説明

パンク補修材回収システム

【課題】液状で、タイヤ空気注入口(「チューブレスバルブ」または「バルブ」ともいう。)からタイヤ内部に注入することができ、かつ、天然ゴムラテックスと樹脂エマルジョンと凍結防止剤とを含有するパンク補修材を速やかにゲル化させることができるパンク補修材ゲル化剤およびその使用方法を提供する。
【解決手段】天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材(D)をゲル化するパンク補修材ゲル化剤であって、下記化学式(1)の化合物(α)を含有するパンク補修材ゲル化剤およびそれを使用する方法[下記化学式(1)において、Rは、炭素数13〜30個のアルキル基または炭素数13〜30個のアルケニル基である]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパンク補修材ゲル化剤およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天然ゴムラテックスと粘着付与樹脂エマルジョンと凍結防止剤とを少なくとも含むタイヤのパンク補修材であって、前記天然ゴムラテックスの固形分Aと粘着付与樹脂エマルジョンの固形分Bと凍結防止剤Cとの和A+B+Cである総固形分100重量部に対し、前記天然ゴムラテックスの固形分Aの含有量を30〜60重量部、前記粘着付与樹脂エマルジョンの固形分Bの含有量を10〜30重量部、かつ前記凍結防止剤Cの含有量を20〜50重量部とするとともに、前記粘着付与樹脂エマルジョンの粘着付与樹脂として芳香族変性テルペン樹脂を用いたことを特徴とする、長期間、過酷な温度条件下で保管された場合にも、シール性能を長期に亘って高くかつ安定して維持できるタイヤのパンク補修材が記載されている。
【0003】
特許文献2には、パンクしたタイヤの穴をシールするパンク補修材であって、天然ゴムラテックスと、不凍液とを含有し、さらに、乳化剤に非イオン系界面活性剤を使用し、樹脂成分に変性フェノール樹脂、石油樹脂およびカルボン酸変性テルペン樹脂からなる群から選択される少なくとも1を使用していることを特徴とする樹脂系エマルジョンを含有することを特徴とする、パンク穴のシール速度が速く、長期安定性を有するパンク補修材が記載されている。
【0004】
上記に示すように、従来、パンクしたタイヤを修理するパンク補修材として、天然ゴムラテックスと樹脂エマルジョンと凍結防止剤とを含有したものが提案されている。
【0005】
上記のようなパンク補修材は通常タイヤの空気充填部からタイヤ内に注入され、所定の空気圧まで空気が充填された後、車を走行させることにより、パンク補修材がパンク穴に到達する。そして、タイヤが回転し接地する際に受ける圧縮力や剪断力によってパンク補修材中のゴム粒子がタイヤ内で凝集体を形成し、パンク穴がシールされ、車は走行が可能となる。
【0006】
しかし、タイヤ内に注入されたパンク補修材の余剰のものは、凝集せず、液体のままでタイヤ内に残る。このような残余のパンク補修材は、タイヤをホイールから取り外さずに回収することは実質上困難である。そのため、タイヤをホイールから取り外して回収することとなるが、パンク補修材は、一般的にエチレングリコールのような凍結防止剤を含むため、リムを取り外した後の法規に則った処分が難しい。
【0007】
かかる問題を解決すべく、本発明者らは、パンク補修材をタイヤから容易に回収し、回収物を廃棄することを可能とするエマルジョン凝固剤を提供することを目的として、エマルジョン粒子を含有するパンク補修材を凝固させるためのエマルジョン凝固剤であって、前記エマルジョン粒子の表面電荷を弱めることおよび前記エマルジョン粒子と水素結合することのうちのいずれか一方または両方によって、前記エマルジョン粒子の凝集を引き起こす鉱物と、ゲル化剤とを含有する、パンク補修材をタイヤから容易に回収し、回収物を廃棄することを可能とするエマルジョン凝固剤を発明した(特許文献3)。
【0008】
そして、特許文献3に記載のエマルジョン凝固剤を使用するパンク補修材の回収方法は、タイヤ内にあるパンク補修材にエマルジョン凝固剤を加えるエマルジョン凝固剤添加工程と、前記パンク補修材を前記エマルジョン凝固剤で凝固させて凝固物とする凝固工程と、前記凝固物を前記タイヤ内から取り出す凝固物回収工程とを具備するものである。
【0009】
しかし、特許文献3に記載のエマルジョン凝固剤は粉末であるため、タイヤ内部に残存するパンク補修材と混合するためには、タイヤをホイールから取り外さなければならないという制限があった。また、タイヤをホイールから取り外す際に、タイヤ内部のパンク補修材が飛び散ることがあり、タイヤチェンジャーに付着する等、作業環境上問題があった。
【0010】
一方、特許文献4には、ラテックスからなる液状のパンク補修材を内腔に注入したパンク補修済みのリム組みされた空気入りタイヤに、ポリエチレンイミンである高分子凝集剤を20〜30質量%の水溶液とし、該水溶液を該パンク補修材に0.5〜3質量%注入して該パンク補修材を凝集させると共に、タイヤ内壁に付着させることを特徴とする、液状のパンク補修材が内封されているパンク補修済みの空気入りタイヤに該高分子凝集剤を注入し、パンク補修材を凝集と共にタイヤ内壁面に付着させた状態にするため、空気入りタイヤをホイールから取り外すとき、パンク補修材が滴り落ちることがなく、周囲を汚さないようにすることができる、パンク補修材の処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−35867号公報
【特許文献2】特開2006−111726号公報
【特許文献3】特許第4245654号公報
【特許文献4】特許第3854841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、液状で、タイヤ空気注入口(「チューブレスバルブ」または「バルブ」ともいう。)からタイヤ内部に注入することができ、かつ、天然ゴムラテックスと樹脂エマルジョンと凍結防止剤とを含有するパンク補修材を速やかにゲル化させることができるパンク補修材ゲル化剤およびその使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記化学式(1)の化合物(α)を、天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材(D)と混合すると、そのパンク補修材(D)を速やかにゲル化させることができ、しかも化合物(α)を含有するパンク補修材ゲル化剤が、リム組みされたタイヤの内腔にバルブを通じて注入することができる注入性を有することを知得し、本発明を完成した。
【0014】
【化1】

