説明

パーフルオロポリエーテル油組成物

【課題】グラファイトや二硫化モリブデンの共存下においても高温耐久性にすぐれた潤滑剤組成物としてのパーフルオロポリエーテル油組成物を提供する。
【解決手段】(CF2O)n基を有するパーフルオロポリエーテル基油、好ましくは増稠剤添加パーフルオロポリエーテル基油にパーフルオロポリエーテル基を有するジ-またはモノ-脂肪族アミド系化合物をこれら各成分の合計量中0.01〜50重量%の割合で添加してなり、グラファイトまたは二硫化モリブデンを焼結成分とする焼結含油軸受に含浸して使用され、あるいはグラファイトまたは二硫化モリブデンを含有する金属部品と接触して使用されるパーフルオロポリエーテル油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロポリエーテル油組成物に関する。更に詳しくは、潤滑剤組成物として、グラファイトまたは二硫化モリブデンを焼結成分とする焼結含油軸受に含浸して使用され、あるいはグラファイトまたは二硫化モリブデンを含有する金属部品と接触して使用されるパーフルオロポリエーテル油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グリースは、自動車、電気機器、建設機械、情報機器、産業機械、工作機械等の各種機械およびそれらを構成する各部品の潤滑剤として広く使われている。近年、これらの機械の高速化、小型化、高性能化、軽量化に伴い、これら周辺機器の使用時における温度は、ますます上昇する傾向にある。
【0003】
一方、軽量化や低コスト化、密封性などの要求から樹脂成形品、ゴム成形品が多く使用されるようになり、静粛性向上という要望から、さらなる密封性も求められている。
【0004】
このような状況下において、高温下における使用が多くなりあるいは密封性確保のために用いられる樹脂やゴムから発生する腐食性ガス、例えば硫化水素ガス、塩化水素ガス、亜硫酸ガス、アンモニア等の雰囲気に金属部分がさらされることが多くなっている。また、過酷な使用条件により、外部から侵入したこのような腐食性ガスにさらされることも多い。
【0005】
かかる腐食性ガスによる金属部分の腐食といった問題を解決するために、フルオロシリコーン油とフッ素樹脂よりなるグリースにより、硫化水素の浸透を抑え、接点材の腐食を防ぐことが提案されている(特許文献1参照)
【0006】
この特許文献1によれば、フルオロシリコーン油の他にも、フルオロカーボン油あるいはフルオロエステル、フッ素変性パラフィン油、フッ素変性エステル油などの含フッ素化合物についても同様の効果があるとされている。しかしながら、これらの含フッ素化合物のすべてに硫化水素の浸透を抑える効果が同程度あるわけではなく、フルオロシリコーン油についても、硫化水素の浸透は抑えられるものの耐摩耗性が悪く、接点材を摩耗させてしまうという結果を招いている。また、フルオロエステルやフッ素変性パラフィン油、フッ素変性エステル油では耐熱性が悪く、高温度雰囲気下では使用できないという問題がみられる。
【0007】
一方、下記特許文献2には、-(CH2CF2CF2O)a-(CHClCF2CF2O)b-(CCl2CF2CF2O)c-(CHFCF2CF2O)d-(CFClCF2CF2O)e-(CF2CF2CF2O)f-で示される繰り返し単位を有するパーフルオロポリエーテルを基油とし、フッ素樹脂を組成物全量の0.5〜60重量%添加混合したフッ素グリースを用いて、耐熱性や耐薬品性を向上させることが提案されているが、腐食性ガスに対する浸透性については何ら触れられていない。
【0008】
また、下記特許文献3には、パーフルオロポリエーテル基油に、増稠剤として脂肪族ジカルボン酸金属塩、モノアミドモノカルボン酸金属塩またはモノエステルカルボン酸金属塩の少くとも一種を添加した、洗浄性、耐摩耗性、耐漏洩性に優れたフッ素グリースが提案されているが、この場合においても腐食性ガスに対する耐腐食性についての言及はみられない。
【0009】
さらに、下記特許文献4には、含フッ素有機アミド系化合物を添加したフッ素オイルについての提案もみられるが、腐食性ガスに対する耐腐食性についての言及はみられない。
【0010】
なお、下記特許文献5には、含フッ素有機リン系化合物、含フッ素有機チオリン系化合物および含フッ素有機アミド-リン系化合物を添加したフッ素系潤滑剤が腐蝕防止効果を有することが記載されているが、この腐蝕防止効果は湿度100%の霧室に暴露された場合のものであり、腐食性ガスに対する耐腐食性についての検討は行われていない。
【0011】
