説明

ヒアルロン酸およびグルコサミン含有錠剤

【課題】ヒアルロン酸とグルコサミンを高濃度で含有するにもかかわらず崩壊性が改善された錠剤を提供する。
【解決手段】ヒアルロン酸含有する錠剤であって、卵殻粉を含有することを特徴とする錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸とグルコサミンを高濃度で含有するにもかかわらず崩壊性が改善された錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加齢や肥満が要因で、膝関節痛を訴える人が増加している。膝関節痛の原因は様々であるが、中でも膝の関節のクッションとなっている軟骨が磨り減り、膝に炎症が起き、進行すると関節が変形する変形性膝関節疾患が深刻となっている。
【0003】
膝関節痛を緩和する素材として、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸は食品や医薬品で幅広く利用されている(例えば、特許文献1、2)。また、近年平均分子量60万〜160万のヒアルロン酸も経口用膝関節痛緩和剤として有効であることが示された(特許文献3)
【0004】
しかしながら、多量のヒアルロン酸をグルコサミンと混合して打錠した錠剤は、ヒアルロン酸の非常に高い吸水性からか、水への崩壊性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−99653号
【特許文献2】特開2003−155250号
【特許文献3】特開2009−102278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、ヒアルロン酸とグルコサミンを高濃度で含有するにもかかわらず崩壊性が改善された錠剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく、ヒアルロン酸とグルコサミンを高濃度で含有する錠剤の配合原料について鋭意研究を重ねた結果、卵殻粉を含有させるならば、意外にも、崩壊性が改善された錠剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)ヒアルロン酸を5〜50%、グルコサミンを30〜60%含有する錠剤であって、卵殻粉を含有する錠剤、
(2)更にコンドロイチン硫酸を1〜30%含有する(1)記載の錠剤、
(3)卵殻粉の含有量が0.5〜10%である(1)または(2)に記載の錠剤、
(4)ヒアルロン酸の平均分子量が60万〜160万である(1)乃至(3)のいずれかに記載の錠剤、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒアルロン酸とグルコサミンを高濃度で含有するにもかかわらず崩壊性が改善された錠剤を提供することができ、これにより、ヒアルロン酸を含有する膝関節痛緩和剤の更なる需要の拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、特に規定しない限り、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0011】
本発明は、ヒアルロン酸を5〜50%、グルコサミンを30〜60%含有する錠剤であって、卵殻粉を含有することを特徴とする。
【0012】
ヒアルロン酸は、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの2糖からなる構成単位を1以上有する多糖類であり、関節、硝子体、皮膚、脳など広く生体内の細胞外マトリックスに存在している。また、本発明において、ヒアルロン酸とは、ヒアルロン酸およびその生理学的に許容な塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩など)、並びにカチオン化ヒアルロン酸などのヒアルロン酸誘導体およびその生理学的に許容な塩を含む総称である。
【0013】
本発明で使用するヒアルロン酸は、特に限定されるものではないが、例えば鶏冠、臍の緒、眼球、皮膚、軟骨等の生体組織、あるいはストレプトコッカス属等のヒアルロン酸産生微生物を培養して得られる培養液等を原料として、抽出(更に必要に応じて精製)して得られるものである。
【0014】
本発明の錠剤に用いるヒアルロン酸は、特に限定されるものではなく、当該抽出物あるいは精製物の何れを用いても良いが、精製物、具体的にはヒアルロン酸の純度が90%以上のものが好ましい。
【0015】
また、本発明の錠剤に用いるヒアルロン酸の平均分子量は、60万〜160万が好ましく、60万〜120万であるのがより好ましい。ヒアルロン酸の平均分子量が前記範囲より大きい場合、錠剤の崩壊性改善効果が得られ難い場合があるためである。また、ヒアルロン酸の平均分子量が前記範囲より小さい場合、膝関節痛緩和剤としての効果が低下する場合があるためである。
【0016】
また、本発明で使用するヒアルロン酸の平均分子量は下記の方法に求めた値として定義される。
【0017】
約0.05gの精製ヒアルロン酸を精密に量り、0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液に溶かし、正確に100mLとした溶液およびこの溶液8mL、12mL並びに16mLを正確に量り、それぞれに0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液を加えて正確に20mLとした溶液を試料溶液とする。この試料溶液および0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液につき、日本薬局方(第十五改正)一般試験法の粘度測定法(第1法
毛細管粘度計法)により30.0±0.1℃で比粘度を測定し(式(1))、各濃度における還元粘度を算出する(式(2))。還元粘度を縦軸に、本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100mL)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。ここで求められた極限粘度をLaurentの式(式(3))に代入し、平均分子量を算出する(T.C.
