説明

パラジウムイオン吸着剤及びパラジウムの分離回収法

【課題】有機溶媒を必要としない固−液型パラジウムイオン吸着剤、及びパラジウムの選択的な分離法収法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)


(式中、R、Rは各々独立して、水素原子又は炭素数1〜18の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、nは1〜4の整数を表す。)または、下記一般式(2)


(式中、R、Rnは上記と同じ定義である。)で示されるアミド含有硫黄官能基を有する化合物を担体に固定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のアミド含有硫黄官能基を担体表面に有するパラジウムイオン吸着剤、及びそれを用いたパラジウムの分離法乃至回収法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用触媒や自動車排ガス浄化触媒や多くの電化製品には、パラジウムが用いられている。パラジウムは高価であり、資源としても有用であることから、従来から使用後に回収してリサイクルすることが行われてきている。最近では資源の保全を考えて、回収及びリサイクルすることの重要性が一層増加している。
パラジウムを回収するために、沈殿分離法、イオン交換法、電解析出法、溶媒抽出法等の多くの方法が開発されており、これらのうち溶媒抽出法が経済性及び操作性の点から広く採用されている。例えば、水溶液中のパラジウムイオンを油溶性の抽出剤を溶解した有機溶媒と液−液接触させることによりパラジウムイオンを有機相側に抽出する方法が知られている。抽出剤としては、ジアルキルスルフィド等の硫黄含有有機化合物が用いられている(例えば、特許文献1参照)。また、抽出速度を改善させるため、ジアルキルスルフィドの硫黄近傍にアミド基を導入する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記した溶媒抽出法は、多量の有機溶剤を使用することから、安全性や環境負荷の面で課題を有する。
【0003】
このため、特定のチオエーテルをリガンドとし、それをスチレン誘導体のポリマー(例えば、ポリメチルスチレン)に固定化して水不溶性の固体状の高分子型スルフィド化合物とし、それをパラジウムイオンを含む水溶液中に直接添加してパラジウムイオンの吸着を行う、有機溶媒を用いない方法(吸着法)が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、特許文献3に記載の吸着法では、吸着剤のパラジウム吸着量が吸着剤1gあたり4mg(0.04mmol)と低いという問題があった。
上記したとおり、パラジウムを回収するために、溶媒抽出法が経済性及び操作性の点から広く採用されているが、有機溶媒の使用が必須であるという課題を有する。
一方、水に不溶性の高分子型キレート剤やイオン交換樹脂を用いる吸着法は、有機溶媒を用いずに金属分離が行えるという利点があるが、特定の金属に対する選択性が低い場合が多い。例えば、特許文献3に記載の高分子スルフィド型化合物により、複数の金属が混在する溶液中からパラジウムを選択的に分離したという知見は、特許文献3には開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9―279264号公報
【特許文献2】国際公開第2005/083131号パンフレット
【特許文献3】特開平5―105973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の溶媒抽出法における、液−液型パラジウム抽出剤の抽出性能及び選択性を併せ持ち、且つ有機溶媒を使用する必要のない固−液型パラジウムイオン吸着剤、及びそれを用いたパラジウムの選択的な分離法乃至回収法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のアミド含有硫黄官能基を担体表面に有するパラジウム吸着剤を見出し、さらにこの吸着剤を用いてパラジウムの分離回収を行うことで、上記した課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下に示すとおりのパラジウムイオン吸着剤、及びそれを用いたパラジウムの分離法乃至回収法である。
[1]下記一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R、Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜18の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
で示されるアミド含有硫黄官能基を担体表面に有するパラジウムイオン吸着剤。
[2]下記一般式(2)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R、Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜18の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
で示される化合物が担体に固定化されていることを特徴とするパラジウムイオン吸着剤。
[3]一般式(1)又は一般式(2)において、R及びRが炭素数1〜4の鎖式炭化水素基であり、且つn=1又は2であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のパラジウムイオン吸着剤。
[4]担体が、スチレン系ポリマーであることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のパラジウムイオン吸着剤。
[5]上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のパラジウムイオン吸着剤をパラジウムを含有する水溶液と接触させ、パラジウムを前記パラジウムイオン吸着剤に吸着させることを特徴とするパラジウムの分離方法。
[6]上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のパラジウムイオン吸着剤をパラジウムを含有する水溶液と接触させて、パラジウムを前記パラジウムイオン吸着剤に吸着させ、次いで前記パラジウムイオン吸着剤に吸着したパラジウムを、溶出液により溶出して、パラジウムを含む水溶液を得ることを特徴とするパラジウムの回収方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパラジウムイオン吸着剤は、パラジウムに対して高い親和性を有し、パラジウム以外に白金、ロジウム等の白金族金属イオンが混在する場合に、又は亜鉛、銅等の卑金属イオンが混在する場合に、パラジウムイオンが高選択的に吸着されるという特徴を有する。
一方、本発明のパラジウムの分離法乃至回収法によれば、パラジウムイオンを含む水溶液中からパラジウムを、本発明のパラジウムイオン吸着剤に効率良く且つ選択的に吸着させることができ、更に溶出液を用いることで、前記吸着剤に吸着したパラジウムを効率的に回収することができる。
また、本発明のパラジウムの分離法乃至回収法によれば、有機溶媒を用いることなく、工業用触媒や自動車排ガス浄化触媒中のパラジウムを効率良く且つ選択的に吸着回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における塩酸濃度と金属吸着量との関係を示す図である。
