説明

パラキシレン製造プロセス及び装置

C8炭化水素及びC9+炭化水素を含むC8+供給原料を晶析条件下にある晶析装置へ供給して、濃縮PX(パラ−キシレン)ストリームの重量を基準としてPX濃度が少なくとも99.5 wt%の濃縮PXストリームを生成させるPX製造プロセスにおいて、C8+供給原料中のPX濃度が、C8+供給原料中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70wt%であり、C8+供給原料中のC9+炭化水素濃度が、C8+供給原料の全重量を基準として1 wppmから10 wt%の範囲であるPX製造プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、C8+ストリームが製造される高選択性トルエン不均化プロセスと、このC8+ストリームからパラキシレンを分離する晶析プロセスとを組合せて用いる、パラキシレン製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
C8アルキルベンゼンである、エチルベンゼン(EB)、パラキシレン(PX)、オルト−キシレン、及びメタ−キシレンは、化学プラントまたは石油精製工場からの典型的工業C8芳香族生成物ストリーム中に混在する。例えば、市場で入手可能なPxMax、モービル選択性トルエン不均化(Mobil Selective Toluene Disproportionation)、及びモービルトルエン不均化プロセス(Mobil Toluene Disproportionation)において、このようなストリームが製造される。
【0003】
3種類のキシレン異性体の中で、PXの需要が最も大きい。PXは主に精製テレフタル酸(PTA)及びジメチルテレフタレート(DMT)の製造に用いられ、さらにこれらは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブテンテレフタレート(PBT)などの種々のポリマーの製造に用いられる。
【0004】
様々なグレードのPETが、フィルム、合成繊維、ソフトドリンク用プラスチックボトルなどの製品に用いられている。PPTとPBTは、性質が異なる似通った製品の製造に用いられる。
【0005】
分留は、工業プラントの様々なプロセスにおいて化学薬品を分離するために広く用いられている方法である。しかし、このような従来の分留技術では、EBと種々のキシレン異性体とを効率的かつ経済的に分離することは困難である。これは、これらの4種類のC8芳香族化合物の沸点が約136℃から約144℃の範囲の8℃という極狭い範囲にあるためである(表1参照)。PXとEBの沸点差は約2℃である。PXとMXの沸点差は、わずか1℃である。このため、要求水準を満たすキシレンの分離を効果的に行うためには、大規模な設備、莫大なエネルギー消費、および/または大量の再循環が必要である。
【表1】

【0006】
晶析装置を用いた分別晶析は、C8芳香族化合物の凝固点と、温度毎の溶解性の差を利用するものである。分別晶析では、PXは凝固点が高いことから固体で分離され、他の成分は低PX濃度の濾液として回収される。高純度のPXは、PXをPTAおよび/またはDMTに転換する商業プラントにおいて必要とされる。高純度PXは、分別晶析により製造することができる。米国特許4,120,911号に分別晶析方法が開示されている。また米国特許3,662,013号に、この方法によって操業される晶析装置が開示されている。市場で入手可能な晶析方法及び晶析装置には、結晶化アイソフィニング(crystallization isofining)プロセス、連続向流晶析プロセス、CO2直接接触晶析装置、スクレープドラム(scraped drum)晶析装置が含まれる。PXを回収するために晶析装置を用いる場合、電気・水等のユーティリティの使用量が多いことと、PXとMXの共晶が形成されることから、供給原料中のPXの最初の濃度はできるだけ高いことが好ましい。
【0007】
「形状選択性触媒」という用語は、ゼオライト中における予想外の選択性触媒作用を意味する。形状選択性触媒の原理は、例えばN. Y. Chen, W. E. GarwoodとF. G. Dwyerらの, "Shape Selective Catalysis in Industrial Applications," 36, Marcel Dekker, Inc.社 (1989年) に記載されている。ゼオライトの細孔の中でのパラフィン異性化反応、オレフィン骨格または二重結合の異性化反応、オリゴマー化、及び芳香族の不均化反応、アルキル化反応、トランスアルキル化反応等は、細孔サイズに基づく制約によって規制される。反応物に対する選択性は、供給原料中の一成分がゼオライトの細孔チャンネルに進入して反応するには大きすぎる場合に生じる。一方、生成物選択性は、生成物がゼオライトの細孔チャンネルから離脱できないとき生じる。生成物の生成割合は遷移状態選択性により変化する。遷移状態選択性は、反応遷移状態がゼオライトの細孔またはゼオライトのケージ(cage)の中で生じるには大きすぎるため、ある反応が生じ得ないことにより生じる。別の種類の選択性は、拡散過程において、ある分子の寸法と、この分子が接近するゼオライトの細孔の寸法との、立体配置の制約の結果生じる。分子またはゼオライト細孔の寸法のわずかな変化により、大きな拡散性の変化を生じる結果、生成物の生成割合が変化する。このタイプの形状選択性触媒は、例えばトルエンからパラ−キシレンへの選択的不均化において見られる。
【0008】
PXの製造は一般に、転換条件下にある触媒上でのトルエンの不均化によって行われる。この例として、Pinesの"The Chemistry of Catalytic Hydrocarbon Conversions", Academic Press社, N. Y., 1981年, 72頁に記載されたトルエンの不均化が挙げられる。一般にこのような方法では、PX, OX, 及びMXの混合物が生成する。触媒のPXに対する選択性(パラ−選択性)の程度、及び反応条件により、生成物中のPXのパーセンテージが変化する。収量、すなわち供給原料に対するキシレンの生成量の割合は、使用する触媒と反応条件に依存する。
【0009】
トルエンからキシレンとベンゼンを生成させる転換反応の化学平衡状態では、キシレン中に約24%のPX、約54%のMX、約22%のOXが含まれる。
【0010】
従来、トルエン不均化によるPXの製造には:
a)ベンゼン及びトルエンを含むC7-炭化水素と、PX, MX, OX,及びエチルベンゼンを含むC8炭化水素と、C9+炭化水素とを含有する製品ストリームを生成させるトルエンの不均化工程と;
b)以下のいずれかを含む分離工程と:
1. 製品ストリームからC7-炭化水素を分離して低C7-濃度ストリームを生成させるC7-分離工程と;低C7-ストリームからC9+炭化水素を分離して、製品ストリームよりC8炭化水素を多く含む低C7-低C9+濃度ストリームを生成させるC9+分離工程;または
2. 製品ストリームからC9+炭化水素を分離して低C9+濃度ストリームを生成させるC9+分離工程と;低C9+ストリームからC7-炭化水素を分離して、製品ストリームよりC8炭化水素を多く含む低C7-低C9+濃度ストリームを生成させるC7-分離工程;または
3. 製品ストリームからC7-及びC9+炭化水素を分離して、製品ストリームよりC8炭化水素を多く含む低C7-低C9+濃度ストリームを生成させるC7-及びC9+分離工程;
c) 低C7-低C9+濃度ストリームの少なくとも一部からPXを分離するPX分離工程と;が含まれる。
【0011】
PX分離工程(c)には通常、所望の純度、例えば少なくとも99 wt%のPX生成物が得られる晶析工程が含まれる。PX分離工程(c)には、低C7-低C9+濃度ストリームの少なくとも一部が供給原料として用いられる。PX生成物の目標とする純度、及び低C7-低C9+濃度ストリーム中のPX濃度により、多段晶析装置または多段吸着装置が必要となる。
【0012】
晶析法は、エチルベンゼンと、3種類のキシレン異性体を含むC8芳香族からPX (p-キシレン)を分離するために用いることができる。PXの凝固点は13.3℃、MXの凝固点は-47.9℃、OXの凝固点は-25.2℃である。しかし、従来の晶析法では、多大の費用をかけなければ、純度が99.5wt %を超えるPXを作ることはできない。
【0013】
C8芳香族の混合物からPXを回収する晶析プロセスでは、供給原料混合物の冷却が必要である。PXは、凝固点が他のC8芳香族よりはるかに高いので、供給原料ストリームを冷却した後に、晶析装置中で容易に分離することができる。
【0014】
従来のPX晶析プロセスでは、供給原料には約22から約23%のPXが含まれている。これは、ナフサ接触改質、キシレン異性化、及び非形状選択的トルエン不均化(TDP)プロセスから得られる一般的な供給原料である。これらのプロセスでは、各キシレン異性体の比率はその反応温度における化学平衡の値に近い。これらの供給原料から高純度のPX (>99.5から>99.8 wt%)を製造するために、通常は-65から-70.5℃の非常に低い温度で、供給原料の冷却、晶析、分離が行われる。溶液から大部分のPXを回収するため、供給原料を華氏約-85から- 95度まで冷却しなければならないことがある。生成した結晶を融解し、できるだけ高純度のPXを得るために、生じた溶液を温和な条件下で再晶析し、分離精製する。
