説明

ヒト前立腺癌において発現されるC型レクチン膜貫通抗原およびその使用

【課題】前立腺癌等を効果的に処置すること。
【解決手段】配列番号2のアミノ酸配列をその全長にわたって含むポリペプチドと、賦形剤を含む、免疫応答を誘発するための医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/148,935号(1999年8月12日出願)に対して優先権を主張し、この仮出願の全体が本明細書において参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に記載される発明は、新規な遺伝子およびそのコードされたタンパク質であってPC−LECTINと呼ばれるもの、およびPC−LECTINを発現する種々の癌(特に、前立腺癌)の管理において有用である診断および治療の方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
癌は、冠状動脈疾患に次いで2番目の、ヒトの死の主たる原因である。世界中で何百万の人々が毎年癌で死ぬ。米国のみに限っては、癌は、毎年50万人を優に超える人々の死を引き起こし、140万程の新たな症例が毎年診断されている。心臓疾患からの死が有意に減少してきている一方、癌による死は、概して上昇傾向にある。次の世紀の初期には、癌は、死の主たる原因になることが予想される。
【0004】
世界中で、いくつかの癌が主たる死の原因として突出している。特に、肺癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌、および卵巣癌は、癌による死の主な原因の代表である。これらおよび実質的に全ての他の癌は、共通の致死的特徴を共有する。非常に数少ない例外はあるが、癌に由来する転移性の疾患は、致死的である。さらに、最初にそれらの原発性の癌を生き延びた癌患者についてさえも、それらの生存は劇的に変更されることは、一般的な経験が示している。多くの癌患者は、再発または処置の失敗の可能性を知っていることによりかき立てられる強力な不安を経験する。多くの癌患者は、処置後に身体的な衰弱を経験する。多くの癌患者は、再発を経験する。
【0005】
世界中で、前立腺癌は、男性において4番目に最も蔓延している癌である。これは、北アメリカおよび北ヨーロッパにおいて、これまでに最も一般的な男性の癌であり、そして男性における癌による死の第2位のリーディングケースである。合衆国単独において、40,000人を優に超える男性が、毎年この疾患により死亡しており、肺癌に続く2番目である。これらの数字の大きさにも関わらず、転移性の前立腺癌のための効果的な処置はいまだにない。外科的な前立腺切除、放射線療法、ホルモン切除治療、および化学療法は、主たる治療態様であり続けている。不運にも、これらの処置は、多くの人にとって効果が無く、そしてしばしば所望でない結果に関連している。
【0006】
診断の領域において、初期段階局在化腫瘍を正確に検出し得る前立腺癌マーカーの欠如は、この疾患の管理を依然として有意に制限するものである。血清PSAアッセイは、非常に有用な道具であったが、その特異性および一般的な有用性は、広汎に、いくつかの重要な局面における欠如としてみなされている。
【0007】
前立腺癌のさらなる特異的なマーカーを同定するにおける進展は、マウスにおけるその疾患の異なる段階を再び捕捉し得る前立腺癌異種移植片の生成によって改善されている。
LAPC(Los Angeles Prostate Cancer)異種移植片は、重篤な組み合わせ免疫不全(SCID)マウスにおける継代を生存した前立腺癌異種移植片であり、そして疾患の進行(アンドロゲン依存性からアンドロゲン非依存性への転移および転移病変の発症を含む)を模倣する能力を示している(非特許文献1)。より最近に同定された前立腺癌マーカーには、PCTA−1(非特許文献2)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)(非特許文献3)、およびSTEAP(非特許文献4)が含まれる。
【0008】
以前に同定されたマーカー(例えば、PSA、PSM、PCTA、およびPSCA)は、前立腺癌を診断および処置する努力を促進してきた一方、診断および治療をさらに改善するために、前立腺癌および関連する癌についてのさらなるマーカーおよび治療標的を同定する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kleinら、1997,Nat.Med.3:402
【非特許文献2】Suら、1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7252
