説明

パネル材およびその製造方法

【課題】色つやや深みのある意匠性に優れたパネル材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】パネル材1の基部となる枠体10の端面14に、枠体10の内側の開口部13を覆うようにアクリル樹脂板22を載置し、アクリル樹脂板22を加熱するとともに枠体10の端面14とは反対側から吸引することによって、アクリル樹脂板22を枠体10の端面14を被覆する被覆材20として枠体10に密着した状態で固定させる。一度熱せられたアクリル樹脂板22は、分子の構造に変化が生じるが、この状態で、吸引したことにより、枠体10には、枠体10の一方の内側面15から端面14および外側面となる他方の内側面15、また、内側面15から端面14、および外側面となる外周面16にかけて、表面がゆるやかな曲面をなしている被覆材20が密着した状態で固定される。この被覆材20により、パネル材1の表面には光沢感が表れ、色つやや深みが増した状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床材や壁材、階段の踏み板などの建材や、テーブル板や家具の筐体などの資材として用いられるパネル材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の床材や壁材として、格子状に形成されたグレーチングと呼ばれるパネル材が用いられている。パネル材は、使用する場所に求められる強度に応じて、木材や樹脂材料、金属材料等により形成されている。特に樹脂材料により形成されたパネル材は、採光性を確保するとともに目隠し性をも考慮できるため、建物の床材や壁材だけでなく、空間を仕切るための仕切材としても広く用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、ガラス繊維強化プラスチック(以下、FRPと称す。)からなり格子形状のリブ構造を有する枠材と、枠材の端面に接着剤等により接着されたポリカーボネートからなる天板とを備えたパネル材が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−171663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、採光性や目隠し性に優れたパネル材は、建物の床材や壁材のなかでも、広く人の目に触れる箇所に用いられることが多い。従って、このようなパネル材にはできるだけ高い意匠性が求められる。
【0006】
特許文献1に記載のパネル材は、単に、枠材の端面に接着剤等によりポリカーボネートの天板を接着させただけであるので、枠材の質感と天板の質感とがパネル材の質感としてそのまま現れ、パネル材は、色つやや深みのない意匠性に乏しいものとなる。
【0007】
本発明は、色つやや深みのある意匠性に優れたパネル材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパネル材は、パネル材の基部となる枠体と、該枠体の端面を覆う合成樹脂の被覆材とを備えるパネル材であって、被覆材の表面は、枠体の内側面から端面ならびに外側面にかけて曲面をなしていることを特徴とする。
【0009】
枠体の端面を被覆する被覆材の表面が、枠体の内側面から端面ならびに外側面にかけて曲面をなしていることにより、ゆるやかな曲面をなした被覆材の表面があらゆる方向からの光を反射するので、パネル材の端面には光沢感が出るとともに色つやや深みが増したものとなり、意匠性に優れたパネル材とすることができる。被覆材の表面が平滑なものであると、枠体の端面が光沢感や色つやに乏しいものとなり、深みのないパネル材となる。
【0010】
また、本発明のパネル材の製造方法は、パネル材の基部となる枠体の端面に、枠体の内側の開口を覆うように熱可塑性樹脂板を載置し、熱可塑性樹脂板を熱するとともに枠体の該熱可塑性樹脂板を載置した側とは反対側から吸引することによって、熱可塑性樹脂板を枠体の端面を被覆する被覆材として枠体に密着した状態で固定させることを特徴とする。
【0011】
枠体の端面に載置された熱可塑性樹脂板を加熱するとともに、枠体の該熱可塑性樹脂板を載置した側とは反対側から吸引することによって、その吸引力により、熱可塑性樹脂板は、枠体の形状に沿うように伸びながら枠体に密着していく。一度熱せられた熱可塑性樹脂板は、分子の構造に変化が生じるが、この状態で、枠体の、該熱可塑性樹脂板を載置した側とは反対側から吸引すると、被覆材の表面は、枠体の内側面から端面ならびに外側面にかけて曲面をなした状態で枠体に密着して固定されるので、表面には光沢感が表れ、色つやや深みが増した状態となる。このように、本発明によれば、熱可塑性樹脂板を加熱するとともに吸引力により伸ばしながら枠体の端面に密着させて固定したことにより、単に枠体の端面に表面が平滑な熱可塑性樹脂板を接着剤等で接着した場合と異なり、枠体の端面に固定された熱可塑性樹脂の被覆材には光沢感が出るだけでなく色つやや深みが増すので、意匠性に優れたパネル材とすることができる。