【図2】実施例2における溶出液とパラジウム溶出率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のパラジウムイオン吸着剤(以下、「本発明の吸着剤」と称する場合がある。)は、上記一般式(1)で示されるアミド含有硫黄官能基を担体表面に有するものであるか、又は、上記一般式(2)で示される化合物が担体に固定化されているものである。
【0014】
上記一般式(1)および上記一般式(2)において、R、Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜18の鎖式炭化水素基(これらの基は分岐していても差し支えない。)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。これらのうち、水素原子、炭素数1〜8の鎖式炭化水素基、炭素数5〜8の脂環式炭化水素基、炭素数6〜8の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0015】
炭素数1〜18の鎖式炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、2−エチルヘキシル基、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、1−ヘプチニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、2−メチル−1−プロペニル基等が挙げられる。
炭素数3〜10の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘキサトリエニル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基等が挙げられる。
炭素数6〜14の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ビフェニリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
上述した一般式(1)および一般式(2)におけるR、Rとしては、炭素数1〜4の鎖式炭化水素基が好ましく、炭素数1〜2の鎖式炭化水素基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0016】
上記一般式(1)および上記一般式(2)において、nで示されるカルボニル基−硫黄原子間のメチレン数は1〜4の整数であり、1又は2の場合が好ましく、1の場合が特に好ましい。
【0017】
本発明において、担体としては、水に不溶性のものであれば特に制限なく用いることができる。
このような担体としては、例えば、ポリスチレン、架橋ポリスチレン等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化オレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の高分子担体や、活性炭、シリカゲル、珪藻土、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、マグネシア、ポリシロキサン等の無機担体が挙げられる。
【0018】
ここで、架橋ポリスチレンとは、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等のモノビニル芳香族化合物とジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、ビスビニルジフェニル、ビスビニルフェニルエタン等のポリビニル芳香族化合物との架橋共重合体を主体とするものであり、これらの共重合体にグリセロールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、等のメタクリル酸エステルが共重合されていてもよい。
【0019】
本発明において、架橋ポリスチレンとしては、架橋ポリスチレンにハロアルキル基を導入したものが特に好ましい。架橋ポリスチレンにハロアルキル基を導入する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、モノビニル芳香族化合物として、クロロメチルスチレン、クロロエチルスチレン、ブロモメチルスチレン、ブロモブチルスチレン等のハロアルキルスチレン等を用い、これとポリビニル芳香族化合物とを共重合させる方法が挙げられる。
本発明においては、これらの担体のうち、ポリスチレン、架橋ポリスチレン等のスチレン系ポリマーが好ましい。
【0020】
本発明において用いられる担体の形状としては、球状(例えば、球状粒子等)、粒状、繊維状、顆粒状、モノリスカラム、中空糸、膜状(例えば、平膜等)等の一般的に分離基材として使用される形状が利用可能であり、特に限定するものではないが、これらのうち、球状、膜状、粒状、繊維状のものが好ましい。球状粒子はカラム法やバッチ法で使用する際、その使用体積を自由に設定できることから、特に好ましく使用できる。
担体として球状粒子を用いる場合、その平均粒径としては通常1μm〜10mmの範囲、好ましくは2μm〜1mmの範囲であり、平均細孔径としては通常1nm〜1μm、好ましくは1nm〜300nmの範囲である。
【0021】
この場合、上記一般式(1)で示されるアミド含有硫黄官能基を担体へ固定化する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、上記一般式(2)で示される硫黄含有アミド化合物を担体に化学的に結合させ固定化する方法や、上記一般式(2)で示される硫黄含有アミド化合物を担体に物理的に吸着させて担持する方法等が挙げられる。
【0022】
本発明の吸着剤は、例えば、担体が架橋ポリスチレンの場合には、クロロメチルスチレンとジビルベンゼンとの架橋ポリスチレンである、ポリクロロメチルスチレン(PCMS)と、上記一般式(2)で表される硫黄含有アミド化合物とを塩基性条件下で反応させることにより、製造することができる。
また、例えば、上記一般式(2)で示される硫黄含有アミド化合物を、THF等の溶媒に溶解させ、次いで上記した担体を加えて、当該化合物を当該担体に含浸させて、更に溶媒を留去することにより、本発明の吸着剤を製造することができる。
【0023】
本発明の吸着剤において、パラジウムイオン収着剤に含まれる上記一般式(1)で示されるアミド含有硫黄官能基の量は、目的に応じて任意に調節可能であり、特に限定するものではないが、本発明のパラジウムイオン吸着剤に対して、上記一般式(1)で示されるアミド含有硫黄官能基を1〜80重量%の範囲で含有することが好ましく、5〜60重量%の範囲がさらに好ましい。
【0024】
また、上記一般式(2)で示される硫黄含有アミド化合物を担体に固定化(担持)する場合は、担体への当該化合物の固定化率(担持率)は、目的に応じて任意に調節可能であり、特に限定するものではないが、本発明のパラジウムイオン吸着剤に対して、上記一般式(2)で示される硫黄含有アミド化合物が1〜80重量%の範囲で固定化(担持)されているのが好ましく、5〜60重量%の範囲がさらに好ましい。
【0025】
上記一般式(2)で示される硫黄含有アミド化合物の製造法としては、特に限定するものではないが、下記式(A)
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、R、R、nは上記と同じ定義である。)
で示されるクロロアミドに、塩基性条件下でチオ安息香酸を反応させて、下記式(B)
【0028】
【化4】