さらに、高温および高荷重下で使用される焼結含油軸受には、グラファイトや二硫化モリブデン等の固体潤滑剤が配合されるケースが多くみられ、これらの固体潤滑剤は、益々過酷となる使用条件に対応すべく、配合量が増える傾向にある。また、これらの固体潤滑剤は、焼結含油軸受の材料として使用されるばかりではなく、軸受の周辺環境に存在する場合も多くみられる。
【0012】
このような環境から、潤滑剤は意図せずにグラファイトや二硫化モリブデンと接触したり、曝されたりすることになり、パーフルオロポリエーテル油についてもその例外ではない。パーフルオロポリエーテル油の中でも、ポリマーのくり返し単位として(CF2O)n基を有するものは、特にグラファイトまたは二硫化モリブデンの共存下では、例えば約200〜250℃といった高温での耐久性に乏しく、蒸発、揮散したりして消失する割合の高いことが、本発明者らによって新たに見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭59−189511号公報
【特許文献2】特公平2−32314号公報
【特許文献3】特開2001−354986号公報
【特許文献4】特開2001−207186号公報
【特許文献5】特開平6−136379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、グラファイトや二硫化モリブデンの共存下においても高温耐久性にすぐれた潤滑剤組成物としてのパーフルオロポリエーテル油組成物を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの本発明の目的は、(CF2O)n基を有するパーフルオロポリエーテル基油、好ましくは増稠剤添加パーフルオロポリエーテル基油にパーフルオロポリエーテル基を有するジ-またはモノ-脂肪族アミド系化合物をこれら各成分の合計量中0.01〜50重量%の割合で添加してなり、グラファイトまたは二硫化モリブデンを焼結成分とする焼結含油軸受に含浸して使用され、あるいはグラファイトまたは二硫化モリブデンを含有する金属部品と接触して使用されるパーフルオロポリエーテル油組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0016】
パーフルオロポリエーテル基油、好ましくは増稠剤添加パーフルオロポリエーテル基油に、パーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族ジアミド系化合物およびパーフルオロポリエーテル基を有する含フッ素モノアミド系化合物の少なくとも一種を、0.01〜50重量%の割合で添加したパーフルオロポリエーテル油組成物は、潤滑剤組成物、特にグリースとして用いられたとき、パーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族アミド系化合物添加剤が、軸受材質や外環境からのグラファイトや二硫化モリブデン等に吸着して、グラファイトや二硫化モリブデンによるパーフルオロポリエーテル油の変質を抑制するという作用を有する。
【0017】
パーフルオロポリエーテル油の高温特性(高温耐久性)は、ポリマーのくり返し単位として(CF2O)n基を有するか否かという構造によるばかりではなく、焼結含油軸受に一成分として用いられたグラファイトまたは二硫化モリブデンとの接触により高温特性が急激に低下するが、本発明によって、グラファイトまたは二硫化モリブデンを焼結成分として含有する焼結含油軸受に含浸して使用される用途やグラファイトまたは二硫化モリブデンを含有するボールベアリング等の金属部品と接触して使用する用途に用いられた場合においても、ポリマーのくり返し単位の影響を殆んど受けずに、しかも高温特性が著しく損なわれることのないパーフルオロポリエーテル油組成物が提供される。なお、金属部品と接触して使用する用途には、グラファイトや二硫化モリブデンが飛散したり、混入したりする雰囲気、例えばブラシ、シャフト等のモータ部品由来のグラファイトや二硫化モリブデンと接触する場合などが含まれる。グラファイトや二硫化モリブデンが飛散したり、混入する雰囲気は、これらの場合に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】パーフルオロポリエーテル油にグラファイトまたは二硫化モリブデンを添加した場合の200℃におけるオイル消失率の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
基油として用いられるパーフルオロポリエーテルとしては、一般式
RfO(CF2O)x(C2F4O)y(C3F6O)zRf