【0015】
ただし、上記化学式(1)において、Rは、炭素数13〜30個のアルキル基または炭素数13〜30個のアルケニル基である。
【0016】
本発明者らは、さらに鋭意検討した結果、化合物(α)10質量部に対して凍結防止剤(β)3〜5質量部を含有すると、−20℃においても、注入性およびゲル化性を有することを知得した。
【0017】
すなわち、本発明は下記に掲げるものである。
〔1〕天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材(D)をゲル化するパンク補修材ゲル化剤であって、下記化学式(1)の化合物(α)を含有するパンク補修材ゲル化剤。
【0018】
【化2】

【0019】
ただし、上記化学式(1)において、Rは、炭素数13〜30個のアルキル基または炭素数13〜30個のアルケニル基である。
【0020】
〔2〕前記化合物(α)を50質量%以上含有する、上記〔1〕に記載のパンク補修材ゲル化剤。
【0021】
〔3〕さらに前記化合物(α)10質量部に対して凍結防止剤(β)3〜5質量部を含有する、上記〔1〕または〔2〕に記載のパンク補修材ゲル化剤。
【0022】
〔4〕前記凍結防止剤(β)がプロピレングリコール、ジエチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記〔3〕に記載のパンク補修材ゲル化剤。
【0023】
〔5〕20℃において液状であり、かつ、20℃において10分以内に前記パンク補修材(D)をゲル化する、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤。
【0024】
〔6〕−20℃において液状であり、かつ、−20℃において20分以内に前記パンク補修材(D)をゲル化する、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤。
【0025】
〔7〕前記樹脂エマルジョン(B)がエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンおよび/またはアクリル系エマルジョンを含む、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤。
【0026】
〔8〕前記凍結防止剤(C)が、プロピレングリコール、ジエチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤。
【0027】
〔9〕前記天然ゴムラテックス(A)の固形分が、前記パンク補修材(D)のゴム固形分および樹脂固形分の合計のうち30質量%以上である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のパンク補修材。
【0028】
〔10〕天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材(D)であって、該天然ゴムラテックス(A)の固形分が、該パンク補修材(D)のゴム固形分および樹脂固形分の合計のうち30質量%以上であるパンク補修材と、上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤とを含む、パンク補修キット。
【0029】
〔11〕天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材(D)であって、該天然ゴムラテックス(A)の固形分が該パンク補修材(D)のゴム固形分および樹脂固形分の合計のうち30質量%以上であるパンク補修材(D)を内腔に注入してパンクを補修したリム組みされた空気入りタイヤに、上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤を注入し、該パンク補修材(D)と該パンク補修材ゲル化剤とを混合させ、該パンク補修材をゲル化させる、上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤の使用方法。
【0030】
〔12〕天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材において該天然ゴムラテックスの固形分が該パンク補修材中のゴム成分および樹脂成分の固形分合計質量の30質量%以上であるパンク補修材(D)を内腔に注入してパンクを補修したリム組みされた空気入りタイヤに、上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤を注入し、該パンク補修材と該パンク補修材ゲル化剤とを混合させ、該パンク補修材をゲル化させ、ゲル化したパンク補修材を回収する、タイヤ内に残存するパンク補修材の回収方法。
【0031】
〔13〕下記化学式(1)の化合物を、天然ゴムラテックスと樹脂エマルジョンと凍結防止剤とを含有するパンク補修材ゲル化剤として使用する方法。
【0032】
【化3】

