ヒストンデアセチラーゼインヒビターの薬効バイオマーカーとしてのカルシウム流動
本明細書には、カルシウム流動をバイオマーカーとして使用し、治療として、アポトーシス剤に反応しそうな患者を選択及び予見する方法について記載されている。さらに、本発明には、臨床バイオマーカーとして、カルシウム流動を使用する方法が記載されていて、この方法により、腫瘍がHDACインヒビターに対して感受性を有するかどうか決定可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年4月13日出願の米国仮特許出願第60/911,857号、2007年6月15日出願の米国仮特許出願第60/944,409号、2007年8月8日出願の米国仮特許出願第60/954,777号、2008年2月4日出願の米国仮特許出願第61/026,023号、そして2007年7月18日出願の米国特許出願第11/779,743号の優先権を主張する出願である。これら文献に開示される内容は、全体として本明細書中に参照されるものである。
【0002】
本明細書は、ヒストンデアセチラーゼインヒビターを利用した治療に効果を示す患者を選択かつ予見するために、バイオマーカーとしてカルシウム流動を利用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオマーカーは、生物学的指標を示すのに用いられる物質である。例えば、バイオマーカーが物質である場合、その物質が存在することで、病気の存在を示すことが可能である。バイオマーカーは、一般的な生物学的過程、発病過程、もしくは治療介入に対する薬理反応の指標として客観的に査定及び評価される特徴がある。臨床背景において、バイオマーカーは、病状もしくは治療成績に非常に相関性を有する、観察可能な特徴もしくは検出可能な物質を有する。従って、バイオマーカーは病状の進展若しくは治療効果を査定するのに用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、カルシウム流動をバイオマーカーとして使用する方法について記載する。また、薬剤のアポトーシスを引き起こす能力を評価する迅速な方法について記載する。さらに、バイオマーカーとしてカルシウム流動を用い、治療用のアポトーシス剤に反応しそうな患者を選択及び予見する方法について記載する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤の治療される患者を選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、アポトーシス剤が、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターの群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルである。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0006】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、患者からの生体サンプルを汎HDACインヒビターに接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、血液サンプルから得られた生体サンプルが循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0007】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをHDAC8インヒビターに接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルから得られた循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0008】
ある実施例は、病状を治療する際のアポトーシス剤による治療の有効性を評価するために、臨床治験に参加する患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、アポトーシス剤が汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択される。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルは、腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルから得られた循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルは少なくとも約100の腫瘍細胞を備える事を特徴とする。
【0009】
ある実施例は、アポトーシス剤での治療に反応を示す病状の患者を選択するシステムを備え、システムは、(a)アポトーシス剤、(b)生体サンプルにおけるカルシウム流動の水準を測定する手段を備え、生体サンプル、アポトーシス剤及びカルシウム流動の水準を測定する手段は、全て流体による伝達である。ある実施例において、アポトーシス剤は、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択される。ある実施例において、生体サンプルは腫瘍細胞を備える。カルシウム流動の水準を測定する手段が、カルシウム検出試薬を備える。
【0010】
任意的に、生体検査の結果は患者から採取された腫瘍もしくは血液から得られたものである。腫瘍サンプルは、固形及び液状のどちらであってもよく、あらゆる腫瘍を含む。ある実施例において、生体検査の結果は、固形腫瘍を有する患者の血液から分離された循環性腫瘍細胞(CTCs)から得られたものである。ある特定の実施例では、生体検査は少なくとも約102の腫瘍細胞で行われる。
【0011】
任意的に、カルシウム流動アッセイが、細針生体検査(FNA)、パンチ生体検査により採取された臨床サンプルで行われる。生体検査試料は生体内の組織、細胞もしくは流体から得られる。もしくは、生検針もしくは外科用切開により生体検査は行われる。ある実施例において、生体検査は、十分な濃度のアポトーシス剤で生体外もしくは試験管内で行われる。
【0012】
(定義)特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される下記の用語は、本出願において、以下の意味を有すると定義される。
【0013】
「アポトーシス剤」という用語は、細胞内でアポトーシスを直接的もしくは間接的に引き起こす任意の薬剤である。本明細書において。アポトーシス剤は、ヒストンデアセチラーゼインヒビター(HDAC inhibitor)、細胞毒性剤、キナーゼインヒビターもしくは抗体と成り得るが、これらに限定されない。ある実施例においては、アポトーシス剤は、汎ヒストンデアセチラーゼ(pan-HDAC)インヒビターもしくはヒストンデアセチラーゼ8(HDAC8)インヒビターから選択される。
【0014】
本明細書記載の「カルシウム検出試薬」は、細胞内のカルシウム水準を示すために、1もしくは1以上の薬剤を単独もしくは組み合わせて使用される任意の化学剤もしくは生物剤を意味する。カルシウム検出試薬としては、標識、色素、光架橋剤、細胞毒性化合物、薬、親和性標識、光親和性標識、反応性化合物、抗体もしくは抗体断片、生体材料、ナノ粒子、スピン標識、フルオロフォア、金属含有部分、放射性成分、新規官能基、他の分子と共有結合的又は非共有結合的に相互作用する基、光ケージド部分(photocaged moiety)、化学線により励起可能な部分、リガンド、光異性体化可能な部分、ビオチン、ビオチン類似体、重原子を組み込んでいる部分、化学的に切断可能な基、光切断可能な基、酸化還元活性化剤、同位体標識されている部分、生物物理学的なプローブ、燐光性の基、化学発光性の基、電子密度の高い基、磁性基、挿入基、発色団、エネルギー伝達剤、生物活性剤、検出可能な標識もしくはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書記載の「カルシウム流動」は、カルシウムイオンが細胞膜を超えること及び、細胞小器官間、もしくは細胞質内を移動することを意味する。
【0016】
本明細書記載の「誘導体」は、化合物を意味し、該化合物は、原子、分子もしくは基を別の原子、分子もしくは基に代替あるいは置換することで、別の化合物もしくは類似の構造体から生成される。pan-HDACインヒビターもしくはHDAC8インヒビターが易酸化性の窒素の原子を有する場合、窒素原子は、N-オキシド誘導体(N-oxide deribative)の周知の製造方法で、N-オキシドに変換されるが、これらに限定されない。さらに、汎ヒストンデアセチラーゼ(pan-HDAC)インヒビターもしくはヒストンデアセチラーゼ8(HDAC8)インヒビターがヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、もしくは1あるいは1以上の窒素原子を有する任意の基を有する場合、これらの基は、適切な保護基に保護され、保護誘導体を生成され得る。適切な保護基のリストは、T.W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc. 1981に記載されていて、これらの内容は、本明細書中で参照される。
【0017】
本明細書記載の「有効量」もしくは「治療効果のある量」は、必要以上の副作用を伴うことなく、被験者に薬理学的効果あるいは治療効果を与える薬剤の量を意味する。有効量もしくは治療効果のある量は、被験者の年齢、体重、及び全身状態、治療状態、治療すべき病状の重症度、及び処方医師の判断に基づいていて、被験者によって異なることは認識されている。
【0018】
本明細書記載の「フルオロフォア」は、励起される際に、光子を放出する分子を意味する。フルオロフォアは、Fura-2、Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4及びこれらの誘導体であり得るが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書記載の「ヒストンデアセチラーゼ」及び「HDAC」は、ヒストンのN末端でリジン残基のε−アミノ基からアセチル基を取り除く酵素群のいずれか1つを示す。特に明記しない限り、「ヒストン」の用語は、H1、H2A、H2B、H3、H4及びH5を含む任意の種のあらゆるヒストンたんぱく質を意味する。ヒトHDACたんぱく質もしくは遺伝子産物は、HDAC-1、HDAC-2、HDAC-3、HDAC-4、HDAC-5、HDAC-6、HDAC-7、HDAC-8、HDAC-9、HDAC-10及びHDAC-11を含むが、これらに限定されない。ある実施例では、HDACは、原生動物もしくは菌類由来のものであってもよい。
【0020】
本明細書記載の「ヒストンデアセチラーゼインヒビター」、「ヒストンデアセチラーゼのインヒビター」、「HDACインヒビター」は、化合物を識別するために、交互に用いられる。そして、この「ヒストンデアセチラーゼインヒビター」、「ヒストンデアセチラーゼのインヒビター」、「HDACインヒビター」、「HDACのインヒビター」は、HDACと相互作用が可能であり、その活性、特に酵素活性を阻害する。HDAC酵素活性の阻害とは、HDACがヒストンからアセチル基を除去する能力が減少することを意味する。ある実施例において、このような阻害、即ち、HDACインヒビターが、具体的にはHDACのヒストンからアセチル基を除去する能力を減少させることは明確であり、その阻害させる際のインヒビターの濃度は、他の無関係な生物学的効果を生成するのに要するインヒビターの濃度よりも低い。
【0021】
本明細書記載の「HDAC8インヒビター」及び「HDAC8のインヒビター」は、化合物を識別するために、交互に用いられる。そして、この「HDAC8インヒビター」及び「HDAC8のインヒビター」は、HDAC8酵素活性と相互作用が可能であり、活性、特にHDAC8の酵素活性を阻害することが可能である。HDAC酵素活性の阻害とは、HDAC8がたんぱく質もしくは他の高分子からアセチル基を除去する能力が減少させることを意味する。
【0022】
本明細書記載の「汎HDAC」インヒビターは、(a)化学剤もしくは生物剤であって、クラスI及びクラスIIの酵素のあらゆる11のHDACのアイソフォームを抑制する。もしくは、本明細書記載の「汎HDAC」インヒビターは、(b)化学剤もしくは生物剤であって、1μM未満の阻害定数(Ki)を備えた、クラスIもしくはクラスIIのHDACsの1以上のアイソフォームを著しく抑制する。
【0023】
本明細書記載の「プロドラッグ」は、体内の代謝過程による変換で薬理学的作用が導かれる薬もしくは化合物を意味する。プロドラッグは、一般的に薬の前駆体であって、該前駆体は、被験者への投薬及び投薬後の吸収の後に、代謝系による変換等の特定の過程を経て、活性種もしくはより高活性な種に変換される。あるプロドラッグは、プロドラッグ上に化学基を有し、化学基は、プロドラッグを低活性にさせ、及び/又は薬に対する溶解度もしくは他の特性を付与する。化学基がプロドラッグから切断及び/又は修飾されると、作用薬が生成される。
【0024】
本明細書記載の「治療(treat)」、「治療(treating)」もしくは「治療(treatment)」は、障害もしくは病気の進行を阻害するが、これらに限定されない。例えば、治療は、病気もしくは障害の進行を抑止する。癌の治療は、悪性細胞にアポトーシス剤を導入したり、もしくは、悪性細胞の成長及び/又は悪性細胞の転移可能性を抑制させるために、あらゆる作用を与えたりすることを含むが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】PLCγ1及び下流カルシウムシグナル伝達を含む外部薬剤によりアポトーシスが誘導されることを示す概略図である。
【0026】
【図2A】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の迅速な誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Aは、対照を示す。
【図2B】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の速い誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Bは、0.2μMの汎HDACインヒビターであるPCI-24781及びPCI-24781で2日間の処理後にアネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合:80%を示す。
【図2C】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の速い誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Cは、10μMのHDAC8インヒビターPCI-34051及びPCI-34051で2日間の処理後にアネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合:60%を示す。
【図2D】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の速い誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Dは、1μMのMS-275を示す。
【図2E】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の速い誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Eは、1mMのナフチル酪酸エステラーゼ(Na Butyrate)を示す。
【図2F】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の速い誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Fは、2μMのスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)を示す。
【0027】
【図3A】HH細胞(ホスホリパーゼCγ活性化酵素を有さない(PLCγ))における汎HDACインヒビター化合物であるPCI-24781もしくはHDAC8インヒビター化合物であるPCI-34051のいずれか1つによりカルシウム流動が誘導されないことを示す。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日間の処理後にアネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合を示している。カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。図3Aは、対照を示す。
【図3B】HH細胞(ホスホリパーゼCγ活性化酵素を有さない(PLCγ))における汎HDACインヒビター化合物であるPCI-24781もしくはHDAC8インヒビター化合物であるPCI-34051のいずれか1つによりカルシウム流動が誘導されないことを示す。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日間の処理後にアネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合を示している。カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。図3Bは、10μMのHDAC8インヒビターであるPCI-34051を示す。
【図3C】HH細胞(ホスホリパーゼCγ活性化酵素を有さない(PLCγ))における汎HDACインヒビター化合物であるPCI-24781もしくはHDAC8インヒビター化合物であるPCI-34051のいずれか1つによりカルシウム流動が誘導されないことを示す。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日間の処理後にアネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合を示している。カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。図3Cは、0.2μMの汎HDACインヒビターであるPCI-24781を示す。
【0028】
【図4】野生型(Jurkat)、ホスホリパーゼCγ1欠乏(J.gammal)、T細胞受容体の欠乏(P116)もしくは、ZAP-70欠乏である、ジャーカット細胞内のアポトーシスに作用を及ぼす、HDAC8インヒビター化合物(PCI-34051; 5μM)の能力を示す棒グラフである。ジャーカット細胞は、ヒトT細胞白血病の細胞であり、急性リンパ性白血病の14歳の少年の末梢血から樹立されたものである。
【0029】
【図5A】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5Aは、対照を示す。
【図5B】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5Bは、HDAC8インヒビターであるPCI-34051を示す。
【図5C】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5Cは、ホスホリパーゼCインヒビター(U-73122: 1-[6((17b-3-メトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-イル)アミノ)ヘキシル]-1H-ピロール-2, 5-ジオン)が加えられると、PCI-34051によるジャーカット細胞内のカルシウム動員の早い誘導が抑制されることを示す。
【図5D】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5DはPLC(U-73343: 1-[6-((17b-3-メトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-イル)アミノ)ヘキシル]-2,5-ピロリジンジオン)は、PCI-34051により誘導されるカルシウム動員に作用しないことを示す。
【図5E】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5EはいずれのPLCγインヒビター(U-73343, U73122)もカルシウム流動の誘導のみを引き起こさないことを示す。
【図5F】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5FはいずれのPLCγインヒビター(U-73343, U73122)もカルシウム流動の誘導のみを引き起こさないことを示す。
【0030】
【図6】PLCインヒビターがジャーカット細胞内のPCI-34051により誘導されたアポトーシスを調節することを示す棒グラフである。ジャーカット細胞及びJ.gammal細胞は、PCI-34051を有するもしくは有さないPLCインヒビターU-73122及び不活性の類似体のU-73343で処理が行われ、2日後にアネキシンVで測定が行われる。
【0031】
【図7】PCI-34051(10μM)によるアポトーシス誘導上でのカルシウムエフェクター(Calcium effector)(タプシガルジン; 0.2μM)の作用を示す棒グラフであり、野生型(Jurkat)及びJ.γl(J.gammal)のジャーカット細胞を対比している。
【0032】
