説明

パラレルギャップ溶接装置

【課題】 1本の加圧シャフトに一対の電極を取り付けて使用するパラレルギャップ溶接装置において、押圧時の荷重による電極先端の横ずれ動作を抑制する。
【解決手段】 一対の電極を保持する機構を、加圧シャフト2の押圧方向と直交する方向に間隙を置いて平行に設けられた第1の一対の板ばね6A、6A′、6B、6B′と、加圧シャフト2の押圧方向に間隙を置いて平行に設けられた第2の一対の板ばね10A、10A′、10B、10B′と、前記第1の一対の板ばねの一端と前記第2の一対の板ばねの一端とを連結する連結部11A、11Bと、前記第1の一対の板ばねの他端に設けられた前記加圧シャフト2への取り付け部7A、7Bと、前記第2の一対の板ばねの他端に設けられた電極固定部13A、13Bと、前記連結部の間隔を調整する間隔調整部で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接合装置に関し、特にパラレルギャップ溶接装置における溶接電極の保持部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電極にリード線やワイヤを接続する目的や、断線が発生したプリント配線板の配線パターンを修理するために金属製のリボン材を接続する目的で、比較的押圧力が小さくて済み、微小面積を溶接するのに有利な抵抗溶接法であるパラレルギャップ溶接が利用されている。この方法による溶接作業の一例として、プリント配線板の断線修理における溶接の様子を図7に基づいて説明する。
【0003】
図7において51はプリント配線板、52はプリント配線板51上に形成された配線パターン、54は金属製の補修部材であるリボン材、55は電極組立である。ここで、プリント配線板51はステージ53上に位置ずれしないように載置され、ステージ53は断線箇所52Aの近傍にある溶接箇所が電極組立55の直下に位置するように、水平面上のX方向、Y方向に移動して位置決め動作を行なう。またさらに水平面上の姿勢を所定の角度とするためにθ方向に回転する。
【0004】
位置決めがなされた後リボン材54が断線箇所52Aにあてがわれ、断線箇所52Aの両側の配線パターン52とリボン材54とを図7(a)で示す54Aと54Bの位置で溶接する。電極組立55は図7(b)で示すように、一対の電極55Aおよび55Bが間隙55Cを挟んで配置されており、両電極の先端で被接合部材であるリボン材54を押圧した後、図示しない電力供給手段により両電極に電位差が与えられ、この電位差で配線パターン52とリボン材54とに電流が流れ、この部分に発生したジュール熱によってナゲットが形成され溶接がなされる。
【0005】
このような溶接方法であるから、スポット溶接法のように、重ね合わされた被接合部材の両側面を一対の電極で挟持する必要がない。したがってパラレルギャップ溶接法は、前述したプリント配線板上での断線修理や電気部品に既に形成された電極へのリード線の接続に非常に有利な溶接方法といえる。しかしながら、このパラレルギャップ溶接法は一対の電極の間隙の大きさ(以下ギャップ長と記載する)が溶接のための制御因子として大きな比重を占めており、特許文献1にも溶接対象の溶け込み深さをコントロールするためにギャップ長の設定範囲を規定する記載がなされている。
【0006】
ここで、このパラレルギャップ溶接法の制御因子を、前記スポット溶接法と比較してみると、スポット溶接法の場合、電極が溶接対象に加える荷重、溶接電流、通電時間が制御因子であるが、パラレルギャップ溶接法ではこれらに加えて、ギャップ長および両電極の均等な接触抵抗が溶接結果に影響を与えるとされている。このようなパラレルギャップ溶接法の電極保持の形態にも幾つかあり、従来から一般に使用されている形態として、まず図8(a)で示すような一体タイプの電極56を加圧手段57にセットして使用する形態がある。
【0007】
この一体タイプの電極56は一対の電極を電気絶縁性の接着剤で一体に固定したものであり、これを加圧手段57の下端に固定する。加圧手段57は溶接対象に対して所定の荷重で電極を当接させるものであり、固定した電極56の先端を水平に研磨して使用する。このとき電極56は一体となっているので、溶接対象の表面が完全な平面でない場合は両電極の溶接対象に対する荷重に差が生じ、両電極の均等な接触抵抗を得ることはできない。そしてギャップ長を調整することが不可能であることは言うまでもない。
【0008】
