説明

パルス無線受信装置

【課題】受信同期での閾値の再設定を不要とし、信号強度に変化がある場合でも同期の調
整方向および量を判定し、同期位置への引込み時間を短縮すること。
【解決手段】パルス無線受信装置100は、検波信号105を生成する検波部104と、基準波形信号111を発生する同期用波形発生部160と、基準波形信号111を一定量ずつ遅延させた複数の遅延波形信号を発生する遅延部161と、検波信号105と、基準波形信号111および複数の遅延波形信号との相関値を示す相関値信号を並列に生成する相関算出部162と、相関値信号の示す相関値の組合せに応じた大小関係から、位相ずれの方向および量を示す差分検出信号141を生成する判定部163と、差分検出信号141に基づいて、基準波形信号111の位相を制御する制御信号143を生成し、同期用波形発生部160へ出力する同期制御部142とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス状の変調信号を受信するパルス無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
UWB(Ultra Wide Band)に代表されるインパルス通信方式を用いる高速無線通信技術は、送受信回路素子に直線性を必ずしも必要としないため、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)化に適しており、小型化を実現できる。また、高精度のローカル信号源等のRF回路が不要であるため、低消費電力である。さらに、広帯域の利用により高速な通信が可能であるなどの利点を有している。
【0003】
パルス無線受信装置での受信パルス信号を同期する従来方法として、基準時間と前後する遅延処理を施した各信号との相関により、同期をトラッキングする方法が知られている(例えば特許文献1参照)。以下に、図面を用いて従来の技術を説明する。
【0004】
図27は、特許文献1に記載されている従来のパルス無線受信装置の構成を示すブロック図である。図27において、従来のパルス無線受信装置10は、受信信号21をASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調方式)検波器11で検波する。次に、増幅器12が、信号の直流成分と交流成分の両方を増幅して、A/D変換器13にてアナログ信号からディジタル信号へ変換し、ディジタル信号22を生成する。DSP14は、このディジタル信号22の所定期間における極大値と極小値、およびそれらの移動平均を求め、次のように、同期タイミングをトラッキングする。
【0005】
まず、極値検出部15は、入力されたディジタル信号22について、複数の所定の期間における極小値と極大値を検出し、移動平均部16へ出力する。続いて、移動平均部16は、複数の所定の期間における複数の極小値と極大値を、それぞれ平均して求め、平均部17へ出力する。さらに、平均部17は、移動平均部16から入力された極小値と極大値、および、それぞれの移動平均値をさらに平均して求め、2値化演算部18へ出力する。そして、2値化演算部18は、平均部17から入力された値を閾値として、A/D変換器13から入力されたディジタル信号22を、2値化する。この2値化したデータを、NRZ(Non Return to Zero)データ系列23として信号処理回路19に出力する。
【特許文献1】特開2000−78211号公報(17頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のパルス無線受信装置では、パルス状の変調信号を受信同期する際に、事前にトレーニングシンボルを用いて閾値を設定する期間を必要とし、同期引込みに時間を要するという課題がある。さらに、受信信号とノイズの比(S/N比:Signal to Noise ratio)に変動がある場合には、受信信号の強度に対応した閾値の制御、あるいは自動利得制御装置(AGC:Automatic Gain Control)などの振幅制御を必要とするという課題がある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するもので、受信信号を同期する際に、ベースバンド信号の閾値を設けること無く受信同期を可能にし、さらに受信同期後にS/N比に変動がある場合であっても、適応制御機構による閾値の再設定を不要とし、結果として同期引込みに要する時間を短縮するパルス無線受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、基準波形信号を生成する基準波形生成部と、異なる遅延量で前記基準波形信号を遅延させた複数の遅延波形信号を発生する遅延部と、受信信号と、前記基準波形信号及び前記遅延波形信号との相関値を示す複数の相関値信号を生成する相関算出部と、前記複数の相関値信号を、所定の組み合わせで比較し、比較結果に応じて、前記受信信号と前記基準波形信号との位相ずれの方向及び量を示す差分検出信号を生成する判定部と、前記差分検出信号に基づいて、前記基準波形生成部により生成される前記基準波形信号の位相を制御する同期制御部と、を具備する構成を採る。
【0009】
この構成によれば、受信信号と基準波形信号との位相が異なる複数の相関値を生成し、これら相関値の組み合わせにおける大小を比較することで、同期の位相の調整方向及び調整量を判定することができるので、受信信号のS/N比が変動する場合であっても、受信信号の受信レベルの変動に基づいて閾値を調整して設定する必要がなく、最適な閾値を設定するために必要なトレーニング期間を不要とし、同期獲得に要する時間を短縮することができる。
【0010】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、基準波形信号を生成する基準波形生成部と、異なる遅延量で受信信号を遅延させた複数の遅延波形信号を発生する遅延部と、前記基準波形信号と、前記遅延部により遅延された前記複数の受信信号との相関値を示す複数の相関値信号を生成する相関算出部と、前記複数の相関値信号を、所定の組み合わせで比較し、比較結果に応じて、前記受信信号と前記基準波形信号との位相ずれの方向及び量を示す差分検出信号を生成する判定部と、前記差分検出信号に基づいて、前記基準波形生成部により生成される前記基準波形信号の位相を制御する同期制御部と、を具備する構成を採る。
【0011】
この構成によれば、受信信号と基準波形信号との位相が異なる複数の相関値を生成し、これら相関値の組み合わせにおける大小を比較することで、同期の位相の調整方向及び調整量を判定することができるので、受信信号のS/N比が変動する場合であっても、受信信号の受信レベルの変動に基づいて閾値を調整して設定する必要がなく、最適な閾値を設定するために必要なトレーニング期間を不要とし、同期獲得に要する時間を短縮することができる。また、分岐入力側にクロック信号を用いて相関値信号を生成することができるようになるので、受信信号にノイズが多く含まれるような場合であっても、より正確に位相の調整方向及び調整量を判定することができる。
【0012】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記遅延部は、前記遅延波形信号の最大遅延量を、前記受信信号のシンボル長以下に設定する構成を採る。
【0013】
この構成によれば、受信信号をエンベロープ検波して得られたエンベロープ信号の同期引き込みが完了した場合に、エンベロープ信号のピークを捕らえたシンボル長の範囲内に、複数の相関値信号を得ることができるので、同期追従時の位相の調整方向及び調整量を判定することができる。
【0014】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記遅延部は、前記遅延波形信号の遅延間隔を前記受信信号のシンボル長の1/2以下に設定する構成を採る。
【0015】
この構成によれば、受信信号をエンベロープ検波して得られたエンベロープ信号の同期引き込みが完了した場合に、エンベロープ信号のピークを捕らえたシンボル長の1/2の範囲内に、少なくとも3つの相関値信号を得ることができるので、受信信号をエンベロープ検波した場合に、同期追従時の位相の調整方向及び調整量をより正確に判定することができる。
【0016】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記遅延部は、前記遅延波形信号を少なくとも3つ発生し、かつ、前記遅延波形信号の最大遅延量を、前記受信信号のシンボル長の1/2以下に設定する構成を採る。
【0017】
この構成によれば、受信信号をエンベロープ検波して得られたエンベロープ信号の同期引き込みが完了した場合に、エンベロープ信号のピークを捕らえたシンボル長の1/2の範囲内に、少なくとも4つの相関値信号を得ることができるので、受信信号をエンベロープ検波した場合に、同期追従時の位相の調整方向及び調整量をより正確に判定することができる。
【0018】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記遅延部は、前記遅延波形信号の最大遅延量を、前記受信信号の搬送波周波数周期以下に設定する構成を採る。
【0019】
この構成によれば、受信信号の同期引き込みが完了した場合に、コヒーレント信号のピークを捕らえた搬送波周波数周期の範囲内に、複数の相関値信号を得ることができるので、同期追従時の位相の調整方向及び調整量を判定することができる。
【0020】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記遅延部は、前記遅延波形信号の遅延間隔を前記受信信号の搬送波周波数周期の1/2以下に設定する構成を採る。
【0021】
この構成によれば、受信信号の同期引き込みが完了した場合に、コヒーレント信号のピークを捕らえた搬送波周波数周期の1/2の範囲内に、少なくとも3つの相関値信号を得ることができるので、同期追従時の位相の調整方向及び調整量をより正確に判定することができる。
【0022】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記遅延部は、前記遅延波形信号を少なくとも3つ発生し、かつ、前記遅延波形信号の最大遅延量を、前記受信信号の搬送波周波数周期の1/2以下に設定する構成を採る。
【0023】
この構成によれば、受信信号の同期引き込みが完了した場合に、コヒーレント信号のピークを捕らえた搬送波周波数周期の1/2の範囲内に、少なくとも4つの相関値信号を得ることができるので、同期追従時の位相の調整方向及び調整量をより正確に判定することができる。
【0024】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記判定部は、前記所定の相関値の組み合わせとして、互いに隣り合わない時間での前記相関値信号から成る組み合わせを、少なくとも1つ含む構成を採る。
【0025】
この構成によれば、位相の調整方向及び調整量の判定において、時間的に離れている相関値信号同士の組み合わせが少なくとも1つは用いられるようになるので、位相の調整方向を誤って判定するのを低減することができる。
【0026】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記判定部は、前記所定の相関値の組み合わせを適宜変更する構成を採る。
【0027】
この構成によれば、例えば、シンボル長又は搬送波周波数周期が変動する場合に、シンボル長又は搬送波周波数周期に応じて、最適な組み合わせを用いることができるので、位相の調整方向及び調整量を正確に判定することができる。
【0028】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記基準波形信号をタイミング信号として、前記受信信号から信号データを復調する復調部を、さらに備える構成を採る。
【0029】
この構成によれば、受信信号を復調するために必要なタイミング信号を、同期追従を行うために用いた基準波形信号から生成すればよいので、新たにタイミング信号を生成する必要がなく、タイミング信号生成に要する処理を簡略化することができると共に、受信信号に同期したタイミング信号を用いて復調を行うことができるので、復調精度を向上することができる。
【0030】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記復調部は、前記受信信号と前記基準波形信号との相関値を示す前記相関値信号を復調する構成を採る。
【0031】
この構成によれば、同期追従した状態で復調処理が行われるので、復調精度を向上することができる。
