パルストランス
【課題】コイルの電線の脱落と高電圧放電を防止することができるパルストランスを提供する。
【解決手段】パルストランスは、鉄心と、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記鉄心の周囲に配置された一次コイルと、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記一次コイルの周囲に配置された二次コイルと、前記一次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第1内側含浸部材及び第1外側含浸部材と、前記二次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第2内側含浸部材及び第2外側含浸部材とを備え、前記二次コイルは、前記一次コイルよりも巻数が多く、且つコイル径が一方向に向かって先細りになっている形状である。
【解決手段】パルストランスは、鉄心と、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記鉄心の周囲に配置された一次コイルと、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記一次コイルの周囲に配置された二次コイルと、前記一次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第1内側含浸部材及び第1外側含浸部材と、前記二次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第2内側含浸部材及び第2外側含浸部材とを備え、前記二次コイルは、前記一次コイルよりも巻数が多く、且つコイル径が一方向に向かって先細りになっている形状である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルストランスに関する。本発明のパルストランスには高電圧を印加することができ、本発明のパルストランスは、クライストロン電源での使用に適している。
【背景技術】
【0002】
従来クライストロン電源に使用されていたパルストランスは、図11に示すような外観を有しており、ベークライト等の絶縁板にて製造した巻き枠に1次コイル及び2次コイル用の電線を等間隔にて間隙を保って巻き、エポキシ接着剤等で巻き枠表面に接着固定する方法で作成されてきた(例えば、非特許文献1を参照)。
【非特許文献1】M. Akemoto et. al., "Development of The Pulse Transformer for NLC Klystron Pulse Modulator", PACO7, 1997 PARTICLE ACCELERATOR CONFERENCE, Vancouver, B.C., Canada, 12-16 May 1997, p.1322-1324
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記パルストランスでは、(1)エポキシ接合が強固ではなく、長期の使用後にコイルの電線が脱落すること、(2)油を含浸後にコイルと巻き枠との間にボイドが残る場合があり、ここに高電圧が発生し、絶縁油中であっても高電圧放電が引き起こされること、(3)巻き枠そのものに強度がなく、外圧によって、コイルに力がかかり、コイルの電線の脱落が引き起こされることといった問題がある。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、コイルの電線の脱落と高電圧放電を防止することができるパルストランスを提供するものである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
本発明のパルストランスは、鉄心と、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記鉄心の周囲に配置された一次コイルと、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記一次コイルの周囲に配置された二次コイルと、前記一次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第1内側含浸部材及び第1外側含浸部材と、前記二次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第2内側含浸部材及び第2外側含浸部材とを備え、前記二次コイルは、前記一次コイルよりも巻数が多く、且つコイル径が一方向に向かって先細りになっている形状であり、第1内側含浸部材、前記一次コイル及び第1外側含浸部材は、第1内側含浸部材及び第1外側含浸部材に樹脂が含浸されるように形成された第1モールド部内に配置され、第2内側含浸部材、前記二次コイル及び第2外側含浸部材は、第2内側含浸部材及び第2外側含浸部材に樹脂が含浸されるように形成された第2モールド部内に配置されている。
【0006】
本発明のパルストランスでは、コイルがモールド部内に配置されているので、コイルの電線の脱落が起こらない。また、本発明では、コイルの内側面及び外側面に内側含浸部材及び外側含浸部材が備えられ、これらの含浸部材に樹脂が含浸されるようにモールド部が形成されているので、コイルを構成する螺旋状の電線の隣接する2つの螺旋段の間に樹脂が確実に入り込み、モールド部内にボイドが発生することが抑制され、高電圧放電が防止される。
【0007】
また、本発明のパルストランスでは、二次コイルのコイル径が一方向に向かって先細り(錐台形状)になっている。コイル径が小さい側をGND側とし、コイル径が大きい側を信号出力側とする。二次コイルをこのような形状にすることによって、信号出力側において二次コイルと鉄心との間で放電が起こることが抑制され、GND側において磁束の漏れが最小限に抑えられてパルスの立ち上がりが速くなる等の利点が得られる。従って、本発明のパルストランスは、高電圧が印加される用途に適している。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。
前記二次コイルの隣接する2つの螺旋段間の間隔を保持する間隔保持部材をさらに備え、前記間隔保持部材は、隣接する2つの螺旋段の一方の上側に配置されている第1部分と、隣接する2つの螺旋段の他方の下側に配置されている第2部分を有してもよい。
前記間隔保持部材に樹脂が含浸されていてもよい。
前記一次コイルは、複数本の電線を互いに平行に螺旋状に巻いて構成され、前記複数本の電線の端部は、第1モールド部内において共通の外部端子に接続されていてもよい。
第1モールド部は、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第1突出部を端部に備え、第2モールド部は、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第2突出部を端部に備え、第1突出部及び第2突出部は、それぞれ、第1モールド部及び第2モールド部と一体化されていてもよい。
第1突出部内には第1突出部含浸部材が配置されており、第2突出部内には第2突出部含浸部材が配置されていてもよい。
前記一次コイル及び前記二次コイルは、それぞれ、軸方向に垂直な断面が円形であり、前記一次コイル及び前記二次コイルは、同心円状に配置されていてもよい。
第1及び第2モールド部の樹脂は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなってもよい。
第1及び第2モールド部の樹脂は、エポキシ樹脂からなってもよい。
前記各含浸部材は、ガラス繊維布で構成されていてもよい。
