説明

パーツフィーダ

【課題】 水平非線形振動搬送は、搬送路上のワークを搬送方向に送って戻るときに、ワークの垂直加速度を重力加速度より小さくして相対滑りを生じさせてワークを搬送させるが、滑りを生じさせ易くするためには、搬送路に対するワークの摺動抵抗を軽減しなければならず大きな駆動力を必要とする。また、搬送時の加速度がワークとの静摩擦係数より大きくなるとワークとの間に滑りが発生して搬送効率が低下する問題が生じる。
【解決手段】 往復に加速度差のある振動で振動板を振動させることにより、該振動板に供給したワークを直線状に搬送する部品供給装置であって、該振動板は、遊動自在に回転可能に設けた複数の振動リンクに可回転に連結支持して弧振動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーツフィーダの改良に関するものである。

【背景技術】
【0002】
自動組立装置などにワークを整列・供給することを目的としてパーツフィーダが広く利用されている。このようなパーツフィーダは、板ばね等で支持した搬送路を電磁石や圧電素子などの振動機構で振動させることによって、搬送路上のワークを搬送する構造である。
【0003】
本発明者が発明した搬送方法として水平非線形振動がある。これは、水平回転するボウル若しくは水平に直線移動するフィーダを、往復に加速度差をつけて水平振動させることにより、摩擦力と慣性力を利用してワークを搬送する方法である。
【0004】
特許文献1に示す水平非線形振動によるパーツフィーダにおいては、水平方向の振動だけでワークを搬送するため、騒音や破損などの問題がほとんど生じないという優れた効果があった。
【特許文献1】実開昭55−007852号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水平非線形振動搬送では、搬送路上のワークを搬送方向に送って戻るときの搬送路の前進端付近において、ワークの垂直加速度を重力加速度より小さくして相対滑りを生じさせることで搬送の効率化が図られる。ところが、滑りを生じさせ易くするためには、搬送路に対するワークの摺動抵抗を軽減しなければならず大きな駆動力を必要とする。また、搬送時の加速度がワークとの静摩擦係数より大きくなるとワークとの間に滑りが発生して搬送効率が低下する問題が生じる。

【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は上記問題に鑑み鋭意研究の結果、本発明を成し得たものであり、その特徴とするところは、往復に加速度差のある振動で振動板を振動させることにより、該振動板に供給したワークを直線状に搬送する部品供給装置であって、該振動板は、遊動自在に回転可能に設けた複数の振動リンクに可回転に連結支持し、弧振動させることにある。
【0007】
ここで、本明細書中でいう「振動板」とは、組立装置などに供給するワークを載置搬送するための送路を備え、別体の振動装置で送路方向に振動させる部材をいう。本発明においては、振動板を複数の振動リンクに可回転に連結支持する。この状態で送路方向に往復運動させることにより、振動板を円弧振動させる。そして、振動板を往復に加速度差をつけて振動させることで、搬送の効率化を図っている。
【0008】
振動板は、各振動リンクの回転軸との距離を変えたり、各振動リンクと連結角度を変えるなどの方法により、必ずしも平行移動させなくてもよい。また、振動リンクの回転軸は回転に伴って転動させるなどの方法で支持してもよく、円弧振動以外の振動でもよい。本発明においては、円弧振動など弧振動させる範囲としては、基本的に最下端の鉛直付近から水平付近の範囲であり、振動板が斜め前方に向かって上昇する過程に前進端を設ける。
【0009】
ワークの移送は、振動板の送路との静摩擦係数を上限とする定加速度で搬送するのが理想的であることから、カム駆動による振動が好ましい。カムによる振動としては、カムとバネなどの弾性体との組み合わせや溝カムを用いる場合などである。ただ、本発明では、水平方向の振幅が長く、垂直方向の振幅が短い軌跡の弧振動としたことにより、前進端付近での傾斜角を大きくとることができる。従って、振動板の前進端におけるワークの鉛直方向の加速度が小さくなり、戻り開始時点での滑りが大きくなる。このため、電磁石や圧電素子等を利用した振動装置でも効率よく駆動させることができる。