また、図8(b)で示すような分割タイプの電極58を加圧手段59にセットして使用する形態もあり、この場合加圧手段59の下端に独立して設けられた一対の加圧シャフト59A、59Bにそれぞれ電極58の一方が固定される。そして両電極下端の上下方向の位置が揃っていなくても、あるいは溶接対象の表面が完全な平面でない場合でも、両電極が前記加圧シャフト59A、59Bによって独立してこれに追従し、溶接対象に対する荷重に差が生じないようになっている。しかしながらギャップ長の設定は、電極58を加圧シャフト59A、59Bに固定するときのみに調整可能であり、可変ではない。
【0009】
さらに他の形態として、特許文献2に記載されたパラレルギャップ溶接装置を図9に基づいて説明する。図9において、(a)は従来のパラレルギャップ溶接装置の電極保持部を表した側面図である。また、(b)は(a)に示した断面A−Aを表した断面図である。この(b)において断面は加圧シャフト61のみである。次に(c)は(a)に示した断面B−Bを表した断面図である。
【0010】
まず図9(a)において62は昇降部であり、溶接対象に向けて所定量接近したり離隔したりする昇降動作を行なう。また、昇降部62の底面から下方に突出した加圧シャフト61は、その先端近傍に電極保持部63が固定され、この電極保持部63に分割タイプの電極64が保持されている。ここで加圧シャフト61は昇降部62に対して上下動可能に下方に突出しており、昇降部62が下降して電極64の先端が溶接対象に接触した後、所定の荷重で電極64の先端が溶接対象を押圧するように昇降部62に保持されている。
【0011】
また電極保持部63は図9(b)で示すように、一対の電極64の一方64Aと他方64Bをそれぞれ保持する二つのブロック63Aと63Bとに分かれ、さらにそれぞれが角度調整ブロック65A、65B、電極保持ブロック66A、66B、板ばね67A、67B、67A′、67B′で校正されている。また、角度調整ブロック65Aは板ばね67A、67A′を介して電極保持ブロック66Aと一体に組み立てられ、角度調整ブロック65Bも板ばね67B、67B′を介して電極保持ブロック66Bと一体に組み立てられている。そして、電極保持ブロック66A、66Bには分割タイプの電極64A、64Bが電極押え68A、68Bによって固定されている。ここで両電極64A、64Bにはギャップ69が設けられており、加えて、ブロック63Aと63Bとの間にも間隙が設けられている。
【0012】
図9(c)は加圧シャフト61に対してブロック63Aおよび63Bがどのように固定されているかを示す断面図である。加圧シャフト61は下端近傍の表面が電気的に絶縁処理されており、そこに筒状ナット70が嵌め込まれている。この筒状ナット70に対し水平方向から対向して2本のねじ71A、71Bが螺合し、ブロック63Aと63Bとで加圧シャフト61を挟み込むように締め付けて固定している。ここで2本のねじ71A、71Bは絶縁ワッシャ72A、72Bによってブロック63A、63Bと絶縁されているので、ブロック63Aと63Bとの間に電気的導通はない。
【0013】
また、ツマミ80を回すことで、これに軸着されたねじ73が回り、これに螺合する角度調整ブロック65Aとツマミ80側の角度調整ブロック65Bとの間隔が変化する。ここで、絶縁ワッシャ74、75および絶縁筒76により角度調整ブロック65Aと65Bとの電気的絶縁が保たれる。また圧縮コイルばね77は、電極64の間隔を広げる際に角度調整ブロック65A、65Bを引き離す方向の力を発生するとともに、ねじ73の螺合部に生じるバックラッシを除去している。このような構造なので、ツマミ80を回すことで角度調整ブロック65A、65Bに、加圧シャフト61を中心とした相対的な角度変化が生じ、電極64Aおよび64Bのギャップ長も変化する。
【0014】
また、加圧方向に2枚平行に配置された板ばね67Aと67A′及び67Bと67B′は、電極64A、64Bをそれぞれ独立して加圧方向に弾性的に保持しており、独立して固定された両電極64A、64B先端の上下方向の位置が完全に揃っていない場合、あるいは溶接対象の上面が平坦でなかった場合にも、両電極が均等な荷重で溶接対象に接触するように追従させるものである。また、板ばね67Aに対する67A′及び67Bに対する67B′は、それぞれ平行に配置されているので、板ばねの変形が微小な範囲である場合は、電極64の先端は加圧シャフト61の押圧方向と平行な方向に移動する。
【0015】
また4枚の板ばねを含め、角度調整ブロック65A、65Bおよび電極保持ブロック66A、66Bは、素材として良導電材を使用しており、図9(a)及び(b)を見て右端に設けてある接続端子78A、78Bに給電ケーブル(図示省略)を接続し、溶接電流を電極64の先端まで供給することができる。したがって、このような電極保持構造を設けることで、一対の電極のそれぞれが独立して上下方向に弾性を有するとともに、溶接対象の品種ごと、あるいは溶接条件ごとに容易にギャップ長が調整できるものである。
