるので、掃除機による吸引清掃の際にエアフィルタ材が剥がれて損傷するといった不具合の発生を防止することができる。
【0013】
ここで、結束部材としては、骨材と基布を構成する編成糸とに巻き掛け装着される留め金具又はインシュロックのいずれを用いてもよいが、留め金具を採用し、該留め金具を留め付けるための専用工具を使用することで、骨材に対するエアフィルタ材の結束固定作業を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のパネル型エアフィルタの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
図1〜図2に、本発明のパネル型エアフィルタの一実施例を示す。
図1(a)、(b)に示すように、このパネル型エアフィルタ1は、所要の幅、高さ及び厚み寸法の外観視四角形状に形成されたエアフィルタ材2と、このエアフィルタ材2の外周を保持するフィルタ枠3とを備えて構成されている。
【0016】
エアフィルタ材2としては、特許文献1にて開示されている再生式エアフィルタ材と同様のものが用いられる。
このエアフィルタ材2は、多数の編成糸4が縦横に網目状に編成されてなる基布2aと、その基布2aに編み込まれたパイル2bとよりなる。
【0017】
このエアフィルタ材2においては、基布2aを予め網目状に編成し、これにパイル2bを編み込んでもよく、あるいは、基布2aの編成と同時にパイル2bを編み込むようにしてもよい。
なお、基布2aは、編物又は織物のいずれでもよい。
だだし、織物の場合には、エアフィルタ材としての所要の開口率を有するものとすることが望ましい。
【0018】
また、パイル2bはかさ高性が10以上の捲縮糸を用い、エアフィルタ材としての所要の密度と長さの刷子状に形成するようにする。
【0019】
ところで、本実施例においては、捲縮糸は、パイル先端を切断して自由端としたカットパイルとした状態で使用する例を示すものであるが、先端を切断することなくループパイルとして使用しても問題はない。
【0020】
エアフィルタ材2の基布2a及びパイル2bの材料としては、合成繊維、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PBT等の繊維を選択的に使用することができる。
なお、ポリエステル繊維を使用するときは、リサイクル使用に好適である。
【0021】
また、繊維は紡績糸を使用してもよいが、毛羽立ち等の問題からフィラメント糸を使用するのが好ましく、繊維の断面形状は六葉、三角、矩形、丸等特に限定するものではない。
【0022】
ここで、上記基布2a及びパイル2bは、消臭、脱臭、抗菌、制菌のための薬剤処理を施すことが、環境衛生上からも好ましい。
また、必要に応じて、静電気発生防止処理、撥水、撥油、防汚、難燃加工を施すことができ、耐久性と塵埃捕集効率を増大させることができる。
【0023】
このエアフィルタ材2の捕集効率は、従来品の合成繊維製不織布よりなるエアフィルタ材102と同等の効果を有し、さらに、合成繊維製不織布よりなるエアフィルタ材102が、水洗や高圧蒸気の噴霧等による洗浄作業による再生に数回程度しか耐えられないことに対し、このエアフィルタ材2は、掃除機等による付着塵埃の吸引除去の後も劣化等することがほとんどない等の効果を有する。
【0024】
フィルタ枠3は、図1(a)において左右方向に所定間隔を存して配される断面コの字形状の左側の縦桟部材5及び右側の縦桟部材6と、図1(a)において上下方向に所定間隔を存して配される断面コの字形状の上側の横桟部材7及び下側の横桟部材8とよりなり、各々の桟部材5,6,7,8の開口側を枠内方側に臨ませて四角枠状となるようにこれら桟部材5,6,7,8が組まれて構成されている。
図1(b)に示すように、フィルタ枠3内には、エアフィルタ材2をその基布2a側(非濾過面側)から支えるために、左右の縦桟部材5,6を繋ぐように、また上下の横桟部材7,8を繋ぐように、金属製の細い棒材よりなる所要の骨材9が縦横に架設されている。
【0025】
これら骨材9に対してエアフィルタ材2の複数箇所が留め金具10(本発明の「結束部材」に相当する。)により結束固定されている。
より具体的に説明すると、図2(a)、(b)に示すように、金属線をC形に成形した留め金具(Cリング)10を骨材9とその骨材9の近傍に位置する編成糸4とを包み込むように位置決めして専用工具で丸め、該留め金具10を骨材9と編成糸4とに巻き掛け装着することにより、骨材9と編成糸4とが結束され、骨材9に対してエアフィルタ材2が固定される。
なお、上記専用工具としては、例えば特開2006−150511号公報で開示されているようなホッグリング締結装置が用いられる。