【非特許文献3】Reiterら、1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:1735
【非特許文献4】Hubertら、1999,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:14523
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前立腺癌および関連する癌についてのさらなるマーカーおよび治療標的を同定する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(摘要)
(項目1) PC−LECTINポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、上記ポリヌクレオチドが以下からなる群より選択される、ポリヌクレオチド:
(a)図1A〜D(配列番号1)に示される配列を有するポリヌクレオチドであって、TがUでもあり得る、ポリヌクレオチド;
(b)図1A〜D(配列番号1)に示される配列のヌクレオチド残基番号201〜ヌクレオチド残基番号2378を有するポリヌクレオチドであって、TがUでもあり得る、ポリヌクレオチド;
(c)PC−LECTINポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、上記ポリペプチドの配列が、アメリカンタイプカルチャーコレクションに受託番号207152として寄託されたp58P1D12−2と称されるプラスミドに含まれるcDNAによりコードされる、ポリヌクレオチド;
(d)図1A〜D(配列番号2)に示されるアミノ酸配列を有するPC−LECTINタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリヌクレオチドに十分相補的なポリヌクレオチド。
(項目2) 図1A〜D(配列番号2)に示されるアミノ酸配列に対してその長さ全体にわたり少なくとも90%同一であるポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
(項目3) 項目1に記載のポリヌクレオチドのフラグメントであって、以下を含む、ポリヌクレオチド:
(a)図1A〜D(配列番号1)に示される配列の、ヌクレオチド残基番号443〜ヌクレオチド残基番号1018、ヌクレオチド残基番号443〜ヌクレオチド残基番号1201、ヌクレオチド残基番号509〜ヌクレオチド残基番号562、ヌクレオチド残基番号872〜ヌクレオチド残基番号913、またはヌクレオチド残基番号1019〜ヌクレオチド残基番号1087を有する、ポリヌクレオチド;
(b)長さが少なくとも20ヌクレオチド塩基である(a)のポリヌクレオチドのフラグメントである、ポリヌクレオチド;あるいは
(c)(a)または(b)のポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズする、ポリヌクレオチド。
(項目4) PC−LECTINポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、上記ポリペプチドは以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、ポリヌクレオチド:NLTK(配列番号33)、NQST(配列番号34)、RKES(配列番号35)、SSR、SEK、STR、TRK、SFQE(配列番号36)、SDGD(配列番号37)、TRKE(配列番号38)、SGME(配列番号39)、GQKVCF(配列番号40)、GVLLSL(配列番号71)、GTGISD(配列番号42)、GISDGD(配列番号43)、GLWRNG(配列番号44)、GQTSGA(配列番号45)、GSEKCV(配列番号46)、GIIPNL(配列番号47)、GLWRNGDGQTSGAC(配列番号25)、GGPYLYQWNDDRCNM(配列番号26)、EARLACESEGGVLL(配列番号27)、WIGFTYKTA(配列番号6)、ATGEHQAFT(配列番号7)、FGNCVELQA(配列番号8)、NCVELQASA(配列番号9)、およびDNHGFGNCV(配列番号10)。
(項目5) 検出可能なマーカーで標識されている、項目1〜4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
(項目6) 項目1〜4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、組換え発現ベクター。
(項目7) 項目6に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
