パルスプラズマ生成のためのカソード組立体および方法
パルスプラズマ生成のためのカソード組立体および方法が開示される。カソード組立体は、長手方向に位置合わせされ、好ましくは、同径であり、長さの異なる複数のカソード(10、20、30)に接続されたカソードホルダー(2)を備える。方法は、所定の大きさのDC電流を通すことにより組立体の中のカソード(10、20、30)とアノード(4)との間に電気アークを形成することによって特徴付けられる。アークが作られると、電流は電気アークを持続するために十分な大きさまたは僅かに大きい大きさに低減され、それによって、アークアタッチメントの領域を単一のカソードに縮小する。アタッチメントの領域が縮小されると、電流はパルスの動作レベルまで増加されるが、アタッチメントの領域は著しく増大しない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ生成装置のカソード組立体、および、プラズマ、特に、パルスプラズマを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスと比較的に短時間のオフ期間とをもつパルスプラズマの生成は、独特の一連の課題を提示する。現在公知のプラズマ生成装置には、これらをパルスプラズマを生成するために利用することが実用的でないいくつかの制限がある。
【0003】
一般に、プラズマ生成装置はカソードおよびアノードを備える。典型的に希ガスであるプラズマ生成ガスは、カソードとアノードとの間をアノードを通過して長手方向に延在するチャンネルの中を流れる。プラズマ生成ガスがプラズマチャンネルを横断するとき、プラズマ生成ガスは、カソードとアノードとの間に作られた電気アークによって加熱され、プラズマに変換される。プラズマチャンネルの部分は1つ以上の中間電極によって形成されてもよい。
【0004】
プラズマの生成は3つの段階で起こる。スパーク放電と呼ばれる第1の段階は、電気スパークがカソードとアノードとの間で作られるときに起こる。グロー放電と呼ばれる第2の段階は、電気スパークの中で負に帯電した電子の運動の結果として形成された正に帯電したイオンがカソードに衝突するときに起こる。アーク放電と呼ばれる第3の段階は、カソードの部分がイオン衝突によって十分に加熱された後に起こり、このイオン衝突はプラズマ生成ガスを加熱するためカソードとアノードとの間で電流を持続するために十分な個数の電子を放出し始める。電気アークは、プラズマを形成するプラズマ生成ガスを加熱する。高温プラズマが生成されるたびに、プラズマ生成ガスは3つの段階のすべてを経なければならない。
【0005】
従来技術の装置では、起動時に、カソードとアノードとの間を通る電流は、所望の動作レベルまで単に増加させられる。しかし、この急速に増加した電流は、スパーク放電段階およびグロー放電段階の間では持続させられない。アーク放電段階に達し、カソードがこのような電流を支持するために十分な速度で電子の熱イオン放出を始める場合に限り、印加された動作レベル電流がカソードとアノードとの間に流れ始める。カソードが、高い動作レベルの電流を維持するために十分に高い速度で電子を熱イオン放出し始める前に、このような電流をカソードの中に通すことを試行すると、カソードにストレスを加え、比較的少ない回数の起動後、最終的にカソードの破壊を引き起こす。
【0006】
パルスプラズマの生成は、素早く連続したプラズマ生成装置の頻繁な起動を必要とする。例えば、皮膚治療において、パルスプラズマを使った単一セッションの治療は、数千個のパルスを、その結果として数千回の起動を必要とすることがある。プラズマ生成装置を起動する従来技術の方法は、カソードがセッション中に損傷されるかもしれないので、パルスプラズマ生成には適さない。
【0007】
現在、2つのタイプの装置がイオン化ガスのパルスの生成のため使用されることがある。特許文献1に開示された装置は、第1のタイプの例である。このタイプの装置では、コロナ放電が、窒素のようなプラズマ生成ガスを交番磁界の中に通すことにより生成される。交番磁界はガスの中で自由電子の速い運動を生み出す。素早く運動する電子はガス原子から他の電子を叩き出し、いわゆる電子なだれを形成し、この電子なだれが次にコロナ放電を引き起こす。電界をパルス状に印加することにより、パルスコロナ放電が生成される。数ある中でパルスコロナ放電を生成するこの方法の利点は、(1)流れの中に不純物が存在しないこと、および、(2)真にパルス状の流れの生成を可能にさせる短い開始時間である。本開示の目的から、真にパルス状の流れとは、パルスのオフ期間中に完全に止まる流れを表す。
【0008】
第1のタイプの装置および方法の欠点は、生成されたコロナ放電が約2000℃という一定の最高温度を有することである。装置の中で形成されたコロナ放電は、電気アークによって加熱されないので、決して高温プラズマにならない。そのため、パルスコロナ放電を生成する装置は2000℃を上回る温度を必要とするいくつかの用途には使用できない。したがって、第1のタイプの装置の用途は、コロナ放電を引き起こす能力があるが高温プラズマではないという放電プロセスの性質によって制限される。
【0009】
第2のタイプの装置は、カソードとプラズマチャンネルを形成するアノードとの間に作られた電気アークによって、プラズマチャンネルを通過するプラズマ生成ガスの流れを加熱することによりプラズマを生成する。第2のタイプの装置の例は特許文献2に開示されている。特許文献2の開示によれば、プラズマ生成ガス、好ましくは、アルゴンがプラズマチャンネルを横断するとき、パルスDC電圧がアノードとカソードとの間に印加される。所定の一定バイアス電圧がパルスDC電圧に付加されてもよく、または、付加されなくてもよい。電圧パルスの間に、プラズマ生成ガスの中の自由電子の個数が増加し、プラズマの抵抗の減少と、プラズマの中を流れる電流の指数関数的増加とをもたらす。オフ期間中に、プラズマ生成ガスの中の自由電子の個数は減少し、プラズマの抵抗の増加と、プラズマの中を流れる電流の指数関数的減少とをもたらす。電流はオフ期間中に比較的低いが、電流は決して完全に消滅しない。スタンバイ電流と呼ばれるこの低電流は、真にパルス状の流れが生成されないので望ましくない。オフ期間中に、連続的な低電力プラズマ流が維持される。本質的に、装置はパルスプラズマを生成するのではなく、パルスと呼ばれる電力スパイクを伴う連続的なプラズマ流を生成し、それによって、パルスプラズマを模擬する。オフ期間はパルスより実質的に長いため、装置はオフ期間中にかなりの量のエネルギーを出力し、したがって、装置は真にパルス状のプラズマ流を必要とする用途のために効果的に利用されることができない。例えば、装置が皮膚治療のため使用されるならば、皮膚にはオフ期間中に低電力プラズマが照射されないようにするために、装置は各パルスの後に皮膚表面から離されるべきであるかもしれない。このことは装置の有用性および安全性を損ねる。
【0010】
プラズマの中を通る電流をパルスとパルスの間に零まで減少させ、プラズマのパルス毎に装置を再起動することは、特許文献2に開示された装置を使用するときに実用的でない。パルス毎に装置を再起動することは、プラズマ流がカソードの中を通る高電流を支持するために十分な電子をカソードが放出することの保証がなく、カソードの中に高電流を通す結果として、カソードの急速な破壊をもたらす。カソードがこのような電流を持続させるために十分に高い速度で電子を放出し始める前にカソードの中に高電流を通すことを試みることは、カソードにストレスを加え、最終的にカソードの破壊を引き起こす。代替的に、カソードとアノードとの間の電圧と、プラズマの中を通過する電流との両方を緩やかに増加させることが可能である。この代替案は、パルス毎の装置の始動が許容できないほど長いので実用的でもない。
【0011】
特許文献2に開示された装置、および、現在公知のこのタイプのその他の装置が真にパルス状のプラズマ流を生成する能力をもたないことは、装置の構成が原因である。このタイプの装置が起動するとき、スパッタリングに起因して何らかの電極の腐食がある。この腐食はプラズマの中で流れる分離された金属粒子のような電極材料を生じる。連続的なプラズマ流が使用されるとき、起動と起動に付随した不純物とは1回の治療につき1回しか発生しないので、起動不純物は比較的重要でない欠点である。したがって、装置が実際の治療を開始する前に電極粒子が装置から抜け出るための起動後の数秒間を待つことが可能である。しかし、パルスプラズマ流を使用するとき、不純物が装置から抜け出ることを待つことは現実的でない。なぜならば、粒子がパルス毎に電極から分離するからである。
【0012】
プラズマ流が予め作り出されているとき、プラズマ流の中の電流を増加または減少させるためにはほんの数マイクロ秒しか要しない。さらに、治療中の起動がないので、不純物がプラズマ流に入ることはなく、カソードにストレスがない。しかし、低電流であってもプラズマの中を通る電流を連続的に維持することは、上述されているように、真にパルス状のプラズマ流を必要とするいくつかの用途に関して、最適な装置とはいえない。
【0013】
プラズマ生成ガスを電気アークで加熱することによって真にパルス状のプラズマ流を生成することが困難であるのは主としてカソードおよびアノードで起こるプロセスの性質が原因である。一般に、そして、特に医療用途にとって、電流が急速に増加するとき、アノードおよびカソードの腐食がない動作を保証することが重要である。急速な電流増加中に、カソードの温度は低く、後続のパルスの繰り返しの間に容易に制御されないことがある。カソードとアノードとの間での電気アークの生成中に、カソードへのアークのアタッチメントの領域はカソードの初期温度に強く依存する。カソードが冷たいとき、アタッチメントの領域は比較的小さい。数パルス後に、カソードの温度は上昇するので、急速な電流増加の間に、アタッチメントの領域はカソードの表面領域全体に拡大し、そして、カソードホルダーにまで拡大する。これらの状況下で、カソードフォールは変動し始め、カソード腐食が始まる。さらに、電気アークのアタッチメントの領域がカソードホルダーに達するならば、カソードホルダーが溶け始め、望ましくない不純物をプラズマ流に取り込む。適切なカソード機能性のため、プラズマの各パルスにおける急速な電流増加の間にカソード表面への電気アークのアタッチメントの領域の正確な位置およびサイズを制御することが必要である。
【0014】
電気アークはカソードの表面不完全部(凹凸と呼ばれることがある)に付着する傾向がある。従来技術では、このような表面不完全部は円筒型カソードの形状を変更することにより作り出された。従来技術において使用される典型的な表面不完全部はカソードテーパリングである。カソードテーパリングは、アークが付着する傾向がある先端部を作り出す。不完全部を生じさせる別の方法は円筒型カソードを斜めに切断することによる。この方法もアークが付着する傾向のある不完全部を作り出す。これらの方法は、連続したプラズマ流セッションの間で電気アークアタッチメントの位置を制御するものの、上述されているように、アークアタッチメントの領域が段階的に拡大していくことに対して、パルスプラズマ動作のために、その領域のサイズを制御することに対しては十分ではない。
【0015】
アークアタッチメントの領域の位置およびサイズを制御するこれらの試みとは無関係に、いくつかの従来技術の装置は様々な目的のため多数のカソードを使用している。例えば、特許文献3では、複数のカソードがカソード間でスパークを生成するためプラズマベースの電球で使用されている。特許文献4では、複数のカソードが3つのグループに分割される。3段階の電力がカソードの間に分布するので、1つのグループが、擬似連続動作モードを提供する段階の間に使用される。特許文献5では、1対のカソードが、磁界によってカソードの間に分離された粒子を使用して、カソードから金属トレースをスパッタリングするため使用される。特許文献6では、カソードが、放電が起こる真空チャンバの真空密封を破壊することなく入れ替えられるように、複数のカソードが回転ドラムに設けられる。特許文献7は、複数のカソードが、アノードの周りに間隔をあけられている浄水システムを開示する。このマルチカソード構成は、清浄器の中を通る水の流れの乱れを減少させるため使用される。特許文献8では、電気的に絶縁されたカソードのマルチカソード組立体は、電気アーク生成に関係するカソードを交番することによりイオンビーム装置の寿命を延長するため使用される。特許文献9では、互いに離間された複数の並列カソードは、粉末粒子によるプラズマチャンネルの目詰まりを防止すべく、プラズマ流の断面を拡大するためにプラズマスプレー装置で使用される。一般に、複数のカソードを開示する従来技術の文献は、パルスプラズマの生成と関連した問題と関係がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,629,974号明細書
【特許文献2】米国特許第6,475,215号明細書
【特許文献3】米国特許第1,661,579号明細書
【特許文献4】米国特許第2,615,137号明細書
【特許文献5】米国特許第3,566,185号明細書