【0012】
枠体の開口部に面する内側面は、開口部の開口面積が、熱可塑性樹脂板が載置される端面から深さ方向に徐々に大きくなるように傾斜したものである方が望ましい。
【0013】
枠体の端面に、熱可塑性樹脂板を接着剤等により接着しただけであると、強い負荷がかかった場合に枠体と熱可塑性樹脂板とがはずれてしまったり、ずれてしまったりすることが考えられる。しかしながら、本発明によれば、枠体の内側面は、開口部の開口面積が深さ方向に向かって徐々に大きくなるように傾斜していることから、この枠体の内側面は、枠体に沿って吸引された熱可塑性樹脂板による被覆材が開口部から抜けないための勾配を有することになる。よって、枠体に密着して固定された被覆材が枠体から容易にはずれることを防ぐことができる。
【0014】
また、枠体の外周面は、熱可塑性樹脂板を吸引する際に、枠体の外側に位置する熱可塑性樹脂板の一部が引き込まれる溝部を有する方が望ましい。
【0015】
例えば、所望とするデザインを実現するために、枠体の端面に載置された熱可塑性樹脂板を吸引する際に、枠体の開口部に円錐形や角錐形、半球状の凸部やくぼみを有する型を差し込み、開口部に吸引される熱可塑性樹脂板をこの型の凸部やくぼみに沿うように伸ばしながら枠体に密着させて固定させる場合がある。このとき、熱可塑性樹脂板は枠体の内側面に沿って伸びる部分が少ないことから、たとえ、枠体の内側面が、枠体に沿って吸引された熱可塑性樹脂板による被覆材の抜けを防止するために、開口部の開口面積が枠体の深さ方向に対して徐々に大きくなるように傾斜していても、この枠体の内側面の傾斜は上述したような役割を果たせないこともある。
【0016】
しかしながら、本発明によれば、枠体の外周面に形成された溝部に、枠体の外側に位置する熱可塑性樹脂板の一部が引き込まれることから、被覆材は、枠体に対して、溝部に引き込まれた部分が枠体に引っ掛かった状態で固定されるので、被覆材を枠体から引きはがそうとする強い負荷がパネル材にかかっても、被覆材が枠体からはずれることを防ぐことができる。これにより、枠体の開口部に差し込まれる型の形状にかかわらず、枠体に密着して固定された被覆材の枠体からの脱落を防ぐことができる。
【0017】
また、本発明のパネル材は、被覆材の表面が枠体の内側面から端面ならびに外側面にかけて曲面をなすように形成された型に熱硬化性樹脂を注入して枠体の端面に被覆材を成形する方法によっても製造することができる。
【0018】
本発明のパネル材の製造方法によれば、被覆材の表面が枠体の内側面から端面ならびに外側面にかけて曲面をなすように形成された型を用い、この型の所定の位置に枠体を配置して熱硬化性樹脂を注入するか、または、型に熱硬化性樹脂を注入してこの樹脂が注入された型の中に枠体の一部を沈ませるか、もしくは、型に、ポリエステル系光硬化性樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂等樹脂シートを載置して枠体をこの樹脂シートに押しつけるかして、熱硬化性樹脂を冷却させながら固化させるだけで、パネル材に、表面が枠体の内側面から端面ならびに外側面にかけて曲面をなす被覆材を形成することができる。このように、本発明のパネル製造方法によれば、被覆材の表面が枠体の内側面から端面ならびに外側面にかけて曲面をなすように形成された型を用いることにより、容易に光沢感があり色つやや深みの増した被覆材を備えたパネル材を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のパネル材およびその製造方法によれば、パネル材の端面に光沢感があり、色つやや深みのある質感とすることができるので、意匠性に優れたパネル材とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態におけるパネル材およびその製造方法について詳細に述べる。図1は、本実施の形態におけるパネル材の概略斜視図である。図2は、図1のA−A線断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態におけるパネル材1は、パネル材1の基部となる枠体10と、この枠体10の端面を覆う被覆材20とを備える。
【0022】