(項目8) PC−LECTINポリペプチドを生成するためのプロセスであって、項目7に記載の宿主細胞を上記ポリペプチドの生成に十分な条件下で培養する工程を包含する、プロセス。
(項目9) 上記のように生成された上記PC−LECTINポリペプチドを回収する工程をさらに包含する、項目8に記載のプロセス。
(項目10) 項目8に記載のプロセスにより生成された、PC−LECTINポリペプチド。
(項目11) 項目1〜4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドによりコードされるPC−LECTINポリペプチド。
(項目12) 項目11に記載のポリペプチドのうちの少なくとも15個連続するアミノ酸を含む、ポリペプチド。
(項目13) 項目10〜12のいずれか1項に記載のPC−LECTINポリペプチドに特異的に結合する、抗体またはそのフラグメント。
(項目14) モノクローナルである、項目13に記載の抗体またはそのフラグメント。
(項目15) 項目14に記載のモノクローナル抗体の抗原結合領域を含む、組換えタンパク質
(項目16) 検出可能なマーカーで標識されている、項目13もしくは14に記載の抗体またはそのフラグメント、あるいは項目15に記載の組換えタンパク質。
(項目17) 項目16に記載の抗体またはそのフラグメントあるいは組換えタンパク質であって、上記検出可能なマーカーが、放射性同位体、蛍光化合物、生体発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤および酵素からなる群より選択される、抗体またはそのフラグメントあるいは組換えタンパク質。
(項目18) Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、FvフラグメントまたはsFvフラグメントである、項目13に記載の抗体フラグメント。
(項目19) ヒト抗体である、項目13〜18のいずれか1項に記載の抗体またはそのフラグメント。
(項目20) 毒素または治療薬剤に結合体化されている、項目13〜18のいずれか1項に記載の抗体またはそのフラグメント。
(項目21) マウス抗原結合領域残基およびヒト抗体残基を含む、項目13〜16のいずれか1項に記載の抗体。
(項目22) 項目14に記載のモノクローナル抗体を生成する、トランスジェニック動物。
(項目23) 項目14に記載のモノクローナル抗体を生成する、ハイブリドーマ。
(項目24) 項目14に記載のモノクローナル抗体の重鎖の可変ドメインおよび軽鎖の可変ドメインを含む、単鎖モノクローナル抗体。
(項目25) 項目24に記載の単鎖モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを含む、ベクター。
(項目26) 生物学的サンプルにおけるPC−LECTINタンパク質の存在を検出するためのアッセイであって、上記アッセイは、上記サンプルと、項目16または17に記載の抗体またはそのフラグメントあるいは組換えタンパク質とを接触させる工程、および上記抗体またはそのフラグメントあるいは組換えタンパク質への、上記サンプルにおけるPC−LECTINタンパク質の結合を検出する工程、を包含する、アッセイ。
(項目27) 生物学的サンプルにおけるPC−LECTINポリヌクレオチドの存在を検出するためのアッセイであって、上記アッセイは、以下の工程:
(a)上記サンプルと、項目1に記載のポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブとを接触させる工程;および
(b)上記プローブと上記サンプル中のPC−LECTINポリヌクレオチドとの上記ハイブリダイゼーションにより形成されたハイブリダイゼーション複合体の存在を検出する工程であって、上記ハイブリダイゼーション複合体の存在が上記サンプル内のPC−LECTINポリヌクレオチドの存在を示す、工程、
を包含する、アッセイ。
(項目28) 生物学的サンプルにおけるPC−LECTIN mRNAの存在を検出するためのアッセイであって、上記アッセイは、以下:
(a)少なくとも1つのプライマーを用いて逆転写することにより、上記サンプルからcDNAを生成する工程;
(b)上記サンプル中でPC−LECTIN cDNAを増幅するためのセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーとしてPC−LECTINポリヌクレオチドを使用して、上記のように生成した上記cDNAを増幅する工程;
(c)上記増幅したPC−LECTIN cDNAの存在を検出する工程、
を包含し、