ここで示した種々の実施形態は、互いに組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す内容は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0010】
図1(a)〜図9(b)を用いて、本発明の一実施形態のパルストランスについて説明する。図1(a)〜(c)は、本実施形態のパルストランスの概略構成を示し、図1(a)は、平面図であり、図1(b)は、図1(a)中のI−I断面図であり、図1(c)は、図1(a)の裏面図である。図2(a)及び(b)は、図1(b)の領域Aの拡大図であり、図2(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。図3(a)及び(b)は、図1(b)の領域Bの拡大図であり、図3(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。図4(a)及び(b)は、それぞれ二次コイルの電線の巻きつけ方法を説明するための図3(a)に対応した断面図である。図5(a)〜(c)は、モールドされた一次コイルを示し、図5(a)〜(c)は、それぞれ、平面図、正面図及び裏面図である。図6(a)〜(c)は、モールドされた二次コイルを示し、図6(a)〜(c)は、それぞれ、平面図、正面図及び裏面図である。図7(a)〜(c)は、第2モールド部に取り付けられるコロナリングの構成を示し、図7(a)は、平面図、図7(b)は、図7(a)中のI−I断面図であり、図7(c)は、第2モールド部に取り付けられた状態を示す正面図である。図8(a)は、図1(c)の領域Cの拡大図であり、図8(b)は、図8(a)中のI−I断面図である。図9(a)及び(b)は、真空含浸法を説明するための図1(b)に対応した断面図であり、図9(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。
【0011】
本実施形態のパルストランスは、図1(a)〜(c)に示すように、鉄心1と、一次コイル3と、二次コイル5とを備える。一次コイル3は、電線3dを螺旋状に巻いて構成され、鉄心1の周囲に配置されている。二次コイル5は、電線5dを螺旋状に巻いて構成され、一次コイル3の周囲に配置されている。
一次コイル3の内側面及び外側面には、図2(a)〜(b)に示すように、それぞれ、第1内側含浸部材3a及び第1外側含浸部材3bが配置されている。第1内側含浸部材3a、一次コイル3及び第1外側含浸部材3bは、第1内側含浸部材3a及び第1外側含浸部材3bに樹脂が含浸されるように形成された第1モールド部3c内に配置されている。
二次コイル5の内側面及び外側面には、図3(a)〜(b)に示すように、それぞれ、第2内側含浸部材5a及び第2外側含浸部材5bが配置されている。第2内側含浸部材5a、二次コイル5及び第2外側含浸部材5bは、第2内側含浸部材5a及び第2外側含浸部材5bに樹脂が含浸されるように形成された第2モールド部5c内に配置されている。二次コイル5は、一次コイル3よりも巻数が多く、且つコイル径が一方向に向かって先細りになっている形状である。
本実施形態のパルストランスは、放電がさらに起こりにくくなるように、通常、絶縁油中に沈めた状態で動作させる。
一例では、本実施形態のパルストランスの仕様は、以下の通りである。
【0012】
【表1】
【0013】
以下、各構成要素を詳細に説明する。
【0014】
1.鉄心
鉄心1の材料は、磁束の伝達が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、厚さ0.05〜0.35mmの電磁鋼帯や方向性ケイ素鋼板である。鉄心1は、一次コイル3及び二次コイル5の内側を通るように配置されている。鉄心1の横断面形状(一次コイル3及び二次コイル5の軸に垂直な断面の形状)は、特に限定されず、例えば、正方形、長方形又は円形である。鉄心1は、複数パーツに分割可能であり、例えば図1(b)の場合、一次コイル3及び二次コイル5の上側に位置する部分1aを取り外して、モールドされた一次コイル3及び二次コイル5を設置した後、取り外した部分1aを再度取り付けている。
【0015】
2.一次コイル
一次コイル3は、図5(b)に示すように、電線3dが螺旋状に巻かれて構成されている。本実施形態では、一次コイル3は、複数本(図5(b)では5本)の電線3dが互いに平行に螺旋状に巻かれて構成されている。複数本の電線3dを平行に巻くことの利点は、(1)電流を多く流すことができることと、(2)浮遊インダクタンスを小さくすることができることである。各電線3dは、一例では、図2(a)に示すように、エナメル線(銅線の周囲にエナメルがコーティングされた線)4aと、絶縁被覆部4bとで構成されている。絶縁被覆部4bは、一例では、エポキシが含浸されたガラス繊維布(例:不織布)からなる。
【0016】
一次コイル3の横断面形状(軸に垂直な方向の断面の形状)は、特に限定されず、例えば、正方形、長方形、円形等であるが、円形が好ましい。円形である場合、パルス動作中に磁場との相互作用による一次コイル3の歪みが起こりにくく、一次コイル3の歪みに起因する超音波の騒音の発生を抑制することができるからである。
【0017】
複数本の電線3dの端部3eは、図5(b)に示すように、第1モールド部3c内において共通の外部端子3fに接続されている。端部3eと外部端子3fの接続部を第1モールド部3c内に配置することによって、端部3eが外部端子3fから外れることを防止することができる。
【0018】
図2(a)、(b)に示すように、一次コイル3の内側面及び外側面にそれぞれ第1内側含浸部材3a及び第1外側含浸部材3bが設けられている。第1内側含浸部材3a及び第1外側含浸部材3bは、樹脂が含浸される絶縁部材であれば特に限定されず、例えば、ガラス繊維布や絶縁紙などで構成される。強度の面からはガラス繊維布が好ましく、絶縁性の面からは絶縁紙が好ましい。その他の含浸部材についても同様である。
【0019】
第1モールド部3cは、以下の手順で作製される。
(1)まず、一次コイル3用の巻き枠(図示せず)に第1内側含浸部材3aを巻きつける。
(2)次に、第1内側含浸部材3aの上から電線3dを巻きつけて一次コイル3を形成する。
(3)次に、一次コイル3の上から第1外側含浸部材3bを巻きつける。ここまでの工程で、図2(a)に示す含浸部材付き一次巻線30が得られる。
(4)次に、図9(a)に示すように、真空槽15内に配置された金型17内に含浸部材付き一次巻線30を設置する。
(5)次に、真空槽15内を真空にし、その後、金型17内に樹脂タンク19内の樹脂21を流し込んで、図9(b)及び図2(b)に示すように、一次巻線3を含むモールド部3cを得る。真空状態で樹脂21を金型17に流し込んでいるので、樹脂21は、第1内側含浸部材3a及び第1外側含浸部材3bにも含浸され、さらに、隣接する電線3d間にも含浸され、ボイドの発生が抑制された第1モールド部3cが得られる。樹脂21の種類は、特に限定されず、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)と熱可塑性樹脂(ポリエステル等)の何れであってもよいが、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がさらに好ましい。熱硬化性樹脂は、耐クラック性に優れており、エポキシ樹脂は、絶縁性に優れている。樹脂21は、低粘度のものが好ましく、シリカ等の充填材を含まないものが好ましい。この場合、ボイドの発生がさらに抑制されるからである。樹脂21が熱硬化性樹脂である場合には、樹脂21を金型17内に流し込んだ後に樹脂21を加熱して樹脂21を硬化させる。
【0020】