【0033】
ただし、上記化学式(1)において、Rは、炭素数13〜30個のアルキル基または炭素数13〜30個のアルケニル基である。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、液状で、タイヤ空気注入口(「チューブレスバルブ」または「バルブ」ともいう。)からタイヤ内部に注入することができ、かつ、天然ゴムラテックスと樹脂エマルジョンと凍結防止剤とを含有するパンク補修材を速やかにゲル化させることができるパンク補修材ゲル化剤およびその使用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のパンク補修材ゲル化剤の注入方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明をより詳細に説明する。
〈パンク補修材ゲル化剤〉
本発明のパンク補修材ゲル化剤(以下、単に「本発明のゲル化剤」という。)は、化合物(α)と、所望により、凍結防止剤(β)と、を含有する。
【0037】
《化合物(α)》
本発明のゲル化剤は、化合物(α)を含むものであれば特に限定されないが、化合物(α)を50質量%以上含むものが好ましく、実質上化合物(α)からなるものでもよい。
【0038】
化合物(α)は、後記する天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材をゲル化する、パンク補修材ゲル化剤として使用できる下記化学式(1)の化合物である。
【0039】
【化4】

【0040】
ただし、上記式(1)において、Rは、炭素数13〜30個のアルキル基または炭素数13〜30個のアルケニル基である。
【0041】
としては、炭素数13〜30個のアルキル基または炭素数13〜30個のアルケニル基であれば特に限定されないが、例えば、下記式(2)で表されるアルキル基、または下記式(5)もしくは(6)で表されるアルケニル基が好ましい。
【0042】
【化5】