【特許文献6】米国特許第4,785,220号明細書
【特許文献7】米国特許第4,713,170号明細書
【特許文献8】米国特許第5,089,707号明細書
【特許文献9】米国特許第5,225,625号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、現在、真にパルス状のプラズマ生成のために従来技術の制限を解決するカソード組立体およびカソード組立体を使用する装置を動作させる方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
パルスプラズマ生成のためのカソード組立体は、長手方向に位置合わせされた複数のカソードに接続されたカソードホルダーを備える。好ましくは、組立体の中のカソードはできるだけ一緒に接近させてクラスタ化される。カソードは、好ましくは、ランタン含有タングステン製である。カソードは、好ましくは、同径を有するが、異なる長さを有する。最適には、長さが最も接近した2つのカソードの間の長さの差は、組立体の中のカソードの径とほぼ等しく、好ましくは、0.5mmである。本発明の実施形態によるカソード組立体は、カソードのうちの1つとアノードとの間に作られた電気アークによるプラズマ生成ガスの加熱に基づいて、パルスプラズマを生成する装置で使用される。特に、カソード組立体は、(a)カソードホルダーと、(b)長手方向に位置合わせされ、カソードホルダーに接続され、各カソードが少なくとも1つの他のカソードと物理的に接触した複数のカソードのクラスタと、を備える。
【0019】
好ましい実施形態において、動作中に、プラズマ生成ガスはカソードとアノードとの間を、好ましくは、プラズマチャンネルの中を通って通過させられる。高周波、高振幅の電圧波をアノードとカソードとの間に印加することにより、多数の自由電子が生成される。これらの電子がスパーク放電を形成する。スパークは、プラズマ生成ガスをイオン化し、グロー放電段階に入る。グロー放電中に、ガス原子のイオン化に起因して形成された正イオンはカソードに衝突し、これによりカソードを加熱する。カソードのアノード側端部が熱イオン電子放出の温度に達すると、プラズマ生成ガスがアーク放電段階に入り、アークがカソードとアノードとの間に作られる。アークは組立体の中のすべてのカソードに付着する。
【0020】
アークがカソードとアノードとの間に作られた後、電流はアークを持続させるために十分な大きさ、または、僅かにより大きい大きさまで減少させられる。これによりアークアタッチメントの領域は減少される。アタッチメントの領域は、アークが単一のカソードに付着するように減少する。この低電流がある期間に亘って維持された後、電流はパルスの動作レベルまで上昇させられる。アタッチメントの領域は著しく増加せず、電子放出は単一のカソードからに限り発生する。動作電流が所望の間隔に亘って維持された後、装置は、電流および電圧が印加されないオフ期間に入る。
【0021】
この動作方法は、従来技術の方法と関連した不安定動作の問題を回避する。マルチカソード組立体がこの方法によって動作させられるならば、カソードは過熱することがなく、アタッチメントの領域はカソードホルダーまで拡大しない。このことは、プラズマ生成装置の安定動作を確実にする。この動作方法は、単一のカソードを有するカソード組立体で使用された場合において、特定の利点をさらに提供する。
【0022】
プラズマのパルスを生成する方法は、(a)第1の電流を1つ以上のカソードおよびアノードに通すステップと、(b)電流の大きさが第1の電流の大きさより小さい第2の電流を、1つ以上のカソードおよびアノードに通すステップと、(c)電流の大きさが第1の電流の大きさより大きい第3の電流を、1つ以上のカソードおよびアノードに通すステップと、(d)1つ以上のカソードおよびアノードを通る第3の電流を止めるステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】パルスプラズマ生成のための基本装置を示す図である。
【図2】好ましい実施形態のカソード組立体を3次元で示す図である。
【図3】皮膚治療のため採用されるパルスプラズマを生成する装置を示す図である。
【図4A】各パルスの生成用のアノードとカソードとの間の電圧のパターンを示す図である。
【図4B】各パルスの生成用のカソード、プラズマチャンネルの中のプラズマ生成ガス、および、アノードに印加された電流のパターンを示す図である。
【図5A】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5B】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5C】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5D】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5E】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5F】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5G】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5H】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5I】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図6A】従来技術において、現在公知の方法によって生成されたある程度の個数のパルスの後の、シングルカソード組立体の中のカソードの温度とアークアタッチメントの領域とを示す図である。
【図6B】本発明の実施形態によって生成されたある程度の個数のパルスの後の、マルチカソード組立体の中のカソードの温度とアークアタッチメントの領域とを示す図である。
【図7A】従来技術の方法によって生成された、500個のパルスの後のシングルカソード組立体の顕微鏡視野の略図である。
【図7B】本発明の方法の実施形態によって生成された、40000個のパルスの後のマルチカソード組立体の顕微鏡視野の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
典型的な実施形態では、複数のカソードを有するカソード組立体はプラズマ生成装置の一部である。少なくとも2個存在する限り、組立体の中のカソードの個数に理論的な限界はない。図1はこのような装置の略縦断面図である。カソードホルダー2は、互いに長手方向に位置合わせされた3つのカソード10、20および30を保持する。アノード4はカソードから離れて配置されている。好ましい実施形態では、初期的に、各カソードは、アノード4に最も接近した端部(「アノード端部」)にそれぞれ平坦面12、22および32を有する。平坦面はそれぞれエッジ14、24および34を形成する。図2はカソード組立体の3次元図を示している。
【0025】
幾何構造の点で、カソードはクラスタ化されるべきである。クラスタ化とは、あらゆるカソードが少なくとも1つの他のカソードに長手方向に接触し、グループから分離したカソードが存在せずに、カソードのすべてが単一のグループとして並べられることを意味する。カソードは、好ましくは、互いにできる限り接近するようにクラスタ化される。しかし、組立体の中の各カソードがクラスタの中の少なくとも1つの他のカソードと物理的に接触状態にあれば十分である。理論的に、組立体の中のカソードは異なる径を有していてもよい。しかし、好ましい実施形態では、カソード10、20、30は、好ましくは、0.5mmである同径を有する。いくつかの実施形態では、組立体の中の少なくとも1つのカソードは、少なくとも1つの他のカソードの長さと異なる長さを有する。好ましい実施形態では、組立体の中の全カソードは異なる長さを有する。好ましくは、2つのカソードの間の最小の長さの差は、組立体の好ましい実施形態では0.5mmであるカソードの径にほぼ等しい。
【0026】
いくつかの実施形態では、カソード組立体を採用する装置は、カソード10、20、30とアノード4との間に延在し、アノード4を通過するプラズマチャンネル6をさらに備える。いくつかの実施形態では、プラズマチャンネルは1つ以上の中間電極によって形成される。いくつかの実施形態では、カソード10、20、30のアノード端部はプラズマチャンネルに接続されたプラズマチャンバの中に位置している。カソード組立体は、例えば、図3に示されたパルスプラズマ生成装置のような他の装置で使用されることがある。
【0027】
カソード組立体を採用することがある装置は、しかし、プラズマ生成装置に限定されない。いくつかの実施形態では、カソード組立体は、光源に用いられるか、または、通信装置の一部として用いられることがある。一般に、カソード組立体は、カソードとアノードとの間に短い間隔の電気アークを作ることを必要とする装置で用いられることがある。
【0028】
動作方法を説明する目的のため、図3に示された装置の実施形態が用いられる。しかし、後述される動作方法は、他の装置の中でマルチカソード組立体と併せて使用されるならば、同じ利点を提供することに留意すべきである。さらに、動作方法はシングルカソード組立体と併せて用いられることがあるが、マルチカソード組立体でこれらの動作方法を使用することはより効果的である。図3に示された装置は、図2に示された、カソードホルダー2と、カソード10、20および30とを有するカソード組立体を備える。装置は、アノード4と、アノード4から電気的に絶縁され、互いに電気的に絶縁された1つ以上の中間電極42a〜42eとをさらに備える。プラズマチャンネル6は、中間電極42a〜42eとアノード4とによって形成される。いくつかの実施形態では、中間電極42aはプラズマチャンバ8をさらに形成する。装置の動作中に、プラズマ生成ガス(典型的に、アルゴンのような希ガス)は、開口部72を介して装置に取り込まれる。プラズマ生成ガスは、カソード10、20、30に沿ってプラズマチャンバ8の中へ流れ、次に、プラズマチャンネル6の中へ流れ、その後に、プラズマ生成ガスはアノード4の中の開口部を介して装置を抜け出る。
【0029】
いくつかの実施形態では、延長ノズルが装置のアノード端部に取り付けられる。延長ノズルはプラズマチャンネルに接続された延長チャンネルを形成する。管状絶縁体要素が延長チャンネルの内面の長手方向部分を覆う。さらに、いくつかの実施形態では、延長ノズルは1つ以上の酸素運搬ガス入口を有する。
【0030】
図3に示された装置のようなプラズマ生成装置は、典型的に、(1)アノード4とカソード10、20、30との間に印加された電圧、および、(2)カソード10、20、30、プラズマチャンネル6の中のプラズマ生成ガス、および、アノード4を通過する電流を制御する1つ以上の電子回路に接続される。電流を制御する回路は、公知の電流源である。これらの回路はプラズマの各パルスの生成のため使用される。組立体の中の全カソードは互いに電気的に接続され、同じ回路に接続されるので、カソード10、20、30は同じ電位を有し、個々のカソードの間に電圧は存在せず、アノード4とカソード10、20、30との間だけに存在する。プラズマパルス形成のプロセスは、(1)カソードとアノードとの間に電圧を印加し、(2)プラズマ生成ガスを通過する電流を制御することによって制御される。
【0031】
概要として、プラズマ生成のプロセスは、(1)スパーク放電、(2)グロー放電、および、(3)アーク放電の3つの段階を含む。アーク放電段階における電気アークは、プラズマチャンネル6の中を流れるプラズマ生成ガスを加熱し、プラズマを形成する。各プラズマパルスの生成は、プラズマ生成ガスが3つの段階をすべて経ることを必要とする。パルスの生成前に、プラズマ生成ガスの抵抗は無限に近い。少数の自由電子が宇宙線による原子のイオン化に起因してプラズマ生成ガスの中に存在する。
【0032】
スパーク放電を作り出すため、高振幅、高周波の電圧波がアノード4とカソード10、20、30との間に印加される。この電圧波は、カソード10、20、30とアノード4との間でプラズマチャンネル6の中の自由電子の個数を増大させる。十分な個数の自由電子が形成されると、DC電圧がアノード4とカソード10、20、30との間に印加され、DC電流は、カソード10、20、30と、プラズマ生成ガスと、アノード4とを通過させられ、カソード10、20、30とアノード4との間にスパーク放電を形成する。
【0033】
