説明

パームアッシュカリ肥料

【課題】水酸化カリウムを主成分とするパームアッシュカリに過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料などリン酸質肥料を化学反応させ、リン酸二水素カリウムを生成して成る潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料を提供する。
【解決手段】パームアッシュカリ100重量部に対してリン酸質肥料20重量部以上を配合する潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料である。リン酸質肥料が、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料およびこれらを原材料として成された肥料からなる群の少なくともいずれか一つを用いた潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料である。パームアッシュカリ100重量部に対してリン酸質肥料20重量部以上を配合したものにバインダーを添加して造粒する潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料に関し、更に詳細には、パームアッシュカリに農林水産省の定める肥料公定規格のなかのリン酸質肥料である過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料などを配合してパームアッシュカリの潮解性を抑制することに関する。
【背景技術】
【0002】
椰子油の原料となるパーム椰子(Empty Bunch)を燃焼させた灰はパームアッシュと呼ばれる草木灰で、他の草木灰に比べてカリウム成分の豊富なカリ肥料として使用され、パームアッシュカリの名称で市販されている。
しかしながら該パームアッシュカリは比重が小さく、且つ粉状であるために飛散し易く、取扱いに工夫を必要としている。その工夫の一例として、該パームアッシュカリを他の肥料と混合して複合肥料とし、粒状化して飛散を防止する方法が取られている。具体的には、パーム椰子の燃焼灰に水または助剤を10〜25%添加混合して粘着性、凝集性を高め、更に次の工程で骨粉、ナタネ油かす、魚かすなどの有機物含有肥料や、窒素、リン酸、カリ成分を含有する化学肥料を混合し、しかる後に造粒することにより密度を高め、飛散を防止することを目的とした提案(特許文献1)がある。
一方、該パームアッシュカリの主成分が水酸化カリウムであるために空気中の水分を取り込み、該パームアッシュカリは潮解性を発現して液状になり易い性質を有している。この潮解性は該パームアッシュカリを粒状に成形したときに顕著に現れ、該パームアッシュカリの取扱い方法に新たな工夫を必要としている。
しかしながら、このパームアッシュカリの潮解性を抑制する従来技術は存在せず、前記特許文献1にあるように造粒により飛散は防止できても、粒状品中のパーム椰子燃焼灰の量が多いと潮解性が次第に発現して施肥作業が困難になり、パーム椰子燃焼灰混合肥料による高含有カリ肥料として常時使用でき得ないものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−194066号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、水酸化カリウムを主成分とするパームアッシュカリに過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料などリン酸質肥料を化学反応させ、リン酸二水素カリウムを生成して成る潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、請求項1記載の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料は、パームアッシュカリ100重量部に対してリン酸質肥料20重量部以上を配合することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料は、リン酸質肥料が過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料およびこれらを原材料として成された肥料からなる群の少なくともいずれか一つを用いたものである。
