説明

パワーコンディショナ

【課題】電力系統からDCリンク部に電力を供給する際の突入電流を少なくできるパワーコンディショナを提供する。
【解決手段】太陽光パネル1の発電電力を昇圧するコンバータ4と、コンバータ4で昇圧された電力を系統電源2に連系可能な交流電力に変換するインバータ5とを有し、これらがDCリンク部6を介して接続されるパワーコンディショナにおいて、インバータ5を介することなく系統電源2からDCリンク部6に電力供給を可能にする系統電力供給手段10を備える。そして、系統電力供給手段10を通じてDCリンク部6に電力供給を開始する場合、あらかじめコンバータ4を動作させて、DCリンク部6の電圧を少なくともDCリンク部に供給される電力系統の電圧と同等以上に昇圧させておく制御構成を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパワーコンディショナに関し、より詳細には、インバータのDCリンク部に対して発電部側および電力系統側の双方から電力供給ができるように構成されているパワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光パネルなどの発電部で発電された直流電力を商用電源などの電力系統に連系させるためのインバータ装置としてパワーコンディショナが提案されている。
【0003】
図3は、このようなパワーコンディショナの一例を示している。この図に示すパワーコンディショナは、太陽光パネルを発電部として用いた発電システムのパワーコンディショナを示しており、太陽光パネルaが接続されるコンバータbと、このコンバータbで昇圧した直流電力を系統電源(電力系統)dに連系可能な周波数の交流電力に変換するインバータcとを主要部として備えており、これらがDCリンクコンデンサ(DCリンク部)eを介して接続されている。
【0004】
そして、この図3に示すパワーコンディショナは、パワーコンディショナ各部の制御を行う制御用のマイコンfに常時電力を供給できるようにするために、マイコンfの駆動電源(絶縁電源)gが上記DCリンク部eから電力供給を受けるように構成している。
【0005】
具体的には、この図3に示すパワーコンディショナでは、太陽光パネルaが発電しているときには、コンバータbを介して太陽光パネルaで発電された電力がDCリンク部eに与えられ、また、夜間など太陽光パネルaが発電していないときや日照が少なく太陽光パネルaが十分な発電を行えていないときには、系統電源dからDCリンク部eに電力を供給するライン上に設けた開閉器hを閉成させて、系統電源dから供給される交流電力(AC200V)を整流器iで整流して直流電力に変換してDCリンク部eに与えている(なお、このようにDCリンク部から電源に電力を供給する構成は、たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−49053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構成のパワーコンディショナにおいては以下のような問題があり、その改善が望まれていた。
【0008】
すなわち、この種のパワーコンディショナにおいてDCリンク部eに用いられるコンデンサには容量の大きな電解コンデンサが使用されることから、上述したように、開閉器hを閉成させて系統電源dからの電力をDCリンク部eに供給する構成では、DCリンク部eの電圧が低い状態で開閉器hが閉成されると(系統電源dから電力の供給を開始すると)DCリンク部eに大きな突入電流が流れてしまう。そのため、従来、このような構成を採用するパワーコンディショナにおいては、大きな突入電流にも耐えられる高価な電子部品を採用しなければならず、部品コストの上昇を招くという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、電力系統からDCリンク部に電力を供給する際の突入電流を少なくできるパワーコンディショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載のパワーコンディショナは、発電部で発電された直流電力を昇圧するコンバータと、上記コンバータで昇圧された直流電力を電力系統に連系可能な交流電力に変換するインバータとを有し、これらがDCリンク部を介して接続されるパワーコンディショナにおいて、上記インバータを介することなく上記電力系統から上記DCリンク部への電力供給を可能にする系統電力供給手段を備えており、この系統電力供給手段を通じて上記DCリンク部に電力供給を開始する場合には、あらかじめ上記コンバータを動作させて、上記DCリンク部の電圧を少なくとも上記DCリンク部に供給される上記電力系統の電圧と同等以上に昇圧させる制御構成を有することを特徴とする。
