説明

パンクレアチンペレット及びその製造方法

【課題】添加剤、バインダ、補助物質又はいかなるその他の加工助剤も加えずに製造できる改良された特性を有するパンクレアチンペレット及びその改良された経済的な製造方法を提供する。
【解決手段】添加剤又はバインダを添加することによって生じるパンクレアチン2の薬理効果が損なわれることを避けるために、100%のパンクレアチン含有量を有し、3質量%未満、好ましくは1質量%未満又は0.5質量%未満の残留水分量を有するパンクレアチンペレット1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクレアチンペレット、特にパンクレアチンマイクロペレット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パンクレアチンとは、膵腺から抽出される本質的にリパーゼ、アミラーゼ及びプロテアーゼからなる酵素の混合物を定義するのに使用される用語である。パンクレアチンを製造するための主な出発物質は、ブタの新鮮な膵臓又は凍結膵臓であり、それから水分と脂肪だけがパンクレアチンを製造するために最初に取り除かれる。しかし、酵素の感受性を考慮して、できるだけ穏やかな方法でパンクレアチンを得ることを目的として種々の方法が開発されている。一つの適当な方法が、独国特許出願公開第32 48 588A1号明細書に記載されている。
【0003】
パンクレアチンは、特に膵機能不全による消化器疾患の治療用の有効成分として使用される。パンクレアチンは、主に乾燥状態で経口治療薬として用いられる。これに関連して、有効成分をペレット又はマイクロペレットの形態で投与すると、パンクレアチン投与の治療有効性を高めることができることが認められている。
【0004】
典型的には、パンクレアチンペレットの製造は、パンクレアチンに添加剤とバインダを加え、これらの成分を均質な(または略均質な)混合物が得られるまで混合することを含む。次いで、均質な混合物は、押出し機に導入され、そこで混合物はストランド様押出物に変形される。最後に、この押出物は、スフェロナイザー(spheronaizer)に、場合により別量の添加剤と共に導入され、そこで押出物は球状ペレットに変形される。次いで、このペレットは、乾燥され、篩い分けされて所定のサイズ範囲よりも大きい又は小さいペレットの篩い分け画分から選別される。それによって得られたペレットは、次いで腸溶性物質のコーティングで被覆することができる。
【0005】
製造時に、パンクレアチンは、沈殿し、溶媒で湿らされ、次いで通常は乾燥され、粉砕される。しかし、前記物質を、例えば造粒及び造球(spheronization)で成形するために数回以上湿らせ、乾燥することは、都合が悪い。これは、時間とエネルギーを要し、多くの場合、高感受性酵素が損傷することから品質の低下を招く。
【0006】
これまで、パンクレアチンペレットは、乾燥パンクレアチン粉末から湿式造粒によって製造されてきた。これに関連して、通常は、添加剤とバインダが、さらに必要とされる。パンクレアチンペレットの製造方法は、粉末パンクレアチンを溶媒混合物で湿らせ、それを押出し機で円筒状粗製ペレットに成形することからなる。次いで、押出物はまた、例えば1.5mm〜1.7mmの長さに切断されなければならない。乾燥後に、これら粗製ペレットは、湿潤パンクレアチン/コーティング混合物と共に造球され、次いで再度乾燥される。
【0007】
パンクレアチンマイクロペレットの別の製造方法は、例えば欧州特許出願公開第0 583 726A2号明細書に記載されている。この方法では、押出成形の前に、100質量部のパンクレアチンは、15〜50質量部のポリエチレングリコール4000と10〜30質量部のアルコールと混合される。アルコール、例えばプロパノールは、混合物に押出加工可能な稠度(extrudable consistency)を付与するために配合される。次いで、スフェロナイザー(spheronizer)に移す前に、押出加工によって得られた押出物に、1.5〜5質量部のパラフィンとさらに1.5〜10質量部のアルコールが加えられる。得られるペレットは、65質量%〜85質量%のパンクレアチン含有量を有し、従ってペレットは、添加剤とバインダを少なくとも15質量%含有する。
【0008】
しかし、押出加工に必要とされる添加剤とバインダは、望まれない悪影響を及ぼし得る。このため、添加剤とバインダを選択する場合には、絶えず警戒する必要がある。例として、これまでの鉱油を添加する常套手段は、もはや重要でないとみなすことができると認められている。
【0009】
このように、欧州特許第1 931 317B1号明細書は、パラフィンを添加せずにパンクレアチンペレットを製造する方法を提案している。この場合に得られるパンクレアチンペレットは、10〜95質量%のパンクレアチンを、少なくとも5質量%の添加剤及びバインダ、例えばポリエチレングリコールと共に含有する。
【0010】
しかし、どんな種類の添加剤に対しても、筋の通った理由で又は任意の理由で、異議が唱えられることが予想できる。従って、パンクレアチンを、一方では経口投与できる形態で、他方ではできる限り添加剤を含有していない形態で提供することが望ましいであろう。また、パンクレアチン濃度100%とは、投与されるべき体積が固定用量当たり最小であることを意味し、これは、患者が服用することをよりいっそう容易にする。
【0011】
米国特許出願公開第4 280 971A1号明細書は、パンクレアチン粉末と、酵素に優しい溶媒(enzyme−friendly solvent)とを含有する柔軟な塊(pliable mass)を、押出し機で必要に応じて冷却しながら押出し、押出物を複数の押出物断片に分け、乾燥し、次いでさらに公知の方法(例えば押出物断片にコーティングを施す方法)を用いることによって加工するパンクレアチンペレットの製造方法を開示している。しかし、この方法は、2つの乾燥工程を有し、ステアリン酸マグネシウムとパンクレアチンとイソプロパノールの混合物を製造し、これを複数の孔と切断装置を備えた押出し機で加工して所定の長さの押出物を製造するので、経済的ではない。この方法によって得られる粗製ペレットは、第一の工程で乾燥される。次に、この粗製ペレットは、ポリビニルピロリドンとパンクレアチンのイソプロパノール溶液を加えることによって球状ペレットに造球され、次いでさらに第二の乾燥工程で乾燥される。この方法では、最終製品は、少なからぬ量の溶媒が用いられることから比較的高い残留水分量を有すると推測されるが、この影響に対して何ら情報が提供されていない。また、製造されたペレットは、65質量%〜85質量%を超えるパンクレアチン含有量を有し、従って該ペレットは、添加剤とバインダを最大15質量%含有し得る、さらに、パンクレアチンは、最初にステアリン酸マグネシウムと混合される。さらに、この方法は、多工程法であり、従って複雑である。
【0012】
欧州特許出願公開第0 436 110A1号明細書は、球形パンクレアチン粒子の製造方法を開示している。この製造方法は、湿潤パンクレアチン塊を溶媒と一緒に第一の軸の周りを回転させ、同時に第二の軸の周りを回転するナイフの助けによりこのパンクレアチン塊の大きさを小さくし、その際にこの溶媒の一部を除去し、この第一の軸とこの第二の軸が相互にある角度をなし、このパンクレアチン塊が回転運動に供されるようにこの2つの軸が相互に直角に配置されていることを特徴とする球形パンクレアチン粒子の製造方法を開示している。全体的にいえば、既に開発され改良された(developed and improved)パンクレアチン塊(これは、未だ溶媒で湿らされている)のガレン製剤への変換が、開示されている。この溶媒は、アセトンである。開示されたパンクレアチン粒子の製造方法は、パンクレアチン塊をナイフの助けにより粉砕し、それによって溶媒の一部のみを除去することを提案している。