【0007】
請求項3記載の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料は、パームアッシュカリ100重量部に対してリン酸質肥料20重量部以上を配合したものにバインダーを添加して造粒することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料は、バインダーが糖蜜発酵副産濃縮液、リグニンスルホン酸塩、コーンスチープリカー、CMC、でんぷん粉、石膏、水からなる群の少なくともいずれか一つを用いたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料は、パームアッシュカリに含有された本来潮解性のある水酸化カリウムに対して、これに配合された過リン酸石灰、重過リン酸石灰などに含まれるリン酸二水素カルシウムや、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料などに含まれるリン酸二水素カルシウムあるいはリン酸二水素マグネシウムが混合されることによって、水酸化カリウムがリン酸二水素カリウムに化学変化するので、水酸化カリウムの潮解性をなくすことが可能となる。このため、保存中に潮解を起こし粒子同士が湿った泥状になって付着してしまうことが解消され得る。
このパームアッシュカリ肥料は潮解を起こさないので、耕地に散布する際に肥料粒子を分散させることができ、支障なく施肥作業を行うことが可能になる。また、バインダーと共に造粒しているので比重が大きく、その粒子は自壊することのない強度を保持でき、乾燥による微粉化も起こらないので施肥作業時に粉体飛散や流亡し難く、元肥、追肥ともに使用し易い。加えて、製造工程において大量に且つ短時間で造粒が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料の製造工程図である。
【図2】パームアッシュカリ96.0wt%にバインダー4.0wt%を混合造粒し、一定時間経過後の状況写真である。
【図3】パームアッシュカリ76.8wt%に過リン酸石灰19.2wt%とバインダー4.0wt%を混合造粒し、一定時間経過後の状況写真である。
【図4】パームアッシュカリ76.8wt%に重過リン酸石灰19.2wt%とバインダー4.0wt%を混合造粒し、一定時間経過後の状況写真である。
【図5】パームアッシュカリ76.8wt%に加工リン酸肥料19.2wt%とバインダー4.0wt%を混合造粒し、一定時間経過後の状況写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
そこで、本発明の実施の形態を、以下図および表に基づいて説明する。
本発明の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料はその原料をパームアッシュカリとし、これに過リン酸石灰等リン酸質肥料を混合配合した肥料で、更に添加剤として糖蜜発酵副産濃縮液などのバインダーを添加しながら粒状に造粒した肥料である。次いで、該パームアッシュカリ肥料のカリウム成分を増加するための原料として硫酸カリウム、塩化カリウム等を添加した肥料である。
以下に本発明に使用する各原料の特徴について説明し、次いで、製造される潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料の特徴について説明する。
【0012】
最初に、原料としてのパームアッシュカリについて説明する。
パームアッシュカリはパーム椰子の実の部分を除いた房の部分(Empty Bunch)を燃焼させてできる草木灰の一種である。その主成分は水酸化カリウムであり、植物が成長するために必要なカリ成分を他の草木灰より大変多く含有するので、有機質由来の貴重なカリ肥料となっている。
そのパームアッシュカリの成分分析表を下記表1に示す。該下表1に示すKOの分析結果は、蛍光X線分析法では65.1%でパームアッシュカリに含有する全量の数値を表し、農林水産省が定める肥料分析法では34.2%で作物が肥料として有効に利用できる成分量を表している。
【0013】
【表1】

