ヒトパピローマウイルス16型に対するSalmonellaワクチン株に関するコドン最適化されたHPV16L1
本発明は、配列番号1に提供される、抗原性HPV16 L1タンパク質をコードする新規な核酸配列(HPV16 L1S)に関するものであり、前記配列は、原核微生物にトランスフォーメーションされて、結果として生じた原核微生物の免疫原性改善を目的とされた場合に、リコンビナントプラスミドベクターの安定性を最適にするための少なくとも一つの改変されたコドンを有する。本発明は、配列番号1を内部に有するリコンビナントベクターpFS14nsdHPV16L1およびpFS14nsdHPV16kanL1Sを構築することにさらに関するものであり、ここで、前者ベクターはアンピシリンを、後者ベクターはカナマイシンを選択マーカーとしてもつ。本発明は、HPV16 (ヒトパピローマウイルス)主要キャプシドタンパク質をコードする核酸でトランスフォーメーションされて、対応するタンパク質を発現している原核微生物の弱毒化株にも関するものである。さらに、本発明は、パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの処置するための、原核微生物に基づくワクチンを製造する工程を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列番号1に提供される、抗原性HPV16 L1タンパク質をコードする新規な核酸配列(HPV16 L1S)に関するものであり、前記配列は、原核微生物にトランスフォーメーションされて、結果として生じた原核微生物の免疫原性改善を目的とされた場合に、リコンビナントプラスミドベクターの安定性を最適にするための少なくとも一つの改変されたコドンを有する。本発明は、HPV16(ヒトパピローマウイルス)主要キャプシドタンパク質をコードする核酸でトランスフォーメーションされて、対応するタンパク質を発現している、原核微生物の弱毒化株にも関するものである。さらに、本発明は、パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの処置のための、原核微生物に基づくワクチンを製造する工程を開示する。
【0002】
背景技術および従来技術の参照
子宮頚ガンは、全世界で女性におけるガンの死因の第2位であり、これらの腫瘍の事実上全てがヒトパピローマウイルス(HPV)のサブセットの感染に起因しうる。このHPVのうち、HPV16が最も高頻度に見い出される(6, 41)。したがって、これらのHPVに対する有効なワクチンは、本ガンおよびその前駆病変の発生率に、ならびにこれらのウイルスに起因しうるあまり一般的ではない腫瘍に劇的な影響を有すると予想されよう。その有力な候補は、予防用HPVウイルス様粒子(VLP)サブユニットワクチン((35)および(24)により総説されている)である。概念の証明(proof of principle)のための有効性臨床試験は、HPV16 VLPをワクチン接種された女性が、このウイルス型による性器粘膜感染に対して高度に防御されたことを示した(19)。しかし、予測されたターゲット集団が小児期ワクチンのターゲット集団よりも年齢が高いであろうワクチンについて、多回注射の必要性は、広範囲に及ぶ実用化への実質的な障壁となりうる。これは、全世界の子宮頚ガン症例を4分の3よりも大きく占める開発途上世界で特にあてはまる(6)。弱毒化されているが、なお侵入性であるリコンビナント弱毒化Salmonella株が、病原体特異的防御エピトープを粘膜関連リンパ組織に送達するために粘膜ワクチンベクターとして広く使用されてきた。この経路を介して、担体および外来抗原に対する粘膜免疫応答と全身免疫応答との両方を得ることができる((11, 22, 36)に総説されている)。VLPに自己集合するHPV16主要キャプシドタンパク質L1を発現しているそのSalmonellaを用いたマウスの経鼻ワクチン接種は、その弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimurium株がPhoPc表現型を示すならば、血清および性器分泌物中に抗HPV16コンフォメーション抗体および中和抗体を誘導することを本発明者らは示した(3, 4, 31)。しかし、本来のPhoPc株でさえも、高い抗HPV16 VLP抗体力価を誘導するには2回の経鼻免疫処置が必要であり、一方で経口免疫は無効であった(31)。抗生物質による選択の不在下で、L1をコードするプラスミドの高い不安定性と共に、低レベルのL1発現が観察されたことにより、L1タンパク質またはL1遺伝子のいずれかが細菌に有毒でありうることが強く示唆された。ウイルスL1遺伝子がSalmonellaにおいて発現するために高度に都合の悪いコドン使用頻度を示すことから、Salmonellaでの翻訳のために最適化されたコドンを有する、L1タンパク質をコードする合成ヌクレオチド配列(以下L1Sと呼ぶ)を本明細書において設計して試験した。
【0003】
当該VLPに基づき、臨床試験で現在試験されたHPVワクチンは、耐容性良好であり、高度に免疫原性であり、かつHPV16に誘導される子宮頚部上皮内ガンの発現を予防できることが証明された([Schiller, 2004 #1431]および[Lowy, 2003 #1397]によって総説されている)。しかし、これらの高価なワクチンは、有効であるには多回筋肉内投与を必要として、大部分の子宮頚ガンが発達途上国で発生することから、当該ワクチンは最も必要とする人々には利用できないと思われる。このように、世界中で適用性を有するその他の戦略を開発することが非常に重要である。生きた弱毒化Salmonella株は、外来抗原を発現でき、経口ワクチン接種後に同種および異種抗原に対する粘膜免疫応答および全身免疫応答を誘発できることから、これらの株は有効な抗原デリバリーシステムでありうる([Schodel, 1992 #245; Curtiss, 1994 #466; Levine, 1997 #1416]に総説されている。本研究では、女性に試験できるように、HPV16に対する、Salmonellaに基づくワクチンをさらに最適化した。まず、プラスミド維持のために使用されたアンピシリン選択マーカーを、より高い生体安全性成績を与えられた、ヒトでの使用にさらに許容されるカナマイシン耐性遺伝子に置換した(1994年にFDAが認可(政府、1994 #1522))。次に、ヒトにおいて安全であると示された三つのSalmonella enterica serovar Typhiワクチン株、すなわちTy21a[Germanier, 1975 #103](実際に認可された腸チフスワクチン)、ならびにTy800[Hohmann, 1996 #596]およびCVD908htrA[Tacket, 1997 #643(二つの高度に免疫原性の候補腸チフスワクチン)においてこの新しいプラスミドを試験した。マウスの鼻腔内免疫処置モデル[Galen, 1997 #661]を使用して、これらの3株により誘発された、同種および異種抗原に対する免疫応答を比較した。この新しいリコンビナント株の経鼻免疫処置または経口免疫処置のいずれかの後で、抗HVP16 YLP体液性応答が大きく増加したことをデータは示している。興味深いことに、これは、in vitroおよびin vivoでのL1の発現増加とではなく、L1S発現プラスミドの顕著な安定性と関連した。さらに、弱毒化がヒトでの使用に適切な、その他のSalmonella enterica serovar Typhimurium株で示されたように、免疫原性はPhoPcに限定されなかった。
【0004】
明細書において参照された表の詳細
表1および1Aは、本研究に使用したSalmonella株を表す。
表2は、経鼻または経口免疫処置の2週間後の、L1またはL1SをコードするプラスミドをもつSalmonella PhoPcの回収を表す。
表2Aは、経口免疫処置の2週間後の、アンピシリン耐性遺伝子またはカナマイシン耐性遺伝子をもつ、Salmonella PhoPcL1Sをコードするプラスミドの回収を表す。
表3は、経鼻免疫処置の1週間後のkan L1SプラスミドをもつSalmonella enterica serovar Typhiの回収を表す。
【0005】
発明の目的
本発明の主目的は、抗原性HPV16 L1タンパク質をコードする、配列番号1に提供される新規な核酸配列(HPV16 L1S)を提供することであり、ここで、前記配列は、原核微生物にトランスフォーメーションされて、結果として生じた原核微生物の免疫原性改善を目的とされた場合に、リコンビナントプラスミドベクターの安定性を最適にするための少なくとも一つの改変されたコドンを有する。
【0006】
本発明の別の目的は、配列番号1を内部に有するリコンビナントベクターpFS14nsdHPV16L1およびpFS14nsdHPV16kanL1Sを構築することであり、ここで、前者はアンピシリンを、後者はカナマイシンを選択マーカーとしてもつ。
【0007】
本発明のなお別の目的は、HPV16(ヒトパピローマウイルス)主要キャプシドタンパク質をコードする核酸でトランスフォーメーションされて、対応するタンパク質を発現している原核微生物の弱毒化株を提供する。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの処置のための、原核微生物に基づくワクチンを製造する工程を提供することである。
【0009】
発明の概要
したがって、本発明は、ヒトパピローマウイルス16型(HPV16)に基づく、抗原性HPV16 L1タンパク質をコードする、配列番号1に提供される新規な核酸配列(HPV16 L1S)を提供し、ここで、前記配列は、原核微生物にトランスフォーメーションされて、結果として生じた原核微生物の免疫原性改善を目的とされた場合に、リコンビナントプラスミドベクターの安定性を最適にするための少なくとも一つの改変されたコドンを有し、好ましくは、その株はSalmonella speciesに属する。本発明は、配列番号1を内部に有するリコンビナントベクターpFS14nsdHPV16L1およびpFS14nsdHPV16kanL1Sを構築することにさらに関するものであり、前者ベクターはアンピシリンを、後者ベクターはカナマイシンを選択マーカーとしてもつ。本発明は、配列番号1を内部に有するpFS14nsdHPV16L1またはpFS14nsdHPV16kanL1SでトランスフォーメーションされたSalmonella speciesに属する弱毒化株をさらに提供する。さらに、本発明は、パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの処置のための、Salmonellaに基づくワクチンを製造するための工程を開示する。
【0010】
本発明の詳細な説明
HPV感染および関連する病変に対する、Salmonellaに基づくワクチンの開発は、単回経口ワクチン接種で長期持続する全身免疫および粘膜免疫を誘導する理論的な利点を有して、全世界での実用化に大きな価値があるであろう。しかし、そのような戦略がマウスにおいて実行可能であることを示したにもかかわらず(31)、Salmonellaに基づくワクチンが女性において安全に試験できるまでには、いくつかの障害に取り組まねばならなかった。これらの障害には、中和抗体応答を効果的に誘導するために特定のSalmonella表現型(PhoPc、(3, 4))および経鼻経路の免疫処置の必要性、ならびにL1をコードするプラスミドが抗生物質による選択なしでは不安定であった(31, 4)か、または半致死相補性系で安定化した場合にあまり発現されなかった((3)という観察が含まれた。本明細書において、HPV16 L1キャプシド遺伝子(HPV16 L1S)の発現のためにコドン最適化戦略を使用することによって、これら問題の大部分が解決されることを報告する。実際に、合成L1S遺伝子の発現は、Salmonellaにおいて安定であり、異なって弱毒化された細菌が経鼻または経口経路のいずれかにより送達された場合に、より高い免疫原性を招く。
【0011】
ネイティブなパピローマウイルスキャプシド遺伝子の発現は、哺乳動物細胞に限定されるが、結果として生じた、HPVのDNAワクチンの免疫原性欠如は、コドン最適化により軽減することができるであろう(20, 23および42)。免疫原性に及ぼすコドン使用頻度の影響は、他のDNAワクチンについて認識されてきたが、これらのDNAワクチンでは、異種遺伝子のより高い発現がより高い免疫原性を招いた(1, 12, 32および38)。本来のHPV16キャプシド遺伝子のコドン使用頻度がSalmonellaでの翻訳についても最適以下であるので、コドン最適化されたL1S遺伝子の発現がより高いVLP発現と、結果としてリコンビナントSalmonellaのより高い免疫原性とを招くであろうと予測した。驚くことに、異なって弱毒化されたL1SリコンビナントSalmonellaのより高い免疫原性は、これらの細菌において産生されたより高い量のL1/VLPとは相関しない。実際に、その逆が真実であり、L1S遺伝子が発現した場合に、本来のL1配列の発現(20から60μg/1011CFUのVLP量, (4))に比較して低い量のHPV16 VLPが産生した(AroAL1S株についての約3μg/1011CFUからχ4989L1S株についての23μg/1011CFUの範囲)。これは、ヒトに対して最適化されたHPV16 L1遺伝子を有する哺乳動物細胞で得られたL1発現での>104倍の増加と対照的である(20)。しかし、Salmonellaが代謝制約の異なるマウス組織に侵入している場合に、その細菌に発現したVLPの量が変動しうることを排除できないことに留意すべきである。残念ながら、相対的に低い数の細菌(103〜104CFU/器官)しか回収されず、低いVLPの発現(<1fg/細菌)しか実現されないとすると、VLPのin vivo発現を測定できない。
【0012】
コドン最適化されたL1S配列の発現に関連した別の顕著な特性は、抗生物質による選択の不在下でL1S発現プラスミドのin vitroおよびin vivo安定性の改善である。これは、細菌がもつVLP抗原のより長期間の維持を招くことから、より高い免疫原性のリコンビナントSalmonellaに寄与することができる。このような説明は、粘膜関連リンパ組織での抗原のより長期間の維持がSalmonellaワクチン株によって誘発される免疫応答の根底にある主要なメカニズムである(34)という考えと一致し、粘膜リンパ組織を感作する初回量の抗原が効果的な免疫応答を誘導するための決定的に重要なポイントであるというもう一方の示唆と対照をなす(8, 10)。異なるアプローチが、細菌担体でのプラスミド安定性を改善するために使用されてきた((13, 25)に総説されている)。これらのアプローチには、in vivo誘導性プロモーターの使用または平衡致死プラスミドの安定化系が含まれるが、知るところによると、異種抗原のコドン最適化は、プラスミド安定化を誘導すると以前に報告されていない。
【0013】
興味深いことに、プラスミドが安定であること、およびより低いVLP発現は、L1Sを発現している細菌のin vitro成長速度がより速いことと関連した。翻訳系における包囲は、細菌の最大成長速度を提供するように最適化されて、これは異なるtRNAとそれらの同族コドンとの間の妥当なバランスによって実現されると仮定される(5)。異種L1遺伝子のコドン使用頻度を最適化することは、内因性細菌タンパク質の翻訳を可能にすることによって、成長速度を増大するあまりV1/VLPの発現を損なうtRNAプールが放出されたことを、本発明者らの観察は示唆している。この増大したin vitro成長速度は、増大した侵入および/または細菌のin vivo残留と相関しなかった。よって、L1Sの発現がSalmonellaワクチン株の安全性に影響しうるとは予測されない。PhoPcL1Sの免疫原性は実際に改善して、現在第III相臨床試験中の有力なプロトタイプ予防用サブユニットワクチンである精製HPV16 VLPで誘導された免疫原性に十分匹敵する((24)に総説されている)。PhoPcL1Sの単回経鼻免疫処置は、HPV16の精製VLP1μgの経皮注射3回または粘膜アジュバントであるコレラ毒素と共のVLP5μg用量の経鼻/エーロゾル免疫3回に類似した血清および膣の抗HVP16 VLP IgG力価を誘導し、それは、粘膜プロトコールについて膣洗浄液中に特異的IgAの誘導を含んだ(2, 29)。リコンビナントSalmonellaを用いた経鼻ワクチン接種が低用量で高度に有効であり得るものであり、肺炎を併発しないことが示されたが(28)、ヒトにそのような免疫処置経路を使用することについて依然として安全性の懸念が存在する。本明細書で、PhoPcL1Sを用いた単回経口ワクチン接種として使用できる、より安全な経口経路が免疫原性であり、VLP特異的力価が経鼻免疫処置後よりも低いものの、アジュバントなしでVLP5μgの経鼻/エーロゾル3回投与後に誘導される力価に類似していることを報告する(2)。