【0013】
米国特許第5 378 462号明細書は、腸溶性薄膜で被覆することができ、60質量%〜85質量%のパンクレアチン含有量を有するパンクレアチンマイクロペレットコアに関する。このペレットコアは、球状ないし楕円体状であり、長径または短径が0.7〜1.4mmの範囲内である。このペレットコアは、ペレットコアの少なくとも80%において短径:長径の比が1:1〜1:2の範囲内となる粒度分布を有する。これは、腸溶性薄膜で被覆された新規なパンクレアチンマイクロペレットであって、高い嵩密度を有し、首尾よい幽門の通過を保証する小さい粒径を有するパンクレアチンマイクロペレットを製造できる改良された方法をもたらすことを意図する。
【0014】
独国実用新案登録第20 2010 004 926U1号明細書は、パンクレアチンのみからなり、次の手順:すなわち、ブタ又はウシに由来する膵腺を先ず粉砕し、自己消化に供することによって得られるパンクレアチンペレットを開示している。このようにして得られる中間生成物を濾過することによって、スクリーン濾液が製造される。スクリーン濾液に含まれる酵素は、沈殿させる。このようにして得られる混合物は濾過され、得られた濾過ケーキは粉砕され0.1〜03質量%の残留水分量になるまで真空乾燥される。押出し可能な濾過ケーキ塊の残留水分量/有機溶媒残留物は約50%であることから、濾過ケーキは80℃又はそれ以下で加熱処理に供される。次いで、加熱処理ケーキは、押出加工され、次いで造球されて球形ペレット、楕円体ペレット又は液滴様ペレットとなる。この製造方法において、押出し機による濾過ケーキの加工は、濾過ケーキが剪断荷重下で高流動性を示すまで、濾過ケーキが擬似可塑性挙動(pseudoplastic behaviour)を示す限りにおいては困難を伴う。従ってもはや成形ができなくなり得る時点まで、さらに成形に関して困難に直面し、従って更なるバインダを使用しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】独国特許出願公開第3248588A1号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0583726A2号公報
【特許文献3】欧州特許第1931317B1号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第4280971A1号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第0436110A1号公報
【特許文献6】米国特許第5378462号公報
【特許文献7】独国実用新案登録第202010004926U1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、パンクレアチンの薬理効果を損なわず、パンクレアチンをできるだけ活性な形で保ち及びペレットの経口投与も容易にするようにペレットを、添加剤、バインダ、補助物質又はいかなるその他の加工助剤も加えずに製造できる改良された特性を有するパンクレアチンペレット及びその改良された経済的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
100%のパンクレアチン含有量を有し、酵素濃度に関して高いパンクレアチン品質を有し、かつできるだけ少ない残留水分量を有するペレットを製造するには、製造中に取り込まれている環境水分を除去するために、製造工程の最後に1回だけの乾燥操作を実施する製造方法で製造できると考えられる。
【0018】
また、本発明のパンクレアチンペレットを含有する医薬組成物、及びパンクレアチンペレットの使用が、提案される。
【0019】
本発明に係るパンクレアチンペレットおよびその製造方法によると、この課題を解決できる。本発明の適切な実施形態は、従属請求項の特徴から明らかになるであろう。
【0020】
本発明によれば、パンクレアチンのみ(又は、ほぼパンクレアチンのみ)から形成されるパンクレアチンペレットが提供される。従って、本発明のパンクレアチンペレットは、パンクレアチン100%からなり、添加剤又はバインダを含有していない。医薬配合量(pharmaceutical load)は、100%である。また、本発明は、コーティングを除き100%のパンクレアチン含有量を有するペレットコアを包含し、この場合にはコーティングも可能である。
【0021】
本発明のパンクレアチンペレットは特にマイクロペレットであるのが好ましい。本発明のパンクレアチンペレットは、好ましくは哺乳動物の膵臓から得られるパンクレアチンを含有し、球状、楕円体状又は液滴状であり、粒径が0.5〜2.5mmの範囲内であり、かつ、100%のパンクレアチン含有量を有するものであり、次の一連の工程:
a)ブタ又はウシに由来する膵腺を粉砕し、自己消化(自己分解;autolysis)を行う工程、
b)工程a)で得られた中間生成物を濾過することによって酵素を含有するスクリーン濾液(フィルタースクリーンで濾過された濾液;screen filtrate)を得る工程、
c)前記スクリーン濾液からこの前記酵素を沈殿させる工程、
d)工程c)で得られた混合物を濾過して濾過ケーキを得る工程、
e)工程d)で得られた濾過ケーキを−10℃〜−40℃、好ましくは−30℃に冷却して十分な可塑性を得る工程、
f)添加剤及び/又はバインダを加えず、工程e)で得られた冷却濾過ケーキを押出加工して30%〜50%好ましくは40%程度の残留水分および/又は有機溶媒残留物を含有する押出物を形成する工程、
g)添加剤、バインダ、およびその他の補助物質からなる群から選ばれる少なくとも一種を加えず前記押出物を造球し、球状、楕円体状又は液滴状のペレットを得る工程、
h)得られたペレットを、残留水分又は有機溶媒残留物が3質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満になるまで真空乾燥し、その結果としての残留水分及び/又は有機溶媒残留物が3質量%未満、好ましくは1質量%未満より好ましくは0.5質量%未満の乾燥パンクレアチン最終製品を得る工程、
により製造される。
【0022】
本発明のパンクレアチンペレットは、パンクレアチンの薬理効果が、添加剤又はバインダあるいはその両方の添加により損なわれないという利点を有する。
【0023】
本発明において使用する「ペレット」という用語は、球、楕円体又は液滴様の形状を有し、長径又は短径が0.5〜2.5mmの範囲内にある物体を意味する。
【0024】
本発明の方法に従って製造されるペレットは、100%のパンクレアチン含有量を有し、残留水分量3質量%未満、好ましくは1質量%未満より好ましくは0.5質量%未満という特有の性質を有する。押出加工は、ペレット化加工助剤を添加せずに行なわれる。
【0025】