【0016】
【特許文献1】特許第2877883号公報(第2頁、図1)
【特許文献2】特公昭42−24972号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、図9に基づいて説明した電極保持構造では、溶接対象への押圧力を電極保持部に与える加圧シャフト61の軸と、溶接対象を直接押圧する電極64の先端の位置がオフセットしている。したがって、例えば近年の高精細な配線パターンの修理に代表される溶接対象の微小化に対応するには、次のような問題が生じる。図10(a)は図9に基づいて説明したギャップ長可変型の電極保持部の側面図である。ここで、電極保持部63に対して、加圧シャフト61から矢印(ア)方向へ押圧力が加わると、溶接対象に当接した電極64の先端は矢印(イ)方向の反力を受ける。
【0018】
すると、ベクトル(ア)とベクトル(イ)とにはオフセットが存在するので、昇降部62内部で加圧シャフト61を支持する部分から電極64の先端にかけてモーメント力が発生し、たとえ剛体の部品を強固に固定した構造であっても、この作用により電極64の先端は矢印(ウ)の方向にずれてしまう。ここで電極64は、別に設けられた図示しない顕微鏡で、真上から接合部を観察できるように斜めに電極保持ブロック66A、66Bに固定されているが、図10(b)で示すように電極64を垂直に固定したとしても、やはり前記オフセットは依然として存在するので、電極64の先端は矢印(ウ)の方向にずれてしまう。
【0019】
従って、例えば前述した高精細な配線パターンのパターン幅は近年では数十μmであることも珍しくなく、その断線箇所に溶接して修理するためのリボン材の幅も同等であったとしたら、矢印(ウ)の方向への電極64先端のずれが微小であったとしても、それは大きく溶接品質に影響する。そして、このような微量の矢印(ウ)方向のずれの問題に対しては、従来の電極保持部の形態を保ったまま、その剛性を高めることで対処するのは極めて困難である。
【0020】
また、図9(b)及び(c)で示すように、ギャップ長を調整するためにツマミ80を回した場合、ブロック63Aと63Bは加圧シャフト61を中心とした回転方向に両者の相対角度を変化させるため、電極64の溶接対象との一対の接触面も相対的に角度が変化する。このことから、例えば配線パターンの断線箇所にリボン材を溶接して修理する際に次のような現象が考えられる。ここでギャップ長を縮小した場合を想定すると、図11(a)の斜線で示した接触面79、79の状態が、ギャップ長を縮小することによって図11(b)のように傾斜した状態に変化する。そしてパラレルギャップ溶接法の性質として、溶接対象を流れる電流は両電極の接触面の最も接近した部分に偏るので、電流iは溶接対象(この場合リボン材と配線パターン)の片側に偏って流れてしまい、ナゲットの位置も所望の位置から外れてしまうという問題を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は第1の態様として、1本の加圧シャフトに対して一対の電極を取り付けて使用するパラレルギャップ溶接装置であって、前記一対の電極のそれぞれを保持する機構は、前記加圧シャフトの押圧方向と直交する方向に間隙を置いて平行に設けられた第1の一対の板ばねと、前記加圧シャフトの押圧方向に間隙を置いて平行に設けられた第2の一対の板ばねと、前記第1の一対の板ばねの一端と前記第2の一対の板ばねの一端とを連結する連結部と、前記第1の一対の板ばねの他端に設けられた前記加圧シャフトへの取り付け部と、前記第2の一対の板ばねの他端に設けられた電極固定部とを有し、一対の電極それぞれに対応する2つの前記連結部同士の間隔を調整する間隔調整部を設けるとともに、前記電極固定部に一対の電極を取り付けたとき、一対の電極の溶接対象への当接面の中心を結ぶ仮想直線が、前記加圧シャフトの軸心の延長線近傍に位置するように前記電極固定部を配置することを特徴とするパラレルギャップ溶接装置を提供する。
【0022】
また本発明は第2の態様として、前記間隔調整部は、一方の連結部を貫通し他方の連結部に螺合するねじの回転によって2つの連結部の間隔を拡縮するものであり、この拡縮に応じて2つの前記第1の一対の板ばねが変形することを特徴とする第1の態様として記載のパラレルギャップ溶接装置を提供する。
【0023】