【0014】
使用するパームアッシュカリの粒子径は10mmのふるい目下とし、3mmのふるい目下が好ましい。
つまり、このパームアッシュカリは嵩比重が小さいので、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料などと配合混合するときに風に乗って飛散し易く、使用し難い材料である。従って、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料などと混合分散させるとき、粒子径が互いに近いことが混合分散し易い。従って、使用するパームアッシュカリの粒子径は10mmのふるい目下とし、3mmのふるい目下が好ましいこととなる。

【0015】
しかし一方では、パームアッシュカリの粒子径が小さいことは同時に水分との接触面積も増えることになり、空気中の湿度が高いときにパームアッシュカリを詰めた袋を開封すると該パームアッシュカリの主成分である水酸化カリウムが空気中の水分を吸収して潮解性を示し、パームアッシュカリ粒子同士が付着してしまう。最早、この付着状態にあっては肥料として散布できず、使用し難い。
この潮解性は該パームアッシュカリ単独で粒状に成形すると、あるいは該パームアッシュカリと化学反応を起こさない他の材料を混合して粒状に成形すると、より顕著に現れる。この理由は、該パームアッシュカリおよび他の混合材料が粒状に成形されていても他の材料と化学反応が成されていないためである。
つまり、この水酸化カリウムの潮解性はその水酸基によるものであり、該水酸化カリウムの潮解性を発現させないようにするためには、過リン酸石灰や重過リン酸石灰などリン酸質肥料が持つリン酸二水素基を水酸化カリウムの水酸基と置き換えて潮解しないリン酸二水素カリウムを形成すれば可能となることに着想したものである。
【0016】
次いで、原料としてのリン酸質肥料のうち過リン酸石灰および重過リン酸石灰について説明する。
過リン酸石灰および重過リン酸石灰は、農林水産省の定める肥料公定規格のリン酸質肥料に規定されている肥料である。
該過リン酸石灰は、粉末状に粉砕したリン鉱石Ca3(PO4)2に硫酸H2SO4を作用させて生成する。その生成物はリン酸二水素カルシウムCa(H2PO4)2と硫酸カルシウムCaSO4・2H2O の混合した粉体で、リン酸成分が豊富で水に溶解して植物に吸収され易い肥料として広く使用されている。
また、重過リン酸石灰も粉末状に粉砕したリン鉱石Ca3(PO4)2を原料とし、リン酸H3PO4を作用させて生成する。その生成物は過リン酸石灰と同じリン酸二水素カルシウムCa(H2PO4)2の粉体で、水に溶解するリン酸分が過リン酸石灰より大変多い肥料として使用されている。
該過リン酸石灰、該重過リン酸石灰などリン酸質肥料はいずれもリン酸二水素基を所有し、本発明にとって重要な原料となっている。すなわち、本発明においてこのリン酸二水素基とパームアッシュカリのカリウム基を化学反応させ、リン酸二水素カリウムを形成させ、潮解しないカリ肥料に化学変化させることにある。
【0017】
更に、本発明で使用する加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料も農林水産省の定める肥料公定規格のリン酸質肥料に規定されている肥料であり、リン酸二水素カルシウムCa(H2PO4)2あるいはリン酸二水素マグネシウムMg(H2PO4)2を数%ずつ含有している。
該加工リン酸肥料、該リン酸苦土肥料にあっても、その成分であるリン酸二水素基を水酸化カリウムの水酸基と置き換えてリン酸二水素カリウムを形成して潮解しないカリ肥料に化学反応させることができる。
【0018】
ここで、配合原料のパームアッシュカリに過リン酸石灰あるいは重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料などを配合混合してパームアッシュカリ肥料に化学変化させるときのメカニズムの一例として、その反応式を下記化1および化2に示し、説明を加える。