図5(c)に示すように、第1モールド部3cは、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第1突出部3iをGND側の端部に備えている。第1突出部3iは、第1モールド部3cに一体化されている。第1突出部3i内には、第1突出部含浸部材(図示せず)が配置されている。第1突出部含浸部材の一部は、第1内側含浸部材3a又は第1外側含浸部材3bに重なっている。このような構成により第1突出部3iの強度が強化されている。一例では、一次コイル3用の巻き枠に第1内側含浸部材3aを巻きつける前にテープ状の第1突出部含浸部材を巻き枠に巻きつけてその端部をGND側に出しておく。この端部が第1突出部3i内に配置される。テープ状の第1突出部含浸部材は、第1外側含浸部材3bの上から巻きつけてもよい。
第1突出部3iは、第1開口部3jを有している。第1突出部3iは、後述するように、第1モールド部3cの固定に用いられる(図8(b)を参照。)
【0021】
3.二次コイル
二次コイル5は、図6(b)に示すように、電線5dが螺旋状に巻かれて構成されている。二次コイル5の横断面形状(軸に垂直な方向の断面の形状)は、特に限定されず、例えば、正方形、長方形、円形等であるが、円形が好ましい。円形である場合、パルス動作中に磁場との相互作用による二次コイル5の歪みが起こりにくく、二次コイル5の歪みに起因する超音波の騒音の発生を抑制することができるからである。一次コイル3と二次コイル5は、同心円状に配置される。一次コイル3と二次コイル5は、本実施形態では逆向きに巻かれているが、同じ向きに巻かれていてもよい。後者の場合、一次コイル3に入力するパルスの極性を本実施形態の逆にする。
【0022】
また、図6(b)に示すように、二次コイル5のコイル径は、一方向に向かって先細り(錐台形状)になっている。使用時には、コイル径が小さい側をGNDとし、コイル径が大きい側を信号出力側とする。二次コイル5をこのような形状にすることによって、信号出力側において、二次コイル5と鉄心1との間で放電が起こることが抑制され、GND側において、磁束の漏れが最小限に抑えられてパルスの立ち上がりが速くなる。従って、本実施形態のパルストランスは、高電圧が印加される用途に適している。
【0023】
また、二次コイル5は、一次コイル3に比べて電線5dの巻数が多いので、パルストランス全体のサイズを小さくするには、隣接する2つの螺旋段5e間の間隔を狭くする必要がある。但し、隣接する2つの螺旋段5e間の間隔を狭くしすぎると、隣接する2つの螺旋段5e間の絶縁が確保できなくなる。従って、絶縁が確保できる最小の間隔(「絶縁間隔D」と呼ぶ。)で電線5dを螺旋状に巻くことが望まれる。しかし、隣接する2つの螺旋段5e間に絶縁間隔Dを確実に設けることは容易ではない。例えば一定間隔に溝が形成された治具を用いれば、隣接する2つの螺旋段5e間に間隔Dを設けることができるがモールドする際に治具を取り外す必要があり、治具を取り外すと隣接する2つの螺旋段5e間の間隔が変化し得る。
【0024】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、図3(a)に示すように、間隔保持部材5hを用いて隣接する2つの螺旋段5e間の間隔を確保する手段を考え出した。この手段では、間隔保持部材5hは、隣接する2つの螺旋段5eの一方の上側に配置されている第1部分と、隣接する2つの螺旋段の他方の下側に配置されている第2部分を有するように配置される。間隔保持部材5hをこのように配置すると、間隔保持部材5hの一部(第1部分と第2部分の間の部分)は、必然的に隣接する2つの螺旋段5e間に配置され、隣接する2つの螺旋段5e間の間隔は、間隔保持部材5hの厚さ以下にならない。従って、絶縁間隔Dが確保できるように間隔保持部材5hの厚さを決定することによって隣接する2つの螺旋段5e間に絶縁間隔Dを確実に設けることができる。間隔保持部材5hは、樹脂が含浸される絶縁部材で形成されることが好ましい。この場合、隣接する2つの螺旋段5e間にボイドが発生することがさらに確実に抑制される。
【0025】
樹脂モールドされたトランスでは、モールド時の樹脂流れ圧力や、モールド・硬化し脱型後の樹脂収縮力によりコイル位置が動き、特に二次コイルにおいてコイル間に必要な絶縁間隔が保持できない場合がある。
本実施形態では、電線5dは、一例では、図3(a)に示すように、エナメル線6aと、絶縁材料からなる絶縁被覆部6bとで構成されている。従って、隣接する2つの螺旋段5e間は、エナメル、絶縁被覆部6b及び間隔保持部材5hによって三重に絶縁されている。絶縁被覆部6bは、省略することができる。この場合、間隔保持部材5hを比較的厚くして絶縁間隔Dを確保する。間隔保持部材5hは、省略することができる。この場合、絶縁被覆部6bを比較的厚くして絶縁間隔Dを確保する。エナメル線のエナメルも省略することができる。絶縁被覆部6bは、一例では、エポキシが含浸されたガラス繊維布からなる。
【0026】
また、図3(a)、(b)に示すように、二次コイル5の内側面及び外側面にそれぞれ第2内側含浸部材5a及び第2外側含浸部材5bが設けられている。第2内側含浸部材5a及び第2外側含浸部材5bは、樹脂が含浸される絶縁部材であれば特に限定されず、例えば、ガラス繊維布や絶縁紙などで構成される。
【0027】
第2モールド部5cは、以下の手順で作製される。
(1)まず、二次コイル5用の巻き枠(図示せず)に第2内側含浸部材5aを巻きつける。
(2)次に、第2内側含浸部材5aの上から間隔保持部材5hと電線5dを巻きつけて二次コイル5を形成する。具体的には、図4(a)又は(b)に示すように、既に巻きつけた第1螺旋段51eの上側に間隔保持部材5hの第1部分51hが位置し、次に巻きつける第2螺旋段52eの下側に間隔保持部材5hの第2部分52hが位置するように間隔保持部材5hを配置した状態で第2螺旋段52eを巻きつける。間隔保持部材5hは、図4(a)に示すように、第2螺旋段52eを巻きつける際に第2螺旋段52eと共に巻きつけてもよく、図4(b)に示すように、予め間隔保持部材5hのみを巻きつけておいて、その後に間隔保持部材5hの第2部分52hの上から第2螺旋段52eを巻きつけてもよい。
(3)次に、二次コイル5の上から第2外側含浸部材5bを巻きつける。ここまでの工程で、図3(a)に示す含浸部材付き二次コイル50が得られる。
(4)次に、一次巻線3を含むモールド部3cと同様の方法によって、含浸部材付き二次コイル50に樹脂を含浸させて、図3(b)に示す第2モールド部5cが得られる。第1モールド部3cの樹脂と第2モールド部5cの樹脂は、同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
第2モールド部5cは、信号出力側に突出する複数の上部突出部5kを有している。上部突出部5kの少なくとも1つにはネジ穴5nが設けられている。電線5dの信号出力側の端部5mは、ネジ穴5nにまで延びている。図7(a)〜(c)に示すように第2モールド部5cの信号出力側にはコロナリング11が設けられている。コロナリング11は、信号出力側が丸まった外形を有しており、二次コイル5と鉄心1との間の放電を防止する。コロナリング11は、図7(c)に示すように、コロナリング11の内面と上部突出部5kとが当接するように設置される。コロナリング11は、開口部11bを有しており、開口部11bを通るネジ13をネジ穴5nに固定することによってコロナリング11をモールド部5cに固定する。コロナリング11とネジ13は導電性を有しており、コロナリング11は、電線5dに電気的に接続される。コロナリング11は、切れ目11aを有しており、二次コイル5の最後の一巻きとなっている。
【0029】