【0032】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記受信信号を包絡線検波する検波器を、さらに備え、前記相関値算出部は、前記検波器により包絡線検波された前記受信信号と、前記基準波形信号及び前記遅延波形信号との相関値を示す複数の相関値信号を生成し、前記判定部は、前記検波器により包絡線検波された前記受信信号と前記基準波形信号との位相ずれの方向及び量を示す差分検出信号を生成し、前記復調部は、前記検波器により包絡線検波された前記受信信号を復調する構成を採る。
【0033】
この構成によれば、受信信号を包絡線検波した包絡線信号を復調に用いるので、受信信号がオンオフキーイング変調信号の場合に、搬送波位相を利用して復調する場合に比べ、判定処理及び復調処理に要する演算処理を削減し、同期獲得までの時間を短縮できる。
【0034】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記判定部は、前記相関値の組合せとして、第1の組合せは、前記基準波形信号を用いて算出された第1の相関値、および、前記複数の遅延波形信号のうち、遅延量が最も遅延する信号以外の一つの前記遅延波形信号を用いて算出された第3の相関値とし、第2の組合せは、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号を用いて算出された第2の相関値、および、前記複数の遅延波形信号のうち、遅延量が最も遅延する信号以外の一つの遅延波形信号を用いて算出された第4の相関値とし、前記第1の組合せである、前記第3の相関値から前記第1の相関値を減じた第1の評価値と、前記第2の組合せである、前記第4の相関値から前記第2の相関値を減じた第2の評価値との大小関係に基づいて、前記差分検出信号を生成する構成を採る。
【0035】
この構成によれば、4つの相関値信号を用い、かつ、4つの相関値信号のうち、時間方向に最も離れている相関値信号同士を異なる組み合わせとし、時間方向に最も離れている相関値信号同士が同じ組み合わせとなるのを避けると共に、時間方向に最も離れている相関値信号以外の相関値信号同士が同じ組み合わせとなるのを避けることができるので、各組み合わせにおける大小関係から、位相の調整方向を正しく判定することができる。
【0036】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記第3の相関値、および、前記第4の相関値は、ともに、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の遅延量の1/2である前記遅延波形信号を用いて算出された相関値である構成を採る。
【0037】
この構成によれば、3つの相関値信号を用いて位相の調整方向及び調整方法を判定することができるので、構成を簡素化でき、消費電力を削減できる。
【0038】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記第3の相関値は、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の遅延量の、1/2以上でかつ最も1/2に近い、前記遅延波形信号を用いて算出された相関値であり、前記第4の相関値は、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の遅延量の、1/2以下でかつ最も1/2に近い、前記遅延波形信号を用いて算出された相関値である構成を採る。
【0039】
この構成によれば、各相関値信号は、時間方向で互いにクロスされるように組み合わせられるので、相関値信号数が偶数の場合であっても、確実に位相の調整方向を判定することができる。
【0040】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記判定部は、前記相関値の組合せとして、前記第3の組合せは、前記基準波形信号を用いて算出された前記第1の相関値と、前記複数の遅延波形信号のうち遅延量が最も遅延する信号以外の一つの遅延波形信号と、を用いて算出された前記第3の相関値とし、前記第4の組合せは、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号を用いて算出された前記第2の相関値と、前記複数の遅延波形信号のうち、遅延量が最も遅延する信号以外の一つの遅延波形信号と、を用いて算出された前記第4の相関値とし、第5の組合せは、前記第1の相関値と、前記複数の遅延波形信号のうち遅延量が最も遅延する信号以外で、かつ前記第3の相関値、あるいは前記第4の相関値の算出に用いた前記遅延波形信号とは異なる一つの遅延波形信号と、を用いて算出された第5の相関値とし、第6の組合せは、前記第2の相関値および、前記第5の相関値とし、前記第6の組合せである前記第5の相関値から前記第2の相関値を減じた値から、前記第3の組合せである前記第3の相関値から前記第1の相関値を減じた値を減じて、第3の評価値を算出し、前記第5の組合せである前記第5の相関値から前記第1の相関値を減じた値から、前記第4の組合せである前記第4の相関値から前記第2の相関値を減じた値を減じて、第4の評価値を算出し、さらに、前記第3の評価値と前記第4の評価値との大小関係に基づいて、前記差分検出信号を生成する構成を採る。
【0041】
この構成によれば、5つの相関値信号を用い、かつ、5つの相関値信号のうち、時間方向に最も離れている相関値信号同士を異なる組み合わせとし、時間方向に最も離れている相関値信号同士が同じ組み合わせとなるのを避けると共に、時間方向に最も離れている相関値信号以外の相関値信号同士が同じ組み合わせとなるのを避けることができるので、各組み合わせにおける大小関係から、位相の調整方向を正しく判定することができる。
【0042】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記第3の相関値は、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の遅延量の、1/2以上で、かつ、最も1/2に近い、前記遅延波形信号を用いて算出された相関値であり、前記第4の相関値は、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の遅延量の、1/2以下で、かつ、最も1/2に近い、前記遅延波形信号を用いて算出された相関値であり、前記第5の相関値は、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の1/2の前記遅延波形信号を用いて算出された相関値である構成を採る。
【0043】
この構成によれば、各相関値信号は、時間方向で互いにクロスされるように組み合わせられるとともに、同期獲得時の最大相関値に最も近い相関値信号を用いて差分検出信号が生成されるので、相関値信号が奇数の場合に、確実に位相の調整方向を判定することができる。
【0044】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記判定部は、前記複数の相関値信号を、それぞれ前記相関値信号ごとに平準化し、平準化後の前記相関値信号を所定の組合せで加算合成して、前記差分検出信号を生成する構成を採る。
【0045】
この構成によれば、判定処理を行う回路の動作周波数を低くできるので、簡易な構成で位相の調整方向及び調整量を判定することができる。
【0046】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記判定部は、前記相関値信号の各クロック期間における最大値をサンプルホールドし、さらにクロックタイミングによりディスチャージ処理して、前記複数の相関値信号を、それぞれ前記相関値信号ごとに平準化する構成を採る。
【0047】
この構成によれば、単位時間区間内における最大値を正確に出力できるようになり、位相の調整量をより正確に判定することができる。
【0048】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記判定部は、前記相関値信号を所定の組合せで合成して複数の合成信号を生成し、前記合成信号を、それぞれ前記合成信号ごとに平準化し、平準化後の前記合成信号を加算合成して、差分検出信号を生成する構成を採る。
【0049】
この構成によれば、積分回路数を少なく構成できるようになり、より簡素な構成で実現することができる。
【0050】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記判定部は、前記相関算出部により生成される前記相関値信号を合成して前記合成信号を生成し、前記判定部により生成された前記合成信号を加算、または、混合して復調対象信号を生成し、遅延部は、前記基準波形信号と前記復調対象信号との遅延量と同一の遅延量だけ、前記基準波形信号を遅延させたタイミング信号を生成し、前記復調対象信号と前記タイミング信号とから信号データを復調する復調部を、さらに具備する構成を採る。
【0051】
この構成によれば、復調対象とする信号として基準波形信号と無相関で不要な信号を除去した信号を生成できるようになり、より誤りの少ない復調処理をすることができる。
【0052】
本発明のパルス無線受信装置の一つの態様は、前記判定部は、前記相関値信号が示す前記相関値の組合せに応じた大小関係から、前記受信信号を捕らえているか否かを示すパルス相関検出信号をさらに生成し、前記同期制御部は、前記パルス相関検出信号及び前記差分検出信号に応じて、前記基準波形信号の位相を制御する構成を採る。
【0053】
この構成によれば、差分検出信号の有効性を同時に判定できるようになり、同期状態に応じて、基準波形信号の位相を適切に制御することができ、位相の調整方向をより正しく判定することができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明のパルス無線受信装置によれば、トレーニングシンボルによる閾値設定期間を不要とし、さらに、受信同期後にS/N比の変動がある場合であっても、閾値を再設定する機構を不要とし、結果として、正確な同期獲得に要する時間を短縮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0056】
(実施の形態1)
本実施の形態にかかるパルス無線受信装置は、受信信号と、位相の相異なる複数の基準信号との相関値を相対比較して、同期のための位相の調整方向と量を正しく判定し、結果として、同期引込みに要する時間を短縮する。
【0057】
(全体構成)
図1は本発明の実施の形態1にかかるパルス無線受信装置の構成を示す図である。図1において、パルス無線受信装置100は、検波部104と、同期用波形発生部160と、遅延部161と、相関算出部162と、判定部163と、同期制御部142とで構成され、受信アンテナ102に接続されている。さらに、上記パルス無線受信装置100は、検波信号105と基準波形信号111とから信号データ153を復調する復調部152を備えている。
【0058】
なお、本実施の形態では、パルス無線受信装置100が、オンオフキーイング(On Off Keying:OOK)変調方式によりパルス変調された無線信号101を受信し、同期パルスを生成して信号データ153に復調する実施例について説明する。
【0059】
(検波部)
検波部104は、受信信号103を全波整流により包絡線検波して、検波信号105を出力する。図2(a)は、本実施の形態にかかる検波部の構成を示す図である。図2(a)において、検波部104は、全波整流回路201により実現している。受信信号103は、一般的に正負の振幅を持つインパルス波形であり、第1〜第4のミキサの前段に正負値による相殺を防ぎ、基準波形信号111との相関を効果的に検出するために、検波部104を設けている。
【0060】
図3は、本実施の形態にかかる検波部の動作を説明する図である。図3において、受信信号103は、正および負値を持つインパルス波形をしている。この受信信号103を検波部104により包絡線検波し、負値を持たない波形の検波信号105に整形する。また、本実施の形態では、全波整流回路201により構成したが、別の回路構成とすることもできる。図2(b)は、本実施の形態にかかる検波部の別の構成を示す図である。図2(b)において、検波部104bは、自乗回路202により検波信号105を生成している。なお、受信信号103が負値を持たないようなインパルス波形の場合には、検波部104は、受信信号103をそのまま検波信号105として出力する構成としても、同様の効果を得ることができる。
【0061】
(同期用波形発生部)