【0019】
【化1】

【化2】


化1の反応式は、パームアッシュカリの主成分である水酸化カリウムが過リン酸石灰あるいは重過リン酸石灰のリン酸二水素カルシウムと化学反応した結果、いずれもリン酸二水素カリウム、いわゆる潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料が生成されることを示している。すなわち、該化学反応は10%程度の水の存在下で、水酸化カリウムがリン酸二水素カルシウムと共に水に溶解してイオン化が起こり、潮解性のないリン酸二水素カリウムとリン酸水素カルシウムが形成されることを示すものである。同時に生成される水分は最終工程で乾燥されて蒸発することを示している。
【0020】
次いで、上記化2の反応式は、加工リン酸肥料あるいはリン酸苦土肥料に含有するリン酸二水素マグネシウムとの反応式で、化1と同様の反応式である。パームアッシュカリの主成分である水酸化カリウムが加工リン酸肥料と反応する場合、化1および化2の反応が起こる。すなわち、加工リン酸肥料のリン酸二水素カルシウムおよびリン酸二水素マグネシウムと化学反応した結果、潮解性のないパームアッシュカリ肥料であるリン酸二水素カリウムとリン酸水素カルシウムとリン酸水素マグネシウムの3種の化合物が生成されることを示している。また、パームアッシュカリの主成分である水酸化カリウムがリン酸苦土肥料と反応する場合、化2の反応が起こる。すなわち、リン酸苦土肥料のリン酸二水素マグネシウムと化学反応した結果、潮解性のないパームアッシュカリ肥料であるリン酸二水素カリウムとリン酸水素マグネシウムが生成されることを示している。
言い換えれば、該化2の化学反応は10%程度の水の存在下で、水酸化カリウムとリン酸二水素カルシウムやリン酸二水素マグネシウムは共に水に溶解してイオン化が起こり、潮解性のないリン酸二水素カリウムとリン酸水素カルシウムやリン酸水素マグネシウムが形成される。また同時に生成される水分は最終工程で乾燥されて蒸発することを示している。
【0021】
次いで、パームアッシュカリ肥料のカリウム成分増加のための硫酸カリウムおよび塩化カリウムについて説明する。
該硫酸カリウムおよび該塩化カリウムは前記パームアッシュカリ肥料のカリウム成分を増加するために添加する原料である。具体的にはパームアッシュカリ100重量部に対して硫酸カリウムの場合10重量部とした。
【0022】
最後に、添加剤のバインダーについて説明する。
以上のパームアッシュカリとリン酸質肥料から成る原料のほかに、本発明では原料の密着度合いを高め、且つ該原料によって形成される造粒物が容易に崩れない程度の強度を持つために適切なバインダーを用いることができる。
バインダーとして使用する材料は、製糖産業の副産物ならびに廃糖蜜を発酵工業にて利用した後に産出される糖蜜発酵副産濃縮液、リグニンスルホン酸塩、コーンスチープリカー、CMC、でんぷん粉、石膏などを選定し、水に溶解させて使用した。更には水だけでもバインダーとして選定できた。
その使用量は、本発明で使用するパームアッシュカリとリン酸質肥料の化学反応を阻害することなく、且つ粒子径1〜10mmに造粒して自重で壊れない強度に保持できるように適量使用するものとし、具体的にはパームアッシュカリ100重量部に対して糖蜜発酵副産濃縮液の場合4重量部とした。
【0023】
以上に記述した各原料の特徴を踏まえ、本発明で使用する前記パームアッシュカリと前記リン酸質肥料を混合し、潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料を製造する工程を図1に示す。
この製造工程図に示す通り、原料であるパームアッシュカリの粉体とリン酸質肥料の粉体、並びにバインダーを混合し、外径1〜10mm程度の粒状にパン式造粒機にて造粒することは、自重では壊れない強度を発現させ得るものである。
つまりこの工程は、パームアッシュカリの水酸化カリウムとリン酸質肥料のリン酸二水素カルシウムあるいはリン酸二水素マグネシウムと共にバインダー中の水に溶解してイオン化し、リン酸二水素カリウムを徐々に生成する工程となっている。この化学反応は粒状に固く密着することによって可能となり、自重では壊れない強度を発現させるものとなる。言い換えると、パームアッシュカリとリン酸質肥料のそれぞれが粉状で混合状態にあっても、粒子同士が少量の水分などで密着しない限り化学反応は起こり難く、パームアッシュカリ肥料を形成することはできない。
【0024】