【0043】
ただし、上記式(2)において、iは、13≦i+1≦30の関係を満たす自然数である。
【0044】
【化6】

【0045】
ただし、上記式(3)において、j,kは、13≦j+k+3≦30の関係を満たす0または正の整数である。
【0046】
【化7】

【0047】
ただし、上記式(4)において、lは、13≦l+2≦30の関係を満たす自然数である。
【0048】
化合物(α)は、従来公知の方法、例えば、イミダゾリン型界面活性剤を合成する方法によって合成することができる。
【0049】
また、市販品を購入して使用することもできる。化合物(α)の市販品としては、具体的には、例えば、ホモゲノール L−95(花王社製)を挙げることができる(R=パルミトレイル基;j=8,k=5)。
【0050】
《凍結防止剤(β)》
本発明のゲル化剤は、さらに、化合物(α)10質量部に対して、凍結防止剤(β)3〜5質量部を含有してもよい。凍結防止剤(β)がこの範囲内であると、−20℃においても、本発明のゲル化剤は注入性を損なわず、かつ、パンク修理材(D)を速やかに、より具体的には20分以内に、ゲル化できるゲル化性も有するからである。
【0051】
凍結防止剤は、水が凍結するのを防止することができる化合物であれば特に制限されないが、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)等が挙げられる。また、凍結防止剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
《その他含有してよい成分》
本発明のゲル化剤は、化合物(α)、凍結防止剤(β)の他に、所望によりまたは必要に応じて、例えば、溶媒、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、帯電防止剤等のような添加剤を、50質量%まで含有することができる。
【0053】
溶媒は特に限定されないが、水系溶媒が好ましく、水が特に好ましい。
【0054】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物等が挙げられる。
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
【0055】
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0056】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
【0057】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0058】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)等が挙げられる。
【0059】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
【0060】
帯電防止剤としては、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0061】
本発明のゲル化剤は、前記したパンク補修材を速やかにゲル化させるが、20℃においては10分以内にゲル化させることが望ましい。また、凍結防止剤(β)を含有する場合、−20℃においては20分以内にゲル化させることが望ましい。
【0062】
また、本発明のゲル化剤は、−20℃以上80℃以下の温度範囲において液状であることが望ましい。
【0063】
《製造方法》
本発明のゲル化剤は、その製造について特に制限されない。例えば、化合物(α)だけで製造してもよいし、化合物(α)と、所望により、凍結防止剤(β)と、さらに、その他含有してよい成分と、を均一に混合することによって製造することができる。
【0064】
〈パンク補修材(D)〉
本発明のゲル化剤がゲル化するパンク補修材(D)は、天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材であれば特に限定されないが、該天然ゴムラテックス(A)の固形分が該パンク補修材(D)中のゴム成分および樹脂成分の固形分合計質量の30質量%以上であるパンク補修材であることが好ましい。
【0065】
《ゴムラテックス(A)》
前記天然ゴムラテックスは特に限定されず、ヘベア・ブラジリエンシス樹をタッピングして採取されるものを用いることができる。
天然ゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックスからタンパク質を除去した、いわゆる「脱蛋白天然ゴムラテックス」が好ましい。タンパク質が少ないと、アンモニアの発生量を少なくすることができ、アンモニアによるスチールコードへの腐食損傷および刺激臭の発生を防止するという理由からである。
具体的には、例えば、脱蛋白天然ゴムラテックス(SeLatexシリーズ、SRIハイブリッド社製)、脱蛋白天然ゴムラテックス(Hytex HA、野村貿易社製)、超低アンモニア天然ゴムラテックス(ULACOL、レヂテックス社製)等を使用することができる。
【0066】
《樹脂エマルジョン(B)》
前記樹脂エマルジョンは特に限定されないが、粘着付与樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン、アクリル系エマルジョン、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリエチレン系エマルジョン等を単独で、または、組み合わせて使用することができる。
【0067】
前記粘着付与樹脂エマルジョンとしては、いわゆるタッキファイヤーであれば特に限定されないが、芳香族変性テルペン樹脂を乳化したものを使用することが好ましい。この芳香族変性テルペン樹脂は、周知の如く、テルペン化合物と芳香族化合物とをフリーデルクラフト触媒のもとでカチオン重合したものである。また、得られた芳香族変性テルペン樹脂を水素添加処理して得られた芳香族変性水添テルペン樹脂であってもよい。
【0068】
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンとしては、エチレンと酢酸ビニルとをモノマー単位として含む共重合樹脂のエマルジョンであれば特に限定されないが、例えば、エチレンと酢酸ビニルとの共重合樹脂のエマルジョン、エチレンと酢酸ビニルとバーサチック酸ビニルエステルとの共重合樹脂のエマルジョン等が好ましい。
市販のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンとしては、具体的には、例えば、スミカフレックス 400HQ、408HQE、950HQ、951HQ(以上、住化ケムテックス社製)等を使用することができる。
【0069】
上記アクリル系エマルジョンとしては、特に限定されず、従来公知のアクリル系エマルジョンを使用することができ、例えば、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、芳香族ビニル単量体、不飽和二トリル、共役ジオレフィン、多官能ビニル単量体、アミド系単量体、水酸基含有単量体、カプロラクトン付加単量体、アミノ基含有単量体、グリシジル基含有単量体、酸系単量体、ビニル単量体等を、乳化分散剤を用いて重合(乳化重合)して得られる水性エマルジョン等が好適に挙げられる。
【0070】
上記メタクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。
【0071】
上記アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0072】
上記ポリオレフィン系エマルジョンは、特に限定されず、従来公知のポリオレフィン系エマルジョンを用いることができ、例えば、親水基が導入されたポリオレフィンが、水中に分散されたもの等が挙げられる。上記親水基としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0073】
上記ポリオレフィン系エマルジョンとしては、具体的には、例えば、ポリエチレンエマルジョン、ポリプロピレンエマルジョン、エチレン−プロピレン共重合体エマルジョンおよびポリブテンエマルジョンが好適に挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記ポリエチレンエマルジョンは、特に限定されず、従来公知のポリエチレンエマルジョンを用いることができる。
上記ポリエチレンエマルジョンとしては、例えば、親水基が導入されたポリエチレンが、水中に分散されたもの等が挙げられる。上記親水基としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0075】
《凍結防止剤(C)》
前記凍結防止剤(C)は、水が凍結するのを防止することができる化合物であれば特に制限されないが、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)等が挙げられる。
凍結防止剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
〈パンク補修キット〉
上記パンク補修材と、本発明のゲル化剤とをセットにして、パンク補修キットを構成してもよい。
上記パンク補修キットは上記パンク補修材と本発明のゲル化剤を必須の構成要素として含めばよく、他に、例えば、コンプレッサー等を任意の構成要素として含んでもよい。
【0077】
<パンク補修材ゲル化剤の使用方法>
本発明のゲル化剤の使用方法について、図1を参照しながら詳細に説明する。
図1において、1はパンクした空気入りタイヤであり、リム2に組み込まれている。この空気入りタイヤ1はパンクの応急措置として、天然ゴムラテックスと樹脂エマルジョンと凍結防止剤とを含有する液状のパンク補修材3がバルブ6を介して注入済みになっている。
【0078】
上記のようにパンクを補修された空気入りタイヤ1は、修理所においてリム2(ホイール)から取り外し、内部のパンク補修剤3を予め除去した状態にして廃棄処分しなければならない。
【0079】
本発明のゲル化剤の使用方法は、上記パンクを補修された空気入りタイヤをリム組み状態のまま、パンク補修材ゲル化剤5を充填した注入器4からバルブ6を介してパンク補修材ゲル化剤5を空気入りタイヤの内部に滴下注入する。滴下後、空気入りタイヤを数回転させると、ゲル化剤5とパンク補修材3とが混合され、パンク補修材3がゲル化する。
【0080】
このように、パンク補修材がゲル化するため、空気入りタイヤ1をリム2から取り外すとき、パンク補修材が飛び散り周囲を汚すことはない。
【0081】
<タイヤ内に残存するパンク補修材の回収方法>
本発明のゲル化剤を使用した、タイヤ内に残存するパンク補修材の回収方法について、図1を参照しながら詳細に説明する。
図1において、1はパンクした空気入りタイヤであり、リム2に組み込まれている。この空気入りタイヤ1はパンクの応急措置として、天然ゴムラテックスと樹脂エマルジョンと凍結防止剤とを含有する液状のパンク補修材3がバルブ6を介して注入済みになっている。
【0082】
上記のようにパンクを補修された空気入りタイヤ1は、修理所においてリム2(ホイール)から取り外し、内部のパンク補修剤3を予め除去した状態にして廃棄処分しなければならない。
【0083】
本発明のゲル化剤の使用方法は、上記パンクを補修された空気入りタイヤをリム組み状態のまま、パンク補修材ゲル化剤5を充填した注入器4からバルブ6を介してパンク補修材ゲル化剤5を空気入りタイヤの内部に滴下注入する。滴下後、空気入りタイヤを数回転させると、ゲル化剤5とパンク補修材3とが混合され、パンク補修材3がゲル化する。
【0084】
パンク補修材3がゲル化した後、空気入りタイヤ1をリム2から取り外す。このとき、パンク補修材3はゲル化しているので、飛び散って周囲を汚すことはない。
【0085】
リム2から空気入りタイヤ1を取り外した後、タイヤの内側にパンク補修材3がゲル化しているので、それを回収する。回収の際に、特許文献3に記載のエマルジョン凝固剤を振りかけてより固く凝固させてもよい。
【実施例】
【0086】
〈1.パンク補修材〉
第1表に示す組成でパンク補修材1および2を製造した。なお、第1表において、配合量は、液体質量(g)を表す。
【0087】
【表1】