工程d)で得られた濾過ケーキを冷却する工程e)は、特に有利である。冷却は、驚くべきことにこの構造体の粘度の向上をもたらし、濾過ケーキの塑性変形能を保持するので、本発明の製造方法における重要な工程である。この方法の工程f)における押出し機での濾過ケーキのさらなる加工は、困難である。なぜならば、未冷却濾過ケーキは、剪断加重下では高い流動性を有し、もはや可塑性でない。レオロジー学的に言うと、Casson流動特性を有する塑性流動及び部分的流動破壊(rheodestruction)を示すような構造粘度(structural viscosity)を有するからである。意外にも、この構造粘度は、−10℃〜−40℃、好ましくは−30℃に冷却することによって持続的に高められるので、剪断加重下でさえも所望の及び必要な塑性変形能が保持される。
【0026】
押出物切断装置を有するラジアル型押出し機は、円筒形押出物を製造するのに使用できる。この押出し機によると、回転ディスク(スフェロナイザー)を使用して造球することによってペレットに成形することができる。押出し/造球を用いるペレット製造が連続(半連続)製造法であることは、公知である。押出し工程は、連続的に実施することができるが、押出物の造球は、スフェロナイザーによりバッチ式で実施することができ、最大95%の医薬配合量(pharmaceutical load)をもたらす。これもまた、押出成形用のペレット化加工助剤の添加が不可欠であることを意味する。
【0027】
それに比べて、本発明の方法によると、押出し工程で、驚くべきことに100%の医薬配合量(pharmaceutical load)が得られる。ペレット化加工助剤は、使用しない。
【0028】
従属請求項の主題は、本発明のさらに有効な実施形態に関する。
【0029】
本発明の範囲は、パンクレアチンペレットがマイクロペレットであることを含む。
【0030】
パンクレアチンは、好ましくは、哺乳動物の膵臓から、好ましくはブタ又はウシの膵臓から得られている。ペレット製造は、パンクレアチンの取得方法に組み込まれる。押出し機を使用するペレット化に従来必要とされていたような可塑性塊を製造するための特定の加工助剤の添加は、必要としない。
【0031】
パンクレアチンからペレットを製造するための本発明の方法は、この方法の次の工程:
a)ブタ又はウシに由来する膵腺を粉砕し、自己消化を行う工程、
b)工程a)で得られた中間生成物を濾過することによって酵素を含有するスクリーン濾液を得る工程、
c)前記スクリーン濾液から前記酵素を沈殿させる工程、
d)工程c)の後に得られた混合物を濾過して濾過ケーキを得る工程、
e)工程d)で得られた前記濾過ケーキを−10℃〜−40℃、好ましくは−30℃に冷却して十分な可塑性を得る工程、
f)添加剤及び/又はバインダ加えず、工程e)で得られた冷却濾過ケーキを押出して、30%〜50%、好ましくは40%程度の残留水分量又は有機溶媒残留物を含有する押出物を形成する工程、
g)添加剤及び/又はバインダ又はその他の補助物質を加えず造球し、球状、楕円体状又は液滴状のペレットを得る工程、
h)得られたペレットを、残留水分量が3質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満になるまで減圧乾燥し、その結果として残留水分及び/又は有機溶媒残留物が3質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満の乾燥パンクレアチン最終製品を得る工程、
からなる。
【0032】
この方法の一連の工程に従って得られる濾過ケーキは、驚くべきことに、さらに添加剤及び/又はバインダを添加せずに直ちに押出し、造球することができる。その後に、得られたペレットは、乾燥される。濾過ケーキは、濾過ケーキを押出加工して押出物を形成するのに十分な可塑性を有する。押出加工後に、造球工程が、これも添加剤及び/又はバインダ又はいかなるその他の補助物質も添加せずに実施される。これにより、そのまま使用できるか又はコーティングを有するコアとして使用できる球状、楕円体状又は液滴状のペレットが製造される。次に、得られたペレットは、残留水分量が3質量%未満、好ましくは1質量%未満又は0.5質量%未満になるまで減圧乾燥(真空乾燥)される。このようにして得られた最終パンクレアチン製品は、3質量%未満、好ましくは1質量%未満又は0.5質量%未満の残留水分量(及び/又は有機溶媒残留量)を有する。この極めて低い残留水分量は、これらのペレット又はマイクロペレットの特徴的な性質であり、従って公知のパンクレアチンペレットとは区別される。なお、残存水分及び有機溶媒残留物の総量が最終パンクレアチン製品の3質量%未満であるのが好ましく、1質量%未満であるのがより好ましく、0.5質量%未満であるのがさらに好ましい。
【0033】
本発明の別の実施形態によると、ペレットは、100%のパンクレアチン含有量を有するコアからなる。このコアは、腸溶性コーティングで被覆されていない、しかし、このコアは、腸溶性コート層を有することもできる。
【0034】
本発明によれば、コート層を有しているコア又はコート層を有していないコアを有し、このコアがパンクレアチンのみからなるパンクレアチンペレットが提供される。このコアは、パンクレアチン100%からなり、添加剤又はバインダを含有していない。それと対照的に、このコート層は、少なくとも1つの添加剤及び/又は少なくとも1つのバインダから形成されていてもよい。
【0035】
本発明の別の実施形態によると、パンクレアチンコアを包囲するコート層は、腸溶性物質からなる。製造されるペレットは、該ペレットが胃酸に耐性を示し、該ペレットだけが消化管で溶解するように被覆される。腸溶性コート層は、溶媒を使用せずに、ポリメタクリル酸を基剤とする分散性皮膜形成剤を用いて施される。0.5〜2.5mmの間のメッシュのスクリーン画分から得られた被覆されたペレットが、カプセルに充填される。
【0036】
パンクレアチンペレットを製造するための本発明の方法の穏やかな加工及び純粋な有効成分の使用は、高い比活性を有するパンクレアチン製品をもたらし、高用量パンクレアチン医薬を、比較的小さい、患者に優しいカプセルサイズで製造することを可能にする。パンクレアチンペレット集合体用の最大カプセル容量は、カプセルサイズに応じて265mg、475mg、570mg又は680mgである。
【0037】
別の実施形態によると、このコート層は、パンクレアチンから形成されるコアを包囲する第一の層(内層)と、第二の層(外層)とからなる。好ましくは、第一の層は、少なくとも1種の添加剤及び/又は少なくとも1種のバインダから形成される。第二の層は、好ましくは腸溶性物質から形成される。
【0038】
パンクレアチンペレット表面の添加剤及びバインダの質量割合は、5質量%〜30質量%の範囲内にあり得る。パンクレアチンペレット上の腸溶性物質の質量割合は、10質量%〜30質量%の範囲内にあり得る。
【0039】
パンクレアチンから形成されるコアを封入する添加剤又はバインダは、例えばペレットの貯蔵及び輸送中に、このコアに凝集性(cohesiveness)を付与するように作用し、従ってコアの機械的又は化学的破壊を防止する。使用する添加剤及びバインダは、薬理学的に許容されるものでなければならない。
【0040】
コート層又はコート層の内層を必要に応じて以下に記載のバインダと一緒に形成することができ好ましく用いられる、薬理学的に許容される添加剤としては、例えば充填剤、乾燥剤、潤滑剤、崩壊剤及び着色剤が挙げられる。このリストは、全てを網羅するものではなく、勿論、当業者に公知のその他の補助物質を用いてもよい。