【0015】
共晶温度による制約があるため、従来の晶析プロセスにおけるPXの回収量は通常約60 - 65%程度に限られる。従ってこれらのプロセスは、新たに開発された、供給原料からPXを97 - 98%回収可能で設備費及び操業コストが低い吸着ベースのPX回収技術と比較して、経済的に不利である。
【0016】
米国特許5,448,005には、PXを回収するための晶析プロセスが開示されている。トルエン不均化プロセス等から得られる、化学平衡より高い濃度のPXを含む供給原料からPXを製造するために、単一温度晶析プロセスが用いられている。PX回収率を上げるための、スカベンジプロセスも用いられている。
【0017】
米国特許5,498,822には、PX回収のための晶析プロセスが開示されている。トルエン不均化プロセス等から得られる、化学平衡より高い濃度のPXを含む供給原料からPXを製造するために、単一温度晶析プロセスが用いられている。
【0018】
例えば米国特許5,349,113, 5,498,814, 5,349,114, 5,476,823, 5,367,099, 5,403,800, 5,365,004, 5,610,112, 5,455,213, 5,516,736, 5,495,059, 5,633,417, 5,659,098, 6,576,582及び6,777,583に、ゼオライト触媒のパラ−選択性を高めるための様々な方法が開示されている。
【0019】
供給原料に比較的高濃度のPXが含まれる場合、改良された晶析プロセス(国際公開WO95/26946)を用いることができる。選択的トルエン不均化(STDP)プロセスから得られるC8芳香族混合物には、通常70 wt%を超えるPXが含まれている。このタイプの供給原料の場合、比較的高い-17.8℃から10℃の温度の単一製造工程を用いて、高収量でPXを回収することができる。濾液は、-28.9℃から-1.1℃の相対的に低い温度の1以上のスカベンジプロセスに通され、さらにPXが回収される。回収されたPXは最終精製工程へ再循環される。C8芳香族混合物に97%を超えるPXが含まれている場合、スカベンジプロセスを用いずに、-28.9℃から10℃の単一製造工程で90%を超える収率が得られる(国際公開WO95/26947)。このようなC8芳香族混合物は、シリカで改質された触媒を用いるSTDPから得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
冷却必要量が少ないことと、PXの高い回収率が見込まれることから、これらの改質触媒プロセスは吸着ベースプロセスとの競争力がある。
【0021】
しかし、C9+炭化水素は晶析装置の性能を損なうため、晶析工程(c)への供給原料中のC9+炭化水素は低濃度であることが好ましいと考えられている。従って、工程(a)の製品ストリームからC9+成分を除去するC9+分離工程が必要であり、PX分離工程(c)への供給原料中のC9+濃度を所望のレベルにするために、通常はC9+蒸留カラムが必要とされている。
【0022】
C8ストリームを生成する高選択性トルエン不均化プロセスと、晶析プロセスとを組み合わせることにより、C9+分離工程が不要になるか、または最小限にできるという意外な効果が見出された。C9+分離工程が不要になるか、または最小限にできることにより、エネルギー使用量及び設備投資が低減されるとともに、PXを製造する際の周辺環境への排出量が低減されることによってPX製造コストが低減され、周辺への排出量が低減される。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この発明のいくつかの実施形態は、C8炭化水素及びC9+炭化水素を含むC8+供給原料を晶析条件下にある晶析プロセスへ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としたPX濃度が少なくとも99.5 wt%の濃縮PXストリームを生成させるPX製造プロセスに関し、ここで、C8+供給原料中のPX濃度が、C8+供給原料中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70wt%であり、C8+供給原料中のC9+炭化水素濃度が、C8+供給原料の全重量を基準として1 wppmから10 wt%であるPX製造プロセスに関する。
【0024】
別の実施形態では、この発明は:
(a)反応ゾーンへトルエンを含有するトルエン供給原料を供給する工程と;
(b) このトルエンを、トルエン不均化条件下で触媒に接触させて、C7-炭化水素と、PX、MX、及びOXから成るC8炭化水素と、C9+炭化水素とを含む流出液を生成させ、ここで流出液中のPX濃度が、流出液中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70wt%である工程と;
(c) 流出液からC7-炭化水素の少なくとも一部を除去してC8+炭化水素供給原料を生成させ、ここでC8+炭化水素供給原料中のC9+炭化水素濃度が、C8+炭化水素供給原料の全重量を基準として1 wppmから10 wt%である工程と;
(d) C8+炭化水素供給原料の少なくとも一部を晶析条件下にある晶析装置へ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としてPXを少なくとも99.5wt%含む濃縮PXストリームを生成させる工程とを含むPX製造プロセスに関する。
【0025】
この発明の方法のいくつかの側面では、晶析装置へ送られる供給原料はSTDPプロセスで製造されたものであり、
(a) トルエン供給原料の重量を基準として、少なくとも90wt%のトルエンと、1から10 wt%の非芳香族炭化水素とを含むトルエン供給原料を製造するトルエン精製工程であって、トルエン精製工程への供給原料は、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/またはスチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームを含み、ここで、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/またはスチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームは、少なくとも1 wppmから約15 wt%の非芳香族炭化水素を含むトルエン精製工程と;
(b) トルエン供給原料を、トルエン不均化条件下で触媒と接触させて、軽質ガス、Bz、PX、MX、OX、C9+、及び未反応トルエンを含むトルエン不均化生成物を製造し、ここで、トルエン不均化工程におけるトルエン転換率が、トルエン供給原料中のトルエンの重量を基準として約15から35 wt%の範囲であり、トルエン不均化生成物中のPX濃度が、トルエン不均化生成物中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70 wt%である工程と;
(c) トルエン不均化生成物から、軽質ガスの少なくとも一部と、Bzの少なくとも一部と、未反応トルエンの少なくとも一部とを分離して、請求項1, 2, 3, 5, 6,及び7に記載の供給原料を製造する工程とから実質的に成る。
【0026】
いくつかの実施形態では、この発明はPXを製造するプロセスに関し、
(a) トルエン供給原料の重量を基準として、少なくとも90wt%のトルエンと、1から10 wt%の非芳香族炭化水素とを含むトルエン供給原料を製造するトルエン精製工程であって、トルエン精製工程への供給原料は、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/またはスチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームを含み、ここで、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/またはスチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームは、少なくとも1 wppmから約15 wt%の非芳香族炭化水素を含むトルエン精製工程と;
(b) トルエン供給原料を、トルエン不均化条件下で触媒と接触させて、軽質ガス、Bz、PX、MX、OX、C9+、及び未反応トルエンを含むトルエン不均化生成物を製造し、ここで、トルエン不均化工程におけるトルエン転換率が、トルエン供給原料中のトルエンの重量を基準として約15から35 wt%の範囲であり、トルエン不均化生成物中のPX濃度が、トルエン不均化生成物中の全キシレンの重量を基準として少なくとも70 wt%である工程と;
(c) トルエン不均化生成物から、軽質ガスの少なくとも一部と、Bzの少なくとも一部と、未反応トルエンの少なくとも一部とを分離して、C8+供給原料を製造する工程と;