【0088】
第1表において、各成分は次のものである。
・天然ゴムラテックス:Hytex HA(野村貿易社製、固形分約60質量%)
樹脂エマルジョン1:スミカフレックス950HQ(住化ケムテックス社製、エチレン-−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂エマルジョン、固形分約53質量%)
・樹脂エマルジョン2:E8559(旭化成ケミカルズ社製、メタクリル酸メチル樹脂エマルジョン、固形分約55質量%)
・凍結防止剤1:プロピレングリコール(ADEKA製)
・凍結防止剤2:グリセリン(和光純薬製)
【0089】
〈2.パンク補修材ゲル化剤〉
下記化学式(5)の化合物aを合成した。
【0090】
【化8】

【0091】
ただし、上記化学式(5)において、Rは、下記化学式(6)のアルケニル基である。
【0092】
【化9】

【0093】
ただし、上記化学式(6)において、p,qは、0または正の整数である。また、n=p+q+3を、Rの炭素数という。
【0094】
また、上記化学式(5)において、Rはヒドロキシエチル基(2−ヒドロキシエチル基)[下記化学式(7)]またはエチル基である。
【0095】
【化10】

【0096】
本実施例でRの種類というとき、ヒドロキシエチル基(「hEt」と記載する場合がある。)またはエチル基(「Et」と記載する場合がある。)を意味する。
【0097】
の炭素数、Rの種類が第2表に示す組合せである化合物a1〜a9を準備した。
【0098】
【表2】