Laurent, M. Ryan, A. Pietruszkiewicz,:B.B.A., 42, 476-485(1960))。
(式1)
比粘度 = {(試料溶液の所要流下秒数)/(0.2mol/L塩化ナトリウム溶液の所要流下秒数)}−1
(式2)
還元粘度(dL/g)= 比粘度/(本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100mL))
(式3)
極限粘度(dL/g)=3.6×10−40.78
M:平均分子量
【0018】
本発明の錠剤に用いるヒアルロン酸の含有量は、5〜50%であり、8〜45%が好ましく、10〜40%がより好ましい。ヒアルロン酸の含有量が前記範囲より少ない場合、膝関節痛緩和剤としての効果が低下する場合があり、また、卵殻粉を含有させなくても崩壊性低下の課題が発生しない場合があるためである。一方、ヒアルロン酸の含有量が前記範囲より多い場合、卵殻粉を含有させたとしても崩壊性改善効果が得られ難いためである。なお、ヒアルロン酸の純度が低い、例えば生体組織から抽出したものを用いた場合、上記含有量は、ヒアルロン酸そのものの含有量を意味する。
【0019】
グルコサミンは、グルコースの1部の水酸基がアミノ基に置換されたアミノ糖の1種であり、カニ、エビなどの甲殻類の外皮を形成するキチン質に含まれ、また、人間では糖タンパク質の成分として軟骨、爪、靱帯、心臓弁などに存在している。また、本発明において、グルコサミンとは、グルコサミン(2−アミノ−2−デオキシグルコース)およびその生理学的に許容な塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、並びにN−アセチルグルコサミンなどのグルコサミン誘導体及びその生理学的に許容な塩を含む総称である。
【0020】
本発明で使用するグルコサミンは、特に限定するものではないが、例えば、キチンを原料として加水分解したもの、化学合成したものなどを用いればよい。また、精製したグルコサミン以外にも、成分としてグルコサミンを含有するものを用いても良い。
【0021】
本発明の錠剤に用いるグルコサミンの含有量は、30〜60%であり、35〜55%が好ましく、40〜50%がより好ましい。グルコサミンの含有量が前記範囲より少ない場合、膝関節痛緩和剤としての効果が低下する場合があり、また、卵殻粉を含有させなくても崩壊性低下の課題が発生しない場合があるためである。一方、グルコサミンの含有量が前記範囲より多い場合、卵殻粉を含有させたとしても崩壊性改善効果が得られ難いためである。
【0022】
また本発明においては、本発明の錠剤にさらにコンドロイチン硫酸を添加してもよい。コンドロイチン硫酸は、動物体内にみられるグリコサミノグリカンの一種であり、タンパク質に共有結合したプロテオグリカンとして軟骨の細胞外マトリックス、皮膚などの結合組織、脳などあらゆる組織に広く存在する。
【0023】
本発明で用いるコンドロイチン硫酸としては、特に限定するものではないが、動物の軟骨などから抽出したもの、化学合成したものを用いればよい。また、精製したコンドロイチン硫酸以外にも、成分としてコンドロイチン硫酸を含有するものを用いても良い。
【0024】
本発明の錠剤に用いるコンドロイチン硫酸の含有量は、1〜30%が好ましく、2〜25%がより好ましく、3〜20%が更に好ましい。コンドロイチン硫酸の含有量が前記範囲より少ない場合、膝関節痛緩和剤としての効果が低下する場合があり、前記範囲より多くしたとしても含有量に応じて前記効果が増し難く経済的でない。
【0025】
なお、成分としてグルコサミンを含有するもの、あるいは成分としてコンドロイチン硫酸を含有するものを用いた場合の含有量は、それぞれグルコサミン、コンドロイチン硫酸そのものの含有量を意味する。