【0014】
ヒトにおいてSalmonellaに基づくHPV16ワクチンを試験するための主な制限の一つは、単一の弱毒化突然変異(PhoQ24(27))を内部に有するPhoPc株の報告された可逆性およびマウスにおいて効果的な抗VLP応答を誘導するためのこの表現型の必要性であった(3, 4)。
【0015】
弱毒化突然変異がS. typhiで試験されたその他のS. typhimurium株(χ4989、PhoP”およびaroA)、およびヒトにおいて安全であることが示されたS. typhimurium株(χ4632(30, 39)、Ty800(15)およびCVD908−htrA(40))は、経鼻ワクチン接種後にマウスに抗VLP応答を誘導できることを本明細書において示す。しかし、その力価は、PhoPc株により誘導される力価よりも1または2オーダー低く、これは、本発明者らの以前の結果と一致している(3, 4)。PhoQ24の発現(3)が新しいL1Sリコンビナント株の免疫原性を増強できるかどうかは、まだ試験されていない。経口免疫処置は経鼻免疫処置よりも有効ではなかったが、AeroA L1Sの免疫原性は経口経路によりあまり影響されなかった。Aro欠失(CVD908htrA)を内部に有するS.typhiワクチン株がヒトにおいて安全性および免疫原性の最高記録を有することから、この結果は大いに勇気づけるものである((13, 21および33)に総説されている)。このように、リコンビナントCVD908htrA L1S株は、HPV16感染および関連病変の予防についてヒト志願者に試験する、最高の候補経口生ワクチンとなりうる。
【0016】
全世界で適応性を有する、子宮頚ガンに対する予防ワクチンの発生は、長年の我々の大きな目標であった。本明細書において、Salmonellaに基づくワクチンの開発における最終的な改良、すなわち許容される選択マーカーおよびおよび安全なワクチン株の同定を報告し、この改良は、女性における当該ワクチンの試験を今や可能にするであろう。リコンビナント細菌ワクチンの開発は、選択マーカーの使用を通常必要とする。不幸にも、PhoPcにおけるL1S発現を安定化するためにアスパラギン酸β−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ平衡致死ベクター−宿主系を使用するという試み[Curtiss, 1990 #59]は、VLP特異的免疫応答の誘導に全く失敗した(データは示さず)。したがって、確立された生体安全性の成績を有し、使用がFDAにより認可された抗生物質選択マーカー、すなわちカナマイシンを選択した[政府、1994 #1522]。カナマイシン選択マーカーは、その生物に研究室外で選択上の利点を全く与えないであろうし、この表現型は自然界ですでに極めて遍在性である。実際に、カナマイシンに対する細菌の耐性が広範囲であることが、ヒトの医療への本抗生物質の使用を限定し、その酵素の高い基質特異性は、耐性の発現も、最新抗生物質療法に対する妨害もないことを正当化する。興味深いことに、カナマイシン耐性遺伝子の存在は、PhoPcにおけるL1S発現プラスミドのin vivo安定性をさらに改善したが、kan L1Sプラスミドを内部に有する三つの弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimuriumの経口免疫処置により誘導された免疫応答は、アンピシリンL1Sプラスミドを内部に有する細菌で得られた免疫応答と同様であった[Baud, 2004 #1439]。
【0017】
ヒトにおいてリコンビナントワクチンとして試験されたSalmonella enterica serovar Typhimurium PhoP−株[Angelakopoulos, 2000 #1194]を例外として、これらのSalmonellaに基づくワクチンは、腸チフスに対するワクチンとして最初に開発された弱毒化Salmonella enterica serovar Typhi株である([Levine, 2001 #1428]に総説されている)。候補腸チフスワクチンの二つ、すなわちTy800[Hohmann, 1996 #596]およびCVD908htrA[Tacket, 1997 #643]は、Typhimurium株(PhoP−およびAroA)と同経路(それぞれPhoPQおよびaro)に弱毒化を有し、本明細書においてHPV16 VLPについての潜在的なワクチン担体として選択された。さらに、認可ワクチンTy21aも試験した。三つのリコンビナント株のin vitro分析は、VLPの類似の発現レベルと、kan L1SプラスミドがTyphimurium株中よりもTyphi株中で安定性が低いが、PhoPc中のampプラスミドよりも安定であるという意味での、プラスミドの相対的な不安定性とを明らかにした[Baud, 2004 #1439]。プラスミドをコードするウレアーゼが使用された場合に、TyphimuriumではなくTyphi中でプラスミドが不安定であることも観察された[Angelakopoulos, 2000 #1194]。高用量でマウスに鼻腔内投与された弱毒化Salmonella enterica serovar Typhiは、弱毒化株を経口的に与えられた志願者で観察された免疫応答と同様の一連の免疫応答を誘発する([Pasetti, 2003 #1404]に総説されている)。これは、Salmonella生ワクチン候補の免疫原性および効力を前臨床的に評価するためにこの小動物モデルを使用することを支持している。kan L1Sプラスミドのin vivo安定性を研究するために最初に本モデルを使用した。比較的高い数の細菌が免疫処置の1週間後に肺から回収されたが、これは、深い麻酔下の経鼻ワクチン接種で実現された肺への優れたターゲティングを反映しており[Balmelli, 1998 #930; Londono-Arcila, 2002 #1526]、一方で、以前の研究[Pasetti, 2000 #1494; Lee, 2000 #1530; Pickett, 2000 #1158]と一致してこの遅い時点では脾臓からほとんど全く細菌が回収されなかった。kan L1Sプラスミドは回収された全てのTy21a細菌から見い出されたが、CVD908htrA細菌およびTy800細菌の少数にしかこのプラスミドは存在していなかった。知る限りでは、マウス経鼻モデルにおけるリコンビナントTy800を用いた実験は以前に報告されていなかったが、Ty21a[Gentschev, 2004 #1531]およびCVD908htrA[Londono-Arcila, 2002 #1526]の両方でプラスミド安定性が以前に観察されていた。CVD908htrAにおいてkan L1Sが特に不安定であることは、その他のリコンビナントCVD908htrA株に一般に使用されたin vivo誘導性nirBプロモーターの代わりに、我々のプラスミドに構成性プロモーターが存在することに関係しうる[Wang, 2001 #1533; Londono-Arcila, 2002 #1526; Ruiz-Perez, 2002 #1532]。CVC908htrAおよびTy800におけるkan L1Sの不安定性は、HVP16 VLPに対するこれらの細菌の低免疫原性と関係しているおそれがある。我々のデータは、リコンビナントTy21a kan L1Sだけが、マウス経鼻様式で高い抗HPV16 VLP抗体およびVLP特異的CD4+T細胞応答を誘導できることを明らかに示す。対照的に、CVD908htrAおよびTy800の両方が、Ty21aよりもより高い抗LPS抗体および抗フラジェリン抗体、ならびにフラジェリン特異的CD4 T細胞応答(Ty800に関する)を誘導した。この結果は、マウス経鼻モデル[Wang, 2001 #1533またはヒトにおいてCVD908htrAおよび/またはTy800とTy21aとが比較された以前の研究と一致している。
【0018】
本発明の態様は、HPV16、HPV18、45 31などのHPV(ヒトパピローマウイルス)の主要キャプシドタンパク質のコドンを改変することによる、それらのタンパク質に基づく新規な核酸配列の合成に関するものである。この改変は、原核微生物にトランスフォーメーションされて、結果として生じた原核微生物の免疫原性改善を目的とされたた場合に、リコンビナントプラスミドベクターの安定性を最適にするためのものである。この原核微生物は、Salmonella sps、Escherichia coli、Shigella yersinia、Lactobacillus、Mycobacteria、またはLysteriaからなる群より、好ましくはSalmonella sps.より好ましくは選択される。さらに、Salmonella spsの弱毒化株は、Salmonella enterica serovar Typhimurium、Salmonella typhi、Salmonella typhimuriumまたはSalmonella dublinからなる群より選択される。そのうえ、このSalmonella株は、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoPc(CS022)、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoP−(CS015)、Salmonella enterica serovar Typhimurium χ4989(ΔcyaΔcrp−cdtおよびΔaroA(SL7207));ならびにSalmonella enterica serovar Typhi、Ty21a、CVD908htrA、およびTy800からなる群より好ましくは選択される。
【0019】
本発明のなお別の態様は、ヒトパピローマウイルス16型(HPV16)に対する原核微生物の免疫原性を改善するための方法に関するものであり、その方法は以下の工程を含む:
a. コドン使用頻度を改変することにより、抗原性HPV16 L1タンパク質をコードする配列番号1に示された新規な核酸を合成すること、
b. プラスミドベクターpFS14nsdHPV16L1またはpFS14nsdHPV16kanL1S中の本来のHPV16 L1遺伝子を置換することにより、配列番号1を内部に有するリコンビナントpFS14nsdHPV16L1Sを構築すること、
c. 段階(b)からのリコンビナントプラスミドベクターを弱毒化微生物に導入してリコンビナント接種材料を得ること、
d. マウスにリコンビナント接種材料を投与すること。
【0020】
別の態様は、HPV(ヒトパピローマウイルス)主要キャプシドタンパク質をコードする、コドン改変された核酸でトランスフォーメーションされて、対応するタンパク質を発現している原核微生物の弱毒化株に関するものであり、この核酸において少なくとも一つのコドンが改変されている。HPV主要キャプシドタンパク質は、HPV16、HPV18、HPV31およびHPV45から、好ましくはHPV16 L1からなる群より選択される。上記株は、新規な核酸配列である配列番号1を内部に有する。
【0021】
本発明のなお別の態様は、Salmonella株におけるリコンビナントプラスミドベクターの安定性を最適にするための、一つまたは複数の改変されたコドンを有する新規な核酸に関するものであり、その改変されたコドンは、結果として生じたSalmonella株の免疫原性を改善するためのものである。好ましくは、本発明においてHPV16 L1配列中の本来のコドン506個のうち163個が変更されている。
【0022】
本発明のなお別の態様は、配列番号1に示されるDNA配列を含むリコンビナントプラスミドベクターを提供し、ここで、前記リコンビナントプラスミドベクターは、pFS14nsd−HPV16L1SまたはpFSnsd−HPV16kanL1Sのいずれかである。
【0023】
本発明の別の態様は、Salmonellaに基づくHPV16ワクチンの投与様式に関するものであり、その投与様式は、経口、鼻腔内、膣内、または直腸内からなる群より選択することができる。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの予防的または治療的処置のための薬剤の調製への、原核微生物の弱毒化株の使用を提供する。
【0025】
例として、および添付の図面の参照に限定せずに、本発明の好ましい態様を以下に説明する。本発明の態様
【0026】
実施例
実施例1
プラスミドの構築および使用した細菌株
L1S遺伝子をMicrosynth(Buchs, Switzerland)により合成した。そのオープンリーディングフレームには5’にNcoI制限部位が、3’にHindIIIが隣接した。L1S NcoI−HindIIIフラグメントを、プラスミドpFS14nsdHPV16−L1の本来のL1 NcoI−HindIIIフラグメント代わりに挿入した(31)。結果として生じたプラスミドpFS14nsdHPV16−L1Sを弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimurium株であるPhoPc(CS022(27))およびPhoP”(CS015(26))(共にJohn Mekalanos, Boston, USAから親切に分与いただいた)、x4989(Acya Acrp,(4))、x4990(Acya Acrp-cdt, (4))およびAaroA(SL7207(16))(Irene Corthesy-Theulaz, Lausanne, CHから親切に分与いただいた)にエレクトロポレーション(37)により導入した。
【0027】
HPV16 L1およびVLPの分析
抗HPV16 L1 mAbであるCAMVIR−1(Anawa)を用いて、以前に記載されたように15(31)ウエスタンブロットによりSalmonella溶解液中のL1の発現を分析した。培養物のCD600により測定された細菌含量に対してデータを基準化した。HPV16 VLP上のコンフォメーションエピトープを認識する二つのモノクローナル抗体H16E70およびH16V5を使用して、以前に記載された(4)サンドイッチELISAによりHPV16 VLPの含量を測定した、(9)。20。
【0028】
マウスの免疫処置、免疫応答の分析、およびS. typhimuriumの回収
Iffa Credo、フランスからの6週齢雌性BALB/cマウスを全ての実験に使用した。以前に記載された(17, 31)、麻酔下で細菌接種材料20JLLIを経口(108〜9CFU)投与または鼻腔内(1067CFU)投与した。血液および膣洗浄液の採取、ならびにELISAによる抗HPV16 VLP抗体力価の決定を、先に報告されたように実施した(17, 31)。以前に記載されたように、安楽死させたマウス由来の器官におけるSalmonella enterica serovar Typhimuriumの回収を決定した(31)。
【0029】
Salmonellaにおける翻訳について最適化されたコドンを有するHPV16 L1のヌクレオチド配列の設計
最適化されたL1オープンリーディングフレーム(orf)を設計するために、Salmonella enterica serovar. Typhimuriumの主要内因性タンパク質(7,14)の翻訳に使用されるコドンを考慮した。本来のHPV16 L1配列(HPV16 114/B(18))のコドン506個のうち、163個をSalmonellaで最も頻繁に使用されているコドンに改変した(図1−配列番号1参照)。これには、Salmonellaにまれにしか見出されない本来のL1配列のコドンの全て(136個)およびあまり頻繁に使用されないコドンの一部(27/72個)が含まれた。次に、プラスミドpFS14nsd−HPV16L1(31)中のL1のorfを新しいL1Sのorfに置換して、pFS14nsd−HPV16L1Sを得た。この新しいプラスミドを弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimurium株PhoPc(27)にまず導入して、以後PhoPcL1Sと呼ばれるリコンビナント株を発生させた。その他のL1Sリコンビナント弱毒化Salmonellaの4株をその後産生させた(本明細書の以下を参照)。表1に、本研究に使用した種々の株および略語を要約する。