上記センスプローブおよびアンチセンスプローブとして使用される上記PC−LECTINポリヌクレオチドが、アメリカンタイプカルチャーコレクションに受託番号207152として寄託されたプラスミドp58P1D12−2内に含まれるPC−LECTIN cDNAを増幅し得る、アッセイ。
(項目29) PC−LECTINタンパク質を発現する癌の存在を検出する方法であって、上記方法は、個体由来の試験組織サンプル中の細胞により発現されたPC−LECTINタンパク質のレベルを決定する工程、および上記のように決定されたレベルを、対応する正常サンプルにおいて発現されたPC−LECTINのレベルと比較する工程を包含し、上記試験サンプルにおける、上記正常サンプルに対して上昇したPC−LECTINタンパク質の存在が、上記個体におけるこのような癌の存在の指標を提供する、方法。
(項目30) PC−LECTIN遺伝子産物をモニターする方法であって、上記方法は、個体由来の試験組織サンプル中の細胞により発現されたPC−LECTIN遺伝子産物の状態を決定する工程、および上記のように決定された上記状態を、対応する正常サンプルにおけるPC−LECTIN遺伝子産物の状態と比較する工程を包含し、上記試験サンプルにおける、上記正常サンプルに対して異常なPC−LECTIN遺伝子産物の存在が上記個体内の細胞増殖の調節不全の指標を提供する、方法。
(項目31) 個体における癌の存在を診断するため方法であって、上記方法は、以下の工程:
(a)上記個体から得られた試験サンプルにおいて発現されたPC−LECTIN mRNAのレベルを決定する工程;および
(b)上記のように決定されたレベルを、既知の比較用正常組織サンプルにおいて発現されたPC−LECTIN mRNAのレベルと比較する工程、
を包含し、上記試験サンプルにおける、上記正常組織サンプルに対して上昇したPC−LECTIN mRNA発現の存在が癌の存在の指標を提供する、方法。
(項目32) 個体における癌の存在を診断するため方法であって、上記方法は、以下の工程:
(a)上記個体から得られた試験サンプルにおいて発現されたPC−LECTINタンパク質のレベルを決定する工程;および
(b)上記のように決定されたレベルを、既知の比較用正常組織サンプルにおいて発現されたPC−LECTINタンパク質のレベルと比較する工程、
を包含し、上記試験サンプルにおける、上記正常組織サンプルに対して上昇したPC−LECTINタンパク質の存在が癌の存在の指標を提供する、方法。
(項目33) 項目31または32に記載の方法であって、上記癌が前立腺癌であり、そして上記試験組織サンプルおよび正常組織サンプルが、前立腺組織、骨組織、リンパ組織、血清、血液および精液からなる群より選択される、方法。
(項目34) PC−LECTINを発現する癌に罹患した患者を処置するための組成物の調製のための、項目25のベクターの使用、項目1に記載のポリヌクレオチドに相補的なアンチセンスポリヌクレオチドの使用、項目1に記載のポリヌクレオチドを切断し得るリボザイムの使用、または項目13〜21のうちのいずれか1項に記載の抗体もしくはそのフラグメントの使用。
(項目35) PC−LECTINを発現する癌を処置するための組成物の調製のための、項目10もしくは11に記載のPC−LECTINポリペプチドまたはその免疫原性部分の使用。
(項目36) 項目34または35に記載の使用であって、上記癌が、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、骨の癌、結腸癌、膵臓癌、精巣癌、子宮頸部癌および卵巣癌からなる群より選択される、使用。
(項目37) 薬学的組成物であって、
項目10もしくは11に記載のPC−LECTINポリペプチドまたはその免疫原性部分、項目25に記載のベクター、項目1に記載のポリヌクレオチドに相補的なアンチセンスポリヌクレオチド、項目1に記載のポリヌクレオチドを切断し得るリボザイム、あるいは項目13〜20のうちのいずれか1項に記載の抗体またはそのフラグメントと、
必要に応じて、生理学的に受容可能なキャリアと、
を含む、薬学的組成物。
(項目38) PC−LECTINを発現する癌の処置のためのワクチン組成物であって、項目10もしくは11に記載のPC−LECTINポリペプチドの免疫原性部分と、必要に応じて、生理学的に受容可能なキャリアと、を含有する、ワクチン組成物。
(発明の要旨)
本発明は、一般に、ヒト前立腺癌において発現される新規な膜貫通抗原(PC−LECTINと命名する)に関する。PC−LECTIN抗原は、C型レクチンタンパク質のメンバーであるハムスターライリン(layilin)(BorowskyおよびHynes,J.Cell Biol.143:429−42、1998)に構造的に関連する。
