説明

パネル構造

【課題】自動車の車体を構成するパネルの構造において、かかるコスト及び車両重量を低減すると共に、制振性能を向上し、騒音の発生を抑制する。
【解決手段】フレーム部材に接続され、前記フレーム部材と共に自動車の車体を構成するパネル10の構造であって、前記パネルの面には、少なくとも1つの凹凸領域1が形成され、前記多角形錐は好ましくは六角錐からなる。前記凹凸領域は、中空の多角形錐2が前記パネルの面に沿って複数連結されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体を構成するフロアパネルなどのパネル構造に関し、特に耐振性を向上し、騒音の発生を抑制することのできるパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンによる振動、或いは自動車の走行時にサスペンションから伝わる振動が、車両のフレーム部材等を介してフロアパネルに伝達し、騒音を発生させることが知られている。
このため従来、図8に示すようにフロアパネル50に複数のビード51を形成し、剛性を向上させて振動による騒音を抑制する構成が多く採用されていた(特許文献1参照)。或いは、フロアパネル全体を曲面形成する構成(図示せず)により耐振性を向上させていた。
【0003】
しかしながら、自動車のフロアパネルには、図8に示すように必要孔52(例えば位置決めのための基準穴、電着塗装液を抜くためのED(Electlo Diptation)抜き穴、各装備品の取付穴等)を所定位置に形成しなければならない。このため、ビードを形成する場合には、その形成位置が前記必要孔52の位置によって制約を受け、所望の耐振・耐騒音性能を得ることができなかった。
また、フロアパネルを曲面に形成する場合にも、前記必要孔52の制約を受け、パネルを所望の曲面形状を形成することができず、耐振・耐騒音性能の低下を避けられなかった。
そのため従来は、前記ビードなどが形成されたフロパネルに、アスファルトシートや塗布型制振材などの制振材を大量に配することによって、耐振性・耐騒音性の低下を抑制していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−96734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のように大量のアスファルトシートや塗布型制振材を用いる場合、車両重量が増加する上、そのコストが嵩張るという課題があった。
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、自動車の車体を構成するパネルの構造であって、かかるコスト及び車両重量を低減すると共に、制振性能を向上し、騒音の発生を抑制することのできるパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係るパネル構造は、フレーム部材に接続され、前記フレーム部材と共に自動車の車体を構成するパネルの構造であって、前記パネルの面には、少なくとも1つの凹凸領域が形成され、前記凹凸領域は、中空の多角形錐が前記パネルの面に沿って複数連結されてなることに特徴を有する。
尚、前記凹凸領域において、隣接する複数の多角形錐は、隣接する底辺同士が互いに間隔を空けずに連結されていることが望ましい。
また、前記多角形錐は、六角錐であることが望ましく、その他、前記多角形錐は、四角錐であってもよい。
また、前記パネルは、車体のフロアを構成するフロアパネルに好ましく適用することができる。
【0007】
このように、自動車のパネルにおいて、複数の中空の多角形錐がパネル面に沿って連結された凹凸領域の面が形成されることにより、凹凸領域において中空の多角形錐の各面を伝わる振動は、凹凸領域の凹凸によって吸収され、制振される。
したがって、この凹凸領域を有するパネル構造によれば、その周囲から伝達される振動を凹凸領域によって制振し、その効果により騒音の発生を抑制することができる。
また、この構成によれば、フロアパネル等に設けられた必要孔の円周に沿って中空の多角形錐を連結して形成することができ、その際、必要孔の周囲の平面面積をできる限り小さい状態にすることができる。それにより、アスファルトシート等の制振材を用いなくても所望の制振構造を得ることができ、かかるコスト及び車両重量を低減することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自動車の車体を構成するパネルの構造であって、かかるコスト及び車両重量を低減すると共に、制振性能を向上し、騒音の発生を抑制することのできるパネル構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、自動車のフロアパネルに形成される凹凸領域の平面図である。
【図2】図2(a)は図1のA−A矢視断面図、図2(b)は図1のB−B矢視断面図である。
【図3】図3は、図1の凹凸領域を構成する中空六角錐の平面図である。
【図4】図4は、図3の中空六角錐の側面図である。
【図5】図5は、凹凸領域をパネルに設けられた必要孔の周囲に形成した例を示す平面図である。
【図6】図6は、凹凸領域の変形例を示す平面図である。
【図7】図7(a)は図6のC−C矢視断面図、図7(b)は図1のD−D矢視断面図である。
【図8】図8は、フロアパネルにビードを形成した従来の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかるパネル構造の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。本実施の形態にあっては、本発明にかかるパネル構造として、自動車のフロアパネルの構造に適用した場合を例に説明する。
図1は、フレーム部材(図示せず)に接続され、前記フレーム部材と共に自動車の車体を構成するフロアパネルに形成された凹凸領域の平面図であり、図2(a)は図1のA−A矢視断面図、図2(b)は図1のB−B矢視断面図である。
また、図3は、図1の凹凸領域を構成する最小単位の形状の平面図であり、図4は、その側面図である。
【0011】
図1に示す凹凸領域1は、フロアパネル10において、耐振性が要求される領域に形成される。前記フロアパネル10は、例えば、フロントフロアパネル、センターフロアパネル、リアフロアパネルを含み、前記凹凸領域1は、各パネルにおいて振動エネルギーが集中する領域などにそれぞれ形成される。また、少なくとも各パネルは1枚の鋼板を一体プレス成形されてなり、前記凹凸領域1は、この一体プレス成形時に形成することができる。
【0012】