枠体10は、複数の縦板11と横板12とが直交して形成された格子形状になっており、これにより、内側に複数の矩形状の開口部13を有する。また、枠体10は、FRPをSMC(Sheet Molding Compound)成形、BMC(Bulk Molding Compound)成形、ワインディング成形、ピンフィラメントワインディング成形、ハンドレイアップ、オープンモールド法等で成形することによって形成される。なお、枠体10としては、建物の床材や壁材、仕切材などに使用されるグレーチングを用いることができる。
【0023】
図2に示すように、枠体10の内側に形成された複数の開口部13のそれぞれに面する内側面15は、それぞれの開口部13の開口面積が、端面14から深さ方向に徐々に大きくなるように傾斜した状態に形成されている。この端面14は、後述するパネル材の製造過程において熱可塑性樹脂板が載置される面となる。また、枠体10の外周面16には、溝部17が形成されている。
【0024】
図2に示すように、枠体10には、一方の内側面15から端面14および外側面となる他方の内側面15、また、内側面15から端面14および外側面となる外周面16にかけて、表面が曲面をなしている被覆材20が密着した状態で固定されている。また、外周面の溝部17にも被覆材20が密着した状態で固定されている。被覆材20は、アクリル樹脂からなっており、一方の内側面15から端面14および他方の内側面15、また、内側面15から端面14および外周面16にかけて表面が曲面をなしていることにより、枠体10の前面は、光沢があり、色つやや深みのある質感となっている。
【0025】
被覆材20として用いることができるのは、熱可塑性樹脂であればどのようなものであってもよく、アクリル樹脂以外に、ポリカーボネートやポリスチレン、ABS樹脂などを用いることができる。
【0026】
また、開口部13には、内側面15を覆っている被覆材20から連続して形成されるアクリル樹脂の目隠し板21が備えられている。
【0027】
次に、本実施の形態におけるパネル材1を製造する方法について詳細に説明する。図3は、パネル材1の製造過程を示す断面図であり、(a)は成形前の型のみの状態、(b)は枠体を型に嵌め込んだ状態、(c)は枠体の端面にアクリル樹脂板を載置した状態、(d)は真空成形後の状態を示す。
【0028】
まず、図3(a)に示す真空成型用型30(以下、型30と称す。)に、枠体10の下部を嵌め込む(図3(b)参照)。型30は、枠体10が嵌め込み可能な格子形状の溝31を有し、この溝31に囲まれた凸部33は、枠体10を溝31に嵌め込んだ際に、枠体10の開口部13に位置する部分となる。また、凸部33の上面はしぼ状に形成されている。
枠体10を型30に嵌め込んだ後、枠体10の端面14上に透明性を有する熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂板22を載置する。
【0029】
次に、枠体10の端面14上に載置されたアクリル樹脂板22を、加熱手段(図示せず)によって、熱軟化が開始する温度まで加熱する。加熱手段によりアクリル樹脂板22が十分に熱軟化したことが確認されたら、型30に設けられた空気抜き孔32から空気を抜いて真空成形する。これにより、熱軟化したアクリル樹脂板22は、枠体10の端面14、内側面15、外周面16および、型30の凸部33の形状に沿うように伸びながら密着していく。
【0030】
アクリル樹脂板22を加熱することによって、アクリル樹脂板22の分子の自由度が高まり、熱軟化が始まる。この状態で、型30の空気抜き孔32から開口部13にある空気を抜くと、枠体10に接していない側となるアクリル樹脂板22の表面は何ら制限を受けることなく伸ばされていく。これにより、アクリル樹脂板22は、枠体10の一方の内側面15の端部から端面14、および他方の内側面15の端部、また、内側面15の端部から端面14、および外周面16の端部にかけて表面がゆるやかな曲面をなした状態で密着して固定され、パネル材1の被覆材20となる。
【0031】
このようにして、被覆材20が枠体10に固定されたことにより、ゆるやかな曲面をなした被覆材20の表面があらゆる方向からの光を反射するので、パネル材1の前面は、単に枠体10の端面14に平滑な面を有するアクリル樹脂板22を接着剤等で接着しただけでは得られない、光沢感と色つやや深みを有するものとなっている。
【0032】