同期用波形発生部160は、クロック信号発生部106と、可変信号遅延部108と、基準波形発生部110とを備え、クロック信号発生部106の発生するクロック信号107を可変信号遅延部108により所定の時間遅延し、基準波形発生部110にて波形を整形し、同期タイミング信号109のパルスタイミングで基準波形信号111を発生するよう構成されている。図4は、本実施の形態にかかる基準波形発生部の構成を示す図である。図4において、基準波形発生部110は、内部構成にローパスフィルタ(LPF)203を用いて構成されている。なお、本実施の形態では、基準波形信号111の波形は、検波信号105のオンオフキーイングのマーク(以下、マークとはオンオフキーイングにおけるオン状態を示す)における波形に相似する波形とする。また、可変信号遅延部108における遅延時間は、後述する同期制御部142の出力する制御信号143により調整できる。
【0062】
(遅延部)
遅延部161は、第1の遅延素子112と、第2の遅延素子114と、第3の遅延素子116を備え、源波形信号として入力される信号および、入力される源波形信号を多段に遅延させた信号を同時に出力するよう構成されている。図1において、遅延部161は、基準波形信号111と、基準波形信号111を第1〜第3の遅延素子112、114、116により、時間τずつ順次遅延した遅延波形信号113、115、117を出力する。なお、本実施の形態では、第1〜第3の遅延素子112、114、116は、それぞれ入力信号を時間τずつ遅延する構成とするが、受信信号の波形により変更しても良い。また、本実施の形態では、遅延時間τは、検波信号105の半値パルス幅の1/2よりも小さい値として説明する。なお、この半値パルス幅は、図3において検波信号105が正の値を有する時間幅を示し、受信信号103のシンボル長に相当する。また、PPM変調方式の場合のように、半値パルス幅がシンボル長に相当しない場合には、遅延時間τは、パルス幅に相当する半値パルス幅の1/2よりも小さい値とする。
【0063】
(相関算出部)
相関算出部162は、第1のミキサ118と、第2のミキサ120と、第3のミキサ122と、第4のミキサ124とを備え、2組の入力される信号系列に含まれるそれぞれの信号を混合し出力する。図1において、相関算出部162は、検波信号105と、基準波形信号111および基準波形信号111を時間τずつ遅延した遅延波形信号113、115、117とを、第1〜第4のミキサ118、120、122、124により、それぞれ混合し、第1〜第4の相関値信号119、121、123、125を出力する。
【0064】
(判定部)
判定部163は、第1の積分部126と、第2の積分部128と、第3の積分部130と、第4の積分部132と、第1の信号加算部134と、第2の信号加算部136と、第3の信号加算部140とで構成される。
【0065】
図1において、判定部163は、相関算出部162の出力する第1〜第4の相関値信号119、121、123、125を、第1〜第4の積分部126、128、130、132により、それぞれ平準化した信号127、129、131、133を出力する。続けて、判定部163は、第1の信号加算部134により、信号129と信号133を反転した信号とを加算し、信号135を生成する。さらに、判定部163は、第2の信号加算部136により、信号131と信号127を反転した信号とを加算し、信号137を生成する。さらに、判定部163は、第3の信号加算部140により、信号137と信号135を反転した信号とを加算し、差分検出信号141を生成する。
【0066】
また、図5(a)は、本実施の形態にかかる判定部における積分部の構成を示す図である。図5(a)において、積分部126は、ローパスフィルタ701を備え、入力される相関値信号119を平準化する。なお、本実施の形態では、積分部128、130、132も、同様の構成とする。
【0067】
また、図5(b)は、本実施の形態にかかる判定部における積分部の別の構成を示す図である。図5(b)において、積分部126bは、ディスチャージ回路付きの積分器707を備えた構成で、クロックに同期して厳密に動作することができる。すなわち、この積分部126bは、基準波形信号111の示すクロック期間によって、入力される相関値信号119の最大値をサンプルホールド(709)し、単位時間区間における最大値(127)を正確に出力できる。そのため、同期時間の調整量をより正確に判定できる。
【0068】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、判定部163に、論理積演算部138をさらに備え、信号135と信号137とを論理積演算し、差分検出信号141が受信パルスのピークを捕らえているか否かを示すパルス相関検出信号139を、さらに生成する。このパルス相関検出信号139は、差分検出信号141が受信パルスのピークを捕らえている場合は、高レベル(High)値の信号を出力し、捕らえていない場合は、低レベル(Low)値の信号を出力する。
【0069】
(同期制御部)
同期制御部142は、入力信号の出力を、別の入力信号に応じて制御するスイッチを備える。図6(a)は、本実施の形態にかかる同期制御部の構成を示す図である。図6(a)において、同期制御部142は、パルス相関検出信号139が高レベルの間に、スイッチ910がオン(on)になり差分検出信号141を制御信号143として出力する。逆に、低レベルの間は、スイッチ910がオフ(off)になり、制御信号143は出力されない。
【0070】
ここで、前述した、同期用波形発生部160の可変信号遅延部108における、遅延量を調整する動作について説明する。可変信号遅延部108は、制御信号143を受けた場合、自身に設定された遅延時間を変更する。この設定された遅延時間の変更量は、制御信号143の絶対値に比例するよう設定する。変更方向は、制御信号143の示す位相の進み、または、遅れに合致するよう設定する。これにより、同期のずれが大きい場合はより大きく補正でき、遅延量の変化量を一定値にした場合よりも同期の収束時間が短くなる。
【0071】
また、図6(b)は、本実施の形態にかかる同期制御部の別の構成を示す図である。図6(b)において、同期制御部142bは、スイッチ905とチャージポンプ回路904を備え、差分検出信号141の値が、正の場合は同期が遅れていると判定し、可変信号遅延部108に対して同期タイミング信号109の遅延量を少なくするように制御する制御信号143を出力する。負の場合は同期が進んでいると判定し、同期タイミング信号109の遅延量を多くするように制御する制御信号143を出力する。
【0072】
このようにして、同期用波形発生部160の可変信号遅延部108を制御し、同期タイミングを補正する。ただし、制御信号143は、可変信号遅延部108の遅延量を調整するが、その増減量は一定とする内容を示す。そのため、同期制御部142bは、図6(a)に示した同期制御部142の構成と比べて、同期制御におけるオーバーシュートの発生を防止できる。なお、図6(b)において、同期制御部142bは、図6(a)に示した同期制御部142と同様に、パルス相関検出信号139が高レベルの間に、スイッチ905がオンになり差分検出信号141を制御信号143として出力する。
【0073】
復調部152は、検波信号105と、遅延素子150により遅延時間を調整した基準波形信号111とから、信号データ153を復調する。本実施の形態では、遅延素子150の遅延量を、遅延部161で最も遅延する遅延波形信号117の遅延量3τの1/2、すなわち、1.5τとしている。
【0074】
(動作説明)
次に、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置の動作について説明する。
【0075】
図1において、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置100は、まず、検波部104において、受信信号103を包絡線検波し、検波信号105を生成する。また、同期用波形発生部160において、受信信号103に相似する基準波形信号111を、入力される制御信号143に応じて位相を制御して発生する。なお、本実施の形態では、可変信号遅延部108の初期の遅延量は時間τとしている。そして、遅延部161により、この基準波形信号111を一定の遅延量τずつ遅延させ、複数の遅延波形信号113、115、117を発生する。
【0076】
(相関処理)
ここで、相関算出部における相関値信号を生成する動作について補足説明する。図7は、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置の動作を説明する図である。図7において、パルス無線受信装置100は、パルス無線送信装置190から送出される無線信号101を受信し、検波部104により検波信号105を生成する。この検波信号105は、基準波形信号111との位相差191(φ)が生じている。なお、本実施の形態では、検波信号105と基準波形信号111の波形は、それぞれ、(数1)、(数2)に示す正弦波形であるとする。
【0077】
(数1)
S(t)=cos(2πt/T)+1+N(t)・・・・(1)
(数2)
R(t)=cos(2πt/T+φ)+1・・・・・・・(2)
ただし、Tは、検波信号105の半値パルス幅、N(t)は、雑音成分である。
【0078】
さらに、パルス無線受信装置100は、第1のミキサ118により、相関値を示す相関値信号119、すなわち、S(t)×R(t)で示される波形信号を出力し、積分部126により平準化処理した信号127を得る。この相関値信号119の値を、1パルス波形の時間幅以上の一定区間にわたって積分して得られる値を相関値とする。そして、図7においては、信号127の値を検波信号105と基準波形信号111の相関値に相当する値とみなす。また、図1における、相関算出部162で生成する他の系統の信号、すなわち、検波信号105と遅延波形信号113、115、117との相関値信号121、123、125についても同様とする。
【0079】
図8(a)−(c)は、相関算出部の動作を説明する図である。検波信号502と、基準波形信号501を位相形式で表記された時間軸における波形例を示す。図8(a)において、検波信号502と基準波形信号501の位相差φが0で、ともに180度(deg)にピークを持つ。図8(b)、(c)に、位相差φが60度、180度の場合の波形例を示す。図8(b)、図8(c)において、基準波形信号501は、検波信号502に対して、それぞれ、60度、180度位相が遅れている。
【0080】
図8(d)は、検波信号502と基準波形信号501の位相差と相関値の関係を示す図である。なお、相関値503は、位相差φの絶対値を横軸とし、位相差φ=0の場合に得られる信号値504を1として正規化した値を示している。相関値503は、2つの信号のうち、どちらが進んでいても相関値は同じ値をとり、位相差が大きくなるにつれ減少することを示している。
【0081】
本実施の形態では、検波信号および基準波形信号は、前述したように正弦波形とし、第1〜第3の遅延素子112、114、116の遅延時間τを、τ=T/4としている。この構成では、2Tが360度に相当する。このため、パルス無線受信装置100で受信同期が確立している場合、信号129は、位相差φ=0から−60度、すなわち、−1.5τ、位相のずれた場合における相関結果(505)が得られる。また、なお、信号波形の包絡線形状が正弦波形、あるいは正弦波形と異なる場合であっても、遅延素子の遅延時間を不均等にするなど、波形の位相判定に有利なようにインパルスの位相間隔を調整する形態としても良い。
【0082】
(位相ずれ判定処理)
続いて、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置100は、相関算出部162により、検波信号105と、基準波形信号111および複数の遅延波形信号113、115、117との相関を示す相関値信号119、121、123、124を並列に生成する。判定部163により、これら相関値信号119、121、123、124の示す相関値の組合せに応じた大小関係から、受信信号103と基準波形信号111との位相ずれの方向および量を示す差分検出信号141を生成する。同時に信号135と信号137とを論理積演算し、差分検出信号141が受信パルスのピークを捕らえているか否かを示すパルス相関検出信号139を、さらに生成する。
【0083】
ここで、判定部163における位相のずれを判定する動作について補足説明する。図9(a)−(c)は、本実施の形態にかかる判定部の動作を説明する図である。図9(a)−(c)において、受信信号の位相を0とした基準波形信号および遅延波形信号の位相差を横軸とし、各相関値信号119、121、123、124の相関値をプロット(601、604、603、602)している。判定部163は、相関値信号123の相関値603に対する、相関値信号119の相関値601との第1の差137と、相関値信号121の相関値604に対する、相関値信号125の相関値602との第2の差135とを算出し、比較する。