凹凸領域1の構成について具体的に説明すると、図3、図4に示す中空の六角錐2(中空の多角形錐)が最小の単位とされ、複数の中空六角錐2がそれぞれパネル面に沿って前後左右に連結された面により凹凸領域1が形成されている。各中空六角錐2の底面をなす正六角形の一辺の長さLは例えば5mm程度、中空六角錐2の高さHは例えば3mm程度の大きさに形成されている。
尚、凹凸領域1は、フロアパネル10上の形成される位置によって、中空六角錐2の連結数、連結方向は自在であり、その全体の形状、及び全体の領域面積はそれぞれ異なってもよい。
また、図面においては、隣接する複数の中空六角錐2の隣接する底辺同士が互いに間隔を空けずに連結されているが、所定の間隔を空けて(即ち平面部を介して)連結されていてもよい。
【0013】
この中空六角錐2を連結した構成により、図2(a)に示すように、中空六角錐2を形成する面2aを通るA−A矢視断面は、鋸歯状に凹凸を繰り返す形状となっている。
また、図2(b)に示すように、中空六角錐2の辺を通るB−B矢視断面は、2つの中空六角錐2が隣接する辺では一定の高さであるが、中空六角錐2の頂部も通るため、凹凸を有する形状となっている。
また、この中空六角錐2を連結した構成によれば、複数の中空六角錐2が互いに隣接する辺を結んだ際、それは平面視で一直線状にならず、ジグザグ状となり、振動吸収の面において好ましい形状となっている。
【0014】
このように構成された凹凸領域1が形成されたフロアパネル10に対し、自動車のエンジン等による振動が伝達すると、凹凸領域1において中空六角錐2の各面2aを伝わる振動は、図2(a)に示したように断面凹凸形状によって吸収され、制振される。
また、凹凸領域1において中空六角錐2の各辺を伝わる振動は、図2(b)に示したように断面凹凸状に連結された辺、及びジグザグ状に連結された辺によって吸収され、制振される。
したがって、この凹凸領域1を有するパネル構造によれば、フレーム部材等を介して周囲から伝達される振動が凹凸領域1によって制振され、その効果により騒音の発生が抑制される。
【0015】
また、図5に示すように、特に、各中空六角錐2の大きさ(径)が、フロアパネルに形成される必要孔11の大きさに対し充分小さい(例えば必要孔11の径よりも小さい)場合には、必要孔11の円周に沿って中空六角錐2を連結して形成することができ、その際、必要穴10の周囲の平面面積をできる限り小さい状態にすることができる。
即ち、従来のビード形成による制振構造の場合に生じていた配置上の制約を極力無くすことができ、アスファルトシート等の制振材を用いなくても所望の制振構造を得ることができる。
【0016】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、自動車のフロアパネルにおいて、複数の中空六角錐2がそれぞれ前後左右に連結された凹凸領域1の面が形成される。これにより、凹凸領域1において中空六角錐2の各面2aを伝わる振動、及び凹凸領域1において中空六角錐2の各辺を伝わる振動は、凹凸領域1の凹凸によって吸収され、制振される。
したがって、この凹凸領域1を有するパネル構造によれば、その周囲から伝達される振動を凹凸領域1によって制振し、その効果により騒音の発生を抑制することができる。
また、この構成によれば、フロアパネルに設けられた必要孔の円周に沿って中空六角錐2を連結して形成することができ、その際、必要孔11の周囲の平面面積をできる限り小さい状態にすることができる。それにより、アスファルトシート等の制振材を用いなくても所望の制振構造を得ることができ、かかるコスト及び車両重量を低減することができる。
【0017】
尚、前記実施の形態にあっては、中空の多角形錐を中空六角錐2とし、これを複数連結することにより凹凸領域1を形成するものとしたが、本発明に係るパネル構造は、その形態に限定されるものではない。
即ち、多角形錐は六角形の錐体に限定されるものではなく、例えば、図6に示すようにフロアパネル10に中空の四角錐5を前後左右に複数連結することにより凹凸領域1を形成するようにしてもよい。
【0018】
ここで、多角形錐を四角錐5とした場合には、図7(a)の断面図(図6のC−C断面)、図7(b)の断面図(図6のD−D断面)に示すように、中空四角錐5を形成する面5aを通る断面は、鋸歯状に凹凸を繰り返す形状となる。
このように構成された凹凸領域1が形成されたフロアパネル10に対し、自動車のエンジン等による振動が伝達すると、凹凸領域1において中空四角錐5の各面5aを伝わる振動は、図7(a),図7(b)に示した断面凹凸形状によって吸収され、制振される。
したがって、この中空四角錐5を連結した構成によっても、その周囲から伝達される振動を凹凸領域1によって制振し、騒音の発生を抑制することができる。
【0019】
また、前記実施の形態においては、正多角形の錐体を図示して、それを例に説明したが、本発明にあっては正多角形錐に限定されるものではない。
また、前記実施の形態においては、本発明に係るパネル構造を自動車のフロアパネルに適用した例を説明したが、フロアパネルに限らず、自動車に用いるその他のパネル(例えばダッシュパネル)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 凹凸領域
2 中空六角錐
2a 面
5 中空四角錐
5a 面
10 フロアパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部材に接続され、前記フレーム部材と共に自動車の車体を構成するパネルの構造であって、
前記パネルの面には、少なくとも1つの凹凸領域が形成され、
前記凹凸領域は、中空の多角形錐が前記パネルの面に沿って複数連結されてなることを特徴とするパネル構造。
【請求項2】
前記凹凸領域において、隣接する複数の多角形錐は、隣接する底辺同士が互いに間隔を空けずに連結されていることを特徴とする請求項1に記載されたパネル構造。
【請求項3】
前記多角形錐は、六角錐であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたパネル構造。
【請求項4】
前記多角形錐は、四角錐であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたパネル構造。
【請求項5】
前記パネルは、車体のフロアを構成するフロアパネルであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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