【発明の効果】
【0010】
本発明に係るパーツフィーダは、ワークを搬送することを目的として往復に加速度差をつけて振動させる振動板を、遊動自在に可回転に設けた複数の振動リンクに連結支持したことにより、送り方向の前進端付近での滑りをより大きくして非線形振動機構による搬送効率を高くすることが可能となった。
【0011】
また、振動板を振動リンクによる懸垂構造で回転可能に支持したことにより、駆動抵抗が極めて小さく、振動装置の小容量化が可能となるなど実用上極めて有益な効果を有するものである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、可回転に設けた複数の振動リンクに振動板を回転可能に連結支持して、往復に加速度差のある弧振動させることにより、上述課題を解決した。

【実施例1】
【0013】
図1は、本発明に係るパーツフィーダ1の一実施例を示すもので、ベース2に可回転に設けた3つの振動リンク3に、振動板4を回転可能に連結支持した構造である。本例では、ベース2に振動装置5を設け該振動板4をほぼ水平方向に振動させると共に、コイルばね6で該振動板4を搬送方向に付勢している。
【0014】
振動板4は、図2のように固定ピン31で可回転に設けた振動リンク3に、振動ピン32で回転可能に連結支持した構造である。図のハッチングを施した振動リンク3の位置が自然に収束する位置であり、例えば図の点線で示す範囲で振動させる。
【0015】
この場合の円弧振動の軌跡を図3に示す。振動板4を円弧振動させることで、垂直方向の振幅Vに対し水平方向の振幅Hを大きくすることができ、しかも前進端での傾斜角度が大きくなる。このことは、ワークの上下移動を少なくして搬送距離を長くできることに繋がり、その上前進端でのワークの鉛直方向の加速度を小さくして、ワークを振動板4から離反させ易く搬送効率を高めることが可能となる。
【0016】
図1に示した振動板4を振動させる振動装置5は、図4に示す非線形カム51によりカムフォロア52を往復振動させる構造である。図1のパーツフィーダ1では、振動板4をコイルばね6で搬送方向に付勢させており、ロッド53を介して振動板4に連結したカムフォロア52で復帰させる。これにより、振動の往復に加速度差を生じさせてワークの搬送が行われる。つまり、コイルばね6でワークとの間に滑りを生じさせることなく振動板4を搬送方向に送り、非線形カム51により振動板4を大きな加速度で後退させることで、ワークとの間に滑りを生じさせる振動である。

【実施例2】
【0017】
振動板4は、必ずしも平行移動させる必要はなく、図5(a)のように各振動リンク3の固定ピン31と振動ピン32の長さ(r<R)を変えたり、同図(b)のように振動リンク3の角度を変えて振動板4と連結してもよい。

【実施例3】
【0018】
また、振動リンク3の固定ピン31は定位置で回転させるだけでなく、図6のように回転に伴って転動させるように支持すれば、楕円軌跡の弧振動させることができ、円弧振動よりも水平方向の振幅Hの割合を高くすることができる。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るパーツフィーダの一実施例を示す正面図である。(実施例1)
【図2】本発明に係るパーツフィーダにおける振動板と振動リンクの連結状態を示す概略正面図である。
【図3】振動板を円弧振動させたときの軌跡を示す概略図である。
【図4】図1に示したパーツフィーダの振動装置の一実施例を示す概略図である。
【図5】本発明に係るパーツフィーダの他の実施例を示すもので、(a)(b)はそれぞれ振動板と振動リンクの連結を示す概略正面図である。(実施例2)
【図6】本発明に係るパーツフィーダのさらに他の実施例を示すもので、振動リンクの固定ピンを転動可能に支持した状態を示す概略正面図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0020】
1 パーツフィーダ
2 ベース
3 振動リンク
31 固定ピン
32 振動ピン
4 振動板
5 振動装置
51 非線形カム
52 カムフォロア
53 ロッド
6 コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復に加速度差のある振動で振動板を振動させることにより、該振動板に供給したワークを直線状に搬送する部品供給装置であって、該振動板は、遊動自在に回転可能に設けた複数の振動リンクに可回転に連結支持し、弧振動させることを特徴とするパーツフィーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−227391(P2009−227391A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73860(P2008−73860)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(599148721)株式会社モートロン (2)
【Fターム(参考)】