従来、パネル材1の端面の意匠性を上げるために、枠体10の端面にウレタン樹脂などを塗装することが行われている。しかしながら、このような塗装方法では、塗装厚さをどれだけ厚くしても、液体を塗り重ねていくという性質上、表面が粗く、十分な光沢感や色つや、深みを有する表面に仕上げることはできなかった。そこで、ウレタン樹脂を塗装した後、さらにその塗装面を光沢性のある塗料で塗り重ねることによって光沢感を出すことも考えられるが、手間がかかるうえ、大量生産には不向きである。しかしながら、本実施の形態によれば、枠体10の端面14上にアクリル樹脂板22を載置し、このアクリル樹脂板22を真空成型により加工するだけで、一回の成形で枠体10の端面14すべてに被覆材20を形成することができ、十分な光沢感や色つや、深みを有するパネル材1とすることができるので、容易に製造することができるとともに量産性に優れた製造方法となる。なお、真空成形を行う際に、型30の凸部33に面する位置に、上方から別の型を押し当てれば、つまり、圧空成形を行えば、アクリル樹脂板22をより枠体10の内側面に密着させるとともに、型30の凸部33の形状に沿った目隠し板21とすることもできる。
【0033】
開口部13内に吸引されたアクリル樹脂板22のうち、型30の凸部33に沿うように伸ばされた部分は、パネル材1の目隠し板21となる。なお、凸部33の上面にはしぼが形成されているので、凸部33に接する側の目隠し板21の表面は、凸部33のしぼが転造されて乱反射を起こしやすい状態となっており、この目隠し板21によって、パネル材1の裏面側が透けて見えないようにすることができる。
【0034】
また、本実施の形態の枠体10の内側面15は、開口部13の開口面積が深さ方向に向かって徐々に大きくなるように傾斜していることから、この枠体10の内側面15は、枠体10の内側面に沿って吸引された被覆材20としてのアクリル樹脂板22が抜けないための勾配を有することになる。これにより、枠体10に固定された被覆材20が枠体10から容易にはずれることを防ぐことができる。
【0035】
また、本実施の形態の枠体10の外周面16には溝部17が形成されており、真空成型の際に、枠体10の外側に位置するアクリル樹脂板22の一部は、この溝部17に引き込まれながら密着して固定される。これにより、枠体10を被覆する被覆材20は、溝部17に引き込まれた部分が枠体10に引っ掛かった状態で固定されているので、被覆材20を枠体10から引きはがすような強い負荷がパネル材1にかかっても、被覆材20は枠体10からはずれずに固定された状態を保つことができる。
【0036】
なお、本実施の形態におけるパネル材1の製造方法では、型30の凸部33は、均一な高さに形成されていたが、目的に応じて、図4に示すように凸部の高さを変えたり、図5に示すように凸部の形状を変えたりしてもよい。
【0037】
凸部の高さを変えることにより、パネル材1の目隠し板21の板厚を厚くしたり薄くしたりすることができる。例えば、凸部の高さが高い場合は、アクリル樹脂板22が密着する内側面15の面積も小さいので板厚の厚い目隠し板21となる。
【0038】
また、凸部の高さが低い場合は、アクリル樹脂板22が密着する内側面15の面積が大きいので、アクリル樹脂板22は枠体10の端面14側から凸部の上面まで、徐々に板厚が薄くなった状態で密着する。そこで、真空成形を行う前のアクリル樹脂板22の厚さを調整すれば、パネル材1の目隠し板21となる部分の厚さをフィルム状にまで薄くすることができる。この場合、成形後にフィルム状の目隠し板21をカッターなどで容易に切り離すことができるので、本実施の形態のパネル材1を、開口部に目隠し板21がないグレーチングとして使用することもできる。
【0039】
また、凸部の形状を半球状にしたり、凸部に円錐や角錐の孔を形成したりすることで、目隠し板21となる部分の形状を変えることができる。例えば、目隠し板21の形状を半球状に形成し、目隠し板21の裏面側となる枠体10の開口部13に電球やLEDを置くことによって、柔らかな光を照射するランプの機能を有するパネル材1とすることもできる。なお、この場合、開口部13に配置された電球が何らかの理由で割れたりしても、開口部13には目隠し板21があることから、割れた電球の欠片が飛散することを防ぐことができ、安全性も考慮したパネル材1となる。このように、本実施の形態によれば、高い意匠性を有するだけでなく、型30の凸部33の形状を変えるだけでデザイン性に優れたパネル材1を製造することもできる。
【0040】
また、アクリル樹脂板22を真空成型する際に、凸部33に色や模様、凹凸等が形成された熱可塑性シート部材を載置しておくと、目隠し板21の裏面側にこの熱可塑性シート部材が熱軟化して接着するので、目隠し板21の部分に色を付けたり、模様を形成したりすることができ、さらに意匠性に富んだパネルとすることができる。
【0041】
また、本実施の形態におけるパネル材1のように、被覆材20をアクリル樹脂により形成すれば、アクリル樹脂の特性により、パネル材1の側方から光を照射し、被覆材20で光を屈折させてパネル材1の正面から格子状に出射させることもできる。従って、本実施の形態におけるパネル材1を建物内部の空間の仕切板として用いれば、デザイン性に優れた仕切板とすることができる。