図6(c)に示すように、第2モールド部5cは、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第2突出部5iをGND側の端部に備えている。第2突出部5iは、第2モールド部5cと一体化されている。第2突出部5i内には、第2突出部含浸部材(図示せず)が配置されている。第2突出部含浸部材の一部は、第2内側含浸部材5a又は第2外側含浸部材5bに重なっている。このような構成により第2突出部5iの強度が強化されている。一例では、二次コイル5用の巻き枠に第2内側含浸部材5aを巻きつける前にテープ状の第2突出部含浸部材を巻き枠に巻きつけてその端部をGND側に出しておく。この端部が第2突出部5i内に配置される。テープ状の第2突出部含浸部材は、第2外側含浸部材5bの上から巻きつけてもよい。
第2突出部5iは、第2開口部5jを有している。第2突出部5iは、後述するように、第2モールド部5cの固定に用いられる(図8(b)を参照。)
【0030】
第1モールド部3cと第2モールド部5cは、図8(a)、(b)に示すように、第1開口部3jと第2開口部5jの位置が一致するように第1突出部3iと第2突出部5iを重ね、その状態で第1開口部3jと第2開口部5jにネジ7を挿入し、ネジ7を土台9にネジ止めすることによって、第1モールド部3cと第2モールド部5cを土台9に固定する。上述したように、第1突出部3iと第2突出部5iは、それぞれ、第1及び第2突出部含浸部材によって強化されているので、第1モールド部3cと第2モールド部5cは、土台9に確実に固定される。従来技術では、第1及び第2モールド部3c、5cの信号出力側において第1及び第2モールド部3c、5cと鉄心1とを繋ぐ固定部材を用いて第1及び第2モールド部3c、5cを固定するものがあるが、このような固定部材が設定されると、高電圧放電が起こり易くなる。一方、本実施形態では、第1モールド部3cと第2モールド部5cをそれぞれのGND側で固定しているので、そのような問題が生じない。
【0031】
以上の実施形態で示した種々の特徴は、互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合、そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して、単独で又は組み合わせて、本発明に採用することができる。
最後に、本発明の一実施例である試作品の外観写真を図10に示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1(a)〜(c)は、本実施形態のパルストランスの概略構成を示し、図1(a)は、平面図であり、図1(b)は、図1(a)中のI−I断面図であり、図1(c)は、図1(a)の裏面図である。
【図2】図2(a)及び(b)は、図1(b)の領域Aの拡大図であり、図2(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。
【図3】図3(a)及び(b)は、図1(b)の領域Bの拡大図であり、図3(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。
【図4】図4(a)及び(b)は、それぞれ、二次巻線の電線の巻きつけ方法を説明するための図3(a)に対応した断面図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、モールドされた一次コイルを示し、図5(a)〜(c)は、それぞれ、平面図、正面図及び裏面図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、モールドされた二次コイルを示し、図6(a)〜(c)は、それぞれ、平面図、正面図及び裏面図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、第2モールド部に取り付けられるコロナリングの構成を示し、図7(a)は、平面図、図7(b)は、図7(a)中のI−I断面図、図7(c)は、第2モールド部に取り付けられた状態を示す正面図である。
【図8】図8(a)は、図1(c)の領域Cの拡大図であり、図8(b)は、図8(a)中のI−I断面図である。
【図9】図9(a)及び(b)は、真空含浸法を説明するための図1(b)に対応した断面図であり、図9(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。
【図10】本発明のパルストランスの一実施例の外観を示す写真である。
【図11】従来のパルストランスの外観を示す写真である。
【符号の説明】
【0033】
1:鉄心
3:一次コイル 3a:第1内側含浸部材 3b:第1外側含浸部材 3c:第1モールド部 3d:電線 3e:電線の端部 3f:外部端子 3i:第1突出部 3j:第1突出部の第1開口部 4a:エナメル線 4b:絶縁被覆部
5:二次コイル 5a:第2内側含浸部材 5b:第2外側含浸部材 5c:第2モールド部 5d:電線 5e:螺旋段 5h:間隔保持部材 5i:第2突出部 5j:第2突出部の第2開口部 5k:上部突出部 5m:電線の信号出力側の端部 5n:ネジ穴 6a:エナメル線 6b:絶縁被覆部
7:ネジ 9:土台 11:コロナリング 11a:コロナリングの切れ目 11b:コロナリングの開口部 13:ネジ 15:真空槽 17:金型 19:樹脂タンク 21:樹脂
30:含浸部材付き一次コイル 50:含浸部材付き二次コイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルストランスに関する。本発明のパルストランスには高電圧を印加することができ、本発明のパルストランスは、クライストロン電源での使用に適している。
【背景技術】
【0002】
従来クライストロン電源に使用されていたパルストランスは、図11に示すような外観を有しており、ベークライト等の絶縁板にて製造した巻き枠に1次コイル及び2次コイル用の電線を等間隔にて間隙を保って巻き、エポキシ接着剤等で巻き枠表面に接着固定する方法で作成されてきた(例えば、非特許文献1を参照)。
【非特許文献1】M. Akemoto et. al., "Development of The Pulse Transformer for NLC Klystron Pulse Modulator", PACO7, 1997 PARTICLE ACCELERATOR CONFERENCE, Vancouver, B.C., Canada, 12-16 May 1997, p.1322-1324
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記パルストランスでは、(1)エポキシ接合が強固ではなく、長期の使用後にコイルの電線が脱落すること、(2)油を含浸後にコイルと巻き枠との間にボイドが残る場合があり、ここに高電圧が発生し、絶縁油中であっても高電圧放電が引き起こされること、(3)巻き枠そのものに強度がなく、外圧によって、コイルに力がかかり、コイルの電線の脱落が引き起こされることといった問題がある。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、コイルの電線の脱落と高電圧放電を防止することができるパルストランスを提供するものである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
本発明のパルストランスは、鉄心と、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記鉄心の周囲に配置された一次コイルと、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記一次コイルの周囲に配置された二次コイルと、前記一次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第1内側含浸部材及び第1外側含浸部材と、前記二次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第2内側含浸部材及び第2外側含浸部材とを備え、前記二次コイルは、前記一次コイルよりも巻数が多く、且つコイル径が一方向に向かって先細りになっている形状であり、第1内側含浸部材、前記一次コイル及び第1外側含浸部材は、第1内側含浸部材及び第1外側含浸部材に樹脂が含浸されるように形成された第1モールド部内に配置され、第2内側含浸部材、前記二次コイル及び第2外側含浸部材は、第2内側含浸部材及び第2外側含浸部材に樹脂が含浸されるように形成された第2モールド部内に配置されている。