【図8A】PCI-34051によるアポトーシス誘導上でのカルシウムキレート剤(BAPTA-AM; 0.5μM)の作用を示す棒グラフであり、野生型(Jurkat)及びJ.γ(J.gammal)のジャーカット細胞を対比している。
【図8B】ジャーカット細胞内のPCI-34051により誘導されたカルシウム流動が細胞透過性カルシウムキレート剤BAPTA-AMにより阻止されることを示す折線グラフである。
【0033】
【図9】一連の免疫ブロットの図であり、該図は、プロアポトーシス促進薬剤で処理した後の様々な時点において、チトクロムC酸化酵素が転移する事を示した、野生型(Jurkat)及びJ.γ(J.gammal)のジャーカット細胞内のミトコンドリアからサイトゾルへと転移することを示している。
【0034】
【図10】ジャーカット細胞内のHDAC8の選択的インヒビター化合物(PCI-34051)により誘導された用量依存的な細胞内カルシウム応答を示す棒グラフである。
【0035】
【図11】ジャーカット細胞内の汎HDACの選択的インヒビター化合物(PCI-24781)により誘導された用量依存的な細胞内カルシウム応答を示す棒グラフである。
【0036】
【図12A】ラモス細胞内のPCI-34051ではなく、PCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示す。PCI-24781及びPCI-34051で2日処理を行い、アネキシンVによりアポトーシス比率が測定されることを示す。図12のいずれの図面においても、カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。
【図12B】J.gammal細胞におけるPCI-24781もしくはPCI-34051のいずれかによる、カルシウム流動の誘導がなかったことを示す。PCI-24781及びPCI-34051で2日治療を行い、アネキシンVによりアポトーシス比率が測定されることを示す。図12のいずれの図面においても、カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。
【図12C】HCT-116の結腸細胞のPCI-34051ではなくPCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示している。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日処理を行い、アネキシンVによりアポトーシス比率が測定されることを示す。図12のいずれの図面においても、カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。
【図12D】PC3の前立腺細胞における、PCI-24781もしくはPCI-34051のいずれかによる、カルシウム流動の誘導がないことを示している。また、これらの細胞株において、PCI-24781及びPCI-34051で2日処理が行われ、アネキシンV染色によりアポトーシス比率が測定されることを示す。図12のいずれの図面においても、カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。
【0037】
【図13】A549細胞のPCI-34051ではなく、PCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示す。肺腫瘍細胞株A549は、上皮の固形腫瘍細胞株を示していて、該細胞株は、カルシウム流動により予期されるアポトーシス誘導で、汎HDACインヒビターであるPCI-24781に対して反応する。一方、T細胞固有のHDAC8選択的インヒビターであるPCI-34051は、これらの細胞において、アポトーシスもカルシウム流動もいずれも誘導しなかった。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日処理を行い、アネキシンVによりアポトーシス比率が測定されることを示す。
【0038】
【図14】THP-1細胞のPCI-34051ではなく、PCI-24781によるカルシウム誘導を示す。THP-1は、単球性白血病の細胞株であって、汎HDACインヒビターであるPCI-24781はアポトーシス及びカルシウム流動の誘導を引き起こす。その一方、HDAAC8の選択的インヒビターであるPCI-34051はアポトーシス誘導及びカルシウム流動の誘導を引き起こさない。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日処理を行い、アネキシンVによりアポトーシス比率が測定されることを示す。
【0039】
【図15】PCI-24781によりジャーカット細胞内のカルシウム動員の迅速な誘導を示す。PCI-24781の2つの主要な代謝物、即ちカルボン酸代謝物PCI-27789及びアミド代謝物PCI-24787は、ヒストンデアセチラーゼの活性を有さない。PCI-27789及びPCI-27787はジャーカット細胞において、カルシウム流動を誘導することは不可能であった。
【0040】
【図16】PCI-24781によるアポトーシス誘導を示す。一方、PCI-24781、PCI-27789、及びPCI-27787の不活性代謝物は、ジャーカット細胞内のアポトーシス誘導作用を有さない。ジャーカット細胞は、PCI-24781、PCI-27789もしくはPCI-27787(0.2μM)で処理され、そして2日後にアネキシンVによりアポトーシスが測定される。
【0041】
【図17A】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査(SF-03)において、PCI-24781及びPCI-34051によるカルシウム流動の迅速な誘導を示す。図17Aは、対照を示す。
【図17B】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査(SF-03)においてPCI-24781及びPCI-34051によるカルシウム流動の早い誘導を示す。図17Bは、0.2μMのPCI-24781を示す。
【図17C】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査(SF-03)においてPCI-24781及びPCI-34051によるカルシウム流動の迅速な誘導を示す。図17Cは、10μMのPCI-34051を示す。
【0042】
【図18A】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査組織(SF-06)におけるPCI-24781もしくはPCI-34051によるカルシウム流動の誘導は見られなかった。図18Aは対照を示す。
【図18B】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査組織(SF-06)におけるPCI-24781もしくはPCI-34051によるカルシウム流動の誘導は見られなかった。図18Bは0.2μMのPCI-24781を示す。
【図18C】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査組織(SF-06)におけるPCI-24781もしくはPCI-34051によるカルシウム流動の誘導は見られなかった。図18Cは10μMのPCI-34051を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、アポトーシス剤が、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターの群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルである。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0044】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをHDAC8インヒビターに接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルから得られる循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0045】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをHDAC8インヒビターに接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルから得られる循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0046】
ある実施例は、病状を治療する際のアポトーシス剤による治療の有効性を評価するために、臨床治験に参加する患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、アポトーシス剤が汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択される。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルは、腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルから得られる循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルは少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0047】
ある実施例は、アポトーシス剤での治療に反応を示す病状の患者を選択するシステムを備え、システムは、(a)アポトーシス剤、(b)生体サンプルにおけるカルシウム流動の水準を測定する手段を備え、生体サンプル、アポトーシス剤及びカルシウム流動の水準を測定する手段は、全て流体による伝達である。ある実施例において、アポトーシス剤は、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択される。ある実施例は、生体サンプルは腫瘍細胞を備える。ある実施例は、カルシウム流動の水準を測定する手段が、カルシウム検出試薬を備える。
【0048】
(ホスホイノシチドホスホリパーゼC(PLC)ファミリーとカルシウム仲介シグナル伝達)
ホスホイノシチドホスホリパーゼC(PLC)ファミリーは、シグナル伝達に関与する真核細胞酵素のファミリーである。PLCファミリーは、6つのサブファミリーからなり、該サブファミリーは、全てで13の別々のアイソフォームを構成する。PLCγは、T細胞の外的刺激(増殖因子、神経伝達物質など)及び内的刺激(ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K))に対する反応に関与している。
【0049】
ホスホリパーゼC(PLC)ファミリーのメンバーが、ホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)、ホスファチジルインシトール、2つのセカンドメッセンジャー、イノシトール三リン酸(PIP3)及びジアシルグリセロール(DAG)の加水分解を触媒することを示している。PIP2の加水分解は、2つの連続的な段階により行われる。第1反応はホスホトランスフェラーゼの段階であり、該段階は、イノシトール環2'の位置におけるヒドロキシル基とリン酸基の間の分子内攻撃により、環状IP3の中間体をもたらすことに関する。この時点で、DAGが生成される。しかしながら、第2のホスホジエステラーゼの段階において、環状の中間体が、水分子による攻撃を受けるに十分な長さである活性部位内に保持され、これにより、非環式のIP3の最終産物をもたらす。
【0050】
IP3及びDAGは、細胞内シグナル伝達で重要な下流タンパク質の活性を調整する。IP3は、溶解性を有し、細胞質を通して拡散し、小胞体(ER)上のIP3受容体と相互作用することで、カルシウムを放出し、細胞内のカルシウム(カルシウム流動の1つの起源)の水準を上昇させる。DAGはキナーゼC(PKC)を疎水性により動員し、細胞膜の内膜(inner leaf)を繋ぎとめる。PKCは、カルシウムイオンと結合されると、活性化する。PKCが活性化されると、カルシウム感受性のタンパク質の刺激を通して多数の細胞反応をもたらす。
【0051】
カルシウム流動は少なくとも2つの構成要素を有すると思われる。小胞体からの細胞内の最初のカルシウムの放出であり、これはシトクロムCにより引き起こされるカルシウムの後の放出である。シトクロムCは、ミトコンドリア外膜の透過性の上昇により、ミトコンドリアから放出される。そして、シトクロムCはアポトーシスに関連して形態変化に先行する際、シトクロムCは制御的機能を果たす。シトクロムCが放出されると、アポトーシスプロテアーゼ活性因子(Apaf-1)及びアデノシン三リン酸(ATP)に結合して、プロカスパーゼ-9に結合し、アポトソームとして知られるタンパク質複合体を生成する。アポトソームは、プロカスパーゼを切断し、活性型のカスパーゼ-9を生成し、次々に他のカスパーゼを活性化し、アポトーシスへと次々と誘引する。カルシウム流動とアポトーシスとの間の提案されたメカニズムが図1に示される。
【0052】
(HDACインヒビター)
真核生物の細胞において、クロマチンはヒストンに結合し、ヌクレオソームを形成する。各ヌクレオソームは、タンパク質8量体(Protein octamer)を形成し、該タンパク質8量体は、H2A、H2B、H3及びH4の各ヒストンの2つの複写を構成する。ヒストンの塩基性アミノ酸が負に荷電されたDNAのリン酸基に相互作用すると同時に、DNAはタンパクコアに絡みつく。これらのコアヒストンの最も一般的な翻訳後修飾は、保存されたリジン残基の高塩基性N末端リジン残基のε-アミノ基の可逆性アセチル化である。ヒストンの可逆性アセチル化は、は、遺伝子発現の主要な制御因子である。転写因子のDNAへの到達性を変更することで、遺伝子発現は制御される。
【0053】
正常細胞において、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)及びヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)はヒストンのアセチル化の水準を制御する。HDACの阻害により、高アセチル化されたヒストンが蓄積され、細胞応答の多様性が生じる。
【0054】
ヒストンのアセチル化及び脱アセチル化は、転写制御に確実に関連性がある。ある実施例において、HDACインヒビターは、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、デプシペプチド、MS-275、及びアピシジンを含み、特に、HDACインヒビターはヒストンアセチル化を促進し、クロマチン構造を弛緩させる。クロマチンを弛緩させ、クロマチンのコイル状が解けると、多様な遺伝子の発現を可能とするとともに増大させる。該多様な遺伝子は、例えばp21CIP1等の分化プロセスに関与する遺伝子を含む。実際、例えばSAHA、酪酸ナトリウム等のHDACインヒビターは、様々なヒト白血病細胞株の成熟を引き起こすことが示されている。
【0055】
哺乳類のHDACは、3つの特徴的な酵母の相同性のある構造あるいは配列に基づいて、3つの主要なクラスに分類される:Rpd3(Class I)、Hda1 (class II)、及びSir2/Hst (classIII)。Rpd3と相同のクラスIは、HDAC1、2、3、8及び11を含む。Hda1と相同のクラスIIは、HDAC4、5、6、7、9 (9aと9b)及び10を含む。Sir2/Hstと相同のクラスIIIは、SIR T1、2、3、4、5、6及び7を含む。昨今の研究で、HATもしくはHDAC固有の活性を有する細胞因子の付加的なファミリーが明らかになった。これらは、細胞周期、DNA修復及び転写の制御に関与する非ヒストンタンパク質であると考えられる。限定しないが、p400AF、BRCA2及びATM様タンパク質を含む、数多くの転写活性化補助因子は、HATとして機能する。ある転写抑制因子は一般的なクロマチン修復複合体を動員することで、クロマチンと関連するHDACの活性を示す。例えば、Masタンパク質ファミリー(Mas1、Mxi1、Mad3及びMad4)は、塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス-ループ-ヘリックス-ジッパー型の転写因子を備え、該転写因子はMaxと該因子のDNA結合部位において、ヘテロ二量体化する。Mad:Maxヘテロ二量体は、「抑制複合体」を動員することで、該二量体のDNA結合部位において、転写抑制因子として作用する。Maxもしくはmsin3補助抑制複合体のいずれかと相互作用を妨げる変異は、細胞増殖の静止できない。従って、本明細書において用いられるHDACインヒビターは、上述のあらゆるタンパク質からHDAC活性を阻害することが可能なあらゆる薬剤に関する。
【0056】
HDACのインヒビターの癌細胞に対する治療効果が研究されている。酪酸及びその誘導体は、フェニル酪酸ナトリウムを含み、該酪酸及びその誘導体は、ヒト結腸細胞腫、白血病及び網膜芽細胞腫細胞株において、生体内にアポトーシスを誘導することが知られている。抗癌活性が幅広く研究されている他のHDACのインヒビターとして、トリコスタチンA及びトラポキシンを含む。
【0057】
(汎HDACインヒビター)
限定することではないが、汎HDACインヒビターは、酪酸、4-フェニル酪酸ナトリウムもしくはバルブロ酸などの短鎖脂肪酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、ビアリールヒドロキサマートA-161906、二環式アリル-N-ヒドロキシカルボアミド、CG-1521、PXD-101、スルホンアミドヒドロキサム酸、LAQ-824、オキサムフラチン、スクリプテイド、m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサム酸、トラポキシンヒドロキサム酸類似体、トリコスタチンA、トリコスタチンC、m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキシアミドオキサムフラチン(CBHA)、ABHA、スクリプテイド、ピロキサミド及びプロペナミド等のヒドロキサム酸、トラポキシン、アピシジン、デプシペプチド、HC-トキシン、クロミドシン、ジヘテロペプチン、WF-3161、Cyl-1及びCyl-2などのサイクリックテトラペプチドを含有するエピキシケトン、FR901228、アピシジン、ペプチドを含有するサイキックヒドロキサム酸(CHAPs)、ベンズアミド、MS-275(MS-27-275)及びCI-994等のサイキックテトラペプチドを含有するベンズアミドもしくは非エポキシケトン、デプデシン、PXD101、有機イオウ化合物、そしてアロイルピロリルヒドロキシアミド(APHAs)を含む。
【0058】
ある実施例において、汎HDACインヒビターはPCI-24781、SAHA(Zolinza社)、トリコスタチンA、MS-275、LBH-589、PXD-101、MGCD-0103、JNJ-26481585、R306465(J&J社)もしくは酪酸ナトリウムである。
【0059】
ある実施例において、汎HDACインヒビターは、米国特許出願第10/818,755号、米国特許出願第10/537,115号、米国特許出願第10/922,119号、米国特許出願第11/100,781号、米国特許出願第11/779,743号、国際特許出願第PCT/US2005/046255号もしくは米国特許第7,276,612号に開示する化合物もしくは式から選択される化合物である。これらの参照の開示により、これらの内容は全て本明細書に組み込まれるものとする。
【0060】
ある実施例において、汎HDACインヒビターは、以下の化学式1の構造を有する。
【0061】
【化1】
R1は水素もしくはアルキルであり、
Xは、-O-、NR2もしくは-S(O)nであって、nは0-2、R2は水素もしくはアルキル、
Yはアルキレンであって、サイクロアルキルと任意により置換可能であり、フェニル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルフォニルと任意により置換可能であり、フェニルアルキルチオと任意により置換可能であり、フェニルアルキルスルフォニル、ヒドロキシと任意により置換可能であり、もしくはフェノキシと任意により置換可能であり、
Ar1はフェニレンもしくはヘテロアリレンであって、Ar1はアルキル基、ハロ基、ヒドロ
キシ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、もしくはハロアルキル基から独立的に選択される1もしくは2の基に任意により置換可能であって、
R3は水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、もしくは、任意によりフェニルで置換可能であり、そして、
Ar2は、アリル、アラルキル、アラルケニン、ヘテロアリル、ヘテロアラルキル、ヘテロアラルケニル、サイクロアルキル、サイクロアルキルアルキル、ヘテロサイクロアルキルもしくはヘテロサイクロアルキルアルキルである。
そして、個々の立体異性体、個々の幾何異性体、もしくは混合物を含む、もしくは、薬学的に許容可能な塩を含む。
【0062】
(HDAC8とHDAC8インヒビター)
HDAC8は、多種類の組織及びヒト腫瘍細胞株の核に局在化させる377残基42kDaのタンパク質である。HDAC8の完全長の形状である野生型は、GenBankのアクセス番号はNP060956である。HDAC8の構造は、ヒドロキサマートインヒビターの4つの異なる結合から解析される。