スパーク放電後、プラズマ生成ガスの抵抗は減少し、グロー放電段階が始まる。グロー放電段階の間に、正に帯電したイオンがカソード10、20、30とアノード4との間の電圧によって作り出された電界の影響下でカソードに引き付けられる。カソード10、20、30にイオンが衝突しているとき、カソードのアノード端部の温度は上昇する。温度が熱イオン電子放出の温度まで上昇すると、アーク放電段階が始まる。初期に、アークは組立体の中のすべてのカソードに付着する。プラズマ生成ガスの中を通る電流はその後に減少し、その結果、アタッチメントの領域はアーク放電を持続させることができるアタッチメントのほぼ最小の領域まで縮小する。アークアタッチメントの領域は小さいので、アタッチメントの領域は組立体の中の単一のカソードに限定される。したがって、アーク放電を持続させるために必要とされ、カソードの径に依存する電流は、比較的低い。電流が低下させられ、ある期間に亘ってそのレベルに保たれた後、電流はパルスの動作レベルまで急速に増大される。アークアタッチメントの領域は少しだけ増大し、単一のカソードだけがパルスの残りの部分の間に電子を放出し続ける。単一のカソードだけが制御された領域から電子を放出するように、アークアタッチメントの領域を減少させ、その後に、その小さい領域を維持することは、真にパルス状のプラズマ装置の動作に極めて重要である。
【0034】
より詳細には、パルスプラズマ生成方法についての以下の説明は図4A〜Bを参照し、図4Aはアノード4とカソード10、20、30との間に印加された電圧を示し、図4Bは、プラズマチャンネル6の中のプラズマ生成ガスを通って、カソード10、20、30のうちの1つ以上からアノード4へプラズマの中を流れる電流を示している。後述される電圧、電流、および、時間の値は、図3に示されたパルスプラズマ装置において3カソード組立体と併せて使用されるときにこの方法のため好ましい値である。この方法がマルチカソード組立体のその他の実施形態のため使用されるとき、または、マルチカソード組立体が別の装置で使用されるとき、電圧、電流、および、時間のその他の値が好ましいことがある。
【0035】
図4Aは、アノード4とカソード10、20、30との間に印加された電圧のグラフを示している。プラズマパルスの生成前に、時点t0で、バイアス電圧202が生成される。バイアス電圧は、100ないし1000ボルトでもよいが、好ましくは、400ないし500ボルトである。t0とt1との間で、バイアス電圧が電子回路によってアノード4とカソード10、20、30との間に印加される。しかし、バイアス電圧202の生成は、プラズマ生成ガスの抵抗が無限に近いので、プラズマチャンネル6の中のプラズマ生成ガスの中を通る電流を生成しない。一実施形態では、コンデンサがバイアス電圧を持続させるため使用される。図5Aは、t0とt1との間に、プラズマチャンネル6の中を流れる電流が存在しないことを示し、カソード10、20、30とアノード4との間でプラズマチャンネル6の中に僅かに数個の自由電子しか存在しないことを示している。
【0036】
時点t1で、高周波、高振幅の電圧波204がアノード4とカソード10、20、30との間に印加される。電圧波の振幅は少なくとも1kVであるが、好ましくは、約5kVである。いくつかの実施形態では、高周波、高振幅の電圧波204は、図4Aに示されているように、指数関数的に減少する振幅で弱められる。電圧波の周波数は少なくとも300kHzであり、好ましくは、約500kHzである。高電圧、高周波の波の継続時間は少なくとも2波長である。例えば、500kHzの周波数をもつ波の期間は、少なくとも0.4マイクロ秒であるが、15ないし20マイクロ秒のより長い波が好ましい。高周波、高振幅の電圧波204は、パルスプラズマ生成の唯一の電圧制御された部分であることに留意されたい。パルスの残りの部分の間に、電圧は、カソード10、20、30とアノード4との間でプラズマ生成ガスを通過する電流の結果として、アノード4とカソード10、20、30との間で単純に維持される。
【0037】
高周波、高振幅の電圧波204は、プラズマチャンネル6の内部でプラズマ生成ガスの中の自由電子の急速な交替運動を作り出す。急速に運動する自由電子は、プラズマチャンネル6の中を流れるプラズマ生成ガスの原子から電子を叩き出す。このプロセスは電子なだれとして公知である。電子なだれの結果として、自由電子の量は、図5Bに示されているように、カソード10、20、30とアノード4との間にスパーク放電を作り出すために十分な数に達する。
【0038】
図3に示されている実施形態のように、1つ以上の中間電極によって形成されたプラズマチャンネル6を有する実施形態では、スパークが最初にカソードとカソードに最も接近した中間電極42aとの間で作り出される。その他のスパークは、プラズマチャンネル6の中を流れるプラズマ生成ガスの中の自由電子と、プラズマチャンネル6を形成する他の中間電極42b〜42eとの間で作り出される。最終的に、図5Cに示されたカソード10、20、30とアノード4との間にスパーク放電が作り出される。
【0039】
スパーク放電は、プラズマ生成ガスの中のある程度の個数の原子をイオン化し、よって、プラズマ生成ガスの導電率を増加させ、プラズマ生成ガスの抵抗を、好ましくは、200ないし1000Ωまで低下させる。イオン化の結果として作り出された自由電子は、図5Cに示された比較的小さい体積302に閉じ込められる。
【0040】
時点t2で、高周波、高振幅の電圧波204が終了した後、100ないし1000ボルト、好ましくは、約400ないし500ボルトの範囲に入る電圧206がアノード4とカソード10、20、30との間に印加される。いくつかの実施形態では、時点t2で印加される電圧は高周波、高振幅の電圧波204のバイアス電圧202に等しい。いくつかの実施形態では、電圧206は、図4Aに示されているように、時間と共に指数関数的に減少する。
【0041】
時点t2で、プラズマ生成ガスは電気を通すために十分な自由電子を有する。しかし、カソード10、20、30は、例えば、皮膚治療のような特定の用途のため必要とされる特性を備えたプラズマ流の生成を維持する持続可能な電気アークを可能にさせる熱イオン電子放出を実現するために十分に加熱されていない。放電電圧206はグロー放電段階を開始する。カソード10、20、30が電子を熱イオン放出し始めるため、カソード表面12、22および32は、熱イオン電子放出温度、または、熱イオン電子放出の温度と呼ばれるカソード材料に固有のある温度に到達しなければならない。例えば、好ましい実施形態で使用されるカソードのような、ランタンを含有するタングステン製のカソードに対し、電子放出の温度は約2800ないし3200Kである。アノード4とカソード10、20、30との間に電圧によって作り出された電界の影響下で、プラズマチャンネル6の中に存在する自由電子はアノード4の方へ引き付けられ、イオンはカソード10、20、30の方へ引き付けられる。図5Dに示されたグロー放電は、二次放出に起因して、大部分はイオン衝撃に起因して電子を放出する冷陰極を使う自続放電である。この放電の顕著な特徴は、好ましい実施形態では、表面の強い電界、および、100ないし400ボルトのかなりの電位降下を伴う、カソードにおける正空間電荷の層である。この降下はカソードフォールとして公知である。電流が増大されるならば、グロー放電は、特定のレベルで、アーク放電に移り、そのときまでに、電子を熱イオン放出するため十分な表面温度に達している。
【0042】
時点t3で、アノード4とカソード10、20、30との間の電圧が所定の値まで低下するとき、カソード10、20、30と、プラズマチャンネル6の中のプラズマ生成ガスと、アノード4とを通過する電流は、0Aから、好ましくは、4ないし6Aの範囲にある所定の第1の電流まで増加する。好ましくは、この電流は1ないし10ミリ秒に亘って維持される。電流が増加し始めたときに、所定の電圧は、時点t2での電圧のe−0.5ないしe−1.5倍であるが、好ましくは、時点t2での電圧の約e−1倍である(eは自然対数の底であり、およそ2.718に等しいことに注意を要する)。例えば、一実施形態では、時点t2でアノード4とカソード10、20、30との間に印加された電圧は、約400ボルトである。電圧が約150ボルトまで低下するとき、プラズマ生成ガスの中を通る電流は約5Aまで増加される。いくつかの実施形態では、電流増加は、t3とt4との間の300ないし500マイクロ秒の間隔をもつランプ208である。
【0043】
t4の後のある時点で、カソードは、図5Eに示されているように、カソードの表面12、22および32から電子を熱イオン放出し始める。この時点での電子放出は、所望の特性のプラズマを生成するため必要とされる電気アークを持続させるために十分である。この時点で、アーク放電段階が始まり、プラズマチャンネル6に沿ってカソード10、20、30とアノード4との間にアークが作られる。流れの中のプラズマの抵抗は約1ないし3Ωである。この時点で、理論的に、電流は、図5Fに示されるように特定の用途のために必要とされる動作レベルまで増加させることができる。しかし、この時点で電流を動作レベルまで増加させることは、以下の望ましくない影響を引き起こす。図5D〜Fに示されているように、組立体の中の全カソードは、グロー放電段階に係わり、その後に、アーク放電段階に係わる。カソード10、20、30の本体は、グロー放電段階中に正に帯電したイオンによって衝突され続け、アークはアーク放電段階中に全カソードの表面領域に付着する。パルスとパルスとの間のオフ期間中に、カソード10、20、30の温度は当初の非動作レベルまで低下しないので、カソードが依然として前のパルスによって加熱されていると、グロー放電段階およびアーク放電段階が発生する。カソードのより大きい部分がパルス毎に電子を放出するため十分に加熱されるようになるので、プラズマアタッチメントの領域は増大する。約300ないし500パルス後のある時点で、プラズマはカソードの表面領域全体に付着し、同様にカソードホルダー2に付着し始める。
【0044】
アークがカソードホルダー2に付着するので、カソードホルダーは、電極材料と共に電子をスパッタし、放出し始める点まで加熱される。これは、プラズマ流中に不純物を取り込むこととなり、いくつかの用途、特に、医療用途の場合に許容できない。さらに、カソードの融点より十分に低い融点を有するカソードホルダーが溶け始める。1つ以上のカソードと接触した状態であるカソードホルダーの部分が溶け始めるとき、これらのカソードは損傷を受ける。この損傷は、電気アークが後続のパルスの間に付着できる不完全部の原因となる。1つ以上のカソードの基部におけるこの不完全部へのアークのアタッチメントは、プラズマチャンネルの外側で終了する電気アークを引き起こすこともある。この結果、プラズマがプラズマチャンネルの中に形成されるかどうかを制御することは不能になる。さらに、アタッチメントの制御されない表面は、カソードの電位の変動を引き起こす。一般に、制御不能のアークアタッチメントの領域の拡大は装置の不安定動作の原因となる。
【0045】
カソードの長さを延長し、よって、カソードホルダー2をアークが最初に付着するカソード10、20、30のアノード端部から遠ざけることは、最適な解決にならないことがわかった。いくつかの実験によれば、カソードを延長しても上述された望ましくないプロセスを取り除くことはなく、ほんの僅かに遅らせるだけであることが明らかになった。
【0046】
好ましい方法によれば、時点t5で、電流は第2の電流まで減少させられる。いくつかの実施形態では、電流減少は300ないし500マイクロ秒の間隔をもつランプ209である。電流は、好ましくは、アーク放電を持続させるために必要とされる最小限の電流とこの最小限の電流のほぼ3倍との間のレベルまで減少させられる。いくつかの実施形態に対し、この電流は0.33ないし1.0Aの範囲にある。好ましくは、第2の電流は5ないし20ミリ秒維持される。電流低下は、アークアタッチメントの縮小した領域と同様に、カソード10、20、30とアノード4との間の電気アークの断面の縮小をもたらす。アタッチメント領域を、アークを持続させるため必要とされる最小値まで減少させる必要はないが、電流を減少することにより、アタッチメントの領域を最小領域を著しく上回らないサイズまで縮小する。図5Gに示されているように、アークはカソードの表面領域全体に付着しない。実際に、電気アークを持続させるため、放出された電子は、図5Gに示されているように、比較的小さい体積に集中し、小さい領域から放出される。カソードを加熱するイオン電流は、アタッチメントの小さい領域を通る高い電流密度フラックスのため、カソードからの熱イオン電子放出を持続させるために十分に強い状態を保つ。このイオン電流は、アークアタッチメントの領域および周囲の体積における非常に高温の原因となる。このようにしてカソード10、20、30とプラズマ生成ガスとアノード4とに印加された電流を減少させることは、アークが単一のカソードだけに付着すること、および、さらにアークのアタッチメントが比較的小さい領域に制約されることを保証する。
【0047】
カソード径は、カソードの中を通過させられ、その間にカソードとアノードとの間の電気アークを依然として維持する最低限の持続可能な電流に最も有意な影響を与えることが実験的にわかった。例えば、径1.0mmおよび長さ5mmのカソードに対する最小電流は約1Aである。径0.5mmおよび長さ5mmのカソードに対する最小電流は約0.5Aである。径0.5mmおよび長さ35mmのカソードに対する最小電流は約0.3Aである。t6とt7との間の第2の減少した電流の期間中に、プラズマは1つのカソードだけに付着するので、例えば、t4とt5との間で、電気アークが組立体の中の全部のカソードに付着される場合に、アークを持続させるため必要とされる電流と比べて比較的小さい電流を使って電気アークを持続させることが可能である。カソード組立体の好ましい実施形態を参照すると、組立体の中の単一のカソードの径は組立体の中の全カソードの全径の約半分であるので、アークが単一のカソードに付着するとき、アークを持続させるため必要とされる電流は、アークが3つのカソード全部に付着した場合に必要とされる電流のほぼ半分である。