【0029】
(式中、Bzはベンゾイル基を表し、R、R、nは上記と同じ定義である。)
で示されるチオエステルを得、次に、チオエステルを塩基性条件下で加水分解後、酸で中和することにより、上記一般式(2)で示されるアミド含有硫黄化合物を得ることができる。
【0030】
本発明のパラジウムの分離法は、本発明の吸着剤をパラジウムを含有する水溶液と接触させ、パラジウムを前記吸着剤に吸着させることを特徴とする。
また、本発明のパラジウムの回収法は、本発明の吸着剤をパラジウムを含有する水溶液と接触させて、パラジウムを前記吸着剤に吸着させ、次いで前記吸着剤に吸着したパラジウムを、溶出液により溶出して、パラジウムを含む水溶液を得ることを特徴とする。
上記したパラジウムの分離法乃至回収法において、本発明で処理対象となる被対象溶液は、例えば、自動車排ガス処理触媒を溶解した水溶液や、白金族金属の湿式精錬工程における酸浸出後溶液を用いることができる。これらの被対象溶液はパラジウム、白金、ロジウム等の白金族金属を含有するものであるが、これらのうちパラジウム以外の成分は必須というものではない。
【0031】
本発明の吸着剤によりパラジウムを吸着するためには、まず、上記の被対象溶液に本発明の吸着剤を添加する。この際にこの溶液を攪拌すること望ましい。また、被対象溶液は酸性であることが好ましく、塩酸酸性であることがさらに好ましい。被対象溶液の塩酸濃度としては、本発明の吸着剤は広範な塩酸濃度範囲で使用可能であり、特に限定するものではないが、0.1〜5mol/Lの範囲が好ましい。この範囲の塩酸濃度において、パラジウムの吸着効率を損なうことなく吸着を実施することができる。
また、上記したパラジウムの分離方法乃至回収方法において、被対象溶液中のパラジウムに対し、上記した本発明のパラジウムイオン吸着剤を、上記一般式(2)で示される硫黄含有アミド化合物換算で、等モル量以上用いるのが好ましい。
前記の操作によりパラジウムイオン吸着剤に吸着されたパラジウムを、溶出液により溶出して、パラジウムを含む水溶液を得ることで、パラジウムを回収する。パラジウムの溶出液としては、例えば、アンモニア水又は濃塩酸等を好適に用いることができる。本発明に係る吸着剤を用いてパラジウムを吸着した場合には、前記の溶出液を用いることにより、パラジウムを水溶液として回収することができる。
【実施例】
【0032】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定して解釈されるものではない。
【0033】
合成例1.
上記一般式(1)で示されるアミド含有硫黄官能基を担体表面に有するパラジウムイオン吸着剤(又は上記一般式(2)で示される硫黄含有ジアミド化合物を高分子担体に固定化したパラジウムイオン吸着剤)の合成例を以下に記す。
【0034】
【化5】