【0030】
HPV16 L1およびVLPの発現
PhoPcL1およびPhoPcL1Sの対数増殖期培養物の溶解液中でのL1タンパク質の発現をウエスタンブロットにより比較した(図2A参照)。驚くことに、細菌培養物中のL1の発現は、新しいL1S配列では改善せず、むしろ2分の1に減少した(図2B)。二つのリコンビナント株で産生されたVLPの量をサンドイッチELISAにより比較した場合、この結果が確認された(図2C参照)。LB50mlにコロニー1個を接種した後の対数中期に達するまでの時間を比較した場合、二つの株の成長速度に著しい差が認められた(PhoPcL1Sについて約7時間およびPhoPcL1について約15時間)。これは、対応する同族tRNAに関するL1の最適化されたコドン使用頻度により、成長速度が最大になったが、L1Sの翻訳は同時に増加しなかったことを示唆しうる。
【0031】
L1Sをコードするプラスミドのin vitroおよびin vivo安定性
本発明者は、抗生物質による選択の不在下ではSalmonellaにおけるL1をコードする本来のプラスミドはプラスミド分離によりin vivoで速やかに失われたと以前に報告した(4,31)。L1SをコードするプラスミドおよびL1をコードするプラスミドの安定性をまずin vitroで比較した。このために、L1をコードするプラスミドまたはL1Sをコードするプラスミドをまだ内部に有する細菌の率を、抗生物質による選択の不在下で4回連続のO/N培養の間に比較した(図3参照)。予想通り、L1をコードするプラスミドは速やかに失われた。対照的に、L1Sをコードするプラスミドは、抗生物質による選択の不在下で約50世代時間の後でも大部分の細菌から回収された。マウスに経鼻および経口免疫処置した後の、L1Sをコードするプラスミドの安定性をさらにin vivoで検討した(表2参照)。L1をコードする本来のプラスミド(4)とは対照的に、L1Sをコードするプラスミドは、感染/侵入部位に近い器官で少なくとも2週間完全に安定であった。しかし、脾臓などのさらに離れた器官ではL1Sプラスミドの不安定性が幾分観察された。脾臓ではこれらの細菌の約10%がL1Sプラスミドをまだ内部に有したが、L1プラスミドを内部に有するものは全く検出されなかった。in vitroで観察されたこれらの細菌のより速い成長能にかかわらず、L1Sを内部に有する細菌の侵入性または残留性がより高いという証拠がないことにも留意すべきである。
【0032】
PhoPcL1Sの経鼻または経口ワクチン接種後の全身および粘膜の抗HPV16 VLP抗体産生
最終目標は、Salmonella enterica serovar TyphimuriumにおいてHPV16 L1S遺伝子の発現がHPV16 VLP抗原の免疫原性を改善するかどうかを試験することであった。したがって、PhoPcL1S株を用いて、経鼻または経口経路で雌性BALB/cマウスの群を免疫処置した。単回免疫処置の4から6、8および24週間後のマウスの血清および膣分泌物中から測定された抗VLP抗体力価を図4に示す。単回経鼻ワクチン接種は、血清中に高い長期持続性の抗HPV16 VLP IgG力価および膣洗浄液中に特異的IgGおよびIgA力価を誘導した。これらの抗体力価は、本来のPhoPcL1株を2回経鼻ワクチン接種した後に誘導された力価と同様であるが、主な改善は、これらの力価が本来のPhoPcL1株を用いた単回経鼻ワクチン接種で実現された力価よりも1から2オーダー高いことである(4, 31)。興味深いことに、経鼻ワクチン接種よりも低いものの、PhoPcL1Sを用いた経口ワクチン接種も高度に免疫原性であった。一方で、本来のPhoPc株を2回経口ワクチン接種しても無効であった(31)。PhoPcL1Sの2回経鼻投与または3回経口投与(データは示さず)により、免疫応答は増加しなかった。
【0033】
異なって弱毒化された、HPV16 L1S遺伝子を発現しているSalmonella enterica serovar Typhimurium株を用いた経鼻または経口ワクチン接種後の全身抗HPV16 VLP抗体
本発明者は、異なって弱毒化された、L1をコードする本来のプラスミドを発現しているSalmonella enterica serovar Typhimurium株をマウスに経鼻ワクチン接種することで、抗HPV16 VLP抗体が低くしか、または全く誘導されなかったことを以前に示した(4)。L1Sをコードするプラスミドを発現しているPhoPc株で観察された高い免疫原性を考えて、%4989、Λ4990、PhoP”およびAroAを含めた種々の株に本プラスミドをさらに導入した(正確な弱毒化、略語および参照については表1を参照されたい)。これらの新しいリコンビナント株を単回経鼻または経口ワクチン接種した7週間後にマウスにおいて測定された抗HVP16 VLP IgG力価を図5に示す。我々の以前の観察とは対照的に、新しいリコンビナント株の全ては、単回経鼻ワクチン接種後に一貫した抗HPV16 VLP体液性応答を誘導したが、これらの力価はPhoPcL1S株で実現された力価よりも約1オーダー低い(図4参照)。両経路のワクチン接種後に類似した抗HPV16 VLP IgG力価を誘導したAroAL1S株を除いて、予想通り、免疫原性は経口ワクチン接種の方が低かった。
【0034】
実施例2
プラスミド構築および使用した細菌株
プラスミドpFS14nsdHPV16−L1S[Baud, 2004 #1439]において、アンピシリン耐性コード配列を以下のようにカナマイシン耐性コード配列に置換した。テンプレートとしてpET−9a(Novagen)プラスミドDNAを使用した。PCRにより、カナマイシンコード配列およびプロモーターを含むSacII−XbaIフラグメントを発生させた。使用したプライマーは、カナマイシンの最初のATGから54ヌクレオチド上流に位置する、SacII制限部位(下線部)を含む25塩基:
【0035】
【表1】
【0036】
およびXbaI制限部位(下線部)を含む28塩基:
【0037】
【表2】
【0038】
であった。pFS14nsdHPV16−L1Sプラスミド配列全体を含むが、アンピシリン耐性遺伝子を欠く、別の大きなSacII−XbaIフラグメントを、Expand High Fedelity PCR(Roche Molecular Biochemicals)を用いた逆PCRにより、以下のプライマーを用いて発生させた:アンピシリンのATGから92ヌクレオチド上流に位置する、SacII部位(下線部)を含む28塩基
【0039】
【表3】
【0040】
およびXbaI部位(下線部)およびアンピシリンの停止コドン(太字)を含む28塩基。
【0041】
【表4】
【0042】
これら二つのSacII−XbaIフラグメントを一緒に連結してプラスミドpFS14nsd−kan3−HPV16−L1Sを発生させた。この新しいプラスミドをエレクトロポレーション[Schodel, 1990b #242]により弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimurium株であるPhoPc(CS022 [Miller, 1990 #181])およびPhoP−(CS015 [Miller, 1989 #178])、およびΔaroA(SL7207[Hoiseth, 1981 #123])に、ならびに弱毒化Salmonella enterica serovar Typhi Ty800[Hohmann, 1996 #596]、CVD908htrA[Tacket, 1997 #643]、およびTy21a([Germanier, 1975 #103], Berna biotech, Switzerland)に導入した。
【0043】
HPV16 L1およびVLPの分析
抗HPV16 L1 mAbであるCAMVIR−1(Anawa)を使用して、以前に記載されたように[Nardellihaefliger, 1997 #742]ウエスタンブロットにより、Salmonella溶解液中のL1の発現を分析した。細菌中の含量に対してデータを基準化した。HPV16 VLP上のコンフォメーションエピトープを認識する二つのモノクローナル抗体であるH16E70またはH161Aと、H16V5とを使用して、以前に記載されたように[Benyacoub, 1999 #1050]、サンドイッチELISAによりHPV16 VLPの含量を測定した。
【0044】
マウスの免疫処置、抗HPV16 VLP抗体の分析およびSalmonellaの回収
Iffa Credo、フランスからの6週齢雌性BALB/cマウスを全ての実験に使用した。以前に記載されたように[Hopkins, 1995 #381; Nardellihaefliger, 1997 #742]、細菌接種材料20μlを麻酔下で経口(109CFU)または鼻腔内(107〜9CFU)投与した。先に報告されたように[Hopkins, 1995 #381; Nardellihaefliger, 1997 #742]、血液および膣洗浄液の採取ならびにELISAによる抗HPV16 VLP抗体力価の決定を行った。以前に記載されたように[Nardellihaefliger, 1997 #742]、安楽死させたマウスからの器官でのSalmonella enterica serovar TyphimuriumまたはSalmonella enterica serovar Typhiの回収を決定した。
【0045】
中和アッセイ
[Pastrana DV, 2004 #1429]に詳細に記載されているように、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)HPV16シュードウイルスを用いて中和アッセイを行った。簡潔には、optiprepで精製して2000倍に希釈したSEAP HPV16シュードウイルスを血清で2倍系列希釈して、氷冷しながら1時間インキュベーションして、このシュードウイルス−抗体混合物を使用して293TT細胞に3日間感染させた。清澄にした細胞上清10μl中のSEAP含量をGreat ESCAPE SEAP化学ルミネセンスキット(BD Clontech)を使用して決定した。SEAP活性に少なくとも50%の現象を引き起こす最高の血清希釈倍率として中和力価を定義した(SEAP活性100%は50から100相対光単位の範囲)。
【0046】
増殖アッセイ
以前に記載されたように[Balmelli, 2002 #1357]、機械的解離により脾臓細胞を単離した。製造業者の使用説明書により抗CD4+を被覆したマイクロビーズ(Miltenyi Biotec, Galdbach, Germany)を用いた磁気抗体細胞ソーティング(MACS)によりCD4+T細胞を精製した。陰性および陽性対照として培地単独と共に、またはコンカナバリンA(2.5μg/ml)と共に、ならびにHPV16 VLP(2μg/ml、GMP調製物)およびフラジェリン(10μg/ml、Ty21aから精製)と共に、ナイーブマウスまたは免疫処置されたマウス由来のCD4+T細胞を3日間インキュベーションして、0.5μキュリーの3Hチミジンを一晩添加して、取込みをcpm単位で測定した。
【0047】
カナマイシン耐性PhoPc株におけるHPV16 L1Sの発現およびプラスミド安定性
本来のpFSnsdHPV16L1S[Baud, 2004 #1439]中のアンピシリン耐性遺伝子をカナマイシン選択マーカーに置換することによって、HPV16 L1Sを発現しているカナマイシン耐性プラスミドを構築した。逆PCR戦略を使用して、アンピシリン耐性遺伝子配列に隣接するプラスミド全体を増幅させ、結果として得られたフラグメントを、カナマイシン耐性をコードする配列に連結した(詳細は材料および方法を参照)。結果として得られたプラスミドをpFSnsd−kanL1Sと呼び、PhoPcにエレクトロポレーションさせてPhoPc−kanL1Sを得た(本研究で用いた株の略語および参照については表1A参照)。予想通り、この新しい株におけるHPV16 VLPのin vitro発現は、アンピシリン耐性株PhoPc−L1S(約10μgVLP/1011CFU, [Baud, 2004 #1439])で測定された発現と同様であった。これら2株の間でもまた、同様の成長速度が観察され、対数増殖中期まで約7時間であり、プラスミド安定性は非常に高く、抗生物質の不在下で4晩連続して培養後にプラスミドをまだ内部に有する細菌はほとんど100%であった。kan L1Sプラスミドの安定性は、アンピシリンプラスミドに比較してin vivoで増加して、全ての細菌が経口免疫処置の2週間後にkan L1Sプラスミドを内部に有し、これは検査した全ての器官にあてはまった(表2A参照)。
【0048】
kan L1SをコードするプラスミドをもつPhoPc、PhoP−およびAroAを経口免疫処置後の抗HPV16 VLP体液性応答
弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimuriumの2株であるPhoP−およびAroAにkan L1Sプラスミドをさらに導入した(表1A参照)。Salmonella enterica serovar Typhiワクチン株におけるこれらの株の弱毒化突然変異は、ヒトにおいて安全であるとすでに示されている。リコンビナントSalmonella enterica serovar Typhimuriumの3株を経口経路によりマウス5〜10匹の3群に1回免疫処置して、血清および膣洗浄液中のHPV16 VLP特異的抗体応答を免疫処置の6週間後に比較する(図6参照)。興味深いことに、AroAkanL1S株により誘導された抗VLP抗体力価は、PhoPckanL1S株および以前のPhoPcL1S株により誘導された力価と同様に高いと思われる[Baud, 2004 #1439]。これらの抗体力価は、少なくとも4か月間安定であった(データは示さず)。対照的に、PhoP−kanL1sにより誘導された抗VLP抗体力価は、Phop−L1Sで以前に報告されたように[Baud, 2004 #1439]低い。PhoPcおよびAroakanL1Sを免疫処置されたマウスの膣分泌物中にもHPV16 VLP特異的IgGおよびIgAが誘導されたが、PhoP−kanL1Sの後には何も検出されなかった。経口免疫処置を使用してマウスモデルで得られたこれらのデータは、Δaro欠失を内部に有するリコンビナントSalmonella enterica serovar TyphiがΔPhoP/phoQ欠失を内部に有する細菌よりも免疫原性が高くありうることを示唆している。
【0049】
三つのSalmonella enterica serovar Typhiワクチン株におけるkan L1Sプラスミドの発現および安定性