【0048】
時点t7で、電流は第3の電流、すなわち、特定の用途のため必要とされる動作レベルであり、好ましくは、10ないし80Aの範囲にある電流まで増加させられる。いくつかの実施形態では、電流増加は、t7とt8との間で300ないし500ミリ秒の間隔をもつランプ211である。増加の割合は、毎秒1000ないし10000Aである。時点t8まで、好ましくは、30ないし90ボルトの範囲にある動作電圧は、装置の幾何構造と、カソード10、20、30のうちの1つとアノード4との間を通る電流との結果として、アノード4とカソード10、20、30との間で維持される。
【0049】
時点t8で、電流は動作レベルに達し、完全に成長したプラズマ流は、好ましくはそれぞれ10ないし80Aおよび30ないし90ボルトである動作電流レベル214および動作電圧レベル216で維持される。これらの動作レベルは特定の用途のため所望の間隔に亘って維持される。例えば、皮膚治療に対し、好ましい間隔t7−t8は5ないし100ミリ秒である。図5Hは、カソードのうちの1つであるカソード10とアノード4との間で、完全に成長したプラズマ流を持続させる電気アークを示している。パルスの動作期間の間に、電気アークは、第2の電流が通過させられるときの期間t6−t7の間のアークの断面より著しく大きくはない断面を有する。
【0050】
時点t9で、プラズマ流が所望の間隔に亘って持続させられたとき、プラズマチャンネル6の中のプラズマ生成ガスの中を流れる電流はオフに切り替えられ、その結果、アノード4とカソード10、20、30との間の電圧の印加は停止され、装置は、次のプラズマのパルスが生成されるまで、図5Iに示されたオフ期間に入る。
【0051】
上述された方法の使用は、上述のようにアークアタッチメントの領域が段階的に拡大することを回避する。プラズマがカソードの露出した表面領域全体に付着する可能性のある、t2からt4までに行われるグロー放電は、好ましい実施形態では、最大で10ミリ秒まで持続する。グロー放電中に得られる温度上昇は、パルスの残りの部分とオフ期間との間に失われる。その結果、新しいパルスが生成されるべきときまでに、カソードは冷却されている。図6Aは、従来技術の方法によって生成された一連のパルスに対し、シングルカソード組立体のアタッチメントの温度および領域を概略的に示している。上のグラフは時間の関数として電流を表している。中央のグラフは時間の関数としてカソードの温度を表している。下のグラフは時間の関数としてカソード組立体へのアークアタッチメントの領域を表している。図6Aは、説明の目的のため、4つのパルスだけを表しているが、実際のプロセスは約300ないし500個のパルスの期間に亘って起こることがある。したがって、例えば、1番目の図示されたパルスは1番目の実際のパルスでもよく、2番目の図示されたパルスは150番目の実際のパルスでもよく、3番目の図示されたパルスは300番目の実際のパルスでもよく、4番目の図示されたパルスは450番目の実際のパルスでもよい。1番目の図示されたパルスの間に、カソードは冷たく、アークはカソード表面の小さい領域に付着する。しかし、1番目の図示されたパルスの間にカソードを通過する電流はカソードの温度を上昇させる。カソードの温度は、次のパルスの前にやや降下するが、カソードの当初の非動作温度まで降下しない。2番目の図示されたパルスの間に、アークアタッチメントの領域は増大しないが、カソードの温度はさらに一層上昇する。2番目の図示されたパルスの後に、温度はやや降下するが、2番目のパルスの前のカソードの温度までは降下しない。3番目の図示されたパルスの間に、温度はさらに上昇し、臨界温度T0を超え、カソードの本体全体は、臨界温度を上回ると電子を熱イオン放出することができる。カソードの温度がT0を超えた後、アタッチメントの領域は次のパルス毎に急速に増大する。図6Aに示されているように、4番目の図示されたパルスまでに、アークアタッチメントの領域はカソード表面全体を覆う。
【0052】
図6Bは、本発明の実施形態によって生成された一連のパルスに対し、マルチカソード組立体の好ましい実施形態の温度およびアタッチメントの領域を概略的に示している。電流パルスは、図4Bに示され、上述されたパルスに対応する。図示されたパルスは図6Aの場合と同様に実際のパルスに対応する。上述のように、電流の各パルスにおいて、アークが始動された後、アークは組立体の中のすべてのカソードに付着する。電流は次にアタッチメントの領域を単一のカソードだけに縮小するため減少し、その後に限り、電流は動作レベルまで増加させられる。実質的にパルスの間隔全体に対し、アークは小さい領域に付着するので、カソードの本体全体は著しく加熱されることがない。オフ期間中に、カソード組立体の大部分がパルスの間にかなり冷めているので、カソードは急速に冷める。図6Bに示されているように、1番目の図示されたパルスの後に、カソードの温度は、次の実際のパルスの前に非動作温度まで降下する。したがって、次の実際の電流パルスが始まるとき、組立体の中のカソードは当初の非動作温度を有する。そのパルスの後に続くオフ期間中に、カソードの温度は当初の非動作レベルまで再び降下する。カソードの温度は決してT0を超えないので、アタッチメントの領域は増大することなく、図6Bの下のグラフに示されているように、数万個のパルスに対しほぼ同じ状態を保つ。
【0053】
図7Aは従来技術の方法によって生成された500個のパルスの後のシングルカソード組立体の顕微鏡視野の略図である。領域350は、500パルスのセッションの最後のパルスの間の電気アークのアタッチメントの領域である。カソードホルダー352は溶け、領域350はカソード全体を含む。カソードの顕微鏡検査は、アタッチメントの領域が、アタッチメントの領域の制御を考慮しない動作方法から生じるカソードの温度不安定性に起因して、激しく腐食されていることを明らかにした。図7Bは本発明の方法の実施形態によって生成された40000個のパルスの後のマルチカソード組立体の顕微鏡視野の略図である。領域360は40000パルスのセッションの最後のパルス中のアタッチメントの領域である。図7Bからわかるように、カソードホルダーおよびホルダーに最も接近したカソードの長手方向部分は、アークが決して付着しないので影響を受けない。同様に、アタッチメントの領域によって覆われているカソードの部分は、図5Fに示されているように、アークがt4とt5との間に限りその領域に付着するので、アークによって少ししか影響を受けることがなく、t5の後、アタッチメントの領域はカソードのうちの1つに接した小さい領域に縮小されるので、カソードの残りの部分はアークによる影響を受けない。
【0054】
図2に示されたカソード組立体に対し、最初の数千個のパルスの間に、アークは最も短いカソード10に付着することが実験的に見出された。これらのパルスの間に、カソード10のアノード端部は著しく加熱される。その結果として、いくらかの溶融がカソード10のアノード端部で起こる。カソード10は、エッジ14の明確に画定された表面不完全部を失う。表面不完全部が非常に明確に画定されないならば、アークは、アノード端部が依然として明確に画定されたエッジ24を有する2番目に短いカソード20に付着し始める。数千個のパルスの後、カソード20の端部は明確に画定されたエッジ24を失う。その後、アークは次に短いカソード、すなわち、カソード30に付着し始める。数千個のパルスの後、カソード30の端部は同様にカソード30の明確に画定されたエッジ34を失う。4つ以上のカソードを備えるカソード組立体の実施形態では、アークは長さが増大する順番に異なるカソードに付着している。アークが最も長いカソードに付着した後、最も長いカソードのアノード端部によって吸収された熱のため、アノードに最も接近したすべてのカソードの端部はいくらかの溶融のためそのカソードの端部の明確に画定されたエッジを失う。
【0055】
一旦このことが起こると、アークは再び最も短いカソードに付着し始める。アークは、アノードがエッジ14の画定をさらに失うまで、数千個のパルスの間にカソード10に付着する。この時点で、アークは、エッジ12よりは、明確に画定されたエッジ22を含むアノード端部を有する2番目に短いカソード、すなわち、カソード20に付着し始める。数千個のパルスにおいて、アークは次に短いカソード等々に付着する。
【0056】
図2に示されたカソード組立体に対し、実験は、アークが約10000個のパルスの間にカソード10に付着し、その後に、アークが次の約10000個のパルスの間にカソード20に付着し、その後に、次の約10000個のパルスの間にカソード30に付着することを明らかにした。その後、アークは、次の約10000個のパルスの間に再びカソード10等々に付着する。図2に示されたカソード組立体は、殆どのパルスプラズマ用途のため十分である60000個のパルスのセッションに対しこのようにして機能することが明らかにされた。
【0057】
上記の方法は、マルチカソード組立体と共に使用されるとき、最良の結果をもたらすことを明らかにしたが、この方法の使用はシングルカソード組立体に対しても同様に有益である。
【0058】
本発明の実施形態についての上記説明は、例示と解説のため提示されている。網羅的であること、または、本発明を開示されたそのままの形に制限することは意図されていない。多数の変更および変形が当業者に理解されるであろう。実施形態は、発明の原理および発明の実際的な用途を最良の説明のために選択され記載され、それによって、当業者が発明を理解することを可能とする。特定の使用に適した種々の実施形態および変更が考慮される。発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定められることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ生成装置のカソード組立体、および、プラズマ、特に、パルスプラズマを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスと比較的に短時間のオフ期間とをもつパルスプラズマの生成は、独特の一連の課題を提示する。現在公知のプラズマ生成装置には、これらをパルスプラズマを生成するために利用することが実用的でないいくつかの制限がある。
【0003】
一般に、プラズマ生成装置はカソードおよびアノードを備える。典型的に希ガスであるプラズマ生成ガスは、カソードとアノードとの間をアノードを通過して長手方向に延在するチャンネルの中を流れる。プラズマ生成ガスがプラズマチャンネルを横断するとき、プラズマ生成ガスは、カソードとアノードとの間に作られた電気アークによって加熱され、プラズマに変換される。プラズマチャンネルの部分は1つ以上の中間電極によって形成されてもよい。
【0004】
プラズマの生成は3つの段階で起こる。スパーク放電と呼ばれる第1の段階は、電気スパークがカソードとアノードとの間で作られるときに起こる。グロー放電と呼ばれる第2の段階は、電気スパークの中で負に帯電した電子の運動の結果として形成された正に帯電したイオンがカソードに衝突するときに起こる。アーク放電と呼ばれる第3の段階は、カソードの部分がイオン衝突によって十分に加熱された後に起こり、このイオン衝突はプラズマ生成ガスを加熱するためカソードとアノードとの間で電流を持続するために十分な個数の電子を放出し始める。電気アークは、プラズマを形成するプラズマ生成ガスを加熱する。高温プラズマが生成されるたびに、プラズマ生成ガスは3つの段階のすべてを経なければならない。
【0005】
従来技術の装置では、起動時に、カソードとアノードとの間を通る電流は、所望の動作レベルまで単に増加させられる。しかし、この急速に増加した電流は、スパーク放電段階およびグロー放電段階の間では持続させられない。アーク放電段階に達し、カソードがこのような電流を支持するために十分な速度で電子の熱イオン放出を始める場合に限り、印加された動作レベル電流がカソードとアノードとの間に流れ始める。カソードが、高い動作レベルの電流を維持するために十分に高い速度で電子を熱イオン放出し始める前に、このような電流をカソードの中に通すことを試行すると、カソードにストレスを加え、比較的少ない回数の起動後、最終的にカソードの破壊を引き起こす。
【0006】
パルスプラズマの生成は、素早く連続したプラズマ生成装置の頻繁な起動を必要とする。例えば、皮膚治療において、パルスプラズマを使った単一セッションの治療は、数千個のパルスを、その結果として数千回の起動を必要とすることがある。プラズマ生成装置を起動する従来技術の方法は、カソードがセッション中に損傷されるかもしれないので、パルスプラズマ生成には適さない。
【0007】