さらに本発明は第3の態様として、前記間隔調整部は、前記第2の一対の板ばねの間隙に配置されることを特徴とする第1又は第2のいずれかの態様として記載のパラレルギャップ溶接装置を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の態様によれば、電極先端の上下方向の位置が完全に揃っていない場合、あるいは溶接対象の表面が完全な平面でない場合も、一対の電極が均等な荷重で溶接対象を押圧するように、それぞれ独立して弾性的に溶接対象の表面を押圧する。また、一対の電極の間隔を容易に調整できる構造であることに加えて、電極の先端と加圧シャフトの軸心とのオフセットを無くした構造なので、溶接時の加圧によって電極と溶接対象との間に加圧方向以外の力が生じない。したがって、電極が所定の荷重で溶接対象を押圧しても電極先端の当接部の位置ずれが発生しない。
【0025】
また本発明の第2の態様によれば、加圧シャフトへの取り付け部と連結部とのあいだに介在する第1の一対の板ばねが変形することで、ねじの回転により2つの連結部は互いに平行に移動してその間隔を拡縮する。したがって、この連結部に第2の一対の板ばねと電極固定部を介して固定された電極の先端部、つまり溶接対象との当接部も互いに平行に移動し、一対の前記当接部の間隔が拡縮しても、図11(b)で示したような互いの姿勢の変化が発生しない。
【0026】
さらに本発明の第3の態様によれば、第2の一対の板ばねの間隙の空間を利用して、2つの連結部の間隔を拡縮する機構を形成しているので、電極保持機構の小型化が達成でき、微細な溶接対象に好適なパラレルギャップ溶接装置が構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に添付図面を参照して本発明に係るパラレルギャップ溶接装置の実施形態を詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明に係るパラレルギャップ溶接装置の一実施形態を示す正面図、図2は同側面図である。図1及び図2において符号1は昇降部、2は加圧シャフト、3は電極保持機構、4は電極である。電極4は従来の技術で説明したものと同様であり、一対の電極4A、4Bに間隙を持たせて電極保持機構3に固定し、両者に電位差を与えることでその先端の当接面が当接している溶接対象に電流を流して溶接を行うものである。本実施形態では電極保持機構3の上部に設けた接続端子5A、5Bに図示しない給電ケーブルを接続し、図示しない電源からの給電を行なうようになっている。そして、この電源としては、瞬時に電圧を立ち上げ、その後の電圧制御も予め入力されたプロファイルに従って、早い応答性で追従するパルスヒート電源を使用する。
【0029】
また、昇降部1は溶接対象に対して近接と離間の動作を行なうものである。現実には全ての溶接装置の場合において上下動であるとは限らないが、図示しないステージ上に載置された溶接対象への近接と離間の動作、つまり上下動を前提として、本書では昇降部と記載する。そしてこの昇降部1が所定の距離下降して電極4の当接面が溶接対象に当接すると、その後はその反力により加圧シャフト2は昇降部1の内部に向けて沈み込む。ここで加圧シャフト2は、昇降部1の内部において溶接対象の方向に向けて弾性的に付勢されており、昇降部1への沈み込み量に応じてこの付勢の応力は増加する。そして、予め設定した応力にこの付勢の応力が一致したとき、電源からの溶接電流が電極4に供給されるようになっている。
【0030】
図1において符号(エ)で示すのが加圧シャフト2の軸心である。そしてその下方への延長線は一対の電極4A、4Bの間隙を通り、両電極の当接面のあいだに位置するようになっている。また図2においても、符号(エ)で加圧シャフト2の軸心が示してあり、その下方への延長線は電極4の当接面の中心に位置するようになっている。図2では電極4Bの側面を示しているが、この軸心(エ)の延長線は、一対の電極のそれぞれの当接面の中心を結ぶ直線上に一致するように設定されている。
【0031】
次に図1で示した電極保持機構3の詳細を図3及び図4に基づいて説明する。図3は電極保持機構3の正面図、図4は同側面図である。図3において、符号6A、6A′は電極4の一方の電極4Aを保持するために設けられた第1の一対の板ばねであり、加圧シャフト2の押圧方向と直交する方向に間隙をおいて平行に設けられている。また、6B、6B′は電極4の他方の電極4Bを保持するために設けられた第1の一対の板ばねであり、加圧シャフト2の押圧方向と直交する方向に間隙をおいて平行に設けられている。
【0032】