(d) C8+供給原料を晶析条件下にある晶析プロセスへ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としてPX濃度が少なくとも99.7 wt%の濃縮PXストリームを生成させるPX製造プロセスであって、ここで、C8+供給原料中のPX濃度が、C8+供給原料中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70wt%であり、C8+供給原料中のC9+炭化水素濃度が、C8+供給原料の全重量を基準として5000 wppmから10 wt%である工程とから実質的に成る。
【0027】
別の実施形態では、この発明は濃縮PXストリームを製造する設備に関し、(a)入口と出口を有する反応器と、(b) 入口と、第1出口及び第2出口を有する分離装置であって、分離装置の入口が反応器の出口と流通可能に連結された分離装置と、(c) 入口と、第1出口及び第2出口を有する晶析装置であって、晶析装置の入口が分離装置の第2出口と流通可能に連結された晶析装置とから成る設備に関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明で「骨格型」というときは、"Atlas of Zeolite Framework Types," (2001年)に記載されている意味で用いる。
【0029】
この発明では、周期律表の族の番号付与方法は、Chemical and Engineering News, 63(5), 27 (1985年)の記載と同じである。
【0030】
この発明では、「wppm」は百万分の一単位の重量分率を意味する。
【0031】
この発明では、モレキュラーシーブの重量、バインダーの重量、触媒成分の重量は、焼成後の重量(すなわち、510℃において、空気中で少なくとも1時間焼成したあとの重量)である。
【0032】
この発明で、nが例えば1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12の正の整数の「Cn」炭化水素と言うときは、一分子当りn個の炭素を有する炭化水素を意味する。例えばCn芳香族は、一分子当りn個の炭素を有する芳香族系炭化水素を意味する。Cnパラフィンは、一分子当りn個の炭素を有するパラフィン系炭化水素を意味する。Cnオレフィンは、一分子当りn個の炭素を有するオレフィン系炭化水素を意味する。
【0033】
この発明で、nが例えば1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12の正の整数の「Cn+」炭化水素と言うときは、一分子当り少なくともn個の炭素を有する炭化水素を意味する。この発明で、nが例えば1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12の正の整数の「Cn−」と言うときは、一分子当りnより大きくない数の炭素を有する炭化水素を意味する。
【0034】
nが例えば1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12の正の整数の「Cn+」供給原料と言うときは、供給原料の大部分(供給原料の重量を基準として50wt%を超える量)の炭化水素が、一分子当り少なくともn個の炭素を有する供給原料を意味する。
【0035】
nが例えば1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12の正の整数の「Cn-」供給原料と言うときは、供給原料の大部分(供給原料の重量を基準として50wt%を超える量)の炭化水素が、一分子当りnより大きくない数の炭素を有する供給原料を意味する。
【0036】
いくつかの実施形態では、この発明はPXを製造するプロセスに関し、C8炭化水素及びC9+炭化水素を含むC8+供給原料を晶析条件下にある晶析プロセスへ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としてPX濃度が少なくとも99.5 wt%の濃縮PXストリームを生成させるPX製造プロセスであって、ここで、C8+供給原料中のPX濃度が、C8+供給原料中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70wt%であり、C8+供給原料中のC9+炭化水素濃度が、C8+供給原料の全重量を基準として1 wppmから10 wt%であるPX製造プロセスに関する。
【0037】
この発明で「非芳香族」炭化水素と言うときは、芳香族環がない炭化水素を意味する。非芳香族炭化水素の例には、パラフィン、オレフィン、環状パラフィン、環状オレフィンが含まれる。
【0038】
別の実施形態では、この発明はPX製造プロセスであって、
(a)反応ゾーンへトルエンを含有するトルエン供給原料を供給する工程と;
(b) このトルエンを、トルエン不均化条件下で触媒に接触させて、C7-炭化水素と、PX、MX、及びOXから成るC8炭化水素と、C9+炭化水素とを含む流出液を生成させ、ここで流出液中のPX濃度が、流出液中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70 wt%である工程と;
(c) 流出液からC7-炭化水素の少なくとも一部を除去してC8+炭化水素供給原料を生成させ、ここでC8+炭化水素供給原料中のC9+炭化水素濃度が、C8+炭化水素供給原料の全重量を基準として1 wppmから10 wt%である工程と;
(d) C8+炭化水素供給原料の少なくとも一部を晶析条件下にある晶析装置へ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としてPXを少なくとも99.5 wt%含む濃縮PXストリームを生成させる工程とを含むPX製造プロセスに関する。
【0039】
<C8+供給原料>
この発明で用いられるC8+供給原料には、C8炭化水素と、C9+炭化水素とが含まれる。いくつかの実施形態では、この発明で用いられるC8+供給原料は、改質プロセス、水添分解プロセス、トルエン不均化プロセス、選択的トルエン不均化プロセス、トルエンメチル化プロセス、またはこれらを組合せて製造された炭化水素ストリームを分離/精製して製造される。この発明で用いられるC8+供給原料には、C8+供給原料の重量を基準として少なくとも70wt%の濃度のPXが含まれ、C8+供給原料の重量を基準として1 wppmから10 wt%の濃度のC9+炭化水素が含まれる。
【0040】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料中の全キシレンの重量を基準としてwt%で表すPXの濃度の下限値は、70, 75, 80, 85, 89, 93, 及び95である。
【0041】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料中の全キシレンの重量を基準としてwt%で表すPXの濃度の上限値は、99, 98, 97, 96, 95, 及び90である。
【0042】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料中の全キシレンの重量を基準としてwt%で表すPXの濃度の範囲は、ひとつの実施形態では70 wt%から 99 wt%、または75 wt%から98 wt%、または80 wt%から97 wt%、または85から95 wt%、または85 wt%から99 wt%、または85 wt%から95 wt%である。
【0043】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料の全重量を基準としてwt%で表すC9+炭化水素の濃度の下限値は、1 wppm, 2 wppm, 5 wppm, 10 wppm, 50 wppm, 100 wppm, 200 wppm, 500 wppm, 1000 wppm, 2000 wppm, 5000 wppm, 1 wt%, 2 wt%及び5 wt%である。
【0044】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料の全重量を基準としてwt%で表すC9+炭化水素の濃度の上限値は、100 wppm, 200 wppm, 500 wppm, 1000 wppm, 2000 wppm, 5000 wppm, 1 wt%, 2 wt%, 5 wt%及び10 wt%である。
【0045】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料の全重量を基準としてwt%で表すC9+炭化水素の濃度の範囲は、ひとつの実施形態では1 wppmから10 wt%、または10 wppmから5 wt%、または20 wppmから2 wt%、または1 wppmから1 wt%、または2 wppmから1 wt%、または5 wppmから1 wt%である。
【0046】
いくつかの実施形態では、C8+供給原料にナフタレンが含まれていてもよい。
【0047】