【0026】
本発明は、上述したヒアルロン酸を5〜50%、グルコサミンを30〜60%含有する錠剤であって、さらに卵殻粉を含有することを特徴とし、これによってヒアルロン酸とグルコサミンを高濃度で含有するにもかかわらず錠剤の崩壊性が改善される。
【0027】
本発明において卵殻粉とは、鳥卵を割卵して卵液や卵殻膜を除いた卵殻を常法により粉末化したものをいう。この卵殻粉は、製品にしたとき服用に当たってザラザラ感がないようにするため、平均粒子径が50μm以下であるものが好ましく、30μm以下であるものがより好ましい。
【0028】
本発明に用いる卵殻粉の代表的な製法を述べると、まず、鳥卵を割卵して卵白と卵黄を除去した卵殻を用意する。次に、この卵殻を流水中で粗粉砕して卵殻と卵殻膜を分離させ、この両者を液体サイクロン中に入れて比重差で卵殻を卵殻膜から分別する。得られた卵殻は約350℃で約10分間乾燥した後、ハンマーミル等の粉砕機にて粉砕し、フルイや空気分級機により分級すれば卵殻粉に仕上げることができる。
【0029】
本発明の錠剤に用いる卵殻粉の含有量は、0.5〜10%が好ましく、1〜8%がより好ましく、2〜5%が更に好ましい。卵殻粉の含有量が前記範囲より少ない場合、本発明の錠剤において、崩壊性改善の効果が低下する場合があるため好ましくない。また、卵殻粉の含有量を前記範囲より多くしたとしても含有量に応じた前記効果が得られ難く経済的でない。
【0030】
本発明のヒアルロン酸およびグルコサミン含有錠剤には、上述したヒアルロン酸、グルコサミン、コンドロイチン硫酸および卵殻粉以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を適宜選択し配合することができる。例えば、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの栄養強化剤、乳糖、結晶セルロース、コーンスターチ、バレイショ澱粉、アルファー化澱粉などの賦形剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などの滑沢剤などが挙げられる。
【0031】
本発明の錠剤状食品組成物は、一般的な錠剤の製造方法で調製することができる。古典的な湿式成型法を用いることができるが、好ましくは打錠機を用いた圧縮錠剤の製錠法である、粉末をそのまま圧縮する直接粉末圧縮法、または粉末を造粒し、顆粒を形成し、これを圧縮する顆粒圧縮法により製錠することができる。顆粒造粒法としては流動層造粒法、押出し造粒法、圧縮造粒法、噴霧乾燥造粒法等一般の方法から選択することができる。
【0032】
前述したヒアルロン酸、グルコサミン、コンドロイチン硫酸および卵殻粉と、必要に応じて賦形剤、結合剤、滑沢剤などを適宜配合し、必要に応じ造粒を行い、打錠機により製錠することにより本発明である崩壊性が改善された錠剤が得られる。また、これに必要に応じコーティング処理を行うことができる。さらには糖衣を行うことにより糖衣錠を製錠することができる。
【0033】
以上の方法で錠剤を製造することにより、ヒアルロン酸とグルコサミンを高濃度で含有するにもかかわらず崩壊性が改善された錠剤を提供することができる。
【実施例】
【0034】
以下に本発明のヒアルロン酸およびグルコサミン含有錠剤について、実施例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0035】
[実施例1]