現在、2つのタイプの装置がイオン化ガスのパルスの生成のため使用されることがある。特許文献1に開示された装置は、第1のタイプの例である。このタイプの装置では、コロナ放電が、窒素のようなプラズマ生成ガスを交番磁界の中に通すことにより生成される。交番磁界はガスの中で自由電子の速い運動を生み出す。素早く運動する電子はガス原子から他の電子を叩き出し、いわゆる電子なだれを形成し、この電子なだれが次にコロナ放電を引き起こす。電界をパルス状に印加することにより、パルスコロナ放電が生成される。数ある中でパルスコロナ放電を生成するこの方法の利点は、(1)流れの中に不純物が存在しないこと、および、(2)真にパルス状の流れの生成を可能にさせる短い開始時間である。本開示の目的から、真にパルス状の流れとは、パルスのオフ期間中に完全に止まる流れを表す。
【0008】
第1のタイプの装置および方法の欠点は、生成されたコロナ放電が約2000℃という一定の最高温度を有することである。装置の中で形成されたコロナ放電は、電気アークによって加熱されないので、決して高温プラズマにならない。そのため、パルスコロナ放電を生成する装置は2000℃を上回る温度を必要とするいくつかの用途には使用できない。したがって、第1のタイプの装置の用途は、コロナ放電を引き起こす能力があるが高温プラズマではないという放電プロセスの性質によって制限される。
【0009】
第2のタイプの装置は、カソードとプラズマチャンネルを形成するアノードとの間に作られた電気アークによって、プラズマチャンネルを通過するプラズマ生成ガスの流れを加熱することによりプラズマを生成する。第2のタイプの装置の例は特許文献2に開示されている。特許文献2の開示によれば、プラズマ生成ガス、好ましくは、アルゴンがプラズマチャンネルを横断するとき、パルスDC電圧がアノードとカソードとの間に印加される。所定の一定バイアス電圧がパルスDC電圧に付加されてもよく、または、付加されなくてもよい。電圧パルスの間に、プラズマ生成ガスの中の自由電子の個数が増加し、プラズマの抵抗の減少と、プラズマの中を流れる電流の指数関数的増加とをもたらす。オフ期間中に、プラズマ生成ガスの中の自由電子の個数は減少し、プラズマの抵抗の増加と、プラズマの中を流れる電流の指数関数的減少とをもたらす。電流はオフ期間中に比較的低いが、電流は決して完全に消滅しない。スタンバイ電流と呼ばれるこの低電流は、真にパルス状の流れが生成されないので望ましくない。オフ期間中に、連続的な低電力プラズマ流が維持される。本質的に、装置はパルスプラズマを生成するのではなく、パルスと呼ばれる電力スパイクを伴う連続的なプラズマ流を生成し、それによって、パルスプラズマを模擬する。オフ期間はパルスより実質的に長いため、装置はオフ期間中にかなりの量のエネルギーを出力し、したがって、装置は真にパルス状のプラズマ流を必要とする用途のために効果的に利用されることができない。例えば、装置が皮膚治療のため使用されるならば、皮膚にはオフ期間中に低電力プラズマが照射されないようにするために、装置は各パルスの後に皮膚表面から離されるべきであるかもしれない。このことは装置の有用性および安全性を損ねる。
【0010】
プラズマの中を通る電流をパルスとパルスの間に零まで減少させ、プラズマのパルス毎に装置を再起動することは、特許文献2に開示された装置を使用するときに実用的でない。パルス毎に装置を再起動することは、プラズマ流がカソードの中を通る高電流を支持するために十分な電子をカソードが放出することの保証がなく、カソードの中に高電流を通す結果として、カソードの急速な破壊をもたらす。カソードがこのような電流を持続させるために十分に高い速度で電子を放出し始める前にカソードの中に高電流を通すことを試みることは、カソードにストレスを加え、最終的にカソードの破壊を引き起こす。代替的に、カソードとアノードとの間の電圧と、プラズマの中を通過する電流との両方を緩やかに増加させることが可能である。この代替案は、パルス毎の装置の始動が許容できないほど長いので実用的でもない。
【0011】
特許文献2に開示された装置、および、現在公知のこのタイプのその他の装置が真にパルス状のプラズマ流を生成する能力をもたないことは、装置の構成が原因である。このタイプの装置が起動するとき、スパッタリングに起因して何らかの電極の腐食がある。この腐食はプラズマの中で流れる分離された金属粒子のような電極材料を生じる。連続的なプラズマ流が使用されるとき、起動と起動に付随した不純物とは1回の治療につき1回しか発生しないので、起動不純物は比較的重要でない欠点である。したがって、装置が実際の治療を開始する前に電極粒子が装置から抜け出るための起動後の数秒間を待つことが可能である。しかし、パルスプラズマ流を使用するとき、不純物が装置から抜け出ることを待つことは現実的でない。なぜならば、粒子がパルス毎に電極から分離するからである。
【0012】
プラズマ流が予め作り出されているとき、プラズマ流の中の電流を増加または減少させるためにはほんの数マイクロ秒しか要しない。さらに、治療中の起動がないので、不純物がプラズマ流に入ることはなく、カソードにストレスがない。しかし、低電流であってもプラズマの中を通る電流を連続的に維持することは、上述されているように、真にパルス状のプラズマ流を必要とするいくつかの用途に関して、最適な装置とはいえない。
【0013】
プラズマ生成ガスを電気アークで加熱することによって真にパルス状のプラズマ流を生成することが困難であるのは主としてカソードおよびアノードで起こるプロセスの性質が原因である。一般に、そして、特に医療用途にとって、電流が急速に増加するとき、アノードおよびカソードの腐食がない動作を保証することが重要である。急速な電流増加中に、カソードの温度は低く、後続のパルスの繰り返しの間に容易に制御されないことがある。カソードとアノードとの間での電気アークの生成中に、カソードへのアークのアタッチメントの領域はカソードの初期温度に強く依存する。カソードが冷たいとき、アタッチメントの領域は比較的小さい。数パルス後に、カソードの温度は上昇するので、急速な電流増加の間に、アタッチメントの領域はカソードの表面領域全体に拡大し、そして、カソードホルダーにまで拡大する。これらの状況下で、カソードフォールは変動し始め、カソード腐食が始まる。さらに、電気アークのアタッチメントの領域がカソードホルダーに達するならば、カソードホルダーが溶け始め、望ましくない不純物をプラズマ流に取り込む。適切なカソード機能性のため、プラズマの各パルスにおける急速な電流増加の間にカソード表面への電気アークのアタッチメントの領域の正確な位置およびサイズを制御することが必要である。
【0014】
電気アークはカソードの表面不完全部(凹凸と呼ばれることがある)に付着する傾向がある。従来技術では、このような表面不完全部は円筒型カソードの形状を変更することにより作り出された。従来技術において使用される典型的な表面不完全部はカソードテーパリングである。カソードテーパリングは、アークが付着する傾向がある先端部を作り出す。不完全部を生じさせる別の方法は円筒型カソードを斜めに切断することによる。この方法もアークが付着する傾向のある不完全部を作り出す。これらの方法は、連続したプラズマ流セッションの間で電気アークアタッチメントの位置を制御するものの、上述されているように、アークアタッチメントの領域が段階的に拡大していくことに対して、パルスプラズマ動作のために、その領域のサイズを制御することに対しては十分ではない。
【0015】
アークアタッチメントの領域の位置およびサイズを制御するこれらの試みとは無関係に、いくつかの従来技術の装置は様々な目的のため多数のカソードを使用している。例えば、特許文献3では、複数のカソードがカソード間でスパークを生成するためプラズマベースの電球で使用されている。特許文献4では、複数のカソードが3つのグループに分割される。3段階の電力がカソードの間に分布するので、1つのグループが、擬似連続動作モードを提供する段階の間に使用される。特許文献5では、1対のカソードが、磁界によってカソードの間に分離された粒子を使用して、カソードから金属トレースをスパッタリングするため使用される。特許文献6では、カソードが、放電が起こる真空チャンバの真空密封を破壊することなく入れ替えられるように、複数のカソードが回転ドラムに設けられる。特許文献7は、複数のカソードが、アノードの周りに間隔をあけられている浄水システムを開示する。このマルチカソード構成は、清浄器の中を通る水の流れの乱れを減少させるため使用される。特許文献8では、電気的に絶縁されたカソードのマルチカソード組立体は、電気アーク生成に関係するカソードを交番することによりイオンビーム装置の寿命を延長するため使用される。特許文献9では、互いに離間された複数の並列カソードは、粉末粒子によるプラズマチャンネルの目詰まりを防止すべく、プラズマ流の断面を拡大するためにプラズマスプレー装置で使用される。一般に、複数のカソードを開示する従来技術の文献は、パルスプラズマの生成と関連した問題と関係がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,629,974号明細書
【特許文献2】米国特許第6,475,215号明細書
【特許文献3】米国特許第1,661,579号明細書
【特許文献4】米国特許第2,615,137号明細書
【特許文献5】米国特許第3,566,185号明細書
【特許文献6】米国特許第4,785,220号明細書
【特許文献7】米国特許第4,713,170号明細書
【特許文献8】米国特許第5,089,707号明細書
【特許文献9】米国特許第5,225,625号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、現在、真にパルス状のプラズマ生成のために従来技術の制限を解決するカソード組立体およびカソード組立体を使用する装置を動作させる方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
パルスプラズマ生成のためのカソード組立体は、長手方向に位置合わせされた複数のカソードに接続されたカソードホルダーを備える。好ましくは、組立体の中のカソードはできるだけ一緒に接近させてクラスタ化される。カソードは、好ましくは、ランタン含有タングステン製である。カソードは、好ましくは、同径を有するが、異なる長さを有する。最適には、長さが最も接近した2つのカソードの間の長さの差は、組立体の中のカソードの径とほぼ等しく、好ましくは、0.5mmである。本発明の実施形態によるカソード組立体は、カソードのうちの1つとアノードとの間に作られた電気アークによるプラズマ生成ガスの加熱に基づいて、パルスプラズマを生成する装置で使用される。特に、カソード組立体は、(a)カソードホルダーと、(b)長手方向に位置合わせされ、カソードホルダーに接続され、各カソードが少なくとも1つの他のカソードと物理的に接触した複数のカソードのクラスタと、を備える。
【0019】
好ましい実施形態において、動作中に、プラズマ生成ガスはカソードとアノードとの間を、好ましくは、プラズマチャンネルの中を通って通過させられる。高周波、高振幅の電圧波をアノードとカソードとの間に印加することにより、多数の自由電子が生成される。これらの電子がスパーク放電を形成する。スパークは、プラズマ生成ガスをイオン化し、グロー放電段階に入る。グロー放電中に、ガス原子のイオン化に起因して形成された正イオンはカソードに衝突し、これによりカソードを加熱する。カソードのアノード側端部が熱イオン電子放出の温度に達すると、プラズマ生成ガスがアーク放電段階に入り、アークがカソードとアノードとの間に作られる。アークは組立体の中のすべてのカソードに付着する。
【0020】
アークがカソードとアノードとの間に作られた後、電流はアークを持続させるために十分な大きさ、または、僅かにより大きい大きさまで減少させられる。これによりアークアタッチメントの領域は減少される。アタッチメントの領域は、アークが単一のカソードに付着するように減少する。この低電流がある期間に亘って維持された後、電流はパルスの動作レベルまで上昇させられる。アタッチメントの領域は著しく増加せず、電子放出は単一のカソードからに限り発生する。動作電流が所望の間隔に亘って維持された後、装置は、電流および電圧が印加されないオフ期間に入る。
【0021】
この動作方法は、従来技術の方法と関連した不安定動作の問題を回避する。マルチカソード組立体がこの方法によって動作させられるならば、カソードは過熱することがなく、アタッチメントの領域はカソードホルダーまで拡大しない。このことは、プラズマ生成装置の安定動作を確実にする。この動作方法は、単一のカソードを有するカソード組立体で使用された場合において、特定の利点をさらに提供する。
【0022】
プラズマのパルスを生成する方法は、(a)第1の電流を1つ以上のカソードおよびアノードに通すステップと、(b)電流の大きさが第1の電流の大きさより小さい第2の電流を、1つ以上のカソードおよびアノードに通すステップと、(c)電流の大きさが第1の電流の大きさより大きい第3の電流を、1つ以上のカソードおよびアノードに通すステップと、(d)1つ以上のカソードおよびアノードを通る第3の電流を止めるステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】パルスプラズマ生成のための基本装置を示す図である。