【0063】
HDAC8は、多細胞型及び腫瘍細胞株で発現される、試験管内の脱アセチル化酵素活性を有するHDACアイソフォームである。系統樹解析ではクラスI及びクラスIIの酵素の境界域の近辺に位置することが示されるが、HDAC8は、配列相同性に基づき、クラスIの酵素であると考えられる。HDAC8は、以下に示すいくつかの点において、プロトタイプクラスIの酵素とは異なる。該HDAC8の異なる点は、報告されているが、核とは対照的に細胞質及び細胞内局在化、Fe(II)及びK+を含む様々な金属の活性部位への結合、及びサイキックAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)20-22によるSer39のリン酸化による触媒活性の負の調節を有することである。ヒトHDAC8の3次元結晶構造は、L1の活性部位のループ構造により媒介された結合部位のポケット近位の構造的柔軟性及び、活性部位の阻害におけるSer39のリン酸化の特徴的な影響が解明かつ明らかにされた。
【0064】
HDAC(は、一次的に膵臓におけるランゲルハンス島のデルタ細胞、腸管上皮細胞、神経内分泌細胞において発現される。デルタ細胞は、勿論ソマトスタチン、インスリンの分泌を阻害するペプチドホルモン及び成長ホルモンを発現及び分泌する。理論に制約されない場合、HDAC8の活性はデルタ細胞におけるソマトスタチンの発現を促進することが信じられている。従って、HDAC8の活性を阻害することは、ソマトスタチンの発現を減少させ、デルタ細胞からの分泌を減少させ、その結果、全身性のインスリン及び成長ホルモンの水準が上昇する。
【0065】
HDAC8は腫瘍細胞株で高水準に発現する。例としては、ジャーカット、HuT78、K562、PC3及びOVCR-3の細胞株を含む。HDAC8の活性を抑制することは、アポトーシスの導入により、T細胞由来の腫瘍細胞(例えば、ジャーカット細胞)の増殖を減少させることが示されてきた。HDAC8の阻害は、非癌細胞もしくはT細胞由来の細胞株以外の腫瘍細胞株のいずれの増殖には影響を与えない。従って、選択的HDAC8インヒビターはT細胞由来の癌の進行を遅くするもしくは静止することに有益である。その上、選択的HDAC8インヒビターは、非癌細胞の毒性の緩和もしくは無毒性を実証する。
【0066】
選択的HDAC8インヒビター化合物及び成分が、ある特定の実施例において使用され、T細胞白血病、例えば末梢性T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫もしくは成人T細胞白血病に苦しむ被験者を治療する。
【0067】
ある実施例において、HDAC8インヒビターは、インドール6カルボン酸ヒドロキシアミド化合物及びインドール5カルボン酸ヒドロキシアミド化合物、インドール誘導体、薬学的に許容可能なその塩、薬学的に許容可能なそのNオキサイド、薬学的に許容可能な活性代謝物、薬学的に許容可能なそのプロドラッグ、そして薬学的に許容可能なその溶媒和化合物からなる群から選択される。
【0068】
ある実施例において、HDAC8インヒビターは、PCI-34051、PCI-46646、PCI-34263、R306465(J&J社)及びその誘導体からなる群から選択される。
【0069】
ある実施例において、HDAC8インヒビターは、米国特許出願第60/911,857号、米国特許出願第60/944,409号、米国特許出願第60/954,777号、米国特許出願第11/779,743号、米国特許出願第60/865,825号、米国特許出願第11/940,232号、米国特許出願第11/687,565号もしくは、国際出願番号第PCT/US2007/073802号、国際出願番号第PCT/US2007/084718号、 国際出願番号第PCT/US2007/06714号でに開示する化合物もしくは式から選択される化合物である。これらの参照の開示により、これらの内容は全て本明細書に組み込まれるものとする。
【0070】
ある実施例において、HDAC8インヒビターはヒドロキサム酸であって、化学式(A)の構造を有する。
【0071】
【化2】
Qは任意によりC5-12アリルに置換可能であり、もしくは、任意によりC5-12ヘテロアリルに置換可能であり、
Lは少なくとも4つの原子を有するリンカーを有し、
R1は水素もしくはアルキルであり、
薬学的に許容可能なその塩、薬学的に許容可能なそのNオキサイド、薬学的に活性可能な代謝物、薬学的に許容可能なそのプロドラッグ、薬学的に許容可能なその溶媒和化合物である。
【0072】
(HDACインヒビターに対する迅速な薬学的効果のバイオマーカーとしてのカルシウム流動)
カルシウム流動は、細胞のアポトーシスを起こす能力に相関することを実験は示している。正のカルシウム流動は、しばしばアポトーシスに先行するが、その一方、カルシウム流動の欠落もしくは負のカルシウム流動は、細胞がアポトーシスを起こさないことを示す。従って、ある実施例において、カルシウム流動が測定され、患者がアポトーシス剤の治療に反応があるかどうかを決定する。ある実施例において、カルシウム流動が測定され、患者にアポトーシス剤の臨床治験を行うことを含めるかどうかを決定する。
【0073】
ある実施例において、カルシウム流動は、少なくとも10%もしくはそれ以上のa%の水準のアポトーシスに相関する。ある実施例において、カルシウム流動は、少なくとも15%もしくはそれ以上のa%の水準のアポトーシスに相関する。ある実施例において、カルシウム流動は、少なくとも20%もしくはそれ以上のa%の水準のアポトーシスに相関する。ある実施例において、カルシウム流動は、少なくとも25%もしくはそれ以上のa%の水準のアポトーシスに相関する。ある実施例において、カルシウム流動は、少なくとも30%もしくはそれ以上のa%の水準のアポトーシスに相関する。
【0074】
図2は、ジャーカット細胞内のカルシウム流動とアポトーシスの間の相関関係を示す。ジャーカット細胞は、汎HDACインヒビターであるPCI-24781(0.2μM)で処理が行われた。PCI-24781を追加してから、細胞内のカルシウムの測定可能な増加が観察された。さらに、PCI-24781による2日間の処理後、アポトーシスの割合がアネキシンVにより測定された。アポトーシスの総量は80%であった。ジャーカット細胞は、HDAC8インヒビターのPCI-34051(10μM)により処理された。HDAC8インヒビターの追加後、測定可能な細胞内のカルシウム増加が観察された。さらにPCI-34051による2日間の処理後、アポトーシスの水準は、アネキシンVにより決定された。アポトーシスの割合は、60%であった。1μMのMS-275、1μMの酪酸ナトリウム、及び2μMのSAHAを用いて、実験が行われた。あらゆる事例において、高率の細胞のアポトーシスが生じてから、正のカルシウム流動反応が起きた。
【0075】
図3は、PLCγ酵素へのカルシウム流動の依存性を示す。PLCγ(ヒト肝細胞癌細胞:T細胞リンパ腫)の欠落した腫瘍細胞株は、汎HDACインヒビターのPCI-24781及びHDAC8インヒビターのPCI-34051を用いて処理が行われた。HDACインヒビターもカルシウム誘導を引き起こさなかった。PCI-24781及びPCI-34051で2日間処理を行ってから、アネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合を示す。図3Aは、対照を示す。図3Bは、10μMのHDAC8インヒビターであるPCI-34051を示す。図3Cは、0.2μMの汎HDACインヒビターであるPCI-24781を示す。汎HDACインヒビターもしくはHDAC8インヒビターがPLCγを活性化させ、これにより、カルシウムの仲介した下流経路を引き起こし、アポトーシスを導く。これらの実験は、カルシウム流動がアポトーシスに関連があることを示す。PLCγ変異体細胞(HH細胞)は、アポトーシスを引き起こさなかった。
【0076】
図5及び図6はさらに、PLCγへのカルシウム流動の依存性を示す。PLCγ酵素(ジャーカット細胞)を含む腫瘍細胞株は、PLCγのインヒビター(インヒビターU-73122: 1-[6-((17b-3-メトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-イル)アミノ)ヘキシル]-1H-ピロール-2,5-ジオン;インヒビターU-73343: 1-[6-((17b-3-メトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-イル)アミノ)ヘキシル]-2,5-ヒロリジンジオン)単独もしくは、HDAC8のインヒビターPCI-34051と組み合わせて、処理される。PLCγ酵素(ジャーカット細胞)を含有する腫瘍細胞株であって、PLCγインヒビターで処理されている場合、カルシウム流動を起こさなかった(図5E及び図5F)。しかしながら、HDAC8インヒビター及びPLCγインヒビターの両方で処理された同一のジャーカット細胞及びPLCγインヒビターは、カルシウム流動が生じた、もしくはカルシウム流動を遅延させた(図5B、図5C及び図5D)。この実験は、カルシウム流動がアポローシスに関連付けられていることを示す。これらの実験はまた、アポトーシスを遮断したPLCγインヒビター(U-73343及びU-73122)でカルシウム流動を遮断する(図6)。
【0077】
図12は、カルシウム流動が汎HDACインヒビターもしくはHDAC8インヒビターに対する感受性を予期するために用いられることを示している。図12Aはラモス細胞内のPCI-34051ではなく、PCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示す。図12BはJ.gammal細胞におけるPCI-24781もしくはPCI-34051のいずれかにより、カルシウム流動の誘導がなかったことを示す。図12CはHCT-116の結腸細胞のPCI-34051ではなくPCI-24781によりカルシウム流動の誘導を示している。図12Dは、PC3の前立腺細胞における、PCI-24781もしくはPCI-34051のいずれかにより、カルシウム流動の誘導がないことを示している。アポトーシスを起こした腫瘍細胞株は、PCI-24781もしくはPCI-34051で処理を行った後に、カルシウム流動が起きる。アポトーシスを起こさなかった腫瘍細胞株は、カルシウム流動が起きなかった。
【0078】
図13及び図14は、実施されたアッセイを反映し、カルシウム流動を起こす能力を備えた汎HDACインヒビターのPCI-24781、及びHDAC8インヒビターのPCI-34051に対する感受性が相関することを示す。2つの腫瘍細胞株(A549の肺腫瘍、THP-1単球性白血病)の実験が行われた。図13はA549細胞におけるPCI-34051ではなくPCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示す。A549は、PCI-24781に反応し、アポトーシスが生じる。このアポトーシスは、カルシウム流動により予期された。T細胞の特異なHDAC8の選択的インヒビターであるPCI-34051は、これらの細胞において、アポトーシスもカルシウム流動も誘導しないことを示す。図14は、THP-1細胞内のPCI-34051ではなくPCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示す。THP-1は単球性白血病細胞株であり、細胞株内において、PCI-24781はアポトーシス及びカルシウム流動を誘導するが、PCI-34051は誘導しなかった。
【0079】
図15及び図16は、実施されたアッセイを反映し、カルシウム流動を起こす能力を備えた汎HDACインヒビターのPCI-24781、及びPCI-24781の2つの主要な代謝物(PCI-27789:カルボン酸代謝物及びPCI-27787:アミド代謝物)の感受性が相関することを示す。ジャーカット細胞の実験が行われた。図15は、PCI-24781によるジャーカット細胞におけるカルシウム動員の迅速な誘導を示す。PCI-24781の2つの代謝物、即ちカルボン酸代謝物PCI-27789及びアミド代謝物PCI-27787は、ヒストンデアセチラーゼ及び(HDAC)活性を有さない。そして、ジャーカット細胞内にカルシウム流動の誘導を引き起こすことは不可能であった。図16は、PCI-24781によるアポトーシス誘導を示す。一方、PCI-27789及びPCI-27787はジャーカット細胞内にアポトーシス誘導作用は生じないことを示す。
【0080】
【化3】
【0081】
2つの代謝物の化学構造は、PCI-24781に類似する。これらは、PCI-24781の分子の活性部位のみが異なる。PCI-27789は、PCI-24781のヒドロキサム酸基ではなくカルボン基を有する。PCI-27787はPCI24781のヒドロキサム酸基ではなく、アミド基を有する。
【0082】
ある実施例において、カルシウム流動は、腫瘍がアポトーシス剤に対して感受性を有するかどうかを判定する補助となる臨床的バイオマーカーとして有用性がある。従って、ある実施例では、カルシウム流動が使用され、汎HDACインヒビターもしくはHDAC8インヒビターに反応しそうな患者を選択及び予期するのに使用されている。
【0083】
図17は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の患者(患者SF-03)からの原発腫瘍生体検査において測定された、正のカルシウム流動を示す。5mmのパンチ生体検査に由来する細胞は、コラゲナーゼで処理され、汎HDACインヒビターPCI-24781もしくはHDAC8インヒビターPCI34051が追加された培養基で培養された。両方の化合物は、細胞に接触してから5秒以内に、迅速で静的且つ著しいカルシウム流動を導いた。両方の化合物は、また40時間の処理後に、腫瘍細胞のアポトーシスが増加した。
【0084】
図18は、第2の皮膚T細胞リンパ腫の患者(患者SF-06)からの原発腫瘍生体検査において測定された、負のカルシウム流動である。5mmのパンチ生体検査由来の細胞は、コラゲナーゼにより処理がされ、汎HDACインヒビターPCI-24781もしくはHDAC8インヒビターPCI34051が追加された培養基で培養された。HDACインヒビターはカルシウム流動を活性化しなかったし、腫瘍細胞のアポトーシスの誘導もしなかった。
【0085】
カルシウム流動のアッセイ
(原発腫瘍からの細胞抽出)
【0086】
腫瘍生体検査サンプルは、予見される被験者から獲得される。生体検査組織は切除され、氷上に保存した後に即座に、50mlのファルコンチューブ内のRPMI1640に入れる。生体検査サンプルは、なるべく早く処理する場所へと運ばれる。腫瘍サンプルが入れられた上澄み液が保存される。腫瘍は<0.3-0.5mmの厚みのフラグメントに分割され、1mg/mlのコラゲナーゼD(Roche社)を含有する10mlのRPMI1640を用いて振盪機にて30分間37℃で消化させる。消化は、10mMのEDTAを添加することで停止させ、氷上に置く。消化された組織は氷冷のPBS/10mMのEDTAを3Xで3回洗浄される。そして、該組織は、保持されている上澄み液と組み合わせる。消化された組織及び上澄み液は、70μmの孔のナイロンメッシュ(BD Biosciences社)を通過し、4℃で20分間遠心分離(300g)にかける。液体は廃棄され、抽出した細胞が残る。抽出された細胞は、RPMIの完全培地で再懸濁され、1×106細胞/mlの濃度にする。薬処理及びアッセイの際、細胞は37℃のインキュベータ内で2日間RPMI+10%FBSで培養される。
【0087】
(血液からの循環性腫瘍細胞の抽出)
血液サンプルは、予見される被験者から獲得される。RBCsは赤血球溶解バッファで溶解される。上皮特異抗原で覆われた免疫原生のビーズが製造者の指示により適用される。そして、ビーズは数回洗浄され、上皮細胞以外の細胞については除去する。抽出された上皮細胞は、RPMI完全培地にて懸濁され、1×106細胞/mlの濃度にされる。薬処理及びアッセイの際、細胞は37℃のインキュベータ内で2日間RPMI+10%FBSで培養される。
【0088】
(細胞内カルシウム測定)
アポトーシス剤が加えられる前にカルシウム流動の水準を把握するために、一定分量の培養細胞(1×106細胞/mL)は、10%のウシ血清アルブミン(Fetal Bovine Serum)及び5M Indo-1 AM (invitrogen社)を有するハンクスの平衡塩溶液(Hank's salt solution)(HBSS; Invitrogen社)で暗所にて1時間37℃で培養された。そして、細胞は収集され、遠心分離にかけられ(200Xgを5分間)、HBSSで3回洗浄し、細胞外のIndo-1を除去し、HBSS内で1×106細胞/mlに再調整された。
【0089】
蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent FL; Thermo Scientific社)で蛍光が37℃で観察された。5分の温度均衡期間の後、サンプルが338nmで励起された。そして、発光が動的モードにおいて、5分の間に6秒ごとに405及び485nmで収集された。10μMのイオノマイシンを測定の最後に加えることにより、最大比率の値が決定された。
【0090】
アポトーシス剤は、第2の一定分量の培養細胞(1×106細胞/mL)に加えられた。細胞は10%のウシ血清アルブミン及び5μM Indo-1 AM (invitrogen社)を有するハンクスの平衡塩溶液(HBSS; Invitrogen社)で暗所にて1時間37℃で培養された。そして、細胞は収集され、遠心分離にかけられ(200Xgを5分間)、HBSSで3回洗浄し、細胞外のIndo-1を除去し、HBSS内で1×106細胞/mlに再調整された。そして、細胞は5分間アポトーシス剤で培養された。
【0091】
蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent FL; Thermo Scientific社)で蛍光が37℃で観察される。5分の温度均衡期間の後、サンプルが338nmで励起された。そして、発行が動的モードにおいて、5分の間に6秒ごとに405及び485nmで収集された。10μMのイオノマイシンを測定の最後に加えることにより、最大比率の値が決定された。細胞内[Ca2+]変化、もしくはカルシウム流動により、遊離型カルシウム(405nm/485nm)に結合されるIndo-1の比率が変化することを示す。
【実施例】
【0092】
下記の実施例は、単に解説として解釈されるべきであって、いずれも本発明を限定するものではない。
【0093】
(腫瘍組織からT細胞を抽出する手順及びカルシウム流動を測定する手順)
実施例1:細胞内カルシウム測定
アポトーシス剤が追加される前にカルシウム流動を獲得するために、一定分量の培養細胞(1X106 細胞/mL)は、10%のウシ血清アルブミン及び5M Indo-1 AM (invitrogen社)を有するハンクスの平衡塩溶液(HBSS; Invitrogen社)で暗所にて1時間37℃で培養された。そして、細胞は収集され、遠心分離にかけられ(200Xgを5分間)、HBSSで3回洗浄し、細胞外のIndo-1を除去し、HBSS内で1×106細胞/mlに再調整された。
【0094】
蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent FL; Thermo Scientific社)で蛍光が37℃で観察される。5分の温度均衡期間の後、サンプルが338nmで励起された。そして、発光が動的モードにおいて、5分の間に6秒ごとに405及び485nmで収集された。10μMのイオノマイシンを測定の最後に加えることにより、最大比率の値が決定された。
【0095】
アポトーシス剤は、第2の一定分量の培養細胞(1×106細胞/mL)に加えられた。細胞は10%のウシ血清アルブミン及び5μM Indo-1 AM (invitrogen社)を有するハンクスの平衡塩溶液(HBSS; Invitrogen社)で暗所にて1時間37℃で培養された。そして、細胞は収集され、遠心分離にかけられ(200Xgを5分間)、HBSSで3回洗浄し、細胞外のIndo-1を除去し、HBSS内で1×106細胞/mlに再調整された。そして、細胞は5分間アポトーシス剤で培養された。
【0096】
蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent FL; Thermo Scientific社)で蛍光が各実験を経て、37℃で観察された。5分の温度均衡期間の後、サンプルが338nmで励起された。そして、発光が動的モードにおいて、5分の間に6秒ごとに405及び485nmで収集された。10μMのイオノマイシンを測定の最後に加えることにより、最大比率の値が決定された。細胞内[Ca2+]変化、もしくはカルシウム流動により、遊離型カルシウム(405nm/485nm)に結合されるIndo-1の比率が変化することが示される。
【0097】
実施例2:アポトーシス測定
【0098】
アネキシンVを用いて、HDACインヒビター及びqVD、BAPTA-AM、タプシガルジン及び/又はホスホリパーゼCインヒビターとの組み合わせで2、3日処理が行われてから、毒性が評価された。アネキシンVの結合は、製造者の手順でBioVision社の試薬を用いて、FACSCalibur装置(Becton-Dickinson社)で分析された。図2、3、4、6、7、12及び16を参照のこと。
【0099】
実施例3:原発腫瘍からの細胞抽出