本発明者らに入手可能であった三つのSalmonella enterica serovar Typhiワクチン株、すなわちTy800(ΔPhoP/phoQ, [Hohmann, 1996 #596])、CVD908−htrA(ΔaroC、ΔaroD、htraA[Tacket, 1997 #643])および認可された腸チフスワクチン株Ty21a[Germanier, 1975 #103]にkan L1Sプラスミドを導入した(略語および参照については表1Aを参照されたい)。VLPのin vitro発現は、これら3株で同様であった(20から30μg VLP/1011CFU)。抗生物質不在下でのこれら三つのワクチン株におけるkan L1Sプラスミドの安定性を、まずin vitroで検討した(図7参照)。Salmonella enterica serovar Typhimurium株を用いた以前の結果とは対照的に、ワクチン株ではkan L1Sが低安定性であることが観察された。2晩目の後でプラスミドの緩やかな喪失が起こったが、5晩連続の後で、Ty21akanL1S、Ty800kanL1SおよびCVD908−htrAkanL1Sで細菌のそれぞれ9、7および18%にプラスミドは依然として保持されていた。Salmonella enterica serovar Typhiワクチン株は、ヒトにおいて限定された循環または複製だけを経るのであろう。そして、これらの株はマウスにおいて経口経路では侵入性ではない。リコンビナントCVD908htrAで示されたように[Pickett, 2000 #1158][Pasetti, 2000 #1494]、これらの細菌を経鼻経路により高用量で投与するならば、マウスを一過性に感染することができる。このように、109CFUのCVD908−htrAkanL1SおよびTy21akanL1Sまたは107CFUのTy800kanL1Sを鼻腔内免疫処置した1週間後のマウスの肺および脾臓から回収されたSalmonellaにおけるkan L1Sプラスミドの安定性を検討した。この後者の株は、低用量で投与しなければならなかった。それは、ブタ胃ムチンと共にそのようなPhoPQ欠失細菌をマウスに腹腔内注射した後の以前の結果と一致して[Baker, 1997 #659]、低用量で投与しないと、この株はマウスに致死的であったからである。興味深いことに、Ty21akanL1Sを免疫処置後に肺から回収された全ての細菌がkan L1Sを内部に有したが、Ty800kanL1SおよびCVD908−htrAkanL1Sの免疫処置後に、少数(それぞれ7.9および0.8%)がkan L1Sプラスミドを内部に有した(表3参照)。これは、経鼻マウスモデルにおいて、試験された他のSalmonella enterica serovan Typhiワクチン株よりもTy21a中の方がkan L1Sプラスミドが安定であることを示している。
【0050】
鼻腔内マウスモデルにおいてHPV16 VLPを発現しているSalmonella enterica serovar Typhiワクチン株により誘導された体液性および細胞性免疫応答
三つのリコンビナントSalmonella enterica serovar Typhi株の免疫原性を、5〜0匹の雌性BALB/cマウスの群で1か月間隔を空けた鼻腔内の2回投与後に評価した(CVD908−htraおよびTy21aリコンビナント株について109CFUならびにTy800リコンビナント株について107CFU)。異種HPV16 VLP抗原に対するIgG力価ならびに二つの同種抗原LPSおよびフラジェリンに対するIgG力価を8週間にわたり血清から測定した(図8参照)。興味深いことに、Ty21akanL1Sの2回免疫処置後に初めて高い抗VLP IgG力価が誘導されたが、その他の2株により低いか、またはほとんど検出できない力価が誘導された。対照的に、Ty800kanL1SおよびCVD908htrakanL1Sは、Ty21kanL1Sよりも高い抗LPS IgGおよび抗フラジェリンIgG力価を誘導した(8週間目でp<0.01)。これは、二つの前者リコンビナントカブがマウスにうまく感染して、同種抗原に対する体液性応答を誘導したことを示している。
【0051】
高い抗体力価の発生および維持し関与するTヘルパー応答、したがって、フラジェリンおよびHPV16 VLPに対する細胞性免疫応答も検討した。免疫処置の8週間後にマウスを屠殺して、脾臓から精製したCD4+T細胞を用いて抗原特異的増殖を測定した(図9参照)。抗HPV16 VLP力価の誘導に一致して、HPV16 VLPによるCD4+T細胞の刺激は、Ty21akanL1Sを用いた鼻腔内ワクチン接種2回の後になって初めて有意に誘導された(p<0.001)。対照的に、フラジェリン特異的なCD4+T細胞の有意な刺激は、Ty800kanL1Sを用いたワクチン接触後にのみ測定された(p<0.001)。
【0052】
Ty21akanL1S単独を免疫処置されたマウスまたは皮下VLP投与で感作されたマウスの血清および性器分泌物中でHPV16中和力価は誘導される
0および4週間目に雌性BALB/cマウス5匹の追加の群に経鼻Ty21kanL1S(約109CFU)の2回の投与を受けさせ、血液および膣分泌物の採取を8週間目に行った。抗HPV16 VLP中和抗体および抗HPV中和抗体の力価を、血清および膣分泌物の両方でELISAおよびSEAP HPV16シュードビリン中和アッセイによりそれぞれ決定した(図10参照)。リコンビナントSalmonella enterica serovar typhimurium L1S株を用いた免疫処置後に以前に報告されたように、HPV16中和力価は抗VLP ELISA力価よりもやや低かった[Baud, 2004 #1439]。さらに、抗HPV16 VLP IgGおよびIgAが膣分泌物中に誘導され、これらの分泌物がHPV16中和抗体を含有することを本明細書に示す(図10−B参照)。精製VLP1μgを用いた皮下(s.c.)感作がTy21kanL1Sを用いた最適以下の免疫処置(すなわち109CFUの単回経鼻投与)により誘導される免疫応答に及ぼす効果も研究した。データ(図11)は、実際にVLP1μgを用いたs.c.感作の結果として、Ty21kanL1Sを用いた単回経鼻追加免疫後に血清抗VLP IgG力価の有意な増加が生じたことを示している(VLPによる感作なしに比べてp<0.01)。対照的に、誘導された、膣の抗VLP IgGに統計的な差はないが、VLPおよびTy21kanL1Sの両方が投与された場合にのみ、膣に抗VLP IgAが誘導された。中和力価は今後決定。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
【表10】
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】コドン最適化されたHPV16 L1S orf(配列番号1)を示す図である。L1Sのヌクレオチド配列を、下線部の改変コドンおよび太字の改変ヌクレオチドと共に示す。
【図2A】PhoPcL1およびPhoPcL1Sリコンビナント株におけるHPV16 L1の発現を示す図である。
【図2B】PhoPcL1およびPhoPcL1Sリコンビナント株におけるHPV16 L1の発現を示す図である。
【図2C】PhoPcL1およびPhoPcL1Sリコンビナント株におけるHPV16 L1の発現を示す図である。
【図3】L1プラスミドおよびL1Sプラスミドのin vitro安定性を示す図である。
【図4A】PhoPcL1Sを経鼻および経口ワクチン接種後の全身(A)および膣(B)の抗HPV16 VLP抗体力価を示す図である。
【図4B】PhoPcL1Sを経鼻および経口ワクチン接種後の全身(A)および膣(B)の抗HPV16 VLP抗体力価を示す図である。
【図5】%4989L1S、x4990L1S、PhoP”L1SおよびAroAL1Sを経鼻または経口ワクチン接種後の全身抗HPV16 VLP IgG力価を示す図である。
【図6A】PhoPckanL1S、Phop−kanL1SおよびΔAroAkanL1Sを経口ワクチン接種後の血清抗HPV16 VLP抗体力価の比較を示す図である。
【図6B】PhoPckanL1S、Phop−kanL1SおよびΔAroAkanL1Sを経口ワクチン接種後の血清抗HPV16 VLP抗体力価の比較を示す図である。
【図7】Salmonella enterica serovar Typhiの種々の株におけるkan L1Sプラスミドのin vitro安定性を示す図である。
【図8A】Ty21akanL1S、Ty800kanL1SおよびCVD908htrAkanL1Sを経鼻ワクチン接種後の血清抗HPV16 VLP抗体力価の比較を示す図である。
【図8B】Ty21akanL1S、Ty800kanL1SおよびCVD908htrAkanL1Sを経鼻ワクチン接種後の血清抗HPV16 VLP抗体力価の比較を示す図である。
【図9A】HPV16 VLPおよびフラジェリンに特異的なCD4+T細胞増殖の比較を示す図である。
【図9B】HPV16 VLPおよびフラジェリンに特異的なCD4+T細胞増殖の比較を示す図である。
【図10A】Ty21akanL1Sを経鼻ワクチン接種されたマウスの血清および膣分泌物中のHPV16中和抗体および抗HPV16 VLP抗体を示す図である。
【図10B】Ty21akanL1Sを経鼻ワクチン接種されたマウスの血清および膣分泌物中のHPV16中和抗体および抗HPV16 VLP抗体を示す図である。
【図11A】Ty21akanL1S単独を経鼻ワクチン接種または精製VLPで感作されたマウスの血清および膣分泌物中のHPV16中和抗体および抗HPV16 VLP抗体を示す図である。
【図11B】Ty21akanL1S単独を経鼻ワクチン接種または精製VLPで感作されたマウスの血清および膣分泌物中のHPV16中和抗体および抗HPV16 VLP抗体を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列番号1に提供される、抗原性HPV16 L1タンパク質をコードする新規な核酸配列(HPV16 L1S)に関するものであり、前記配列は、原核微生物にトランスフォーメーションされて、結果として生じた原核微生物の免疫原性改善を目的とされた場合に、リコンビナントプラスミドベクターの安定性を最適にするための少なくとも一つの改変されたコドンを有する。本発明は、HPV16(ヒトパピローマウイルス)主要キャプシドタンパク質をコードする核酸でトランスフォーメーションされて、対応するタンパク質を発現している、原核微生物の弱毒化株にも関するものである。さらに、本発明は、パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの処置のための、原核微生物に基づくワクチンを製造する工程を開示する。
【0002】
背景技術および従来技術の参照
子宮頚ガンは、全世界で女性におけるガンの死因の第2位であり、これらの腫瘍の事実上全てがヒトパピローマウイルス(HPV)のサブセットの感染に起因しうる。このHPVのうち、HPV16が最も高頻度に見い出される(6, 41)。したがって、これらのHPVに対する有効なワクチンは、本ガンおよびその前駆病変の発生率に、ならびにこれらのウイルスに起因しうるあまり一般的ではない腫瘍に劇的な影響を有すると予想されよう。その有力な候補は、予防用HPVウイルス様粒子(VLP)サブユニットワクチン((35)および(24)により総説されている)である。概念の証明(proof of principle)のための有効性臨床試験は、HPV16 VLPをワクチン接種された女性が、このウイルス型による性器粘膜感染に対して高度に防御されたことを示した(19)。しかし、予測されたターゲット集団が小児期ワクチンのターゲット集団よりも年齢が高いであろうワクチンについて、多回注射の必要性は、広範囲に及ぶ実用化への実質的な障壁となりうる。これは、全世界の子宮頚ガン症例を4分の3よりも大きく占める開発途上世界で特にあてはまる(6)。弱毒化されているが、なお侵入性であるリコンビナント弱毒化Salmonella株が、病原体特異的防御エピトープを粘膜関連リンパ組織に送達するために粘膜ワクチンベクターとして広く使用されてきた。この経路を介して、担体および外来抗原に対する粘膜免疫応答と全身免疫応答との両方を得ることができる((11, 22, 36)に総説されている)。VLPに自己集合するHPV16主要キャプシドタンパク質L1を発現しているそのSalmonellaを用いたマウスの経鼻ワクチン接種は、その弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimurium株がPhoPc表現型を示すならば、血清および性器分泌物中に抗HPV16コンフォメーション抗体および中和抗体を誘導することを本発明者らは示した(3, 4, 31)。しかし、本来のPhoPc株でさえも、高い抗HPV16 VLP抗体力価を誘導するには2回の経鼻免疫処置が必要であり、一方で経口免疫は無効であった(31)。抗生物質による選択の不在下で、L1をコードするプラスミドの高い不安定性と共に、低レベルのL1発現が観察されたことにより、L1タンパク質またはL1遺伝子のいずれかが細菌に有毒でありうることが強く示唆された。ウイルスL1遺伝子がSalmonellaにおいて発現するために高度に都合の悪いコドン使用頻度を示すことから、Salmonellaでの翻訳のために最適化されたコドンを有する、L1タンパク質をコードする合成ヌクレオチド配列(以下L1Sと呼ぶ)を本明細書において設計して試験した。
【0003】
当該VLPに基づき、臨床試験で現在試験されたHPVワクチンは、耐容性良好であり、高度に免疫原性であり、かつHPV16に誘導される子宮頚部上皮内ガンの発現を予防できることが証明された([Schiller, 2004 #1431]および[Lowy, 2003 #1397]によって総説されている)。しかし、これらの高価なワクチンは、有効であるには多回筋肉内投与を必要として、大部分の子宮頚ガンが発達途上国で発生することから、当該ワクチンは最も必要とする人々には利用できないと思われる。このように、世界中で適用性を有するその他の戦略を開発することが非常に重要である。生きた弱毒化Salmonella株は、外来抗原を発現でき、経口ワクチン接種後に同種および異種抗原に対する粘膜免疫応答および全身免疫応答を誘発できることから、これらの株は有効な抗原デリバリーシステムでありうる([Schodel, 1992 #245; Curtiss, 1994 #466; Levine, 1997 #1416]に総説されている。本研究では、女性に試験できるように、HPV16に対する、Salmonellaに基づくワクチンをさらに最適化した。まず、プラスミド維持のために使用されたアンピシリン選択マーカーを、より高い生体安全性成績を与えられた、ヒトでの使用にさらに許容されるカナマイシン耐性遺伝子に置換した(1994年にFDAが認可(政府、1994 #1522))。次に、ヒトにおいて安全であると示された三つのSalmonella enterica serovar Typhiワクチン株、すなわちTy21a[Germanier, 1975 #103](実際に認可された腸チフスワクチン)、ならびにTy800[Hohmann, 1996 #596]およびCVD908htrA[Tacket, 1997 #643(二つの高度に免疫原性の候補腸チフスワクチン)においてこの新しいプラスミドを試験した。マウスの鼻腔内免疫処置モデル[Galen, 1997 #661]を使用して、これらの3株により誘発された、同種および異種抗原に対する免疫応答を比較した。この新しいリコンビナント株の経鼻免疫処置または経口免疫処置のいずれかの後で、抗HVP16 YLP体液性応答が大きく増加したことをデータは示している。興味深いことに、これは、in vitroおよびin vivoでのL1の発現増加とではなく、L1S発現プラスミドの顕著な安定性と関連した。さらに、弱毒化がヒトでの使用に適切な、その他のSalmonella enterica serovar Typhimurium株で示されたように、免疫原性はPhoPcに限定されなかった。
【0004】
明細書において参照された表の詳細
表1および1Aは、本研究に使用したSalmonella株を表す。
表2は、経鼻または経口免疫処置の2週間後の、L1またはL1SをコードするプラスミドをもつSalmonella PhoPcの回収を表す。
表2Aは、経口免疫処置の2週間後の、アンピシリン耐性遺伝子またはカナマイシン耐性遺伝子をもつ、Salmonella PhoPcL1Sをコードするプラスミドの回収を表す。
表3は、経鼻免疫処置の1週間後のkan L1SプラスミドをもつSalmonella enterica serovar Typhiの回収を表す。
【0005】
発明の目的
本発明の主目的は、抗原性HPV16 L1タンパク質をコードする、配列番号1に提供される新規な核酸配列(HPV16 L1S)を提供することであり、ここで、前記配列は、原核微生物にトランスフォーメーションされて、結果として生じた原核微生物の免疫原性改善を目的とされた場合に、リコンビナントプラスミドベクターの安定性を最適にするための少なくとも一つの改変されたコドンを有する。
【0006】