しかし、PC−LECTINは、ライリンに見出される機能的タリン会合ドメインを含有せず、それゆえ、異なるかまたは改変された機能を有するようである。PC−LECTINの構造的特徴により、それは、細胞外N−末端および細胞内C末端を有する1a型膜貫通タンパク質として同定される。さらに、PC−LECTIN遺伝子産物は、N末端シグナル配列を含有する。PC−LECTINタンパク質の膜貫通位相幾何学はまた、実験的に確立されている。
【0012】
正常ヒト組織におけるPC−LECTIN遺伝子発現の分布は、正常精巣に高度に制限されている。ヒト前立腺癌において、PC−LECTIN遺伝子は、高度に過剰発現される。なぜなら、検出可能なこの遺伝子の発現が正常前立腺において生じるからである。したがって、PC−LECTIN遺伝子は、前立腺癌抗原をコードし、これは、診断および/または予防マーカーとして有用であり、および/または種々の治療アプローチ(例えば、抗体、ワクチン、および低分子治療)のための優れた標的として作用し得る。
【0013】
機能的に、PC−LECTINは、侵襲、接着、マーカー移動に関与し得る。PC−LECTIN抗原は、レクチンのように、糖部分に結合し、治療的アプローチのためのさらなる可能性を開く。1つのアプローチにおいて、糖質分子は、PC−LECTIN生物学的活性を阻害するために使用され得る。精巣の免疫寛容組織(血液精巣関門が存在する)に限定されたPC−LECTINの発現は、免疫学的治療ストラテジーおよびその他のPC−LECTIN特異的治療ストラテジー(例えば、糖質阻害)のネガティブなバックグラウンド効果が最少であることを示唆する。高レベルの発現が前立腺癌において観察された場合、PC−LECTINはまた、他のヒト癌において発現されることが可能であり、その限りにおいて、同様にそのような他の癌の診断および/または予防マーカーとして有用であり得、および/またはこのような他の癌の処置のための腫瘍抗原標的として機能し得る。PC−LECTINはまた、いくつかの公知のレセプター(L−セレクチンを含む)において観察されているように、リガンドの結合または活性化後に血清中に流出し得(総説については、Tedderら、1991,Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.5:305−306を参照のこと)、それにより血清の検出および関連する診断法に対する可能性を開く。PC−LECTINのバックグラウンドレベルは、血液精巣関門、および他の正常組織での発現の不在に鑑みて、低いかまたは存在しないことが予想され、これは、血清中でのPC−LECTINの検出が、腫瘍の存在と特異的に相関することを示唆する。
【0014】
本発明は、好ましくは、単離された形態の、PC−LECTIN遺伝子、mRNA、および/またはコード配列の全てまたは一部に対応するかまたはそれに相補的であるポリヌクレオチド(PC−LECTINタンパク質をコードするポリヌクレオチド、そのフラグメント、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、および関連する分子、PC−LECTIN遺伝子またはmRNA配列またはその一部に相補的なポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、ならびにPC−LECTIN遺伝子、mRNA、またはPC−LECTINコードポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含む)を提供する。PC−LECTINをコードするcDNAおよび遺伝子を単離するための手段もまた提供される。PC−LECTINポリヌクレオチドを含有する組換えDNA分子、このような分子で形質転換された細胞または形質導入された細胞、ならびにPC−LECTIN遺伝子産物の発現のための宿主ベクター系もまた提供される。
【0015】
本発明はさらに、PC−LECTINタンパク質およびそのポリペプチドフラグメント、ならびにPC−LECTINタンパク質およびそのポリペプチドフラグメントに結合する抗体を提供する。本発明の抗体には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ネズミおよびその他の哺乳動物抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および完全にヒトの抗体、検出可能なマーカーで標識された抗体、放射性核種、トキシン、その他の治療組成物に結合体化された抗体が含まれる。
【0016】
本発明はさらに、種々の生物学的サンプル中のPC−LECTINポリヌクレオチドおよびタンパク質の存在を検出するための方法、ならびにPC−LECTINを発現する細胞を同定するための方法を提供する。本発明はさらに、前立腺癌を処置するための種々の治療組成物およびストラテジー(特に、抗体、ワクチン、および低分子治療を含む)を提供する。
