説明

パルプの評価方法、印刷用紙の評価方法及び印刷用紙

【課題】オフセット印刷における版傷の発生を予測する方法を提供することにある。更には、オフセット印刷の版傷による印刷不良の起こらない印刷用紙を提供する。
【解決手段】パルプを5カットフラットスクリーンで処理し、スクリーン残渣に含まれる固形物の個数を針先でカウントし、その個数により該パルプを原料として使用する印刷用紙のオフセット印刷における版傷による印刷不良の発生を予測するパルプの評価方法。及び、印刷用紙を離解したパルプを5カットフラットスクリーンで処理し、スクリーン残渣に含まれる固形物の個数を針先でカウントし、その個数が5個/絶乾パルプ1kg以下であれば、該印刷用紙をオフセット印刷した際に版傷による印刷不良の発生は許容範囲内であると判断する印刷用紙の評価方法。ならびに、前記固形物の個数が5個/絶乾パルプ1kg以下である印刷用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙をオフセット印刷機で印刷する際に発生する版傷による印刷不良の評価方法及びオフセット印刷機で印刷する際に版傷による印刷不良が発生しない印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷技術は、オフセット印刷化、カラー印刷化と共に、高速大量印刷化、自動化など大きな進歩を遂げてきている。オフセット印刷はPS版と呼ばれる刷版にインキと湿し水を供給してブランケットを介して紙にインキを転写する方式である。PS版は、画線部は親油性、非画線部は親水性となるように処理されており、親油性の画線部にはインキが付着し、親水性の非画線部には水が付着することにより、画線部と非画線部が形成されて印刷される。
【0003】
ところが、オフセット印刷の印刷不良として、非画線部にインキが付着する「汚れ」の現象が発生することがある。これは、本来親水性である非画線部が親油性となった場合に発生する。例えば、パルプに含まれる樹脂分や印刷用紙に表面塗布されたサイズ剤などの成分がPS版に移行し堆積する「感脂化」の現象が知られている。一方、紙に混入した固形物がブランケットにとられ、PS版を傷つける「版傷」のトラブルが発生することがある。このような版傷トラブルが発生すると印刷機を停止してPS版を交換する必要があり、印刷作業性を悪化させてしまう。
【0004】
パルプ中に含まれる異物の定量方法については、JISP8145紙及び板紙のきょう雑物試験方法(非特許文献1)やTAPPIUM240機械パルプの結束繊維含有量(非特許文献2)が知られている。しかしこれらの試験方法は、異物の外観や大きさによって異物の特定や分級をするものであって、オフセット印刷の版傷との直接的な関係はなかったので、版傷の原因調査・対策には、版を傷つける異物の硬さの確認が必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JISハンドブック 紙・パルプ 2007年版
【非特許文献2】TAPPI実用試験法 1988年版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記事情に鑑み、オフセット印刷における版傷の発生を予測する方法を提供することにある。更には、オフセット印刷の版傷による印刷不良の起こらない印刷用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決したものであって、パルプを5カットフラットスクリーンで処理し、スクリーン残渣に含まれる固形物の個数を針先でカウントし、その個数により該パルプを原料として使用する印刷用紙のオフセット印刷における版傷による印刷不良の発生を予測するパルプの評価方法。及び、印刷用紙を離解したパルプを5カットフラットスクリーンで処理し、スクリーン残渣に含まれる固形物の個数を針先でカウントし、その個数が5個/絶乾パルプ1kg以下であれば、該印刷用紙をオフセット印刷した際に版傷による印刷不良の発生は許容範囲内であると判断する印刷用紙の評価方法。ならびに、印刷用紙を離解したパルプを5カットフラットスクリーンで処理し、スクリーン残渣に含まれる固形物の個数を針先でカウントし、その個数が5個/絶乾パルプ1kg以下である印刷用紙。である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オフセット印刷における版傷による印刷不良の発生を予測する方法を提供することができる。更には、オフセット印刷の版傷による印刷不良の起こらない印刷用紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1〜4、比較例1,2、参考例1,2の印刷用紙のパルプ配合、異物除去装置の条件、及び、固形物数と版傷の評価結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、印刷用紙に含まれる異物とオフセット印刷における版傷の関係について鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0011】