【0084】
ここで、図9(a)に示すように、受信同期が確立している場合、判定部163は、比較(250)の結果、2つの値は等しいと判定する。このとき、判定部163は、差分検出信号141として、受信信号に対し、基準波形信号および遅延波形信号の信号系列とに位相ずれが無く、判定部内の信号135と信号137の値を比較(250)しても、その差が0であることを示す信号を出力する。なお、本実施例では、位相ずれが無い場合は無信号とする形態として説明するが、レベル0の信号を出力する形態としてもよい。
【0085】
また、図9(b)に示すように、受信同期が進んでいる場合、判定部163は、同様に、比較(251)の結果、第1の差137が第2の差135よりも大きく、それらの差710だけ同期位置が進んでいると判定する。このとき、判定部163は、差分検出信号141として、この差710を示す正の値を持つ信号を出力する。なお、ここでは、位相のずれ量は、差分検出信号141の値に比例するものとして説明している。
【0086】
また、図9(c)に示すように、逆に、受信同期が遅れている場合、判定部163は、同様に、比較(252)の結果、第1の差137が第2の差135よりも小さく、それらの差710だけ同期位置が遅れていると判定する。このとき、判定部163は、差分検出信号141として、この差710を示す負の値を持つ信号を出力する。
【0087】
なお、本実施の形態では、パルス相関検出信号139が同期制御部142に出力されることを前提に説明しているが、もちろん同期を保持するという目的のためであれば、無くてもかまわない。すなわちパルス相関検出信号139に相当する同期制御部142への入力信号は常に「正」でかまわない。ただし同期位置がパルス位置から外れてしまい、同期引込みができないような場合は、信号135および信号137の少なくとも一方の値が負になる。そのため、本実施の形態では、判定部163は、前述したように、論理積演算部138により、信号135と信号137とを論理積演算し、信号135と信号137のどちらか一方が負の値をとるときは、たとえ差分検出信号141に信号が検出されていたとしても、それは同期位置が不正であり、同期制御に用いるべきではないため、パルス相関検出信号139は出力されない。一方、信号135と信号137が同時に正の値をとる場合には、差分検出信号141が受信パルスのピークを捕らえており、同期引込みが可能な状態であることを示すパルス相関検出信号139を、同時に同期制御部142に出力する。
【0088】
(位相制御及び復調処理)
続いて、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置100は、同期制御部142により、このパルス相関検出信号139の示す値に応じて、制御信号143を生成するか否かを判定する。制御信号143を生成すると判定した場合は、同期制御部142の差分検出信号141から、基準波形信号111の位相を制御する制御信号143を生成し、同期用波形発生部160へ出力する。そして、制御信号143の入力を受けた同期用波形発生部160は、出力する基準波形信号111の位相を調整する。
【0089】
さらに、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置100は、復調部152により、検波信号105と、基準波形信号111を時間1.5τ遅延した信号151とから、信号データ153に復調する。以降、パルス無線受信装置100は、上記受信同期および復調の動作を繰り返す。
【0090】
ここで、同期が確立した場合における復調動作について補足説明する。図9(a)に示したように、同期が確立した場合、最大相関値をとるタイミングは、第2の遅延素子112によるタイミング(遅延時間τ)と、第3の遅延素子114によるタイミング(遅延時間2τ)との中間に存在する。そのため、復調部152は、図1において基準波形信号111を受信用遅延素子150により時間1.5τだけ遅延した信号151を生成する。そして、その信号をクロック信号として、検波信号105の符号を判定し、信号データ153に復調する。
【0091】
このような構成とすることによって、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置100は、受信信号と、位相が異なる複数の基準信号との相関値を生成し、それらの組合せにおける差の大小を相対比較して、同期位相の調整方向を正しく判定する。そのため、受信信号にS/N比の変動がある場合であっても、結果として、同期引込みに要する時間を短縮することができる。
【0092】
(他の構成例)
なお、本実施の形態では、パルス無線受信装置100の判定部163は、大小比較をする2組の信号を、相関値信号をそれぞれ平準化した後に加算し生成する。しかし、図10に示すように、2組の相関値信号をそれぞれ加算後に、平準化することにより、積分部の構成数をより少なくし、簡素な構成とすることができる。図10は、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図である。図10において、パルス無線受信装置301の判定部163は、相関算出部162の出力する相関値信号125を反転した信号と相関値信号121とを、信号加算部134により加算し、加算信号1003を生成する。さらに、相関値信号119を反転した信号と相関値信号123とを、信号加算部136により加算し、加算信号1004を生成する。そして、生成した加算信号1003、1004をそれぞれ、積分部1001、1002により平準化した信号135、137を生成し、信号137と信号135を反転した信号とを信号加算部140により加算し、その大小を比較判定する。
【0093】
ここで、第1、第2の信号加算部134、136における加減算は線形処理であるため、積分値の加減算と、加減算値の積分は等価であり、このような構成とすることができる。図10に示す構成は、図1の構成と比べて、積分部の数が半分で、信号135、信号137において同等の信号が得られる。回路構成の簡素化による製造コストが削減でき、動作における消費電力を削減できる。ただし、積分部のダイナミックレンジを図1に示す構成に比べて大きく設定する必要がある。
【0094】
なお、本実施の形態では、パルス無線受信装置100、301は、検波信号105を相関算出部162に入力し、同期用波形発生部160の基準波形信号111を遅延部161に源波形信号として入力する構成とした。しかし、これらの信号(105および111)を逆に入力する構成としても良い。図11は、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図である。図11において、パルス無線受信装置302は、基準波形信号111を相関算出部162に、検波信号105を遅延部161に源波形信号として入力し、同期の位相を調整する。この構成により、図1あるいは図10に示した構成と同様の動作をする。この理由は、図1あるいは図10に示したパルス無線受信装置100、301の構成において、検波信号105と基準波形信号111は、それら以降の信号処理回路に対して入力が等価なためである。これにより、分岐入力側にノイズの少ないクロック信号を用いて相関値信号を生成することができるようになり、受信信号にノイズが多い場合であっても、より正確に位相の調整方向を判定することができるようになる。
【0095】
なお、図10に示したパルス無線受信装置301は、復調部152により、検波信号105を、1.5τ遅延した信号151のタイミングで復調する形態とした。しかし、検波信号105の代わりに、信号1003、1004を加算した信号とする形態としてもよい。図12は、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図である。図12において、パルス無線受信装置303は、信号1003と信号1004を加算器1201により加算して復調対象とする信号1202を生成し、基準波形信号111を時間1.5τ遅延した信号151を用いて、信号データ153に復調する。ここで、パルス無線受信装置303が、相関値信号119、121、123、125から、復調対象とする信号1202を生成する動作について、波形図を用いて説明する。図13(a)は、相関値信号119、121、123、125の波形図を示す。これらは、それぞれ位相が60度ずつ異なっている。図13(b)は、信号1003、1004の波形図を示す。図13(c)は、信号1202の波形図を示す。このように構成することにより、パルス無線受信装置303は、基準波形信号111と無相関で不要な信号を除去した信号を元に、より誤りの少ない復調処理ができる。
【0096】
なお、図12に示した構成では、復調対象とする信号1202を加算器1201により生成する形態としたが、図14に示すように、乗算器により生成する形態としても良い。図14は、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図である。図14において、パルス無線受信装置304は、信号1003と信号1004とを乗算器1203により乗算して生成する。ただし、加算して復調用の信号を生成する場合には、生成する信号波形のずれが補正される。そのため、同期の位置ずれが生じている状態においては、加算して生成する形態のほうが位置ずれによる復調誤り率が低い。
【0097】
なお、本実施の形態では、パルス無線受信装置が受信する信号のパルス変調方式をオンオフキーイング方式として説明したが、他の変調方式、例えば、等間隔のインパルス信号で送信データに応じたパルスの位相により変調するバイフェーズ(Bi−Phase)変調方式、あるいは、送信データに応じて時間的にパルス位置を偏移するパルス位置変調(Pulse Position Modulation:PPM)方式等にも適用可能である。このとき、バイフェーズ変調方式の場合は、変調波が等間隔のインパルス列となるため、本発明にかかる構成が適用できる。また、パルス位置変調方式の場合は、無変調のインパルス列など、同期のための一定間隔インパルス列によるプリアンブルを設けることで、本発明にかかる同期手法を適用することができる。
【0098】
なお、上述した説明では、基準波形発生部110は、ローパスフィルタ203を用いて、同期タイミング信号109から、検波信号105のオンオフキーイングのマークにおける波形に相似する基準波形信号111を生成する((数1)及び(数2)参照)場合について説明したが、基準波形信号111は、検波信号105に相似する信号に限らない。例えば、基準波形発生部110が、ローパスフィルタ203を用いず、同期タイミング信号109をそのまま基準波形信号111として用いてもよい。つまり、基準波形発生部110が、(数3)に示すように、所定のタイミングでのみアナログ値を有し他のタイミングでは0の信号を、基準波形信号111として生成するようにしてもよい。
【0099】
(数3)
R(t)=αδ(t)・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
ここで、αは、定数であり、δ(t)は、デルタ関数である。
【0100】
また、以上の説明では、図7に示すパルス無線送信装置190から、オンオフキーイング変調方式により変調された無線信号101が送信され、パルス無線受信装置100が、検波部104により無線信号101を包絡線検波して復調する場合について記載したが、包絡線検波を行う検波部104を用いずに、搬送波位相を利用した復調を行う場合にも、同様の処理を行うことで同様の効果を得ることができる。以下、包絡線検波を行わず、搬送波位相を利用して復調を行う場合に、位相のずれを判定する動作について補足説明する。なお、以下では、基準波形発生部110が、基準波形信号111として、(数3)に示すような信号を生成するものとする。
【0101】
遅延部161は、基準波形信号111と、基準波形信号111を第1〜第3の遅延素子112、114、116により、時間τずつ順次遅延した遅延波形信号113、115、117を出力する。
【0102】
このとき、第1〜第3の遅延素子112、114、116は、遅延時間τとして、受信信号103の搬送波周波数周期の範囲で複数の相関値信号が得られる値の遅延量を印可する。これにより、後述する図15に示すように、搬送波周波数の1周期の中に有効な相関値が含まれるようになり、同期の位相の調整方向をより正しく判定することができるようになる。この結果、正確な同期タイミングの引き込みに要する時間をより短縮することができる。
【0103】