【0042】
例えば、さまざまな大きさのパネル材1を必要とする場合、予め製造した大きなパネル材1を所望とする大きさに切断して用いることが考えられる。しかしながら、強度の大きいFRPなどの枠体10である場合、ディスクグラインダーのような切断具を用いてパネル材1を切断すると、刃と切断面との摩擦による発熱が生じ、被覆材20が溶融して切断刃に付着して作業がしにくい状態となる。
【0043】
しかしながら、本実施の形態におけるパネル材1の製造方法によれば、次のようにすることでさまざまな大きさのパネル材1を同時に製造することもできる。
【0044】
まず、図6に示すように、所望とする大きさに形成した大きさの異なる複数の枠体40,50,60をそれぞれ型30に嵌め込む。そして、枠体40,50,60との間には、ベニヤ板や端切れ板などのマスク材34を載置する。マスク材34を載置することにより、真空成形後の枠体40,50,60を型30から容易に取り外すことができる。次に、枠体40,50,60をすべて覆うことができる大きさに形成されたアクリル樹脂板22を、枠体40,50,60の端面44,54,64上に載置する。そして、アクリル樹脂板22を加熱し、型30の空気抜き孔32から空気を抜くことによって、それぞれの枠体40,50,60に被覆材20が密着した状態で固定される。十分に冷却した後、枠体40,50,60を型30から取り出すと、図7に示すように、枠体40,50,60が1つに連結した状態のパネル材となっている。最後に、枠体40,50,60の間のアクリル樹脂材を、図7で示す切断線Sに沿って切断することによりそれぞれを分離することができるが、このとき、切断するのはアクリル樹脂材だけであるので、発熱がほとんどないNC加工機のサイドカッターなどの切断具を用いることができ、被覆材を溶融させることなく容易に切断することができる。このようにすることで、大きさの異なる複数のパネル材1を同時に製造することもできる。
【0045】
なお、本実施の形態におけるパネル材1を構成する枠体10は、複数の縦板11と横板12とにより格子形状に形成され、これにより縦横に複数作られた開口部13の形状は矩形状であったが、開口部13の数や形状は本実施の形態に限るものではない。
【0046】
また、枠体10は、射出成形品に限るものではなく、また、材料もFRPに限るものではない。枠体10の材料としては、真空成型を行って枠体10の端面に被覆材20を密着して固定する際に、被覆材20となる熱可塑性樹脂板が熱軟化を始める温度で熱軟化しないものであれば、樹脂材、木材、金属などどのようなものを用いてもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、被覆材20としてアクリル樹脂を用いたが、例えば、ポリカーボネートやABS樹脂などの強度が大きく割れにくい熱可塑性樹脂を用いれば、本実施の形態におけるパネル材1を壁や床に取り付ける際に、目隠し板21となる部分にボルト穴を形成し、ボルトを差し込んで壁や床などに強固に固定することもできる。
【0048】
また、本実施の形態におけるパネル材1を、階段の踏み板や天井板など、人の目に触れる箇所に用いられる建材とする場合には、パネル材1の裏面側の端面にポリカーボネートやABS樹脂などの強度の大きな樹脂板や同一の樹脂FRPで構成される樹脂板を接着剤等で貼り付け、被覆材20が形成された面が人の目に触れる側に位置するように取り付けて用いてもよい。これにより、建材としての強度を十分に保ちながらも、意匠性に優れた建材として用いることができる。
【0049】
また、本実施の形態におけるパネル材1は、以下のような方法でも製造することができる。
【0050】
まず、パネル材1を製造するための成形型を作製する。この成形型は、例えば、本実施の形態において真空成形により製造されたパネル材1を転写することによって作製することができる。また、これ以外にも、枠体10に、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の合成樹脂を所定の厚さとなるように塗布し、枠体10の一方の内側面15から端面14ならびに外側面となる他方の内側面15、または、内側面15から端面14ならびに外側面となる外周面16にかけて表面が曲面をなすように研磨することによって製造したパネル材を作製し、この作製したパネル材を転写して成形型を作製することもできる。このように、パネル材を転写して成形型を作製することにより、成形型のうち、被覆材20を成形する部分にあたる型の形状は、成形された被覆材20の表面が枠体10の一方の内側面15から端面14ならびに外側面となる他方の内側面15、または、内側面15から端面14ならびに外側面となる外周面16にかけてゆるやかな曲面となるように湾曲した状態となっている。