【0041】
好ましい充填剤としては、リン酸カルシウム、微結晶性セルロース、デキストラン、デキストリン、沈降炭酸カルシウム、水和二酸化ケイ素、カオリン、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、タルクを含む群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0042】
好ましい乾燥剤としては、コロイド状ケイ酸、タルクを含む群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。好ましい崩壊剤としては、アルギン酸、アミロース、アルギン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、ケイ酸、サゴデンプン、デンプン類を含む群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。好ましい潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、デンプン類、ステアリン酸、タルクを含む群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0043】
必要に応じて上記の添加剤と一緒にコート層又はコート層の内層を形成することができ好ましく用いられる、適当な薬理学的に許容されるバインダとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、例えばポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール3000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール8000、ポリエチレングリコール10000、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、を含む群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。このリストは、全てを網羅するものではなく、勿論、当業者に公知のその他のバインダを使用してもよい。好ましい着色剤としては、食品着色剤、特にドイツ医薬品着色剤規則(Arzneimittelfarbstoffverordnung)(AMFarbV)に列記されている食品着色剤の少なくとも一種が挙げられる。これらのリストは、全てを網羅するものではなく、勿論、当業者に公知のその他の補助物質を用いてもよい。
【0044】
添加剤及び/又はバインダから形成されるコート層又はコート層の内層は、公知の技法、例えば流動層装置(fluidized bed apparatus)又はビードコーター(bead coater)を使用して形成し得る。ビードコーターでコーティングを行う場合には、パンクレアチンのみからなるペレットが、ビードコーターに導入され、予め調製されたバインダと添加剤との均質混合物と共に噴霧される。
【0045】
腸溶性コート層は、胃酸と、パンクレアチンの酸不安定成分、特にリパーゼとの反応によってパンクレアチンが胃で破壊されるのを防止する。胃の中を通り、小腸に入ってpHが変化した後に、パンクレアチンのコアの周りの腸溶性コーティングによって形成された保護膜が溶解し、それによってパンクレアチンが放出される。腸溶性物質は、pH5.5以下で安定でなければならず、pH5.5またはそれを超えるか、好ましくはpH6以上ではじめてパンクレアチンを放出する。
【0046】
ペレットのコート層を形成するのに使用される適当な腸溶性物質は、当分野において公知である。通常は、このようなコーティングは、皮膜形成剤と、通常は可塑剤と、場合によっては離型材(release agent)とを含有する。好ましい皮膜形成剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メタクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体及びメタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体を含む群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。このリストは、全てを網羅するものではなく、勿論、当業者に公知のその他の皮膜形成剤を用いてもよい。
【0047】
腸溶性物質が、皮膜形成剤の他に可塑剤を含有する場合には、皮膜形成剤に対する可塑剤の割合は、1質量%〜20質量%の範囲内にある。好ましい可塑剤は、12〜30個の炭素原子を含有するモノアルコール、例えばセチルアルコール(1−ヘキサデカノール)又はステアリルアルコール(1−オクタデカノール)、並びにポリエチレングリコール類及びクエン酸トリエチル及びこれらの混合物である。このリストは、全てを網羅するものではなく、勿論、当業者に公知のその他の可塑剤を用いてもよい。
【0048】
腸溶性物質が、皮膜形成剤及び任意の可塑剤の他に離型材を含有する場合には、放出剤の割合は、皮膜形成剤に対して0.5質量%〜5質量%の範囲内にある。離型材の例は、タルク及びジメチコンである。このリストは、全てを網羅するものではなく、勿論、当業者に公知のその他の放出剤を用いてもよい。
【0049】
腸溶性物質から形成されるコート層を得るために、皮膜形成剤、任意の可塑剤及び/又は離型材は、溶媒に公知の方法で溶解又は分散させることができる。コート層が形成された後に、溶媒は、例えば乾燥することによって除去される。好ましい溶媒としては、水、アセトン、1〜5個の炭素原子を含有するアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールを含む群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0050】
腸溶性コート層は、公知の技法を使用して、例えば流動層装置又はビードコーターにより形成し得る。ビードコーターを使用して被覆する場合には、ペレット(有効成分100%から直接形成されるか又は添加剤のコート層ですでに被覆されている)を、ビードコーターに導入し、腸溶性物質を噴霧する。
【0051】
本発明のパンクレアチンペレットは、液滴の形状であってもよいし又は球の形状であってもよい。好ましくは、この場合には、コアは球の形状であり、これに対してコート層は、パンクレアチンペレットに、例えば滴ビンからペレットの投与を容易にする液滴の形状を付与する。
【0052】
液滴の形状は、落下する際に、ペレットが自分自身を一方向に向けるという利点を有する。これは、滴ビンなどの貯蔵容器から液滴の形状のパンクレアチンペレットの計数を容易にする。
【0053】
本発明のパンクレアチンペレット、特にマイクロペレットは、医薬の製造に適している。
【0054】
本発明のパンクレアチンペレットは、医薬組成物の製造に使用し得る。好ましくは、医薬組成物は、本発明のパンクレアチンペレットを経口投与に適した薬理有効量で含有し、消化器疾患、急性膵炎、慢性膵炎、膵外分泌機能不全(exocrinal pancreatic insufficiency)、糖尿病、特にI型又はII型、及び嚢胞性線維症の治療及び/又は予防のために提供される。