【0011】
すなわち、この請求項1に係るパワーコンディショナでは、系統電力供給手段によってDCリンク部に電力系統からの電力供給を開始する際には、それに先立ってあらかじめコンバータを動作させてDCリンク部の電圧を電力系統の電圧と同等以上に昇圧させるようにしている。そのため、このパワーコンディショナによれば、DCリンク部に電力系統からの電力供給を開始するときには、DCリンク部と電力系統の電位差が小さく(または、DCリンク部の電圧が電力系統の電圧より大きく)なっているので、電力系統からの電力供給を開始しても、DCリンク部に電力系統側から大きな突入電流が流れることが回避される。
【0012】
なお、ここで電力系統の電圧と同等とは、好ましくは、電力系統の電圧値と同じ電圧値を意味するが、電力系統からDCリンク部に電力供給を開始したときに大きな突入電流が流れない範囲であれば電力系統の電圧値よりも低い電圧値、たとえば、電力系統の電圧値の近傍値となるような場合も含む意味である。
【0013】
本発明の請求項2に記載のパワーコンディショナは、請求項1に記載のパワーコンディショナにおいて、上記系統電力供給手段による上記DCリンク部への電力供給に先立って行うコンバータの動作は、同コンバータの動作前における上記DCリンク部の電圧が上記コンバータの昇圧能力に応じて設定される所定の閾値電圧以上であることを条件に行われ、上記コンバータの動作前における上記DCリンク部の電圧が上記所定の閾値電圧未満である場合には、上記系統電力供給手段による上記DCリンク部への電力供給は行わないことを特徴とする。
【0014】
すなわち、本発明のパワーコンディショナは、上述したように、DCリンク部に電力系統からの電力を供給する際に、あらかじめコンバータを動作させてDCリンク部の電圧を昇圧して電力系統の電圧との電位差を小さく(または、DCリンク部の電圧を電力系統の電圧より大きく)するものであることから、この請求項2に係るパワーコンディショナでは、コンバータ動作前のDCリンク部の電圧が低すぎて(所定の閾値電圧未満であって)コンバータを動作させてもDCリンク部の電圧を電力系統の電圧と同等値以上に昇圧できないと予測される場合には、この状態でコンバータを動作させてもその後に電力系統からの電力供給を開始すると大きな突入電流が流れるので、その場合には、コンバータを動作させることなく、電力系統からのDCリンク部への電力供給自体を行わないようにしている。
【0015】
本発明の請求項3に記載のパワーコンディショナは、請求項1または2に記載のパワーコンディショナにおいて、上記発電部の出力電圧が、パワーコンディショナによる系統連系動作の開始条件として設定される連系動作許容電圧を超える場合には、上記系統電力供給手段による上記DCリンク部への電力供給は行わないことを特徴とする。
【0016】
すなわち、この請求項3に係るパワーコンディショナでは、発電部の出力電圧がパワーコンディショナの系統連系動作の開始条件として設定さている所定の電圧値(連系動作許容電圧)を超える場合には系統電力供給手段によるDCリンク部への電力供給を行わないようになっているので、たとえば、電力系統からDCリンク部に電力を供給している状態で発電部が系統に連系可能な電力を発電できるようになったような場合には、電力系統からDCリンク部への電力供給を停止させる。つまり、この場合、パワーコンディショナが系統連系動作を開始することにより、DCリンク部にはコンバータで昇圧された電力が供給されることとなる。
【0017】
本発明の請求項4に記載のパワーコンディショナは、請求項1から3のいずれかに記載のパワーコンディショナにおいて、上記コンバータは、非絶縁型のDC−DCコンバータで構成されていることを特徴とする。
【0018】
すなわち、この請求項4に記載のパワーコンディショナでは、コンバータが非絶縁型のDC−DCコンバータで構成されるので、コンバータが動作していなくても発電部で発電された電力が上記DCリンク部に供給されるようになる。そのため、たとえば、上述したコンバータの動作前におけるDCリンク部の電圧が上記所定の閾値電圧未満であって系統電力供給手段によるDCリンク部への電力供給が行われない場合であっても、DCリンク部には発電部で発電された電力が供給される。
【0019】
本発明の請求項5に記載のパワーコンディショナは、請求項1から4のいずれかに記載のパワーコンディショナにおいて、上記DCリンク部に、パワーコンディショナの制御用マイコンの駆動電源が接続されていることを特徴とする。
【0020】