【図2】好ましい実施形態のカソード組立体を3次元で示す図である。
【図3】皮膚治療のため採用されるパルスプラズマを生成する装置を示す図である。
【図4A】各パルスの生成用のアノードとカソードとの間の電圧のパターンを示す図である。
【図4B】各パルスの生成用のカソード、プラズマチャンネルの中のプラズマ生成ガス、および、アノードに印加された電流のパターンを示す図である。
【図5A】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5B】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5C】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5D】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5E】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5F】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5G】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5H】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図5I】パルスの生成中にプラズマチャンネルの中で起こるプロセスを示す図である。
【図6A】従来技術において、現在公知の方法によって生成されたある程度の個数のパルスの後の、シングルカソード組立体の中のカソードの温度とアークアタッチメントの領域とを示す図である。
【図6B】本発明の実施形態によって生成されたある程度の個数のパルスの後の、マルチカソード組立体の中のカソードの温度とアークアタッチメントの領域とを示す図である。
【図7A】従来技術の方法によって生成された、500個のパルスの後のシングルカソード組立体の顕微鏡視野の略図である。
【図7B】本発明の方法の実施形態によって生成された、40000個のパルスの後のマルチカソード組立体の顕微鏡視野の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
典型的な実施形態では、複数のカソードを有するカソード組立体はプラズマ生成装置の一部である。少なくとも2個存在する限り、組立体の中のカソードの個数に理論的な限界はない。図1はこのような装置の略縦断面図である。カソードホルダー2は、互いに長手方向に位置合わせされた3つのカソード10、20および30を保持する。アノード4はカソードから離れて配置されている。好ましい実施形態では、初期的に、各カソードは、アノード4に最も接近した端部(「アノード端部」)にそれぞれ平坦面12、22および32を有する。平坦面はそれぞれエッジ14、24および34を形成する。図2はカソード組立体の3次元図を示している。
【0025】
幾何構造の点で、カソードはクラスタ化されるべきである。クラスタ化とは、あらゆるカソードが少なくとも1つの他のカソードに長手方向に接触し、グループから分離したカソードが存在せずに、カソードのすべてが単一のグループとして並べられることを意味する。カソードは、好ましくは、互いにできる限り接近するようにクラスタ化される。しかし、組立体の中の各カソードがクラスタの中の少なくとも1つの他のカソードと物理的に接触状態にあれば十分である。理論的に、組立体の中のカソードは異なる径を有していてもよい。しかし、好ましい実施形態では、カソード10、20、30は、好ましくは、0.5mmである同径を有する。いくつかの実施形態では、組立体の中の少なくとも1つのカソードは、少なくとも1つの他のカソードの長さと異なる長さを有する。好ましい実施形態では、組立体の中の全カソードは異なる長さを有する。好ましくは、2つのカソードの間の最小の長さの差は、組立体の好ましい実施形態では0.5mmであるカソードの径にほぼ等しい。
【0026】
いくつかの実施形態では、カソード組立体を採用する装置は、カソード10、20、30とアノード4との間に延在し、アノード4を通過するプラズマチャンネル6をさらに備える。いくつかの実施形態では、プラズマチャンネルは1つ以上の中間電極によって形成される。いくつかの実施形態では、カソード10、20、30のアノード端部はプラズマチャンネルに接続されたプラズマチャンバの中に位置している。カソード組立体は、例えば、図3に示されたパルスプラズマ生成装置のような他の装置で使用されることがある。
【0027】
カソード組立体を採用することがある装置は、しかし、プラズマ生成装置に限定されない。いくつかの実施形態では、カソード組立体は、光源に用いられるか、または、通信装置の一部として用いられることがある。一般に、カソード組立体は、カソードとアノードとの間に短い間隔の電気アークを作ることを必要とする装置で用いられることがある。
【0028】
動作方法を説明する目的のため、図3に示された装置の実施形態が用いられる。しかし、後述される動作方法は、他の装置の中でマルチカソード組立体と併せて使用されるならば、同じ利点を提供することに留意すべきである。さらに、動作方法はシングルカソード組立体と併せて用いられることがあるが、マルチカソード組立体でこれらの動作方法を使用することはより効果的である。図3に示された装置は、図2に示された、カソードホルダー2と、カソード10、20および30とを有するカソード組立体を備える。装置は、アノード4と、アノード4から電気的に絶縁され、互いに電気的に絶縁された1つ以上の中間電極42a〜42eとをさらに備える。プラズマチャンネル6は、中間電極42a〜42eとアノード4とによって形成される。いくつかの実施形態では、中間電極42aはプラズマチャンバ8をさらに形成する。装置の動作中に、プラズマ生成ガス(典型的に、アルゴンのような希ガス)は、開口部72を介して装置に取り込まれる。プラズマ生成ガスは、カソード10、20、30に沿ってプラズマチャンバ8の中へ流れ、次に、プラズマチャンネル6の中へ流れ、その後に、プラズマ生成ガスはアノード4の中の開口部を介して装置を抜け出る。
【0029】
いくつかの実施形態では、延長ノズルが装置のアノード端部に取り付けられる。延長ノズルはプラズマチャンネルに接続された延長チャンネルを形成する。管状絶縁体要素が延長チャンネルの内面の長手方向部分を覆う。さらに、いくつかの実施形態では、延長ノズルは1つ以上の酸素運搬ガス入口を有する。
【0030】
図3に示された装置のようなプラズマ生成装置は、典型的に、(1)アノード4とカソード10、20、30との間に印加された電圧、および、(2)カソード10、20、30、プラズマチャンネル6の中のプラズマ生成ガス、および、アノード4を通過する電流を制御する1つ以上の電子回路に接続される。電流を制御する回路は、公知の電流源である。これらの回路はプラズマの各パルスの生成のため使用される。組立体の中の全カソードは互いに電気的に接続され、同じ回路に接続されるので、カソード10、20、30は同じ電位を有し、個々のカソードの間に電圧は存在せず、アノード4とカソード10、20、30との間だけに存在する。プラズマパルス形成のプロセスは、(1)カソードとアノードとの間に電圧を印加し、(2)プラズマ生成ガスを通過する電流を制御することによって制御される。
【0031】
概要として、プラズマ生成のプロセスは、(1)スパーク放電、(2)グロー放電、および、(3)アーク放電の3つの段階を含む。アーク放電段階における電気アークは、プラズマチャンネル6の中を流れるプラズマ生成ガスを加熱し、プラズマを形成する。各プラズマパルスの生成は、プラズマ生成ガスが3つの段階をすべて経ることを必要とする。パルスの生成前に、プラズマ生成ガスの抵抗は無限に近い。少数の自由電子が宇宙線による原子のイオン化に起因してプラズマ生成ガスの中に存在する。
【0032】
スパーク放電を作り出すため、高振幅、高周波の電圧波がアノード4とカソード10、20、30との間に印加される。この電圧波は、カソード10、20、30とアノード4との間でプラズマチャンネル6の中の自由電子の個数を増大させる。十分な個数の自由電子が形成されると、DC電圧がアノード4とカソード10、20、30との間に印加され、DC電流は、カソード10、20、30と、プラズマ生成ガスと、アノード4とを通過させられ、カソード10、20、30とアノード4との間にスパーク放電を形成する。
【0033】
スパーク放電後、プラズマ生成ガスの抵抗は減少し、グロー放電段階が始まる。グロー放電段階の間に、正に帯電したイオンがカソード10、20、30とアノード4との間の電圧によって作り出された電界の影響下でカソードに引き付けられる。カソード10、20、30にイオンが衝突しているとき、カソードのアノード端部の温度は上昇する。温度が熱イオン電子放出の温度まで上昇すると、アーク放電段階が始まる。初期に、アークは組立体の中のすべてのカソードに付着する。プラズマ生成ガスの中を通る電流はその後に減少し、その結果、アタッチメントの領域はアーク放電を持続させることができるアタッチメントのほぼ最小の領域まで縮小する。アークアタッチメントの領域は小さいので、アタッチメントの領域は組立体の中の単一のカソードに限定される。したがって、アーク放電を持続させるために必要とされ、カソードの径に依存する電流は、比較的低い。電流が低下させられ、ある期間に亘ってそのレベルに保たれた後、電流はパルスの動作レベルまで急速に増大される。アークアタッチメントの領域は少しだけ増大し、単一のカソードだけがパルスの残りの部分の間に電子を放出し続ける。単一のカソードだけが制御された領域から電子を放出するように、アークアタッチメントの領域を減少させ、その後に、その小さい領域を維持することは、真にパルス状のプラズマ装置の動作に極めて重要である。
【0034】
より詳細には、パルスプラズマ生成方法についての以下の説明は図4A〜Bを参照し、図4Aはアノード4とカソード10、20、30との間に印加された電圧を示し、図4Bは、プラズマチャンネル6の中のプラズマ生成ガスを通って、カソード10、20、30のうちの1つ以上からアノード4へプラズマの中を流れる電流を示している。後述される電圧、電流、および、時間の値は、図3に示されたパルスプラズマ装置において3カソード組立体と併せて使用されるときにこの方法のため好ましい値である。この方法がマルチカソード組立体のその他の実施形態のため使用されるとき、または、マルチカソード組立体が別の装置で使用されるとき、電圧、電流、および、時間のその他の値が好ましいことがある。
【0035】
図4Aは、アノード4とカソード10、20、30との間に印加された電圧のグラフを示している。プラズマパルスの生成前に、時点t0で、バイアス電圧202が生成される。バイアス電圧は、100ないし1000ボルトでもよいが、好ましくは、400ないし500ボルトである。t0とt1との間で、バイアス電圧が電子回路によってアノード4とカソード10、20、30との間に印加される。しかし、バイアス電圧202の生成は、プラズマ生成ガスの抵抗が無限に近いので、プラズマチャンネル6の中のプラズマ生成ガスの中を通る電流を生成しない。一実施形態では、コンデンサがバイアス電圧を持続させるため使用される。図5Aは、t0とt1との間に、プラズマチャンネル6の中を流れる電流が存在しないことを示し、カソード10、20、30とアノード4との間でプラズマチャンネル6の中に僅かに数個の自由電子しか存在しないことを示している。
【0036】
時点t1で、高周波、高振幅の電圧波204がアノード4とカソード10、20、30との間に印加される。電圧波の振幅は少なくとも1kVであるが、好ましくは、約5kVである。いくつかの実施形態では、高周波、高振幅の電圧波204は、図4Aに示されているように、指数関数的に減少する振幅で弱められる。電圧波の周波数は少なくとも300kHzであり、好ましくは、約500kHzである。高電圧、高周波の波の継続時間は少なくとも2波長である。例えば、500kHzの周波数をもつ波の期間は、少なくとも0.4マイクロ秒であるが、15ないし20マイクロ秒のより長い波が好ましい。高周波、高振幅の電圧波204は、パルスプラズマ生成の唯一の電圧制御された部分であることに留意されたい。パルスの残りの部分の間に、電圧は、カソード10、20、30とアノード4との間でプラズマ生成ガスを通過する電流の結果として、アノード4とカソード10、20、30との間で単純に維持される。
【0037】
高周波、高振幅の電圧波204は、プラズマチャンネル6の内部でプラズマ生成ガスの中の自由電子の急速な交替運動を作り出す。急速に運動する自由電子は、プラズマチャンネル6の中を流れるプラズマ生成ガスの原子から電子を叩き出す。このプロセスは電子なだれとして公知である。電子なだれの結果として、自由電子の量は、図5Bに示されているように、カソード10、20、30とアノード4との間にスパーク放電を作り出すために十分な数に達する。