腫瘍生体検査サンプルは、切除され、氷上に保存した後に即座に、50mlのファルコンチューブ内のRPMI1640に入れる。生体検査サンプルは、なるべく早く処理の場所へと運ばれる。腫瘍サンプルが入れられた上澄み液が保存される。腫瘍は<0.3-0.5mmの厚みのフラグメントに分割され、1mg/mlのコラゲナーゼD(Roche社)を含有する10mlのRPMI1640を用いて振盪機にて30分間37℃で消化させる。消化は、10mMのEDTAを添加することで停止させ、氷上に置く。消化された組織は氷冷のPBS/10mMのEDTAを3Xで3回洗浄される。そして、該組織は、保持されている上澄み液と組み合わされる。消化された組織及び上澄み液は、70μmの孔のナイロンメッシュ(BD Biosciences社)を通過し、4℃で20分間遠心分離(300g)にかける。抽出された細胞は、RPMIの完全培地で再懸濁され、1×106細胞/mlの濃度にする。薬処理及びアッセイの際、細胞は37℃のインキュベータ内で2日間RPMI+10%FBSで培養される。
【0100】
実施例4:HDACインヒビター化合物の誘導するアポトーシスがホスホリパーゼC-γ1(PLC-γ1)シグナル伝達を要求する。
PCI-34051のプロアポトーシス活性をさらに特徴付けるために、我々は、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達経路の様々な段階の欠落ジャーカット細胞における作用が検査された。図4及び表1が示すように、汎HDACインヒビター化合物だけでなくPCI-34051(5μM)も、野生型のTCR-欠乏のジャーカット細胞(J.RT3-T.5)及びZAP-70欠乏のジャーカット細胞(P116)よりも、PLC-γ-1の欠乏したジャーカット細胞(J.γl)の方がアポトーシス誘導は小さい。
【0101】
【表1】
【0102】
PCI-340521によりT細胞株におけるアポトーシス誘導を起こすには、PLC-γ1シグナル伝達が必要であることをこの結果は示している。実際、図5-6が示すように、PLCインヒビター(U-73122)は、PCI-34051誘導性アポトーシスを容量依存的様式で阻害した。その一方、PLC-34051インヒビター(U-73343)の不活性類似体は、アポトーシス誘導を阻止できなかった。
【0103】
PCI-34051誘導性アポトーシスにおけるPLCの役割に基づき、我々は、Ca2+-作動体のタブシガルジン(0.2μM)が図7に示すようにアポトーシスを増大させることを見出した。対照的に、Ca2+キレート剤のBAPTA-AM(0.5μM)は、図8に示すように、PCI-34051により誘導されるアポトーシスを減少させた。ジャーカット細胞内のPCI-34051誘導のカルシウム流動は、カルシウムキレートBAPTAにより阻止された。
【0104】
最後に、我々は、アポトーシスの特徴だが、PCI-34051もしくは汎HDACインヒビター化合物に応じた、チトクロムCのミトコンドリアからサイトゾルへの転移を分析した。図9に示すように、PCI-34051もしくは汎HDAC化合物の12時間もしくは24時間の処理により、野生型のジャーカット細胞におけるミトコンドリアからサイトゾルへのチトクロムオキシターゼ転移を誘導した。対照的に、PLC欠乏のJ.細胞に同じ処理を施しても、チトクロムC.FasLのプロアポトーシスタンパク質の局在性を変化させることは不可能であったが、野生型(WT)及びJ.γlジャーカット細胞の両方において、チトクロムCの転移を効果的に誘導した。
【0105】
これらの結果に基づき、PCI-34051のHDAC8選択的インヒビター化合物はT細胞由来のリンパ腫細胞においてアポトーシスをPLCシグナル伝達経路に依存的な経路を経て、誘導する。このことは、PLCシグナル伝達経路を活性化することが、T細胞増殖性疾患の有益な治療方法であることを示唆している。従って、単独で、もしくはPLC依存のシグナル伝達(例えば受容体アゴニスト、受容体活性、抗体、タプシガルジンなど)を活性化する薬剤と組合せたHDACインヒビター化合物(例えば、HDAC8選択的インヒビター化合物)は、T細胞増殖性疾患の治療に用いられる。逆に、PLCシグナル伝達の特徴をプロファイリングすることで(例えば、PLC mRNAもしくはタンパク質水準、PLC酵素活性もしくは細胞内カルシウム水準におけるPLC依存的変化)は、HDAC8選択的インヒビターに応答しそうな細胞を決定するのに有益である。
【0106】
実施例5:HDACインヒビターがPLC-γ依存性の細胞内のカルシウム動員を誘導する。
レシオメリック蛍光のカルシウムイメージングが用いられ、HDAC8選択的インヒビター化合物のPCI-34051及びPCI-24781(汎HDACインヒビター化合物)のT細胞及びB細胞由来の細胞株の細胞内カルシウム動員の作用を評価する。図2に示すように、10μMのPCI-34051もしくは0.2μMのPCI-24781を、培養したT細胞由来の細胞株であるジャーカット細胞に追加することで、細胞内のカルシウムが迅速(ほぼ1分)かつ持続的に上昇する。これは、Ca2+作用体のタブシガルジン(0.2μM)において観察された上昇と非常に類似している。図5及び図6において示すが、PCI-34051刺激によるCa2+水準の増加は、不活性類似体(U-73343)ではなく、PLCインヒビター(U-73122)により、非常に抑制され、このことは、これらの化合物のアポトーシスに対する作用に一致する(実施例5)。さらに、いずれかの化合物の細胞内Ca2+に対する作用は、PLC-γ1欠乏ヒト肝細胞(HH細胞)において完全に消滅される(図3)。ジャーカット細胞におけるPCI-34051及びPCI-24781によるカルシウム動員は、図10及び図11においてそれぞれ示すように、容量依存性である。興味深いことに、HDAC8選択的化合物のPCI-34051はB細胞由来のラモス細胞内の残存するカルシウム水準を変質させなかった(図12A)。この化合物がこの細胞株でアポトーシス誘導を起こすことができない点について、この結果は一貫性を有していた。対照的に、汎HDACインヒビター化合物のPCI-24781は、この細胞株における細胞内のカルシウム水準の確実な増加を引き起こした(図12A)。重要なこととして、ラモス細胞は、PLC-γ1を発現しない。同様に、アポトーシス誘導により測定されるPCI-24781に感受性を有する、結腸腫瘍細胞株HCT-116(B細胞が活性PLC-γ2を含有するといった)などの固形腫瘍細胞株は、またカルシウム流動を示す(図12C)が、PCI-34051はアポトーシスもしくはカルシウム流動のいずれかを引き起こすことができない。最後に、いずれかの化合物によりアポトーシスの誘導を示さないPC3などの他の固形腫瘍細胞株も、カルシウム流動を示さない(図12D)。
【0107】
2つの腫瘍細胞株(A549肺腫瘍、THP-1単球性白血病)に対し実験が行われ、汎HDACインヒビターであるPCI-24781及びHDAC8インヒビターであるPCI-34051の感受性と、カルシウム流動を引き起こす能力に、関連性を有するか実験された(図13及び図14)。肺腫瘍細胞株A549は、上皮固形腫瘍細胞株を示し、該腫瘍細胞株はカルシウム流動により予期されているアポトーシス誘導による汎HDACインヒビターに反応する。一方、T細胞の特異なHDAC8選択的インヒビターのPCI-34051は、これらの細胞において、アポトーシスもカルシウム流動も誘導しない。同様に、THP-1は単球性白血病の細胞株であり、汎HDACインヒビターのPCI-24781がアポトーシスとカルシウム流動を引き起こす。一方、HDAC8の選択的インヒビターのPCI-34051はこれらを引き起こさない。
【0108】
PLC-γ1-依存的経路を介して作用することで、PCI-34051は、T細胞由来の細胞に効果(カルシウム動員及びアポトーシス)を与えやすいと、我々はこれらのデータを基に、結論付ける。一方、PCI-24781は、PLC-γ1もしくはPLC-γ2のいずれかを含有する腫瘍細胞内にアポトーシスを誘導することが可能である。これらのHDACインヒビター(もしくは他のHDACインヒビター)のいずれかにおいて、早期のカルシウム流動は、その化合物により誘導されるアポトーシスの確かな予測因子である。
【0109】
実施例6:HDACインヒビターの代謝物はPLC-γ依存性の細胞内カルシウム動員を誘導しない。
ジャーカット細胞は実験が行われ、汎HDACインヒビターであるPCI-24781及び2つの主要なPCI-24781の代謝物(PCI-27789: カルボン酸代謝物及びPCI-27787: アミド代謝物)と、カルシウム流動を引き起こす能力に、関連性を有するか実験された(図15)。代謝物PCI-27789及びPCI-27787はヒストンデアセチラーゼ酵素活性を有さない。PCI-27789及びPCI-27787は、ジャーカット細胞におけるカルシウム流動の誘導を引き起こさなかった。カルシウム流動は、実施例1が示すように、測定された。
【0110】
【化4】
【0111】
2つの代謝物は、ほぼ正確にPCI-24781と同一の化学構造を有し、分子の「活性」部分において、PCI-24781とは異なる。PCI-27789は、PCI-24781のヒドロキサム酸基ではなく、カルボン酸基を有する。PCI-27787は、PCI-24781のヒドロキサム酸基ではなく、アミド基を有する。細胞は数秒で(カルシウム流動の観点から)これらの構造上の違いを識別し、アポトーシスを起こすかどうかについての情報を伝達する。
【0112】
図16は、PCI-24781によるアポトーシス誘導するが、PCI-24781、PCI-27789及びPCI-27787の不活性代謝物は、ジャーカット細胞においてアポトーシス誘導作用はないことを示している。ジャーカット細胞は、PCI-24781、PCI-27789、もしくはPCI-27787(0.2uM)で治療を行い、アネキシンVで2日間染色後、アポトーシスが測定された(上述の実施例2で提示)。従って、これらが、カルシウム流動とアポトーシスとの間にさらなるリンクを確立するという点において、これらの図面は重要である。
【0113】
実施例7:皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)患者の生体検査における正及び負のカルシウム流動
図17は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)(患者SF-03)の患者からの原発腫瘍生体検査において測定された正のカルシウム流動を示す。5mmのパンチ生体検査がコラゲナーゼで処理され、汎HDACインヒビターのPCI-24781もしくはHDAC8インヒビターのPCI-34051が加えられた培養基で培養された(生体検査、即ち原発腫瘍からの細胞抽出が実施例3に基づき行われた)。両方の化合物は、薬の追加から5秒以内に迅速かつ重要なカルシウム流動を導いた。また、両方の化合物により、処理後40時間で、腫瘍細胞のアポトーシスが増加した。
【0114】
対照として、図18は、別の皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)(患者SF-06)の患者から原発腫瘍生体検査において測定された負のカルシウム流動を示す。この場合、HDACインヒビターはカルシウム流動を刺激もしないし、いずれかのHDACインヒビターが腫瘍細胞のアポトーシスを導くこともなかった。従って、カルシウム流動は迅速なバイオマーカーの方法であり、患者が臨床試験において治療に反応を示すか選択及び分類を行われる。
【0115】
本発明の好適な実施例について、本明細書に提示し記載したが、当業者にとっては、このような実施例が実例によってのみ、提供されることは明確である。数多くの変更、交換及び代替が本発明から逸脱しないことを当業者は理解する。本明細書中の実施例の数多くの変更形態は、本発明の実施として採用される。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、本発明に基づく方法及び構造、及びこれらの等価物が特許請求の範囲内のものである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年4月13日出願の米国仮特許出願第60/911,857号、2007年6月15日出願の米国仮特許出願第60/944,409号、2007年8月8日出願の米国仮特許出願第60/954,777号、2008年2月4日出願の米国仮特許出願第61/026,023号、そして2007年7月18日出願の米国特許出願第11/779,743号の優先権を主張する出願である。これら文献に開示される内容は、全体として本明細書中に参照されるものである。
【0002】
本明細書は、ヒストンデアセチラーゼインヒビターを利用した治療に効果を示す患者を選択かつ予見するために、バイオマーカーとしてカルシウム流動を利用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオマーカーは、生物学的指標を示すのに用いられる物質である。例えば、バイオマーカーが物質である場合、その物質が存在することで、病気の存在を示すことが可能である。バイオマーカーは、一般的な生物学的過程、発病過程、もしくは治療介入に対する薬理反応の指標として客観的に査定及び評価される特徴がある。臨床背景において、バイオマーカーは、病状もしくは治療成績に非常に相関性を有する、観察可能な特徴もしくは検出可能な物質を有する。従って、バイオマーカーは病状の進展若しくは治療効果を査定するのに用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、カルシウム流動をバイオマーカーとして使用する方法について記載する。また、薬剤のアポトーシスを引き起こす能力を評価する迅速な方法について記載する。さらに、バイオマーカーとしてカルシウム流動を用い、治療用のアポトーシス剤に反応しそうな患者を選択及び予見する方法について記載する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤の治療される患者を選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、アポトーシス剤が、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターの群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルである。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0006】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、患者からの生体サンプルを汎HDACインヒビターに接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、血液サンプルから得られた生体サンプルが循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0007】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをHDAC8インヒビターに接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルから得られた循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0008】
ある実施例は、病状を治療する際のアポトーシス剤による治療の有効性を評価するために、臨床治験に参加する患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、アポトーシス剤が汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択される。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルは、腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルから得られた循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルは少なくとも約100の腫瘍細胞を備える事を特徴とする。
【0009】
ある実施例は、アポトーシス剤での治療に反応を示す病状の患者を選択するシステムを備え、システムは、(a)アポトーシス剤、(b)生体サンプルにおけるカルシウム流動の水準を測定する手段を備え、生体サンプル、アポトーシス剤及びカルシウム流動の水準を測定する手段は、全て流体による伝達である。ある実施例において、アポトーシス剤は、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択される。ある実施例において、生体サンプルは腫瘍細胞を備える。カルシウム流動の水準を測定する手段が、カルシウム検出試薬を備える。
【0010】
任意的に、生体検査の結果は患者から採取された腫瘍もしくは血液から得られたものである。腫瘍サンプルは、固形及び液状のどちらであってもよく、あらゆる腫瘍を含む。ある実施例において、生体検査の結果は、固形腫瘍を有する患者の血液から分離された循環性腫瘍細胞(CTCs)から得られたものである。ある特定の実施例では、生体検査は少なくとも約102の腫瘍細胞で行われる。
【0011】
任意的に、カルシウム流動アッセイが、細針生体検査(FNA)、パンチ生体検査により採取された臨床サンプルで行われる。生体検査試料は生体内の組織、細胞もしくは流体から得られる。もしくは、生検針もしくは外科用切開により生体検査は行われる。ある実施例において、生体検査は、十分な濃度のアポトーシス剤で生体外もしくは試験管内で行われる。
【0012】
(定義)特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される下記の用語は、本出願において、以下の意味を有すると定義される。
【0013】
「アポトーシス剤」という用語は、細胞内でアポトーシスを直接的もしくは間接的に引き起こす任意の薬剤である。本明細書において。アポトーシス剤は、ヒストンデアセチラーゼインヒビター(HDAC inhibitor)、細胞毒性剤、キナーゼインヒビターもしくは抗体と成り得るが、これらに限定されない。ある実施例においては、アポトーシス剤は、汎ヒストンデアセチラーゼ(pan-HDAC)インヒビターもしくはヒストンデアセチラーゼ8(HDAC8)インヒビターから選択される。
【0014】
本明細書記載の「カルシウム検出試薬」は、細胞内のカルシウム水準を示すために、1もしくは1以上の薬剤を単独もしくは組み合わせて使用される任意の化学剤もしくは生物剤を意味する。カルシウム検出試薬としては、標識、色素、光架橋剤、細胞毒性化合物、薬、親和性標識、光親和性標識、反応性化合物、抗体もしくは抗体断片、生体材料、ナノ粒子、スピン標識、フルオロフォア、金属含有部分、放射性成分、新規官能基、他の分子と共有結合的又は非共有結合的に相互作用する基、光ケージド部分(photocaged moiety)、化学線により励起可能な部分、リガンド、光異性体化可能な部分、ビオチン、ビオチン類似体、重原子を組み込んでいる部分、化学的に切断可能な基、光切断可能な基、酸化還元活性化剤、同位体標識されている部分、生物物理学的なプローブ、燐光性の基、化学発光性の基、電子密度の高い基、磁性基、挿入基、発色団、エネルギー伝達剤、生物活性剤、検出可能な標識もしくはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書記載の「カルシウム流動」は、カルシウムイオンが細胞膜を超えること及び、細胞小器官間、もしくは細胞質内を移動することを意味する。
【0016】
本明細書記載の「誘導体」は、化合物を意味し、該化合物は、原子、分子もしくは基を別の原子、分子もしくは基に代替あるいは置換することで、別の化合物もしくは類似の構造体から生成される。pan-HDACインヒビターもしくはHDAC8インヒビターが易酸化性の窒素の原子を有する場合、窒素原子は、N-オキシド誘導体(N-oxide deribative)の周知の製造方法で、N-オキシドに変換されるが、これらに限定されない。さらに、汎ヒストンデアセチラーゼ(pan-HDAC)インヒビターもしくはヒストンデアセチラーゼ8(HDAC8)インヒビターがヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、もしくは1あるいは1以上の窒素原子を有する任意の基を有する場合、これらの基は、適切な保護基に保護され、保護誘導体を生成され得る。適切な保護基のリストは、T.W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc. 1981に記載されていて、これらの内容は、本明細書中で参照される。
【0017】
本明細書記載の「有効量」もしくは「治療効果のある量」は、必要以上の副作用を伴うことなく、被験者に薬理学的効果あるいは治療効果を与える薬剤の量を意味する。有効量もしくは治療効果のある量は、被験者の年齢、体重、及び全身状態、治療状態、治療すべき病状の重症度、及び処方医師の判断に基づいていて、被験者によって異なることは認識されている。
【0018】