【0035】
500mLセパラブルフラスコに、N,N’−ジエチル−2−メルカプトアセタミド22.08g(0.15mol)、ポリクロロメチルスチレン(非架橋型)22.89g(塩素分0.15mol)、トルエン90g、ポリエチレングリコール400(PEG400)3g、及び10%水酸化ナトリウム水溶液60g(0.15mol)を量り取り、窒素気流下40℃で15時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、有機層をメタノール300gに注ぎ、固体を析出させた。これをろ取し、水、メタノールで洗浄した後、乾燥することで、上記式(3)で示される吸着剤(以下、吸着剤(3)と称する。)を淡黄色固体として収量19.45gで得た。元素分析結果から算出した、吸着剤(3)1g中の上記一般式(1)で示されるアミド含有硫黄官能基量(又は上記一般式(2)で示される硫黄含有アミド化合物量)は507mgであり、吸着剤(3)1g中の硫黄含有量は3.4mmolであった。
【0036】
実施例1.
パラジウム、白金、ロジウム、鉄、銅、亜鉛、及びニッケルを各50mg/L含む塩酸溶液10mLに、合成例1で合成した吸着剤(3)を0.1g添加して室温で1時間縦震盪し、吸着試験を実施した。その後、10分間遠心分離を行い、上澄みの残存金属濃度をICP発光分光器(Horiba社製、製品名:ULTIMA2)にて測定した。
残存金属濃度と初濃度とから各金属の吸着率を求めた。結果を図1に示す。図1から明らかなとおり、塩酸濃度5mol/L以下において、パラジウムが選択的に約55%以上吸着され、塩酸濃度1mol/L以下において、パラジウムが選択的に95%以上吸着された。
【0037】
実施例2.
実施例1で用いた吸着剤(3)をろ過、乾燥したものを、アンモニア水溶液1mL、アンモニア水溶液2mL、アンモニア水溶液3mLおよび10mol/L塩酸溶液1mLの各種溶出液中室温で1時間縦震盪し、溶出試験を実施した。その後、10分間遠心分離を行い、上澄みの溶出パラジウム濃度をICP発光分光器(Horiba社製、製品名:ULTIMA2)にて測定した。
溶出パラジウム濃度と初濃度とから、パラジウムの溶出率を求めた。結果を図2に示す。図2から明らかなとおり、溶出液として28%アンモニア水溶液1mLを用いた場合、吸着時の塩酸濃度にあまり依存せず、パラジウム溶出率は約30%であった。また、溶出液として28%アンモニア水溶液3mLを用いると、パラジウム溶出率はほぼ100%となった。また、10mol/L塩酸溶液1mLを用いた場合も81%と高い溶出率が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R、Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜18の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
で示されるアミド含有硫黄官能基を担体表面に有するパラジウムイオン吸着剤。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】

(式中、R、Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜18の鎖式炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
で示される化合物が担体に固定化されていることを特徴とするパラジウムイオン吸着剤。
【請求項3】
一般式(1)又は一般式(2)において、R及びRが炭素数1〜4の鎖式炭化水素基であり、且つn=1又は2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパラジウムイオン吸着剤。
【請求項4】
担体が、スチレン系ポリマーであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のパラジウムイオン吸着剤。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のパラジウムイオン吸着剤をパラジウムを含有する水溶液と接触させ、パラジウムを前記パラジウムイオン吸着剤に吸着させることを特徴とするパラジウムの分離方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のパラジウムイオン吸着剤をパラジウムを含有する水溶液と接触させて、パラジウムを前記パラジウムイオン吸着剤に吸着させ、次いで前記パラジウムイオン吸着剤に吸着したパラジウムを、溶出液により溶出して、パラジウムを含む水溶液を得ることを特徴とするパラジウムの回収方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−41916(P2011−41916A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192388(P2009−192388)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】