【0038】
図3に示されている実施形態のように、1つ以上の中間電極によって形成されたプラズマチャンネル6を有する実施形態では、スパークが最初にカソードとカソードに最も接近した中間電極42aとの間で作り出される。その他のスパークは、プラズマチャンネル6の中を流れるプラズマ生成ガスの中の自由電子と、プラズマチャンネル6を形成する他の中間電極42b〜42eとの間で作り出される。最終的に、図5Cに示されたカソード10、20、30とアノード4との間にスパーク放電が作り出される。
【0039】
スパーク放電は、プラズマ生成ガスの中のある程度の個数の原子をイオン化し、よって、プラズマ生成ガスの導電率を増加させ、プラズマ生成ガスの抵抗を、好ましくは、200ないし1000Ωまで低下させる。イオン化の結果として作り出された自由電子は、図5Cに示された比較的小さい体積302に閉じ込められる。
【0040】
時点t2で、高周波、高振幅の電圧波204が終了した後、100ないし1000ボルト、好ましくは、約400ないし500ボルトの範囲に入る電圧206がアノード4とカソード10、20、30との間に印加される。いくつかの実施形態では、時点t2で印加される電圧は高周波、高振幅の電圧波204のバイアス電圧202に等しい。いくつかの実施形態では、電圧206は、図4Aに示されているように、時間と共に指数関数的に減少する。
【0041】
時点t2で、プラズマ生成ガスは電気を通すために十分な自由電子を有する。しかし、カソード10、20、30は、例えば、皮膚治療のような特定の用途のため必要とされる特性を備えたプラズマ流の生成を維持する持続可能な電気アークを可能にさせる熱イオン電子放出を実現するために十分に加熱されていない。放電電圧206はグロー放電段階を開始する。カソード10、20、30が電子を熱イオン放出し始めるため、カソード表面12、22および32は、熱イオン電子放出温度、または、熱イオン電子放出の温度と呼ばれるカソード材料に固有のある温度に到達しなければならない。例えば、好ましい実施形態で使用されるカソードのような、ランタンを含有するタングステン製のカソードに対し、電子放出の温度は約2800ないし3200Kである。アノード4とカソード10、20、30との間に電圧によって作り出された電界の影響下で、プラズマチャンネル6の中に存在する自由電子はアノード4の方へ引き付けられ、イオンはカソード10、20、30の方へ引き付けられる。図5Dに示されたグロー放電は、二次放出に起因して、大部分はイオン衝撃に起因して電子を放出する冷陰極を使う自続放電である。この放電の顕著な特徴は、好ましい実施形態では、表面の強い電界、および、100ないし400ボルトのかなりの電位降下を伴う、カソードにおける正空間電荷の層である。この降下はカソードフォールとして公知である。電流が増大されるならば、グロー放電は、特定のレベルで、アーク放電に移り、そのときまでに、電子を熱イオン放出するため十分な表面温度に達している。
【0042】
時点t3で、アノード4とカソード10、20、30との間の電圧が所定の値まで低下するとき、カソード10、20、30と、プラズマチャンネル6の中のプラズマ生成ガスと、アノード4とを通過する電流は、0Aから、好ましくは、4ないし6Aの範囲にある所定の第1の電流まで増加する。好ましくは、この電流は1ないし10ミリ秒に亘って維持される。電流が増加し始めたときに、所定の電圧は、時点t2での電圧のe−0.5ないしe−1.5倍であるが、好ましくは、時点t2での電圧の約e−1倍である(eは自然対数の底であり、およそ2.718に等しいことに注意を要する)。例えば、一実施形態では、時点t2でアノード4とカソード10、20、30との間に印加された電圧は、約400ボルトである。電圧が約150ボルトまで低下するとき、プラズマ生成ガスの中を通る電流は約5Aまで増加される。いくつかの実施形態では、電流増加は、t3とt4との間の300ないし500マイクロ秒の間隔をもつランプ208である。
【0043】
t4の後のある時点で、カソードは、図5Eに示されているように、カソードの表面12、22および32から電子を熱イオン放出し始める。この時点での電子放出は、所望の特性のプラズマを生成するため必要とされる電気アークを持続させるために十分である。この時点で、アーク放電段階が始まり、プラズマチャンネル6に沿ってカソード10、20、30とアノード4との間にアークが作られる。流れの中のプラズマの抵抗は約1ないし3Ωである。この時点で、理論的に、電流は、図5Fに示されるように特定の用途のために必要とされる動作レベルまで増加させることができる。しかし、この時点で電流を動作レベルまで増加させることは、以下の望ましくない影響を引き起こす。図5D〜Fに示されているように、組立体の中の全カソードは、グロー放電段階に係わり、その後に、アーク放電段階に係わる。カソード10、20、30の本体は、グロー放電段階中に正に帯電したイオンによって衝突され続け、アークはアーク放電段階中に全カソードの表面領域に付着する。パルスとパルスとの間のオフ期間中に、カソード10、20、30の温度は当初の非動作レベルまで低下しないので、カソードが依然として前のパルスによって加熱されていると、グロー放電段階およびアーク放電段階が発生する。カソードのより大きい部分がパルス毎に電子を放出するため十分に加熱されるようになるので、プラズマアタッチメントの領域は増大する。約300ないし500パルス後のある時点で、プラズマはカソードの表面領域全体に付着し、同様にカソードホルダー2に付着し始める。
【0044】
アークがカソードホルダー2に付着するので、カソードホルダーは、電極材料と共に電子をスパッタし、放出し始める点まで加熱される。これは、プラズマ流中に不純物を取り込むこととなり、いくつかの用途、特に、医療用途の場合に許容できない。さらに、カソードの融点より十分に低い融点を有するカソードホルダーが溶け始める。1つ以上のカソードと接触した状態であるカソードホルダーの部分が溶け始めるとき、これらのカソードは損傷を受ける。この損傷は、電気アークが後続のパルスの間に付着できる不完全部の原因となる。1つ以上のカソードの基部におけるこの不完全部へのアークのアタッチメントは、プラズマチャンネルの外側で終了する電気アークを引き起こすこともある。この結果、プラズマがプラズマチャンネルの中に形成されるかどうかを制御することは不能になる。さらに、アタッチメントの制御されない表面は、カソードの電位の変動を引き起こす。一般に、制御不能のアークアタッチメントの領域の拡大は装置の不安定動作の原因となる。
【0045】
カソードの長さを延長し、よって、カソードホルダー2をアークが最初に付着するカソード10、20、30のアノード端部から遠ざけることは、最適な解決にならないことがわかった。いくつかの実験によれば、カソードを延長しても上述された望ましくないプロセスを取り除くことはなく、ほんの僅かに遅らせるだけであることが明らかになった。
【0046】
好ましい方法によれば、時点t5で、電流は第2の電流まで減少させられる。いくつかの実施形態では、電流減少は300ないし500マイクロ秒の間隔をもつランプ209である。電流は、好ましくは、アーク放電を持続させるために必要とされる最小限の電流とこの最小限の電流のほぼ3倍との間のレベルまで減少させられる。いくつかの実施形態に対し、この電流は0.33ないし1.0Aの範囲にある。好ましくは、第2の電流は5ないし20ミリ秒維持される。電流低下は、アークアタッチメントの縮小した領域と同様に、カソード10、20、30とアノード4との間の電気アークの断面の縮小をもたらす。アタッチメント領域を、アークを持続させるため必要とされる最小値まで減少させる必要はないが、電流を減少することにより、アタッチメントの領域を最小領域を著しく上回らないサイズまで縮小する。図5Gに示されているように、アークはカソードの表面領域全体に付着しない。実際に、電気アークを持続させるため、放出された電子は、図5Gに示されているように、比較的小さい体積に集中し、小さい領域から放出される。カソードを加熱するイオン電流は、アタッチメントの小さい領域を通る高い電流密度フラックスのため、カソードからの熱イオン電子放出を持続させるために十分に強い状態を保つ。このイオン電流は、アークアタッチメントの領域および周囲の体積における非常に高温の原因となる。このようにしてカソード10、20、30とプラズマ生成ガスとアノード4とに印加された電流を減少させることは、アークが単一のカソードだけに付着すること、および、さらにアークのアタッチメントが比較的小さい領域に制約されることを保証する。
【0047】
カソード径は、カソードの中を通過させられ、その間にカソードとアノードとの間の電気アークを依然として維持する最低限の持続可能な電流に最も有意な影響を与えることが実験的にわかった。例えば、径1.0mmおよび長さ5mmのカソードに対する最小電流は約1Aである。径0.5mmおよび長さ5mmのカソードに対する最小電流は約0.5Aである。径0.5mmおよび長さ35mmのカソードに対する最小電流は約0.3Aである。t6とt7との間の第2の減少した電流の期間中に、プラズマは1つのカソードだけに付着するので、例えば、t4とt5との間で、電気アークが組立体の中の全部のカソードに付着される場合に、アークを持続させるため必要とされる電流と比べて比較的小さい電流を使って電気アークを持続させることが可能である。カソード組立体の好ましい実施形態を参照すると、組立体の中の単一のカソードの径は組立体の中の全カソードの全径の約半分であるので、アークが単一のカソードに付着するとき、アークを持続させるため必要とされる電流は、アークが3つのカソード全部に付着した場合に必要とされる電流のほぼ半分である。
【0048】
時点t7で、電流は第3の電流、すなわち、特定の用途のため必要とされる動作レベルであり、好ましくは、10ないし80Aの範囲にある電流まで増加させられる。いくつかの実施形態では、電流増加は、t7とt8との間で300ないし500ミリ秒の間隔をもつランプ211である。増加の割合は、毎秒1000ないし10000Aである。時点t8まで、好ましくは、30ないし90ボルトの範囲にある動作電圧は、装置の幾何構造と、カソード10、20、30のうちの1つとアノード4との間を通る電流との結果として、アノード4とカソード10、20、30との間で維持される。
【0049】
時点t8で、電流は動作レベルに達し、完全に成長したプラズマ流は、好ましくはそれぞれ10ないし80Aおよび30ないし90ボルトである動作電流レベル214および動作電圧レベル216で維持される。これらの動作レベルは特定の用途のため所望の間隔に亘って維持される。例えば、皮膚治療に対し、好ましい間隔t7−t8は5ないし100ミリ秒である。図5Hは、カソードのうちの1つであるカソード10とアノード4との間で、完全に成長したプラズマ流を持続させる電気アークを示している。パルスの動作期間の間に、電気アークは、第2の電流が通過させられるときの期間t6−t7の間のアークの断面より著しく大きくはない断面を有する。
【0050】
時点t9で、プラズマ流が所望の間隔に亘って持続させられたとき、プラズマチャンネル6の中のプラズマ生成ガスの中を流れる電流はオフに切り替えられ、その結果、アノード4とカソード10、20、30との間の電圧の印加は停止され、装置は、次のプラズマのパルスが生成されるまで、図5Iに示されたオフ期間に入る。
【0051】
上述された方法の使用は、上述のようにアークアタッチメントの領域が段階的に拡大することを回避する。プラズマがカソードの露出した表面領域全体に付着する可能性のある、t2からt4までに行われるグロー放電は、好ましい実施形態では、最大で10ミリ秒まで持続する。グロー放電中に得られる温度上昇は、パルスの残りの部分とオフ期間との間に失われる。その結果、新しいパルスが生成されるべきときまでに、カソードは冷却されている。図6Aは、従来技術の方法によって生成された一連のパルスに対し、シングルカソード組立体のアタッチメントの温度および領域を概略的に示している。上のグラフは時間の関数として電流を表している。中央のグラフは時間の関数としてカソードの温度を表している。下のグラフは時間の関数としてカソード組立体へのアークアタッチメントの領域を表している。図6Aは、説明の目的のため、4つのパルスだけを表しているが、実際のプロセスは約300ないし500個のパルスの期間に亘って起こることがある。したがって、例えば、1番目の図示されたパルスは1番目の実際のパルスでもよく、2番目の図示されたパルスは150番目の実際のパルスでもよく、3番目の図示されたパルスは300番目の実際のパルスでもよく、4番目の図示されたパルスは450番目の実際のパルスでもよい。1番目の図示されたパルスの間に、カソードは冷たく、アークはカソード表面の小さい領域に付着する。しかし、1番目の図示されたパルスの間にカソードを通過する電流はカソードの温度を上昇させる。カソードの温度は、次のパルスの前にやや降下するが、カソードの当初の非動作温度まで降下しない。2番目の図示されたパルスの間に、アークアタッチメントの領域は増大しないが、カソードの温度はさらに一層上昇する。2番目の図示されたパルスの後に、温度はやや降下するが、2番目のパルスの前のカソードの温度までは降下しない。3番目の図示されたパルスの間に、温度はさらに上昇し、臨界温度T0を超え、カソードの本体全体は、臨界温度を上回ると電子を熱イオン放出することができる。カソードの温度がT0を超えた後、アタッチメントの領域は次のパルス毎に急速に増大する。図6Aに示されているように、4番目の図示されたパルスまでに、アークアタッチメントの領域はカソード表面全体を覆う。