すなわち、この請求項5に係るパワーコンディショナでは、パワーコンディショナの制御用マイコンの駆動電源がDCリンク部から電力の供給を受けるようになっているので、同駆動電源は、DCリンク部を介して発電部および電力系統の双方から電力供給を受けられるようになっており、パワーコンディショナが系統連系動作を行っている場合はもちろん、系統連系動作を行っていない場合でもDCリンク部から電力供給を受けることができ、パワーコンディショナが系統連系動作を行っていない場合においてもマイコンによる機器の監視などを継続することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、コンバータとインバータとがDCリンク部を介して接続されているパワーコンディショナにおいて、上記インバータを介することなく電力系統からDCリンク部に電力供給を行えるようにする系統電力供給手段が備えられ、この系統電力供給手段を通じてDCリンク部に電力供給を開始する際には、あらかじめ上記コンバータを動作させてDCリンク部の電圧を電力系統の電圧と同等値以上に昇圧させるようになっているので、系統電力供給手段によってDCリンク部に電力系統からの電力を供給する際に大きな突入電流が流れることが防止される。そのため、パワーコンディショナの部品として大きな突入電流に耐えられる電子部品を採用しなくてもよく、部品コストの上昇を回避することができ、安価なパワーコンディショナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るパワーコンディショナを用いた発電システムの概略構成を示す回路構成図である。
【図2】同パワーコンディショナにおけるDCリンク部への電力供給の手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】従来のパワーコンディショナを用いた発電システムの概略構成を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明に係るパワーコンディショナを用いた発電システムの一例を図1に示す。この図1に示す発電システムは、発電部として太陽光パネル1を備えた発電システムであって、太陽光パネル1で発電される直流電力を系統電源(電力系統)2に連系させるためのインバータ装置としてパワーコンディショナ3を備えている。
【0024】
太陽光パネル1は、光電現象によって発電を行う複数の発電素子(太陽電池)をパネル状にユニット化してなる周知の形態の発電装置であって、この太陽光パネル1には発電した直流電力の出力手段として正極用および負極用の2本の電装ケーブル20a,20bが配設されており、これら2本の電装ケーブル20a,20bがパワーコンディショナ3において発電電力を入力する入力端子(図示せず)に接続されている。
【0025】
なお、図示例では、太陽光パネル1が1枚で構成される場合を示したが、発電部として用いる太陽光パネル1は1枚に限られず複数の太陽光パネル1を用いてもよい。ただし、その場合、太陽光パネル1とパワーコンディショナ3との間には複数の太陽光パネル1から出力される直流電力を2本の電装ケーブルに集約するための接続箱が設けられ、この接続箱に配設される正極用および負極用の2本の電装ケーブルがパワーコンディショナ3の上記入力端子(図示せず)に接続される。
【0026】
系統電源2は、商用電源などの交流電源で構成される。本実施形態では、この系統電源2として単相3線式のAC200Vの交流電源が用いられている。なお、この系統電源2は、図示しない配電盤などを介してパワーコンディショナ3および家庭内の電力負荷(図示せず)に接続される。
【0027】
パワーコンディショナ3は、上述したように、太陽光パネル1で発電された直流電力を系統電源2に連系させるためのインバータ装置であって、このパワーコンディショナ3には、太陽光パネル1で発電された直流電力を昇圧するためのコンバータ4と、このコンバータ4で昇圧された直流電力を系統電源2に連系可能な交流電力に変換するためのインバータ5と、これらコンバータ4とインバータ5を接続するDCリンク部6と、上記インバータ5で変換された交流電力を系統電源2に連系させるための系統連系リレー7と、パワーコンディショナ3の各部を制御するマイコン(制御用マイコン)8と、このマイコン8の駆動電源9とを主要部として備えるとともに、本実施形態のパワーコンディショナ3では、これらに加えて、インバータ5を介さずに系統電源2側から上記DCリンク部6に電力を供給できるようにするための系統電力供給手段10が備えられており、日中など太陽光パネル1が発電しており後述する系統連系動作を行っているときなどには太陽光パネル1側から、また、夜間など太陽光パネル1が発電しておらず系統連系動作を行っていないときなどには系統電源2側から、それぞれDCリンク部6へ電力供給を行うように構成されている(詳細は後述する)。
【0028】