そして、第1の一対の板ばね6A、6A′はその上端が取り付け部7Aと連接しており、第1の一対の板ばね6B、6B′はその上端が取り付け部7Bと連接している。これら取り付け部7A、7Bは、表面が電気絶縁処理された加圧シャフト2の下端近傍2Aを挟み込むようにして、2本のねじ8、9で固定されている。ねじ8、9は図4においてその前後位置を示してある。この固定により電極4を保持した電極保持機構3は、加圧シャフト2に連結され溶接動作を行なう。
【0033】
図3において符号10A、10A′は電極4の一方の電極4Aを保持するために設けられた第2の一対の板ばねであり、加圧シャフト2の押圧方向に間隙を置いて平行に設けられている。また、10B、10B′は電極4の他方の電極4Bを保持するために設けられた第2の一対の板ばねであり、加圧シャフト2の押圧方向に間隙を置いて平行に設けられている。また第2の一対の板ばね10B、10B′は、図4で示すように、その背面側の一端は連結部11Bにねじ12により螺着されており、その正面側の一端は電極固定部13Bにねじ12により螺着されている。
【0034】
図4では示されていないが、第2の一対の板ばね10A、10A′も、その背面側の一端は連結部11Aに螺着されており、その正面側の一端は電極固定部13Aに螺着されている。そして図4で示すように、前述した第1の一対の板ばね6B、6B′の下端は、連結部11Bに連接しており、これも図示はされていないが、第1の一対の板ばね6A、6A′も連結部11Aに連設している。2組の第1の一対の板ばね6A、6A′、6B、6B′と取り付け部7A、7B及び連結部11A、11Bとの構造的関係は電極保持機構3の断面を正面から見た図である図5に明快に示されている。
【0035】
さらに図3で示すように、電極固定部13A、13Bには電極押え14A、14Bによって一対の電極4A、4Bが固定されている。電極固定部13A、13Bには位置決め用の溝が設けてあり、この溝に勘合した状態で電極4A、4Bは電極押え14A、14Bに挟み込まれるように固定される。ただし、電極押え14A、14Bの固定ねじを緩めることにより、電極4A、4Bは上下方向の位置を調整することができる。なお、本実施形態では第1の一対の板ばね6A、6A′、6B、6B′は、取り付け部7A、7B及び連結部11A、11Bと切削加工により一体に形成され、第2の一対の板ばね10A、10A′、10B、10B′は、連結部11A、11B及び電極固定部13A、13Bに両端が螺着されているが、この接続構造はそれぞれ何れの方法でもよく、或いは、ばねの作用方向に回動自由に接続しない限り溶接等他の方法でもよい。
【0036】
次に図5に基づいて一対の電極4A、4Bの間隔を調節する構造について説明する。図5は電極保持機構3を正面から見たもので、電極4、電極押え14A、14B、電極固定部13A、13Bの図示を省略し、第2の一対の板ばね10A、10A′、10B、10B′及び連結部11A、11Bの断面を表したものである。本実施形態の構造においては、ツマミ15を回すことにより連結部11A、11Bの互いの間隔(オ)が変化する。ツマミ15に連接されたねじ及びその周辺の構造、つまり間隔調整部の構造は、従来の技術で図9(c)に基づいて説明した構造と同様であるので、符号を付した詳細な説明は省略する。ただし、本実施形態では図9(c)に基づいて説明した構造と同等のものを採用したが、第1の一対の板ばね6A、6A′、6B、6B′は変形に対する反発力を有しているので、両連結部11A、11Bを引き離す方向の力やバックラッシを除去するための力を得るための圧縮コイルばねは、構成要素から除外しても差し支えない。
【0037】
ここで、ツマミ15を回すことで間隔(オ)が変化すると、第1の一対の板ばね6A、6A′、6B、6B′が略Sの字型に変形する。しかし一対の板ばね6Aと6A′、6Bと6B′はそれぞれ加圧シャフト2の押圧方向と直交する方向に平行に設けられているので、それらの下端に連設している連結部11A、11Bは、やはり加圧シャフト2の押圧方向と直交する方向に(移動距離が小さい場合は近似的に)平行移動する。したがって、連結部11A、11Bの背面側でこれらに螺着されている第2の一対の板ばね10A、10A′、10B、10B′(図4参照)も同じ方向に平行移動し、これらに正面側で螺着された電極固定部13A、13B及び一対の電極4A、4Bも加圧シャフト2の押圧方向と直交する方向に平行移動する。
【0038】