本明細書記載の「フルオロフォア」は、励起される際に、光子を放出する分子を意味する。フルオロフォアは、Fura-2、Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4及びこれらの誘導体であり得るが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書記載の「ヒストンデアセチラーゼ」及び「HDAC」は、ヒストンのN末端でリジン残基のε−アミノ基からアセチル基を取り除く酵素群のいずれか1つを示す。特に明記しない限り、「ヒストン」の用語は、H1、H2A、H2B、H3、H4及びH5を含む任意の種のあらゆるヒストンたんぱく質を意味する。ヒトHDACたんぱく質もしくは遺伝子産物は、HDAC-1、HDAC-2、HDAC-3、HDAC-4、HDAC-5、HDAC-6、HDAC-7、HDAC-8、HDAC-9、HDAC-10及びHDAC-11を含むが、これらに限定されない。ある実施例では、HDACは、原生動物もしくは菌類由来のものであってもよい。
【0020】
本明細書記載の「ヒストンデアセチラーゼインヒビター」、「ヒストンデアセチラーゼのインヒビター」、「HDACインヒビター」は、化合物を識別するために、交互に用いられる。そして、この「ヒストンデアセチラーゼインヒビター」、「ヒストンデアセチラーゼのインヒビター」、「HDACインヒビター」、「HDACのインヒビター」は、HDACと相互作用が可能であり、その活性、特に酵素活性を阻害する。HDAC酵素活性の阻害とは、HDACがヒストンからアセチル基を除去する能力が減少することを意味する。ある実施例において、このような阻害、即ち、HDACインヒビターが、具体的にはHDACのヒストンからアセチル基を除去する能力を減少させることは明確であり、その阻害させる際のインヒビターの濃度は、他の無関係な生物学的効果を生成するのに要するインヒビターの濃度よりも低い。
【0021】
本明細書記載の「HDAC8インヒビター」及び「HDAC8のインヒビター」は、化合物を識別するために、交互に用いられる。そして、この「HDAC8インヒビター」及び「HDAC8のインヒビター」は、HDAC8酵素活性と相互作用が可能であり、活性、特にHDAC8の酵素活性を阻害することが可能である。HDAC酵素活性の阻害とは、HDAC8がたんぱく質もしくは他の高分子からアセチル基を除去する能力が減少させることを意味する。
【0022】
本明細書記載の「汎HDAC」インヒビターは、(a)化学剤もしくは生物剤であって、クラスI及びクラスIIの酵素のあらゆる11のHDACのアイソフォームを抑制する。もしくは、本明細書記載の「汎HDAC」インヒビターは、(b)化学剤もしくは生物剤であって、1μM未満の阻害定数(Ki)を備えた、クラスIもしくはクラスIIのHDACsの1以上のアイソフォームを著しく抑制する。
【0023】
本明細書記載の「プロドラッグ」は、体内の代謝過程による変換で薬理学的作用が導かれる薬もしくは化合物を意味する。プロドラッグは、一般的に薬の前駆体であって、該前駆体は、被験者への投薬及び投薬後の吸収の後に、代謝系による変換等の特定の過程を経て、活性種もしくはより高活性な種に変換される。あるプロドラッグは、プロドラッグ上に化学基を有し、化学基は、プロドラッグを低活性にさせ、及び/又は薬に対する溶解度もしくは他の特性を付与する。化学基がプロドラッグから切断及び/又は修飾されると、作用薬が生成される。
【0024】
本明細書記載の「治療(treat)」、「治療(treating)」もしくは「治療(treatment)」は、障害もしくは病気の進行を阻害するが、これらに限定されない。例えば、治療は、病気もしくは障害の進行を抑止する。癌の治療は、悪性細胞にアポトーシス剤を導入したり、もしくは、悪性細胞の成長及び/又は悪性細胞の転移可能性を抑制させるために、あらゆる作用を与えたりすることを含むが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】PLCγ1及び下流カルシウムシグナル伝達を含む外部薬剤によりアポトーシスが誘導されることを示す概略図である。
【0026】
【図2A】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の迅速な誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Aは、対照を示す。
【図2B】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の速い誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Bは、0.2μMの汎HDACインヒビターであるPCI-24781及びPCI-24781で2日間の処理後にアネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合:80%を示す。
【図2C】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の速い誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Cは、10μMのHDAC8インヒビターPCI-34051及びPCI-34051で2日間の処理後にアネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合:60%を示す。
【図2D】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の速い誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Dは、1μMのMS-275を示す。
【図2E】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の速い誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Eは、1mMのナフチル酪酸エステラーゼ(Na Butyrate)を示す。
【図2F】ジャーカット細胞における異なるHDACインヒビターによるカルシウム流動の速い誘導を示す。カルシウム流動反応は高率なアポトーシスと相関する。図2Fは、2μMのスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)を示す。
【0027】
【図3A】HH細胞(ホスホリパーゼCγ活性化酵素を有さない(PLCγ))における汎HDACインヒビター化合物であるPCI-24781もしくはHDAC8インヒビター化合物であるPCI-34051のいずれか1つによりカルシウム流動が誘導されないことを示す。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日間の処理後にアネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合を示している。カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。図3Aは、対照を示す。
【図3B】HH細胞(ホスホリパーゼCγ活性化酵素を有さない(PLCγ))における汎HDACインヒビター化合物であるPCI-24781もしくはHDAC8インヒビター化合物であるPCI-34051のいずれか1つによりカルシウム流動が誘導されないことを示す。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日間の処理後にアネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合を示している。カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。図3Bは、10μMのHDAC8インヒビターであるPCI-34051を示す。
【図3C】HH細胞(ホスホリパーゼCγ活性化酵素を有さない(PLCγ))における汎HDACインヒビター化合物であるPCI-24781もしくはHDAC8インヒビター化合物であるPCI-34051のいずれか1つによりカルシウム流動が誘導されないことを示す。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日間の処理後にアネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合を示している。カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。図3Cは、0.2μMの汎HDACインヒビターであるPCI-24781を示す。
【0028】
【図4】野生型(Jurkat)、ホスホリパーゼCγ1欠乏(J.gammal)、T細胞受容体の欠乏(P116)もしくは、ZAP-70欠乏である、ジャーカット細胞内のアポトーシスに作用を及ぼす、HDAC8インヒビター化合物(PCI-34051; 5μM)の能力を示す棒グラフである。ジャーカット細胞は、ヒトT細胞白血病の細胞であり、急性リンパ性白血病の14歳の少年の末梢血から樹立されたものである。
【0029】
【図5A】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5Aは、対照を示す。
【図5B】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5Bは、HDAC8インヒビターであるPCI-34051を示す。
【図5C】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5Cは、ホスホリパーゼCインヒビター(U-73122: 1-[6((17b-3-メトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-イル)アミノ)ヘキシル]-1H-ピロール-2, 5-ジオン)が加えられると、PCI-34051によるジャーカット細胞内のカルシウム動員の早い誘導が抑制されることを示す。
【図5D】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5DはPLC(U-73343: 1-[6-((17b-3-メトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-イル)アミノ)ヘキシル]-2,5-ピロリジンジオン)は、PCI-34051により誘導されるカルシウム動員に作用しないことを示す。
【図5E】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5EはいずれのPLCγインヒビター(U-73343, U73122)もカルシウム流動の誘導のみを引き起こさないことを示す。
【図5F】HDACインヒビターを有するもしくは有さない、ホスホリパーゼCがジャーカット細胞に加えられる際の、カルシウム動員の作用を示す。図5FはいずれのPLCγインヒビター(U-73343, U73122)もカルシウム流動の誘導のみを引き起こさないことを示す。
【0030】
【図6】PLCインヒビターがジャーカット細胞内のPCI-34051により誘導されたアポトーシスを調節することを示す棒グラフである。ジャーカット細胞及びJ.gammal細胞は、PCI-34051を有するもしくは有さないPLCインヒビターU-73122及び不活性の類似体のU-73343で処理が行われ、2日後にアネキシンVで測定が行われる。
【0031】
【図7】PCI-34051(10μM)によるアポトーシス誘導上でのカルシウムエフェクター(Calcium effector)(タプシガルジン; 0.2μM)の作用を示す棒グラフであり、野生型(Jurkat)及びJ.γl(J.gammal)のジャーカット細胞を対比している。
【0032】
【図8A】PCI-34051によるアポトーシス誘導上でのカルシウムキレート剤(BAPTA-AM; 0.5μM)の作用を示す棒グラフであり、野生型(Jurkat)及びJ.γ(J.gammal)のジャーカット細胞を対比している。
【図8B】ジャーカット細胞内のPCI-34051により誘導されたカルシウム流動が細胞透過性カルシウムキレート剤BAPTA-AMにより阻止されることを示す折線グラフである。
【0033】
【図9】一連の免疫ブロットの図であり、該図は、プロアポトーシス促進薬剤で処理した後の様々な時点において、チトクロムC酸化酵素が転移する事を示した、野生型(Jurkat)及びJ.γ(J.gammal)のジャーカット細胞内のミトコンドリアからサイトゾルへと転移することを示している。
【0034】
【図10】ジャーカット細胞内のHDAC8の選択的インヒビター化合物(PCI-34051)により誘導された用量依存的な細胞内カルシウム応答を示す棒グラフである。
【0035】
【図11】ジャーカット細胞内の汎HDACの選択的インヒビター化合物(PCI-24781)により誘導された用量依存的な細胞内カルシウム応答を示す棒グラフである。
【0036】
【図12A】ラモス細胞内のPCI-34051ではなく、PCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示す。PCI-24781及びPCI-34051で2日処理を行い、アネキシンVによりアポトーシス比率が測定されることを示す。図12のいずれの図面においても、カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。
【図12B】J.gammal細胞におけるPCI-24781もしくはPCI-34051のいずれかによる、カルシウム流動の誘導がなかったことを示す。PCI-24781及びPCI-34051で2日治療を行い、アネキシンVによりアポトーシス比率が測定されることを示す。図12のいずれの図面においても、カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。
【図12C】HCT-116の結腸細胞のPCI-34051ではなくPCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示している。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日処理を行い、アネキシンVによりアポトーシス比率が測定されることを示す。図12のいずれの図面においても、カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。
【図12D】PC3の前立腺細胞における、PCI-24781もしくはPCI-34051のいずれかによる、カルシウム流動の誘導がないことを示している。また、これらの細胞株において、PCI-24781及びPCI-34051で2日処理が行われ、アネキシンV染色によりアポトーシス比率が測定されることを示す。図12のいずれの図面においても、カルシウム流動反応は、高率なアポトーシスと相関する。
【0037】
【図13】A549細胞のPCI-34051ではなく、PCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示す。肺腫瘍細胞株A549は、上皮の固形腫瘍細胞株を示していて、該細胞株は、カルシウム流動により予期されるアポトーシス誘導で、汎HDACインヒビターであるPCI-24781に対して反応する。一方、T細胞固有のHDAC8選択的インヒビターであるPCI-34051は、これらの細胞において、アポトーシスもカルシウム流動もいずれも誘導しなかった。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日処理を行い、アネキシンVによりアポトーシス比率が測定されることを示す。
【0038】
【図14】THP-1細胞のPCI-34051ではなく、PCI-24781によるカルシウム誘導を示す。THP-1は、単球性白血病の細胞株であって、汎HDACインヒビターであるPCI-24781はアポトーシス及びカルシウム流動の誘導を引き起こす。その一方、HDAAC8の選択的インヒビターであるPCI-34051はアポトーシス誘導及びカルシウム流動の誘導を引き起こさない。また、PCI-24781及びPCI-34051で2日処理を行い、アネキシンVによりアポトーシス比率が測定されることを示す。
【0039】
【図15】PCI-24781によりジャーカット細胞内のカルシウム動員の迅速な誘導を示す。PCI-24781の2つの主要な代謝物、即ちカルボン酸代謝物PCI-27789及びアミド代謝物PCI-24787は、ヒストンデアセチラーゼの活性を有さない。PCI-27789及びPCI-27787はジャーカット細胞において、カルシウム流動を誘導することは不可能であった。
【0040】
【図16】PCI-24781によるアポトーシス誘導を示す。一方、PCI-24781、PCI-27789、及びPCI-27787の不活性代謝物は、ジャーカット細胞内のアポトーシス誘導作用を有さない。ジャーカット細胞は、PCI-24781、PCI-27789もしくはPCI-27787(0.2μM)で処理され、そして2日後にアネキシンVによりアポトーシスが測定される。
【0041】
【図17A】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査(SF-03)において、PCI-24781及びPCI-34051によるカルシウム流動の迅速な誘導を示す。図17Aは、対照を示す。
【図17B】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査(SF-03)においてPCI-24781及びPCI-34051によるカルシウム流動の早い誘導を示す。図17Bは、0.2μMのPCI-24781を示す。
【図17C】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査(SF-03)においてPCI-24781及びPCI-34051によるカルシウム流動の迅速な誘導を示す。図17Cは、10μMのPCI-34051を示す。
【0042】
【図18A】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査組織(SF-06)におけるPCI-24781もしくはPCI-34051によるカルシウム流動の誘導は見られなかった。図18Aは対照を示す。
【図18B】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査組織(SF-06)におけるPCI-24781もしくはPCI-34051によるカルシウム流動の誘導は見られなかった。図18Bは0.2μMのPCI-24781を示す。
【図18C】皮膚T細胞のリンパ腫の患者の生体検査組織(SF-06)におけるPCI-24781もしくはPCI-34051によるカルシウム流動の誘導は見られなかった。図18Cは10μMのPCI-34051を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、アポトーシス剤が、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターの群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルである。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0044】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをHDAC8インヒビターに接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルから得られる循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0045】
ある実施例は、アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをHDAC8インヒビターに接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルが腫瘍細胞を構成する。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルから得られる循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0046】
ある実施例は、病状を治療する際のアポトーシス剤による治療の有効性を評価するために、臨床治験に参加する患者を選択する方法を備え、方法は、被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、アポトーシス剤を患者の治療に選択する段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備える。ある実施例において、アポトーシス剤が汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択される。ある実施例において、カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定される。ある実施例において、カルシウム検出試薬は、フルオロフォアである。ある実施例において、フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択される。ある実施例において、病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択される。ある実施例において、生体サンプルは、腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルが血液サンプルから得られる循環性腫瘍細胞を備える。ある実施例において、生体サンプルは少なくとも約100の腫瘍細胞を備える。
【0047】