【0099】
化合物aは、公知の合成方法に従って合成することができる。
ここに、化合物a5の合成方法を例示する。
4ツ口フラスコに、ラウリン酸200g(1モル)とアミノエチルエタノールアミン 109.2g(以下AEEAと略記)とを仕込んだ後、還流冷却器に80℃の温水を通しながら攪拌し、140℃へ加熱した。
その後、反応圧力を1時間かけて400mmHgに設定し、2時間反応させアミド化を行なった。
さらにその後、Nで常圧に戻し、NaHPO 3.0g(0.025モル)を添加した。
次に、反応温度を200℃、圧力を1.5時間かけて200mmHgまで下げ、この条件で1時間熟成を行なった。
その次に、更に圧力を約1.5時間かけて10mmHgまで下げ、この条件で1時間反応を行い過剰のAEEAを除去した。この間、生成水及びAEEAの蒸気はドライアイス/メタノール冷却トラップに捕集した。
反応終了物は、高速液体クロマトグラフィーを用いて組成分析を行い、目的の化合物a5であることを確認した。
【0100】
〈3.注入性・ゲル化性試験〉
各ゲル化剤のバルブからの注入のしやすさ(注入性)と、ゲル化に要する時間(ゲル化性)とについて、試験を行った。
【0101】
《常温試験(@20℃)》
実施例1〜11および比較例1〜15について、20℃環境下で、注入性およびゲル化性についての試験を行い、評価した。
注入性は、注入器でバルブからタイヤ内に容易に注入できたものを「○」、注入困難だったものを「△」、注入不能であったものを「×」と評価した。
ゲル化性は、ゲル化剤所定量をパンク補修材100gに添加したときのゲル化に要する時間(単位:分)を測定し、10分以下であったものをゲル化性に優れるとして「○」と評価し、10分よりも余計にかかったものをゲル化性が不十分であるとして「×」と評価した。
【0102】
《低温試験(@−20℃)》
実施例5〜11および比較例12〜15について、−20℃環境下で、注入性およびゲル化性についての試験を行い、評価した。
注入性は、常温試験と同様にして試験を行い、注入器でバルブからタイヤ内に容易に注入できたものを「○」、注入困難だったものを「△」、注入不能であったものを「×」と評価した。
ゲル化性は、ゲル化剤所定量をパンク補修材100gに添加したときのゲル化に要する時間(単位:分)を測定し、20分以下であったものをゲル化性に優れるとして「○」と評価し、20分よりも余計にかかったものをゲル化性が不十分であるとして「×」と評価した。
【0103】
常温試験および低温試験の結果は、第3表(実施例1〜4、比較例1〜11)および第4表(実施例5〜11、比較例12〜15)に、パンク補修材ゲル化剤の各成分およびその配合量(単位:g)と添加量(単位:g)、パンク補修材の種類および量(単位:g)、ならびに、注入性およびゲル化性の評価を記載して示した。
【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
なお、第3表および第4表において、ゲル化剤の成分中化合物a1〜a9は、第2表の化合物a1〜a9を、パンク補修材1、2は、第1表のパンク補修材1、2を、それぞれ意味し、第4表において、凍結防止剤1、2は、それぞれ、プロピレングリコール(ADEKA社製)、グリセリン(和光純薬社製)を意味する。
また、第3表および第4表において、ゲル化性の時間(分)は、時間(単位:分)を表すが、60+とは、60分以上であることを意味する。
【0107】
〈4.講評〉
《実施例1〜4》
実施例1〜4で使用したゲル化剤は、常温試験において、注入性については、注入が容易であったので、「○」と評価され、ゲル化性については、ゲル化が10分以内にされたので、「○」と評価された。
【0108】
よって、実施例1〜4のゲル化剤は、本発明の課題を解決するものである。
【0109】
以上をまとめると、化合物aで、R=炭素数13〜30のアルケニル基、R=ヒドロキシエチル基であると、化合物aを含有するゲル化剤は、本発明の課題を解決することが理解される。
【0110】
《実施例5〜11》
実施例5〜9で使用した、凍結防止剤を化合物a 10質量部に対して3〜5質量部含有するゲル化剤は、常温試験において、注入性については、注入が容易であったので、「○」と評価され、ゲル化性については、ゲル化が10分以内にされたので、「○」と評価され、さらに、低温試験において、注入性については、注入が容易であったので、「○」と評価され、ゲル化性については、ゲル化が20分以内にされたので、「○」と評価された。
【0111】
よって、実施例5〜9のゲル化剤は、本発明の課題を解決するものである。しかも、それだけではなく、低温下においても注入性およびゲル化性に優れるという別の特徴を有するものである。
【0112】
一方、実施例10で使用した、凍結防止剤を化合物a 10質量部に対して2質量部含有するゲル化剤は、低温試験において、注入性については、凍結してしまって注入が不可能であったので、「×」と評価され、実施例11で使用した、凍結防止剤を化合物a 10質量部に対して6質量部含有するゲル化剤は、低温試験において、注入性については、注入が容易であったので、「○」と評価されたが、ゲル化性については、ゲル化に22分を要したので、「×」と評価された。