【0051】
上記のようにして作製された成形型に枠体10を所定の位置に配置して熱硬化性樹脂を注入するか、または、成形型に熱硬化性樹脂を注入してこの樹脂が注入された型の中に枠体10を沈ませるか、もしくは、型に、ポリエステル系光硬化性樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂等樹脂シートを載置して、枠体をこの樹脂シートに押しつけるかして、熱硬化性樹脂を冷却させながら固化させることにより、枠体10に、表面が、枠体10の一方の内側面15から端面14ならびに他方の内側面15、また、内側面15から端面14ならびに外側面16にかけて曲面をなしている被覆材20を形成することができる。
【0052】
このように、パネル材を転写した成形型を用いれば、光沢感があり色つやや深みの増した被覆材を備えたパネル材の製造において、簡便で量産性に優れた製造方法とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、パネル材の端面に光沢感があり、色つやや深みのある意匠性に優れたパネル材とすることができるので、建物の床材や壁材、階段の踏み板などの建材や、テーブル板や家具の筐体などの資材など、人の目に触れ、高い意匠性が求められるパネル材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施の形態におけるパネル材の概略斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】パネル材の製造過程を示す断面図であり、(a)は成形前、(b)は成形中、(c)は成形後、(d)は真空成形後の状態を示す。
【図4】他の実施の形態に用いられる型の断面図である。
【図5】他の実施の形態に用いられる型の断面図である。
【図6】大きさの異なる複数個のパネル材を製造する様子を示す断面図である。
【図7】大きさの異なる複数個のパネル材が連結した様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 パネル材
10,40,50,60 枠体
11 縦板
12 横板
13 開口部
14,44,54,64 端面
15 内側面
16 外周面
17 溝部
20 被覆材
21 目隠し板
22 アクリル樹脂板
30 型
31 溝
32 空気抜き孔
33 凸部
34 マスク材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル材の基部となる枠体と、該枠体の端面を覆う合成樹脂の被覆材とを備えるパネル材であって、
前記被覆材の表面は、前記枠体の内側面から前記端面ならびに外側面にかけて曲面をなしていることを特徴とするパネル材。
【請求項2】
パネル材の基部となる枠体の端面に、前記枠体の内側の開口を覆うように熱可塑性樹脂板を載置し、前記熱可塑性樹脂板を加熱するとともに前記枠体の該熱可塑性樹脂板を載置した側とは反対側から吸引することによって、前記熱可塑性樹脂板を前記枠体の端面を被覆する被覆材として前記枠体に密着した状態で固定させることを特徴とするパネル材の製造方法。
【請求項3】
前記枠体の前記開口部に面する内側面は、前記開口部の開口面積が、前記熱可塑性樹脂板が載置される前記端面から深さ方向に徐々に大きくなるように傾斜したものである請求項2記載のパネル材の製造方法。
【請求項4】
前記枠体の外周面は、前記熱可塑性樹脂板を吸引する際に、前記枠体の外側に位置する前記熱可塑性樹脂板の一部が引き込まれる溝部を有する請求項2または3記載のパネル材の製造方法。
【請求項5】
パネル材の基部となる枠体に、該枠体の端面を覆う合成樹脂の被覆材を備えるパネル材の製造方法であって、
前記被覆材の表面が前記枠体の内側面から前記端面ならびに外側面にかけて曲面をなすように形成された型に前記合成樹脂として熱硬化性樹脂を充填して前記枠体の端面に被覆材を成形するパネル材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−138433(P2007−138433A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330385(P2005−330385)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(504422519)柏松化工株式会社 (4)
【出願人】(503005179)株式会社マック (5)
【出願人】(505155034)株式会社岐阜化成 (2)
【Fターム(参考)】