C8+供給原料にナフタレンが含まれている場合、C8+供給原料中のPXを含まないC8+成分を基準としてmol%で表すナフタレンの濃度範囲は、約0.0001から10 mol%である。
【0048】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料中のPXを含まないC8+成分を基準としてmol%で表すナフタレンの濃度の下限値は、0.0001, 0.0002, 0.0005, 0.001, 0.005, 0.01, 0.02, 0.05, 0.1, 0.2, 0.5, 1 mol%, 2 mol%及び5 mol%である。
【0049】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料中のPXを含まないC8+成分を基準としてmol%で表すナフタレンの濃度の上限値は、0.01, 0.02, 0.05, 0.1, 0.2, 0.5, 1 mol%, 2 mol%, 5 mol%及び10 mol%である。
【0050】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料中のPXを含まないC8+成分を基準としてmol%で表すナフタレンの濃度の範囲は、ひとつの実施形態では0.0001から10 mol%、または0.001から5 mol%、または0.002から2 mol%、または0.0001から1 mol%、または0.0002から1 mol%、または0.0005から1 mol%である。
【0051】
C8+供給原料中のPXを含まないC8+成分を基準としてmol%で表すナフタレンの濃度は下式で計算される。
【数1】

【0052】
<PX濃縮ストリーム>
ひとつの実施形態では、晶析装置で製造されたPX濃縮ストリームは、PX濃縮ストリームの重量を基準として少なくとも99.5 wt%の濃度のPXを含む。
【0053】
この発明のプロセスにおいて、PX濃縮ストリームの重量を基準としてwt%で表すPX濃縮ストリームの濃度の下限値は、95, 96, 97, 98, 99, 99.5, 99.6, 99.7, 99.8, 99.85, 99.86, 99.87, 99.88及び99.9である。
【0054】
この発明のプロセスにおいて、PX濃縮ストリームの重量を基準としてwt%で表すPX濃縮ストリームの濃度の上限値は、99.8, 99.85, 99.86, 99.87, 99.88, 99.89, 99.9, 99.95及び99.999999である。
【0055】
この発明のプロセスにおいて、PX濃縮ストリームの重量を基準としてwt%で表すPX濃縮ストリームの濃度の範囲は、ひとつの実施形態では95から100、または98から9.99, または99から99.99、または99.5から99.99、または99.6から99.99、または99.7から99.99である。
【0056】
<晶析条件>
ひとつの実施形態では、晶析装置は、PXとMXの共晶点、PXとナフタレンの共晶点(C8+供給原料にナフタレンが含まれる場合)、及びPXと他のC8+供給原料との共晶点の内の、最も高い共晶点より少なくとも1℃高い温度で操業される。
【0057】
別の実施形態では、晶析装置は、PXとMXの共晶点、PXとナフタレンの共晶点(C8+供給原料にナフタレンが含まれる場合)、及びPXと他のC8+供給原料との共晶点の内の、最も高い共晶点より少なくとも2℃, 3℃, 4℃, 5℃, 6℃, 7℃, 8℃, 9℃, 10℃, 15℃,または20℃高い温度で操業される。
【0058】
別の実施形態では、晶析装置は、PXとMXの共晶点、PXとナフタレンの共晶点(C8+供給原料にナフタレンが含まれる場合)、及びPXと他のC8+供給原料との共晶点の内の、最も高い共晶点よりも100℃, 50℃, 40℃, 30℃, 20℃高くない温度で操業される。
【0059】
別の実施形態では、晶析装置は、1℃から100℃、または2℃から50℃、または5℃から50℃、または5℃から30℃、または 5℃から20℃の温度範囲で操業される。
【0060】
好ましい実施形態では、晶析装置は少なくとも-30℃、または-25℃、または-20℃、または-18℃、または-15℃、または-10℃、または-5℃、または0℃、または5℃、または10℃の温度で操業される。
【0061】
いくつかの実施形態では、C8+供給原料のPX濃度がC8+供給原料中の全キシレン異性体の重量を基準として70 wt%を超える場合、単一生産段が用いられる晶析装置を-17.8℃から10℃の相対的に高い温度で操業し、ここで生じる濾液からさらにPXを回収するために、-28.9℃から-1.1℃の相対的に低い温度で操業される1以上のスカベンジ段に通し、回収したPXを、国際公開WO95/26946に開示されているように、最終精製するための生産段へ送る。
【0062】
または、C8+供給原料のPX濃度がC8+供給原料中の全キシレン異性体の重量を基準として70 wt%を超える場合、国際公開WO95/26947に開示されているように、スカベンジ段は用いずに、単一生産段が用いられる晶析装置を-28.9.8℃から10℃の温度で操業する。国際公開WO95/26946と国際公開WO95/26947を参照として本願に組み込む。
【0063】
上記の温度は最も低温の晶析段の温度である。実用上、高純度のPX製品を得るためには、温度が異なる2段または3段の処理が必要であることが知られている。しかし、回収されるPXの最大値は最低温段の温度により決まるため、この段の温度は重要である。
【0064】
PXが除去された濾液は、晶析装置の流出液中の固形成分含有量を調整するために、各段へ再循環される。晶析装置の流出液は、通常は遠心分離機が用いられる固−液分離装置へ送られる。最終的に得られる結晶製品は、残留する濾液を湿潤ケーキから除くために、液体、好ましくは高純度PX製品で洗浄される。
【0065】
いくつかの実施形態では、晶析装置は少なくとも65 wt%のPX回収率で操業される。
【0066】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料中PXの重量を基準としてwt%で表すPX回収率の下限値は、70, 75, 80, 85, 90, 91, 92, 93, 94, 95, 96, 97, 98及び99である。
【0067】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料中PXの重量を基準としてwt%で表すPX回収率の上限値は、75, 80, 85, 90, 91, 92, 93, 94, 95, 96, 97, 98, 99及び99.99である。
【0068】
この発明のプロセスにおいて、C8+供給原料中PXの重量を基準としてwt%で表すPX回収率の範囲は、ひとつの実施形態では95から100、または70から99.9、または80から99、または85から99.99、または90から99.99、または95から99.99である。
【0069】
<選択的トルエン不均化>
STDPにより、トルエン転化率が少なくとも10 wt%、好ましくは少なくとも約15-25 wt%であり、かつ、生成物中の全キシレン異性体を基準にしたPX選択性が85 wt%を超え、好ましくは少なくとも90 wt%でパラ−キシレンが得られるプロセスが提供される。
【0070】
トルエン供給原料は、例えばトルエンを含む供給原料の蒸留等の分離技術によって製造することができる。トルエンを含む供給原料の例は、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、スチームクラッカーからの芳香族生成物ストリーム、及びこれらの混合物である。
【0071】
いくつかの側面では、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、スチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームには、任意に、芳香族生成物ストリームから非芳香族炭化水素を除去するための分離操作が行われる。
【0072】
別の側面では、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、スチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームには、分離操作が行われず、芳香族生成物ストリームから非芳香族炭化水素は除去されない。
【0073】
トルエン供給原料中の非芳香族炭化水素の含有量は、トルエン供給原料を製造するための原料の組成、及びトルエン供給原料を製造するための原料精製方法/効率に依存する。
【0074】
トルエン供給原料には、トルエン供給原料の重量を基準として好ましくは約50 wt%から100 wt%のトルエンが含まれ、より好ましくは少なくとも約80 wt%のトルエンが含まれる。ベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼン、及び非芳香族炭化水素等の他の成分がトルエン供給原料中に含まれていてもよい。非芳香族炭化水素の量は、トルエン供給原料の全重量を基準として、約1 wppmから15 wt%の範囲である。
【0075】