【0113】
よって、実施例10および11のゲル化剤は、本発明の課題を解決するものである。しかし、実施例5〜9とは異なり、低温下においては注入性またはゲル化性が不十分であった。
【0114】
以上をまとめると、凍結防止剤を化合物a(R=炭素数13〜30のアルケニル基、R=ヒドロキシエチル基)10質量部に対して3〜5質量部含有するゲル化剤は、低温条件下でも注入性およびゲル化性を有するということが理解される。
【0115】
《比較例1〜11》
比較例4、5、9および10で使用した、化合物aの置換基Rの炭素数が23個または30個で置換基Rがエチル基であるもの(化合物a7またはa8)からなるゲル化剤は、常温試験における注入性は、注入容易であったため、「○」と評価されたが、ゲル化性は、ゲル化に10分超を要したため、「×」と評価された。
よって、比較例4、5、9および10のゲル化剤は、本発明の課題を解決するものではない。
【0116】
比較例6および11で使用した、化合物aの置換基Rの炭素数が33個で置換基Rがエチル基であるもの(化合物a9)を含有するゲル化剤は、常温試験における注入性は、ワックス状で注入困難であったため、「△」と評価され、さらに、ゲル化性は、ゲル化に10分超を要したため、「×」と評価された。
よって、比較例6および11のゲル化剤は、本発明の課題を解決するものではない。
【0117】
比較例1〜3、7および8で使用した、化合物aの置換基Rの炭素数が9または11個で置換基Rがエチル基またはヒドロキシエチル基であるもの(化合物a4、a5またはa6)を含有するゲル化剤は、常温試験における注入性は、固形で注入不可能であったため、「×」と評価され、さらに、ゲル化性は、ゲル化に10分超を要したため、「×」と評価された。
よって、比較例1〜3、7および8のゲル化剤は、本発明の課題を解決するものではない。
【0118】
すなわち、比較例1〜11のゲル化剤は、本発明の課題を解決するものではない。
【0119】
《比較例12〜15》
比較例12〜15は、それぞれ、化合物a6〜a9と、凍結防止剤とを含有するゲル化剤を使用するものである。
【0120】
比較例12で使用したゲル化剤は、化合物a6 10質量部と凍結防止剤15質量部とを含有するものであるが、常温試験においては注入性、ゲル化性ともに「×」と評価され、さらに、低温試験においては注入性は「○」と評価されたものの、ゲル化性はゲル化に60分以上を要したので「×」と評価された。
【0121】
比較例13で使用したゲル化剤は、化合物a7 10質量部と凍結防止剤15質量部とを含有するものであるが、常温試験においては注入性は「○」と評価されたものの、ゲル化性はゲル化に60分以上を要したので「×」と評価され、さらに、低温試験においては注入性は「○」と評価されたものの、ゲル化性はゲル化に60分以上を要したので「×」と評価された。
【0122】
比較例14で使用したゲル化剤は、化合物a8 10質量部と凍結防止剤15質量部とを含有するものであるが、常温試験においては注入性は「○」と評価されたものの、ゲル化性はゲル化に60分以上を要したので「×」と評価され、さらに、低温試験においては注入性は「○」と評価されたものの、ゲル化性はゲル化に60分以上を要したので「×」と評価された。
【0123】
比較例15で使用したゲル化剤は、化合物a9 10質量部と凍結防止剤15質量部とを含有するものであるが、常温試験においては注入性は「○」と評価されたものの、ゲル化性はゲル化に60分以上を要したので「×」と評価され、さらに、低温試験においては注入性は「○」と評価されたものの、ゲル化性はゲル化に25分を要したので「×」と評価された。
【0124】
よって、比較例12〜15のゲル化剤は、本発明の課題を解決するものではない。また、低温下における注入性またはゲル化性も十分でなく満足できない。
【0125】
以上をまとめると、化合物aの置換基Rの炭素数が13〜30個の範囲内であり、かつ、置換基Rがヒドロキシエチル基であると、化合物a(a1、a2、またはa3)を含有するゲル化剤は、注入性およびゲル化性が満足できるものであり、本発明の課題を解決できることが理解される(実施例1〜11を参照)。
【0126】
また、置換基Rの炭素数が13〜30個の範囲内であり、かつ、置換基Rがヒドロキシエチル基である化合物a 10質量部に対して凍結防止剤を3〜5質量部含有するゲル化剤は、20℃の常温条件下のみならず、−20℃の低温条件下においても注入性およびゲル化性が満足できるものであり、本発明の課題を解決するとともに、低温下においても注入性およびゲル化性に優れるという別の特徴も有することが理解される(実施例5〜9を参照)。
【符号の説明】
【0127】
1 空気入りタイヤ
2 リム(ホイール)
3 パンク補修材
4 注入器
5 パンク補修材ゲル化剤
6 バルブ(空気注入口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材(D)をゲル化するパンク補修材ゲル化剤であって、下記化学式(1)の化合物(α)を含有するパンク補修材ゲル化剤。
【化1】

