説明

パルス・デトネーション・タービン・エンジン用の制御システム

【課題】パルス・デトネーション・タービン・エンジン(PDTE)を提供する。
【解決手段】PDTE(50)は、PDTE出力特性を調整するために複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)の動作に応答して1つ以上のパルス・デトネーション管の点火を開始するように構成された制御可能な多管パルス・デトネーション燃焼器(PDC)(54)を含む。アルゴリズム的ソフトウエアによって指令されるプログラム可能な制御装置(52)を含む制御システムが、PDTE入力状態に応答して複数の制御可能な周辺PDC構成要素のための制御入力を発生して、多管PDC内の少なくとも1つのPD管のための1つ以上の制御可能なPD管入力が別のPD管に対するものとは異なることができ、また更に多管PDC内の少なくとも1つのPD管のためのデトネーション・タイミングが別のPD管に対するものとは異なることができるように動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云えば、パルス・デトネーション(爆轟)エンジン(PDE)に関し、より具体的には、対応するパルス・デトネーション燃焼器出力の制御に応答して多管PDEの出力を制御するための動作手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルス・デトネーション燃焼器が、ガス(典型的には、空気)と炭化水素燃料との混合物を燃焼させることによって高い圧力及び温度のデトネーション波を生成する。デトネーション波はパルス・デトネーション管からパルスとして出て行き、従って推進力又は温度及び圧力を上昇させる。
【0003】
最近のパルス・デトネーション技術の発展に伴い、この技術を実際の用途に使用するための様々な努力がなされている。このような実際の用途の一例は、高温デトネーション生成物が出口ノズルに差し向けられて航空宇宙推進のための推力を発生するようにしたパルス・デトネーション・エンジン(PDE)の開発である。別の例は、通常のガスタービン・エンジン技術及びパルス・デトネーション(PD)技術の両方を組み合わせて使用して動作効率を最大にする「ハイブリッド」エンジンの開発である。これらのパルス・デトネーション・タービン・エンジン(PDTE)は、航空機推進のために、或いは地上パワー発生システムでパワーを発生するための手段として使用することができる。
【0004】
これらの用途のいずれかを対象として以下に考察する。また以下の考察では「パルス・デトネーション・エンジン(すなわち、PDE)」を対象とすることに留意されたい。しかしながら、この用語を使用する場合、パルス・デトネーション・エンジン、パルス・デトネーション・タービン・エンジン及び同等なものが含まれるものとする。
【0005】
今日、PDTEの出力を調整するための実証された制御システムは知られていない。 PDTEは、機械を作動し、電力を発生し又は航空宇宙推進を行うために使用される既存のガスタービン・エンジンに取って代わると想定される。これらのエンジンは、有用であるためにはユーザーによって要求されるとおりに異なる動作点で動作する能力を必要とする。これは、例えば、異なるシャフト速度、負荷の増大に起因したパワー・レベル、又は目標排出量レベルを含むことができる。更に、ガスタービン・エンジンは、入口温度のような入口状態の変動、又は燃料供給圧力の変動に対してロバスト(robust)であることが必要である。
【0006】
上記の観点から、完全なPDTEシステムの出力を信頼性よく制御/調整する1つ以上のロバストな動作手法を提供することができれば有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6062018号
【発明の概要】
【0008】
簡潔に述べれば、本発明の一実施形態によるパルス・デトネーション・タービン・エンジン(PDTE)は、a)複数の制御可能な周辺PDC構成要素と、b)PDTE出力特性を調整するために前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素の動作に応答して1つ以上のPD管の点火(firing)を開始するように構成されている制御可能な多管パルス・デトネーション燃焼器(PDC)と、c)PDTE入力状態に応答して前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素のための入力を発生して、前記多管PDC内の少なくとも1つのPD管のための1つ以上の制御可能なPD管入力が別のPD管に対するものとは異なることができるように、また更に前記多管PDC内の少なくとも1つのPD管のためのデトネーション・タイミングが別のPD管に対するものとは異なることができるように、アルゴリズム的ソフトウエアによって指令されるプログラム可能な制御装置を有する制御システムと、を有する。
【0009】
上記のように使用されるとき、複数の制御可能な周辺PDC構成要素としては、例えば、限定するものではないが、1つ以上の燃料弁、1つ以上の空気弁、及び1つ以上の着火素子が挙げられる。