次に、前記製造工程図に従って製造されたパームアッシュカリ肥料の潮解性について表2にて説明する。
表2は、原料としてパームアッシュカリとリン酸質肥料とバインダーを使用して各配合試料の合計はそれぞれ100wt%とし、その配合割合によって生成されたパームアッシュカリ肥料の潮解性の度合いを記号で示したものである。この表の右端には、パームアッシュカリ100重量部に対するリン酸質肥料の配合量を付設した。
元来、パームアッシュカリは潮解性があり、このことを試料NO.0で確認した。この潮解性を表す写真を図2に示す。この写真はパームアッシュカリ96.0wt%にバインダー4.0wt%を混合造粒後、温度28℃、湿度70%の雰囲気にて96時間保存し、その後、潮解性を確認した状況写真である。
【0025】
次いで、このパームアッシュカリにリン酸質肥料を配合し、試料NO.を付して各配合とその配合に対する潮解性の度合いを記号で表記した。例えば各個別の配合のうち試料NO.5に示すように、パームアッシュカリを76.8wt%、過リン酸石灰を19.2wt%使用した場合、言い換えるとパームアッシュカリ100重量部に対する過リン酸石灰が25重量部の配合の場合、生成されたパームアッシュカリ肥料は4日以上潮解性が起こらないことを示している。このことを表2において○印で表記した。更に過リン酸石灰を増加させるに従って潮解性を発現させない日数が10日以上になることを示し、このことを表中では◎印で表記した。この結果は重過リン酸石灰や加工リン酸肥料あるいはリン酸苦土肥料も同じ傾向を示し、同時に各リン酸質肥料が増加することは本発明のパームアッシュカリ肥料は次第にリン酸肥料の性質が現れ、リン酸の性質を併せ持ったカリ肥料が形成されることも分かった。
ここで、該パームアッシュカリに該リン酸質肥料を配合し、潮解性を発現しない具体例を写真で示す。
図3は上記と同じ試料NO.5の場合で、パームアッシュカリ76.8wt%に過リン酸石灰19.2wt%とバインダー4.0wt%を混合造粒後、温度28℃、湿度70%の雰囲気に保ち、96時間経過後に潮解性が現れていない状況を写真で示したものである。
図4は該試料NO.5の場合で、パームアッシュカリ76.8wt%に重過リン酸石灰19.2wt%とバインダー4.0wt%を混合造粒後、温度28℃、湿度70%の雰囲気に保ち、96時間経過後に潮解性が現れていない状況を写真で示したものである。
図5も同じく、パームアッシュカリ76.8wt%に加工リン酸肥料19.2wt%とバインダー4.0wt%を混合造粒後、温度28℃、湿度70%の雰囲気に保ち、96時間経過後に潮解性が現れていない状況を写真で示したものである。
【0026】
一方、潮解性が発現しない各リン酸質肥料の最小添加量について説明する。
試料NO.4に示すように、パームアッシュカリを80.0wt%使用して過リン酸石灰を前記試料NO.5よりも少ない量の16.0wt%使用した場合、すなわちパームアッシュカリ100重量部に対する過リン酸石灰が20重量部の場合、パームアッシュカリ肥料の製造工程における湿度に関わる製造条件により潮解性観察開始から4日経過後にパームアッシュカリ肥料に潮解性が現れなかった。このことを表2に○印で表記した。従って下表2に示すように、パームアッシュカリの潮解性を抑制するために配合する過リン酸石灰の最小添加量は20重量部とした。同様に、重過リン酸石灰や加工リン酸肥料あるいはリン酸苦土肥料の最小添加量も20重量部であった。
更に、潮解性が発現しない各リン酸質肥料の最大添加量について説明する。
試料NO.19に示すように、パームアッシュカリを5.0wt%使用して過リン酸石灰を91.0wt%使用した場合、すなわちパームアッシュカリ100重量部に対する過リン酸石灰が1820重量部と多いと、生成されたパームアッシュカリ肥料の潮解性は潮解性観察開始から10日経過後であっても現れなかった。このことを表2に◎印で表記した。この◎印による表記は過リン酸石灰が1820重量部のみならず、42.9重量部以上であれば10日経過しても潮解性は発現することはなく、配合の上限を確認することはできなかった。このことから、パームアッシュカリの潮解性を抑制するために添加する過リン酸石灰の最大添加量は限定され得ない。同様に、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料もパームアッシュカリの潮解性を抑制する最大添加量は限定され得ない。
【0027】
【表2】