こうして、結束部材として留め金具10を採用し、該留め金具10を留め付けるためのホッグリング締結装置を使用することで、骨材9に対するエアフィルタ材2の結束固定作業を効率良く行うことができる。
【0026】
以上に述べたように構成されるパネル型エアフィルタ1によれば、エアフィルタ材2として、網目状の基布2aと、その基布2aに編み込まれ、基布2aの表面上に刷子状にフィルタ層を形成するパイル2bとより構成される耐久性に優れたエアフィルタ材2が用いられているので、合成繊維製不織布よりなるエアフィルタ材102が用いられた従来のパネル型エアフィルタ101と比較してランニングコストを大幅に削減することができる。
また、エアフィルタ材2の基布2a側においてフィルタ枠3内に架設された骨材9に対して該エアフィルタ材2が留め金具10により結束固定されるので、従来、掃除機による清掃作業の邪魔となっていた押さえ部材105が不要となり、清掃作業を簡易かつスムーズに行うことができる。
また、エアフィルタ材2が骨材9に対して留め金具10により結束固定されることでその形状が安定的に保持されるので、掃除機による吸引清掃の際にエアフィルタ材2が剥がれて損傷するといった不具合の発生を防止することができる。
さらに、エアフィルタ材2を掃除機によって吸引清掃することにより、従来の水洗や高圧蒸気の噴霧等による洗浄作業と比較して、エアフィルタ材2の再生に要するコストを著しく低減することができる、具体的には、1/20程度にできる利点がある。
【0027】
以上、本発明のパネル型エアフィルタについて、一実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0028】
例えば、上記実施例では、エアフィルタ材2と骨材9とを結束固定する結束部材として留め金具10を用いた例を示したが、図3に示すように、エアフィルタ材2と骨材9とを結束固定する結束部材としてインシュロック11を用いることもできる。
この場合、骨材9とその骨材9の近傍に位置する編成糸4とを包み込むようにインシュロック11を巻き掛け装着し、該インシュロック11を縛り上げることにより、骨材9と編成糸4とが結束され、骨材9に対してエアフィルタ材2が固定される。
また、エアフィルタ材2と骨材9とを結束固定する結束部材の配設箇所や配設数は、本実施例のものに限定されず、パネル型エアフィルタ1の形状、用途等に応じて、適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のパネル型エアフィルタは、ランニングコストを大幅に削減することができるとともに、エアフィルタ材の再生のための清掃作業を簡易かつスムーズに行うことができるという特性を有していることから、各種施設、地下街、工場等に備え付けられている空調設備や換気設備の粗塵捕集の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のパネル型エアフィルタの一実施例を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図2】図2(a)は、図1(b)のP部拡大図で、図2(b)は、図2(a)のX−X線断面図である。
【図3】結束部材の他の態様例の説明図である。
【図4】従来のパネル型エアフィルタを示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 パネル型エアフィルタ
2 エアフィルタ材
2a 基布
2b パイル
3 フィルタ枠
4 編成糸
9 骨材
10 留め金具(結束部材)
11 インシュロック(結束部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアフィルタ材をフィルタ枠内に配置してなるパネル型エアフィルタであって、エアフィルタ材が、網目状の基布と、その基布に編み込まれ、基布の表面上に刷子状にフィルタ層を形成するパイルとよりなり、このエアフィルタ材をその基布側から支えるためにフィルタ枠内に架設された骨材に対して、該エアフィルタ材を結束部材により結束固定したことを特徴とするパネル型エアフィルタ。
【請求項2】
結束部材は、骨材と、基布を構成する編成糸とに巻き掛け装着される留め金具であることを特徴とする請求項1記載のパネル型エアフィルタ。
【請求項3】
結束部材は、骨材と、基布を構成する編成糸とに巻き掛け装着されるインシュロックであることを特徴とする請求項1記載のパネル型エアフィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−106808(P2009−106808A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279139(P2007−279139)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】