【0010】
本発明のこれらの及び他の特徴、側面及び利点は、添付図面を参照した以下の詳しい説明を読むことによってより良く理解されよう。図面では、全図を通じて同様な部品を同様な参照符号で表している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従ったPDTE単ループ制御システムを例示する。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に従ったPDTE2ループ制御システムを例示する。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に従ったPDTE3ループ制御システムを例示する。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に従って複数のPDTE又はPDE出力特性を調整するためにアルゴリズム的ソフトウエアを組み込んだプログラム可能な制御装置を含む制御システムの簡略図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に従った制御可能な多管パルス・デトネーション燃焼器を用いるPDTEを例示するより詳細なシステム図である。
【図6】図6は、一実施形態に従った図5に示されているPDTEに使用するのに適した単一の多管PDCの軸方向に見た横断面図である。
【図7】図7は、一実施形態に従った図5に示されているPDTEの上昇段階及び下降段階を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記の図面では代替の実施形態を示しているが、以下の説明で述べるように、本発明の他の実施形態も考えられる。如何なる場合でも、本明細書では限定ではなく代表例として本発明の実施形態を示す。当業者には本発明の原理の精神及び範囲内に入る多数の他の修正及び実施形態を考案することができよう。
【0013】
本書で用いられているとき、「パルス・デトネーション燃焼器」とは、管内での一連の繰り返えされるデトネーション又は準デトネーションから圧力上昇及び速度増加の両方を生じる任意の装置又はシステムを意味することが理解されよう。「準デトネーション」とは、爆燃波によって生成される圧力上昇及び速度増加よりも高い圧力上昇及び速度増加を生じる超音速乱流燃焼プロセスである。パルス・デトネーション管の実施形態は、燃料/酸化剤混合物(例えば、燃料/空気混合物)を着火する手段と、その中で着火プロセスによって開始された圧力波面が合体してデトネーション又は準デトネーションを生成するデトネーション室とを含む。各々のデトネーション又は準デトネーションは、火花放電又はレーザ・パルスのような外部着火によって、或いは衝撃集束、自動着火又は別のデトネーション(すなわち、火炎伝播)によるような気体力学的プロセスによって開始される。本書で用いられているとき、「デトネーション」とは、デトネーショ又は準デトネーションのいずれかを意味することを理解されたい。
【0014】
既存のガスタービン・エンジンのための一次制御手段は、燃料流及び入口案内翼を含む。このような制御手段は,典型的には、燃料流及び入口案内翼(IGV)位置を燃焼器内での放熱又は出力パワーと相関させる簡単なマップを使用する。PDTEの制御には、これらの同じハンドルの使用を必要とすることがあり、またPDC構成要素動作タイミングの付加的な制御を必要とする。タイミング調節すべきPDC構成要素としては、限定するものではないが、空気弁、燃料弁及び着火装置(例えば、火花着火装置)が挙げられる。これらの構成要素は、燃料及び/又は空気充填率、パージ率、パルス・デトネーション管内の等量比分布、スキップ点火(すなわち、管に空気は通すが、燃料を通さず且つ着火を行わないように、動作タイミングを構成することができる)、及び相対的な管間動作タイミング(すなわち、点火パターン)に影響を及ぼすようにタイミング調節することができる。
【0015】
本書で用いられているとき、PDCは、エンジンのための全部の燃焼器と見なされる。燃焼器は環状多筒形式に構成することが可能であり、その場合、燃焼器は1つ以上のパルス・デトネーション群(PDB)の配列体を含むことができ、各々の群は1つ以上のパルス・デトネーション燃焼器室(PDCC)を含むことができる。PDCCはパルス・デトネーション管(PDT)又はパイプの形態を取ることが多いが、他の形状も持つことができる。この代わりに、PDC全体は、完全環状構成又は回転デトネーション型構成のような異なる態様で構成することができる。いずれにおいても、本書で用いられる「管」はまた、完全環状又は回転デトネーション型燃焼器内に管状又は円筒状の開口を含む。PDCはパルス・デトネーション・タービン・エンジン(PDTE)用又はパルス・デトネーション・エンジン(PDE)用の燃焼器とすることが可能である。
【0016】
本書で説明される本発明の様々な実施形態では、単ループ制御装置設計と、2つ以上の制御ループを有する階層的制御装置設計とが含まれる。階層的制御システムの使用により、PDCによって要求される制御レート(rate)と、PDTEの圧縮機・タービン部分によって要求される制御レートとの間のかなりの差違を対処する。