この発明のプロセスにおいて、トルエン供給原料の全重量を基準としてwt%で表される非芳香族炭化水素の濃度の下限値は0.01, 0.1, 0.2, 0.5, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13及び14である。
【0076】
この発明のプロセスにおいて、トルエン供給原料の全重量を基準としてwt%で表される非芳香族炭化水素の濃度の上限値は1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14及び15である。
【0077】
この発明のプロセスにおいて、トルエン供給原料の全重量を基準としてwt%で表される非芳香族炭化水素の濃度の範囲は、ひとつの実施形態では0.1から15、または1から10、または3から15、または3から10、または4から15、または4から10である。
【0078】
所望により、トルエン供給原料を乾燥することができる。これにより、反応ゾーンに入る水分を最小限にすることができる。この発明で用いるトルエンの乾燥は、種々の公知の方法で行うことができる。このような方法には、例えばシリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、その他の適切な乾燥剤へのパーコレーション、ストリッピング、蒸留、および/または液体用乾燥器の使用が含まれる。
【0079】
この発明の方法に用いられるモレキュラーシーブ触媒は、修飾される前は水素型であることが好ましいが、アンモニアまたはナトリウム型であってもよい。好ましくは、モレキュラーシーブ触媒は上記のように、ZSM-5, ZSM-11, ZSM-22, ZSM-23,またはZSM-35等の中孔径モレキュラーシーブから成る。また、モレキュラーシーブ触媒のコンストレイン・インデックス(Constraint Index)は約1-12であることが好ましい。コンストレイン・インデックスの測定方法は、本願に参照として組み込む米国特許4,016,218に記載されている。
【0080】
本願で用いるモレキュラーシーブの結晶サイズは、好ましくは0.1ミクロンより大きい。モレキュラーシーブの結晶サイズの正確な測定は、非常に困難なことが多い。SEMやTEM等の顕微鏡による測定が用いられることもあるが、この方法では多数の結晶を測定する必要があり、各結晶について測定値を三次元に換算する必要がある。下記の実施例に示すZSM-5に関しては、90℃、8kPa-a炭化水素圧における2,2-ジメチルブタンの吸着速度の測定により、実効平均結晶サイズを求めた。結晶サイズは、J. Crank著、"The Mathematics of Diffusion" (Oxford、Clarendon Press社、1957年、52-56頁)に記載された、拡散状態を平板モデルで近似可能な固体の吸着速度についての拡散式を用いて計算した。また、2,2-ジメチルブタンの拡散係数Dを、1.5×10-14 cm2/秒として計算した。
【0081】
STDPに用いる触媒は、コークス、ケイ素、金属、またはこれらの組合せにより選択性が付与された触媒である。
【0082】
この発明のプロセスの操業条件は、パラ−キシレン選択性とトルエン転換率に影響を及ぼす。このような操業条件には、温度、圧力、空間速度、反応物のモル比、及び水素と炭化水素のモル比(H2/HC)が含まれる。また、空間速度(WHSV)を増加させることにより、アルキルベンゼン不均化反応における修飾された触媒のパラ−キシレン選択性が増加することが観察された。修飾された触媒のこのような特性により、現在の商業プラントでの操業と比較して、実質的に生産量を増加させることができる。さらに、H2を希釈剤として用いて不均化反応を行うことにより、触媒の寿命が大幅に増加することが観察された。例えば、温度を高くすることにより、修飾された触媒の活性が増加することが観察された。
【0083】
選択性が付与され、スチーム処理されたモレキュラーシーブ触媒を、気相不均化反応が生じる条件下で、トルエン供給原料と接触させる。高パラ−キシレン選択性と、十分なトルエン不均化転換率を得るための条件には、反応器入口温度約200℃から約600℃、好ましくは約350℃から約540℃;反応圧力約101.3 kPa-aから約34.48 MPa- a、好ましくは約689 kPa-aから約6.89 MPa-a;WHSV約0.1から約20時間-1、好ましくは約2から約10時間-1;及びH2/HCモル比0.1から約20、好ましくは約2から約6であることが含まれる。
【0084】
このプロセスは、バッチまたは流動床で操業することができる。いずれも容易に実施できる。この反応の流出液は、目的の生成物、すなわちp-キシレン、及び他の副生物を回収するために分離され、蒸留される。あるいは、キシレン異性体の場合のように、C8留分をさらに分離し、p-キシレンを得るために晶析工程で処理する。
【0085】
得られた結晶は、不要な副生物、特にエチルベンゼンの量を削減するためにさらに処理される。現状では、標準的トルエン不均化反応の流出液は、一般に約0.5%の副生エチルベンゼンを含んでいる。不均化反応生成物の蒸留により、C8留分中のエチルベンゼンの量が約3%から4%増加することがある。ポリマーグレードのp-キシレンの場合、このようなエチルベンゼンの濃度は許容されない。これは、p-キシレン中のエチルベンゼンが除去されないと、p-キシレンから得られる最終製品の繊維の品質が損なわれるためである。従って、p-キシレン中のエチルベンゼンの濃度を、低濃度に保たなければならない。p-キシレン中のエチルベンゼンの許容濃度の工業的な規格は0.3%未満とされている。エチルベンゼンは、晶析または超精留(superfractionation)プロセスにより、実質的に除去される。
【0086】
下流側でのエチルベンゼンの除去操作を回避するために、触媒に水素化/脱水素化機能を付与することによって、副生エチルベンゼンの濃度を低下させる。触媒への水素化/脱水素化機能の付与は、1種類以上の金属化合物、例えば白金、または白金/スズを添加すること等で行うことができる。
【0087】
このような金属として白金が好ましいが、その他、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト、モリブデン、ロジウム、ルテニウム、銀、金、水銀、オスミウム、鉄、亜鉛、カドミウム、及びこれらの組合せ等、周期律表の第6族から第12族の金属を用いることもできる。金属は、陽イオン交換により約0.001 wt%から約2 wt%の量、一般には約0.5 wt%の量で添加する。
【0088】
例えば、白金で修飾された触媒を調製する場合は、先ず触媒をアンモニア型に変換するために、触媒を硝酸アンモニウムの水溶液に加える。次に、この触媒を硝酸テトラアミン白金(II)水溶液、または塩化テトラアミン白金(II)水溶液と接触させる。次にこの触媒を濾過し、水洗し、約250℃から約500℃の温度で焼成する。当業者であれば、トルエン以外にアルキルベンゼンを含むプロセスであっても、同様であることが理解できよう。
【0089】
<PXの製造設備>
別の実施形態では、この発明は濃縮PXストリームを製造する設備に関し、(a)入口と出口を有する反応器と、(b) 入口と、第1出口及び第2出口を有する分離装置であって、分離装置の入口が反応器の出口と流通可能に連結された分離装置と、(c) 入口と、第1出口及び第2出口を有する晶析装置であって、晶析装置の入口が分離装置の第2出口と流通可能に連結された晶析装置とから成る設備に関する。
【0090】
一般に、トルエン不均化プロセスには、トルエン不均化反応器が含まれる。トルエン供給原料はトルエン不均化反応器に供給され、任意にH2がトルエンとともに供給される。このプロセスからの製品ストリームには一般に、H2と、C7-炭化水素(ベンゼンが含まれる)と、C8炭化水素(PX, MX,及びOXが含まれる)と、C9+炭化水素とが含まれる。
【0091】
製品ストリームは連続する複数の分留装置へ送られ、トルエン不均化反応器へ再循環されるH2と、軽質ガスと、最終製品のひとつであるベンゼンと、トルエン不均化反応器へ送り返されるトルエンとが分離される。H2、軽質ガス、ベンゼン、及びトルエンが分離された製品ストリームには、主にキシレン異性体とC9+炭化水素とが含まれる。晶析装置でPXを分離する前に、C9+炭化水素をキシレン異性体から分離することができる。
【0092】
この発明のいくつかの実施形態では、C9+分離工程を経ることなくC8+ストリームを晶析装置へ供給する。例えばキシレン異性体からC9+成分を分離する蒸留塔を不要にすること等によってC9+分離工程を除外することにより、大幅なエネルギー削減が達成される。C8+ストリーム中にC9+が含まれているので、下流側のPX晶析装置で同等のPX回収率を達成するためには、晶析装置をより低温で操業する必要がある。従って、同等のPX回収率を得るためには、PX晶析装置をより低温で操業するための余分なエネルギーが必要になる。
【0093】