【0006】
本発明のパルストランスでは、コイルがモールド部内に配置されているので、コイルの電線の脱落が起こらない。また、本発明では、コイルの内側面及び外側面に内側含浸部材及び外側含浸部材が備えられ、これらの含浸部材に樹脂が含浸されるようにモールド部が形成されているので、コイルを構成する螺旋状の電線の隣接する2つの螺旋段の間に樹脂が確実に入り込み、モールド部内にボイドが発生することが抑制され、高電圧放電が防止される。
【0007】
また、本発明のパルストランスでは、二次コイルのコイル径が一方向に向かって先細り(錐台形状)になっている。コイル径が小さい側をGND側とし、コイル径が大きい側を信号出力側とする。二次コイルをこのような形状にすることによって、信号出力側において二次コイルと鉄心との間で放電が起こることが抑制され、GND側において磁束の漏れが最小限に抑えられてパルスの立ち上がりが速くなる等の利点が得られる。従って、本発明のパルストランスは、高電圧が印加される用途に適している。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。
前記二次コイルの隣接する2つの螺旋段間の間隔を保持する間隔保持部材をさらに備え、前記間隔保持部材は、隣接する2つの螺旋段の一方の上側に配置されている第1部分と、隣接する2つの螺旋段の他方の下側に配置されている第2部分を有してもよい。
前記間隔保持部材に樹脂が含浸されていてもよい。
前記一次コイルは、複数本の電線を互いに平行に螺旋状に巻いて構成され、前記複数本の電線の端部は、第1モールド部内において共通の外部端子に接続されていてもよい。
第1モールド部は、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第1突出部を端部に備え、第2モールド部は、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第2突出部を端部に備え、第1突出部及び第2突出部は、それぞれ、第1モールド部及び第2モールド部と一体化されていてもよい。
第1突出部内には第1突出部含浸部材が配置されており、第2突出部内には第2突出部含浸部材が配置されていてもよい。
前記一次コイル及び前記二次コイルは、それぞれ、軸方向に垂直な断面が円形であり、前記一次コイル及び前記二次コイルは、同心円状に配置されていてもよい。
第1及び第2モールド部の樹脂は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなってもよい。
第1及び第2モールド部の樹脂は、エポキシ樹脂からなってもよい。
前記各含浸部材は、ガラス繊維布で構成されていてもよい。
ここで示した種々の実施形態は、互いに組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す内容は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0010】
図1(a)〜図9(b)を用いて、本発明の一実施形態のパルストランスについて説明する。図1(a)〜(c)は、本実施形態のパルストランスの概略構成を示し、図1(a)は、平面図であり、図1(b)は、図1(a)中のI−I断面図であり、図1(c)は、図1(a)の裏面図である。図2(a)及び(b)は、図1(b)の領域Aの拡大図であり、図2(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。図3(a)及び(b)は、図1(b)の領域Bの拡大図であり、図3(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。図4(a)及び(b)は、それぞれ二次コイルの電線の巻きつけ方法を説明するための図3(a)に対応した断面図である。図5(a)〜(c)は、モールドされた一次コイルを示し、図5(a)〜(c)は、それぞれ、平面図、正面図及び裏面図である。図6(a)〜(c)は、モールドされた二次コイルを示し、図6(a)〜(c)は、それぞれ、平面図、正面図及び裏面図である。図7(a)〜(c)は、第2モールド部に取り付けられるコロナリングの構成を示し、図7(a)は、平面図、図7(b)は、図7(a)中のI−I断面図であり、図7(c)は、第2モールド部に取り付けられた状態を示す正面図である。図8(a)は、図1(c)の領域Cの拡大図であり、図8(b)は、図8(a)中のI−I断面図である。図9(a)及び(b)は、真空含浸法を説明するための図1(b)に対応した断面図であり、図9(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。
【0011】
本実施形態のパルストランスは、図1(a)〜(c)に示すように、鉄心1と、一次コイル3と、二次コイル5とを備える。一次コイル3は、電線3dを螺旋状に巻いて構成され、鉄心1の周囲に配置されている。二次コイル5は、電線5dを螺旋状に巻いて構成され、一次コイル3の周囲に配置されている。
一次コイル3の内側面及び外側面には、図2(a)〜(b)に示すように、それぞれ、第1内側含浸部材3a及び第1外側含浸部材3bが配置されている。第1内側含浸部材3a、一次コイル3及び第1外側含浸部材3bは、第1内側含浸部材3a及び第1外側含浸部材3bに樹脂が含浸されるように形成された第1モールド部3c内に配置されている。
二次コイル5の内側面及び外側面には、図3(a)〜(b)に示すように、それぞれ、第2内側含浸部材5a及び第2外側含浸部材5bが配置されている。第2内側含浸部材5a、二次コイル5及び第2外側含浸部材5bは、第2内側含浸部材5a及び第2外側含浸部材5bに樹脂が含浸されるように形成された第2モールド部5c内に配置されている。二次コイル5は、一次コイル3よりも巻数が多く、且つコイル径が一方向に向かって先細りになっている形状である。
本実施形態のパルストランスは、放電がさらに起こりにくくなるように、通常、絶縁油中に沈めた状態で動作させる。
一例では、本実施形態のパルストランスの仕様は、以下の通りである。
【0012】
【表1】
【0013】
以下、各構成要素を詳細に説明する。
【0014】
1.鉄心
鉄心1の材料は、磁束の伝達が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、厚さ0.05〜0.35mmの電磁鋼帯や方向性ケイ素鋼板である。鉄心1は、一次コイル3及び二次コイル5の内側を通るように配置されている。鉄心1の横断面形状(一次コイル3及び二次コイル5の軸に垂直な断面の形状)は、特に限定されず、例えば、正方形、長方形又は円形である。鉄心1は、複数パーツに分割可能であり、例えば図1(b)の場合、一次コイル3及び二次コイル5の上側に位置する部分1aを取り外して、モールドされた一次コイル3及び二次コイル5を設置した後、取り外した部分1aを再度取り付けている。
【0015】
2.一次コイル
一次コイル3は、図5(b)に示すように、電線3dが螺旋状に巻かれて構成されている。本実施形態では、一次コイル3は、複数本(図5(b)では5本)の電線3dが互いに平行に螺旋状に巻かれて構成されている。複数本の電線3dを平行に巻くことの利点は、(1)電流を多く流すことができることと、(2)浮遊インダクタンスを小さくすることができることである。各電線3dは、一例では、図2(a)に示すように、エナメル線(銅線の周囲にエナメルがコーティングされた線)4aと、絶縁被覆部4bとで構成されている。絶縁被覆部4bは、一例では、エポキシが含浸されたガラス繊維布(例:不織布)からなる。