紙の異物混入原因としては、パルプの原料となる古紙やチップや原木に混入している場合と、チップや原木や古紙をパルプ化する工程や抄紙工程で、これらに含有する成分や添加した薬品の成分がスケール化して混入する場合がある。
【0012】
製紙業においては資源の有効利用という観点から、古紙が主要な原料となっており、比較的分別の悪い古紙も使用するようになっているので、古紙中の異物除去は重要課題となっている。古紙に混入している異物としては、ビニール、プラスチックなどがあるが、土壌中の砂なども混入していることがある。同様に化学パルプや機械パルプも原料のチップや原木に、山林から持ち込まれる土壌異物が混入していることがある。
【0013】
一方、紙・パルプ製造工程中で配管や装置等の製造設備に付着・堆積する汚れ(スケール)は、パルプに含まれるピッチ成分、ロジンサイズ、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸等のサイズ剤、デンプン、カチオン化デンプン、変性ポリアクリルアミド等の紙力増強剤、填料からのクレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バンド、古紙に含まれる印刷インキ、ホットメルト等の粘着性有機成分、その他用水に含まれるカルシウム、バリウム、鉄等の無機成分、さらにバクテリア、黴等によるスライム等からなる複雑な組成を有している。
【0014】
製紙産業では、昨今、中性紙が、安価な炭酸カルシウムを填料として使用でき、白色度、不透明度の高い紙が得られること、製造された紙の保存性が良いこと、等の利点から、その生産が増加している。このような炭酸カルシウムを填料とする中性紙が古紙として回収される割合が増えるに伴い、古紙脱墨工程ではこの炭酸カルシウムの一部が工程水中に溶出し、工程水の循環再利用を積極的に行っていることもあって、工程水中のカルシウム濃度は従来に比べ増加の傾向にある。この工程水中カルシウムイオンは、脱墨助剤や過酸化水素漂白助剤として使用されるケイ酸ソーダに由来するケイ酸イオンと結合して、ケイ酸カルシウムスケールとなる。また、古紙脱墨工程における古紙処理は、中性古紙だけでなく、酸性古紙も同時に処理されるため、酸性紙に使われているサイズ剤や染料のパルプ繊維への定着や、歩留まり、濾水向上を目的として加えられる硫酸バンドが工程水中に溶出し、これがpH上昇によって水酸化アルミニウムとなって析出し、結晶成長する過程で前記ケイ酸イオンと結合して、ケイ酸アルミニウムスケールを生成したりする。
【0015】
一方、抄紙工程でも、例えば中性紙は填料として炭酸カルシウムを用いていることから、炭酸カルシウムの一部が工程水中に溶出し、工程水中のケイ酸イオンと結合してケイ酸カルシウムスケールを生成したり、またサイズ定着向上やピッチコントロールを目的として硫酸バンドを使用している場合には、この硫酸バンドがpH上昇によって水酸化アルミニウムとなる過程でケイ酸イオンと結合してケイ酸アルミニウムスケールを生成したりする。
【0016】
このように工程水中、用水中の炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムの濃度が高くなった結果、これらが単独でスケールとなることがあるが、ほとんどは複合化してスケールとして成長する。さらに、硫酸バンドに由来して生成した水酸化アルミニウムが、強い凝集作用を有することからスケール成分を凝集し、スケール化を促進すると考えられる。昨今の古紙配合率の増加や工程水の循環再利用の推進などにより、スケールの問題はさらに大きくなっている。この対策として、ラインの洗浄頻度を上げることが好ましいが、操業停止を伴うラインの洗浄は、生産性の低下をもたらす。また、スケール防止剤の使用も考えられるが、すべてのスケール成分に対処できるものではない。
【0017】