C8+ストリーム中のPX濃度が70 wt%(C8+ストリーム中の全キシレン異性体の全重量を基準とする)を超え、C9+濃度が10 wt%未満(C8+ストリームの全重量を基準とする)で、ナフタレン濃度が10 mol%未満(C8+ストリーム中の、PXを含まないC8+を基準とする)のC8+ストリームの場合、C9+分離塔を除外することによるエネルギー削減量は、同等のPX回収率を得るためにPX晶析装置に要する余分な冷却エネルギー量を、大幅に上回る。
【0094】
C9+分離塔を除外することによるその他の利点は、分離装置を一つ用いないことによる操業コストの低減、すなわち、環境、エネルギー、及び費用上の利益である。
【0095】
以下の実施例によりこの発明の実施形態を説明するが、この発明の技術的範囲はこれらに限定されない。
【実施例】
【0096】
p-キシレン(PX)晶析プロセスでは、製品の回収率は、供給されるPXの濃度と最低温段の温度の関数となる。以下の回収率の計算式は、晶析装置における物質収支に基づいている。
【数2】

【0097】
ここで、
R = PXの回収率
XE =最低温段における濾液中のPXの平衡含有率
XF = 供給液中のPX含有率
また、晶析装置の設計において考慮すべき点は、製品のコンタミネーションを避けるために、温度を共晶点より少なくとも3‐6℃(華氏5‐10°)高い温度にすることである。すなわち、共晶点によって最低温段の温度が決まり、これによりXEと回収率PXが決まる。
【0098】
以下の実施例は、TDP(非形状選択的トルエン不均化プロセス)及びSTDP(選択的トルエン不均化プロセス)から得られると予想される組成物に基づき、改良された共晶プロセスにおける共晶温度と、PX回収可能量をシミュレーションした計算結果である。
【0099】
TDP及びSTDPプロセスからの典型的C8+留分の組成を表2に示す。実施例1-3のシミュレーションは、このデータに基づき行った。
【表2】

【0100】
計算を単純化するため、C9+除去工程によりC8+留分中の全てのC9+成分が除去されるものとした。C9+除去後のTDP及びSTDPからのC8+留分の組成を100%に規格化して表3に示す。実施例1-3のシミュレーションは、これらに基づき行った。
【表3】

【0101】
C8留分の場合、問題となる共晶点は、m-キシレン(MX)がPXとともに結晶を作る温度である。C8+留分の場合、この混合物にはPXより高い凝固点を有する他の成分が低濃度で含まれている。
【0102】
一般にこの混合物はほぼ理想溶液挙動を示し、各成分の凝固点降下は、その成分の純粋な状態での性質と、モル分率とに依存する。従って、ある成分の凝固点がPXより高くても、混合物中におけるその成分のモル分率によっては、PXより先に凝固するとは限らない。各実施例では、各混合物の限界共晶点を、下記に示す修正したvan't Hoff式から求めた。
【数3】

【0103】
式2は、この発明の実施例のC8+炭化水素留分のような理想溶液に適用可能である。式2は、単純なvan't Hoff式とは、融解熱量の変動係数の温度による補正が含まれている点で異なる。従って、大幅な凝固点降下があるときは、より正確である。表4に、各成分の凝固点降下定数AとBを示す。
【表4】

【0104】
式1で回収可能量を求めるにあたり、共晶点よりも少なくとも5℃高い温度におけるPX濃度を用いた。
【実施例1】
【0105】
C9+分離塔(従来、C8塔とも呼ばれる)を用いた場合の、MXの共晶点のシミュレーション結果は、温度-64.3℃であった。共晶点に対し5℃高い余裕を考慮した低温段の操業温度は、-59.3℃である。この温度における、PXを24.8wt%含む供給原料からの回収率は61.7%と計算された。
【0106】
C9+分離塔を用いない場合、MXの共晶点のシミュレーション結果は、温度-67.2℃であった。シミュレーションの結果、C9+分離塔を用いた場合と同じ回収率を得るための低温段の操業温度は、-61.3℃であった。この場合、C9+分離塔を用いた場合と比較して冷媒の必要量はわずかに増える。しかし、C9+分離塔を除外することによって得られるユーティリティ削減量の方が、冷却に要するコストの増加分よりも大きい。
【実施例2】
【0107】
C9+分離塔を用いた場合のMXの共晶点のシミュレーション結果は、温度-63. 4℃であった。共晶点に対し5℃高い余裕を考慮した低温段の操業温度は、-58.4℃である。この温度における、PXを83.5wt%含む供給原料からの回収率は97.4%と計算された。
【0108】
低温段を-58.4℃で操業することは可能であるが、エチレン冷媒の使用量を削減するために、この実施例の場合は低温段の温度をより高温に設定することが好ましい。この実施例において、低温段の温度が-18℃のときの回収率は85.4%と計算された。
【0109】
C9+分離塔を用いない場合、ナフタレン/PXの共晶点のシミュレーション結果は、温度-63.2℃であった。共晶点に対し5℃高い余裕を考慮した低温段の操業温度は、-58.2℃である。この温度における、PXを83.5wt%含む供給原料からの回収率は96.7%と計算された。
【0110】
シミュレーションの結果、C9+分離塔を用いた場合と同じ回収率(85.4%)を得るための低温段の操業温度は、-23℃であった。
【0111】
この場合、C9+分離塔を用いた場合と比較して冷媒の必要量は増える。しかし、C9+分離塔を除外することによって得られるユーティリティ削減量の方が、冷却に要するコストの増加分よりも大きい。
【実施例3】
【0112】
C9+分離塔を用いた場合の、MXの共晶点のシミュレーション結果は、温度-67.4℃であった。共晶点に対し5℃高い余裕を考慮した低温段の操業温度は、-62.4℃である。この温度における、PXを89.57wt%含む供給原料からの回収率は98.7%と計算された。
【0113】
低温段を-62.4℃で操業することは可能であるが、エチレン冷媒の使用量を削減するために、この実施例の場合は低温段の温度をより高温に設定することが好ましい。この実施例において、低温段の温度が-18℃のときの回収率は91.4%と計算された。
【0114】
C9+分離塔を用いない場合、ナフタレン/PXの共晶点のシミュレーション結果は、温度-32.1℃であった。共晶点に対し5℃高い余裕を考慮した低温段の操業温度は、-27.1℃である。この温度におけるPXを89.57wt%含む供給原料からの回収率は92.0%と計算された。
【0115】
シミュレーションの結果、C9+分離塔を用いた場合と同じ回収率(91.4%)を得るための低温段の操業温度は、7℃低い-25℃であった。
【0116】
この場合、C9+分離塔を用いた場合と比較して冷媒の必要量は増える。しかし、C9+分離塔を除外することによって得られるユーティリティ削減量の方が、冷却に要するコストの増加分よりも大きい。
【表5】

【0117】
本願に引用した全ての特許文献、試験方法(ASTM等)、その他の文献は、それが許される全ての法域において、この発明と抵触しない範囲で参照として本願に組み込まれる。
【0118】
複数の下限値と複数の上限値が記載されている場合、いずれかの下限値からいずれかの上限値の範囲が考慮される。
【0119】
本願で用いた用語の意義は、通常の意味で解釈される。特に「Handbook of Petroleum Refining Processes」(第3版、Robert A. Meyers編、McGraw-Hill社、2004年)が参照される。また、本願に引用した全ての特許文献、試験方法(ASTM等)、その他の文献は、それが許される全ての法域において、この発明と抵触しない範囲で参照として本願に組み込まれる。また、複数の下限値と複数の上限値が記載されている場合、いずれかの下限値からいずれかの上限値の範囲が考慮される。さらに、商品名にTM等が付されているときは、その商品名がいずれかの法域において商標権で保護されていることを示す。
【0120】
この発明の実施形態の例を示したが、当業者であれば、この発明の要旨を変更することなく種々の改変を容易に行うことができることを理解できるであろう。従って、本願の特許請求の範囲に係る発明の範囲は実施例及び明細書の記載によっては限定されず、特許請求の範囲及びその均等とみなされる範囲が考慮される。
【0121】
いくつかの実施形態では、この発明は以下に関する。
【0122】
1項.C8炭化水素及びC9+炭化水素を含むC8+供給原料を晶析条件下にある晶析装置へ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としてPX濃度が少なくとも99.5 wt%の濃縮PXストリームを生成させるPX製造プロセスにおいて、C8+供給原料中のPX濃度が、C8+供給原料中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70wt%であり、C8+供給原料中のC9+炭化水素濃度が、C8+供給原料の全重量を基準として1 wppmから10 wt%の範囲であるPX製造プロセス。
【0123】
2項. PXの製造方法であって、
(a)反応ゾーンへトルエンを含有するトルエン供給原料を供給する工程と;