ある実施例は、アポトーシス剤での治療に反応を示す病状の患者を選択するシステムを備え、システムは、(a)アポトーシス剤、(b)生体サンプルにおけるカルシウム流動の水準を測定する手段を備え、生体サンプル、アポトーシス剤及びカルシウム流動の水準を測定する手段は、全て流体による伝達である。ある実施例において、アポトーシス剤は、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択される。ある実施例は、生体サンプルは腫瘍細胞を備える。ある実施例は、カルシウム流動の水準を測定する手段が、カルシウム検出試薬を備える。
【0048】
(ホスホイノシチドホスホリパーゼC(PLC)ファミリーとカルシウム仲介シグナル伝達)
ホスホイノシチドホスホリパーゼC(PLC)ファミリーは、シグナル伝達に関与する真核細胞酵素のファミリーである。PLCファミリーは、6つのサブファミリーからなり、該サブファミリーは、全てで13の別々のアイソフォームを構成する。PLCγは、T細胞の外的刺激(増殖因子、神経伝達物質など)及び内的刺激(ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K))に対する反応に関与している。
【0049】
ホスホリパーゼC(PLC)ファミリーのメンバーが、ホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)、ホスファチジルインシトール、2つのセカンドメッセンジャー、イノシトール三リン酸(PIP3)及びジアシルグリセロール(DAG)の加水分解を触媒することを示している。PIP2の加水分解は、2つの連続的な段階により行われる。第1反応はホスホトランスフェラーゼの段階であり、該段階は、イノシトール環2'の位置におけるヒドロキシル基とリン酸基の間の分子内攻撃により、環状IP3の中間体をもたらすことに関する。この時点で、DAGが生成される。しかしながら、第2のホスホジエステラーゼの段階において、環状の中間体が、水分子による攻撃を受けるに十分な長さである活性部位内に保持され、これにより、非環式のIP3の最終産物をもたらす。
【0050】
IP3及びDAGは、細胞内シグナル伝達で重要な下流タンパク質の活性を調整する。IP3は、溶解性を有し、細胞質を通して拡散し、小胞体(ER)上のIP3受容体と相互作用することで、カルシウムを放出し、細胞内のカルシウム(カルシウム流動の1つの起源)の水準を上昇させる。DAGはキナーゼC(PKC)を疎水性により動員し、細胞膜の内膜(inner leaf)を繋ぎとめる。PKCは、カルシウムイオンと結合されると、活性化する。PKCが活性化されると、カルシウム感受性のタンパク質の刺激を通して多数の細胞反応をもたらす。
【0051】
カルシウム流動は少なくとも2つの構成要素を有すると思われる。小胞体からの細胞内の最初のカルシウムの放出であり、これはシトクロムCにより引き起こされるカルシウムの後の放出である。シトクロムCは、ミトコンドリア外膜の透過性の上昇により、ミトコンドリアから放出される。そして、シトクロムCはアポトーシスに関連して形態変化に先行する際、シトクロムCは制御的機能を果たす。シトクロムCが放出されると、アポトーシスプロテアーゼ活性因子(Apaf-1)及びアデノシン三リン酸(ATP)に結合して、プロカスパーゼ-9に結合し、アポトソームとして知られるタンパク質複合体を生成する。アポトソームは、プロカスパーゼを切断し、活性型のカスパーゼ-9を生成し、次々に他のカスパーゼを活性化し、アポトーシスへと次々と誘引する。カルシウム流動とアポトーシスとの間の提案されたメカニズムが図1に示される。
【0052】
(HDACインヒビター)
真核生物の細胞において、クロマチンはヒストンに結合し、ヌクレオソームを形成する。各ヌクレオソームは、タンパク質8量体(Protein octamer)を形成し、該タンパク質8量体は、H2A、H2B、H3及びH4の各ヒストンの2つの複写を構成する。ヒストンの塩基性アミノ酸が負に荷電されたDNAのリン酸基に相互作用すると同時に、DNAはタンパクコアに絡みつく。これらのコアヒストンの最も一般的な翻訳後修飾は、保存されたリジン残基の高塩基性N末端リジン残基のε-アミノ基の可逆性アセチル化である。ヒストンの可逆性アセチル化は、は、遺伝子発現の主要な制御因子である。転写因子のDNAへの到達性を変更することで、遺伝子発現は制御される。
【0053】
正常細胞において、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)及びヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)はヒストンのアセチル化の水準を制御する。HDACの阻害により、高アセチル化されたヒストンが蓄積され、細胞応答の多様性が生じる。
【0054】
ヒストンのアセチル化及び脱アセチル化は、転写制御に確実に関連性がある。ある実施例において、HDACインヒビターは、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、デプシペプチド、MS-275、及びアピシジンを含み、特に、HDACインヒビターはヒストンアセチル化を促進し、クロマチン構造を弛緩させる。クロマチンを弛緩させ、クロマチンのコイル状が解けると、多様な遺伝子の発現を可能とするとともに増大させる。該多様な遺伝子は、例えばp21CIP1等の分化プロセスに関与する遺伝子を含む。実際、例えばSAHA、酪酸ナトリウム等のHDACインヒビターは、様々なヒト白血病細胞株の成熟を引き起こすことが示されている。
【0055】
哺乳類のHDACは、3つの特徴的な酵母の相同性のある構造あるいは配列に基づいて、3つの主要なクラスに分類される:Rpd3(Class I)、Hda1 (class II)、及びSir2/Hst (classIII)。Rpd3と相同のクラスIは、HDAC1、2、3、8及び11を含む。Hda1と相同のクラスIIは、HDAC4、5、6、7、9 (9aと9b)及び10を含む。Sir2/Hstと相同のクラスIIIは、SIR T1、2、3、4、5、6及び7を含む。昨今の研究で、HATもしくはHDAC固有の活性を有する細胞因子の付加的なファミリーが明らかになった。これらは、細胞周期、DNA修復及び転写の制御に関与する非ヒストンタンパク質であると考えられる。限定しないが、p400AF、BRCA2及びATM様タンパク質を含む、数多くの転写活性化補助因子は、HATとして機能する。ある転写抑制因子は一般的なクロマチン修復複合体を動員することで、クロマチンと関連するHDACの活性を示す。例えば、Masタンパク質ファミリー(Mas1、Mxi1、Mad3及びMad4)は、塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス-ループ-ヘリックス-ジッパー型の転写因子を備え、該転写因子はMaxと該因子のDNA結合部位において、ヘテロ二量体化する。Mad:Maxヘテロ二量体は、「抑制複合体」を動員することで、該二量体のDNA結合部位において、転写抑制因子として作用する。Maxもしくはmsin3補助抑制複合体のいずれかと相互作用を妨げる変異は、細胞増殖の静止できない。従って、本明細書において用いられるHDACインヒビターは、上述のあらゆるタンパク質からHDAC活性を阻害することが可能なあらゆる薬剤に関する。
【0056】
HDACのインヒビターの癌細胞に対する治療効果が研究されている。酪酸及びその誘導体は、フェニル酪酸ナトリウムを含み、該酪酸及びその誘導体は、ヒト結腸細胞腫、白血病及び網膜芽細胞腫細胞株において、生体内にアポトーシスを誘導することが知られている。抗癌活性が幅広く研究されている他のHDACのインヒビターとして、トリコスタチンA及びトラポキシンを含む。
【0057】
(汎HDACインヒビター)
限定することではないが、汎HDACインヒビターは、酪酸、4-フェニル酪酸ナトリウムもしくはバルブロ酸などの短鎖脂肪酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、ビアリールヒドロキサマートA-161906、二環式アリル-N-ヒドロキシカルボアミド、CG-1521、PXD-101、スルホンアミドヒドロキサム酸、LAQ-824、オキサムフラチン、スクリプテイド、m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサム酸、トラポキシンヒドロキサム酸類似体、トリコスタチンA、トリコスタチンC、m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキシアミドオキサムフラチン(CBHA)、ABHA、スクリプテイド、ピロキサミド及びプロペナミド等のヒドロキサム酸、トラポキシン、アピシジン、デプシペプチド、HC-トキシン、クロミドシン、ジヘテロペプチン、WF-3161、Cyl-1及びCyl-2などのサイクリックテトラペプチドを含有するエピキシケトン、FR901228、アピシジン、ペプチドを含有するサイキックヒドロキサム酸(CHAPs)、ベンズアミド、MS-275(MS-27-275)及びCI-994等のサイキックテトラペプチドを含有するベンズアミドもしくは非エポキシケトン、デプデシン、PXD101、有機イオウ化合物、そしてアロイルピロリルヒドロキシアミド(APHAs)を含む。
【0058】
ある実施例において、汎HDACインヒビターはPCI-24781、SAHA(Zolinza社)、トリコスタチンA、MS-275、LBH-589、PXD-101、MGCD-0103、JNJ-26481585、R306465(J&J社)もしくは酪酸ナトリウムである。
【0059】
ある実施例において、汎HDACインヒビターは、米国特許出願第10/818,755号、米国特許出願第10/537,115号、米国特許出願第10/922,119号、米国特許出願第11/100,781号、米国特許出願第11/779,743号、国際特許出願第PCT/US2005/046255号もしくは米国特許第7,276,612号に開示する化合物もしくは式から選択される化合物である。これらの参照の開示により、これらの内容は全て本明細書に組み込まれるものとする。
【0060】
ある実施例において、汎HDACインヒビターは、以下の化学式1の構造を有する。
【0061】
【化1】
R1は水素もしくはアルキルであり、
Xは、-O-、NR2もしくは-S(O)nであって、nは0-2、R2は水素もしくはアルキル、
Yはアルキレンであって、サイクロアルキルと任意により置換可能であり、フェニル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルフォニルと任意により置換可能であり、フェニルアルキルチオと任意により置換可能であり、フェニルアルキルスルフォニル、ヒドロキシと任意により置換可能であり、もしくはフェノキシと任意により置換可能であり、
Ar1はフェニレンもしくはヘテロアリレンであって、Ar1はアルキル基、ハロ基、ヒドロ
キシ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、もしくはハロアルキル基から独立的に選択される1もしくは2の基に任意により置換可能であって、
R3は水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、もしくは、任意によりフェニルで置換可能であり、そして、
Ar2は、アリル、アラルキル、アラルケニン、ヘテロアリル、ヘテロアラルキル、ヘテロアラルケニル、サイクロアルキル、サイクロアルキルアルキル、ヘテロサイクロアルキルもしくはヘテロサイクロアルキルアルキルである。
そして、個々の立体異性体、個々の幾何異性体、もしくは混合物を含む、もしくは、薬学的に許容可能な塩を含む。
【0062】
(HDAC8とHDAC8インヒビター)
HDAC8は、多種類の組織及びヒト腫瘍細胞株の核に局在化させる377残基42kDaのタンパク質である。HDAC8の完全長の形状である野生型は、GenBankのアクセス番号はNP060956である。HDAC8の構造は、ヒドロキサマートインヒビターの4つの異なる結合から解析される。
【0063】
HDAC8は、多細胞型及び腫瘍細胞株で発現される、試験管内の脱アセチル化酵素活性を有するHDACアイソフォームである。系統樹解析ではクラスI及びクラスIIの酵素の境界域の近辺に位置することが示されるが、HDAC8は、配列相同性に基づき、クラスIの酵素であると考えられる。HDAC8は、以下に示すいくつかの点において、プロトタイプクラスIの酵素とは異なる。該HDAC8の異なる点は、報告されているが、核とは対照的に細胞質及び細胞内局在化、Fe(II)及びK+を含む様々な金属の活性部位への結合、及びサイキックAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)20-22によるSer39のリン酸化による触媒活性の負の調節を有することである。ヒトHDAC8の3次元結晶構造は、L1の活性部位のループ構造により媒介された結合部位のポケット近位の構造的柔軟性及び、活性部位の阻害におけるSer39のリン酸化の特徴的な影響が解明かつ明らかにされた。
【0064】
HDAC(は、一次的に膵臓におけるランゲルハンス島のデルタ細胞、腸管上皮細胞、神経内分泌細胞において発現される。デルタ細胞は、勿論ソマトスタチン、インスリンの分泌を阻害するペプチドホルモン及び成長ホルモンを発現及び分泌する。理論に制約されない場合、HDAC8の活性はデルタ細胞におけるソマトスタチンの発現を促進することが信じられている。従って、HDAC8の活性を阻害することは、ソマトスタチンの発現を減少させ、デルタ細胞からの分泌を減少させ、その結果、全身性のインスリン及び成長ホルモンの水準が上昇する。
【0065】
HDAC8は腫瘍細胞株で高水準に発現する。例としては、ジャーカット、HuT78、K562、PC3及びOVCR-3の細胞株を含む。HDAC8の活性を抑制することは、アポトーシスの導入により、T細胞由来の腫瘍細胞(例えば、ジャーカット細胞)の増殖を減少させることが示されてきた。HDAC8の阻害は、非癌細胞もしくはT細胞由来の細胞株以外の腫瘍細胞株のいずれの増殖には影響を与えない。従って、選択的HDAC8インヒビターはT細胞由来の癌の進行を遅くするもしくは静止することに有益である。その上、選択的HDAC8インヒビターは、非癌細胞の毒性の緩和もしくは無毒性を実証する。
【0066】
選択的HDAC8インヒビター化合物及び成分が、ある特定の実施例において使用され、T細胞白血病、例えば末梢性T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫もしくは成人T細胞白血病に苦しむ被験者を治療する。
【0067】
ある実施例において、HDAC8インヒビターは、インドール6カルボン酸ヒドロキシアミド化合物及びインドール5カルボン酸ヒドロキシアミド化合物、インドール誘導体、薬学的に許容可能なその塩、薬学的に許容可能なそのNオキサイド、薬学的に許容可能な活性代謝物、薬学的に許容可能なそのプロドラッグ、そして薬学的に許容可能なその溶媒和化合物からなる群から選択される。
【0068】
ある実施例において、HDAC8インヒビターは、PCI-34051、PCI-46646、PCI-34263、R306465(J&J社)及びその誘導体からなる群から選択される。
【0069】
ある実施例において、HDAC8インヒビターは、米国特許出願第60/911,857号、米国特許出願第60/944,409号、米国特許出願第60/954,777号、米国特許出願第11/779,743号、米国特許出願第60/865,825号、米国特許出願第11/940,232号、米国特許出願第11/687,565号もしくは、国際出願番号第PCT/US2007/073802号、国際出願番号第PCT/US2007/084718号、 国際出願番号第PCT/US2007/06714号でに開示する化合物もしくは式から選択される化合物である。これらの参照の開示により、これらの内容は全て本明細書に組み込まれるものとする。
【0070】
ある実施例において、HDAC8インヒビターはヒドロキサム酸であって、化学式(A)の構造を有する。
【0071】
【化2】
Qは任意によりC5-12アリルに置換可能であり、もしくは、任意によりC5-12ヘテロアリルに置換可能であり、
Lは少なくとも4つの原子を有するリンカーを有し、
R1は水素もしくはアルキルであり、
薬学的に許容可能なその塩、薬学的に許容可能なそのNオキサイド、薬学的に活性可能な代謝物、薬学的に許容可能なそのプロドラッグ、薬学的に許容可能なその溶媒和化合物である。
【0072】
(HDACインヒビターに対する迅速な薬学的効果のバイオマーカーとしてのカルシウム流動)
カルシウム流動は、細胞のアポトーシスを起こす能力に相関することを実験は示している。正のカルシウム流動は、しばしばアポトーシスに先行するが、その一方、カルシウム流動の欠落もしくは負のカルシウム流動は、細胞がアポトーシスを起こさないことを示す。従って、ある実施例において、カルシウム流動が測定され、患者がアポトーシス剤の治療に反応があるかどうかを決定する。ある実施例において、カルシウム流動が測定され、患者にアポトーシス剤の臨床治験を行うことを含めるかどうかを決定する。
【0073】
ある実施例において、カルシウム流動は、少なくとも10%もしくはそれ以上のa%の水準のアポトーシスに相関する。ある実施例において、カルシウム流動は、少なくとも15%もしくはそれ以上のa%の水準のアポトーシスに相関する。ある実施例において、カルシウム流動は、少なくとも20%もしくはそれ以上のa%の水準のアポトーシスに相関する。ある実施例において、カルシウム流動は、少なくとも25%もしくはそれ以上のa%の水準のアポトーシスに相関する。ある実施例において、カルシウム流動は、少なくとも30%もしくはそれ以上のa%の水準のアポトーシスに相関する。
【0074】
図2は、ジャーカット細胞内のカルシウム流動とアポトーシスの間の相関関係を示す。ジャーカット細胞は、汎HDACインヒビターであるPCI-24781(0.2μM)で処理が行われた。PCI-24781を追加してから、細胞内のカルシウムの測定可能な増加が観察された。さらに、PCI-24781による2日間の処理後、アポトーシスの割合がアネキシンVにより測定された。アポトーシスの総量は80%であった。ジャーカット細胞は、HDAC8インヒビターのPCI-34051(10μM)により処理された。HDAC8インヒビターの追加後、測定可能な細胞内のカルシウム増加が観察された。さらにPCI-34051による2日間の処理後、アポトーシスの水準は、アネキシンVにより決定された。アポトーシスの割合は、60%であった。1μMのMS-275、1μMの酪酸ナトリウム、及び2μMのSAHAを用いて、実験が行われた。あらゆる事例において、高率の細胞のアポトーシスが生じてから、正のカルシウム流動反応が起きた。
【0075】
図3は、PLCγ酵素へのカルシウム流動の依存性を示す。PLCγ(ヒト肝細胞癌細胞:T細胞リンパ腫)の欠落した腫瘍細胞株は、汎HDACインヒビターのPCI-24781及びHDAC8インヒビターのPCI-34051を用いて処理が行われた。HDACインヒビターもカルシウム誘導を引き起こさなかった。PCI-24781及びPCI-34051で2日間処理を行ってから、アネキシンVにより測定されたアポトーシスの割合を示す。図3Aは、対照を示す。図3Bは、10μMのHDAC8インヒビターであるPCI-34051を示す。図3Cは、0.2μMの汎HDACインヒビターであるPCI-24781を示す。汎HDACインヒビターもしくはHDAC8インヒビターがPLCγを活性化させ、これにより、カルシウムの仲介した下流経路を引き起こし、アポトーシスを導く。これらの実験は、カルシウム流動がアポトーシスに関連があることを示す。PLCγ変異体細胞(HH細胞)は、アポトーシスを引き起こさなかった。
【0076】
図5及び図6はさらに、PLCγへのカルシウム流動の依存性を示す。PLCγ酵素(ジャーカット細胞)を含む腫瘍細胞株は、PLCγのインヒビター(インヒビターU-73122: 1-[6-((17b-3-メトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-イル)アミノ)ヘキシル]-1H-ピロール-2,5-ジオン;インヒビターU-73343: 1-[6-((17b-3-メトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-イル)アミノ)ヘキシル]-2,5-ヒロリジンジオン)単独もしくは、HDAC8のインヒビターPCI-34051と組み合わせて、処理される。PLCγ酵素(ジャーカット細胞)を含有する腫瘍細胞株であって、PLCγインヒビターで処理されている場合、カルシウム流動を起こさなかった(図5E及び図5F)。しかしながら、HDAC8インヒビター及びPLCγインヒビターの両方で処理された同一のジャーカット細胞及びPLCγインヒビターは、カルシウム流動が生じた、もしくはカルシウム流動を遅延させた(図5B、図5C及び図5D)。この実験は、カルシウム流動がアポローシスに関連付けられていることを示す。これらの実験はまた、アポトーシスを遮断したPLCγインヒビター(U-73343及びU-73122)でカルシウム流動を遮断する(図6)。
【0077】
図12は、カルシウム流動が汎HDACインヒビターもしくはHDAC8インヒビターに対する感受性を予期するために用いられることを示している。図12Aはラモス細胞内のPCI-34051ではなく、PCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示す。図12BはJ.gammal細胞におけるPCI-24781もしくはPCI-34051のいずれかにより、カルシウム流動の誘導がなかったことを示す。図12CはHCT-116の結腸細胞のPCI-34051ではなくPCI-24781によりカルシウム流動の誘導を示している。図12Dは、PC3の前立腺細胞における、PCI-24781もしくはPCI-34051のいずれかにより、カルシウム流動の誘導がないことを示している。アポトーシスを起こした腫瘍細胞株は、PCI-24781もしくはPCI-34051で処理を行った後に、カルシウム流動が起きる。アポトーシスを起こさなかった腫瘍細胞株は、カルシウム流動が起きなかった。