本発明の別の目的は、配列番号1を内部に有するリコンビナントベクターpFS14nsdHPV16L1およびpFS14nsdHPV16kanL1Sを構築することであり、ここで、前者はアンピシリンを、後者はカナマイシンを選択マーカーとしてもつ。
【0007】
本発明のなお別の目的は、HPV16(ヒトパピローマウイルス)主要キャプシドタンパク質をコードする核酸でトランスフォーメーションされて、対応するタンパク質を発現している原核微生物の弱毒化株を提供する。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの処置のための、原核微生物に基づくワクチンを製造する工程を提供することである。
【0009】
発明の概要
したがって、本発明は、ヒトパピローマウイルス16型(HPV16)に基づく、抗原性HPV16 L1タンパク質をコードする、配列番号1に提供される新規な核酸配列(HPV16 L1S)を提供し、ここで、前記配列は、原核微生物にトランスフォーメーションされて、結果として生じた原核微生物の免疫原性改善を目的とされた場合に、リコンビナントプラスミドベクターの安定性を最適にするための少なくとも一つの改変されたコドンを有し、好ましくは、その株はSalmonella speciesに属する。本発明は、配列番号1を内部に有するリコンビナントベクターpFS14nsdHPV16L1およびpFS14nsdHPV16kanL1Sを構築することにさらに関するものであり、前者ベクターはアンピシリンを、後者ベクターはカナマイシンを選択マーカーとしてもつ。本発明は、配列番号1を内部に有するpFS14nsdHPV16L1またはpFS14nsdHPV16kanL1SでトランスフォーメーションされたSalmonella speciesに属する弱毒化株をさらに提供する。さらに、本発明は、パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの処置のための、Salmonellaに基づくワクチンを製造するための工程を開示する。
【0010】
本発明の詳細な説明
HPV感染および関連する病変に対する、Salmonellaに基づくワクチンの開発は、単回経口ワクチン接種で長期持続する全身免疫および粘膜免疫を誘導する理論的な利点を有して、全世界での実用化に大きな価値があるであろう。しかし、そのような戦略がマウスにおいて実行可能であることを示したにもかかわらず(31)、Salmonellaに基づくワクチンが女性において安全に試験できるまでには、いくつかの障害に取り組まねばならなかった。これらの障害には、中和抗体応答を効果的に誘導するために特定のSalmonella表現型(PhoPc、(3, 4))および経鼻経路の免疫処置の必要性、ならびにL1をコードするプラスミドが抗生物質による選択なしでは不安定であった(31, 4)か、または半致死相補性系で安定化した場合にあまり発現されなかった((3)という観察が含まれた。本明細書において、HPV16 L1キャプシド遺伝子(HPV16 L1S)の発現のためにコドン最適化戦略を使用することによって、これら問題の大部分が解決されることを報告する。実際に、合成L1S遺伝子の発現は、Salmonellaにおいて安定であり、異なって弱毒化された細菌が経鼻または経口経路のいずれかにより送達された場合に、より高い免疫原性を招く。
【0011】
ネイティブなパピローマウイルスキャプシド遺伝子の発現は、哺乳動物細胞に限定されるが、結果として生じた、HPVのDNAワクチンの免疫原性欠如は、コドン最適化により軽減することができるであろう(20, 23および42)。免疫原性に及ぼすコドン使用頻度の影響は、他のDNAワクチンについて認識されてきたが、これらのDNAワクチンでは、異種遺伝子のより高い発現がより高い免疫原性を招いた(1, 12, 32および38)。本来のHPV16キャプシド遺伝子のコドン使用頻度がSalmonellaでの翻訳についても最適以下であるので、コドン最適化されたL1S遺伝子の発現がより高いVLP発現と、結果としてリコンビナントSalmonellaのより高い免疫原性とを招くであろうと予測した。驚くことに、異なって弱毒化されたL1SリコンビナントSalmonellaのより高い免疫原性は、これらの細菌において産生されたより高い量のL1/VLPとは相関しない。実際に、その逆が真実であり、L1S遺伝子が発現した場合に、本来のL1配列の発現(20から60μg/1011CFUのVLP量, (4))に比較して低い量のHPV16 VLPが産生した(AroAL1S株についての約3μg/1011CFUからχ4989L1S株についての23μg/1011CFUの範囲)。これは、ヒトに対して最適化されたHPV16 L1遺伝子を有する哺乳動物細胞で得られたL1発現での>104倍の増加と対照的である(20)。しかし、Salmonellaが代謝制約の異なるマウス組織に侵入している場合に、その細菌に発現したVLPの量が変動しうることを排除できないことに留意すべきである。残念ながら、相対的に低い数の細菌(103〜104CFU/器官)しか回収されず、低いVLPの発現(<1fg/細菌)しか実現されないとすると、VLPのin vivo発現を測定できない。
【0012】
コドン最適化されたL1S配列の発現に関連した別の顕著な特性は、抗生物質による選択の不在下でL1S発現プラスミドのin vitroおよびin vivo安定性の改善である。これは、細菌がもつVLP抗原のより長期間の維持を招くことから、より高い免疫原性のリコンビナントSalmonellaに寄与することができる。このような説明は、粘膜関連リンパ組織での抗原のより長期間の維持がSalmonellaワクチン株によって誘発される免疫応答の根底にある主要なメカニズムである(34)という考えと一致し、粘膜リンパ組織を感作する初回量の抗原が効果的な免疫応答を誘導するための決定的に重要なポイントであるというもう一方の示唆と対照をなす(8, 10)。異なるアプローチが、細菌担体でのプラスミド安定性を改善するために使用されてきた((13, 25)に総説されている)。これらのアプローチには、in vivo誘導性プロモーターの使用または平衡致死プラスミドの安定化系が含まれるが、知るところによると、異種抗原のコドン最適化は、プラスミド安定化を誘導すると以前に報告されていない。
【0013】
興味深いことに、プラスミドが安定であること、およびより低いVLP発現は、L1Sを発現している細菌のin vitro成長速度がより速いことと関連した。翻訳系における包囲は、細菌の最大成長速度を提供するように最適化されて、これは異なるtRNAとそれらの同族コドンとの間の妥当なバランスによって実現されると仮定される(5)。異種L1遺伝子のコドン使用頻度を最適化することは、内因性細菌タンパク質の翻訳を可能にすることによって、成長速度を増大するあまりV1/VLPの発現を損なうtRNAプールが放出されたことを、本発明者らの観察は示唆している。この増大したin vitro成長速度は、増大した侵入および/または細菌のin vivo残留と相関しなかった。よって、L1Sの発現がSalmonellaワクチン株の安全性に影響しうるとは予測されない。PhoPcL1Sの免疫原性は実際に改善して、現在第III相臨床試験中の有力なプロトタイプ予防用サブユニットワクチンである精製HPV16 VLPで誘導された免疫原性に十分匹敵する((24)に総説されている)。PhoPcL1Sの単回経鼻免疫処置は、HPV16の精製VLP1μgの経皮注射3回または粘膜アジュバントであるコレラ毒素と共のVLP5μg用量の経鼻/エーロゾル免疫3回に類似した血清および膣の抗HVP16 VLP IgG力価を誘導し、それは、粘膜プロトコールについて膣洗浄液中に特異的IgAの誘導を含んだ(2, 29)。リコンビナントSalmonellaを用いた経鼻ワクチン接種が低用量で高度に有効であり得るものであり、肺炎を併発しないことが示されたが(28)、ヒトにそのような免疫処置経路を使用することについて依然として安全性の懸念が存在する。本明細書で、PhoPcL1Sを用いた単回経口ワクチン接種として使用できる、より安全な経口経路が免疫原性であり、VLP特異的力価が経鼻免疫処置後よりも低いものの、アジュバントなしでVLP5μgの経鼻/エーロゾル3回投与後に誘導される力価に類似していることを報告する(2)。
【0014】
ヒトにおいてSalmonellaに基づくHPV16ワクチンを試験するための主な制限の一つは、単一の弱毒化突然変異(PhoQ24(27))を内部に有するPhoPc株の報告された可逆性およびマウスにおいて効果的な抗VLP応答を誘導するためのこの表現型の必要性であった(3, 4)。
【0015】
弱毒化突然変異がS. typhiで試験されたその他のS. typhimurium株(χ4989、PhoP”およびaroA)、およびヒトにおいて安全であることが示されたS. typhimurium株(χ4632(30, 39)、Ty800(15)およびCVD908−htrA(40))は、経鼻ワクチン接種後にマウスに抗VLP応答を誘導できることを本明細書において示す。しかし、その力価は、PhoPc株により誘導される力価よりも1または2オーダー低く、これは、本発明者らの以前の結果と一致している(3, 4)。PhoQ24の発現(3)が新しいL1Sリコンビナント株の免疫原性を増強できるかどうかは、まだ試験されていない。経口免疫処置は経鼻免疫処置よりも有効ではなかったが、AeroA L1Sの免疫原性は経口経路によりあまり影響されなかった。Aro欠失(CVD908htrA)を内部に有するS.typhiワクチン株がヒトにおいて安全性および免疫原性の最高記録を有することから、この結果は大いに勇気づけるものである((13, 21および33)に総説されている)。このように、リコンビナントCVD908htrA L1S株は、HPV16感染および関連病変の予防についてヒト志願者に試験する、最高の候補経口生ワクチンとなりうる。
【0016】
全世界で適応性を有する、子宮頚ガンに対する予防ワクチンの発生は、長年の我々の大きな目標であった。本明細書において、Salmonellaに基づくワクチンの開発における最終的な改良、すなわち許容される選択マーカーおよびおよび安全なワクチン株の同定を報告し、この改良は、女性における当該ワクチンの試験を今や可能にするであろう。リコンビナント細菌ワクチンの開発は、選択マーカーの使用を通常必要とする。不幸にも、PhoPcにおけるL1S発現を安定化するためにアスパラギン酸β−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ平衡致死ベクター−宿主系を使用するという試み[Curtiss, 1990 #59]は、VLP特異的免疫応答の誘導に全く失敗した(データは示さず)。したがって、確立された生体安全性の成績を有し、使用がFDAにより認可された抗生物質選択マーカー、すなわちカナマイシンを選択した[政府、1994 #1522]。カナマイシン選択マーカーは、その生物に研究室外で選択上の利点を全く与えないであろうし、この表現型は自然界ですでに極めて遍在性である。実際に、カナマイシンに対する細菌の耐性が広範囲であることが、ヒトの医療への本抗生物質の使用を限定し、その酵素の高い基質特異性は、耐性の発現も、最新抗生物質療法に対する妨害もないことを正当化する。興味深いことに、カナマイシン耐性遺伝子の存在は、PhoPcにおけるL1S発現プラスミドのin vivo安定性をさらに改善したが、kan L1Sプラスミドを内部に有する三つの弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimuriumの経口免疫処置により誘導された免疫応答は、アンピシリンL1Sプラスミドを内部に有する細菌で得られた免疫応答と同様であった[Baud, 2004 #1439]。
【0017】
ヒトにおいてリコンビナントワクチンとして試験されたSalmonella enterica serovar Typhimurium PhoP−株[Angelakopoulos, 2000 #1194]を例外として、これらのSalmonellaに基づくワクチンは、腸チフスに対するワクチンとして最初に開発された弱毒化Salmonella enterica serovar Typhi株である([Levine, 2001 #1428]に総説されている)。候補腸チフスワクチンの二つ、すなわちTy800[Hohmann, 1996 #596]およびCVD908htrA[Tacket, 1997 #643]は、Typhimurium株(PhoP−およびAroA)と同経路(それぞれPhoPQおよびaro)に弱毒化を有し、本明細書においてHPV16 VLPについての潜在的なワクチン担体として選択された。さらに、認可ワクチンTy21aも試験した。三つのリコンビナント株のin vitro分析は、VLPの類似の発現レベルと、kan L1SプラスミドがTyphimurium株中よりもTyphi株中で安定性が低いが、PhoPc中のampプラスミドよりも安定であるという意味での、プラスミドの相対的な不安定性とを明らかにした[Baud, 2004 #1439]。プラスミドをコードするウレアーゼが使用された場合に、TyphimuriumではなくTyphi中でプラスミドが不安定であることも観察された[Angelakopoulos, 2000 #1194]。高用量でマウスに鼻腔内投与された弱毒化Salmonella enterica serovar Typhiは、弱毒化株を経口的に与えられた志願者で観察された免疫応答と同様の一連の免疫応答を誘発する([Pasetti, 2003 #1404]に総説されている)。これは、Salmonella生ワクチン候補の免疫原性および効力を前臨床的に評価するためにこの小動物モデルを使用することを支持している。kan L1Sプラスミドのin vivo安定性を研究するために最初に本モデルを使用した。比較的高い数の細菌が免疫処置の1週間後に肺から回収されたが、これは、深い麻酔下の経鼻ワクチン接種で実現された肺への優れたターゲティングを反映しており[Balmelli, 1998 #930; Londono-Arcila, 2002 #1526]、一方で、以前の研究[Pasetti, 2000 #1494; Lee, 2000 #1530; Pickett, 2000 #1158]と一致してこの遅い時点では脾臓からほとんど全く細菌が回収されなかった。kan L1Sプラスミドは回収された全てのTy21a細菌から見い出されたが、CVD908htrA細菌およびTy800細菌の少数にしかこのプラスミドは存在していなかった。知る限りでは、マウス経鼻モデルにおけるリコンビナントTy800を用いた実験は以前に報告されていなかったが、Ty21a[Gentschev, 2004 #1531]およびCVD908htrA[Londono-Arcila, 2002 #1526]の両方でプラスミド安定性が以前に観察されていた。CVD908htrAにおいてkan L1Sが特に不安定であることは、その他のリコンビナントCVD908htrA株に一般に使用されたin vivo誘導性nirBプロモーターの代わりに、我々のプラスミドに構成性プロモーターが存在することに関係しうる[Wang, 2001 #1533; Londono-Arcila, 2002 #1526; Ruiz-Perez, 2002 #1532]。CVC908htrAおよびTy800におけるkan L1Sの不安定性は、HVP16 VLPに対するこれらの細菌の低免疫原性と関係しているおそれがある。我々のデータは、リコンビナントTy21a kan L1Sだけが、マウス経鼻様式で高い抗HPV16 VLP抗体およびVLP特異的CD4+T細胞応答を誘導できることを明らかに示す。対照的に、CVD908htrAおよびTy800の両方が、Ty21aよりもより高い抗LPS抗体および抗フラジェリン抗体、ならびにフラジェリン特異的CD4 T細胞応答(Ty800に関する)を誘導した。この結果は、マウス経鼻モデル[Wang, 2001 #1533またはヒトにおいてCVD908htrAおよび/またはTy800とTy21aとが比較された以前の研究と一致している。
【0018】