(b) このトルエンを、トルエン不均化条件下で触媒に接触させて、C7-炭化水素と、PX、MX、及びOXから成るC8炭化水素と、C9+炭化水素とを含む流出液を生成させ、この流出液中のPX濃度が、流出液中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70 wt%である工程と;
(c) 流出液からC7-炭化水素の少なくとも一部を除去してC8+炭化水素供給原料を生成させ、このC8+炭化水素供給原料中のC9+炭化水素濃度が、C8+炭化水素供給原料の全重量を基準として1 wppmから10 wt%である工程と;
(d) C8+炭化水素供給原料の少なくとも一部を晶析条件下にある晶析装置へ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としてPXを少なくとも99.5 wt%含む濃縮PXストリームを生成させる工程とを含むPX製造プロセス。
【0124】
3項. PXの製造方法であって、
(e) トルエン供給原料の重量を基準として、少なくとも90wt%のトルエンと、1から10 wt%の非芳香族炭化水素とを含むトルエン供給原料を製造するトルエン精製工程であって、トルエン精製工程への供給原料は、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/またはスチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームを含み、ここで、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/またはスチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームが、少なくとも1 wppmから約15 wt%の非芳香族炭化水素を含むトルエン精製工程と;
(f) トルエン供給原料を、トルエン不均化条件下で触媒と接触させて、軽質ガス、Bz、PX、MX、OX、C9+、及び未反応トルエンを含むトルエン不均化生成物を製造し、ここで、トルエン不均化工程におけるトルエン転換率が、トルエン供給原料中のトルエンの重量を基準として約15から35 wt%の範囲であり、トルエン不均化生成物中のPX濃度が、トルエン不均化生成物中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70 wt%である工程と;
(g) トルエン不均化生成物から、軽質ガスの少なくとも一部と、Bzの少なくとも一部と、未反応トルエンの少なくとも一部とを分離して、C8+供給原料を製造する工程と;
(h) C8+供給原料を晶析条件下にある晶析プロセスへ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としてPX濃度が少なくとも99.7 wt%の濃縮PXストリームを生成させるPX製造プロセスであって、C8+供給原料中のPX濃度が、C8+供給原料中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70wt%であり、C8+供給原料中のC9+炭化水素濃度が、C8+供給原料の全重量を基準として5000wppmから10 wt%である工程とから実質的に成る、PXの製造方法。
【0125】
4項. 工程(b)に水素供給が含まれ、トルエン不均化条件がトルエン不均衡化条件であり、トルエン不均衡化条件に、温度が100から700℃の範囲、圧力が100 kPa-aから10000kPa-aの範囲、WHSVがトルエン供給原料中のトルエンの重量を基準として0.001から1000時間-1の範囲であることが含まれ、水素/トルエンのモル比が0.1から20の範囲である、2項または3項に記載のPXの製造方法。
【0126】
5項. C8+供給原料が、C8+供給原料からC9+炭化水素を除去することなく晶析装置へ供給される、2項から4項のいずれか1に記載のPXの製造方法。
【0127】
6項. C8+供給原料中のキシレン異性体の全重量を基準としたPX濃度が少なくとも85 wt%である、1項から5項のいずれか1に記載のPXの製造方法。
【0128】
7項. 濃縮PXストリーム中のPX濃度が、濃縮PXストリームの重量を基準として少なくとも99.7 wt%である、1項から6項のいずれか1に記載のPXの製造方法。
【0129】
8項. C9+炭化水素の濃度が、C8+供給原料の重量を基準として5000wppmから2 wt%の範囲である、1項から7項のいずれか1に記載のPXの製造方法。
【0130】
9項. C8+供給原料にさらにナフタレンが含まれ、C8+供給原料中のナフタレンモル濃度が、PXを含まないC8+供給原料の全モル数を基準として、10mol%未満である、1項から8項のいずれか1に記載のPXの製造方法。
【0131】
10項. 晶析装置の操業温度が少なくとも-30℃である、1項から9項のいずれか1に記載のPXの製造方法。
【0132】
11項. 晶析装置におけるPX回収率が少なくとも85%である、1項から10項のいずれか1に記載のPXの製造方法。
【0133】
12項. PXの製造方法であって、C8炭化水素及びC9+炭化水素を含むC8+供給原料を晶析条件下にある晶析装置へ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としてPX濃度が少なくとも99.5 wt%の濃縮PXストリームを生成させる工程を含み、C8+供給原料が下記工程を含むSTDPプロセスで製造されたC8+供給原料である、PXの製造方法。
【0134】
(i) トルエン供給原料の重量を基準として、少なくとも90wt%のトルエンと、1から10 wt%の非芳香族炭化水素とを含むトルエン供給原料を製造するトルエン精製工程であって、トルエン精製工程への供給原料は、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/またはスチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームを含み、ここで、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/またはスチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームが、少なくとも1 wppmから約15 wt%の非芳香族炭化水素を含むトルエン精製工程と;
(j) トルエン供給原料を、トルエン不均化条件下で触媒と接触させて、軽質ガス、Bz、PX、MX、OX、C9+、及び未反応トルエンを含むトルエン不均化生成物を製造し、ここで、トルエン不均化工程におけるトルエン転換率が、トルエン供給原料中のトルエンの重量を基準として約15から35 wt%の範囲であり、トルエン不均化生成物中のPX濃度が、トルエン不均化生成物中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70 wt%である工程と;
(k) トルエン不均化生成物から、軽質ガスの少なくとも一部と、Bzの少なくとも一部と、未反応トルエンの少なくとも一部とを分離して、1項から11項のいずれか1に記載のC8+供給原料を製造する工程。
【0135】
13項. 濃縮PXストリームを製造する設備であって、(l)入口と出口を有する反応器と、(m) 入口と、第1出口及び第2出口とを有する分離装置であって、分離装置の入口が反応器の出口と流通可能に連結された分離装置と、(n) 入口と、第1出口及び第2出口とを有する晶析装置であって、晶析装置の入口が分離装置の第2出口と流通可能に連結された晶析装置とから成る設備。
【0136】
14項. 反応器がトルエン不均化反応用に構成され、反応器の入口がトルエンを含むトルエン供給原料を反応器へ供給して、C7-炭化水素と、C8炭化水素と、C9+炭化水素とを含む流出液を生成させるように構成され、反応器の出口が流出液を反応器から取出すように構成され、分離装置がC7-炭化水素の少なくとも一部を流出液から分離してC8+供給原料を生成し、C8+供給原料中のC9+炭化水素濃度がC8+供給原料の重量を基準として1wppmから2 wt%になるように構成され、分離装置の第2出口がC8+供給原料を取り出せるように構成され、晶析装置が、濃縮PXストリームの重量を基準としたPX濃度が少なくとも99.5 wt%の濃縮PXストリームを生成させるように構成された、13項に記載の設備。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C8炭化水素及びC9+炭化水素を含むC8+供給原料を晶析条件下にある晶析装置へ供給して、濃縮PX(パラ−キシレン)ストリームの重量を基準としてPX濃度が少なくとも99.5 wt%の濃縮PXストリームを生成させるPX製造プロセスにおいて、前記C8+供給原料中のPX濃度が、前記C8+供給原料中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70wt%であり、前記C8+供給原料中の前記C9+炭化水素濃度が、前記C8+供給原料の全重量を基準として1 wppmから10 wt%の範囲であるPX製造プロセス。
【請求項2】
PXの製造方法であって、
(a)反応ゾーンへトルエンを含有するトルエン供給原料を供給する工程と;