【0078】
図13及び図14は、実施されたアッセイを反映し、カルシウム流動を起こす能力を備えた汎HDACインヒビターのPCI-24781、及びHDAC8インヒビターのPCI-34051に対する感受性が相関することを示す。2つの腫瘍細胞株(A549の肺腫瘍、THP-1単球性白血病)の実験が行われた。図13はA549細胞におけるPCI-34051ではなくPCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示す。A549は、PCI-24781に反応し、アポトーシスが生じる。このアポトーシスは、カルシウム流動により予期された。T細胞の特異なHDAC8の選択的インヒビターであるPCI-34051は、これらの細胞において、アポトーシスもカルシウム流動も誘導しないことを示す。図14は、THP-1細胞内のPCI-34051ではなくPCI-24781によるカルシウム流動の誘導を示す。THP-1は単球性白血病細胞株であり、細胞株内において、PCI-24781はアポトーシス及びカルシウム流動を誘導するが、PCI-34051は誘導しなかった。
【0079】
図15及び図16は、実施されたアッセイを反映し、カルシウム流動を起こす能力を備えた汎HDACインヒビターのPCI-24781、及びPCI-24781の2つの主要な代謝物(PCI-27789:カルボン酸代謝物及びPCI-27787:アミド代謝物)の感受性が相関することを示す。ジャーカット細胞の実験が行われた。図15は、PCI-24781によるジャーカット細胞におけるカルシウム動員の迅速な誘導を示す。PCI-24781の2つの代謝物、即ちカルボン酸代謝物PCI-27789及びアミド代謝物PCI-27787は、ヒストンデアセチラーゼ及び(HDAC)活性を有さない。そして、ジャーカット細胞内にカルシウム流動の誘導を引き起こすことは不可能であった。図16は、PCI-24781によるアポトーシス誘導を示す。一方、PCI-27789及びPCI-27787はジャーカット細胞内にアポトーシス誘導作用は生じないことを示す。
【0080】
【化3】
【0081】
2つの代謝物の化学構造は、PCI-24781に類似する。これらは、PCI-24781の分子の活性部位のみが異なる。PCI-27789は、PCI-24781のヒドロキサム酸基ではなくカルボン基を有する。PCI-27787はPCI24781のヒドロキサム酸基ではなく、アミド基を有する。
【0082】
ある実施例において、カルシウム流動は、腫瘍がアポトーシス剤に対して感受性を有するかどうかを判定する補助となる臨床的バイオマーカーとして有用性がある。従って、ある実施例では、カルシウム流動が使用され、汎HDACインヒビターもしくはHDAC8インヒビターに反応しそうな患者を選択及び予期するのに使用されている。
【0083】
図17は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の患者(患者SF-03)からの原発腫瘍生体検査において測定された、正のカルシウム流動を示す。5mmのパンチ生体検査に由来する細胞は、コラゲナーゼで処理され、汎HDACインヒビターPCI-24781もしくはHDAC8インヒビターPCI34051が追加された培養基で培養された。両方の化合物は、細胞に接触してから5秒以内に、迅速で静的且つ著しいカルシウム流動を導いた。両方の化合物は、また40時間の処理後に、腫瘍細胞のアポトーシスが増加した。
【0084】
図18は、第2の皮膚T細胞リンパ腫の患者(患者SF-06)からの原発腫瘍生体検査において測定された、負のカルシウム流動である。5mmのパンチ生体検査由来の細胞は、コラゲナーゼにより処理がされ、汎HDACインヒビターPCI-24781もしくはHDAC8インヒビターPCI34051が追加された培養基で培養された。HDACインヒビターはカルシウム流動を活性化しなかったし、腫瘍細胞のアポトーシスの誘導もしなかった。
【0085】
カルシウム流動のアッセイ
(原発腫瘍からの細胞抽出)
【0086】
腫瘍生体検査サンプルは、予見される被験者から獲得される。生体検査組織は切除され、氷上に保存した後に即座に、50mlのファルコンチューブ内のRPMI1640に入れる。生体検査サンプルは、なるべく早く処理する場所へと運ばれる。腫瘍サンプルが入れられた上澄み液が保存される。腫瘍は<0.3-0.5mmの厚みのフラグメントに分割され、1mg/mlのコラゲナーゼD(Roche社)を含有する10mlのRPMI1640を用いて振盪機にて30分間37℃で消化させる。消化は、10mMのEDTAを添加することで停止させ、氷上に置く。消化された組織は氷冷のPBS/10mMのEDTAを3Xで3回洗浄される。そして、該組織は、保持されている上澄み液と組み合わせる。消化された組織及び上澄み液は、70μmの孔のナイロンメッシュ(BD Biosciences社)を通過し、4℃で20分間遠心分離(300g)にかける。液体は廃棄され、抽出した細胞が残る。抽出された細胞は、RPMIの完全培地で再懸濁され、1×106細胞/mlの濃度にする。薬処理及びアッセイの際、細胞は37℃のインキュベータ内で2日間RPMI+10%FBSで培養される。
【0087】
(血液からの循環性腫瘍細胞の抽出)
血液サンプルは、予見される被験者から獲得される。RBCsは赤血球溶解バッファで溶解される。上皮特異抗原で覆われた免疫原生のビーズが製造者の指示により適用される。そして、ビーズは数回洗浄され、上皮細胞以外の細胞については除去する。抽出された上皮細胞は、RPMI完全培地にて懸濁され、1×106細胞/mlの濃度にされる。薬処理及びアッセイの際、細胞は37℃のインキュベータ内で2日間RPMI+10%FBSで培養される。
【0088】
(細胞内カルシウム測定)
アポトーシス剤が加えられる前にカルシウム流動の水準を把握するために、一定分量の培養細胞(1×106細胞/mL)は、10%のウシ血清アルブミン(Fetal Bovine Serum)及び5M Indo-1 AM (invitrogen社)を有するハンクスの平衡塩溶液(Hank's salt solution)(HBSS; Invitrogen社)で暗所にて1時間37℃で培養された。そして、細胞は収集され、遠心分離にかけられ(200Xgを5分間)、HBSSで3回洗浄し、細胞外のIndo-1を除去し、HBSS内で1×106細胞/mlに再調整された。
【0089】
蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent FL; Thermo Scientific社)で蛍光が37℃で観察された。5分の温度均衡期間の後、サンプルが338nmで励起された。そして、発光が動的モードにおいて、5分の間に6秒ごとに405及び485nmで収集された。10μMのイオノマイシンを測定の最後に加えることにより、最大比率の値が決定された。
【0090】
アポトーシス剤は、第2の一定分量の培養細胞(1×106細胞/mL)に加えられた。細胞は10%のウシ血清アルブミン及び5μM Indo-1 AM (invitrogen社)を有するハンクスの平衡塩溶液(HBSS; Invitrogen社)で暗所にて1時間37℃で培養された。そして、細胞は収集され、遠心分離にかけられ(200Xgを5分間)、HBSSで3回洗浄し、細胞外のIndo-1を除去し、HBSS内で1×106細胞/mlに再調整された。そして、細胞は5分間アポトーシス剤で培養された。
【0091】
蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent FL; Thermo Scientific社)で蛍光が37℃で観察される。5分の温度均衡期間の後、サンプルが338nmで励起された。そして、発行が動的モードにおいて、5分の間に6秒ごとに405及び485nmで収集された。10μMのイオノマイシンを測定の最後に加えることにより、最大比率の値が決定された。細胞内[Ca2+]変化、もしくはカルシウム流動により、遊離型カルシウム(405nm/485nm)に結合されるIndo-1の比率が変化することを示す。
【実施例】
【0092】
下記の実施例は、単に解説として解釈されるべきであって、いずれも本発明を限定するものではない。
【0093】
(腫瘍組織からT細胞を抽出する手順及びカルシウム流動を測定する手順)
実施例1:細胞内カルシウム測定
アポトーシス剤が追加される前にカルシウム流動を獲得するために、一定分量の培養細胞(1X106 細胞/mL)は、10%のウシ血清アルブミン及び5M Indo-1 AM (invitrogen社)を有するハンクスの平衡塩溶液(HBSS; Invitrogen社)で暗所にて1時間37℃で培養された。そして、細胞は収集され、遠心分離にかけられ(200Xgを5分間)、HBSSで3回洗浄し、細胞外のIndo-1を除去し、HBSS内で1×106細胞/mlに再調整された。
【0094】
蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent FL; Thermo Scientific社)で蛍光が37℃で観察される。5分の温度均衡期間の後、サンプルが338nmで励起された。そして、発光が動的モードにおいて、5分の間に6秒ごとに405及び485nmで収集された。10μMのイオノマイシンを測定の最後に加えることにより、最大比率の値が決定された。
【0095】
アポトーシス剤は、第2の一定分量の培養細胞(1×106細胞/mL)に加えられた。細胞は10%のウシ血清アルブミン及び5μM Indo-1 AM (invitrogen社)を有するハンクスの平衡塩溶液(HBSS; Invitrogen社)で暗所にて1時間37℃で培養された。そして、細胞は収集され、遠心分離にかけられ(200Xgを5分間)、HBSSで3回洗浄し、細胞外のIndo-1を除去し、HBSS内で1×106細胞/mlに再調整された。そして、細胞は5分間アポトーシス剤で培養された。
【0096】
蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent FL; Thermo Scientific社)で蛍光が各実験を経て、37℃で観察された。5分の温度均衡期間の後、サンプルが338nmで励起された。そして、発光が動的モードにおいて、5分の間に6秒ごとに405及び485nmで収集された。10μMのイオノマイシンを測定の最後に加えることにより、最大比率の値が決定された。細胞内[Ca2+]変化、もしくはカルシウム流動により、遊離型カルシウム(405nm/485nm)に結合されるIndo-1の比率が変化することが示される。
【0097】
実施例2:アポトーシス測定
【0098】
アネキシンVを用いて、HDACインヒビター及びqVD、BAPTA-AM、タプシガルジン及び/又はホスホリパーゼCインヒビターとの組み合わせで2、3日処理が行われてから、毒性が評価された。アネキシンVの結合は、製造者の手順でBioVision社の試薬を用いて、FACSCalibur装置(Becton-Dickinson社)で分析された。図2、3、4、6、7、12及び16を参照のこと。
【0099】
実施例3:原発腫瘍からの細胞抽出
腫瘍生体検査サンプルは、切除され、氷上に保存した後に即座に、50mlのファルコンチューブ内のRPMI1640に入れる。生体検査サンプルは、なるべく早く処理の場所へと運ばれる。腫瘍サンプルが入れられた上澄み液が保存される。腫瘍は<0.3-0.5mmの厚みのフラグメントに分割され、1mg/mlのコラゲナーゼD(Roche社)を含有する10mlのRPMI1640を用いて振盪機にて30分間37℃で消化させる。消化は、10mMのEDTAを添加することで停止させ、氷上に置く。消化された組織は氷冷のPBS/10mMのEDTAを3Xで3回洗浄される。そして、該組織は、保持されている上澄み液と組み合わされる。消化された組織及び上澄み液は、70μmの孔のナイロンメッシュ(BD Biosciences社)を通過し、4℃で20分間遠心分離(300g)にかける。抽出された細胞は、RPMIの完全培地で再懸濁され、1×106細胞/mlの濃度にする。薬処理及びアッセイの際、細胞は37℃のインキュベータ内で2日間RPMI+10%FBSで培養される。
【0100】
実施例4:HDACインヒビター化合物の誘導するアポトーシスがホスホリパーゼC-γ1(PLC-γ1)シグナル伝達を要求する。
PCI-34051のプロアポトーシス活性をさらに特徴付けるために、我々は、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達経路の様々な段階の欠落ジャーカット細胞における作用が検査された。図4及び表1が示すように、汎HDACインヒビター化合物だけでなくPCI-34051(5μM)も、野生型のTCR-欠乏のジャーカット細胞(J.RT3-T.5)及びZAP-70欠乏のジャーカット細胞(P116)よりも、PLC-γ-1の欠乏したジャーカット細胞(J.γl)の方がアポトーシス誘導は小さい。
【0101】
【表1】
【0102】
PCI-340521によりT細胞株におけるアポトーシス誘導を起こすには、PLC-γ1シグナル伝達が必要であることをこの結果は示している。実際、図5-6が示すように、PLCインヒビター(U-73122)は、PCI-34051誘導性アポトーシスを容量依存的様式で阻害した。その一方、PLC-34051インヒビター(U-73343)の不活性類似体は、アポトーシス誘導を阻止できなかった。
【0103】
PCI-34051誘導性アポトーシスにおけるPLCの役割に基づき、我々は、Ca2+-作動体のタブシガルジン(0.2μM)が図7に示すようにアポトーシスを増大させることを見出した。対照的に、Ca2+キレート剤のBAPTA-AM(0.5μM)は、図8に示すように、PCI-34051により誘導されるアポトーシスを減少させた。ジャーカット細胞内のPCI-34051誘導のカルシウム流動は、カルシウムキレートBAPTAにより阻止された。
【0104】
最後に、我々は、アポトーシスの特徴だが、PCI-34051もしくは汎HDACインヒビター化合物に応じた、チトクロムCのミトコンドリアからサイトゾルへの転移を分析した。図9に示すように、PCI-34051もしくは汎HDAC化合物の12時間もしくは24時間の処理により、野生型のジャーカット細胞におけるミトコンドリアからサイトゾルへのチトクロムオキシターゼ転移を誘導した。対照的に、PLC欠乏のJ.細胞に同じ処理を施しても、チトクロムC.FasLのプロアポトーシスタンパク質の局在性を変化させることは不可能であったが、野生型(WT)及びJ.γlジャーカット細胞の両方において、チトクロムCの転移を効果的に誘導した。
【0105】
これらの結果に基づき、PCI-34051のHDAC8選択的インヒビター化合物はT細胞由来のリンパ腫細胞においてアポトーシスをPLCシグナル伝達経路に依存的な経路を経て、誘導する。このことは、PLCシグナル伝達経路を活性化することが、T細胞増殖性疾患の有益な治療方法であることを示唆している。従って、単独で、もしくはPLC依存のシグナル伝達(例えば受容体アゴニスト、受容体活性、抗体、タプシガルジンなど)を活性化する薬剤と組合せたHDACインヒビター化合物(例えば、HDAC8選択的インヒビター化合物)は、T細胞増殖性疾患の治療に用いられる。逆に、PLCシグナル伝達の特徴をプロファイリングすることで(例えば、PLC mRNAもしくはタンパク質水準、PLC酵素活性もしくは細胞内カルシウム水準におけるPLC依存的変化)は、HDAC8選択的インヒビターに応答しそうな細胞を決定するのに有益である。
【0106】
実施例5:HDACインヒビターがPLC-γ依存性の細胞内のカルシウム動員を誘導する。
レシオメリック蛍光のカルシウムイメージングが用いられ、HDAC8選択的インヒビター化合物のPCI-34051及びPCI-24781(汎HDACインヒビター化合物)のT細胞及びB細胞由来の細胞株の細胞内カルシウム動員の作用を評価する。図2に示すように、10μMのPCI-34051もしくは0.2μMのPCI-24781を、培養したT細胞由来の細胞株であるジャーカット細胞に追加することで、細胞内のカルシウムが迅速(ほぼ1分)かつ持続的に上昇する。これは、Ca2+作用体のタブシガルジン(0.2μM)において観察された上昇と非常に類似している。図5及び図6において示すが、PCI-34051刺激によるCa2+水準の増加は、不活性類似体(U-73343)ではなく、PLCインヒビター(U-73122)により、非常に抑制され、このことは、これらの化合物のアポトーシスに対する作用に一致する(実施例5)。さらに、いずれかの化合物の細胞内Ca2+に対する作用は、PLC-γ1欠乏ヒト肝細胞(HH細胞)において完全に消滅される(図3)。ジャーカット細胞におけるPCI-34051及びPCI-24781によるカルシウム動員は、図10及び図11においてそれぞれ示すように、容量依存性である。興味深いことに、HDAC8選択的化合物のPCI-34051はB細胞由来のラモス細胞内の残存するカルシウム水準を変質させなかった(図12A)。この化合物がこの細胞株でアポトーシス誘導を起こすことができない点について、この結果は一貫性を有していた。対照的に、汎HDACインヒビター化合物のPCI-24781は、この細胞株における細胞内のカルシウム水準の確実な増加を引き起こした(図12A)。重要なこととして、ラモス細胞は、PLC-γ1を発現しない。同様に、アポトーシス誘導により測定されるPCI-24781に感受性を有する、結腸腫瘍細胞株HCT-116(B細胞が活性PLC-γ2を含有するといった)などの固形腫瘍細胞株は、またカルシウム流動を示す(図12C)が、PCI-34051はアポトーシスもしくはカルシウム流動のいずれかを引き起こすことができない。最後に、いずれかの化合物によりアポトーシスの誘導を示さないPC3などの他の固形腫瘍細胞株も、カルシウム流動を示さない(図12D)。
【0107】
2つの腫瘍細胞株(A549肺腫瘍、THP-1単球性白血病)に対し実験が行われ、汎HDACインヒビターであるPCI-24781及びHDAC8インヒビターであるPCI-34051の感受性と、カルシウム流動を引き起こす能力に、関連性を有するか実験された(図13及び図14)。肺腫瘍細胞株A549は、上皮固形腫瘍細胞株を示し、該腫瘍細胞株はカルシウム流動により予期されているアポトーシス誘導による汎HDACインヒビターに反応する。一方、T細胞の特異なHDAC8選択的インヒビターのPCI-34051は、これらの細胞において、アポトーシスもカルシウム流動も誘導しない。同様に、THP-1は単球性白血病の細胞株であり、汎HDACインヒビターのPCI-24781がアポトーシスとカルシウム流動を引き起こす。一方、HDAC8の選択的インヒビターのPCI-34051はこれらを引き起こさない。
【0108】
PLC-γ1-依存的経路を介して作用することで、PCI-34051は、T細胞由来の細胞に効果(カルシウム動員及びアポトーシス)を与えやすいと、我々はこれらのデータを基に、結論付ける。一方、PCI-24781は、PLC-γ1もしくはPLC-γ2のいずれかを含有する腫瘍細胞内にアポトーシスを誘導することが可能である。これらのHDACインヒビター(もしくは他のHDACインヒビター)のいずれかにおいて、早期のカルシウム流動は、その化合物により誘導されるアポトーシスの確かな予測因子である。
【0109】
実施例6:HDACインヒビターの代謝物はPLC-γ依存性の細胞内カルシウム動員を誘導しない。
ジャーカット細胞は実験が行われ、汎HDACインヒビターであるPCI-24781及び2つの主要なPCI-24781の代謝物(PCI-27789: カルボン酸代謝物及びPCI-27787: アミド代謝物)と、カルシウム流動を引き起こす能力に、関連性を有するか実験された(図15)。代謝物PCI-27789及びPCI-27787はヒストンデアセチラーゼ酵素活性を有さない。PCI-27789及びPCI-27787は、ジャーカット細胞におけるカルシウム流動の誘導を引き起こさなかった。カルシウム流動は、実施例1が示すように、測定された。
【0110】
【化4】
【0111】
2つの代謝物は、ほぼ正確にPCI-24781と同一の化学構造を有し、分子の「活性」部分において、PCI-24781とは異なる。PCI-27789は、PCI-24781のヒドロキサム酸基ではなく、カルボン酸基を有する。PCI-27787は、PCI-24781のヒドロキサム酸基ではなく、アミド基を有する。細胞は数秒で(カルシウム流動の観点から)これらの構造上の違いを識別し、アポトーシスを起こすかどうかについての情報を伝達する。
【0112】
図16は、PCI-24781によるアポトーシス誘導するが、PCI-24781、PCI-27789及びPCI-27787の不活性代謝物は、ジャーカット細胞においてアポトーシス誘導作用はないことを示している。ジャーカット細胞は、PCI-24781、PCI-27789、もしくはPCI-27787(0.2uM)で治療を行い、アネキシンVで2日間染色後、アポトーシスが測定された(上述の実施例2で提示)。従って、これらが、カルシウム流動とアポトーシスとの間にさらなるリンクを確立するという点において、これらの図面は重要である。
【0113】