【0016】
一次コイル3の横断面形状(軸に垂直な方向の断面の形状)は、特に限定されず、例えば、正方形、長方形、円形等であるが、円形が好ましい。円形である場合、パルス動作中に磁場との相互作用による一次コイル3の歪みが起こりにくく、一次コイル3の歪みに起因する超音波の騒音の発生を抑制することができるからである。
【0017】
複数本の電線3dの端部3eは、図5(b)に示すように、第1モールド部3c内において共通の外部端子3fに接続されている。端部3eと外部端子3fの接続部を第1モールド部3c内に配置することによって、端部3eが外部端子3fから外れることを防止することができる。
【0018】
図2(a)、(b)に示すように、一次コイル3の内側面及び外側面にそれぞれ第1内側含浸部材3a及び第1外側含浸部材3bが設けられている。第1内側含浸部材3a及び第1外側含浸部材3bは、樹脂が含浸される絶縁部材であれば特に限定されず、例えば、ガラス繊維布や絶縁紙などで構成される。強度の面からはガラス繊維布が好ましく、絶縁性の面からは絶縁紙が好ましい。その他の含浸部材についても同様である。
【0019】
第1モールド部3cは、以下の手順で作製される。
(1)まず、一次コイル3用の巻き枠(図示せず)に第1内側含浸部材3aを巻きつける。
(2)次に、第1内側含浸部材3aの上から電線3dを巻きつけて一次コイル3を形成する。
(3)次に、一次コイル3の上から第1外側含浸部材3bを巻きつける。ここまでの工程で、図2(a)に示す含浸部材付き一次巻線30が得られる。
(4)次に、図9(a)に示すように、真空槽15内に配置された金型17内に含浸部材付き一次巻線30を設置する。
(5)次に、真空槽15内を真空にし、その後、金型17内に樹脂タンク19内の樹脂21を流し込んで、図9(b)及び図2(b)に示すように、一次巻線3を含むモールド部3cを得る。真空状態で樹脂21を金型17に流し込んでいるので、樹脂21は、第1内側含浸部材3a及び第1外側含浸部材3bにも含浸され、さらに、隣接する電線3d間にも含浸され、ボイドの発生が抑制された第1モールド部3cが得られる。樹脂21の種類は、特に限定されず、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)と熱可塑性樹脂(ポリエステル等)の何れであってもよいが、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がさらに好ましい。熱硬化性樹脂は、耐クラック性に優れており、エポキシ樹脂は、絶縁性に優れている。樹脂21は、低粘度のものが好ましく、シリカ等の充填材を含まないものが好ましい。この場合、ボイドの発生がさらに抑制されるからである。樹脂21が熱硬化性樹脂である場合には、樹脂21を金型17内に流し込んだ後に樹脂21を加熱して樹脂21を硬化させる。
【0020】
図5(c)に示すように、第1モールド部3cは、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第1突出部3iをGND側の端部に備えている。第1突出部3iは、第1モールド部3cに一体化されている。第1突出部3i内には、第1突出部含浸部材(図示せず)が配置されている。第1突出部含浸部材の一部は、第1内側含浸部材3a又は第1外側含浸部材3bに重なっている。このような構成により第1突出部3iの強度が強化されている。一例では、一次コイル3用の巻き枠に第1内側含浸部材3aを巻きつける前にテープ状の第1突出部含浸部材を巻き枠に巻きつけてその端部をGND側に出しておく。この端部が第1突出部3i内に配置される。テープ状の第1突出部含浸部材は、第1外側含浸部材3bの上から巻きつけてもよい。
第1突出部3iは、第1開口部3jを有している。第1突出部3iは、後述するように、第1モールド部3cの固定に用いられる(図8(b)を参照。)
【0021】
3.二次コイル
二次コイル5は、図6(b)に示すように、電線5dが螺旋状に巻かれて構成されている。二次コイル5の横断面形状(軸に垂直な方向の断面の形状)は、特に限定されず、例えば、正方形、長方形、円形等であるが、円形が好ましい。円形である場合、パルス動作中に磁場との相互作用による二次コイル5の歪みが起こりにくく、二次コイル5の歪みに起因する超音波の騒音の発生を抑制することができるからである。一次コイル3と二次コイル5は、同心円状に配置される。一次コイル3と二次コイル5は、本実施形態では逆向きに巻かれているが、同じ向きに巻かれていてもよい。後者の場合、一次コイル3に入力するパルスの極性を本実施形態の逆にする。
【0022】
また、図6(b)に示すように、二次コイル5のコイル径は、一方向に向かって先細り(錐台形状)になっている。使用時には、コイル径が小さい側をGNDとし、コイル径が大きい側を信号出力側とする。二次コイル5をこのような形状にすることによって、信号出力側において、二次コイル5と鉄心1との間で放電が起こることが抑制され、GND側において、磁束の漏れが最小限に抑えられてパルスの立ち上がりが速くなる。従って、本実施形態のパルストランスは、高電圧が印加される用途に適している。
【0023】
また、二次コイル5は、一次コイル3に比べて電線5dの巻数が多いので、パルストランス全体のサイズを小さくするには、隣接する2つの螺旋段5e間の間隔を狭くする必要がある。但し、隣接する2つの螺旋段5e間の間隔を狭くしすぎると、隣接する2つの螺旋段5e間の絶縁が確保できなくなる。従って、絶縁が確保できる最小の間隔(「絶縁間隔D」と呼ぶ。)で電線5dを螺旋状に巻くことが望まれる。しかし、隣接する2つの螺旋段5e間に絶縁間隔Dを確実に設けることは容易ではない。例えば一定間隔に溝が形成された治具を用いれば、隣接する2つの螺旋段5e間に間隔Dを設けることができるがモールドする際に治具を取り外す必要があり、治具を取り外すと隣接する2つの螺旋段5e間の間隔が変化し得る。
【0024】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、図3(a)に示すように、間隔保持部材5hを用いて隣接する2つの螺旋段5e間の間隔を確保する手段を考え出した。この手段では、間隔保持部材5hは、隣接する2つの螺旋段5eの一方の上側に配置されている第1部分と、隣接する2つの螺旋段の他方の下側に配置されている第2部分を有するように配置される。間隔保持部材5hをこのように配置すると、間隔保持部材5hの一部(第1部分と第2部分の間の部分)は、必然的に隣接する2つの螺旋段5e間に配置され、隣接する2つの螺旋段5e間の間隔は、間隔保持部材5hの厚さ以下にならない。従って、絶縁間隔Dが確保できるように間隔保持部材5hの厚さを決定することによって隣接する2つの螺旋段5e間に絶縁間隔Dを確実に設けることができる。間隔保持部材5hは、樹脂が含浸される絶縁部材で形成されることが好ましい。この場合、隣接する2つの螺旋段5e間にボイドが発生することがさらに確実に抑制される。
【0025】
樹脂モールドされたトランスでは、モールド時の樹脂流れ圧力や、モールド・硬化し脱型後の樹脂収縮力によりコイル位置が動き、特に二次コイルにおいてコイル間に必要な絶縁間隔が保持できない場合がある。
本実施形態では、電線5dは、一例では、図3(a)に示すように、エナメル線6aと、絶縁材料からなる絶縁被覆部6bとで構成されている。従って、隣接する2つの螺旋段5e間は、エナメル、絶縁被覆部6b及び間隔保持部材5hによって三重に絶縁されている。絶縁被覆部6bは、省略することができる。この場合、間隔保持部材5hを比較的厚くして絶縁間隔Dを確保する。間隔保持部材5hは、省略することができる。この場合、絶縁被覆部6bを比較的厚くして絶縁間隔Dを確保する。エナメル線のエナメルも省略することができる。絶縁被覆部6bは、一例では、エポキシが含浸されたガラス繊維布からなる。