【0028】
次に、前記製造工程図に従って製造されたカリウム成分を添加したパームアッシュカリ肥料の潮解性について表3にて説明する。
表3の試料NO.20あるいは21は、原料としてパームアッシュカリと、リン酸質肥料と、硫酸カリウムあるいは塩化カリウムと、バインダーを使用し、その合計を100wt%とし、その配合割合によって生成されたパームアッシュカリ肥料の潮解性の度合いを記号で示したものである。この表の右端には、パームアッシュカリ100重量部に対するリン酸質肥料と共に、カリウム成分の配合量を付設した。比較のために、試料NO.0と試料NO.4を付設した。
【0029】
【表3】

【0030】
この表3によると、試料NO.20および試料NO.21は試料NO.4の配合にカリウム成分を添加したもので、パームアッシュカリを75.0wt%、過リン酸石灰を15.0wt%使用し、この配合にカリウム成分を7.0wt%分添加して、バインダー3.0wt%を混合造粒後、温度28℃、湿度70%の雰囲気にて96時間保存し、その後、4日目において潮解性の発現が起こらないことを確認して○印を付した。すなわち、試料NO.4の配合に少量のカリウム成分を添加しても潮解性は変わらないことを示している。表3の脚注には4日以上潮解なしと記載した。
以上の結果は重過リン酸石灰や加工リン酸肥料あるいはリン酸苦土肥料の場合も同じ傾向を示し、各カリウム成分が添加されても少量であれば、本発明のパームアッシュカリ肥料は潮解性を抑制したカリ肥料が形成されることを示している。
【0031】
最後に、パームアッシュカリとリン酸質肥料の混合物にバインダーを配合した粒状のパームアッシュカリ肥料に関わる作用効果について、以下に説明する。
本発明のパームアッシュカリ肥料は、パームアッシュカリの主成分である水酸化カリウムに過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料などリン酸質肥料の主成分であるリン酸二水素カルシウムあるいはリン酸二水素マグネシウムを混合して製造された肥料であるので、潮解性のないリン酸二水素カリウムに変化したものとなっている。
また、製造工程において、該パームアッシュカリを該リン酸質肥料と混合分散させてバインダーを使用しながら造粒するので、少量の水分によって該パームアッシュカリの粒子と該リン酸質肥料の粒子は互いに密着が可能となり、徐々にイオン化して化学反応が起こる。この造粒した粒子は重みを持ち、一定強度を保っているので、耕地内の目的箇所に飛散させずに散布させることが可能となる。
更に、該パームアッシュカリ肥料は硫酸カリウム、塩化カリウムなどカリウム成分を添加することができ、カリウム成分の豊富な且つ潮解性のないリン酸二水素カリウムに変化したものとなっている。
【実施例】
【0032】
上記配合結果に基づき、本発明のパームアッシュカリ肥料を製造するためにパームアッシュカリ100重量部を採取し、配合するリン酸質肥料として過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料を各々20重量部混合して混合粉体とし、その各混合粉体にバインダー4重量部を加えて造粒して本発明のパームアッシュカリ肥料を製造した。その結果、いずれも4日以上の潮解性が抑制されることが確認できた。また、耕地内の目的箇所に飛散させずに散布させることができた。この結果を表4に示す。
次いで、パームアッシュカリ100重量部に過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料を各々60重量部混合し、バインダー4重量部を加えて造粒した。いずれも10日以上の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料が製造された。結果を表5に示す。
更に、パームアッシュカリ100重量部に過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料を各々900重量部混合し、バインダー4重量部を加えて造粒した。いずれも10日以上の潮解性を抑制し、且つリン酸分の多いパームアッシュカリ肥料が製造された。結果を表6に示す。
最後に、パームアッシュカリ100重量部に過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料を各々20重量部混合し、加えて硫酸カリウム、塩化カリウムを各々10重量部混合してバインダー4重量部を加えて造粒した。いずれも4日以上の潮解性を抑制し、且つカリウム成分の豊富なパームアッシュカリ肥料が製造された。結果を表7および表8に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
【表6】

【0036】
【表7】

【0037】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料であり、粒状で且つ飛散流亡もないので広く利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パームアッシュカリ100重量部に対してリン酸質肥料20重量部以上を配合することを特徴とする潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料。
【請求項2】
リン酸質肥料が、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料およびこれらを原材料として成された肥料からなる群の少なくともいずれか一つを用いた請求項1に記載の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料。
【請求項3】
パームアッシュカリ100重量部に対してリン酸質肥料20重量部以上を配合したものにバインダーを添加して造粒することを特徴とする潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料。
【請求項4】
バインダーが、糖蜜発酵副産濃縮液、リグニンスルホン酸塩、コーンスチープリカー、CMC、でんぷん粉、石膏、水からなる群の少なくともいずれか一つを用いた請求項3に記載の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−37655(P2011−37655A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185107(P2009−185107)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(504133383)株式会社古田産業 (4)
【Fターム(参考)】