相関算出部162は、受信信号103と、基準波形信号111および基準波形信号111を時間τずつ遅延した遅延波形信号113、115、117とを、第1〜第4のミキサ118、120、122、124により、それぞれ混合し、第1〜第4の相関値信号119、121、123、125を出力する。上述したように、基準波形信号111は、(数3)で表せるような所定のタイミングでのみアナログ値を有し他のタイミングでは0の信号である。したがって、第1〜第4のミキサ118、120、122、124により、受信信号103と、基準波形信号111および基準波形信号111を時間τずつ遅延した遅延波形信号113、115、117とが混合されることにより、相関算出部162では、受信信号103が遅延時間τごとにサンプリングされることになる。
【0104】
図15は、この場合の判定部の動作を説明するための図である。図15において、受信信号の位相を0とした基準波形信号および遅延波形信号の位相差を横軸とし、各相関値信号119、121、123、124の相関値をプロット(1211、1212、1213、1214)している。判定部163は、例えば、図9の場合と同様に、相関値信号123の相関値1213に対する、相関値信号119の相関値1211との第1の差137と、相関値信号121の相関値1214に対する、相関値信号125の相関値1212との第2の差135とを算出し、比較する。以降、位相のずれを判定する動作は、上述した動作と同様のため、ここでは省略する。また、位相制御及び復調方法についても、検波部104を用いる場合と同様であるため、省略する。
【0105】
位相情報を用いた検波を行う場合には、精度がより高い復調・同期が可能となる。このように、オンオフキーイング変調方式で変調された無線信号101に対しては、包絡線検波または搬送波位相を利用したいずれの復調方法に対しも実施可能である。
【0106】
したがって、例えば、図16に示すように、受信アンテナと検波部104との間にスイッチ164を設けて、同期制御部142(又は同期制御部142b)から出力される制御信号144に応じて、スイッチ164を切り替えることで、検波部104により検出されたエンベロープ情報を用いる検波方式と、位相情報を用いる検波方式とを、切り替えるようにしてもよい。このときの制御信号としては、例えば、パルス無線受信装置に要求される復調・同期性能などを用いる。
【0107】
なお、上述した実施の形態では、変調方式がオンオフキーキングの場合について説明したが、変調方式は、オンオフキーイングを含む振幅変調に限らず、位相変調の場合にも、同様の処理を行うことで同様の効果を得ることができる。実施可能な位相変調としては、例えば、BPSK(Bi−Phase Shift Keying)変調、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調などの変調方式がある。ASKのような振幅変調では、包絡線検波方式による検波部104を用いても用いなくても、いずれの検波方式によっても復調できるのに対し、PSKやFSKのような位相・周波数変調ではエンベロープ情報のみでの検波が難しい。
【0108】
したがって、例えば、図16において、同期制御部142(又は同期制御部142b)から、制御信号として変調方式の情報がスイッチ164に出力されるようにして、この制御信号に応じて、スイッチ164を切り替えることで、検波部104を用いた包絡線検波方式を用いるか、検波部104を用いず位相情報を用いた検波方式を用いるか選択するようにしても良い。位相ずれの判定、位相制御および復調方法については、検波部104を用いる場合と同様であるため、省略する。
【0109】
また、図1を用いた以上の説明では、検波部104が包絡線検波を行い、検波信号105の1系統を受信復調する場合について記載したが、検波部104を直交検波構成とし、I、Q信号の2系統を受信復調して、QPSK変調信号に対応させるようにしてもよい。以下、受信信号103が、QPSK信号の場合について、補足説明する。
【0110】
図17は、検波部104が直交検波構成する場合の一般的な構成を示す図である。検波部104は、LO信号源145と、I、Q信号を生成するための2つのミキサ146、147と、90度移相器148とを備えて構成される。これにより、検波部104において、I、Q信号の両方が生成されて、検波部104からは2つの信号が出力される。
【0111】
したがって、同期用波形発生部、遅延部、相関算出部、判定部、及び同期制御部の構成要素を並列して備えて構成されるようにすることで、2系統の場合においても、1系統の場合と同様の位相ずれ判定および位相制御を行って、I、Qの2つの信号に併せて追従することができる。なお、I、Qの2つの信号に併せて追従するのではなく、I、Q信号のいずれか一方にのみ追従するようにしたり、両方の信号を加算合成、乗算、又は絶対値の加算を行なうことでI、Q信号を1つの信号として扱うようにしてもよい。これらの場合には、同期用波形発生部、遅延部、相関算出部、判定部、及び同期制御部を1系統分だけ備えれば良いので、パルス無線受信装置の回路規模が大きくなるのを回避することができる。
【0112】
なお、受信信号103を中間周波数にダウンコンバート処理を施した信号に対しても、同様の処理を行うことで同様の効果が得られるようになることは言うまでもない。
【0113】
また、以上の説明では、図9に示すように4つの判定点601〜604を、601と603、602と604を組み合わせて比較する場合について説明したが、4つの判定点を全て用いず、このうち2つだけや3つだけを用いるようにして、組合せを変えて比較するようにしても良い。例えば、同期引き込み時には4点を用い、同期追従時には内側2つだけを使うようにする。組み合わせに用いる判定点の数が多いほど、位相ずれの方向をより正確に特定することができるので、同期引き込み時には、判定点を多く用いるようにすることで、同期引き込み時間を短縮することができる。また、同期追従時には、内側の2つの判定点を用いれば、位相ずれを補正することができるので、同期追従時には、用いる判定点を少なくすることで、相関演算等の演算処理の削減により消費電力を低減することができる。
【0114】
また、以上の説明では、判定に用いる点を4つとした場合について説明したが、これを5点以上として、組合せを増やして判定精度を高めるようにしてもよい。
【0115】
また、以上の説明では、判定点の間隔となる遅延時間τを、シンボル長の1/2よりも小さい値として説明したが、第1〜第3の遅延素子112、114、116により印加される基準波形信号からの遅延量が、それぞれシンボル長の1/2以下となるようにしてもよい。これにより、検波部104を用いて包絡線検波された検波信号105のピークを捕らえた場合に、シンボル長の1/2内に第1〜第4の相関値信号119、121、123、125を得ることができるので、同期位相の調整方向をより確実に判定することができる。
【0116】
また、以上の説明では、判定点の間隔を遅延時間τとする場合について説明したが、これに限らず、判定点の間隔を適宜変更するようにしてもよい。判定点の間隔を広くするほど、受信パルスを発見する時間が短くなるので、同期引き込み時間を短くすることができ、判定点の間隔を狭くするほど、振幅値が大きい部分を判定に用いることができるので、同期追従時のジッタが小さくなり、同期精度を向上することができる。判定点の間隔を可変にして、同期引き込み・追従の両方の性能を高めるように、判定点の間隔を制御するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0117】
また、以上の説明では、相関算出部162により、複数のミキサを用いて、検波信号105と、基準波形信号111および複数の遅延波形信号113、115、117との相関を示す相関値信号119、121、123、124を並列に生成する場合について説明した。なお、ミキサの数を減らし、基準波形信号111を異なる遅延量でサンプルすることで複数の相関値信号を生成するように構成しても良いことは言うまでもない。
【0118】
また、以上の説明では、同期引き込みが可能な状態であり、さらに同期追従を行う場合を想定している。ここで、判定部163が、論理積演算部138により、信号135と信号137とを論理積演算し、信号135と信号137のうち、少なくともどちらか一方が負の値をとるときは、たとえ差分検出信号141に信号が検出されていたとしても、それは同期位置が不正であり、同期制御に用いるべきではないと判断し、パルス相関検出信号139が出力されないとする場合について説明した。
【0119】
加えて、同期引き込みが可能となるまでの間は、同期位置が不正であり、同期制御に用いるべきでないと判断した場合にも、例えば、所定の時間遅延量を増やす、又は減らす等の制御を行うようにしてもよい。以下、図18を用いて補足説明する。
【0120】
図18は、同位相及び逆位相に同期した状態における判定点の位置の様子を示す図である。同図において、図18(a)は、同位相に同期した状態を示し、図18(b)は、逆位相に同期した状態を示している。図18(b)に示すように、逆位相に同期した状態では、信号135と信号137がともに負であるので、パルス相関検出信号139が出力されず、位相ずれの補正が全くされなくなってしまう。したがって、同期引き込みが可能となるまでの間には、正しい同期点でなく、同期していないと判断された場合においても、所定の時間遅延量を増やす、又は減らす等の制御を行うようにすることにより、同期位置をずらすことができるので、この結果、同期引き込み時間を短縮することができる。
【0121】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2にかかるパルス無線受信装置について説明する。本実施の形態にかかるパルス無線受信装置は、受信信号と基準信号波形との相関を比較する数を増やして、相関値信号の密度を高めることにより、位相調整の方向と量をより正しく判定し、同期引込みに要する時間をさらに短縮する。
【0122】
(全体構成)
図19は、本実施の形態2にかかるパルス無線受信装置の構成を示す図である。図19において、パルス無線受信装置305は、図1に示した実施の形態1にかかるパルス無線受信装置100とほぼ同じ構成をしているため、差異について説明する。実施の形態1に示したパルス無線受信装置100は、4系統の異なる相関値信号により、位相ずれを判定する構成としているのに対し、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置305は、5系統の異なる相関値信号により、位相ずれを判定する構成としている点が異なっている。
【0123】
(遅延部及び相関算出部)
図19において、遅延部161は、4つの遅延素子を備え、入力される基準波形信号111と、それを時間τずつ順次遅延した遅延波形信号との5つの信号を生成する。ここで、遅延素子の遅延時間τは、本実施の形態では、それぞれτ=T/5とする。ただし、Tは実施の形態1で説明した検波信号の半値パルス幅である。相関算出部162は、5つのミキサを備え、検波部104の出力する検波信号105と、遅延部161の生成する5つの信号とをそれぞれ混合し、第1〜第5の相関値信号1301、1302、1303、1304、1305を生成する。
【0124】
(判定部)
そして、判定部163は、これら第1〜第5の相関値信号1301、1302、1303、1304、1305を、それぞれ積分部により、第1〜第5の平準化した信号1306、1307、1308、1309、1310を生成する。続いて、第3の信号1308に第1の信号1306を反転して加算した信号1311と、第2の信号1307に第5の信号1310を反転して加算した信号1312を生成し、さらに信号1311と信号1312を反転して加算した第1の評価値信号1315を生成する。同様に、第3の信号1308に第5の信号1310を反転して加算した信号1314と、第4の信号1309に第1の信号1306を反転して加算した信号1313を生成し、さらに信号1314と信号1313を反転して加算した第2の評価値信号1316を生成する。
【0125】
そして、第2の評価値信号1316に、第1の評価値信号1315を反転した信号を加算し、差分検出信号141を生成する。
【0126】
なお、本実施の形態では、図19に示すように、判定部163に、論理積演算部1320、1321をさらに備える。そして、信号1311と信号1312、信号1313と信号1314をそれぞれ論理積演算し、さらにその結果を論理積演算し、パルス相関検出信号139として出力するよう構成する。このパルス相関検出信号139は、差分検出信号141が受信パルスのピークを捕らえているか否かを示す。
【0127】
(同期制御部)
そして、同期制御部142は、これら差分検出信号141およびパルス相関検出信号139に基づいて制御信号143を生成する。なお、差分検出信号141、パルス相関検出信号139についての具定的説明は、後述する。