(b) 前記トルエンを、トルエン不均化条件下で触媒に接触させて、C7-炭化水素と、PX、MX(メタ−キシレン)、及びOX(オルト−キシレン)から成るC8炭化水素と、C9+炭化水素とを含む流出液を生成させ、前記流出液中のPX濃度が、前記流出液中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70 wt%である工程と;
(c) 前記流出液から前記C7-炭化水素の少なくとも一部を除去してC8+炭化水素供給原料を生成させ、前記C8+炭化水素供給原料中の前記C9+炭化水素濃度が、前記C8+炭化水素供給原料の全重量を基準として1 wppmから10 wt%である工程と;
(d) 前記C8+炭化水素供給原料の少なくとも一部を晶析条件下にある晶析装置へ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としてPXを少なくとも99.5 wt%含む濃縮PXストリームを生成させる工程とを含むPX製造プロセス。
【請求項3】
PXの製造方法であって、
(a) トルエン供給原料の重量を基準として、少なくとも90wt%のトルエンと、1から10 wt%の非芳香族炭化水素とを含むトルエン供給原料を製造するトルエン精製工程であって、前記トルエン精製工程への供給原料は、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/またはスチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームを含み、前記接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、前記触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/または前記スチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームが、少なくとも1 wppmから約15 wt%の前記非芳香族炭化水素を含むトルエン精製工程と;
(b) 前記トルエン供給原料を、トルエン不均化条件下で触媒と接触させて、軽質ガス、Bz(ベンゼン)、PX、MX、OX、C9+、及び未反応トルエンを含むトルエン不均化生成物を製造し、前記トルエン不均化工程におけるトルエン転換率が、前記トルエン供給原料中のトルエンの重量を基準として約15から35 wt%の範囲であり、前記トルエン不均化生成物中のPX濃度が、前記トルエン不均化生成物中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70 wt%である工程と;
(c) 前記トルエン不均化生成物から、前記軽質ガスの少なくとも一部と、前記Bzの少なくとも一部と、前記未反応トルエンの少なくとも一部とを分離して、C8+供給原料を製造する工程と;
(d) C8+供給原料を晶析条件下にある晶析プロセスへ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としてPX濃度が少なくとも99.7 wt%の濃縮PXストリームを生成させるPX製造プロセスであって、前記C8+供給原料中のPX濃度が、前記C8+供給原料中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70wt%であり、前記C8+供給原料中のC9+炭化水素濃度が、前記C8+供給原料の全重量を基準として5000wppmから10 wt%である工程とから実質的に成る、PXの製造方法。
【請求項4】
工程(b)に水素供給が含まれ、トルエン不均化条件がトルエン不均衡化条件であり、前記トルエン不均衡化条件に、温度が100から700℃の範囲、圧力が100 kPa-aから10000kPa-aの範囲、WHSVがトルエン供給原料中のトルエンの重量を基準として0.001から1000時間-1の範囲であることが含まれ、水素/トルエンのモル比が0.1から20の範囲である、請求項2または3に記載のPXの製造方法。
【請求項5】
前記C8+供給原料が、前記C8+供給原料から前記C9+炭化水素を除去することなく晶析装置へ供給される、請求項2から4のいずれか1項に記載のPXの製造方法。
【請求項6】
前記C8+供給原料中の前記キシレン異性体の全重量を基準としたPX濃度が少なくとも85 wt%である、請求項1から5のいずれか1項に記載のPXの製造方法。
【請求項7】
前記濃縮PXストリーム中のPX濃度が、前記濃縮PXストリームの重量を基準として少なくとも99.7 wt%である、請求項1から6のいずれか1項に記載のPXの製造方法。
【請求項8】
前記C9+炭化水素の濃度が、前記C8+供給原料の重量を基準として5000wppmから2 wt%の範囲である、請求項1から7のいずれか1項に記載のPXの製造方法。
【請求項9】
前記C8+供給原料にさらにナフタレンが含まれ、前記C8+供給原料中のナフタレンモル濃度が、PXを含まない前記C8+供給原料の全モル数を基準として、10mol%未満である、請求項1から8のいずれか1項に記載のPXの製造方法。
【請求項10】
前記晶析装置の操業温度が少なくとも-30℃である、請求項1項から9のいずれか1項に記載のPXの製造方法。
【請求項11】
前記晶析装置におけるPX回収率が少なくとも85%である、請求項1項から10のいずれか1項に記載のPXの製造方法。
【請求項12】
PXの製造方法であって、C8炭化水素及びC9+炭化水素を含むC8+供給原料を晶析条件下にある晶析装置へ供給して、濃縮PXストリームの重量を基準としてPX濃度が少なくとも99.5 wt%の濃縮PXストリームを生成させる工程を含み、C8+供給原料が下記工程を含むSTDPプロセスで製造されたC8+供給原料である、PXの製造方法。
(a) トルエン供給原料の重量を基準として、少なくとも90wt%のトルエンと、1から10 wt%の非芳香族炭化水素とを含む前記トルエン供給原料を製造するトルエン精製工程であって、前記トルエン精製工程への供給原料は、接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/またはスチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームを含み、前記接触改質器からの芳香族生成物ストリーム、前記触媒クラッカーからの芳香族生成物ストリーム、および/または前記スチームクラッカーからの芳香族生成物ストリームが、少なくとも1 wppmから約15 wt%の非芳香族炭化水素を含むトルエン精製工程と;
(b) トルエン供給原料を、トルエン不均化条件下で触媒と接触させて、軽質ガス、Bz、PX、MX、OX、C9+、及び未反応トルエンを含むトルエン不均化生成物を製造し、ここで、トルエン不均化工程におけるトルエン転換率が、前記トルエン供給原料中のトルエンの重量を基準として約15から35 wt%の範囲であり、前記トルエン不均化生成物中のPX濃度が、前記トルエン不均化生成物中の全キシレン異性体の重量を基準として少なくとも70 wt%である工程と;
(c) 前記トルエン不均化生成物から、前記軽質ガスの少なくとも一部と、前記Bzの少なくとも一部と、前記未反応トルエンの少なくとも一部とを分離して、請求項1から11のいずれか1項に記載のC8+供給原料を製造する工程。
【請求項13】
濃縮PXストリームを製造する設備であって、
(a)入口と出口を有する反応器と、
(b) 入口と、第1出口及び第2出口とを有する分離装置であって、前記分離装置の前記入口が前記反応器の前記出口と流通可能に連結された分離装置と、
(c) 入口と、第1出口及び第2出口とを有する晶析装置であって、前記晶析装置の前記入口が前記分離装置の前記第2出口と流通可能に連結された晶析装置とから成る設備。
【請求項14】
前記反応器がトルエン不均化反応用に構成され、
前記反応器の前記入口がトルエンを含むトルエン供給原料を前記反応器へ供給して、C7-炭化水素と、C8炭化水素と、C9+炭化水素とを含む流出液を生成させるように構成され、
前記反応器の前記出口が流出液を前記反応器から取出すように構成され、
前記分離装置がC7-炭化水素の少なくとも一部を前記流出液から分離してC8+供給原料を生成し、前記C8+供給原料中のC9+炭化水素濃度が前記C8+供給原料の重量を基準として1wppmから2 wt%になるように構成され、
前記分離装置の前記第2出口が前記C8+供給原料を取り出せるように構成され、
前記晶析装置が、濃縮PXストリームの重量を基準としたPX濃度が少なくとも99.5 wt%の濃縮PXストリームを生成させるように構成された、請求項13に記載の設備。

【公表番号】特表2010−523572(P2010−523572A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502172(P2010−502172)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/055845
【国際公開番号】WO2008/124228
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】