【0017】
2ループ制御装置設計では、内側の制御ループがPDCを調整し、また外側の制御ループがタービンの出力を調整する。外側の制御ループは内側の制御ループに対して基準を構成する。
【0018】
3ループ制御装置設計では、最も内側の制御ループがPDCの個別の管を調整する一方、中間のループがPDCを調整し、また外側の制御ループがタービンの出力を調整する。外側のループは中間のループに対して基準を構成し、また中間のループは最も内側のループに対して基準を構成する。この階層的構造は、有利なことに、制御ハードウエアのモジュール化を可能にし、また制御装置をループ毎に調節することができるので制御装置の最良の調節を容易にし、更にそれぞれのループを相異なるレートで動作させることができる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に従ったPDTE22についての単ループ制御システム10を例示する。一面によれば、全ての調整が、単ループ制御システム10について同じレートで行われる。パルス・デトネーション管18を含む対応するPDC12は、限定するものではないが、シャフト速度、パワー又は排出量出力のような1つ以上の所望の全体的な指令されたPDTE出力特性14に応答して調整される。達成されたPDTE出力特性16としては、限定するものではないが、指令された速度、指令されたパワー、或いは他の熱力学的量又は空気力学的量が挙げられる。PDC制御装置(以下に更に詳しく説明する)は、所望のPDTE動作特性を達成するために、限定するものではないが、燃料及び/又は空気充填率、パージ率、管18における等量比分布、及び相対的な管間動作タイミングのような動作パラメータに影響を及ぼすように構成要素動作タイミングを用いる。とりわけ、燃料流、燃料圧力及び入口案内翼(IGV)位置を、前に述べたように、付加的な制御ハンドルとして用いることができる。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に従ったPDTE2ループ制御システム20を例示する。一面によれば、内側の制御ループがPDC12を調整し、また外側の制御ループが全体的なPDTE22の出力16を調整する。これらの制御ループは、全体的なガスタービン・エンジン制御(ミリ秒単位)に対してPDC制御(マイクロ秒)のために必要とされる本質的に異なる時間スケールを取り扱うように相異なるレートで動作することができる。外側のループは内側のループに対して基準を構成する。
【0021】
外側の制御ループは、例えば、指令されたシャフト速度、パワー又は排出量を、内側のループによって基準として使用される1つ以上の目標タービン入口状態へ変換することができる。内側の制御ループは、限定するものではないが、シャフト速度、パワー又は排出量出力のような所望の全体的な指令されたPDTE出力特性14に応答して、PDC12を調整する。内側の制御ループは、制御ハンドルとして構成要素動作タイミングを使用する。構成要素動作タイミングは、限定するものではないが、燃料及び/又は空気充填率、パージ率、等量比分布、並びに相対的な管間動作タイミングのような動作パラメータに影響を及ぼす。更に、外側又は内側の制御ループのいずれかは、限定するものではないが、燃料流、燃料圧力及びIGV位置を付加的な制御ハンドルとして用いることができる。
【0022】
PDTE用の燃料流が既存のガスタービン・エンジンのように単純ではないことが理解できよう。既存のエンジン用の燃料流は、パワーを増減するために燃料流を変更し、また燃料供給圧力に変動があればそれを補償するように、制御弁を操作することによって簡単に調整される。PDTE用の燃料流は、燃料供給圧力を変化させるか又はPD管18上の別の燃料弁をオン/オフすることのいずれかによって制御される。それらの両方の操作はPD管18における等量比を変更する。更に、PDTE用の燃料流は、燃料弁動作タイミングを変更することによって、またスキップ点火を行い又はPD燃焼器12又はPD燃焼器群の全体を完全に停止することによって、変えることができる。例えば、最適な点火順序が、1−2−3−4−5−6−1−2−3−4−5−6−1−2−のように表されるとする。この実施形態のための1つのスキップ点火順序は、1−2−3−4−5−6−(待機)−(待機)−(待機)−(待機)−(待機)−(待機)−1−2−3−4−5−6であり、これは一点弧サイクル全体をスキップする。スキップ点火順序の別の実施形態は、例えば、1−2−3−4−5−6−(待機)−(待機)−1−2−3−4−5−6と表すことができる。また別の実施形態は、1−2−(待機)−4−5−6−1−2−(待機)−4−5−6と表すことができる。本書に記載できないほどの膨大な数の他のスキップ点火の実施形態もまた、本書で述べた原理に包含されることが理解されよう。
【0023】