上記コンバータ4はDC−DCコンバータで構成されており、本実施形態では、このコンバータ4として非絶縁型の昇圧チョッパ方式のDC−DCコンバータが用いられている。このコンバータ4の入力側は上記太陽光パネル1の発電電力の入力端子(図示せず)と接続されており、太陽光パネル1で発電された直流電力が入力されるようになっている。また、コンバータ4の出力側はDCリンク部6を介して上記インバータ5と接続されている。ここで、DCリンク部6は、コンバータ4とインバータ5を接続する電装ライン間にDCリンクコンデンサとなる電解コンデンサ21を接続することによって構成されている。
【0029】
上記インバータ5はDC−ACインバータで構成されており、その出力側には上記系統連系リレー7が接続されており、この系統連系リレー7を介してインバータ5の出力側がパワーコンディショナ3の端子台11と接続されている。なお、系統連系リレー7は、後述するマイコン8によってその接点の開閉が制御可能とされている。
【0030】
上記端子台11は、図示しない配電盤を介して系統電源2と接続される端子台であって、本実施形態では上記系統電源2に単相3線式の電源が用いられていることから、この端子台11には、系統電源2のU相、V相およびN相(接地された中性線)を接続するための3つの端子(図示せず)が設けられており、上記インバータ5の出力(つまり、系統連系リレー7の出力)は、この端子台11のU相およびV相の端子と接続されている。
【0031】
上記マイコン8は、パワーコンディショナ3の各部を制御する制御手段を構成するものであって、このマイコン8には、後述する各種制御を行うための制御プログラムや制御用のデータなどが記憶されている。また、このマイコン8には、特に図示しないが各種センサ類が接続されており、これらのセンサ類からの情報に基づいて、マイコン8は太陽光発電パネル1の発電状況(出力電圧)や系統電源2から供給される電力(購入電力)、さらには、屋内の電力負荷で消費される電力(消費電力)などの発電システムに関する各種情報を取得できるように構成されている。
【0032】
駆動電源9は、上記マイコン8に供給する電力を生成するための電源装置である。この駆動電源9は、上記DCリンク部6を構成する電解コンデンサ21の両端に接続され、DCリンク部6から電力供給を受けてマイコン8に供給する電力を生成するように構成されている。つまり、この駆動電源9は、DCリンク部6の電圧をマイコン8に供給可能な電圧に変換するDC−DCコンバータで構成されている。なお、駆動電源9は、DCリンク部6とマイコン8とを絶縁状態で接続する絶縁型の電源装置で構成されている。
【0033】
上記系統電力供給手段10は、インバータ5を介さずに系統電源2からDCリンク部6に電力を供給するために設けられた給電経路であって、具体的には、上記端子台11とDCリンク部6とを接続する電装線12と、この電装線12に設けられる夜間給電リレー(開閉器)13と整流器14とを主要部とする電装部品とで構成されている。
【0034】
より詳細には、上記電装線12は2本の電装線12a,12bで構成されており、これら2本の電装線12a,12bを用いて上記端子台11からAC100Vの電力を取り出すように配線されている。すなわち、電装線12のうちの一方の電装線12aの一端が上記端子台11のU相またはV相(図示例ではV相)に接続されるとともに、他方の電装線12bの一端が上記端子台11のN相に接続され、系統電源2から端子台11に供給されるAC200VからAC100Vを取り出して、DCリンク部6に供給する電力として利用できるようにされている。
【0035】
そして、上記電装線12aの他端はDCリンク部6を構成する電解コンデンサ21の正極に、上記電装線12bの他端は上記電解コンデンサ21の負極にそれぞれ接続されている。
【0036】
上記夜間給電リレー13は、太陽光パネル1が発電を行わない夜間などに、系統電源2の電力をDCリンク部6に供給させるための開閉器であって、この夜間給電リレー13の接点も上記系統連系リレー7の接点と同様に上記マイコン8によって開閉制御ができるようになっている。
【0037】
上記整流器14は、夜間給電リレー13を介して系統電源2から供給されるAC100Vの交流電力を直流電力に変換してDCリンク部6に供給するための整流器であって、本実施形態では、この整流器14としてダイオードブリッジ回路(全波整流回路)が用いられている。なお、このほかにも上記電装線12には、過電流を防止するためのヒューズ15やPTCサーミスタ(または抵抗器)16などの電子部品が配設されている。
【0038】
次に、このように構成されたパワーコンディショナ3の動作について説明する。