【0055】
また、本発明のパンクレアチンペレットは、食品(foodstuffs)又は滋養物(nourishment)あるいは栄養補助食品としての製造に適している。
【0056】
本発明を、添付の図面を参照して実施例により説明するが、実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】パンクレアチンのみから形成される本発明のパンクレアチンペレットの第一の実施形態の断面図を表す。
【図2】パンクレアチンコアと単層のコート層とを有する本発明のパンクレアチンペレットの第二の実施形態の断面図を表す。
【図3】パンクレアチンコアと二重層コート層を有する本発明のパンクレアチンペレットの第三の実施形態の断面図を表す。
【図4】パンクレアチンコアと単層の液滴形状コート層を有する本発明のパンクレアチンペレットの第四の実施形態の断面図を表す。
【図5】パンクレアチンコアと二重層の液滴形状コート層を有する本発明のパンクレアチンペレットの第五の実施形態の断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1に示す本発明のパンクレアチンペレット1の第一の実施形態は、このペレット1が、パンクレアチン2のみから形成されることを示す。このペレットは、コート層を有していない。
【0059】
それに比べて、図2に示す本発明のパンクレアチンペレット1の第二の実施形態は、コア2と単層のコート層3を有する。コア2は、パンクレアチンのみからなる。コート層3は、好ましくは腸溶性物質からなる。また、このコート層は、補助物質、例えばバインダを含有していてもよい。コート層3は、クレアチンコア2にまとまり(cohesiveness)をもたせ、例えばコア2の機械的又は化学的破壊を防ぐことができる、特に、コート層3は、胃酸による攻撃から保護する。
【0060】
未被覆ペレットコアは、機械的に安定であり、直接コーティングすることができる。
【0061】
図3に示す本発明のパンクレアチンペレットの第三の実施形態は、二重層のコート層を有する。内層3は、パンクレアチンから形成されるコア2を包囲する。このようにして、パンクレアチンコアは、密接し、機械的又は化学的破壊から保護される。外層4は、腸溶性物質からなる。
【0062】
図4及び5において、コート層は、液滴の形状である。図4に示す実施形態において、パンクレアチンペレット11は、液滴の形状である単層のコート層13を有し、これは、パンクレアチンのみから形成された球形コア12を包囲する。この場合のコート層13は、補助物質、例えばバインダからなる。図5において、コート層は二重の層であり、内層13と外層14を有する。外層14のみが液滴の形状であり、これに対して内層13は、球の形状である。内層13は、コア13にまとまりをもたせる補助物質、例えばバインダからなる。外層14は、腸溶性物質からなる。液滴の形状、特にパンクレアチンマイクロペレットの液滴の形状は、特に、例えば滴ビンから複数のペレットの個々の投与を可能にする。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は、パンクレアチンからペレットを製造する方法であって濾過ケーキを押出加工するために冷却工程を実施する製造方法の実現性を実証する。
【0064】
出発原料は、溶媒を含有するパンクレアチン濾過ケーキである。濾過ケーキに含まれる溶媒は、溶媒全体を100質量%とすると、約70%〜85%、好ましくは75%〜80%のイソプロパノール又はアセトンを含み、残部は水である。すなわち、溶媒全体を100質量%とすると、水は15〜30質量%含まれ、好ましくは20〜25質量%含まれる。イソプロパノールがアセトンよりも好ましい。
【0065】
40質量%〜70質量%のパンクレアチンを含む湿性のパンクレアチン濾過ケーキを、最初に、例えばカッターで、又は、直径5〜8mmの大きなノズルに通して大きな圧力上昇なしに穏やかに押出加工することで粗粉砕する。次いで−10℃〜−40℃、好ましくは−30℃に冷却する。冷却することによって、濾過ケーキ塊の稠度は、押出加工が容易になるように変化する。さらに、それによってパンクレアチンの酵素が安定化される。次いで、押出加工の本工程は、スクリュー押出し機又はパンミルなどの装置を用いる公知の方法により、好ましくは0.5mm〜5mmの範囲内、より好ましくは1.0mm〜2.5mmの範囲内の直径を有する円形ノズルを通して行う。押出物は、切断してもよいが、必ずしも切断する必要はない。押出物は、市販のスフェロナイザーを用いて滑らかな表面を有する球形ペレットに直接に成形することができる。ペレットを外部から加熱することによって、その表面は、より柔らかになり、変形可能になる。このためペレットはほぼ球状(楕円体状)かつ均一な滑らかな表面(尖がりや窪みがない)になる。次いで、これらのペレットは、乾燥され、純粋なパンクレアチンのみを含有する。このようにして製造されたペレットは、さらに、腸溶性コート層によって及び例えば硬ゼラチン2ピースカプセルに充填することによって医薬品の最終製品に容易に加工できる。
【0066】
本発明の方法は、パンクレアチンの製造中に沈殿した湿性の濾過ケーキを直接使用し、乾燥工程が1つだけであるので経済的である。
【0067】
酵素の対応するロスを伴う反復乾燥を避けることによって、及び、添加剤とバインダを不要にすることによって、有効成分が高濃度になる。このことは、患者がより飲み込み易い小さい形状の医薬製剤、か、あるいは同じ形状及びサイズであり投与量をより多くできる医薬製剤を提供できることを意味する。
【0068】
(付記)
1)
好ましくは哺乳動物の膵臓から得られるパンクレアチンからなり、及び球、楕円体又は液滴の形状をなし、粒径が0.5〜2.5mmの範囲内であり、パンクレアチン含有量が100%であるパンクレアチンペレット(1、11)、特にマイクロペレットであって、次の一連の工程:
a)ブタ又はウシに由来する膵腺を粉砕し、自己消化を行う工程、
b)工程a)で得られた中間生成物を濾過することによって酵素を含有するスクリーン濾液を得る工程、
c)前記スクリーン濾液から前記酵素を沈殿させる工程、
d)工程c)で得られた混合物を濾過して濾過ケーキを得る工程、
e)工程d)で得られた濾過ケーキを−10℃〜−40℃、好ましくは−30℃に冷却して十分な可塑性を得る工程、
f)添加剤及び/又はバインダを加えず、工程e)で得られた冷却濾過ケーキを押出加工して、残留水分又は有機溶媒残留物が30%〜50質量%特に40質量%の押出物を形成する工程、
g)添加剤及び/又はバインダ又はその他の補助物質を加えず造球し、球状、楕円体状又は液滴状のペレットを得る工程、
h)得られたペレットを、残留水分量が3質量%未満、又は1質量%未満、又は0.5質量%未満になるまで減圧乾燥し、その結果として残留水分量3質量%未満、好ましくは1質量%未満、又は0.5質量%未満の乾燥パンクレアチン最終製品を得る工程、
を使用して製造されるパンクレアチンペレット(1、11)、特にマイクロペレット。
【0069】
2)
パンクレアチン含有量100%のコア(2)からなる前記ペレット(1,11)が、コーティング(3、4)を有するか又は有していない上記1)に記載のパンクレアチンペレット。
【0070】
3)
前記コーティング(3)が、腸溶性物質からなる上記1)又は2)に記載のパンクレアチンペレット。
【0071】
4)
前記コーティング(3、4)が、パンクレアチンからなるか、又は、添加剤又はバインダから形成されている上記2)に記載のパンクレアチンペレット。
【0072】
5)
前記コーティングが、第1に、パンクレアチンから形成されるコア(2)を包み込む内層(3)を有し、又、第2に、外層(4)も有することを特徴とする、上記1)又は2)記載のパンクレアチンペレット。
【0073】
6)
前記第1の層(3)が、添加剤又はバインダから形成される上記5)に記載のパンクレアチンペレット。
【0074】
7)
前記第2の層(4)が腸溶性物質から形成され、前記ペレット(1、11)が液滴状又は球状である上記5)又は6)に記載のパンクレアチンペレット。
【0075】
8)
好ましくは哺乳動物の膵臓から得られるパンクレアチンのみから形成され、球状、楕円体状又は液滴状をなし、粒径が0.5〜2.5mmの範囲内であり、かつパンクレアチン含有量が100%である上記1)〜7)に記載のパンクレアチンペレット(1、11)、特にマイクロペレットの製造方法であって、次の工程:
a)ブタ又はウシに由来する膵腺を粉砕し、自己消化を行う工程、
b)工程a)で得られる中間生成物を濾過することによって酵素を含有するスクリーン濾液を得る工程、
c)前記スクリーン濾液から前記酵素を沈殿させる工程、
d)工程c)で得られた混合物を濾過して濾過ケーキを得る工程、
e)工程d)で得られた濾過ケーキを−10℃〜−40℃、好ましくは−30℃に冷却して十分な可塑性を得る工程、
f)添加剤及び/又はバインダを加えず、工程e)で得られた冷却濾過ケーキを押出加工して、残留水分又は有機溶媒残留物が30%〜50質量%特に40質量%の押出物を形成する工程、
g)添加剤及び/又はバインダ又はその他の補助物質を加えず造球し、球状、楕円体状又は液滴状のペレットを得る工程、
h)得られたペレットを、残留水分量が3質量%未満、又は1質量%未満、又は0.5質量%未満になるまで減圧乾燥し、その結果として残留水分量3質量%未満、好ましくは1質量%未満、又は0.5質量%未満の乾燥パンクレアチン最終製品を得る工程、
を用いることを特徴とする、前記パンクレアチンペレット(1、11)、特にマイクロペレットの製造方法。
【0076】
9)
薬理有効量の上記1)〜7)のいずれかに記載のパンクレアチンのペレットを含有することを特徴とする、医薬組成物。
【0077】
10)
経口投与に適した剤形である上記9)に記載の医薬組成物。
【0078】
11)
医薬品又は食品又は滋養物又は食物補助食品を製造するための上記1)〜7)のいずれかに記載のパンクレアチンペレット、特にマイクロペレットの使用。
【0079】
12)
消化器疾患、急性膵炎、慢性膵炎、膵外分泌機能不全、糖尿病(特に、I型又はII型)、及び嚢胞性線維症の治療及び/又は予防のために経口投与を容易にする医薬品を製造するための上記1)〜7)のいずれかに記載のパンクレアチンペレット、特にマイクロペレットの使用。
【0080】
1. Pancreatin pellets (1, 11), in particular micropellets, containing pancreatin, preferably obtained from the pancreas of a mammal, said pancreatin pellets having a spherical shape, ellipsoidal shape or drop shape, an axis in the range of 0.5 mm to 2.5 mm and a pancreatin content of 100%, said pancreatin pellet being produced using the following steps:
a) comminuting pancreas glands originating from pigs or cattle and carrying out an autolysis;
b) obtaining a screen filtrate containing enzymes by filtering the intermediate product obtained in step a);
c) precipitating the enzymes from the screen filtrate;
d) filtering the mixtureobtained in step c) to obtain a filter cake;
e) cooling the filter cake obtained in step d) to -10°C to -40°C, preferably to -30°C, to obtain a sufficientplasticity;
f) extruding the cooled filter cake obtained in step e), whilst excluding additives and/or binding agents, in order to form extrudates, wherein the extrudable filter cake mass contains residual moisture or organic solvent residues which are of the order of 30% to 50%, in particular 40%;
g) spheronizing, whilst excluding additives and/or binding agents or other auxiliary materials, to obtain spherical, elliptical or drop-shaped pellets;
h) vacuum drying of the obtained pellets until the residual moisture content is less than 3% by weight, preferably less than 1% by weight or less than 0.5% by weight, so that a dried pancreatin end product is obtained with a residual moisture content of less than 3% by weight, preferably less than 1% by weight or less than 0.5% by weight.
2. The pancreatin pellet according to claim 1, characterized in that the pellet (1, 11), consisting of a core (2) with a pancreatin content of 100%, is or is not provided with a coating (3, 4).
3. The pancreatin pellet according to claim 1 or claim 2, characterized in that the coating (3) consists of an enteric material.
4. The pancreatin pellet according to claim 2, characterized in that the coating (3, 4) consists of pancreatin or is formed from auxiliary materials or binding agents.
5. The pancreatin pellet according to claim 1 or claim 2, characterized in that the coating has a first, inner layer (3) which surrounds the core (2) formed from pancreatin, and that said coating also has a second, outer layer (4).
6. The pancreatin pellet according to claim 5, characterized in that the first layer (3) is formed from auxiliary materials or binding agents.
7. The pancreatin pellet according to claim 5 or claim 6, characterized in that the second layer (4) is formed from an enteric material, wherein the pellet (1, 11) is drop-shaped or spherical in shape.
8. A process for the production of pellets (1, 11), in particular micropellets, formed exclusively from pancreatin, preferably obtained from the pancreas of a mammal, said pancreatin pellets having a spherical shape, ellipsoidal shape or drop shape, an axis in the range of 0.5 mm to 2.5 mm and a pancreatin content of 100% according to claims 1 to 7, characterized in that the process comprises the following steps:
a) comminuting pancreas glands originating from pigs or cattle and carrying out an autolysis;
b) obtaining a screen filtrate containing enzymes by filtering the intermediate product obtained in step a);
c) precipitating the enzymes from the screen filtrate;
d) filtering the mixture obtained in step c) to obtain a filter cake;
e) cooling the filter cake obtained in step d) to -10°C to -40°C, preferably to -30°C, to obtain a sufficientplasticity;
f) extruding the cooled filter cake obtained in step e), whilst excluding additives and/or binding agents, in order to form extrudates, wherein the extrudable filter cake mass contains residual moisture or organic solvent residues which are of the order of 30% to 50%, in particular 40%;
g) spheronizing, whilst excluding additives and/or binding agents or other auxiliary materials, to obtain spherical, elliptical or drop-shaped pellets;
h) vacuum drying of the obtained pellets until the residual moisture content is less than 3% by weight, preferably less than 1% by weight or less than 0.5% by weight, so that a dried pancreatin end product is obtained with a residual moisture content of less than 3% by weight, preferably less than 1% by weight or less than 0.5% by weight.
9. A pharmaceutical composition, characterized in that it contains a pharmacologically effective quantity of pancreatin pellets according to one of claims 1 to 8.
10. The pharmaceutical composition according to claim 9, characterized in that it is in a dosage form which is suitable for oral administration.
11. Use of pancreatin pellets, in particular micropellets, according to one of claims 1 to 8, for the production of a pharmaceutical or for the production of foodstuffs or nourishment or as a food supplement.
12. Use of pancreatin pellets, in particular micropellets, according to one of claims 1 to 8, for the production of a pharmaceutical to facilitate oral administration for the treatment and/or prophylaxis of digestive disorders, acute pancreatitis, chronic pancreatitis, exocrinal pancreatic insufficiency, diabetes mellitus, in particular type I or type II, and cystic fibrosis.
【符号の説明】
【0081】
1 球状パンクレアチンペレット
2 パンクレアチン
3 添加剤又はバインダから形成されるコート層
4 腸溶性物質から形成されるコート層
11 液滴の形状のパンクレアチンのペレット
12 パンクレアチン
13 添加剤とバインダとから形成されるコート層
14 腸溶性物質から形成されるコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンクレアチンからなり球状、楕円体状、液滴状から選ばれる少なくとも一種の形状をなし粒径が0.5〜2.5mmの範囲内であり、かつ、添加剤およびバインダを含まないパンクレアチンペレットであって、以下の工程:
a)ブタ又はウシに由来する膵腺を粉砕し、自己消化を行う工程、
b)工程a)で得られた中間生成物を濾過することによって酵素を含有するスクリーン濾液を得る工程、
c)前記スクリーン濾液から前記酵素を沈殿させる工程、
d)工程c)で得られた混合物を濾過して濾過ケーキを得る工程、
e)工程d)で得られた濾過ケーキを−10℃〜−40℃に冷却して十分な可塑性を得る工程、
f)添加剤及び/又はバインダを加えず、工程e)で得られた冷却濾過ケーキを押出加工して、30〜50質量%の残留水分及び/又は有機溶媒残留物を含有する押出物を形成する工程、
g)添加剤、バインダ、およびその他の補助物質からなる群から選ばれる少なくとも一種を加えず造球し、球状、楕円体状又は液滴状のペレットを得る工程、
h)得られたペレットを、残留水分及び/又は有機溶媒残留物が3質量%未満になるまで減圧乾燥し、その結果として残留水分及び/又は有機溶媒残留物が3質量%未満の乾燥パンクレアチン最終製品を得る工程、
により製造されるパンクレアチンペレット。
【請求項2】
添加剤及び/又は結合材を含まないコアを持つ請求項1に記載のパンクレアチンペレット。
【請求項3】
前記コア上にコーティング層が形成されている請求項1又は請求項2に記載のパンクレアチンペレット。
【請求項4】
前記コーティング層が腸溶性物質を含む請求項1又は2に記載のパンクレアチンペレット。
【請求項5】
前記コーティング層がパンクレアチンからなるか、又は、添加剤及び/又はバインダから形成されている請求項3または請求項4に記載のパンクレアチンペレット。
【請求項6】
前記コーティング層が、パンクレアチンから形成されるコアを覆う内層と外層とを有する請求項3〜請求項5のいずれかに記載のパンクレアチンペレット。
【請求項7】
前記内層が、添加剤及び/又はバインダから形成されることを特徴とする、請求項6に記載のパンクレアチンペレット。
【請求項8】
前記外層が腸溶性物質から形成され、前記ペレットが液滴又は球の形状であることを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載のパンクレアチンペレット。
【請求項9】
前記工程e)において−30℃に冷却することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のパンクレアチンペレット。
【請求項10】
前記工程f)で押出加工した押出物は、残留水分及び/又は有機溶媒残留物を40質量%程度含有する請求項1〜請求項9のいずれかに記載のパンクレアチンペレット。
【請求項11】
前記工程h)において、残留水分及び/又は有機溶媒残留物が1質量%未満になるまで真空乾燥し、その結果として残留水分及び/又は有機溶媒残留物が1質量%未満である乾燥パンクレアチン最終製品を得る請求項1〜請求項10のいずれかに記載のパンクレアチンペレット。
【請求項12】
前記工程h)において、残留水分及び/又は有機溶媒残留物が0.5質量%未満になるまで減圧乾燥し、その結果として残留水分又は有機溶媒残留物が0.5質量%未満である乾燥パンクレアチン最終製品を得る請求項1〜請求項11のいずれかに記載のパンクレアチンペレット。
【請求項13】
長径及び/又は短径が0.5mm以上10.0mm未満のマイクロペレット状である請求項1〜請求項12のいずれかに記載のパンクレアチンペレット。
【請求項14】
前記コアのパンクレアチン含有量は100%である請求項2〜請求項13のいずれかに記載のパンクレアチンペレット。
【請求項15】
パンクレアチンのみから形成され、球状、楕円体状および液滴状から選ばれる少なくとも一種の形状をなし、粒径が0.5〜2.5mmの範囲内であり、かつ、添加剤およびバインダを含まない請求項1〜14のいずれかに記載のパンクレアチンペレットを製造する方法であって、次の工程:
a)ブタ又はウシに由来する膵腺を粉砕し、自己消化を行う工程、
b)工程a)で得られた中間生成物を濾過することによって酵素を含有するスクリーン濾液を得る工程、
c)前記スクリーン濾液から前記酵素を沈殿させる工程、
d)工程c)で得られた混合物を濾過して濾過ケーキを得る工程、
e)工程d)で得られた濾過ケーキを−10℃〜−40℃に冷却して十分な可塑性を得る工程、
f)添加剤及び/又はバインダを加えず、工程e)で得られた冷却濾過ケーキを押出加工して、30%〜50%の残留水分及び/又は有機溶媒残留物を含有する押出物を形成する工程、
g)添加剤、バインダ、およびその他の補助物質からなる群から選ばれる少なくとも一種を加えず造球し、球状、楕円体状又は液滴状のペレットを得る工程、
h)得られたペレットを、残留水分及び/又は有機溶媒残留物が3質量%未満になるまで減圧乾燥し、その結果として残留水分3%未満の乾燥パンクレアチン最終製品を得る工程、
を備えることを特徴とするパンクレアチンペレットの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のパンクレアチンペレットを薬理有効量含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項17】
経口投与に適した剤形である請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のパンクレアチンペレットを使用することを特徴とする医薬品、食品、滋養物または食物補助食品の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のパンクレアチンペレットを使用することを特徴とする、消化器疾患、急性膵炎、慢性膵炎、膵外分泌機能不全、糖尿病(特に、I型又はII型)、及び嚢胞性線維症から選ばれる少なくとも一種を治療及び/又は予防するための経口投与を容易にする医薬品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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