本発明の態様は、HPV16、HPV18、45 31などのHPV(ヒトパピローマウイルス)の主要キャプシドタンパク質のコドンを改変することによる、それらのタンパク質に基づく新規な核酸配列の合成に関するものである。この改変は、原核微生物にトランスフォーメーションされて、結果として生じた原核微生物の免疫原性改善を目的とされたた場合に、リコンビナントプラスミドベクターの安定性を最適にするためのものである。この原核微生物は、Salmonella sps、Escherichia coli、Shigella yersinia、Lactobacillus、Mycobacteria、またはLysteriaからなる群より、好ましくはSalmonella sps.より好ましくは選択される。さらに、Salmonella spsの弱毒化株は、Salmonella enterica serovar Typhimurium、Salmonella typhi、Salmonella typhimuriumまたはSalmonella dublinからなる群より選択される。そのうえ、このSalmonella株は、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoPc(CS022)、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoP−(CS015)、Salmonella enterica serovar Typhimurium χ4989(ΔcyaΔcrp−cdtおよびΔaroA(SL7207));ならびにSalmonella enterica serovar Typhi、Ty21a、CVD908htrA、およびTy800からなる群より好ましくは選択される。
【0019】
本発明のなお別の態様は、ヒトパピローマウイルス16型(HPV16)に対する原核微生物の免疫原性を改善するための方法に関するものであり、その方法は以下の工程を含む:
a. コドン使用頻度を改変することにより、抗原性HPV16 L1タンパク質をコードする配列番号1に示された新規な核酸を合成すること、
b. プラスミドベクターpFS14nsdHPV16L1またはpFS14nsdHPV16kanL1S中の本来のHPV16 L1遺伝子を置換することにより、配列番号1を内部に有するリコンビナントpFS14nsdHPV16L1Sを構築すること、
c. 段階(b)からのリコンビナントプラスミドベクターを弱毒化微生物に導入してリコンビナント接種材料を得ること、
d. マウスにリコンビナント接種材料を投与すること。
【0020】
別の態様は、HPV(ヒトパピローマウイルス)主要キャプシドタンパク質をコードする、コドン改変された核酸でトランスフォーメーションされて、対応するタンパク質を発現している原核微生物の弱毒化株に関するものであり、この核酸において少なくとも一つのコドンが改変されている。HPV主要キャプシドタンパク質は、HPV16、HPV18、HPV31およびHPV45から、好ましくはHPV16 L1からなる群より選択される。上記株は、新規な核酸配列である配列番号1を内部に有する。
【0021】
本発明のなお別の態様は、Salmonella株におけるリコンビナントプラスミドベクターの安定性を最適にするための、一つまたは複数の改変されたコドンを有する新規な核酸に関するものであり、その改変されたコドンは、結果として生じたSalmonella株の免疫原性を改善するためのものである。好ましくは、本発明においてHPV16 L1配列中の本来のコドン506個のうち163個が変更されている。
【0022】
本発明のなお別の態様は、配列番号1に示されるDNA配列を含むリコンビナントプラスミドベクターを提供し、ここで、前記リコンビナントプラスミドベクターは、pFS14nsd−HPV16L1SまたはpFSnsd−HPV16kanL1Sのいずれかである。
【0023】
本発明の別の態様は、Salmonellaに基づくHPV16ワクチンの投与様式に関するものであり、その投与様式は、経口、鼻腔内、膣内、または直腸内からなる群より選択することができる。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの予防的または治療的処置のための薬剤の調製への、原核微生物の弱毒化株の使用を提供する。
【0025】
例として、および添付の図面の参照に限定せずに、本発明の好ましい態様を以下に説明する。本発明の態様
【0026】
実施例
実施例1
プラスミドの構築および使用した細菌株
L1S遺伝子をMicrosynth(Buchs, Switzerland)により合成した。そのオープンリーディングフレームには5’にNcoI制限部位が、3’にHindIIIが隣接した。L1S NcoI−HindIIIフラグメントを、プラスミドpFS14nsdHPV16−L1の本来のL1 NcoI−HindIIIフラグメント代わりに挿入した(31)。結果として生じたプラスミドpFS14nsdHPV16−L1Sを弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimurium株であるPhoPc(CS022(27))およびPhoP”(CS015(26))(共にJohn Mekalanos, Boston, USAから親切に分与いただいた)、x4989(Acya Acrp,(4))、x4990(Acya Acrp-cdt, (4))およびAaroA(SL7207(16))(Irene Corthesy-Theulaz, Lausanne, CHから親切に分与いただいた)にエレクトロポレーション(37)により導入した。
【0027】
HPV16 L1およびVLPの分析
抗HPV16 L1 mAbであるCAMVIR−1(Anawa)を用いて、以前に記載されたように15(31)ウエスタンブロットによりSalmonella溶解液中のL1の発現を分析した。培養物のCD600により測定された細菌含量に対してデータを基準化した。HPV16 VLP上のコンフォメーションエピトープを認識する二つのモノクローナル抗体H16E70およびH16V5を使用して、以前に記載された(4)サンドイッチELISAによりHPV16 VLPの含量を測定した、(9)。20。
【0028】
マウスの免疫処置、免疫応答の分析、およびS. typhimuriumの回収
Iffa Credo、フランスからの6週齢雌性BALB/cマウスを全ての実験に使用した。以前に記載された(17, 31)、麻酔下で細菌接種材料20JLLIを経口(108〜9CFU)投与または鼻腔内(1067CFU)投与した。血液および膣洗浄液の採取、ならびにELISAによる抗HPV16 VLP抗体力価の決定を、先に報告されたように実施した(17, 31)。以前に記載されたように、安楽死させたマウス由来の器官におけるSalmonella enterica serovar Typhimuriumの回収を決定した(31)。
【0029】
Salmonellaにおける翻訳について最適化されたコドンを有するHPV16 L1のヌクレオチド配列の設計
最適化されたL1オープンリーディングフレーム(orf)を設計するために、Salmonella enterica serovar. Typhimuriumの主要内因性タンパク質(7,14)の翻訳に使用されるコドンを考慮した。本来のHPV16 L1配列(HPV16 114/B(18))のコドン506個のうち、163個をSalmonellaで最も頻繁に使用されているコドンに改変した(図1−配列番号1参照)。これには、Salmonellaにまれにしか見出されない本来のL1配列のコドンの全て(136個)およびあまり頻繁に使用されないコドンの一部(27/72個)が含まれた。次に、プラスミドpFS14nsd−HPV16L1(31)中のL1のorfを新しいL1Sのorfに置換して、pFS14nsd−HPV16L1Sを得た。この新しいプラスミドを弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimurium株PhoPc(27)にまず導入して、以後PhoPcL1Sと呼ばれるリコンビナント株を発生させた。その他のL1Sリコンビナント弱毒化Salmonellaの4株をその後産生させた(本明細書の以下を参照)。表1に、本研究に使用した種々の株および略語を要約する。
【0030】
HPV16 L1およびVLPの発現
PhoPcL1およびPhoPcL1Sの対数増殖期培養物の溶解液中でのL1タンパク質の発現をウエスタンブロットにより比較した(図2A参照)。驚くことに、細菌培養物中のL1の発現は、新しいL1S配列では改善せず、むしろ2分の1に減少した(図2B)。二つのリコンビナント株で産生されたVLPの量をサンドイッチELISAにより比較した場合、この結果が確認された(図2C参照)。LB50mlにコロニー1個を接種した後の対数中期に達するまでの時間を比較した場合、二つの株の成長速度に著しい差が認められた(PhoPcL1Sについて約7時間およびPhoPcL1について約15時間)。これは、対応する同族tRNAに関するL1の最適化されたコドン使用頻度により、成長速度が最大になったが、L1Sの翻訳は同時に増加しなかったことを示唆しうる。
【0031】
L1Sをコードするプラスミドのin vitroおよびin vivo安定性
本発明者は、抗生物質による選択の不在下ではSalmonellaにおけるL1をコードする本来のプラスミドはプラスミド分離によりin vivoで速やかに失われたと以前に報告した(4,31)。L1SをコードするプラスミドおよびL1をコードするプラスミドの安定性をまずin vitroで比較した。このために、L1をコードするプラスミドまたはL1Sをコードするプラスミドをまだ内部に有する細菌の率を、抗生物質による選択の不在下で4回連続のO/N培養の間に比較した(図3参照)。予想通り、L1をコードするプラスミドは速やかに失われた。対照的に、L1Sをコードするプラスミドは、抗生物質による選択の不在下で約50世代時間の後でも大部分の細菌から回収された。マウスに経鼻および経口免疫処置した後の、L1Sをコードするプラスミドの安定性をさらにin vivoで検討した(表2参照)。L1をコードする本来のプラスミド(4)とは対照的に、L1Sをコードするプラスミドは、感染/侵入部位に近い器官で少なくとも2週間完全に安定であった。しかし、脾臓などのさらに離れた器官ではL1Sプラスミドの不安定性が幾分観察された。脾臓ではこれらの細菌の約10%がL1Sプラスミドをまだ内部に有したが、L1プラスミドを内部に有するものは全く検出されなかった。in vitroで観察されたこれらの細菌のより速い成長能にかかわらず、L1Sを内部に有する細菌の侵入性または残留性がより高いという証拠がないことにも留意すべきである。
【0032】
PhoPcL1Sの経鼻または経口ワクチン接種後の全身および粘膜の抗HPV16 VLP抗体産生
最終目標は、Salmonella enterica serovar TyphimuriumにおいてHPV16 L1S遺伝子の発現がHPV16 VLP抗原の免疫原性を改善するかどうかを試験することであった。したがって、PhoPcL1S株を用いて、経鼻または経口経路で雌性BALB/cマウスの群を免疫処置した。単回免疫処置の4から6、8および24週間後のマウスの血清および膣分泌物中から測定された抗VLP抗体力価を図4に示す。単回経鼻ワクチン接種は、血清中に高い長期持続性の抗HPV16 VLP IgG力価および膣洗浄液中に特異的IgGおよびIgA力価を誘導した。これらの抗体力価は、本来のPhoPcL1株を2回経鼻ワクチン接種した後に誘導された力価と同様であるが、主な改善は、これらの力価が本来のPhoPcL1株を用いた単回経鼻ワクチン接種で実現された力価よりも1から2オーダー高いことである(4, 31)。興味深いことに、経鼻ワクチン接種よりも低いものの、PhoPcL1Sを用いた経口ワクチン接種も高度に免疫原性であった。一方で、本来のPhoPc株を2回経口ワクチン接種しても無効であった(31)。PhoPcL1Sの2回経鼻投与または3回経口投与(データは示さず)により、免疫応答は増加しなかった。
【0033】
異なって弱毒化された、HPV16 L1S遺伝子を発現しているSalmonella enterica serovar Typhimurium株を用いた経鼻または経口ワクチン接種後の全身抗HPV16 VLP抗体
本発明者は、異なって弱毒化された、L1をコードする本来のプラスミドを発現しているSalmonella enterica serovar Typhimurium株をマウスに経鼻ワクチン接種することで、抗HPV16 VLP抗体が低くしか、または全く誘導されなかったことを以前に示した(4)。L1Sをコードするプラスミドを発現しているPhoPc株で観察された高い免疫原性を考えて、%4989、Λ4990、PhoP”およびAroAを含めた種々の株に本プラスミドをさらに導入した(正確な弱毒化、略語および参照については表1を参照されたい)。これらの新しいリコンビナント株を単回経鼻または経口ワクチン接種した7週間後にマウスにおいて測定された抗HVP16 VLP IgG力価を図5に示す。我々の以前の観察とは対照的に、新しいリコンビナント株の全ては、単回経鼻ワクチン接種後に一貫した抗HPV16 VLP体液性応答を誘導したが、これらの力価はPhoPcL1S株で実現された力価よりも約1オーダー低い(図4参照)。両経路のワクチン接種後に類似した抗HPV16 VLP IgG力価を誘導したAroAL1S株を除いて、予想通り、免疫原性は経口ワクチン接種の方が低かった。
【0034】
実施例2
プラスミド構築および使用した細菌株
プラスミドpFS14nsdHPV16−L1S[Baud, 2004 #1439]において、アンピシリン耐性コード配列を以下のようにカナマイシン耐性コード配列に置換した。テンプレートとしてpET−9a(Novagen)プラスミドDNAを使用した。PCRにより、カナマイシンコード配列およびプロモーターを含むSacII−XbaIフラグメントを発生させた。使用したプライマーは、カナマイシンの最初のATGから54ヌクレオチド上流に位置する、SacII制限部位(下線部)を含む25塩基:
【0035】
【表1】
【0036】
およびXbaI制限部位(下線部)を含む28塩基:
【0037】
【表2】
【0038】
であった。pFS14nsdHPV16−L1Sプラスミド配列全体を含むが、アンピシリン耐性遺伝子を欠く、別の大きなSacII−XbaIフラグメントを、Expand High Fedelity PCR(Roche Molecular Biochemicals)を用いた逆PCRにより、以下のプライマーを用いて発生させた:アンピシリンのATGから92ヌクレオチド上流に位置する、SacII部位(下線部)を含む28塩基
【0039】
【表3】
【0040】
およびXbaI部位(下線部)およびアンピシリンの停止コドン(太字)を含む28塩基。
【0041】
【表4】
【0042】
これら二つのSacII−XbaIフラグメントを一緒に連結してプラスミドpFS14nsd−kan3−HPV16−L1Sを発生させた。この新しいプラスミドをエレクトロポレーション[Schodel, 1990b #242]により弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimurium株であるPhoPc(CS022 [Miller, 1990 #181])およびPhoP−(CS015 [Miller, 1989 #178])、およびΔaroA(SL7207[Hoiseth, 1981 #123])に、ならびに弱毒化Salmonella enterica serovar Typhi Ty800[Hohmann, 1996 #596]、CVD908htrA[Tacket, 1997 #643]、およびTy21a([Germanier, 1975 #103], Berna biotech, Switzerland)に導入した。
【0043】
HPV16 L1およびVLPの分析
抗HPV16 L1 mAbであるCAMVIR−1(Anawa)を使用して、以前に記載されたように[Nardellihaefliger, 1997 #742]ウエスタンブロットにより、Salmonella溶解液中のL1の発現を分析した。細菌中の含量に対してデータを基準化した。HPV16 VLP上のコンフォメーションエピトープを認識する二つのモノクローナル抗体であるH16E70またはH161Aと、H16V5とを使用して、以前に記載されたように[Benyacoub, 1999 #1050]、サンドイッチELISAによりHPV16 VLPの含量を測定した。