で表わされるものが用いられ、ポリマーのくり返し単位として(CF2O)n基を有するものも有効に使用される。具体的には、例えば下記一般式(1)、(2)で表わされるようなものが用いられる。なお、Rfはパーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等の炭素数1〜5、好ましくは1〜3のパーフルオロ低級アルキル基である。
(1) RfO(CF2CF2O)m(CF2O)nRf
ここで、m+n=3〜200、m:n=10〜90:90〜10であり、またCF2CF2O基およびCF2O基は主鎖中にランダムに結合しているものであり、テトラフルオロエチレンの光酸化重合で生成した先駆体を完全にフッ素化することによって得られる。
(2) RfO[CF(CF3)CF2O]p(CF2CF2O)q(CF2O)rRf
ここで、p+q+r=3〜200でqおよびrは0であり得、(q+r)p=0〜2:1であり、またCF(CF3)CF2O基、CF2CF2O基およびCF2O基は主鎖中にランダムに結合しているものであり、ヘキサフルオロプロペンおよびテトラフルオロエチレンの光酸化重合で生成した先駆体を完全にフッ素化することにより得られる。
【0020】
パーフルオロポリエーテル油組成物が潤滑剤組成物、特にグリースとして用いられる場合には、以上のパーフルオロポリエーテル油(1)、(2)から選ばれる少なくとも1種に、添加剤としてのパーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族アミド系化合物が添加される。パーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族アミド系化合物は、これら各成分の合計量中0.01〜50重量%を占める割合で添加される。すなわち、好ましくは増稠剤が添加されたパーフルオロポリエーテル油(1)および(2)の少なくとも一種50〜99.99重量%、好ましくは60〜99.9重量%に対して、パーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族アミド系化合物添加剤の少なくとも一種が0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%添加されて用いられる。
【0021】
パーフルオロポリエーテル油の添加剤として用いられるパーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族アミド系化合物としては、一般にパーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族ジアミド系化合物およびパーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族モノアミド系化合物の少なくとも一種が用いられ、例えば次のような一般式[I]、[II]、[III]で示される脂肪族アミド系化合物が挙げられる。脂肪族アミド系化合物を用いた場合には、立体障害がないため、金属への吸着性が向上し、腐食性ガス遮断効果が認められる。
RCONHR1NHCOR [I]
R2NHCOR [II]
R2NHCOR′CONHR2 [III]
R1:炭素数1〜30のアルキレン基であり、アルキレン基の水素原子の一部または全
部がハロゲン原子で置換されていてもよい
R2:炭素数1〜31のアルキル基であり、アルキル基の水素原子の一部または全部
がハロゲン原子で置換されていてもよい
R:RfO[CF(CF3)CF2O]aCF(CF3)-、RfO(CF2CF2CF2O)aCF2CF2-、RfO[(CF2CF2O)a
(CF2O)b]CF2-またはRfO[(CF2CF2O)a(CF2O)b]CF(CF3)-であり、Rfは炭素数1〜5
、好ましくは1〜3のパーフルオロ低級アルキル基であり、a、bは1〜30の整数
である
R′:-[CF(CF3)CF2O]aCF(CF3)-、-(CF2CF2CF2O)aCF2CF2-、-[(CF2CF2O)a
(CF2O)b]CF2-または-[(CF2CF2O)a(CF2O)b]CF(CF3)-であり、a、bは1〜30の整
数である
【0022】
これらのパーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族アミド系化合物は、好ましい態様とされる増稠剤を添加した前記パーフルオロポリエーテル油(1)または(2)のみの場合と比べて、グラファイト、二硫化モリブデンの共存下での高温耐久性の低下を抑制するものである。すなわち、パーフルオロポリエーテル油(1)は、上記パーフルオロポリエーテル油の中で、最も高粘度指数、低揮発性、低摩擦係数を有するが、分子中に(CF2O)n基があるため、グラファイトや二硫化モリブデンの共存下での高温耐久性を低下させ、同様に(CF2O)n基を有するパーフルオロポリエーテル油(2)も、優れた耐摩耗性を有し、グラファイトや二硫化モリブデンの共存下では高温耐久性を低下させるものの、パーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族アミド系化合物を添加することにより、グラファイト、二硫化モリブデンの共存下での高温耐久性の低下の抑制を図ることができる
【0023】
これらパーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族アミド系化合物が添加されるパーフルオロポリエーテル油基油は、40℃における動粘度が、2〜2000mm2/秒、好ましくは5〜1500mm2/秒の範囲にあるものを使用することができる。動粘度がこれ以下のものを用いると、蒸発損失の増加あるいは油膜強度の低下など、寿命の低下や摩耗、焼き付きの原因となる可能性があり、一方動粘度がこれ以上のものを用いると、粘性抵抗の増加など消費動力やトルクが大きくなる不具合が生じる可能性がある。
【0024】
このような基油には、パーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族アミド系化合物と共に増稠剤を添加することができる。増稠剤としては、従来から潤滑剤として用いられているポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロペン共重合体、パーフルオロアルキレン樹脂等が用いられる。ポリテトラフルオロエチレンは、テトラフルオロエチレンの乳化重合、けん濁重合、溶液重合などの方法によってポリテトラフルオロエチレンを製造し、それを熱分解、電子線照射分解、物理的粉砕などの方法によって処理して数平均分子量Mnを約1000〜1000000程度としたものが用いられる。また、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとの共重合反応および低分子量化処理も、ポリテトラフルオロエチレンの場合と同様にして行われ、数平均分子量Mnを約1000〜600000程度としたものが用いられる。なお、分子量の制御は、共重合反応時に連鎖移動剤を用いても行うことができる。得られた粉末状のフッ素樹脂は、一般に約500μm以下、好ましくは約0.1〜30μmの平均一次粒径を有する。
【0025】
また、これらのフッ素樹脂以外の増稠剤として、リチウム石けん等の金属石けん、ウレア樹脂、ベントナイト等の鉱物、有機顔料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドも使用できるが、耐熱性、潤滑性の面から考えると、好ましくは脂肪族ジカルボン酸金属塩、モノアミドモノカルボン酸金属塩、モノエステルカルボン酸金属塩、ジウレア、トリウレア、テトラウレアなどが用いられる。
【0026】
これらのフッ素樹脂粉末、金属石けん、ウレア、その他の増稠剤は、基油、添加剤との合計量中50重量%以下、一般には0.1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%の割合で添加されて用いられる。これらの増稠剤がこれ以上の割合で用いられると、組成物が硬くなりすぎるようになり、一方これ以下の割合で用いられると、フッ素樹脂等の増稠能力が発揮されず、離油の悪化を招き、耐飛散・漏洩性の向上が十分期待できなくなる。
【0027】
組成物中には、さらに従来潤滑剤に添加されている酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、極圧剤、油性剤、フッ素樹脂以外の他の固体潤滑剤等のその他の添加剤を必要に応じて添加することができる。酸化防止剤としては、例えば2,6-ジ第3ブチル-4-メチルフェノール、4,4′-メチレンビス(2,6-ジ第3ブチルフェノール)等のフェノール系の酸化防止剤、アルキルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、フェノチアジン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化フェノチアジン等のアミン系の酸化防止剤などが挙げられる。
【0028】