下記の配合割合に準じ、ヒアルロン酸(キユーピー社製、分子量80万)20部、グルコサミン(プロテインケミカル社製)45部、コンドロイチン硫酸抽出物(キユーピー社製、コンドロイチン硫酸含有量40%)15部、結晶セルロース5部、卵殻粉(キユーピー社製、商品名「カルホープ」、平均粒子径10μm)3部を混合し、流動層造粒機(フロイント産業株式会社、フローコーターFLO5型)を用いて0.6%グァガム液をバインダー液として噴射し、造粒した。得られた造粒物を乾燥後、結晶セルロース7部、ショ糖脂肪酸エステル3部、コーンスターチ2部を添加し、混合した。次いで、打錠機(株式会社畑鐵工所、HT−AP15SSU/2)により、重量300mg、9mmφの丸型錠剤を得た。得られた錠剤にトウモロコシタンパク、中鎖脂肪、カルナウバロウを混合したコーティング剤を、コーティング機(株式会社パウレック、パウレックコーター)を用いてコートし、本発明のヒアルロン酸およびグルコサミン含有錠剤を得た。
【0036】
<錠剤処方>
ヒアルロン酸 20部
グルコサミン 45部
コンドロイチン硫酸 15部
結晶セルロース 12部
卵殻粉 3部
ショ糖脂肪酸エステル 3部
コーンスターチ 2部
――――――――――――――――――――
合計 100部
【0037】
<コーティング剤処方>
トウモロコシタンパク 80部
中鎖脂肪 19.5部
カルナウバロウ 0.5部
――――――――――――――――――――
合計 100部
【0038】
[試験例1]
実施例1において、錠剤原材料の種類、配合量による、錠剤の崩壊性への影響を調べた。具体的には、実施例1の錠剤処方におけるヒアルロン酸、グルコサミン、コンドロイチン硫酸、結晶セルロース、卵殻粉を表1に示す含有量に変更し、分子量の異なるヒアルロン酸に置き換えた以外は、実施例1と同様の方法でヒアルロン酸およびグルコサミン含有錠剤を製した。次いで、得られたヒアルロン酸およびグルコサミン含有錠剤の崩壊性を、第十五改正日本薬局方「崩壊試験法」の即放性製剤を準拠した方法で調べた。具体的には、崩壊試験装置を用い、試験水を水(1000mL、37℃)とし、各例につき6錠を測定し、すべての試料において軟質の物質となった時間を崩壊時間とし、崩壊時間を下記の評価基準で評価した。
【0039】
「崩壊時間」の評価
ランク:基準
A:崩壊時間150分未満
B:崩壊時間150分以上180分未満
C:崩壊時間180分以上240分未満
D:崩壊時間240分以上
【0040】
【表1】

【0041】
表1より、ヒアルロン酸を5〜50%、グルコサミンを30〜60%含有する錠剤であって、卵殻粉を含有した場合、錠剤の崩壊性が改善されることが理解できる。また、ヒアルロン酸を10〜40%、グルコサミンを40〜50%含有する錠剤であって、卵殻粉を2〜5%以上含有する場合、更にはヒアルロン酸の分子量が60万〜120万の場合、錠剤の崩壊性がより改善されることが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸を5〜50%、グルコサミンを30〜60%含有する錠剤であって、卵殻粉を含有することを特徴とする錠剤。
【請求項2】
更にコンドロイチン硫酸を1〜30%含有する請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
卵殻粉の含有量が0.5〜10%である請求項1または2に記載の錠剤。
【請求項4】
ヒアルロン酸の平均分子量が60万〜160万である請求項1乃至3のいずれかに記載の錠剤。

【公開番号】特開2012−1468(P2012−1468A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136753(P2010−136753)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】