【0044】
マウスの免疫処置、抗HPV16 VLP抗体の分析およびSalmonellaの回収
Iffa Credo、フランスからの6週齢雌性BALB/cマウスを全ての実験に使用した。以前に記載されたように[Hopkins, 1995 #381; Nardellihaefliger, 1997 #742]、細菌接種材料20μlを麻酔下で経口(109CFU)または鼻腔内(107〜9CFU)投与した。先に報告されたように[Hopkins, 1995 #381; Nardellihaefliger, 1997 #742]、血液および膣洗浄液の採取ならびにELISAによる抗HPV16 VLP抗体力価の決定を行った。以前に記載されたように[Nardellihaefliger, 1997 #742]、安楽死させたマウスからの器官でのSalmonella enterica serovar TyphimuriumまたはSalmonella enterica serovar Typhiの回収を決定した。
【0045】
中和アッセイ
[Pastrana DV, 2004 #1429]に詳細に記載されているように、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)HPV16シュードウイルスを用いて中和アッセイを行った。簡潔には、optiprepで精製して2000倍に希釈したSEAP HPV16シュードウイルスを血清で2倍系列希釈して、氷冷しながら1時間インキュベーションして、このシュードウイルス−抗体混合物を使用して293TT細胞に3日間感染させた。清澄にした細胞上清10μl中のSEAP含量をGreat ESCAPE SEAP化学ルミネセンスキット(BD Clontech)を使用して決定した。SEAP活性に少なくとも50%の現象を引き起こす最高の血清希釈倍率として中和力価を定義した(SEAP活性100%は50から100相対光単位の範囲)。
【0046】
増殖アッセイ
以前に記載されたように[Balmelli, 2002 #1357]、機械的解離により脾臓細胞を単離した。製造業者の使用説明書により抗CD4+を被覆したマイクロビーズ(Miltenyi Biotec, Galdbach, Germany)を用いた磁気抗体細胞ソーティング(MACS)によりCD4+T細胞を精製した。陰性および陽性対照として培地単独と共に、またはコンカナバリンA(2.5μg/ml)と共に、ならびにHPV16 VLP(2μg/ml、GMP調製物)およびフラジェリン(10μg/ml、Ty21aから精製)と共に、ナイーブマウスまたは免疫処置されたマウス由来のCD4+T細胞を3日間インキュベーションして、0.5μキュリーの3Hチミジンを一晩添加して、取込みをcpm単位で測定した。
【0047】
カナマイシン耐性PhoPc株におけるHPV16 L1Sの発現およびプラスミド安定性
本来のpFSnsdHPV16L1S[Baud, 2004 #1439]中のアンピシリン耐性遺伝子をカナマイシン選択マーカーに置換することによって、HPV16 L1Sを発現しているカナマイシン耐性プラスミドを構築した。逆PCR戦略を使用して、アンピシリン耐性遺伝子配列に隣接するプラスミド全体を増幅させ、結果として得られたフラグメントを、カナマイシン耐性をコードする配列に連結した(詳細は材料および方法を参照)。結果として得られたプラスミドをpFSnsd−kanL1Sと呼び、PhoPcにエレクトロポレーションさせてPhoPc−kanL1Sを得た(本研究で用いた株の略語および参照については表1A参照)。予想通り、この新しい株におけるHPV16 VLPのin vitro発現は、アンピシリン耐性株PhoPc−L1S(約10μgVLP/1011CFU, [Baud, 2004 #1439])で測定された発現と同様であった。これら2株の間でもまた、同様の成長速度が観察され、対数増殖中期まで約7時間であり、プラスミド安定性は非常に高く、抗生物質の不在下で4晩連続して培養後にプラスミドをまだ内部に有する細菌はほとんど100%であった。kan L1Sプラスミドの安定性は、アンピシリンプラスミドに比較してin vivoで増加して、全ての細菌が経口免疫処置の2週間後にkan L1Sプラスミドを内部に有し、これは検査した全ての器官にあてはまった(表2A参照)。
【0048】
kan L1SをコードするプラスミドをもつPhoPc、PhoP−およびAroAを経口免疫処置後の抗HPV16 VLP体液性応答
弱毒化Salmonella enterica serovar Typhimuriumの2株であるPhoP−およびAroAにkan L1Sプラスミドをさらに導入した(表1A参照)。Salmonella enterica serovar Typhiワクチン株におけるこれらの株の弱毒化突然変異は、ヒトにおいて安全であるとすでに示されている。リコンビナントSalmonella enterica serovar Typhimuriumの3株を経口経路によりマウス5〜10匹の3群に1回免疫処置して、血清および膣洗浄液中のHPV16 VLP特異的抗体応答を免疫処置の6週間後に比較する(図6参照)。興味深いことに、AroAkanL1S株により誘導された抗VLP抗体力価は、PhoPckanL1S株および以前のPhoPcL1S株により誘導された力価と同様に高いと思われる[Baud, 2004 #1439]。これらの抗体力価は、少なくとも4か月間安定であった(データは示さず)。対照的に、PhoP−kanL1sにより誘導された抗VLP抗体力価は、Phop−L1Sで以前に報告されたように[Baud, 2004 #1439]低い。PhoPcおよびAroakanL1Sを免疫処置されたマウスの膣分泌物中にもHPV16 VLP特異的IgGおよびIgAが誘導されたが、PhoP−kanL1Sの後には何も検出されなかった。経口免疫処置を使用してマウスモデルで得られたこれらのデータは、Δaro欠失を内部に有するリコンビナントSalmonella enterica serovar TyphiがΔPhoP/phoQ欠失を内部に有する細菌よりも免疫原性が高くありうることを示唆している。
【0049】
三つのSalmonella enterica serovar Typhiワクチン株におけるkan L1Sプラスミドの発現および安定性
本発明者らに入手可能であった三つのSalmonella enterica serovar Typhiワクチン株、すなわちTy800(ΔPhoP/phoQ, [Hohmann, 1996 #596])、CVD908−htrA(ΔaroC、ΔaroD、htraA[Tacket, 1997 #643])および認可された腸チフスワクチン株Ty21a[Germanier, 1975 #103]にkan L1Sプラスミドを導入した(略語および参照については表1Aを参照されたい)。VLPのin vitro発現は、これら3株で同様であった(20から30μg VLP/1011CFU)。抗生物質不在下でのこれら三つのワクチン株におけるkan L1Sプラスミドの安定性を、まずin vitroで検討した(図7参照)。Salmonella enterica serovar Typhimurium株を用いた以前の結果とは対照的に、ワクチン株ではkan L1Sが低安定性であることが観察された。2晩目の後でプラスミドの緩やかな喪失が起こったが、5晩連続の後で、Ty21akanL1S、Ty800kanL1SおよびCVD908−htrAkanL1Sで細菌のそれぞれ9、7および18%にプラスミドは依然として保持されていた。Salmonella enterica serovar Typhiワクチン株は、ヒトにおいて限定された循環または複製だけを経るのであろう。そして、これらの株はマウスにおいて経口経路では侵入性ではない。リコンビナントCVD908htrAで示されたように[Pickett, 2000 #1158][Pasetti, 2000 #1494]、これらの細菌を経鼻経路により高用量で投与するならば、マウスを一過性に感染することができる。このように、109CFUのCVD908−htrAkanL1SおよびTy21akanL1Sまたは107CFUのTy800kanL1Sを鼻腔内免疫処置した1週間後のマウスの肺および脾臓から回収されたSalmonellaにおけるkan L1Sプラスミドの安定性を検討した。この後者の株は、低用量で投与しなければならなかった。それは、ブタ胃ムチンと共にそのようなPhoPQ欠失細菌をマウスに腹腔内注射した後の以前の結果と一致して[Baker, 1997 #659]、低用量で投与しないと、この株はマウスに致死的であったからである。興味深いことに、Ty21akanL1Sを免疫処置後に肺から回収された全ての細菌がkan L1Sを内部に有したが、Ty800kanL1SおよびCVD908−htrAkanL1Sの免疫処置後に、少数(それぞれ7.9および0.8%)がkan L1Sプラスミドを内部に有した(表3参照)。これは、経鼻マウスモデルにおいて、試験された他のSalmonella enterica serovan Typhiワクチン株よりもTy21a中の方がkan L1Sプラスミドが安定であることを示している。
【0050】
鼻腔内マウスモデルにおいてHPV16 VLPを発現しているSalmonella enterica serovar Typhiワクチン株により誘導された体液性および細胞性免疫応答
三つのリコンビナントSalmonella enterica serovar Typhi株の免疫原性を、5〜0匹の雌性BALB/cマウスの群で1か月間隔を空けた鼻腔内の2回投与後に評価した(CVD908−htraおよびTy21aリコンビナント株について109CFUならびにTy800リコンビナント株について107CFU)。異種HPV16 VLP抗原に対するIgG力価ならびに二つの同種抗原LPSおよびフラジェリンに対するIgG力価を8週間にわたり血清から測定した(図8参照)。興味深いことに、Ty21akanL1Sの2回免疫処置後に初めて高い抗VLP IgG力価が誘導されたが、その他の2株により低いか、またはほとんど検出できない力価が誘導された。対照的に、Ty800kanL1SおよびCVD908htrakanL1Sは、Ty21kanL1Sよりも高い抗LPS IgGおよび抗フラジェリンIgG力価を誘導した(8週間目でp<0.01)。これは、二つの前者リコンビナントカブがマウスにうまく感染して、同種抗原に対する体液性応答を誘導したことを示している。
【0051】
高い抗体力価の発生および維持し関与するTヘルパー応答、したがって、フラジェリンおよびHPV16 VLPに対する細胞性免疫応答も検討した。免疫処置の8週間後にマウスを屠殺して、脾臓から精製したCD4+T細胞を用いて抗原特異的増殖を測定した(図9参照)。抗HPV16 VLP力価の誘導に一致して、HPV16 VLPによるCD4+T細胞の刺激は、Ty21akanL1Sを用いた鼻腔内ワクチン接種2回の後になって初めて有意に誘導された(p<0.001)。対照的に、フラジェリン特異的なCD4+T細胞の有意な刺激は、Ty800kanL1Sを用いたワクチン接触後にのみ測定された(p<0.001)。
【0052】
Ty21akanL1S単独を免疫処置されたマウスまたは皮下VLP投与で感作されたマウスの血清および性器分泌物中でHPV16中和力価は誘導される
0および4週間目に雌性BALB/cマウス5匹の追加の群に経鼻Ty21kanL1S(約109CFU)の2回の投与を受けさせ、血液および膣分泌物の採取を8週間目に行った。抗HPV16 VLP中和抗体および抗HPV中和抗体の力価を、血清および膣分泌物の両方でELISAおよびSEAP HPV16シュードビリン中和アッセイによりそれぞれ決定した(図10参照)。リコンビナントSalmonella enterica serovar typhimurium L1S株を用いた免疫処置後に以前に報告されたように、HPV16中和力価は抗VLP ELISA力価よりもやや低かった[Baud, 2004 #1439]。さらに、抗HPV16 VLP IgGおよびIgAが膣分泌物中に誘導され、これらの分泌物がHPV16中和抗体を含有することを本明細書に示す(図10−B参照)。精製VLP1μgを用いた皮下(s.c.)感作がTy21kanL1Sを用いた最適以下の免疫処置(すなわち109CFUの単回経鼻投与)により誘導される免疫応答に及ぼす効果も研究した。データ(図11)は、実際にVLP1μgを用いたs.c.感作の結果として、Ty21kanL1Sを用いた単回経鼻追加免疫後に血清抗VLP IgG力価の有意な増加が生じたことを示している(VLPによる感作なしに比べてp<0.01)。対照的に、誘導された、膣の抗VLP IgGに統計的な差はないが、VLPおよびTy21kanL1Sの両方が投与された場合にのみ、膣に抗VLP IgAが誘導された。中和力価は今後決定。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
【表10】
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】コドン最適化されたHPV16 L1S orf(配列番号1)を示す図である。L1Sのヌクレオチド配列を、下線部の改変コドンおよび太字の改変ヌクレオチドと共に示す。
【図2A】PhoPcL1およびPhoPcL1Sリコンビナント株におけるHPV16 L1の発現を示す図である。
【図2B】PhoPcL1およびPhoPcL1Sリコンビナント株におけるHPV16 L1の発現を示す図である。
【図2C】PhoPcL1およびPhoPcL1Sリコンビナント株におけるHPV16 L1の発現を示す図である。
【図3】L1プラスミドおよびL1Sプラスミドのin vitro安定性を示す図である。
【図4A】PhoPcL1Sを経鼻および経口ワクチン接種後の全身(A)および膣(B)の抗HPV16 VLP抗体力価を示す図である。
【図4B】PhoPcL1Sを経鼻および経口ワクチン接種後の全身(A)および膣(B)の抗HPV16 VLP抗体力価を示す図である。
【図5】%4989L1S、x4990L1S、PhoP”L1SおよびAroAL1Sを経鼻または経口ワクチン接種後の全身抗HPV16 VLP IgG力価を示す図である。
【図6A】PhoPckanL1S、Phop−kanL1SおよびΔAroAkanL1Sを経口ワクチン接種後の血清抗HPV16 VLP抗体力価の比較を示す図である。
【図6B】PhoPckanL1S、Phop−kanL1SおよびΔAroAkanL1Sを経口ワクチン接種後の血清抗HPV16 VLP抗体力価の比較を示す図である。
【図7】Salmonella enterica serovar Typhiの種々の株におけるkan L1Sプラスミドのin vitro安定性を示す図である。
【図8A】Ty21akanL1S、Ty800kanL1SおよびCVD908htrAkanL1Sを経鼻ワクチン接種後の血清抗HPV16 VLP抗体力価の比較を示す図である。
【図8B】Ty21akanL1S、Ty800kanL1SおよびCVD908htrAkanL1Sを経鼻ワクチン接種後の血清抗HPV16 VLP抗体力価の比較を示す図である。
【図9A】HPV16 VLPおよびフラジェリンに特異的なCD4+T細胞増殖の比較を示す図である。
【図9B】HPV16 VLPおよびフラジェリンに特異的なCD4+T細胞増殖の比較を示す図である。
【図10A】Ty21akanL1Sを経鼻ワクチン接種されたマウスの血清および膣分泌物中のHPV16中和抗体および抗HPV16 VLP抗体を示す図である。
【図10B】Ty21akanL1Sを経鼻ワクチン接種されたマウスの血清および膣分泌物中のHPV16中和抗体および抗HPV16 VLP抗体を示す図である。
【図11A】Ty21akanL1S単独を経鼻ワクチン接種または精製VLPで感作されたマウスの血清および膣分泌物中のHPV16中和抗体および抗HPV16 VLP抗体を示す図である。