防錆剤としては、例えば脂肪酸、脂肪酸アミン、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルスルホン酸アミン塩、酸化パラフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられ、また腐食防止剤としては、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、チアジアゾール等が挙げられる。
【0029】
極圧剤としては、例えばリン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等のリン系化合物、スルフィド類、ジスルフィド類等のイオウ系化合物、ジアルキルジチオリン酸金属塩、ジアルキルジチオカルバミン酸金属塩等のイオウ系化合物金属塩などが挙げられる。
【0030】
油性剤としては、例えば脂肪酸またはそのエステル、高級アルコール、多価アルコールまたはそのエステル、脂肪族アミン、脂肪酸モノグリセライド等が挙げられる。
【0031】
さらに、窒化ホウ素、窒化シラン等のフッ素樹脂以外の他の固体潤滑剤を添加して用いることもできる。
【0032】
組成物の調製は、(a)パーフルオロポリエーテル基油に予め合成された含フッ素有機アミド系化合物、増稠剤および他の必要な添加剤を所定量添加し、一般に使用されている分散方法、例えば3本ロールまたは高圧ホモジナイザで十分に混練する方法、あるいは(b)加熱攪拌が可能な反応釜に、パーフルオロポリエーテル油とイソシアネートを加えて加熱し、そこにアミンを所定量添加して反応させ冷却した後、3本ロールまたは高圧ホモジナイザで十分に混練する方法等によって行われる。
【実施例】
【0033】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0034】
実施例1〜11、比較例1〜6
[基油]

[添加剤]
B-1:RfO[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)-CONH-CH2CH3
B-2:RfO[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)-CONH-C4H8-NHCO-CF(CF3)[OCF2CF(CF3)]nORf
B-3:CH3CH2-NHCO-[(CF2CF2O)m(CF2O)n]CF2-CONH-CH2CH3
[増稠剤]
C-1:乳化重合法ポリテトラフルオロエチレン(数平均分子量Mn約10〜20万、平均
一次粒径0.2μm)
C-2:けん濁重合法ポリテトラフルオロエチレン(数平均分子量Mn約1〜10万、平均
一次粒径5μm)
C-3:溶液重合法テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロペン共重合体(数平
均分子量Mn約5〜15万、平均一次粒径0.2μm)
C-4:アゼライン酸リチウム
C-5:ヘキサメチレンジイソシアネートとオクチルアミンとの反応物
【0035】
上記基油、添加剤および増稠剤を組合せ、前記(a)の方法によってパーフルオロポリエーテル油組成物を調製し、この組成物の性能を以下の各種試験方法によって評価した。
[硫化ガス試験]
40×40×5mmの銅板または銀板を試験片として、定流量フロー型ガス腐食試験装置を用い、H2S濃度:3%、温度:40℃、湿度:90%、時間:96時間の条件下における腐食試験後、グリースを拭き取った表面のEDS(エネルギー分散型X線分光)分析を行い、イオウが検出された場合を「あり」、検出されなかった場合を「なし」として評価
[相手材に対する耐摩耗性評価試験]
SUJ2(1/2インチ)、20等級を試験片として、シェル四球試験機を用い、回転数:20回/秒、荷重:392.3N(40Kgf)、温度:室温、時間:60分間の条件下で摩耗試験を行ない、試験後の摩耗痕径を測定
【0036】
以上の各試験結果は、用いられた基油、添加剤および増稠剤の組合せと共に、次の表1に示される。なお、実施例8〜9に示されるように、(CF2O)n基を有しないパーフルオロポリエーテル油(A-3)、(A-4)等の併用は許容される。

【0037】
上記実施例11のパーフルオロポリエーテル油組成物または比較例6のパーフルオロポリエーテル油に、試料中10重量%を占める量のグラファイト粉末(日本黒鉛製品リン片状黒鉛粉末CB-150;固定炭素分98.0%以上、平均粒径40μm)または二硫化モリブデン(大東潤滑製品LM13-SMパウダー;平均粒径0.4μm)を添加した試験用試料を、37mm径のガラス製シャーレに0.6g採取し、これをシャレーに均一に塗布した後、200℃の恒温槽中に静置し、オイルの重量減少率(オイル消失率)の経時的変化を測定した。
【0038】