更に、PDTE用の燃料流は、複数のパルス・デトネーション管の点火パターン及び/又は点火パターン繰返しレートを変更することによって変えることができる。例えば、最適な点火パターンが1−2−3−4−5−6−1−2−3−4−5−6−1−2−のように表されるとする。点火パターンは1−3−2−4−5−6−1−3−2−4−5−6−のように異なる点火パターンにすることができ、また別の点火パターンとして、例えば、2−1−6−5−4−3−2−1−6−5−4−3−のように表すことができる。任意の点火パターンは、所望の繰返しレートを達成するためにそれ自身を繰り返す前に所望の回数繰り返すことができる。本書に記載できないほどの膨大な数の他の点火パターンの実施形態もまた、本書で述べた原理に包含されることが理解されよう。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態に従ったPDTE3ループ制御システム30を例示する。一面によれば、最も内側のループはPDC12の個別の管18(又は管群)を調整するのに対し、中間の制御ループはPDC12(例えば、管群相互の間の相対的な動作)を調整し、また外側の制御ループは全体的なPDTE22の出力を調整する。外側の制御ループは中間のループに対する基準を提供し、また中間のループ制御装置は内側の制御ループに対する基準を提供する。更に、外側又は内側の制御ループのいずれかは、限定するものではないが、燃料流、燃料圧力及びIGV位置を、付加的な制御ハンドルとして使用することができる。ここで、前に述べた単ループ及び二重ループの実施形態の動作が3ループの実施形態にも当てはまることが理解されよう。
【0025】
図4は、例えば、限定するものではないが、1つ以上の燃料弁、1つ以上の空気弁及び1つ以上の着火素子を含むことができる複数の制御可能な周辺PDC構成要素57を調整するように、アルゴリズム的ソフトウエアが組み込まれているプログラム可能な制御装置52を含む制御システム50の簡略図である。制御可能な多管パルス・デトネーション燃焼器(PDC)54は、限定するものではないが、PDTEシャフト速度、PDTE出力パワー及びPDTE出力排出量のようなPDTE出力特性を調整するために、複数の制御可能な周辺PDC構成要素57の動作に応答して1つ以上のPD管の点火を開始するように構成される。アルゴリズム的ソフトウエアによって指令されるプログラム可能な制御装置52を有する制御システムは、PDTE入力状態に応答して複数の制御可能な周辺PDC構成要素57についての動作タイミング・パラメータを制御して、多管PDC54内の少なくとも1つのPD管についての1つ以上のPD管動作状態が別のPD管に対して異なることができるように、また更に多管PDC54内の少なくとも1つのPD管についてのデトネーション・タイミングが別のPD管に対して異なることができるように動作する。
【0026】
プログラム可能な制御装置52は、その中に組み込まれたアルゴリズム的ソフトウエアによって指令されて、指令されたPDTE出力特性14が、限定するものではないが、所望の全体的なPDTEシャフト速度、パワー又は排出量出力16を達成するために満たされるように、パルス・デトネーション管18を含む制御可能なPDC54を調整する。
【0027】
図5は、本発明の別の実施形態に従った制御可能な多管パルス・デトネーション燃焼器62を用いるPDTE60を例示する簡単化したシステム図である。圧縮機64が圧縮空気を生成して、共通のプレナム68を介して各PDC群66に圧縮空気を供給する。対応するPDC群の管70の各々への圧縮空気の供給は、それぞれの空気入口弁72を介して制御される。各々の空気入口弁72から各々のPDC群の管70へ下流方向へ供給される燃料が、各々の管70についての対応する燃料入口弁74を介して制御される。その結果の空気/燃料混合物が、図6に更に詳しく一実施形態に従って示された複数のPDC群66を通過し、次いで対応するガス・ノズル76を通ってPDC移行要素78へ出て行く。移行要素78は、結果として生じたデトネーション生成物を、入口管82を介して高圧タービン80へ伝送するように構成されている。高圧タービンを出た空気/燃料混合物は、次いで、プレナム84を介して低圧タービン86へ伝送される。
【0028】
PDTE60は更に、例えば、限定するものではないが、1つ以上の燃料弁74、1つ以上の空気弁72及び1つ以上の着火装置88を含むことができる複数の制御可能な周辺PDC構成要素を調整するために、アルゴリズム的ソフトウエアを組み込んだプログラム可能な制御装置52を含む。制御可能な多管パルス・デトネーション燃焼器(PDC)62は、限定するものではないが、PDTEシャフト速度、PDTE出力パワー及びPDTE出力排出量のようなPDTE出力特性を調整するために、複数の制御可能な周辺PDC構成要素57の動作に応答して1つ以上のPD管70の点火を開始するように構成される。アルゴリズム的ソフトウエアによって指令されるプログラム可能な制御装置52は、PDTE入力状態に応答して複数の制御可能な周辺PDC構成要素についての動作タイミング・パラメータを制御して、多管PDC54内の少なくとも1つのPD管についての1つ以上のPD管動作状態が別のPD管に対して異なることができるように、また更に多管PDC54内の少なくとも1つのPD管についてのデトネーション・タイミングが別のPD管に対して異なることができるように動作する。
【0029】