本実施形態に示すパワーコンディショナ3は、太陽光パネル1で発電された直流電力をコンバータ4で昇圧してインバータ5に供給し、インバータ5で系統電源2に連系可能な交流電力に変換して系統連系リレー7を介して系統電源2に連系させるように構成されているが、このようなパワーコンディショナ3による系統連系動作(コンバータ4およびインバータ5を動作させて系統連系リレー7を閉成させる動作)は、太陽光パネル1からパワーコンディショナ3に入力される電圧(つまり、太陽光パネル1の出力電圧)Vinがパワーコンディショナ3において上記系統連系動作を開始する条件としてあらかじめ設定された所定の連系動作許容電圧Vonを超える場合(Von<Vinとなる場合)に行われるようになっている。
【0039】
ここで、この連系動作許容電圧Vonは、パワーコンディショナ3において、コンバータ4およびインバータ5を動作させることによって系統電源2に連系可能な交流電力(本実施形態ではAC200Vの交流電力)を生成することができるパワーコンディショナ3への入力電圧の下限電圧(または、下限電圧近傍の電圧)に設定される。
【0040】
この連系動作許容電圧Vonとして上記下限電圧を採用するのは、この連系動作許容電圧Vonは太陽光パネル1の発電量に対するパワーコンディショナ3の動作開始のタイミングを決定するものとして機能するからである。つまり、この連系動作許容電圧Vonが上記下限電圧よりも高く設定されるとその分だけ系統連系動作の開始が遅れて太陽光パネル1で発電された電力が無駄になってしまう。そのため、この連系動作許容電圧Vonは、コンバータ4における入力電圧を昇圧する能力(昇圧能力)との関係で可及的に低い値に設定される。換言すれば、この連系動作許容電圧Vonは、コンバータ4の昇圧能力に基づいて、インバータ5が系統電源2に連系可能な交流電力を生成するのに必要とする直流電圧をコンバータ4が供給できる範囲で可及的に低く設定される。なお、本実施形態では、この連系動作許容電圧Vonは70Vに設定されている。
【0041】
これに対し、太陽光パネル1の出力電圧Vinが上記連系動作許容電圧Von以下の場合(Vin≦Vonの場合)、パワーコンディショナ3は上述した系統連系動作は行わないが、本実施形態のパワーコンディショナ3では、このように系統連系動作を行わない場合(つまり、コンバータ4およびインバータ5が停止し系統連系リレー7が開成している場合)であっても、所定の条件を満たすことを前提として、夜間給電リレー13を閉成させて系統電源2からDCリンク部6に対して電力供給を行うように構成されている。
【0042】
ここで、パワーコンディショナ3が系統連系動作を行っていない状態であってもDCリンク部6に系統電源2側から電力の供給を行うようにしているのは、本実施形態のパワーコンディショナ3は、マイコン8の駆動電源9がDCリンク部6から電力供給を受けるようになっているからである。つまり、本実施形態のパワーコンディショナ3では、系統連系動作を行っていない場合でもDCリンク部6に電力を供給することによって、マイコン8は常に(系統連系動作を行っていなくても)発電システムの監視を行えるようになっている。
【0043】
そして、本実施形態のパワーコンディショナ3における上記所定の条件は、コンバータ4が動作停止状態にあるときのDCリンク部6の電圧Vdcが所定の閾値電圧Vth以上であること(Vth≦Vdcであること)とされている。
【0044】
すなわち、このパワーコンディショナ3においては、太陽光パネル1の出力電圧Vinが連系動作許容電圧Von以下となって系統連系動作を行わないときであっても、DCリンク部6の電圧Vdcが上記閾値電圧Vth以上であれば、マイコン8は、夜間給電リレー13を閉成させて、系統電源2からDCリンク部6に対して電力供給を開始させるように構成されている。
【0045】
ところで、上記所定の条件を満たすことを前提に、直ちに夜間給電リレー13を閉成させる構成を採用すると、DCリンク部6の電圧Vdcが系統電源2から供給される電力の電圧(本実施形態では、夜間給電リレー13に供給されるAC100V)よりも低いことに起因して、DCリンク部6に大きな突入電流が流れるおそれがある。
【0046】
そのため、本実施形態のパワーコンディショナ3では、上記所定の条件を満たした場合であっても、マイコン8は直ちに夜間給電リレー13を閉成せずに、夜間給電リレー13を閉成させる前に、DCリンク部6の電圧VdcをDCリンク部6に供給される系統電力2の電圧(本実施形態では、DCリンク部6には系統電力2のAC200VうちのAC100Vが供給される構成を採用しているので、DCリンク部6に供給される系統電力2の電圧はAC100Vとなる)と同等以上に昇圧させるようにして、DCリンク部6に大きな突入電流が流れるのを防止している。