得られた結果は、図1のグラフに示される。この結果から、ポリマーのくり返し単位として(CF2O)n基を有するパーフルオロポリエーテル油は、グラファイトまたは二硫化モリブデンの存在下では高温耐久性がなく、迅速にオイルが蒸発、揮散して消失するが、パーフルオロポリエーテル基を有する脂肪族アミド系化合物をそこに共存させると、高温耐久性をかなり高め得ることが分る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(CF2O)n基を有するパーフルオロポリエーテル基油にパーフルオロポリエーテル基を有するジ-またはモノ-脂肪族アミド系化合物を、これら各成分の合計量中0.01〜50重量%の割合で添加してなり、グラファイトまたは二硫化モリブデンを焼結成分とする焼結含油軸受に含浸して使用され、あるいはグラファイトまたは二硫化モリブデンを含有する金属部品と接触して使用されるパーフルオロポリエーテル油組成物。
【請求項2】
2〜2000mm2/秒の粘度(40℃)を有するパーフルオロポリエーテル基油が用いられた請求項1記載のパーフルオロポリエーテル油組成物。
【請求項3】
パーフルオロポリエーテル基を有するアミド系化合物が、一般式
RCONHR1NHCOR [I]
ここで、R:RfO[CF(CF3)CF2O]aCF(CF3)-、RfO(CF2CF2CF2O)aCF2CF2-、RfO[(CF2
CF2O)a(CF2O)b]CF2-またはRfO[(CF2CF2O)a(CF2O)b]CF(CF3)-であり、Rfは
炭素数1〜5のパーフルオロ低級アルキル基であり、a、bは1〜30の整数で
ある
R1:炭素数1〜30のアルキレン基であり、該アルキレン基の水素原子の一部ま
たは全部がハロゲン原子で置換されていてもよい
で表わされる化合物である請求項1記載のパーフルオロポリエーテル油組成物。
【請求項4】
パーフルオロポリエーテル基を有するアミド系化合物が、一般式
R2NHCOR [II]
ここで、R:RfO[CF(CF3)CF2O]aCF(CF3)-、RfO(CF2CF2CF2O)aCF2CF2-、RfO[(CF2
CF2O)a(CF2O)b]CF2-またはRfO[(CF2CF2O)a(CF2O)b]CF(CF3)-であり、Rfは
炭素数1〜5のパーフルオロ低級アルキル基であり、a、bは1〜30の整数で
ある
R2:炭素数1〜31のアルキル基であり、該アルキル基の水素原子の一部または
全部がハロゲン原子で置換されていてもよい
で表わされる化合物である請求項1記載のパーフルオロポリエーテル油組成物。
【請求項5】
パーフルオロポリエーテル基を有するアミド系化合物が、一般式
R2NHCOR′CONHR2 [III]
ここで、R′:-[CF(CF3)CF2O]aCF(CF3)-、-(CF2CF2CF2O)aCF2CF2-、-[(CF2CF2O)a
(CF2O)b]CF2-または-[(CF2CF2O)a(CF2O)b]CF(CF3)-であり、a、bは1〜30
の整数である
R2:炭素数1〜31のアルキル基であり、該アルキル基の水素原子の一部または
全部がハロゲン原子で置換されていてもよい
で表わされる化合物である請求項1記載のパーフルオロポリエーテル油組成物。
【請求項6】
潤滑剤組成物として用いられる請求項1記載のパーフルオロポリエーテル油組成物。
【請求項7】
基油およびパーフルオロポリエーテル基含有脂肪族アミド系化合物添加剤との合計量中50重量%以下の割合で、増稠剤がさらに添加された請求項1記載のパーフルオロポリエーテル油組成物。
【請求項8】
さらに酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、極圧剤、油性剤およびフッ素樹脂以外の固体潤滑剤の少なくとも一種が添加された請求項1または7記載のパーフルオロポリエーテル油組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−7091(P2010−7091A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237874(P2009−237874)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【分割の表示】特願2006−535685(P2006−535685)の分割
【原出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000102670)NOKクリューバー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】