【0128】
そして、復調部152は、最も相関が強い相関値信号1303と、時間2τ遅延した遅延波形信号1330とから、信号データ153を復調する。このとき、遅延波形信号1330を復調タイミングとして用いるのは、遅延部161で最も遅延する遅延波形信号の遅延量4τの1/2、すなわち、2τであり、また、相関値信号1303を生成する元のタイミング信号でもあることによる。
【0129】
(動作説明)
パルス無線受信装置305の動作は、実施の形態1にかかるパルス無線受信装置100とほぼ同じであるため、差異について説明する。実施の形態1に示したパルス無線受信装置100の判定部163は、図9(a)−(c)で示したように、4系統の異なる相関値信号が示す4つの相関値から2組の差を求め、その大小関係により位相ずれを判定している。これに対し、本実施の形態2にかかるパルス無線受信装置305は、5系統の異なる相関値信号が示す5つの相関値から、4つの組の差を求め、その差の大小関係により位相ずれを判定する。
【0130】
図20(a)−(c)は、本実施の形態2にかかる判定部の動作を説明する図である。図20(a)−(c)において、判定部163は、まず、各相関値601、602、603、604、605から、第1および第2の評価値1315、1316を求める。次に、これら2つの評価値を比較して、その大小関係および差から、次のように、同期位置の進み度合いを判定する。
【0131】
図20(a)は、受信同期が確立している場合における、判定部163の動作を示している。判定部163は、2つの評価値を比較しても(255)、その値が等しく符号が逆となることから、位相ずれは無いと判定する。このとき、判定部163は、差分検出信号141として、受信信号に対し、基準波形信号および遅延波形信号の信号系列とに位相ずれが無いことを示す信号を出力する。なお、本実施例では、レベル0の信号を出力する形態として説明するが、位相ずれが無い場合は無信号とする形態としてもよい。
【0132】
図20(b)は、受信同期が進んでいる場合の動作を示している。判定部163は、同様に、第1および第2の評価値1315、1316をそれぞれ求め(256、257)、さらに、2つの評価値を比較する(258)。その結果、判定部163は、第1の評価値1315が第2の評価値1316よりも大きく、それらの差711だけ同期位置が進んでいると判定する。このとき、判定部163は、差分検出信号141として、この差711を示す正の値を持つ信号を出力する。なお、ここでは、実施の形態1と同様に、位相のずれ量は、差分検出信号141の値に比例するものとして説明している。
【0133】
図20(c)は、逆に、受信同期が遅れている場合の動作を示している。判定部163は、同様に、第1および第2の評価値1315、1316をそれぞれ求め(259、260)、さらに、2つの評価値を比較する(261)。その結果、判定部163は、第1の評価値1315が第2の評価値1316よりも小さく、それらの差711だけ同期位置が遅れていると判定する。このとき、判定部163は、差分検出信号141として、この差711を示す負の値を持つ信号を出力する。
【0134】
なお、本実施の形態では、判定部163は、信号1311、1312、1313、1314のすべてが同時に正の値をとる場合には、差分検出信号141が受信パルスのピークを捕らえていると判定し、同期引込みが可能な状態であることを示すパルス相関検出信号139を、同時に同期制御部142に出力する。
【0135】
このような構成とすることによって、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置は、受信信号と基準信号波形との相関を比較する数を増やし、相関値信号の密度を高める。ことにより、位相調整の方向と量をより正しく判定し、同期引込みに要する時間をさらに短縮することができる。
【0136】
(他の構成例)
なお、本実施の形態では、図19に示したように、パルス無線受信装置305は、復調部152により、最も相関の強い相関値信号1303を、遅延波形信号1330のタイミングで復調する形態とした。しかし、相関値信号1303の代わりに、複数の相関値信号から基準波形信号と相関の低い信号を除去した信号を合成し、復調する形態としてもよい。図21は、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図である。図21において、パルス無線受信装置306は、相関値信号を合成した信号1751と信号1752を、乗算器1701により混合して信号1702を生成し、相関値信号から合成した信号1753と信号1754を、乗算器1703により混合して信号1704を生成する。そして、これら信号1702と信号1704を、さらに加算器1705により加算した信号1706を生成し、遅延波形信号1330のタイミングで復調する。
【0137】
また、図21に示したパルス無線受信装置306は、復調対象とする信号1706を合成する際に、乗算器1701、1703により混合処理する形態としたが、これらを加算器により加算処理する形態としてもよい。図22は、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図である。図22において、パルス無線受信装置307は、加算器1707、1709を用いて、それぞれ合成信号1708、1710を生成し、加算器1705により復調対象とする信号1712を生成し、遅延波形信号1330のタイミングで復調する。なお、このように、加算して復調用の信号を生成すると、生成する信号波形のずれが補正される。そのため、同期の位置ずれが生じている状態においては、加算して生成する形態のほうが位置ずれによる復調誤り率を低くできる。
【0138】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3にかかるパルス無線受信装置について説明する。本実施の形態にかかるパルス無線受信装置は、受信信号と基準信号波形との相関を比較する数を少なくして、構成の簡素化による製造コストならびに消費電力の削減を実現する。
【0139】
(全体構成)
図23は、本実施の形態3にかかるパルス無線受信装置の構成を示す図である。図23において、パルス無線受信装置308は、図1に示した実施の形態1にかかるパルス無線受信装置100とほぼ同じ構成をしているため、差異について説明する。実施の形態1に示したパルス無線受信装置100は、4系統の異なる相関値信号により位相ずれを判定する構成としているのに対し、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置308は、3系統の異なる相関値信号により位相ずれを判定する構成としている点が異なっている。
【0140】
(遅延部及び相関算出部)
図23において、遅延部161は、2つの遅延素子を備え、入力される基準波形信号111と、それを時間τずつ順次遅延した遅延波形信号との3つの信号を生成する。ここで、遅延素子の遅延時間τは、本実施の形態では、それぞれτ=T/3とする。ただし、Tは実施の形態1で説明した検波信号の半値パルス幅である。相関算出部162は、3つのミキサを備え、検波部104の出力する検波信号105と、遅延部161の生成する3つの信号とをそれぞれ混合し、第1〜第3の相関値信号1601、1602、1603を生成する。
【0141】
(判定部)
そして、判定部163は、これら第1〜第3の相関値信号1601、1602、1603をそれぞれ積分部により第1〜第3の平準化した信号1604、1605、1606を生成する。続いて、第1の信号1604に第3の信号1606を反転して加算し、差分検出信号141を生成する。
【0142】
なお、本実施の形態では、図23に示すように、判定部163は、論理積演算部138により、第2の信号1605に第1の信号1604を反転して加算した信号1611と、第2の信号1605に第3の信号1606を反転して加算した信号1612とを、論理積演算し、パルス相関検出信号139として出力するよう構成する。このパルス相関検出信号139は、差分検出信号141が受信パルスのピークを捕らえているか否かを示す。
【0143】
(同期制御部)
そして、同期制御部142は、これら差分検出信号141およびパルス相関検出信号139に基づいて制御信号143を生成する。
【0144】
そして、復調部152は、最も相関が強い相関値信号1602と、時間τ遅延した遅延波形信号1630とから、信号データ153を復調する。このとき、遅延波形信号1630を復調タイミングとして用いるのは、遅延部161で最も遅延する遅延波形信号の遅延量2τの1/2、すなわち、τであり、また、相関値信号1602を生成する元のタイミング信号でもあることによる。
【0145】
(動作説明)
パルス無線受信装置308の動作は、実施の形態1にかかるパルス無線受信装置100とほぼ同じであるため、差異について説明する。実施の形態1に示したパルス無線受信装置100の判定部163は、図9(a)−(c)で示したように、4系統の異なる相関値信号が示す4つの相関値から2組の差を求め、その大小関係により位相ずれを判定している。これに対し、本実施の形態3にかかるパルス無線受信装置308は、3系統の異なる相関値信号が示す3つの相関値から、1つの相関値を共通とする2組の差を求め、その差の大小関係により位相ずれを判定する。
【0146】
図24(a)−(c)は、本実施の形態3にかかる判定部の動作を説明する図である。図24(a)−(c)において、判定部163は、まず、各相関値601、602、603から、第1および第2の評価値1611、1612を求める。次に、これら2つの評価値を比較して、その大小関係および差から、次のように、同期位置の進み度合いを判定する。
【0147】
図24(a)は、受信同期が確立している場合における、判定部163の動作を示している。判定部163は、2つの評価値を比較しても(262)、その値が等しく符号が逆となることから、位相ずれは無いと判定する。このとき、判定部163は、差分検出信号141として、受信信号に対し、基準波形信号および遅延波形信号の信号系列とに位相ずれが無いことを示す信号を出力する。なお、本実施例では、レベル0の信号を出力する形態として説明するが、位相ずれが無い場合は無信号とする形態としてもよい。
【0148】
図24(b)は、受信同期が進んでいる場合の動作を示している。判定部163は、同様に、第1および第2の評価値1611、1612を比較する(263)。その結果、判定部163は、第1の評価値1611が第2の評価値1612よりも大きく、それらの差712だけ同期位置が進んでいると判定する。このとき、判定部163は、差分検出信号141として、この差712を示す正の値を持つ信号を出力する。なお、ここでは、実施の形態1と同様に、位相のずれ量は、差分検出信号141の値に比例するものとして説明している。
【0149】
図24(c)は、逆に、受信同期が遅れている場合の動作を示している。判定部163は、同様に、第1および第2の評価値1315、1316を比較する(264)。その結果、判定部163は、第1の評価値1611が第2の評価値1612よりも小さく、それらの差712だけ同期位置が遅れていると判定する。このとき、判定部163は、差分検出信号141として、この差712を示す負の値を持つ信号を出力する。
【0150】
なお、本実施の形態では、判定部163は、第1および第2の評価値1611、1612が同時に正の値をとる場合には、差分検出信号141が受信パルスのピークを捕らえていると判定し、同期引込みが可能な状態であることを示すパルス相関検出信号139を、同時に同期制御部142に出力する。
【0151】
(他の構成例)
なお、上記図24を用いた説明では、同期位置の進み度合いを判定する際に、判定部163は、まず、第1および第2の評価値1611、1612をそれぞれ求め、次に、これら2つの評価値を比較するとした。しかし、実現する際には、図19に示すように、第1の平準化した信号1604に第3の信号1606を反転した信号を加算し、直接差分検出信号141を生成する構成としてもよい。
【0152】
このような構成とすることによって、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置は、受信信号と基準信号波形との相関を比較する数を少なくし、構成の簡素化による製造コストならびに消費電力を削減する。
【0153】
なお、本実施の形態では、図23に示したように、パルス無線受信装置308は、復調部152により、最も相関の強い相関値信号1602を、遅延波形信号1630のタイミングで復調する形態とした。しかし、相関値信号1602の代わりに、複数の相関値信号から基準波形信号と相関の低い信号を除去した信号を合成し、復調する形態としてもよい。図25は、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図である。図25において、パルス無線受信装置309は、相関値信号を合成した信号1651と信号1652を乗算器1901により混合して信号1902を生成し、遅延波形信号1630のタイミングで復調する。