【0047】
具体的には、太陽光パネル1の出力電圧Vinが上記連系動作許容電圧Von以下となる場合であっても、夜間など日照が殆どない場合を除いて、太陽光パネル1は出力電圧は小さいながらも発電を行っているので、この太陽光パネル1で発電される電力をコンバータ4で昇圧してDCリンク部6に供給して、DCリンク部6の電圧をDCリンク部6に供給される系統電力2の電圧(AC100V)と同等以上に昇圧するようにしている。
【0048】
そのため、本実施形態のパワーコンディショナ3では、上記閾値電圧Vthは、コンバータ4の昇圧能力に応じて設定される。つまり、コンバータ4に入力される電圧(太陽光パネル1の出力電圧Vin)をコンバータ4での昇圧によってDCリンク部6に供給される系統電力2の電圧(AC100V)と同等以上にまで昇圧できる値に上記閾値電圧Vthは設定されている。なお、この閾値電圧Vthは、上記連系動作許容電圧Vonとの関係では、Vth<Vonの関係が成立するものであり、本実施形態では、この閾値電圧Vthは40Vに設定されている。
【0049】
したがって、たとえば、コンバータ4の昇圧能力が7倍である場合、コンバータ4にDC40Vが入力されるとコンバータ4の出力電圧はその7倍のDC280Vにまで昇圧され、このDC280Vの電力がDCリンク部6に供給される。したがって、この場合、DCリンク部6に供給される系統電源2の電圧はAC100V(ピーク値:約141V)であるのに対して、コンバータ4からはDC280Vの電力が供給されることとなるので、この状態で夜間給電リレー13を閉成しても系統電源2側からDCリンク部6に突入電流は流れず、DCリンク部6への突入電流が防止される。
【0050】
なお、このコンバータ4で昇圧した電力のDCリンク部6への供給は、マイコン8によって夜間給電リレー13が閉じられた後、すなわち、DCリンク部6に系統電源2からの電力供給が開始可能とされた後に解除される。すなわち、夜間給電リレー13の閉成によってDCリンク部6には系統電源2からの電力が供給可能とされるので、この電力供給が発生した後はコンバータ4の動作を停止させるようにしている。
【0051】
図2は、これらパワーコンディショナ3における一連の動作(マイコン8の処理)を示したフローチャートである。以下、この図2を参照しながら、上述した手順を整理して説明する。
【0052】
パワーコンディショナ3のマイコン8は駆動電源9から電力の供給を受けてその動作を開始すると、まず、DCリンク部6の電圧Vdcと閾値電圧Vthとを比較して、DCリンク部6の電圧Vdcが閾値電圧Vth未満(Vdc<Vth)であるか否かを判断する(図2ステップS1参照)。
【0053】
そして、この判断が肯定的な場合、マイコン8は、上記コンバータ4は動作させずに、太陽光パネル1の出力電圧VinをそのままDCリンク部6に供給する(図2ステップS2参照)。すなわち、本実施形態では、上記コンバータ4として非絶縁型の昇圧チョッパ方式のDC−DCコンバータが用いられているので、コンバータ4を動作させていなくても太陽光パネル1の出力電圧VinはDCリンク部6に供給される。
【0054】
ここで、この図2ステップS1の判断が肯定的である場合、太陽光パネル1の出力電圧Vinは上記連系動作許容電圧Von以下となるので、パワーコンディショナ3の系統連系動作は行わない。また、この状態のとき、マイコン8は上記夜間給電リレー13を開成状態に維持する。すなわち、この状態では上述したようにコンバータ4を動作させてもDCリンク部6の電圧Vdcを所望の電圧(夜間給電リレー13を閉成した時の突入電流を防止できる程度の電圧)にまで昇圧できない場合があるので、このような場合には夜間給電リレー13は開成状態を維持するようにしている。つまり、DCリンク部6の電圧Vdcが上記閾値電圧Vth未満の場合には、マイコン8は夜間給電リレー13を閉成しないように構成されている。
【0055】
なお、本実施形態のパワーコンディショナ3では、後述するように、太陽光パネル1の発電出力が低下したときは系統電源2からDCリンク部6に電力供給を行うようになっているので、この図2ステップS1の判断が肯定的になる場合は限られており、たとえば、パワーコンディショナ3への電力供給開始当時(施工時)や、夜間など太陽光パネル1が発電していないときに系統電源2が停電した場合などにこの図2ステップS2の処理が行われる。
【0056】
これに対して、図2ステップS1の判断が否定的である場合、マイコン8は、次に、太陽光パネル1の出力電圧Vinが上記連系動作許容電圧Von以下(Vin≦Von)であるかを判断する(図2ステップS3参照)。換言すれば、この図2ステップS3において、マイコン8は、DCリンク部6の電圧Vdcが上記閾値電圧Vth以上(Vth≦Vdc)であり、かつ、太陽光パネル1の出力電圧Vinが上記連系動作許容電圧Von以下(Vin≦Von)となっているかを判断する。