本発明では、オフセット印刷の版傷の原因となる固形物の測定を以下の手順で行う。
1)パルプを絶乾500g採取する。(紙から採取する場合は、JISP8220に規定される標準離解機にて紙を離解してパルプを得る。)
2)試験用フラットスクリーンを用い、5カットプレート板(スリット幅0.13mm)を使って、スクリーン残渣を黒色の濾紙上に採取する。
3)濾紙上に採取したスクリーン残渣を、光学顕微鏡を使用して倍率10倍に拡大し、視認できる異物を針先(有柄針)で押さえ、固形物の個数を数える。このとき針先で押さえて、弾力性や粘着性のある異物や砕ける異物は、数えないことにする。
4)絶乾パルプ1kgあたりの固形物個数を算出する。
前述した手順について、さらに詳しく説明する。
粒子径の大きい固形物ほど印刷時ブランケットにとられ、PS版に至りやすく、またPS版を傷付けやすいので、版傷の原因になりやすいと考えられる。そこで、版傷の原因となる固形物の粒子径の下限を特定すること、及び粒子径の大小による版傷への影響(重み付け)を考慮することが必要と考えられる。しかしながら精選工程を経たパルプに含まれる固形物を上記方法で測定すると、最大のものでもスリット幅の2倍程度であり、それ以上のものは見られないため、粒子径の分布は狭いことがわかった。よって、粒子径による版傷への影響(重み付け)を敢えて行なわなくても、固形物粒子径の下限を特定しその数をカウントすることで版傷への影響を判断できることがわかった。
ここで、5カットプレート板(スリット幅0.13mm)を用いたのは、これよりスリット巾の小さいプレート板を用いて粒子径の小さい固形物を捕捉しても、このような粒子径の小さい固形物は版傷に影響しないことを後述する実験で確認しているためである。5カットプレート板よりスリット幅が大きいと固形物の捕捉が不十分となり、版傷の原因となる固形物をカウントできない。
針先で押さえて、弾力性や粘着性のある異物や砕ける異物を数えてない理由は、弾力性や粘着性のある異物は、たとえPS版に到達しても版を傷つける虞がなく、また砕ける異物は以後の工程で機械的な力が働いたときに容易に粉砕するためである。
【0018】
パルプの原料となるチップに固形異物が混入している場合、チップの洗浄を強化することが好ましいが、クラフトパルプの原料となるチップは、洗浄を行うと水分が高くなり、蒸解性が悪くなるのでチップの洗浄には制約がある。
従来から、パルプに混入している固形異物を除去するため、スクリーン、クリーナーなどの異物除去装置が使用されている。しかしながら、このような異物除去装置は、各パルプの製造工程や、パルプを配合した後の抄紙機の前工程など、複数設置されており、各装置の運転条件(スクリーン・クリーナーのリジェクト率、クリーナー本数など)をどのようにすれば、版傷の対策として有効であるかの判断が困難であった。リジェクト率とは、工程で不良部分として除去される固形分重量の、工程に入る固形分重量に対する割合である。単に異物除去装置のリジェクト率を上げることは、これらの装置の処理能力を低下させる要因となり、本来使用可能なパルプを流失してしまい、パルプの歩留まりを悪化させることになる。
【0019】
そこで、本発明の評価方法を用いることにより、各工程の異物除去装置の最適な運転条件を設定することができる。例えば、異物除去装置前後や抄紙機のインレットでパルプをサンプリングして、本発明の評価方法により、固形物数を測定し、各工程で許容される固形物の数を設定することにより、スクリーン、クリーナーなどの異物除去装置の最適な運転条件を設定することができる。
【0020】
本発明の測定方法によれば、印刷用紙を印刷機にかけた時の版傷による印刷不良の発生を予測できるので、印刷機での版傷トラブルを回避できる。また、印刷用紙の生産の各工程で本発明の測定方法を適用することにより、版傷の原因となる異物の発生原因特定に活用することができる。さらにまた、オフセット印刷時に版傷の発生しない印刷用紙を提供することができる。
【0021】
本発明の印刷用紙の抄造に用いられる抄紙機は、両面脱水方式であるギャップフォーマー、オントップフォーマーなどが望ましいが、これに限定されない。また、抄紙pHは酸性、中性の何れでもよい。
【0022】
本発明の印刷用紙に使用するパルプとしては、通常の印刷用紙と同様のパルプ原料を使用することができ、特に限定されるものではない。例えば、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプなどのクラフトパルプ(KP)、グランドウッドパルプ(GP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)などの機械パルプ、脱墨パルプ(DIP)などが使用できる。