次に図6に基づいて一対の電極4A、4Bがそれぞれ独立して溶接対象の表面の凹凸に追従する構造を説明する。図6は電極保持機構3の側面図であり、電極4のうち一方の電極4Aが当接した溶接対象の表面よりも他方の電極4Bが当接した表面のほうが、高さ(カ)だけ高い場合を想定して描いてある。実際にはこの高さ(カ)はμm単位の微小な高さを想定しているが、図6ではその距離を誇張して描いてある。また、一方の電極4Aを支持する第2の一対の板ばね10A、10A′は変形していないものとして描いてある。
【0039】
ここで、溶接対象の表面に凹凸が存在すると、第2の一対の板ばね10A、10A′、10B、10B′はそれぞれ独立して略Sの字型に変形し、弾性的に一対の電極4A、4Bに荷重を与える。そして、一対の板ばね10Aと10A′、10Bと10B′はそれぞれ加圧シャフト2の押圧方向に平行に設けられているので、これらに支持された一対の電極4A、4Bも加圧シャフト2の押圧方向に対して姿勢を変えることなく溶接対象を押圧する。また、この説明では、溶接対象に凹凸が存在した場合を説明したが、溶接対象には凹凸は存在せず、両電極先端の上下方向の位置が揃っていなかった場合にも、同様の作用を奏することは言うまでもない。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のパラレルギャップ溶接装置を使用することで、加圧シャフト2の軸心の延長線と電極4の溶接対象への当接面の位置とにオフセットがなくなる(図2参照)。また、加圧シャフト2の押圧方向と直交する方向に間隙を置いて平行に第1の一対の板ばねを配置したので、電極4の2箇所の当接面は、その姿勢(水平面内での角度)を変えずに間隔を拡縮する。さらに、電極間隔の調整部を第2の一対の板ばねの間隙に配置したので、電極保持機構の小型化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態を示す正面図
【図2】本発明の実施形態を示す側面図
【図3】本発明の実施形態を示す要部詳細正面図
【図4】本発明の実施形態を示す要部詳細側面図
【図5】本発明の実施形態を示す要部詳細断面図
【図6】本発明の実施形態を示す要部詳細側面図
【図7】従来の技術を示す斜視図及び側面図
【図8】従来の技術を示す側面図
【図9】従来の技術を示す側面図及び断面図
【図10】従来の技術を示す側面図
【図11】従来の技術を示す平面図
【符号の説明】
【0042】
1 昇降部
2 加圧シャフト
3 電極保持機構
4 電極
5A、5B 接続端子
6A、6A′、6B、6B′ 第1の一対の板ばね
7A、7B 取り付け部
8、9、12 ねじ
10A、10A′、10B、10B′ 第2の一対の板ばね
11A、11B 連結部
13A、13B 電極固定部
14A、14B 電極押え
15 ツマミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の加圧シャフトに対して一対の電極を取り付けて使用するパラレルギャップ溶接装置であって、前記一対の電極のそれぞれを保持する機構は、前記加圧シャフトの押圧方向と直交する方向に間隙を置いて平行に設けられた第1の一対の板ばねと、前記加圧シャフトの押圧方向に間隙を置いて平行に設けられた第2の一対の板ばねと、前記第1の一対の板ばねの一端と前記第2の一対の板ばねの一端とを連結する連結部と、前記第1の一対の板ばねの他端に設けられた前記加圧シャフトへの取り付け部と、前記第2の一対の板ばねの他端に設けられた電極固定部とを有し、一対の電極それぞれに対応する2つの前記連結部同士の間隔を調整する間隔調整部を設けるとともに、前記電極固定部に一対の電極を取り付けたとき、一対の電極の溶接対象への当接面の中心を結ぶ仮想直線が、前記加圧シャフトの軸心の延長線近傍に位置するように前記電極固定部を配置することを特徴とするパラレルギャップ溶接装置。
【請求項2】
前記間隔調整部は、一方の連結部を貫通し他方の連結部に螺合するねじの回転によって2つの連結部の間隔を拡縮するものであり、この拡縮に応じて2つの前記第1の一対の板ばねが変形することを特徴とする請求項1に記載のパラレルギャップ溶接装置。
【請求項3】
前記間隔調整部は、前記第2の一対の板ばねの間隙に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のパラレルギャップ溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−154171(P2009−154171A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333525(P2007−333525)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】