【0057】
そして、この判断が肯定的であれば、マイコン8は、まず、コンバータ4を動作させて、太陽光パネル1の出力電圧Vinを昇圧してDCリンク部6に供給し、DCリンク部6の電圧VdcをDCリンク部6に供給される系統電力2の電圧(AC100V)と同等以上にまで昇圧させる。そして、DCリンク部6の昇圧が完了すると、次に、夜間給電リレー13を閉成させ、端子台11を介して系統電源2から供給される電力(AC100V)を整流器14を介してDCリンク部6に供給し、その後にコンバータ4の動作を停止させる(図2ステップS4参照)。
【0058】
なお、このときも太陽光パネル1の出力電圧Vinは上記連系動作許容電圧Von以下であるので、パワーコンディショナ3の系統連系動作は行わない。つまり、DCリンク部6の電圧を昇圧させるとき以外はコンバータ4は停止状態とされ、また、インバータ5も停止状態、系統連系リレー7は開成状態が維持される。
【0059】
そして、上記図2ステップS3の判断が否定的である場合、図2ステップS5に示すように、DCリンク部6の電圧Vdcは上記閾値電圧Vthよりも高く(Vth<Vdc)、かつ、太陽光パネル1の出力電圧Vinは上記連系動作許容電圧Vonより高い(Von<Vin)ことになる。
【0060】
ここで、図2ステップS5に示すように、太陽光パネル1の出力電圧Vinが上記連系動作許容電圧Vonより高い場合には、上述したように、パワーコンディショナ3が系統連系動作を行える状態にあるので、この場合、マイコン8は、パワーコンディショナ3に系統連系動作を行わせる。つまり、マイコン8は、夜間給電リレー18を開成させるとともに(系統電力供給手段10によるDCリンク部6への電力供給は行わずに)、上記コンバータ4およびインバータ5を動作状態として、系統連系リレー7を閉成状態にする。したがって、この場合、DCリンク部6には、太陽光パネル1で発電され、コンバータ4で昇圧された電力が供給される(図2ステップS6参照)。
【0061】
そして、パワーコンディショナ3が系統連系動作中にある場合、マイコン8は、太陽光パネル1の出力電圧Vinが上記連系動作許容電圧Von以下(Vin≦Von)になっていないか、換言すれば、日照の低下などによって太陽光パネル1の発電量が低下していないかを常時または一定周期で定期的に判断し(図2ステップS7参照)、この判断が肯定的であれば、系統連系動作を停止(つまり、コンバータ4およびインバータ5の動作を停止し、系統連系リレー7を開成)させるとともに、夜間給電リレー13を閉成させて、DCリンク部6に対して系統電源2側からの電力供給を開始する。
【0062】
なお、この図2ステップS8の処理で夜間給電リレー13を閉成させる場合、その直前までDCリンク部6には太陽光パネル1で発電された電力が供給されており、その状態ではDCリンク部6の電圧Vdcは系統電源2から供給される電圧よりも高いので、夜間給電リレー13を閉成させてもDCリンク部6に突入電流が流れるおそれはない。
【0063】
このように、本発明に係るパワーコンディショナ3では、DCリンク部6の電圧Vdcが所定の閾値電圧Vth以上(Vth≦Vdc)で、かつ、太陽光パネル1の出力電圧Vinがパワーコンディショナ3の連系動作許容電圧Von以下(Vin≦Von)であるなどの一定の条件を満たした場合において、上記系統電力供給手段10を通じてDCリンク部6に電力供給を開始する場合には、あらかじめコンバータ4を動作させて、DCリンク部6の電圧を少なくとも上記DCリンク部6に供給される電力系統2の電圧と同等以上に昇圧させることとしているので、この状態で夜間給電リレー13を閉成させてもDCリンク部6に電力系統2側から大きな突入電流が流れることがない。
【0064】
そのため、本発明に係るパワーコンディショナ3によれば、パワーコンディショナ3の部品として大きな突入電流に耐えられる高価な電子部品を採用しなくてもよく、部品コストの上昇を回避して、安価なパワーコンディショナを提供することができる。具体的には、系統電力供給手段10のヒューズ15やPTCサーミスタ16、夜間給電リレー13として電流容量の小さい安価な部品を採用でき、これらのコストを抑制することができる。
【0065】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0066】