【発明の効果】
【0017】
前立腺癌および関連する癌についてのさらなるマーカーおよび治療標的を同定した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】PC−LECTIN遺伝子をコードする全長cDNAのヌクレオチド(配列番号1)および推定アミノ酸(配列番号2)の配列。開始メチオニンおよび推定Kozak配列は、太字で示し、N末端シグナル配列は、四角で囲んで示し、C型レクチンドメインは、四角で囲んで影を付し、膜貫通ドメインには下線を付した。
【図1B】PC−LECTIN遺伝子をコードする全長cDNAのヌクレオチド(配列番号1)および推定アミノ酸(配列番号2)の配列。開始メチオニンおよび推定Kozak配列は、太字で示し、N末端シグナル配列は、四角で囲んで示し、C型レクチンドメインは、四角で囲んで影を付し、膜貫通ドメインには下線を付した。
【図1C】PC−LECTIN遺伝子をコードする全長cDNAのヌクレオチド(配列番号1)および推定アミノ酸(配列番号2)の配列。開始メチオニンおよび推定Kozak配列は、太字で示し、N末端シグナル配列は、四角で囲んで示し、C型レクチンドメインは、四角で囲んで影を付し、膜貫通ドメインには下線を付した。
【図1D】PC−LECTIN遺伝子をコードする全長cDNAのヌクレオチド(配列番号1)および推定アミノ酸(配列番号2)の配列。開始メチオニンおよび推定Kozak配列は、太字で示し、N末端シグナル配列は、四角で囲んで示し、C型レクチンドメインは、四角で囲んで影を付し、膜貫通ドメインには下線を付した。
【図2A】ヒトPC−LECTIN遺伝子のアミノ酸配列(配列番号2)の、ハムスターライリンの報告された配列(配列番号3;BorowskyおよびHynes、J.Cell Biol:143:42−42,1998)とのアラインメント。
【図2B】ヒトPC−LECTINのcDNA(配列番号4)のハムスターライリン(配列番号5;BorowskyおよびHynes、J.Cell Biol:143:42−42,1998)の報告されたcDNA配列とのヌクレオチド配列アラインメント(BCM Search LauncherからのLALIGNを使用)。
【図2C】ヒトPC−LECTINのcDNA(配列番号4)のハムスターライリン(配列番号5;BorowskyおよびHynes、J.Cell Biol:143:42−42,1998)の報告されたcDNA配列とのヌクレオチド配列アラインメント(BCM Search LauncherからのLALIGNを使用)。
【図3】前立腺癌異種移植片、正常前立腺、ならびに他の組織および細胞株におけるPC−LECTIN遺伝子発現のRT−PCR分析。前立腺癌異種移植片における発現を示す。レーン1は脳である;レーン2は前立腺である;レーン3はLAPC−4 ADである;レーン4はLAPC−4 AIである;レーン5はLAPC−9 ADである;レーン6はLAPC−9 AIである;レーン7はHeLa細胞である;そしてレーン8はネガティブコントロールである 種々の組織におけるPC−LECTIN遺伝子発現のRT−PCR分析。30サイクルでの胎盤における低レベルの発現を示す。レーン1は脳である;レーン2は心臓である;レーン3は腎臓である;レーン4は肝臓である;レーン5は肺である;レーン6は膵臓である;レーン7は胎盤である;そしてレーン8は骨格筋である 正常前立腺およびその他の組織におけるPC−LECTIN遺伝子発現のRT−PCR分析。増幅の25サイクルでの正常精巣のみにおける発現および30サイクルでの前立腺および脾臓における低レベルの発現を示す。レーン1は結腸である;レーン2は卵巣である;レーン3は白血球である;レーン4は前立腺である;レーン5は小腸である;レーン6は脾臓である;レーン7は精巣である;そしてレーン8は胸腺である。
【図4A】種々の正常ヒト組織におけるPC−LECTIN発現のノーザンブロット分析。これらの正常組織においてPC−LECTINの発現がないことを示す。レーン1は心臓である;レーン2は脳である;レーン3は胎盤である;レーン4は肺である;レーン5は肝臓である;レーン6は骨格筋である;レーン7は腎臓である;そしてレーン8は膵臓である。
【図4B】種々の正常ヒト組織におけるPC−LECTIN発現のノーザンブロット分析。正常組織におけるPC−LECTINの精巣特異的発現を示す。レーン1は脾臓である;レーン2は胸腺である;レーン3は前立腺である;レーン4は精巣である;レーン5は卵巣である;レーン6は小腸である;レーン7は結腸である;そしてレーン8は白血球である。