プログラム可能な制御装置52は、その中に組み込まれたアルゴリズム的ソフトウエアによって指令されて、タービン入口状態が、限定するものではないが、シャフト速度、パワー又は排出量出力16のような所望の全体的なPDTE出力状態を達成するために満たされるように、複数のパルス・デトネーション管70を含む制御可能なPDC62を調整する。
【0030】
図6は、一実施形態に従った図5に示されているPDTE60に使用するのに適した多管PDC62の軸方向に見た横断面図である。PDC62は、図示されているように、4つの群66を有しており、各々の群は4つのPD管70を持っている。各々の群66はデトネーション生成物を対応するタービン入口燃焼器管82の中に送り込む。これらのPDC管70は、PDC62の点火の際に高圧タービンに釣り合いのとれた荷重を加えるために円状に配列される。
【0031】
図7は、一実施形態に従った図5に示されているPDTE60の上昇段階92及び下降段階94を例示する図である。上昇段階92及び下降段階94は、図4及び5に示されている制御装置52によって制御される。一実施形態によれば、ターボ機械の速度Nが、上昇モード92中に定格パワー状態の所望の百分率に対応する速度まで上昇させられる。一面によれば、この行為は、PDTE60を通る質量流量(〜N)を、定格パワー状態の所望の百分率に対応する質量流量まで増大させる。
【0032】
要約して説明すると、先ずPDTE回転シャフト速度、出力パワー及び出力排出量の指令が、一実施形態に従ったPDTEに伝送される。次いで、パルス・デトネーション管を含む対応するPDCが、指令されたPDTEシャフト速度、出力パワー及び出力排出量を達成するために入力の指令に応答して調整される。対応するPDC制御装置が、指令されたPDTEシャフト速度、出力パワー及び出力排出量に応答して構成要素動作タイミング信号を発生して、所望のPDTE動作特性を達成するように、限定するものではないが、燃料及び/又は空気充填率、パージ率、デトネーション管における等量比分布、及び相対的な管間動作タイミングのような動作パラメータに影響を及ぼす。最後に、PDTEが加速モード、減速モード又は一定出力で動作している間、各々のPD管について空気入口弁開放期間、燃料充填期間及びデトネーション時刻が、指令された出力を達成するようにそれぞれの制御装置信号に応答して調節される。アルゴリズム的ソフトウエアによって用いられる検知変数としては、限定するものではないが、燃料充填長さ、燃料供給圧力、燃料流量及び発生パワーを挙げられる。
【0033】
PDTEにより発生されるパワーは、パワー発生エンジンの分野における当業者にとって馴染みのある1つ以上の制御限界手法を用いて決定し制御することができる。これらの制御限界としては、限定するものではないが、速度限界、圧力限界、温度限界、及び/又は質量流量限界が挙げられる。このような既知の制御限界手法についての詳細は、本発明の原理に関して簡潔に且つ明瞭にするために本書では省略する。
【0034】
更に要約して説明すると、PDTEについての出力状態を変更するために幾つかの動作手法を述べた。指令されたシャフト速度、出力パワー及び/又は出力排出量は、例えば、動作パラメータを管毎に又は管群毎に変えることができるように、また更に相対的な管間着火タイミングを管相互間で又は管群相互間で変えることができるように、点火パターン繰返しレート(例えば、周波数)、スキップ点火、充填率、等量比、デトネーション対準デトネーション、出口ノズル面積、及び個々のPDC管又はPDC管群の入口質量流量を変えることによって達成することができる。
【0035】
本発明の特定の特徴のみを例示し説明したが、当業者には種々の修正および変更をなし得よう。従って、「特許請求の範囲」の記載が本発明の真の精神および趣旨の範囲内にあるこの様な全ての変更および変形を包含するものとして記載してあることを理解されたい。
【符号の説明】
【0036】
10 単ループ制御システム
12 パルス・デトネーション燃焼器(PDC)
14 指令されたPDTE出力特性
16 達成されたPDTE出力特性
18 パルス・デトネーション(PD)管
20 PDTE2ループ制御システム
22 パルス・デトネーション・タービン・エンジン(PDTE)
30 PDTE3ループ制御システム
50 制御システム
52 プログラム可能な制御装置
54 多管パルス・デトネーション燃焼器
57 周辺PDC構成要素
60 PDTE
62 多管パルス・デトネーション燃焼器
64 圧縮機
66 PDC群
68 プレナム
70 PDC群の管
72 空気入口弁
74 燃料入口弁
76 ガス・ノズル
78 PDC移行要素
80 高圧タービン
82 入口管
84 プレナム
86 低圧タービン
88 着火装置
92 上昇段階
94 下降段階

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)と、
PDTE出力特性を調整するために前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)の動作に応答して1つ以上のPD管の点火を開始するように構成されている制御可能な多管パルス・デトネーション燃焼器(PDC)(54)と、