【0023】
また、本発明の印刷用紙に配合する填料としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、ホワイトカーボン、二酸化チタン、尿素ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂などの一般に使用されている填料が使用できる。
【0024】
さらに、必要に応じて、けん化ロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水琥珀酸などの内添サイズ剤、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カチオン化澱粉などの紙力増強剤や、濾水性向上剤、歩留り向上剤、染料、pH調整剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤などを含有してもよい。
【0025】
更に、表面処理剤として、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース化合物、カゼイン、合成たんぱく、大豆たんぱく等のたんぱく類、また、合成物であるポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどの接着剤を塗布してもよい。版傷の原因となる固形物が版にとられるのを防止するため、表面処理剤に含まれる接着剤の塗布量を多くしたり、接着力の強い接着剤を使用するのが好ましい。
また、これに加えてスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ラテックス類を使用することもできる。また、スチレンマレイン酸系共重合体、スチレンアクリル酸系共重合体、オレフィンマレイン酸系共重合体などのアニオン性高分子化合物、スチレン系ポリマーなどのカチオン性高分子化合物などの表面サイズ剤、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン等の顔料を塗布してもよい。
【0026】
塗布装置としては、特に限定されないが、ツーロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーターなどのロールコーターや、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーターなどの装置が使用される。
【0027】
本発明の印刷用紙の製造に際しては、表面処理剤の塗布後に、カレンダー装置により平滑化処理するのが望ましい。かかるカレンダー装置としては、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー、シューカレンダーなどの一般に使用されているカレンダー装置が使用できる。
【0028】
このようにして、本発明の印刷用紙は、固形物を5個/絶乾パルプ1kg以下とされており、本発明の印刷用紙は、版傷トラブルが少ないものとなる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を示す。なお、以下断りのない限り部及び%は固形分または有効成分で表したものである。
【0030】
(実施例1)
パルプとして、脱墨古紙パルプ(カナダ標準濾水度150ml)90重量%、サーモメカニカルパルプ(カナダ標準濾水度90ml)10重量%の配合割合で混合し、パルプ100重量部に対し、填料としてホワイトカーボン1重量部、硫酸バンド0.4重量部、ロジンエマルジョンサイズ剤1重量部を添加して抄紙し、ゲートロールコーターにて、酸化澱粉を両面合計で0.7g/m塗布して印刷用紙を製造した。
サーモメカニカルパルプの製造工程では、クリーナー(1次〜4次:カスケード式で処理)で除塵しており、4次クリーナーのリジェクトを系外へ排出し、クリーナーのリジェクト率は1.3重量%としている。
また、抄紙機前工程において、配合されたパルプは、種箱から1次ファンポンプを経て、クリーナー(1次〜3次:カスケード式で処理)で除塵、脱気後、2次ファンポンプを経て、スクリーン(1次〜4次:カスケード式で処理)で除塵され、インレットから抄紙機のワイヤーパートに供給され、抄紙されている。3次クリーナーのリジェクトと4次スクリーンのリジェクトを系外へ排出し、クリーナーのリジェクト率は0.4重量%としている。
得られた印刷用紙の固形物数とオフセット印刷時の版傷の評価結果を図1に示した。
【0031】
(実施例2)
パルプの配合割合を、脱墨古紙パルプ80重量%、サーモメカニカルパルプ20重量%とした以外は実施例1と同様に印刷用紙を製造した。この印刷用紙の固形物数とオフセット印刷時の版傷の評価結果を図1に示した。
【0032】
(実施例3)
パルプの配合割合を、脱墨古紙パルプ70重量%、サーモメカニカルパルプ30重量%とした以外は実施例1と同様に印刷用紙を製造した。この印刷用紙の固形物数とオフセット印刷時の版傷の評価結果を図1に示した。
【0033】
(実施例4)
サーモメカニカルパルプの製造工程で、4次クリーナーを使用せず、3次クリーナーのリジェクトを系外へ排出し、クリーナーのリジェクト率は1.8重量%とした以外は実施例3と同様に印刷用紙を製造した。この印刷用紙の固形物数とオフセット印刷時の版傷の評価結果を図1に示した。
【0034】
(比較例1)
パルプの配合割合を、脱墨古紙パルプ60重量%、サーモメカニカルパルプ40重量%、とした以外は実施例1と同様に印刷用紙を製造した。この印刷用紙の固形物数とオフセット印刷時の版傷の評価結果を図1に示した。
(参考例1)
比較例1の印刷用紙の固形物数の評価を、4カットプレート板(スリット幅0.10mm)を使って行い、その評価結果と版傷の評価結果を図1に示した。
【0035】
(比較例2)
パルプの配合割合を、脱墨古紙パルプ60重量%、サーモメカニカルパルプ40重量%としたことと、抄紙機前工程において、4次クリーナーを追加し、4次クリーナーリジェクトを系外排出(リジェクト率 0.3重量%)したこと以外は実施例1と同様に印刷用紙を製造した。この印刷用紙の固形物数とオフセット印刷時の版傷の評価結果を図1に示した。
(参考例2)
比較例2の印刷用紙の固形物数の評価を、4カットプレート板(スリット幅0.10mm)を使って行い、その評価結果と版傷の評価結果を図1に示した。
【0036】
実施例、比較例、参考例における各評価は以下のとおりに行った。
(固形物数の評価)
JISP8220に規定されたパルプ離解方法により、印刷用紙を離解し、絶乾500gのパルプを採取し、試験用フラットスクリーンを用いて、5カットプレート板(スリット幅0.15mm)を使って、スクリーン残渣を黒色の濾紙上に採取する。濾紙上に採取したスクリーン残渣を、光学顕微鏡(倍率10倍)を使用して視認できる異物を針先(有柄針)で押さえ、固形物のみの個数をカウントする。(針先で押さえて、弾力性や粘着性のある異物や砕ける異物はカウントしない)そして、絶乾パルプ1kgあたりの固形物数を求めた。同一試料を2回測定し、平均値を固形物数とした。
(版傷の評価)
印刷用紙をオフセット枚葉機にかけ、2万枚印刷した後、PS版の傷により不要な画線を印刷したものを版傷と判断し、その個数を評価した。
【0037】
図1に示した結果において、固形物数と版傷の評価を対比してわかるように、本発明の固形物の測定方法は、印刷用紙の版傷の評価方法として有効であることがわかる。また、固形物の個数が5個/絶乾パルプ1kg以下とした印刷用紙は版傷が抑制されていることがわかる。ここで、比較例と参考例の結果から、5カットプレート板を用いても、4カットプレート板を用いても版傷の個数に影響がないことがわかる。









【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを5カットフラットスクリーンで処理し、スクリーン残渣に含まれる固形物の個数を針先でカウントし、その個数により該パルプを原料として使用する印刷用紙のオフセット印刷における版傷による印刷不良の発生を予測するパルプの評価方法。
【請求項2】
印刷用紙を離解したパルプを5カットフラットスクリーンで処理し、スクリーン残渣に含まれる固形物の個数を針先でカウントし、その個数が5個/絶乾パルプ1kg以下であれば、該印刷用紙をオフセット印刷した際に版傷による印刷不良の発生は許容範囲内であると判断する印刷用紙の評価方法。
【請求項3】
印刷用紙を離解したパルプを5カットフラットスクリーンで処理し、スクリーン残渣に含まれる固形物の個数を針先でカウントし、その個数が5個/絶乾パルプ1kg以下である印刷用紙。
























【図1】
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