実施例7:皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)患者の生体検査における正及び負のカルシウム流動
図17は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)(患者SF-03)の患者からの原発腫瘍生体検査において測定された正のカルシウム流動を示す。5mmのパンチ生体検査がコラゲナーゼで処理され、汎HDACインヒビターのPCI-24781もしくはHDAC8インヒビターのPCI-34051が加えられた培養基で培養された(生体検査、即ち原発腫瘍からの細胞抽出が実施例3に基づき行われた)。両方の化合物は、薬の追加から5秒以内に迅速かつ重要なカルシウム流動を導いた。また、両方の化合物により、処理後40時間で、腫瘍細胞のアポトーシスが増加した。
【0114】
対照として、図18は、別の皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)(患者SF-06)の患者から原発腫瘍生体検査において測定された負のカルシウム流動を示す。この場合、HDACインヒビターはカルシウム流動を刺激もしないし、いずれかのHDACインヒビターが腫瘍細胞のアポトーシスを導くこともなかった。従って、カルシウム流動は迅速なバイオマーカーの方法であり、患者が臨床試験において治療に反応を示すか選択及び分類を行われる。
【0115】
本発明の好適な実施例について、本明細書に提示し記載したが、当業者にとっては、このような実施例が実例によってのみ、提供されることは明確である。数多くの変更、交換及び代替が本発明から逸脱しないことを当業者は理解する。本明細書中の実施例の数多くの変更形態は、本発明の実施として採用される。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、本発明に基づく方法及び構造、及びこれらの等価物が特許請求の範囲内のものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法であって、
前記方法は、
(a)被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、
(b)生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、
(C)アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、患者がアポトーシス剤を用いた治療に選択されることを示す段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備えることを特徴とする、患者を選択する方法。
【請求項2】
前記カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カルシウム検出試薬は、フルオロフォアであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項4】
前記フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択されることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項5】
前記アポトーシス剤が、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターの群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記生体サンプルが腫瘍細胞を構成することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記生体サンプルが血液サンプルであることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項10】
アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法であって、
前記方法は、
(a)被験者からの生体サンプルを汎HDACインヒビターに接触させる段階と、
(b)生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、
(C)アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、患者がアポトーシス剤を用いた治療に選択されることを示す段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備えることを特徴とする、患者を選択する方法。
【請求項11】
前記カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定されることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記カルシウム検出試薬は、フルオロフォアであることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択されることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択されることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記生体サンプルが腫瘍細胞を構成することを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記生体サンプルが血液サンプルから得られた循環性腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項18】
アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法であって、
前記方法は、
(a)被験者からの生体サンプルをHDAC8インヒビターに接触させる段階と、
(b)生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、
(C)アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、患者がアポトーシス剤を用いた治療に選択されることを示す段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備えることを特徴とする、患者を選択する方法。
【請求項19】
前記カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定されることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記カルシウム検出試薬は、フルオロフォアであることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択されることを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択されることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記生体サンプルが腫瘍細胞を構成することを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記生体サンプルが血液サンプルから得られた循環性腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項26】
病状を治療する際のアポトーシス剤による治療の有効性を評価するために、臨床治験に参加する患者を選択する方法であって、
前記方法は、
(a)被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、
(b)生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、
(C)アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、患者がアポトーシス剤を用いた治療に選択されることを示す段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備えることを特徴とする、患者を選択する方法。
【請求項27】
前記アポトーシス剤が汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択されることを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定されることを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記カルシウム検出試薬は、フルオロフォアであることを特徴とする、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択されることを特徴とする、請求項29記載の方法。
【請求項31】
病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択されることを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項32】
前記生体サンプルは、腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項33】
前記生体サンプルが血液サンプルから得られた循環性腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記生体サンプルは少なくとも約100の腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項32記載の方法。
【請求項35】
アポトーシス剤での治療に反応を示す病状の患者を選択するシステムであって、
前記システムは、
(a)アポトーシス剤、
(b)生体サンプルにおけるカルシウム流動の水準を測定する手段を備え、
前記生体サンプル、アポトーシス剤及びカルシウム流動の水準を測定する手段は、全て流体による伝達であることを特徴とする、システム。
【請求項36】
前記アポトーシス剤は、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択されることを特徴とする、請求項35記載のシステム。
【請求項37】
前記生体サンプルは腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項35記載のシステム。
【請求項38】
前記カルシウム流動の水準を測定する方法が、カルシウム検出試薬を備えることを特徴とする、請求項35記載の方法。
【請求項1】
アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法であって、
前記方法は、
(a)被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、
(b)生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、
(C)アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、患者がアポトーシス剤を用いた治療に選択されることを示す段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備えることを特徴とする、患者を選択する方法。
【請求項2】
前記カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カルシウム検出試薬は、フルオロフォアであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項4】
前記フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択されることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項5】
前記アポトーシス剤が、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターの群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記生体サンプルが腫瘍細胞を構成することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記生体サンプルが血液サンプルであることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項10】
アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法であって、
前記方法は、
(a)被験者からの生体サンプルを汎HDACインヒビターに接触させる段階と、
(b)生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、
(C)アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、患者がアポトーシス剤を用いた治療に選択されることを示す段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備えることを特徴とする、患者を選択する方法。
【請求項11】
前記カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定されることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記カルシウム検出試薬は、フルオロフォアであることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択されることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択されることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記生体サンプルが腫瘍細胞を構成することを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記生体サンプルが血液サンプルから得られた循環性腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項18】
アポトーシス剤により治療に反応を示す病状の患者を選択する方法であって、
前記方法は、
(a)被験者からの生体サンプルをHDAC8インヒビターに接触させる段階と、
(b)生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、
(C)アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、患者がアポトーシス剤を用いた治療に選択されることを示す段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備えることを特徴とする、患者を選択する方法。
【請求項19】
前記カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定されることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記カルシウム検出試薬は、フルオロフォアであることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択されることを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択されることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記生体サンプルが腫瘍細胞を構成することを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記生体サンプルが血液サンプルから得られた循環性腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記生体サンプルが少なくとも約100の腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項26】
病状を治療する際のアポトーシス剤による治療の有効性を評価するために、臨床治験に参加する患者を選択する方法であって、
前記方法は、
(a)被験者からの生体サンプルをアポトーシス剤に接触させる段階と、
(b)生体サンプル内のカルシウム流動の水準を測定する段階と、
(C)アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超える場合、患者がアポトーシス剤を用いた治療に選択されることを示す段階、もしくは、アポトーシス剤との接触後の生体サンプルにて観察されるカルシウム流動の水準が、対照もしくはアポトーシス剤との接触前の生体サンプルにおいて観察されるカルシウム水準を超えない場合、代替的な治療を選択する段階を備えることを特徴とする、患者を選択する方法。
【請求項27】
前記アポトーシス剤が汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択されることを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記カルシウム流動の水準が、カルシウム検出試薬により測定されることを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記カルシウム検出試薬は、フルオロフォアであることを特徴とする、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記フルオロフォアは、Fura-2、 Indo-1、 Fluo-3、カルセイン、Rhod-2、Rhod-4、およびその誘導体の群から選択されることを特徴とする、請求項29記載の方法。
【請求項31】
病状は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頚癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質性腫瘍、膵癌、胚細胞性腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、神経膠芽腫瘍、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、バーキット白血病、慢性骨髄性白血病、頭頸部(H&N)、ホジキン(Hodgkin's)、慢性リンパ腫白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、マントル細胞及び濾胞細胞リンパ腫の群から選択されることを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項32】
前記生体サンプルは、腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項33】
前記生体サンプルが血液サンプルから得られた循環性腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記生体サンプルは少なくとも約100の腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項32記載の方法。
【請求項35】
アポトーシス剤での治療に反応を示す病状の患者を選択するシステムであって、
前記システムは、
(a)アポトーシス剤、
(b)生体サンプルにおけるカルシウム流動の水準を測定する手段を備え、
前記生体サンプル、アポトーシス剤及びカルシウム流動の水準を測定する手段は、全て流体による伝達であることを特徴とする、システム。
【請求項36】
前記アポトーシス剤は、汎HDACインヒビター及びHDAC8インヒビターからなる群から選択されることを特徴とする、請求項35記載のシステム。
【請求項37】
前記生体サンプルは腫瘍細胞を備えることを特徴とする、請求項35記載のシステム。
【請求項38】
前記カルシウム流動の水準を測定する方法が、カルシウム検出試薬を備えることを特徴とする、請求項35記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【公表番号】特表2010−526280(P2010−526280A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503248(P2010−503248)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/060098
【国際公開番号】WO2008/128093
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(509181220)ファーマサイクリックス,インク. (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/060098
【国際公開番号】WO2008/128093
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(509181220)ファーマサイクリックス,インク. (7)
【Fターム(参考)】
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