【図4C】前立腺癌異種移植片におけるPC−LECTIN発現のノーザンブロット分析。全ての前立腺癌異種移植片において高レベルの発現を示し、進行した転移前立腺癌異種移植片LAPC−9 ADにおいて極めて高レベルの発現を示す。レーン1はLAPC−4 ADである;レーン2はLAPC−4 AIである;レーン3はLAPC−9 ADである;そしてレーン4はLAPC−9 AIである。
【図5】SSHフラグメントプローブを使用しての前立腺癌異種移植片におけるPC−LECTINのノーザンブロット分析。結果は、PC−LECTINが、マウスの骨内において皮下(sc)または脛骨内(it)のいずれかで増殖させた腫瘍において高度に発現されていることを示す。レーン1〜3はLAPG−9 ADscである;レーン4〜6はLAPC−9ADitである。
【図6】去勢後28日の雄(レーン2)の腫瘍におけるPC−LECTIN/58P1D12のノーザンブロット発現分析を、インタクトな雄(レーン1)の腫瘍における発現と比較した。発現は、去勢した雄由来の腫瘍において劇的に減少した。コントロールとして、公知のアンドロゲン調節遺伝子、TMPRSS2の発現もまた、去勢後にダウンレギュレートされていることを示した。これらのデータは、前立腺腫瘍におけるPC−LECTIN発現が、アンドロゲンの存在に依存していることを示唆する。
【図7】PC−LECTIN抗原の細胞表面局在化。抗Hisモノクローナル抗体を使用して、6Hisタグ化PC−LECTIN(レーン2)をコードするcDNAを含有するベクターでトランスフェクトしたストレプトアビジンセファロース精製した細胞表面ビオチン化293T細胞の現像したウエスタンブロットの写真である。PC−LECTINタンパク質は、同じベクター(レーン1)でトランスフェクトした非ビオチン化細胞由来のストレプトアビジン沈降物において検出されなかった。分子量マーカーは、キロダルトン(kD)で示す。
【図8】馴化培地において抗HIS抗体は分泌した組換えPC−LECTIN/58P1D12−AP融合タンパク質を認識することを示すウエスタンブロット。レーンには、培地取り替え後4時間で回収したPC−LECTIN/58P1D12−APでトランスフェクトした非改変293T細胞または293T細胞由来の20μlの馴化培地が含まれる 抗アルカリホスファターゼ抗体もまた、馴化培地中に分泌された組換えPC−LECTIN/58P1D12−AP融合タンパク質を認識することを示すウエスタンブロット。レーンは、図8Aに示されるように、培地取り替え後4時間で回収したPC−LECTIN/58P1D12−APでトランスフェクトした非改変293T細胞または293T細胞由来の20μlの馴化培地を含有する。
【図9】(図9A)PC−LECTINの細胞外ドメインの発現および精製。293T細胞を、C末端6×Hisタグを有するPC−LECTINの細胞外ドメインをコードするTag5分泌発現ベクターでトランスフェクトした。馴化培地を、Ni−NTAアガロース(Qiagen)を使用して、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーに供した。出発馴化培地、フロースルー、および溶出した精製材料を、10〜20%のSDS−PAGEゲルおよび銀染色上で泳動した。(図9B)図9Aについて記載されたようにトランスフェクトした293T細胞由来の馴化培地を、10〜20%のSDS−PAGEゲル上にて泳動し、そしてニトロセルロースに移し、そして抗HispAbを使用してウエスタンブロットに供した。
【図10A】Rat1−PC−LECTIN細胞由来のPC−LECTINの免疫沈降。neoコントロールウイルスまたはPC−LECTINをコードするウイルスのいずれかに安定に感染したRat1細胞を、精製したTag5−PC−LECTINタンパク質で精製したマウス由来の血清により免疫沈降に供した。ウエスタンブロット分析を、アフィニティー精製ウサギ抗PC−LECTINペプチドpAbを使用して行った。
【図10B】ウエスタンブロット分析が1:1000希釈の免疫化マウス血清で行われたことを除き、図10Aに記載されるようなRat1−PC−LECTIN細胞由来のPC−LECTINの免疫沈降。
【図11】組換え細胞株および精巣におけるPC−LECTINの発現。pCDNA3.1Myc/His PC−LECTINまたは空のベクターのいずれかで一過的にトランスフェクトされた293T細胞の細胞溶解物およびneoコントロールもしくはPC−LECTINレトロウイルスのいずれかに安定に感染したRat1細胞の細胞溶解物および正常精巣の細胞溶解物を、SDS−PAGEによって分離し、そしてウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに移した。矢印で示したのは、全長PC−LECTINを表す47kDのバンド、40kDの細胞外ドメイン、および55kDのMyc/Hisタグ化タンパク質である。