ただし、上記化学式(1)において、Rは、炭素数13〜30個のアルキル基または炭素数13〜30個のアルケニル基である。
【請求項2】
前記化合物(α)を50質量%以上含有する、請求項1に記載のパンク補修材ゲル化剤。
【請求項3】
さらに前記化合物(α)10質量部に対して凍結防止剤(β)3〜5質量部を含有する、請求項1または2に記載のパンク補修材ゲル化剤。
【請求項4】
前記凍結防止剤(β)がプロピレングリコール、ジエチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載のパンク補修材ゲル化剤。
【請求項5】
20℃において液状であり、かつ、20℃において10分以内に前記パンク補修材(D)をゲル化する、請求項1〜4のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤。
【請求項6】
−20℃において液状であり、かつ、−20℃において20分以内に前記パンク補修材(D)をゲル化する、請求項1〜5のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤。
【請求項7】
前記樹脂エマルジョン(B)がエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンおよび/またはアクリル系エマルジョンを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤。
【請求項8】
前記凍結防止剤(C)が、プロピレングリコール、ジエチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤。
【請求項9】
前記天然ゴムラテックス(A)の固形分が、前記パンク補修材(D)のゴム固形分および樹脂固形分の合計のうち30質量%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載のパンク補修材。
【請求項10】
天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材(D)であって、該天然ゴムラテックス(A)の固形分が、該パンク補修材(D)のゴム固形分および樹脂固形分の合計のうち30質量%以上であるパンク補修材と、請求項1〜9のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤とを含む、パンク補修キット。
【請求項11】
天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材(D)であって、該天然ゴムラテックス(A)の固形分が該パンク補修材(D)のゴム固形分および樹脂固形分の合計のうち30質量%以上であるパンク補修材(D)を内腔に注入してパンクを補修したリム組みされた空気入りタイヤに、請求項1〜9のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤を注入し、該パンク補修材(D)と該パンク補修材ゲル化剤とを混合させ、該パンク補修材をゲル化させる、請求項1〜9のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤の使用方法。
【請求項12】
天然ゴムラテックス(A)と樹脂エマルジョン(B)と凍結防止剤(C)とを含有するパンク補修材において該天然ゴムラテックスの固形分が該パンク補修材中のゴム成分および樹脂成分の固形分合計質量の30質量%以上であるパンク補修材(D)を内腔に注入してパンクを補修したリム組みされた空気入りタイヤに、請求項1〜9のいずれかに記載のパンク補修材ゲル化剤を注入し、該パンク補修材と該パンク補修材ゲル化剤とを混合させ、該パンク補修材をゲル化させ、ゲル化したパンク補修材を回収する、タイヤ内に残存するパンク補修材の回収方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−74194(P2011−74194A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226526(P2009−226526)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】