たとえば、上述した実施形態では、系統電力供給手段10の電装線12a,12bは、端子台11からAC100Vの電力を取り出すように配線した場合を示したが、これは夜間給電リレー13を閉成させたときのDCリンク部6への突入電流を軽減するために、端子台11から取り出す電圧を低くしたものであるから、上記閾値電圧Vthの設定などによってDCリンク部への突入電流を十分に抑制できるのであれば、電装線12a,12bを端子台11のU相およびV相に接続し、系統電源2からAC200Vの電力を取り出すように構成することもできる。
【0067】
また、上述した実施形態では、上記閾値電圧Vthが40V、上記連系動作許容電圧Vonが70Vである場合を示した、これらの値は系統電源2の電圧やコンバータ4の昇圧能力などによって決定されるものであることから、具体的な数値は適宜設定変更可能であることはもちろんである。
【0068】
また、上述した実施形態では、駆動電源9からマイコン8が電力供給を受ける場合を示したが、たとえば、パワーコンディショナ3とは別体に構成されるパワーコンディショナ3のリモコン(図示せず)や、パワーコンディショナ3に装置される表示装置(図示せず)など、マイコン8以外の部位にも駆動電源9が電力を供給するように構成することができる。これにより、これらリモコンや表示装置についても系統連系動作が停止中に操作や表示が行えるようになる。
【0069】
また、上述した実施形態では、パワーコンディショナ3の制御において、DCリンク部6の電圧Vdcを上記閾値電圧Vthと比較する場合を示したが、本実施形態では、コンバータ4に非絶縁型の昇圧チョッパ方式を採用しているので、DCリンク部6の電圧Vdcに代えてパワーコンディショナ3への入力電圧、すなわち、太陽光パネル1の出力電圧Vinを用いることもできる。
【0070】
なお、上述した実施形態において、閾値電圧Vthや連系動作許容電圧Vonなどのあらかじめ設定された電圧と、太陽光パネル1の出力電圧Vinなどの測定された電圧との電圧比較を行う場合、ヒステリシス電圧や確定時間を設けるなど、制御ハンチングを防止するための措置をとることが望ましい。
【符号の説明】
【0071】
1 太陽光パネル(発電部)
2 系統電源(電力系統)
3 パワーコンディショナ
4 コンバータ
5 インバータ
6 DCリンク部
7 系統連系リレー
8 マイコン(制御用マイコン)
9 駆動電源
10 系統電力供給手段
11 端子台
12 電装線
13 夜間給電リレー(開閉器)
14 整流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電部で発電された直流電力を昇圧するコンバータと、前記コンバータで昇圧された直流電力を電力系統に連系可能な交流電力に変換するインバータとを有し、これらがDCリンク部を介して接続されるパワーコンディショナにおいて、
前記インバータを介することなく前記電力系統から前記DCリンク部への電力供給を可能にする系統電力供給手段を備えており、
この系統電力供給手段を通じて前記DCリンク部に電力供給を開始する場合には、あらかじめ前記コンバータを動作させて、前記DCリンク部の電圧を少なくとも前記DCリンク部に供給される電力系統の電圧と同等以上に昇圧させる制御構成を有することを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項2】
前記系統電力供給手段による前記DCリンク部への電力供給に先立って行うコンバータの動作は、同コンバータの動作前における前記DCリンク部の電圧が前記コンバータの昇圧能力に応じて設定される所定の閾値電圧以上であることを条件に行われ、前記コンバータの動作前における前記DCリンク部の電圧が前記所定の閾値電圧未満である場合には、前記系統電力供給手段による前記DCリンク部への電力供給は行わないことを特徴とする請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項3】
前記発電部の出力電圧が、パワーコンディショナによる系統連系動作の開始条件として設定される連系動作許容電圧を超える場合には、前記系統電力供給手段による前記DCリンク部への電力供給は行わないことを特徴とする請求項1または2に記載のパワーコンディショナ。
【請求項4】
前記コンバータは、非絶縁型のDC−DCコンバータで構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパワーコンディショナ。
【請求項5】
前記DCリンク部に、パワーコンディショナの制御用マイコンの駆動電源が接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のパワーコンディショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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