【図11B】Ty21akanL1S単独を経鼻ワクチン接種または精製VLPで感作されたマウスの血清および膣分泌物中のHPV16中和抗体および抗HPV16 VLP抗体を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原性HPV16 L1タンパク質をコードし、野生型配列に比較して一つまたは複数の改変されたコドンを有する、配列番号1に示す新規な核酸配列であって、原核微生物に導入された場合に、該改変された配列が該改変された配列を内部に有するリコンビナントプラスミドベクターを安定化する核酸配列。
【請求項2】
請求項1記載の核酸配列を含むリコンビナントプラスミドベクター。
【請求項3】
pFS14nsd−HPV16L1S、pFSnsd−HPV16kanL1SおよびpFSnsd−kanHinS−HPV16L1Sからなる群より選択される、請求項2記載のリコンビナントプラスミドベクター。
【請求項4】
請求項2記載のリコンビナントプラスミドベクターを含む原核微生物。
【請求項5】
Salmonella sps、Escherichia coli、Shigella、Yyersinia、Lactobacillus、MycobacteriaおよびListeriaからなる群より選択される、請求項4記載の原核微生物。
【請求項6】
Salmonella spsが、Salmonella enterica serover typhi、Salmonella enterica serover typhimurium、Salmonella enterica serover dublinおよびSalmonella enterica serover enteritltidisからなる群より選択される、請求項5記載の原核微生物。
【請求項7】
Salmonella spsの株が、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoPc(CS022)、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoP−(CS015)、Salmonella enterica serovar Typhimurium χ4989(ΔcyaΔcrp−cdtおよびΔaroA(SL7207));ならびにSalmonella enterica serovar Typhi Ty2la、CVD908htrA、およびTy800からなる群より選択される、請求項6記載の原核微生物。
【請求項8】
HPV(ヒトパピローマウイルス)主要キャプシドタンパク質をコードする、コドンを改変された核酸配列を含み、対応するタンパク質を発現しているリコンビナント原核微生物であって、原核微生物に導入された場合に、該改変された核酸配列が該改変された核酸配列を内部に有するリコンビナントプラスミドベクターを安定化するリコンビナント原核微生物。
【請求項9】
弱毒化されている、請求項8記載のリコンビナント原核微生物。
【請求項10】
HPV主要キャプシドタンパク質が、肛門性器ガンを引き起こすHPV株からなる群より選択される、請求項8記載のリコンビナント原核微生物。
【請求項11】
HPV主要キャプシドタンパク質が、HPV株であるHPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV31およびHPV45からなる群より選択される、請求項8記載のリコンビナント原核微生物。
【請求項12】
Salmonella sps、Escherichia coli、Shigella、Yersinia、Lactobacillus、Mycobacteria、およびListeriaからなる群より選択される、請求項8記載のリコンビナント原核微生物。
【請求項13】
Salmonella spsが、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoPc(CS022)、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoP−(CS015)、Salmonella enterica serovar Typhimurium χ4989(ΔcyaΔcrp−cdtおよびΔaroA(SL7207));ならびにSalmonella enterica serovar Typhi Ty2la、CVD908htrA、およびTy800からなる群より選択される、請求項12記載のリコンビナント原核微生物。
【請求項14】
ワクチンとして使用するためのリコンビナント微生物を産生するための、下記:
a. 抗原性HPV16 L1タンパク質をコードする、配列番号1に示す新規な核酸を合成すること、
b. プラスミドベクターpFSl4nsdHPV16L1、pFS14nsdHPV16kanL1またはpFSnsd−kanHinS−HPV16L1における本来のHPV16 L1遺伝子を置換することにより、配列番号1に示す核酸配列を内部に有するリコンビナントプラスミドベクターを構築すること、および
c. 原核微生物に該リコンビナントプラスミドベクターを導入して、リコンビナント微生物を得ること
からなる方法。
【請求項15】
リコンビナントプラスミドベクターの導入がエレクトロポレーションにより行われる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
リコンビナントプラスミドが、pFS14nsdHPV16L1S、pFS14nsdHPV16kanL1SおよびpFSnsd−kanHinS−HPV16L1Sのいずれかである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
原核微生物が、Salmonella sps、Escherichia coli、Shigella、Yersinia、Lactobacillus、Mycobacteria、およびListeriaからなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項18】
Salmonella spsが、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoPc(CS022)、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoP−(CS015)、Salmonella enterica serovar Typhimurium χ4989(ΔcyaΔcrp−cdtおよびΔaroA(SL7207));ならびにSalmonella enterica serovar Typhi Ty21a、CVD908htrA、およびTy800からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの予防的または治療的処置のための薬剤を製造する方法であって、請求項4から12のいずれか一項記載の原核微生物の弱毒化株の使用を含む方法。
【請求項20】
パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの予防的または治療的処置のための薬剤の調製への、請求項4から12のいずれか一項記載の原核微生物の弱毒化株の使用。
【請求項21】
HPV(ヒトパピローマウイルス)主要キャプシドタンパク質をコードする、コドンを改変された核酸からなり、対応するタンパク質を発現しているリコンビナント原核微生物を含むワクチンであって、原核微生物に導入された場合に、該改変された配列が、該改変された配列を内部に有するリコンビナントプラスミドベクターを安定化するワクチン。
【請求項1】
抗原性HPV16 L1タンパク質をコードし、野生型配列に比較して一つまたは複数の改変されたコドンを有する、配列番号1に示す新規な核酸配列であって、原核微生物に導入された場合に、該改変された配列が該改変された配列を内部に有するリコンビナントプラスミドベクターを安定化する核酸配列。
【請求項2】
請求項1記載の核酸配列を含むリコンビナントプラスミドベクター。
【請求項3】
pFS14nsd−HPV16L1S、pFSnsd−HPV16kanL1SおよびpFSnsd−kanHinS−HPV16L1Sからなる群より選択される、請求項2記載のリコンビナントプラスミドベクター。
【請求項4】
請求項2記載のリコンビナントプラスミドベクターを含む原核微生物。
【請求項5】
Salmonella sps、Escherichia coli、Shigella、Yyersinia、Lactobacillus、MycobacteriaおよびListeriaからなる群より選択される、請求項4記載の原核微生物。
【請求項6】
Salmonella spsが、Salmonella enterica serover typhi、Salmonella enterica serover typhimurium、Salmonella enterica serover dublinおよびSalmonella enterica serover enteritltidisからなる群より選択される、請求項5記載の原核微生物。
【請求項7】
Salmonella spsの株が、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoPc(CS022)、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoP−(CS015)、Salmonella enterica serovar Typhimurium χ4989(ΔcyaΔcrp−cdtおよびΔaroA(SL7207));ならびにSalmonella enterica serovar Typhi Ty2la、CVD908htrA、およびTy800からなる群より選択される、請求項6記載の原核微生物。
【請求項8】
HPV(ヒトパピローマウイルス)主要キャプシドタンパク質をコードする、コドンを改変された核酸配列を含み、対応するタンパク質を発現しているリコンビナント原核微生物であって、原核微生物に導入された場合に、該改変された核酸配列が該改変された核酸配列を内部に有するリコンビナントプラスミドベクターを安定化するリコンビナント原核微生物。
【請求項9】
弱毒化されている、請求項8記載のリコンビナント原核微生物。
【請求項10】
HPV主要キャプシドタンパク質が、肛門性器ガンを引き起こすHPV株からなる群より選択される、請求項8記載のリコンビナント原核微生物。
【請求項11】
HPV主要キャプシドタンパク質が、HPV株であるHPV6、HPV11、HPV16、HPV18、HPV31およびHPV45からなる群より選択される、請求項8記載のリコンビナント原核微生物。
【請求項12】
Salmonella sps、Escherichia coli、Shigella、Yersinia、Lactobacillus、Mycobacteria、およびListeriaからなる群より選択される、請求項8記載のリコンビナント原核微生物。
【請求項13】
Salmonella spsが、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoPc(CS022)、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoP−(CS015)、Salmonella enterica serovar Typhimurium χ4989(ΔcyaΔcrp−cdtおよびΔaroA(SL7207));ならびにSalmonella enterica serovar Typhi Ty2la、CVD908htrA、およびTy800からなる群より選択される、請求項12記載のリコンビナント原核微生物。
【請求項14】
ワクチンとして使用するためのリコンビナント微生物を産生するための、下記:
a. 抗原性HPV16 L1タンパク質をコードする、配列番号1に示す新規な核酸を合成すること、
b. プラスミドベクターpFSl4nsdHPV16L1、pFS14nsdHPV16kanL1またはpFSnsd−kanHinS−HPV16L1における本来のHPV16 L1遺伝子を置換することにより、配列番号1に示す核酸配列を内部に有するリコンビナントプラスミドベクターを構築すること、および
c. 原核微生物に該リコンビナントプラスミドベクターを導入して、リコンビナント微生物を得ること
からなる方法。
【請求項15】
リコンビナントプラスミドベクターの導入がエレクトロポレーションにより行われる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
リコンビナントプラスミドが、pFS14nsdHPV16L1S、pFS14nsdHPV16kanL1SおよびpFSnsd−kanHinS−HPV16L1Sのいずれかである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
原核微生物が、Salmonella sps、Escherichia coli、Shigella、Yersinia、Lactobacillus、Mycobacteria、およびListeriaからなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項18】
Salmonella spsが、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoPc(CS022)、Salmonella enterica serovar Typhimurium PhoP−(CS015)、Salmonella enterica serovar Typhimurium χ4989(ΔcyaΔcrp−cdtおよびΔaroA(SL7207));ならびにSalmonella enterica serovar Typhi Ty21a、CVD908htrA、およびTy800からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの予防的または治療的処置のための薬剤を製造する方法であって、請求項4から12のいずれか一項記載の原核微生物の弱毒化株の使用を含む方法。
【請求項20】
パピローマウイルス感染および関連するガンのリスクの予防的または治療的処置のための薬剤の調製への、請求項4から12のいずれか一項記載の原核微生物の弱毒化株の使用。
【請求項21】
HPV(ヒトパピローマウイルス)主要キャプシドタンパク質をコードする、コドンを改変された核酸からなり、対応するタンパク質を発現しているリコンビナント原核微生物を含むワクチンであって、原核微生物に導入された場合に、該改変された配列が、該改変された配列を内部に有するリコンビナントプラスミドベクターを安定化するワクチン。
【図1】
【図2】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2008−504020(P2008−504020A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516066(P2007−516066)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001725
【国際公開番号】WO2005/123762
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506418998)インディアン・イムノロジカルズ・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】INDIAN IMMUNOLOGICALS LTD
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001725
【国際公開番号】WO2005/123762
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506418998)インディアン・イムノロジカルズ・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】INDIAN IMMUNOLOGICALS LTD
【Fターム(参考)】
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