【0026】
また、図3(a)、(b)に示すように、二次コイル5の内側面及び外側面にそれぞれ第2内側含浸部材5a及び第2外側含浸部材5bが設けられている。第2内側含浸部材5a及び第2外側含浸部材5bは、樹脂が含浸される絶縁部材であれば特に限定されず、例えば、ガラス繊維布や絶縁紙などで構成される。
【0027】
第2モールド部5cは、以下の手順で作製される。
(1)まず、二次コイル5用の巻き枠(図示せず)に第2内側含浸部材5aを巻きつける。
(2)次に、第2内側含浸部材5aの上から間隔保持部材5hと電線5dを巻きつけて二次コイル5を形成する。具体的には、図4(a)又は(b)に示すように、既に巻きつけた第1螺旋段51eの上側に間隔保持部材5hの第1部分51hが位置し、次に巻きつける第2螺旋段52eの下側に間隔保持部材5hの第2部分52hが位置するように間隔保持部材5hを配置した状態で第2螺旋段52eを巻きつける。間隔保持部材5hは、図4(a)に示すように、第2螺旋段52eを巻きつける際に第2螺旋段52eと共に巻きつけてもよく、図4(b)に示すように、予め間隔保持部材5hのみを巻きつけておいて、その後に間隔保持部材5hの第2部分52hの上から第2螺旋段52eを巻きつけてもよい。
(3)次に、二次コイル5の上から第2外側含浸部材5bを巻きつける。ここまでの工程で、図3(a)に示す含浸部材付き二次コイル50が得られる。
(4)次に、一次巻線3を含むモールド部3cと同様の方法によって、含浸部材付き二次コイル50に樹脂を含浸させて、図3(b)に示す第2モールド部5cが得られる。第1モールド部3cの樹脂と第2モールド部5cの樹脂は、同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
第2モールド部5cは、信号出力側に突出する複数の上部突出部5kを有している。上部突出部5kの少なくとも1つにはネジ穴5nが設けられている。電線5dの信号出力側の端部5mは、ネジ穴5nにまで延びている。図7(a)〜(c)に示すように第2モールド部5cの信号出力側にはコロナリング11が設けられている。コロナリング11は、信号出力側が丸まった外形を有しており、二次コイル5と鉄心1との間の放電を防止する。コロナリング11は、図7(c)に示すように、コロナリング11の内面と上部突出部5kとが当接するように設置される。コロナリング11は、開口部11bを有しており、開口部11bを通るネジ13をネジ穴5nに固定することによってコロナリング11をモールド部5cに固定する。コロナリング11とネジ13は導電性を有しており、コロナリング11は、電線5dに電気的に接続される。コロナリング11は、切れ目11aを有しており、二次コイル5の最後の一巻きとなっている。
【0029】
図6(c)に示すように、第2モールド部5cは、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第2突出部5iをGND側の端部に備えている。第2突出部5iは、第2モールド部5cと一体化されている。第2突出部5i内には、第2突出部含浸部材(図示せず)が配置されている。第2突出部含浸部材の一部は、第2内側含浸部材5a又は第2外側含浸部材5bに重なっている。このような構成により第2突出部5iの強度が強化されている。一例では、二次コイル5用の巻き枠に第2内側含浸部材5aを巻きつける前にテープ状の第2突出部含浸部材を巻き枠に巻きつけてその端部をGND側に出しておく。この端部が第2突出部5i内に配置される。テープ状の第2突出部含浸部材は、第2外側含浸部材5bの上から巻きつけてもよい。
第2突出部5iは、第2開口部5jを有している。第2突出部5iは、後述するように、第2モールド部5cの固定に用いられる(図8(b)を参照。)
【0030】
第1モールド部3cと第2モールド部5cは、図8(a)、(b)に示すように、第1開口部3jと第2開口部5jの位置が一致するように第1突出部3iと第2突出部5iを重ね、その状態で第1開口部3jと第2開口部5jにネジ7を挿入し、ネジ7を土台9にネジ止めすることによって、第1モールド部3cと第2モールド部5cを土台9に固定する。上述したように、第1突出部3iと第2突出部5iは、それぞれ、第1及び第2突出部含浸部材によって強化されているので、第1モールド部3cと第2モールド部5cは、土台9に確実に固定される。従来技術では、第1及び第2モールド部3c、5cの信号出力側において第1及び第2モールド部3c、5cと鉄心1とを繋ぐ固定部材を用いて第1及び第2モールド部3c、5cを固定するものがあるが、このような固定部材が設定されると、高電圧放電が起こり易くなる。一方、本実施形態では、第1モールド部3cと第2モールド部5cをそれぞれのGND側で固定しているので、そのような問題が生じない。
【0031】
以上の実施形態で示した種々の特徴は、互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合、そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して、単独で又は組み合わせて、本発明に採用することができる。
最後に、本発明の一実施例である試作品の外観写真を図10に示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1(a)〜(c)は、本実施形態のパルストランスの概略構成を示し、図1(a)は、平面図であり、図1(b)は、図1(a)中のI−I断面図であり、図1(c)は、図1(a)の裏面図である。
【図2】図2(a)及び(b)は、図1(b)の領域Aの拡大図であり、図2(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。
【図3】図3(a)及び(b)は、図1(b)の領域Bの拡大図であり、図3(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。
【図4】図4(a)及び(b)は、それぞれ、二次巻線の電線の巻きつけ方法を説明するための図3(a)に対応した断面図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、モールドされた一次コイルを示し、図5(a)〜(c)は、それぞれ、平面図、正面図及び裏面図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、モールドされた二次コイルを示し、図6(a)〜(c)は、それぞれ、平面図、正面図及び裏面図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、第2モールド部に取り付けられるコロナリングの構成を示し、図7(a)は、平面図、図7(b)は、図7(a)中のI−I断面図、図7(c)は、第2モールド部に取り付けられた状態を示す正面図である。
【図8】図8(a)は、図1(c)の領域Cの拡大図であり、図8(b)は、図8(a)中のI−I断面図である。
【図9】図9(a)及び(b)は、真空含浸法を説明するための図1(b)に対応した断面図であり、図9(a)及び(b)は、それぞれ、樹脂含浸前及び樹脂含浸後の状態を示す。
【図10】本発明のパルストランスの一実施例の外観を示す写真である。
【図11】従来のパルストランスの外観を示す写真である。
【符号の説明】
【0033】
1:鉄心
3:一次コイル 3a:第1内側含浸部材 3b:第1外側含浸部材 3c:第1モールド部 3d:電線 3e:電線の端部 3f:外部端子 3i:第1突出部 3j:第1突出部の第1開口部 4a:エナメル線 4b:絶縁被覆部