【0154】
また、図25に示したパルス無線受信装置309は、復調対象とする信号1902を合成する際に、乗算器1901により混合処理する形態としたが、これらを加算器により加算処理する形態としてもよい。図26は、本実施の形態にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図である。図26において、パルス無線受信装置310は、加算器1903により復調対象とする信号1904を生成し、遅延波形信号1630のタイミングで復調する。なお、このように、加算して復調用の信号を生成すると、生成する信号波形のずれが補正される。そのため、同期の位置ずれが生じている状態においては、加算して生成する形態のほうが位置ずれによる復調誤り率を低くできる。
【0155】
本発明のパルス無線受信装置は、受信信号を包絡線検波し、検波信号を生成する検波部と、受信信号に相似する基準波形信号を、入力される制御信号に応じて位相を制御して発生する同期用波形発生部と、基準波形信号を源波形信号として受けて、源波形信号を一定の遅延量ずつ遅延させた複数の遅延波形信号を発生する遅延部と、検波信号と基準波形信号および複数の遅延波形信号との相関値を示す相関値信号を並列に生成する相関算出部と、相関算出部が生成した相関値信号の示す相関値の組合せに応じた大小関係から、受信信号と基準波形信号との位相ずれの方向および量を示す差分検出信号を生成する判定部と、差分検出信号に基づいて、受信信号とパルスタイミングとが同期するように、同期用波形発生部の生成する基準波形信号の位相を制御する制御信号を生成し、同期用波形発生部へ出力する同期制御部とを備える。そのため、受信信号と、位相の異なる複数の基準信号との相関値を生成して、それら相関値の組合せにおける大小を相対比較することで、受信信号にS/N比の変動がある場合であっても、同期の位相の調整方向を正しく判定できるようになり、結果として、正確な同期タイミングへの引込みに要する時間を短縮することができる。
【0156】
また、本発明のパルス無線受信装置は、受信信号を包絡線検波し、検波信号を生成する検波部と、受信信号に相似する基準波形信号を、入力される制御信号に応じて位相を制御して発生する同期用波形発生部と、検波信号を源波形信号として受けて、源波形信号を一定の遅延量ずつ遅延させた複数の遅延波形信号を発生する遅延部と、基準波形信号と、検波波形信号および複数の遅延波形信号との相関値を示す相関値信号を並列に生成する相関算出部と、相関算出部が生成した相関値信号の示す相関値の組合せに応じた大小関係から、受信信号と基準波形信号との位相ずれの方向および量を示す差分検出信号を生成する判定部と、差分検出信号に基づいて、受信信号とパルスタイミングとが同期するように、同期用波形発生部の生成する基準波形信号の位相を制御する制御信号を生成し、同期用波形発生部へ出力する同期制御部とを備える。そのため、基準信号と、位相の異なる複数の受信検波信号との相関値を生成して、それら相関値の組合せにおける大小を相対比較することで、受信信号にS/N比の変動がある場合であっても、同期の位相の調整方向を正しく判定できるようになり、結果として、正確な同期タイミングへの引込みに要する時間を短縮することができ、また、分岐入力側にクロック信号を用いて相関値信号を生成することができるようになり、受信信号にノイズが多い場合であっても、より正確に位相の調整方向を判定することができる。
【0157】
また、本発明のパルス無線受信装置は、遅延部の遅延量は、検波信号の半値パルス幅の範囲で複数のタイミングが得られる値とする。そのため、相関値の組合せとして、必ずパルス幅の中の有効な相関値が含まれるように設定し、同期の位相の調整方向を、より正しく判定できるようになり、結果として、正確な同期タイミングへの引込みに要する時間をより短縮することができる。
【0158】
また、本発明のパルス無線受信装置は、検波信号を復調対象信号とし、基準波形信号をタイミング信号とした場合、復調対象信号とタイミング信号とを受けて、同期が確立している状態における復調対象信号とタイミング信号とのお互いの信号の位相関係から、一方に対し他方を所定量遅延させて、信号データを復調する復調部をさらに備える。そのため、求めた受信同期タイミングにおける検波信号の判定から、正確に信号データを復調することができるようになり、結果として、より短い時間で正確に信号データを復調することができる。
【0159】
また、本発明のパルス無線受信装置は、判定部で使用する相関値の組合せとして、第1の組合せは、源波形信号を用いて算出された第1の相関値および、複数の遅延波形信号のうち、遅延量が最も遅延する信号以外の一つの遅延波形信号、を用いて算出された第3の相関値とし、第2の組合せは、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号を用いて算出された第2の相関値および、複数の遅延波形信号のうち、遅延量が最も遅延する信号以外の一つの遅延波形信号、を用いて算出された第4の相関値とし、第1の組合わせである、第3の相関値から第1の相関値を減じた第1の評価値と、第2の組合せである、第4の相関値から第2の相関値を減じた第2の評価値との大小関係に基づいて、差分検出信号を生成する。そのため、パルス内で最も位相差の大きなタイミングでの相関値を用いて、パルス内の任意のタイミングでの相関値との差を算出できるようになり、より正確に位相の調整方向を判定することができる。
【0160】
また、本発明のパルス無線受信装置は、第3の相関値、および、第4の相関値は、ともに、遅延量が、最も遅延する遅延波形信号の遅延量の、1/2である遅延波形信号を用いて算出された相関値とする。そのため、少なくともパルス内で相関を取得できる任意のタイミングが単一で位相の調整方向を判定できるようになり、簡易な構成で実装することができる。
【0161】
また、本発明のパルス無線受信装置は、第3の相関値は、遅延量が最も遅延する遅延波形信号の遅延量の1/2以上で、かつ、最も1/2に近い遅延波形信号を用いて算出された相関値であり、第4の相関値は、遅延量が最も遅延する遅延波形信号の遅延量の1/2以下で、かつ、最も1/2に近い遅延波形信号を用いて算出された相関値とする。そのため、少なくとも、より最大相関値となるタイミングを用いて同期の位相の調整方向を正しく判定できるようになり、算出する相関値のタイミング数が偶数であっても、より正確に位相の調整方向を判定することができる。
【0162】
また、本発明のパルス無線受信装置は、判定部で使用する相関値の組合せとして、第3の組合せは、源波形信号を用いて算出された第1の相関値および、複数の遅延波形信号のうち遅延量が最も遅延する信号以外の一つの遅延波形信号、を用いて算出された第3の相関値とし、第4の組合せは、遅延量が最も遅延する遅延波形信号を用いて算出された第2の相関値および、複数の遅延波形信号のうち、遅延量が最も遅延する信号以外の一つの遅延波形信号、を用いて算出された第4の相関値とし、第5の組合せは、第1の相関値および、複数の遅延波形信号のうち遅延量が最も遅延する信号以外で、かつ第3の相関値、あるいは第4の相関値の算出に用いた遅延波形信号とは異なる、一つの遅延波形信号を用いて算出された第5の相関値とし、第6の組合せは、第2の相関値および、第5の相関値とし、第6の組合せである、第5の相関値から第2の相関値を減じた値から、第3の組合せである、第3の相関値から第1の相関値を減じた値を減じて、第3の評価値を算出し、第5の組合せである、第5の相関値から第1の相関値を減じた値から、第4の組合せである、第4の相関値から第2の相関値を減じた値を減じて、第4の評価値を算出し、さらに、第3の評価値と第4の評価値との大小関係に基づいて差分検出信号を生成する。そのため、パルス内で最も位相差の大きなタイミングでの相関値と、最も大きな相関値を用いて、位相の調整方向を判定できるようになり、算出する相関値のタイミング数が奇数の場合には、特に正確に位相の調整方向を判定することができる。
【0163】
また、本発明のパルス無線受信装置は、第3の相関値は、遅延量が最も遅延する遅延波形信号の遅延量の1/2以上で、かつ、最も1/2に近い遅延波形信号を用いて算出された相関値であり、第4の相関値は、遅延量が最も遅延する遅延波形信号の遅延量の1/2以下で、かつ、最も1/2に近い遅延波形信号を用いて算出された相関値であり、第5の相関値は、遅延量が最も遅延する遅延波形信号の1/2の遅延波形信号を用いて算出された相関値とする。そのため、任意のタイミングとして、最大相関値に最も近いタイミングを用いて位相の調整方向を判定できるようになり、より正確に位相の調整方向を判定することができる。
【0164】
また、本発明のパルス無線受信装置は、判定部は、相関算出部の生成する相関値信号よりローパス信号をそれぞれ生成し、ローパス信号を所定の組合せで加算合成して差分検出信号を生成する。そのため、相関値信号を判定処理する回路の動作周波数を低くできるようになり、簡易な構成で位相の調整方向を判定することができる。
【0165】
また、本発明のパルス無線受信装置は、判定部は、相関値信号の各クロック期間における最大値をサンプルホールドし、さらにクロックタイミングによりディスチャージ処理して、ローパス信号を生成する。そのため、単位時間区間における最大値を正確に出力できるようになり、同期時間の調整量をより正確に判定することができる。
【0166】
また、本発明のパルス無線受信装置は、判定部は、相関値信号を所定の組合せで合成して複数の合成信号を生成し、複数の合成信号よりローパス信号を生成し、さらにローパス信号を加算合成して差分検出信号を生成する。そのため、積分回路数を少なく構成できるようになり、より簡素な構成で実現することができる。
【0167】
また、本発明のパルス無線受信装置は、判定部の生成する合成信号を、加算または混合して復調対象信号を生成し、復調対象信号と遅延量が同じになるように、基準波形信号のタイミングを遅延させたタイミング信号を生成し、復調対象信号とタイミング信号とから信号データを復調する復調部をさらに備える。そのため、復調対象とする信号として基準波形信号と無相関で不要な信号を除去した信号を生成できるようになり、より誤りの少ない復調処理をすることができる。
【0168】
また、本発明のパルス無線受信装置は、遅延時間の所定量が、遅延部において、最も遅延する遅延波形信号の遅延量の1/2の時間量である。そのため、タイミング信号を直接取得できるようになり、より正確に復調処理することができる。
【0169】
また、本発明のパルス無線受信装置は、判定部は、相関値信号の示す相関値の組合せに応じた大小関係から、同期位置が受信パルスを捕らえているか否かを示すパルス相関検出信号を、さらに生成し、同期制御部は、パルス相関検出信号に応じて、差分検出信号より制御信号を生成する。そのため、差分検出信号の有効性を同時に判定できるようになり、同期状態に応じて、適切な制御信号を生成し、同期の調整方向をより正しく判定することができる。
【0170】
また、本発明のパルス無線受信装置は、同期制御部は、一回の制御において位相を調整する量が一定である制御信号を生成する。そのため、位相ずれが大きい場合でも一定量ずつ位相を調整できるようになり、同期調整でのオーバーシュートの発生を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明にかかるパルス無線受信装置は、UWB等のインパルスによる無線通信機器等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるパルス無線受信装置の構成を示す図
【図2】(a)実施の形態1にかかる検波部の構成を示す図(b)実施の形態1にかかる検波部の別の構成を示す図
【図3】実施の形態1にかかる検波部の動作を説明する図
【図4】実施の形態1にかかる基準波形発生部の構成を示す図
【図5】(a)実施の形態1にかかる積分部の構成を示す図(b)実施の形態1にかかる積分部の別の構成を示す図
【図6】(a)実施の形態1にかかる同期制御部の構成を示す図(b)実施の形態1にかかる同期制御部の別の構成を示す図
【図7】実施の形態1にかかるパルス無線受信装置の動作を説明する図
【図8】(a)実施の形態1にかかる相関算出部の動作を説明する波形図(b)実施の形態1にかかる相関算出部の動作を説明する波形図(c)実施の形態1にかかる相関算出部の動作を説明する波形図(d)実施の形態1にかかる位相差と相関値の関係を説明する図
【図9】(a)実施の形態1にかかる判定部の動作を説明する図(b)実施の形態1にかかる判定部の動作を説明する図(c)実施の形態1にかかる判定部の動作を説明する図
【図10】実施の形態1にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図
【図11】実施の形態1にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図
【図12】実施の形態1にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図
【図13】実施の形態1にかかる復調部の動作を説明する波形図
【図14】実施の形態1にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図
【図15】実施の形態1にかかる判定部の動作を説明する図
【図16】実施の形態1にかかるパルス無線受信装置の別の構成の一部を示す図
【図17】実施の形態1にかかる検波部の別の構成を示す図
【図18】実施の形態1にかかる判定部の動作を説明する図
【図19】本発明の実施の形態2にかかるパルス無線受信装置の構成を示す図
【図20】実施の形態2にかかる判定部の動作を説明する図
【図21】実施の形態2にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図
【図22】実施の形態2にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図
【図23】本発明の実施の形態3にかかるパルス無線受信装置の構成を示す図
【図24】実施の形態3にかかる判定部の動作を説明する図
【図25】実施の形態3にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図
【図26】実施の形態3にかかるパルス無線受信装置の別の構成を示す図
【図27】従来のパルス無線受信装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0173】
100,301,302,303,304,305,306,307,308,309,310 パルス無線受信装置
102 受信アンテナ
104,104b 検波部
106 クロック信号発生部
107 クロック信号
108 可変信号遅延部
110 基準波形発生部
112,114,116 遅延素子
118,120,122,124,146,147 ミキサ
126,126b,128,130,132 積分部
134,136,140 信号加算部
138 論理積演算部
142,142b 同期制御部
145 LO信号源
148 90度移相器
150 遅延素子
152 復調部
160 同期用波形発生部
161 遅延部
162 相関算出部
163 判定部
164 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準波形信号を生成する基準波形生成部と、
異なる遅延量で前記基準波形信号を遅延させた複数の遅延波形信号を発生する遅延部と、
受信信号と、前記基準波形信号及び前記遅延波形信号との相関値を示す複数の相関値信号を生成する相関算出部と、
前記複数の相関値信号を、所定の組み合わせで比較し、比較結果に応じて、前記受信信号と前記基準波形信号との位相ずれの方向及び量を示す差分検出信号を生成する判定部と、
前記差分検出信号に基づいて、前記基準波形生成部により生成される前記基準波形信号の位相を制御する同期制御部と、
を具備するパルス無線受信装置。
【請求項2】
基準波形信号を生成する基準波形生成部と、
異なる遅延量で受信信号を遅延させた複数の遅延波形信号を発生する遅延部と、
前記基準波形信号と、前記遅延部により遅延された前記複数の受信信号との相関値を示す複数の相関値信号を生成する相関算出部と、
前記複数の相関値信号を、所定の組み合わせで比較し、比較結果に応じて、前記受信信号と前記基準波形信号との位相ずれの方向及び量を示す差分検出信号を生成する判定部と、
前記差分検出信号に基づいて、前記基準波形生成部により生成される前記基準波形信号の位相を制御する同期制御部と、
を具備するパルス無線受信装置。
【請求項3】
前記遅延部は、前記遅延波形信号の最大遅延量を、前記受信信号のシンボル長以下に設定する
請求項1に記載のパルス無線受信装置。
【請求項4】
前記遅延部は、前記遅延波形信号の遅延間隔を前記受信信号のシンボル長の1/2以下に設定する
請求項3に記載のパルス無線受信装置。
【請求項5】
前記遅延部は、前記遅延波形信号を少なくとも3つ発生し、かつ、前記遅延波形信号の最大遅延量を、前記受信信号のシンボル長の1/2以下に設定する
請求項4に記載のパルス無線受信装置。
【請求項6】
前記遅延部は、前記遅延波形信号の最大遅延量を、前記受信信号の搬送波周波数周期以下に設定する
請求項1に記載のパルス無線受信装置。
【請求項7】
前記遅延部は、前記遅延波形信号の遅延間隔を前記受信信号の搬送波周波数周期の1/2以下に設定する
請求項6に記載のパルス無線受信装置。
【請求項8】
前記遅延部は、前記遅延波形信号を少なくとも3つ発生し、かつ、前記遅延波形信号の最大遅延量を、前記受信信号の搬送波周波数周期の1/2以下に設定する
請求項7に記載のパルス無線受信装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記所定の相関値の組み合わせとして、互いに隣り合わない時間での前記相関値信号から成る組み合わせを、少なくとも1つ含む
請求項1に記載のパルス無線受信装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記所定の相関値の組み合わせを適宜変更する
請求項1に記載のパルス無線受信装置。
【請求項11】
前記基準波形信号をタイミング信号として、前記受信信号から信号データを復調する復調部を、さらに備える
請求項1に記載のパルス無線受信装置。
【請求項12】
前記復調部は、前記受信信号と前記基準波形信号との相関値を示す前記相関値信号を復調する
請求項11に記載のパルス無線受信装置。
【請求項13】
前記受信信号を包絡線検波する検波器を、さらに備え、
前記相関値算出部は、前記検波器により包絡線検波された前記受信信号と、前記基準波形信号及び前記遅延波形信号との相関値を示す複数の相関値信号を生成し、
前記判定部は、前記検波器により包絡線検波された前記受信信号と前記基準波形信号との位相ずれの方向及び量を示す差分検出信号を生成し、
前記復調部は、前記検波器により包絡線検波された前記受信信号を復調する
請求項11に記載のパルス無線受信装置。
【請求項14】
前記判定部は、
前記相関値の組合せとして、
第1の組合せは、前記基準波形信号を用いて算出された第1の相関値、および、前記複数の遅延波形信号のうち、遅延量が最も遅延する信号以外の一つの前記遅延波形信号を用いて算出された第3の相関値とし、
第2の組合せは、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号を用いて算出された第2の相関値、および、前記複数の遅延波形信号のうち、遅延量が最も遅延する信号以外の一つの遅延波形信号を用いて算出された第4の相関値とし、
前記第1の組合せである、前記第3の相関値から前記第1の相関値を減じた第1の評価値と、
前記第2の組合せである、前記第4の相関値から前記第2の相関値を減じた第2の評価値との大小関係に基づいて、
前記差分検出信号を生成する
請求項1に記載のパルス無線受信装置。
【請求項15】
前記第3の相関値、および、前記第4の相関値は、ともに、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の遅延量の1/2である前記遅延波形信号を用いて算出された相関値である
請求項14に記載のインパルス無線受信装置。
【請求項16】
前記第3の相関値は、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の遅延量の、1/2以上でかつ最も1/2に近い、前記遅延波形信号を用いて算出された相関値であり、
前記第4の相関値は、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の遅延量の、1/2以下でかつ最も1/2に近い、前記遅延波形信号を用いて算出された相関値である
請求項14に記載のインパルス無線受信装置。
【請求項17】
前記判定部は、
前記相関値の組合せとして、
前記第3の組合せは、前記基準波形信号を用いて算出された前記第1の相関値と、前記複数の遅延波形信号のうち遅延量が最も遅延する信号以外の一つの遅延波形信号と、を用いて算出された前記第3の相関値とし、
前記第4の組合せは、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号を用いて算出された前記第2の相関値と、前記複数の遅延波形信号のうち、遅延量が最も遅延する信号以外の一つの遅延波形信号と、を用いて算出された前記第4の相関値とし、
第5の組合せは、前記第1の相関値と、前記複数の遅延波形信号のうち遅延量が最も遅延する信号以外で、かつ前記第3の相関値、あるいは前記第4の相関値の算出に用いた前記遅延波形信号とは異なる一つの遅延波形信号と、を用いて算出された第5の相関値とし、
第6の組合せは、前記第2の相関値および、前記第5の相関値とし、
前記第6の組合せである前記第5の相関値から前記第2の相関値を減じた値から、前記第3の組合せである前記第3の相関値から前記第1の相関値を減じた値を減じて、第3の評価値を算出し、
前記第5の組合せである前記第5の相関値から前記第1の相関値を減じた値から、前記第4の組合せである前記第4の相関値から前記第2の相関値を減じた値を減じて、第4の評価値を算出し、
さらに、前記第3の評価値と前記第4の評価値との大小関係に基づいて、前記差分検出信号を生成する
請求項1に記載のパルス無線受信装置。
【請求項18】
前記第3の相関値は、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の遅延量の、1/2以上で、かつ、最も1/2に近い、前記遅延波形信号を用いて算出された相関値であり、
前記第4の相関値は、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の遅延量の、1/2以下で、かつ、最も1/2に近い、前記遅延波形信号を用いて算出された相関値であり、
前記第5の相関値は、遅延量が最も遅延する前記遅延波形信号の1/2の前記遅延波形信号を用いて算出された相関値である
請求項17記載のパルス無線受信装置。
【請求項19】
前記判定部は、
前記複数の相関値信号を、それぞれ前記相関値信号ごとに平準化し、平準化後の前記相関値信号を所定の組合せで加算合成して、前記差分検出信号を生成する
請求項1に記載のパルス無線受信装置。
【請求項20】
前記判定部は、
前記相関値信号の各クロック期間における最大値をサンプルホールドし、さらにクロックタイミングによりディスチャージ処理して、前記複数の相関値信号を、それぞれ前記相関値信号ごとに平準化する
請求項19に記載のパルス無線受信装置。
【請求項21】
前記判定部は、
前記相関値信号を所定の組合せで合成して複数の合成信号を生成し、前記合成信号を、それぞれ前記合成信号ごとに平準化し、平準化後の前記合成信号を加算合成して、差分検出信号を生成する
請求項1に記載のパルス無線受信装置。
【請求項22】
前記判定部は、
前記相関算出部により生成される前記相関値信号を合成して前記合成信号を生成し、
前記判定部により生成された前記合成信号を加算、または、混合して復調対象信号を生成し、
遅延部は、
前記基準波形信号と前記復調対象信号との遅延量と同一の遅延量だけ、前記基準波形信号を遅延させたタイミング信号を生成し、
前記復調対象信号と前記タイミング信号とから信号データを復調する復調部を、さらに具備する
請求項21記載のインパルス無線受信装置。
【請求項23】
前記判定部は、
前記相関値信号が示す前記相関値の組合せに応じた大小関係から、前記受信信号を捕らえているか否かを示すパルス相関検出信号をさらに生成し、
前記同期制御部は、
前記パルス相関検出信号及び前記差分検出信号に応じて、前記基準波形信号の位相を制御する
請求項1に記載のパルス無線受信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−274678(P2007−274678A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48017(P2007−48017)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】