【0052】
図6Bは、本発明の実施形態によって生成された一連のパルスに対し、マルチカソード組立体の好ましい実施形態の温度およびアタッチメントの領域を概略的に示している。電流パルスは、図4Bに示され、上述されたパルスに対応する。図示されたパルスは図6Aの場合と同様に実際のパルスに対応する。上述のように、電流の各パルスにおいて、アークが始動された後、アークは組立体の中のすべてのカソードに付着する。電流は次にアタッチメントの領域を単一のカソードだけに縮小するため減少し、その後に限り、電流は動作レベルまで増加させられる。実質的にパルスの間隔全体に対し、アークは小さい領域に付着するので、カソードの本体全体は著しく加熱されることがない。オフ期間中に、カソード組立体の大部分がパルスの間にかなり冷めているので、カソードは急速に冷める。図6Bに示されているように、1番目の図示されたパルスの後に、カソードの温度は、次の実際のパルスの前に非動作温度まで降下する。したがって、次の実際の電流パルスが始まるとき、組立体の中のカソードは当初の非動作温度を有する。そのパルスの後に続くオフ期間中に、カソードの温度は当初の非動作レベルまで再び降下する。カソードの温度は決してT0を超えないので、アタッチメントの領域は増大することなく、図6Bの下のグラフに示されているように、数万個のパルスに対しほぼ同じ状態を保つ。
【0053】
図7Aは従来技術の方法によって生成された500個のパルスの後のシングルカソード組立体の顕微鏡視野の略図である。領域350は、500パルスのセッションの最後のパルスの間の電気アークのアタッチメントの領域である。カソードホルダー352は溶け、領域350はカソード全体を含む。カソードの顕微鏡検査は、アタッチメントの領域が、アタッチメントの領域の制御を考慮しない動作方法から生じるカソードの温度不安定性に起因して、激しく腐食されていることを明らかにした。図7Bは本発明の方法の実施形態によって生成された40000個のパルスの後のマルチカソード組立体の顕微鏡視野の略図である。領域360は40000パルスのセッションの最後のパルス中のアタッチメントの領域である。図7Bからわかるように、カソードホルダーおよびホルダーに最も接近したカソードの長手方向部分は、アークが決して付着しないので影響を受けない。同様に、アタッチメントの領域によって覆われているカソードの部分は、図5Fに示されているように、アークがt4とt5との間に限りその領域に付着するので、アークによって少ししか影響を受けることがなく、t5の後、アタッチメントの領域はカソードのうちの1つに接した小さい領域に縮小されるので、カソードの残りの部分はアークによる影響を受けない。
【0054】
図2に示されたカソード組立体に対し、最初の数千個のパルスの間に、アークは最も短いカソード10に付着することが実験的に見出された。これらのパルスの間に、カソード10のアノード端部は著しく加熱される。その結果として、いくらかの溶融がカソード10のアノード端部で起こる。カソード10は、エッジ14の明確に画定された表面不完全部を失う。表面不完全部が非常に明確に画定されないならば、アークは、アノード端部が依然として明確に画定されたエッジ24を有する2番目に短いカソード20に付着し始める。数千個のパルスの後、カソード20の端部は明確に画定されたエッジ24を失う。その後、アークは次に短いカソード、すなわち、カソード30に付着し始める。数千個のパルスの後、カソード30の端部は同様にカソード30の明確に画定されたエッジ34を失う。4つ以上のカソードを備えるカソード組立体の実施形態では、アークは長さが増大する順番に異なるカソードに付着している。アークが最も長いカソードに付着した後、最も長いカソードのアノード端部によって吸収された熱のため、アノードに最も接近したすべてのカソードの端部はいくらかの溶融のためそのカソードの端部の明確に画定されたエッジを失う。
【0055】
一旦このことが起こると、アークは再び最も短いカソードに付着し始める。アークは、アノードがエッジ14の画定をさらに失うまで、数千個のパルスの間にカソード10に付着する。この時点で、アークは、エッジ12よりは、明確に画定されたエッジ22を含むアノード端部を有する2番目に短いカソード、すなわち、カソード20に付着し始める。数千個のパルスにおいて、アークは次に短いカソード等々に付着する。
【0056】
図2に示されたカソード組立体に対し、実験は、アークが約10000個のパルスの間にカソード10に付着し、その後に、アークが次の約10000個のパルスの間にカソード20に付着し、その後に、次の約10000個のパルスの間にカソード30に付着することを明らかにした。その後、アークは、次の約10000個のパルスの間に再びカソード10等々に付着する。図2に示されたカソード組立体は、殆どのパルスプラズマ用途のため十分である60000個のパルスのセッションに対しこのようにして機能することが明らかにされた。
【0057】
上記の方法は、マルチカソード組立体と共に使用されるとき、最良の結果をもたらすことを明らかにしたが、この方法の使用はシングルカソード組立体に対しても同様に有益である。
【0058】
本発明の実施形態についての上記説明は、例示と解説のため提示されている。網羅的であること、または、本発明を開示されたそのままの形に制限することは意図されていない。多数の変更および変形が当業者に理解されるであろう。実施形態は、発明の原理および発明の実際的な用途を最良の説明のために選択され記載され、それによって、当業者が発明を理解することを可能とする。特定の使用に適した種々の実施形態および変更が考慮される。発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定められることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.カソードホルダーと、
b.長手方向に整列され、クラスタとして前記カソードホルダーに接続され、各カソードが少なくとも1つの他のカソードと物理的に接触している複数のカソードと、
を備えるカソード組立体。
【請求項2】
前記カソードが互いに電気的に接続されている、請求項1に記載のカソード組立体。
【請求項3】
前記カソードのうちの少なくとも1つが少なくとも1つの他のカソードの長さと異なる長さを有する、請求項1に記載のカソード組立体。
【請求項4】
前記カソードの全部が異なる長さを有する、請求項3に記載のカソード組立体。
【請求項5】
複数の前記カソードのうちの各々の径が実質的に同一である、請求項4に記載のカソード組立体。
【請求項6】
1対のカソードの間の長さの最小の差がカソードの径に等しい、請求項5に記載のカソード組立体。
【請求項7】
前記カソードの径が0.5mmである、請求項5に記載のカソード組立体。
【請求項8】
アノードと、1つ以上のカソードに接続されたカソードホルダーを含むカソード組立体とを備える装置において、プラズマのパルスを生成する方法であって、
a.第1の電流を、前記1つ以上のカソードおよび前記アノードに通すことと、
b.電流の大きさが前記第1の電流の大きさより小さい第2の電流を、前記1つ以上のカソードおよび前記アノードに通すことと、
c.電流の大きさが前記第1の電流の大きさより大きい第3の電流を、前記1つ以上のカソードおよび前記アノードに通すことと、
d.前記1つ以上のカソードおよび前記アノードを通る前記第3の電流を、止めることと、
を備える方法。
【請求項9】
前記第2の電流が1つのカソードに通され、前記第3の電流が同じカソードに通される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の電流を通す前に、前記アノードと前記1つ以上のカソードとの間に交番電圧を印加することをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の電流の大きさが、前記カソードと前記アノードとの間で電気アークを持続させるために必要とされる最小電流の1倍と3倍との間にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の電流の大きさが0.33ないし1.0Aである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の電流の大きさが4.0ないし6.0Aである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第3の電流の大きさが10ないし80Aである、請求項13に記載の方法。
【請求項1】
a.カソードホルダーと、
b.長手方向に整列され、クラスタとして前記カソードホルダーに接続され、各カソードが少なくとも1つの他のカソードと物理的に接触している複数のカソードと、
を備えるカソード組立体。
【請求項2】
前記カソードが互いに電気的に接続されている、請求項1に記載のカソード組立体。
【請求項3】
前記カソードのうちの少なくとも1つが少なくとも1つの他のカソードの長さと異なる長さを有する、請求項1に記載のカソード組立体。
【請求項4】
前記カソードの全部が異なる長さを有する、請求項3に記載のカソード組立体。
【請求項5】
複数の前記カソードのうちの各々の径が実質的に同一である、請求項4に記載のカソード組立体。
【請求項6】
1対のカソードの間の長さの最小の差がカソードの径に等しい、請求項5に記載のカソード組立体。
【請求項7】
前記カソードの径が0.5mmである、請求項5に記載のカソード組立体。
【請求項8】
アノードと、1つ以上のカソードに接続されたカソードホルダーを含むカソード組立体とを備える装置において、プラズマのパルスを生成する方法であって、
a.第1の電流を、前記1つ以上のカソードおよび前記アノードに通すことと、
b.電流の大きさが前記第1の電流の大きさより小さい第2の電流を、前記1つ以上のカソードおよび前記アノードに通すことと、
c.電流の大きさが前記第1の電流の大きさより大きい第3の電流を、前記1つ以上のカソードおよび前記アノードに通すことと、
d.前記1つ以上のカソードおよび前記アノードを通る前記第3の電流を、止めることと、
を備える方法。
【請求項9】
前記第2の電流が1つのカソードに通され、前記第3の電流が同じカソードに通される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の電流を通す前に、前記アノードと前記1つ以上のカソードとの間に交番電圧を印加することをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の電流の大きさが、前記カソードと前記アノードとの間で電気アークを持続させるために必要とされる最小電流の1倍と3倍との間にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の電流の大きさが0.33ないし1.0Aである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の電流の大きさが4.0ないし6.0Aである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第3の電流の大きさが10ないし80Aである、請求項13に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【公表番号】特表2010−536124(P2010−536124A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519340(P2010−519340)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006940
【国際公開番号】WO2009/018838
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510033837)プラズマ スルギカル インベストメントス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006940
【国際公開番号】WO2009/018838
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510033837)プラズマ スルギカル インベストメントス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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