PDTE入力状態に応答して前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)のための制御入力を発生して、前記多管PDC(54)内の少なくとも1つのPD管のための1つ以上の制御可能なPD管入力が別のPD管に対するものとは異なることができるように、また更に前記多管PDC(54)内の少なくとも1つのPD管のためのデトネーション・タイミングが別のPD管に対するものとは異なることができるように、アルゴリズム的ソフトウエアによって指令されるプログラム可能な制御装置(52)を有する制御システムと、
を有するパルス・デトネーション・タービン・エンジン(PDTE)(50)。
【請求項2】
前記制御システムは、前記PDTE(50)についての上昇パワー・サイクル、前記PDTE(50)についての下降パワー・サイクル、及び一定PDTE出力状態の内の少なくとも1つの間に、前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)のための制御入力を発生するように動作する、請求項1記載のPDTE(50)。
【請求項3】
前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)は、空気弁型構成要素、燃料弁型構成要素、及び火花着火型構成要素から選択される、請求項1記載のPDTE(50)。
【請求項4】
前記PDTE出力特性は、PDTEシャフト速度、PDTE出力パワー及びPDTE排出量の内の少なくとも1つを含んでいる、請求項1記載のPDTE(50)。
【請求項5】
前記制御システムは、前記PDC(54)及び前記PDTE(50)を調整するように構成された単一の制御ループを有している、請求項1記載のPDTE(50)。
【請求項6】
前記制御可能な多管PDC(54)は、 イ)前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)の動作に応答して複数のパルス・デトネーション管の点火パターン繰返しレートを変えること、ロ)前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)の動作に応答して1つ以上のパルス・デトネーション管をスキップ点火すること、ハ)前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)の動作に応答して複数のパルス・デトネーション管の点火パターンを変えること、ニ)前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)の動作に応答して少なくとも1つのパルス・デトネーション管の燃料充填率を変えること、ホ)前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)の動作に応答して少なくとも1つのパルス・デトネーション管の出口ノズル面積を変えること、ヘ)前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)の動作に応答して少なくとも1つの対応するパルス・デトネーション管の入口質量流量を変えること、ト)燃焼が準デトネーションに制限されるように前記複数の制御可能な周辺PDC構成要素(57)の動作に応答して少なくとも1つのパルス・デトネーション管の完全な爆燃からデトネーションへを防止すること、の内の少なくとも1つを達成するように動作する、請求項1記載のPDTE(50)。
【請求項7】
前記制御システムは、前記PDTE(50)の出力を調整するように構成された第1の制御ループと、前記第1の制御ループにより発生された基準データに基づいて前記PDC(54)を調整するように構成された第2の制御ループとを有している、請求項1記載のPDTE(50)。
【請求項8】
前記第1の制御ループは、PDC(54)制御ループ時間スケールがPDTE(50)制御ループ時間スケールと調和して動作するように、前記第2の制御ループとは異なるレートで動作する、請求項7記載のPDTE(50)。
【請求項9】
前記制御システムは、前記PDTE(50)の出力を調整するように構成された第1の制御ループと、前記第1の制御ループにより発生された基準データに基づいて少なくとも1つのPDC(54)管群を調整するように構成された第2の制御ループと、前記第2の制御ループにより発生された基準データに基づいて個々のパルス・デトネーション管を調整するように構成された第3の制御ループとを有している、請求項1記載のPDTE(50)。
【請求項10】
各々の制御ループは、それ自身と任意の他の制御ループとの間での本質的に異なる制御時間スケールに対処するレートで動作するように構成されている、請求項9記載のPDTE(50)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−133219(P2011−133219A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279972(P2010−279972)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY