説明

パワーアナライザ装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は複数チャネルの入力被測定信号により電力を測定するだけなく、それら被測定信号に含まれている基本波および高調波成分を解析し、その基本波および高調波を測定、表示可能とするパワーアナライザ装置に係り、更に詳しくは各入力被測定信号の1サイクル(周期)分を所定数に分割し、この分割に応じた所定数のディジタルデータを取り込む際、PLL(Phase LockedLoop)同期方式により各A/D変換のサンプリング信号を入力被測定信号のうちの最適な入力被測定信号に同期させ、各入力被測定信号の1サイクルのディジタルデータを正確に取り込むようにするパワーアナライザ装置に関するものである。
【0002】
【従来例】近年、半導体電力変換装置(例えばインバータ装置)が多くの機器に利用されるに伴い、より多くの測定データを簡単に、かつ迅速にデータ処理し、その電力系を計測する電力計が提案されるようになった。このような電力計としては、例えば図4に示す構成をしたものがある。
【0003】同図において、電圧/電流入力アナログ回路1は、3ch(チャネル)分の被測定信号(被測定電圧(V1,V2,V3)、電流(A1,A2,A3))を入力し、それら3chの被測定電圧、電流を検出し、かつそれら電圧、電流をアナログ演算して電力を算出し、これら電圧、電流および電力のアナログ信号を出力する。
【0004】電圧/電流アナログ回路1からのアナログ信号をマルチプレクサ2で切り替え、この切り替えたアナログ信号をA/Dコンバータ3でディジタル変換してRAM/ROM(メモリ)4に書き込むが、そのメモリ4に書き込まれているプログラムにしたがってCPU5がそのデータの取り込む処理を行なうことになる。
【0005】CPU5のバスライン6にはそのメモリ4、I/Oポート7、表示部8およびキーボード9等が接続されており、そのCPU5はI/Oポート7を介してマルチプレクサ2を切り替え、そのディジタルデータをメモリ4に書き込み、それらディジタルデータに基づいて電力、皮相電力、無効電力および力率等を演算し、これら演算結果等を表示処理し、また取り込んだデータおよび演算したデータに基づいて測定値に時間係数を掛け加算積算して積算量を算出し、その積算量を表示処理する。
【0006】表示部8はそのCPU5の表示処理にしたがって被測定信号の測定結果、電圧、電流、電力、皮相電力、無効電力および力率を表示する。
【0007】上記構成の電力計においては、電圧/電流入力アナログ回路1にそれぞれ交流ゼロフラックス法動作原理を採用し、かつPTおよびクランプCTを採用していることから、10Hz乃至20kHzに渡る広い周波数範囲で良好な特性を確保し、正確な電圧、電流、電力等の測定が可能になっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記半導体電力装置、例えばインバータ装置のように、パルス状の電圧波形でモータを駆動する場合、その電流には高調波成分が含まれ、この高調波成分が雑音や振動の原因となっている。このような、高調波による機器の障害が問題視され、特に家電機器等の場合その高調波成分よる雑音や振動が問題になることから、半導体電力装置の電力系の測定だけなく、その高調波成分の測定が必要になっている。
【0009】しかしながら、上記電力計にあっては、基本波および高調波を含んだ被測定信号に基づいて電圧、電流、電力の測定が可能であるが、その高調波成分を直接測定することができなかった。そのために、半導体電力装置の電力系を計測する場合、電力計とその高調波成分を測定する高価な高調波解析装置(例えばFFTアナライザ)の2つの測定装置を用意する必要があるだけなく、そのFFTアナライザの操作は複雑であり、高調波成分の測定が面倒であるので、電力だけなく、高調波成分も測定できる装置が要望されている。
【0010】また、上記FFTアナライザ等の高調波解析装置には、例えば入力が2チャネル(被電圧および電流用)であり、これらチャネルの入力被測定信号のアナログ信号をA/D変換し、これら変換したディジタルデータを取り込む際、そのA/D変換のサンプリング信号の同期合わせとしてはPLL同期方式を採用しているものがある。このPLL同期方式にあっては、PLL同期が2チャネルのうち1チャネルの入力被測定信号に固定されており、例えばその固定チャネルの入力被測定信号の波形が歪、あるいはそのレベルが低いと、データを確実に取り込むことができず、測定精度が悪くなる。
【0011】この場合、2チャネルの入力の結線を替えてやればよいが、入力がパワーラインであるため、扱いが面倒であり、かつ不便であった。
【0012】この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は各チャネルの入力被測定信号により電圧、電流、電力だけでなく、それら入力被測定信号に含まれている基本波および所定次数の高調波を測定することができ、かつそれら測定のために各チャネルの入力被測定信号をそれぞれA/D変換してディジタルデータを取り込む際、PLL同期方式によりそれらA/D変換のタイミング同期をとり、しかも複数の入力被測定信号のうち最適な入力被測定信号に容易に同期を合わせることができるようにしたパワーアナライザ装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明は、複数チャネルの入力被測定信号をA/D変換し、これらディジタルに変換したデータを記憶するとともに、これらディジタルデータに基づいて入力被測定信号により電圧、電流、電力を算出し、かつFFT演算により入力被測定信号に含まれている基本波および所定次数の高調波を算出するパワーアナライザ装置等に、少なくとも複数チャネルの入力被測定信号(被測定電圧、電流)をそれぞれ入力可能なレベルのアナログ信号に変換する複数の入力処理部と、これら入力処理部にて得たアナログ信号を所定周波数のサンプリング信号でそれぞれディジタルに変換し、前記入力被測定信号の1サイクルのディジタルデータをそれぞれ得るA/D変換部と、これらA/D変換部にて得たディジタルデータをそれぞれ記憶する記憶部と、これらA/D変換部の所定周波数のサンプリング信号、および上記記憶部の書き込みタイミング信号を出力し、かつ少なくともそのサンプリング信号を上記入力被測定信号に同期して出力するストレージ制御部と、上記複数の入力処理部にて得たアナログ信号のうち1つを選択する切替部と、この切替部の切り替え指示を出す切替指示手段と、上記切替部で選択したアナログ信号を波形整形し、矩形波信号とする波形整形部と、この波形整形部にて得た矩形波信号をソースとし、その矩形波信号と上記A/D変換部のサンプリング周波数を整数分の1とした信号との位相差を検出し、この差に応じて上記ストレージ制御部に出力するサンプリング信号の周波数を可変し、上記A/D変換部のサンプリング信号を上記選択した入力被測定信号の1つに同期させるPLL部とを備えたことを要旨とする。
【0014】
【作用】上記構成としたので、各チャネルの入力被測定信号のアナログ信号をそれぞれA/D変換し、これら変換したディジタルデータを取り込む際、上記切替部にて各入力被測定信号を入力可能なレベルとしたアナログ信号のうちの1つが選択されており、この選択されたアナログ信号が上記PLL部のソースにされ、このPLL部にてそれらA/D変換のサンプンリング同期がとられる。
【0015】このPLL同期方式においては、例えばそのPLL部のソースとしている入力被測定信号の波形が歪、あるいはそのレベルが低いと、各A/D変換の同期が外れ、A/D変換したディジタルデータを正確に取り込めなくなるが、この場合当該装置のパネル操作を行なうことにより、上記切替部が駆動され、アナログ信号が切り替えられ、つまり上記PLL部のソースが切り替えられる。
【0016】このようにして、上記切替部にて所望のアナログ信号が選択されることから、各チャネルの入力被測定信号であるパワーラインの結線を替えるという面倒な操作が必要とぜす、波形に歪のない、あるいは最適レベルの入力被測定信号をPLL同期のソースにすることができ、各入力被測定信号のディジタルデータを正確に取り込むことができる。
【0017】
【実施例】以下、この発明の実施例を図1乃至図3に基づいて説明する。図1において、このパワーアナライザ装置は、複数の入力被測定信号(被測定電圧、電流)を入力可能なレベルに変換する3チャネル(被測定電圧(V1乃至V3)、電流(A1乃至A3)の入力ユニット10乃至12と、これら入力ユニット10乃至12を介した被測定信号(被測定電圧,電流)のアナログ信号に含まれている基本波および高調波等をそれぞれ通す所定遮断周波数可変可能で、折り返し歪防止用のフィルタ部13乃至18と、これらフィルタ部13乃至18を通ったアナログ信号を所定周波数のサンプリング信号でそれぞれディジタル変換するA/D変換部19乃至24と、これらA/D変換部19乃至24で変換したディジタルデータを記憶するメモリ(記憶部)25乃至30と、上記入力ユニット10乃至12を介したアナログ信号を切り替える第1の切替部31と、この第1の切替部31で切り替えられたアナログ信号を波形整形して矩形波信号とするフィルタ波形整形部32と、上記フィルタ部13乃至18の遮断周波数を可変制御する信号、A/D変換部19乃至24の所定周波数のサンプリング信号およびメモリ25乃至30の書き込み信号を出力し、かつそのサンプリング信号を入力被測定信号に同期し、例えばその周波数を入力被測定信号の周波数の整数倍(例えば512倍)とするストレージ制御部33と、上記フィルタ波形整形部32からの矩形波信号をソースとし、その矩形波信号と上記A/D変換部19乃至24のサンプリング周波数を整数(例えば512)分の1とした信号との位相差を検出し、この位相差に応じて内部VCOの電圧を可変し、所定周波数の信号をストレージ制御部33に出力し、そのA/D変換部19乃至24のサンプリング信号を上記切替部31で切り替えたアナログ信号に同期させ、かつそのサンプリング信号の周波数の安定化を図るためのPLL(Phase Locked Loop)部34とを備えている。
【0018】また、このパワーアナライザ装置は、上記フィルタ波形整形部32で得た矩形波信号により、入力被測定信号の周波数を測定する周波数測定部35と、固定の所定周波数信号を出力する発振部36と、この発振部36からの周波数信号とPLL部34からの周波数信号とを切り替えてストレージ制御部33に出力する第2の切替部37とを備えている。したがって、その第2の切替部37の切り替えにより、A/D変換のサンプリングモード、つまりストレージモードはPLL同期方式、固定同期方式の2種類が可能になっている。
【0019】さらに、このパワーアナライザ装置は、上記メモリ25乃至30に取り込んだディジタルデータに基づいて入力被測定信号による電圧、電流、電力等を算出するだけなく、その入力被測定信号に含まれている基本波および所定次数の高調波をFFT(高速フーリェ変換)演算で算出する。
【0020】そのため、図2に示すように、このパワーアナライザ装置は、当該装置の全体を制御する中央処理装置のCPU38を備え、このCPU38のバスライン39に上記メモリ25乃至30、ストレージ制御部33、PLL部34、周波数測定部35および発振部36の他に、メモリ部25乃至30に書き込まれているディジタルデータに基づいて電圧、電流、電力を高速演算し、かつFFT演算により入力被測定信号に含まれている基本波および所定次数(例えば49次まで)の高調波を高速演算するDPS(ディジタルシグナルプロセッサ)40と、当該装置の制御プログラムおよびその演算プログラム等を記憶しているEPROM部41と、それら演算結果等のデータ(数値データ)を記憶するRAM部(SRAM,DRAM)42と、このRAM部42の書き込み、読み出しを制御するDMA(ダイレクト メモリ アクセス)コントローラ部43と、上記演算結果による数値データ、および波形データを書き込み、読み出し可能なVRAM(ビデオ・ラム)部44と、このVRAM部44のデータを書き込み、読み出し、表示制御するCRTコントローラ部45と、その数値や波形等をプリントアウトするプリンタ部46等を接続するためのパラレルインターフェイス47と、それら数値や波形等のデータをフロッピィ等に記憶するフロッピィディスクドライブ部48を制御するFDC(フロッピィディスク コントローラ)49と、その数値や波形等のデータを外部に出力し、他の装置からのデータを入力するためのGP−IBインターフェイス50および非同期コミュニケーションズインターフェイス51とを接続している。
【0021】さらにまた、このパワーアナライザ装置は上記CRTコントローラ部45にて表示処理した数値あるいは波形を表示する表示部(例えば液晶表示装置)52と、図示しないが当該装置の測定操作スイッチ等とによるパネルを備えており、そのパネル操作に応じた信号がインターフェイス、バスライン36を介してCPU38に入力する。
【0022】ここに、3チャネルの入力ユニット10乃至12はそれぞれ2つの入力部10a,10b、11a,11b,12a,12bを備え、各チャネルの入力部に被測定信号の電圧および電流が印加することから、単相乃至3相の電力測定が可能である。そして、複数の被測定信号がそれぞれ各入力ユニット部10乃至12に入力され、例えばインバータ装置の電力測定操作が行われると、CPU38にてその電力測定に必要な制御が行われ、例えば周波数測定部35の測定周波数に基づいてA/D変換のサンプリング、メモリ25の書き込み制御が行われる。
【0023】すると、ストレージ制御部33にてA/D変換部19乃至24のサンプリング信号が出力され、メモリ25乃至30の書き込み信号が出力され、一方入力被測定信号がそれぞれ上記A/D変換部19乃至24の入力可能レベルにレベル変換される。これにより、フィルタ13乃至18を介したアナログ信号が各A/D変換部19乃至24でディジタルデータに変換され、各メモリ25乃至30に記憶される。
【0024】このとき、各A/D変換部19乃至24が同時に動作することから、それぞれディジタル変換されたディジタルデータが各メモリ25乃至30に同時に記憶される。また、ストレージモードが固定同期方式でなく、PLL同期方式が採られる場合、第2の切替部37がPLL部34側に切り替えられることから、入力被測定信号のうち、第1の切替部31で選択されている1つの入力被測定信号(被測定電圧(V1,V2,V3)あるいは電流(A1,A2,A3))のアナログ信号がPLL部34のソースにされる。
【0025】既に説明したように、そのアナログ信号がフィルタ波形整形部32に矩形波信号に波形整形され、この矩形波信号がPLL部34に入力されることから、そのPL部34にてその上記A/D変換部19乃至24の所定周波数のサンプリング信号とその選択された被測定信号の同期が合わせられる。この場合、少なくともその選択被測定信号の数サイクル間にはその同期がかかり、それぞれ入力被測定信号のゼロクロス点をA/D変換のスタート点とし、入力被測定信号の1サイクルを正確に捉えることができる。
【0026】また、FFT演算により被測定信号に含まれている高調波のうち、2次乃至49次の高調波を正確に算出するために、その入力被測定信号の1サイクルを512に分割し、この512ポイントのデータを得ている。この場合、上記PLL同期方式により、その1サイクル分が正確に捉えられることから、その512ポイントのディジタルデータを確実に取り込むことができる。
【0027】一方、各メモリ25乃至30にそれぞれ記憶されたデータ、つまり取り込まれた512ポイントのディジタルデータに基づいて、各チャネルの入力被測定信号による電圧、電流、電力が従来の電力計と同様に算出され、かつFFT演算により各チャネルの被測定信号(被測定電圧、電流)に含まれている基本波および所定次数(例えば49次まで)の高調波がリアルタイムで算出される。
【0028】例えば図3に示すように、チャネル1の入力被測定信号(V1,A1)に含まれている基本波および高調波の算出値表示操作が行われている場合、表示部52にはその基本波および2次から49次までの高調波の算出値がリアルタイムで表示される。
【0029】図3において、“k”欄の“1”にはチャネル1の入力被測定信号による基本波(1次)の算出値(電圧、電流)が表示され、かつ“2”乃至“49”にはその被測定信号に含まれている2次乃至49次の高調波の算出値が表示される。また、例えば第1の切替部31が入力部10a側に切り替えられている場合、その表示部52の画面には上記PLL部34のソースとなっている被測定信号の入力部を表す“PLL(V1)”が表示される(図の矢印Aに示す)。
【0030】ここで、上記被測定信号(被測定電圧(V1))の歪が大きすぎ、あるいはそのレベルが低すぎると、フィルタ波形整形部32にてチャネル1の入力被測定信号のアナログ信号を波形整形したときに、正常な矩形波信号が得られないこともある。すると、上記PLL部34の動作が正常範囲から外れ、つまり同期ずれが生じ、入力被測定信号の1サイクルが512に分割されなくなる。この結果、その1サイクルで512ポイントのディジタルデータが得られず、正確な測定、特に入力被測定信号に含まれている高調波が正確に算出されなくなってしまう。
【0031】この場合、当該装置のパネル操作により、上記表示“PLL(V1)”を例えば“PLL(V2)”に切り替えると、CPU38にて切替部31が切り替えられるため、チャネル2の被測定電圧(V2)を選択することができる。このように、各チャネルの入力被測定信号であるパワーラインの結線を替えるという面倒な操作を必要とせず、例えばパネルの表示部52に表示されている測定結果を参照し、S/N比の良好な入力被測定信号を選択し、つまり波形の歪が大きすぎない、あるいはそのレベルが低すぎない入力被測定信号を選択すれば、最適な入力被測定信号をPLL部34のソースにすることができる。
【0032】これにより、PLL部34によるPLL同期が最適な入力被測定信号に合わせられることから、上記各入力被測定信号の1サイクルで512ポイントのディジタルデータを取り込むことができるようになる。
【0033】このように、S/N比の良好な入力被測定信号を簡単な操作で選択することができることから、A/D変換部19乃至24のサンプリング同期が合わせられ、各入力被測定信号の1サイクルを所定数(512)に正確に分割し、この所定数のポイントでのディジタルデータを確実に取り込むことができ、これらディジタルデータに基づいて、電力の算出およびFFT演算による高調波の算出に際し、所定次数まで(2次乃至49次)の高調波を正確に算出することができ、ひいては測定精度の向上を図ることができる。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、複数チャネルの入力被測定信号を入力可能なレベルのアナログ信号に変換し、これらアナログ信号を所定周波数のサンプリング信号でA/D変換してディジタルデータとし、これらディジタルデータを記憶し、これら取り込んだディジタルデータに基づいて、入力被測定信号による電圧、電流、電力を算出するとともに、FFT演算により入力被測定信号に含まれている基本波および所定次数の高調波を算出し、かつそれら算出値を表示し、波形表示可能とするパワーアナライザ装置に、入力可能なレベル変換したアナログ信号を切り替える切替部と、この切り替えたアナログ信号を波形整形して矩形波信号とする波形整形部と、この矩形波信号と上記A/D変換のサンプリング周波数を整数(例えば512)分の1とした信号との位相差を検出し、この位相差に応じてA/D変換のサンプリング周波数を制御し、そのサンプリング信号を入力被測定信号に同期させるPLL部とを備え、PLL同期方式により、各A/D変換の同期を合わせる際、上記切替部にて各チャネルの入力被測定信号のうち、最適な入力被測定信号のアナログ信号を選択し、この選択したアナログ信号に同期してA/D変換のサンプリング信号を得るようにしたので、各チャネルに入力するパワーランの結線を替えるという面倒な操作なしに、波形歪が大きすぎない、あるいはレベルが低すぎない最適な入力被測定信号、つまりS/N比の良好な入力被測定信号を選択することができ、またこの最適な入力被測定信号に各A/D変換のサンプリング信号の同期をかけることができることから、そのA/D変換に際し、各被測定信号の1サイクルを確実に捉え、かつその1サイクルを所定数に正確に分割し、この所定数のポイントでのディジタルデータを取り込むことができ、ひいはて測定精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示すパワーアナライザ装置の概略的部分ブロック図
【図2】この発明の一実施例を示すパワーアナライザ装置の概略的部分ブロック図
【図3】図1および図2に示すパワーアナライザ装置の概略的表示画面図
【図4】従来の電力計の概略的ブロック図
【符号の説明】
10乃至12 入力ユニット
19乃至24 A/D変換部
25乃至30 メモリ(記憶部)
31 第1の切替部
32 フィルタ波形整形部
33 ストレージ制御部
34 PLL部
35 周波数測定部
38 CPU(中央処理制御手段)
40 DPS(ディジタルシグナルプロセンサ)
45 CRTコントローラ
52 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも複数チャネルの入力被測定信号(被測定電圧、電流)をそれぞれ入力可能なレベルのアナログ信号に変換する複数の入力処理部と、これら入力処理部にて得たアナログ信号を所定周波数のサンプリング信号でそれぞれディジタルに変換し、前記入力被測定信号の1サイクルのディジタルデータをそれぞれ得るA/D変換部と、これらA/D変換部にて得たディジタルデータをそれぞれ記憶する記憶部と、これらA/D変換部の所定周波数のサンプリング信号、および前記記憶部の書き込みタイミング信号を出力し、かつ少なくともそのサンプリング信号を前記入力被測定信号に同期して出力するストレージ制御部と、前記複数の入力処理部にて得たアナログ信号のうち1つを選択する切替部と、この切替部の切り替え指示を出す切替指示手段と、前記切替部で選択したアナログ信号を波形整形し、矩形波信号とする波形整形部と、この波形整形部にて得た矩形波信号をソースとし、その矩形波信号と前記A/D変換部のサンプリング周波数を整数分の1とした信号との位相差を検出し、この差に応じて前記ストレージ制御部に出力するサンプリング信号の周波数を可変し、前記A/D変換部のサンプリング信号を前記選択した入力被測定信号の1つに同期させるPLL部とを備え、前記切替指示手段にて前記複数チャネルの入力被測定信号のうち所定の入力被測定信号を選択可能とし、この選択した入力被測定信号を前記PLL部のソースとし、前記PLL部にて前記A/D変換のサンプリング同期をとり、前記記憶部に記憶したディジタルデータに基づいて、電圧、電流、電力をそれぞれ演算し、かつFFT演算により入力被測定信号を高調波解析するとともに、その入力被測定信号の基本波および所定高調波を算出するようにしたことを特徴とするパワーアナライザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3016043号(P3016043)
【登録日】平成11年12月24日(1999.12.24)
【発行日】平成12年3月6日(2000.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−141223
【出願日】平成3年5月17日(1991.5.17)
【公開番号】特開平4−340476
【公開日】平成4年11月26日(1992.11.26)
【審査請求日】平成10年5月15日(1998.5.15)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【参考文献】
【文献】特開 平1−242971(JP,A)
【文献】特開 昭60−85373(JP,A)
【文献】特開 昭61−172448(JP,A)
【文献】特開 平1−293787(JP,A)