5:二次コイル 5a:第2内側含浸部材 5b:第2外側含浸部材 5c:第2モールド部 5d:電線 5e:螺旋段 5h:間隔保持部材 5i:第2突出部 5j:第2突出部の第2開口部 5k:上部突出部 5m:電線の信号出力側の端部 5n:ネジ穴 6a:エナメル線 6b:絶縁被覆部
7:ネジ 9:土台 11:コロナリング 11a:コロナリングの切れ目 11b:コロナリングの開口部 13:ネジ 15:真空槽 17:金型 19:樹脂タンク 21:樹脂
30:含浸部材付き一次コイル 50:含浸部材付き二次コイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心と、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記鉄心の周囲に配置された一次コイルと、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記一次コイルの周囲に配置された二次コイルと、前記一次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第1内側含浸部材及び第1外側含浸部材と、前記二次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第2内側含浸部材及び第2外側含浸部材とを備え、
前記二次コイルは、前記一次コイルよりも巻数が多く、且つコイル径が一方向に向かって先細りになっている形状であり、
第1内側含浸部材、前記一次コイル及び第1外側含浸部材は、第1内側含浸部材及び第1外側含浸部材に樹脂が含浸されるように形成された第1モールド部内に配置され、
第2内側含浸部材、前記二次コイル及び第2外側含浸部材は、第2内側含浸部材及び第2外側含浸部材に樹脂が含浸されるように形成された第2モールド部内に配置されているパルストランス。
【請求項2】
前記二次コイルの隣接する2つの螺旋段間の間隔を保持する間隔保持部材をさらに備え、
前記間隔保持部材は、隣接する2つの螺旋段の一方の上側に配置されている第1部分と、隣接する2つの螺旋段の他方の下側に配置されている第2部分を有する請求項1に記載のパルストランス。
【請求項3】
前記間隔保持部材に樹脂が含浸されている請求項2に記載のパルストランス。
【請求項4】
前記一次コイルは、複数本の電線を互いに平行に螺旋状に巻いて構成され、前記複数本の電線の端部は、第1モールド部内において共通の外部端子に接続されている請求項1〜3の何れか1つに記載のパルストランス。
【請求項5】
第1モールド部は、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第1突出部を端部に備え、第2モールド部は、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第2突出部を端部に備え、
第1突出部及び第2突出部は、それぞれ、第1モールド部及び第2モールド部と一体化されている請求項1〜4の何れか1つに記載のパルストランス。
【請求項6】
第1突出部内には第1突出部含浸部材が配置されており、第2突出部内には第2突出部含浸部材が配置されている請求項5に記載のパルストランス。
【請求項7】
前記一次コイル及び前記二次コイルは、それぞれ、軸方向に垂直な断面が円形であり、前記一次コイル及び前記二次コイルは、同心円状に配置されている請求項1〜6の何れか1つに記載のパルストランス。
【請求項8】
第1及び第2モールド部の樹脂は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる請求項1〜7の何れか1つに記載のパルストランス。
【請求項9】
第1及び第2モールド部の樹脂は、エポキシ樹脂からなる請求項1〜7の何れか1つに記載のパルストランス。
【請求項10】
前記各含浸部材は、ガラス繊維布で構成されている請求項1〜9の何れか1つに記載のパルストランス。
【請求項1】
鉄心と、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記鉄心の周囲に配置された一次コイルと、電線を螺旋状に巻いて構成され且つ前記一次コイルの周囲に配置された二次コイルと、前記一次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第1内側含浸部材及び第1外側含浸部材と、前記二次コイルの内側面及び外側面にそれぞれ配置された第2内側含浸部材及び第2外側含浸部材とを備え、
前記二次コイルは、前記一次コイルよりも巻数が多く、且つコイル径が一方向に向かって先細りになっている形状であり、
第1内側含浸部材、前記一次コイル及び第1外側含浸部材は、第1内側含浸部材及び第1外側含浸部材に樹脂が含浸されるように形成された第1モールド部内に配置され、
第2内側含浸部材、前記二次コイル及び第2外側含浸部材は、第2内側含浸部材及び第2外側含浸部材に樹脂が含浸されるように形成された第2モールド部内に配置されているパルストランス。
【請求項2】
前記二次コイルの隣接する2つの螺旋段間の間隔を保持する間隔保持部材をさらに備え、
前記間隔保持部材は、隣接する2つの螺旋段の一方の上側に配置されている第1部分と、隣接する2つの螺旋段の他方の下側に配置されている第2部分を有する請求項1に記載のパルストランス。
【請求項3】
前記間隔保持部材に樹脂が含浸されている請求項2に記載のパルストランス。
【請求項4】
前記一次コイルは、複数本の電線を互いに平行に螺旋状に巻いて構成され、前記複数本の電線の端部は、第1モールド部内において共通の外部端子に接続されている請求項1〜3の何れか1つに記載のパルストランス。
【請求項5】
第1モールド部は、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第1突出部を端部に備え、第2モールド部は、軸垂直方向外側に向かって突出した複数の第2突出部を端部に備え、
第1突出部及び第2突出部は、それぞれ、第1モールド部及び第2モールド部と一体化されている請求項1〜4の何れか1つに記載のパルストランス。
【請求項6】
第1突出部内には第1突出部含浸部材が配置されており、第2突出部内には第2突出部含浸部材が配置されている請求項5に記載のパルストランス。
【請求項7】
前記一次コイル及び前記二次コイルは、それぞれ、軸方向に垂直な断面が円形であり、前記一次コイル及び前記二次コイルは、同心円状に配置されている請求項1〜6の何れか1つに記載のパルストランス。
【請求項8】
第1及び第2モールド部の樹脂は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる請求項1〜7の何れか1つに記載のパルストランス。
【請求項9】
第1及び第2モールド部の樹脂は、エポキシ樹脂からなる請求項1〜7の何れか1つに記載のパルストランス。
【請求項10】
前記各含浸部材は、ガラス繊維布で構成されている請求項1〜9の何れか1つに記載のパルストランス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−99685(P2009−99685A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268237(P2007−268237)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(591045703)利昌工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(591045703)利昌工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
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