【図12】フローサイトメトリーを使用したRat1細胞上でのTag5 PC−LECTIN免疫化マウス血清でのPC−LECTINの細胞表面認識。Rat1−neo(空白部分)またはRat1−PC−LECTIN細胞(5×105;影を付した部分)のいずれかを、1:2000希釈のTag5 PC−LECTIN免疫化マウス血清とともにインキュベートした。各サンプルからの3,000個の細胞を、PC−LECTINの細胞表面染色についてフローサイトメトリーによって分析した。事象の数は、相対的な蛍光の関数としてプロットされる。
【図13】ウサギポリクローナル抗体で標識したPC−LECTINトランスフェクト293T細胞の免疫組織化学分析。これは、PC−LECTINの細胞表面発現を示す。抗体は、親293T細胞を染色しない。
【図14】多組織RNAドットブロット(50サンプル)を使用して分析したPC−LECTINの発現。結果は、精巣中での58P1D12のみの有意な発現を示す。より低い発現もまた、唾液腺、胎児腎臓、および胎児脾臓において検出された。そのブロットもまた、その他の領域において外来性のシグナルを示し、それらは特異的シグナルの列および行の間にあるから、非特異的であるようである。位置は、以下の組織を表す:A1脳;A2扁桃体;A3尾状核;A4小脳;A5大脳皮質;A6前頭葉;A7海馬;A8延髄;B1後頭葉;B2被殻;B3黒質;B4側頭葉;B5視床;B6視床下核;B7脊髄;C1心臓;C2大動脈;C3骨格筋;C4結腸;C5膀胱;C6子宮;C7前立腺;C8胃;D1精巣;D2卵巣;D3膵臓;D4下垂体;D5副腎;D6甲状腺;D7唾液腺;D8乳腺;E1腎臓;E2肝臓;E3小腸;E4脾臓;E5胸腺;E6末梢白血球;E7リンパ節;E8骨髄;F1虫垂;F2肺;F3気管;F4胎盤;G1胎児脳;G2胎児心臓;G3胎児腎臓;G4胎児肝臓;G5胎児脾臓;G6胎児胸腺;G7胎児肺。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、PC−LECTINと命名された新規な膜貫通抗原を提供する。これは、前立腺癌において過剰発現され、そしてタンパク質のC型レクチンファミリーのメンバーである。正常成体組織における発現は、精巣に限定される。発現は、前立腺癌異種移植片において見出され、アンドロゲン依存性前立腺癌異種移植片においてより高レベルであり、そしてアンドロゲン依存性異種移植片においてより低レベルである。この発現パターンは、前立腺癌におけるPC−LECTIN発現が、アンドロゲンの存在に依存していることを示唆する。PC−LECTINはまた、レクチンコンカナバリンAに観察されるものと類似の糖質結合特異性を示す。
【0020】
そうでないと規定されない限り、本明細書に使用される当該分野の全ての用語、表記法、およびその他の化学的用語法は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有することが意図される。いくつかの場合には、一般的に理解される意味を有する用語は、明確さおよび/または容易な参照のために本明細書において定義され、そしてそのような定義を本明細書に含ませることは、当該分野で一般に理解されるものに対する実質的な差異を表すものと必ずしも解釈されべきではない。本明細書において記載されそして参照される技術および手順は、一般に、十分に理解されており、そして当業者によって従来の方法(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に記載される広汎に利用される分子クローニング法)を使用して一般に利用される。適切であれば、市販されるキットおよび試薬の使用を含む手順は、そうでないと注記されない限り、一般に、製造業者によって規定されるプロトコルおよび/またはパラメータに従って行われる。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「進行した前立腺癌」、「局所的に進行した前立腺癌」、「進行した疾患」、および「局所的に進行した疾患」は、前立腺嚢(prostate capsule)を通して拡張した前立腺癌を意味し、そしてアメリカ泌尿器科協会(AUA)システムにおけるC段階の疾患、Whitmore−JewettシステムにおいてC1−C2段階の疾患、およびTNM(腫瘍、結節、転移)システムにおいてT3−T4段階およびN+の疾患を含むことを意味する。一般に、外科は、局所的に進行した疾患を有する患者にとって推奨されておらず、そしてこれらの患者は、臨床的に局在化した(器官に限定された)前立腺癌を有する患者と比較して実質的により有利でない結果を有する。局所的に進行した疾患は、前立腺の側縁を超えての誘導または前立腺のベースを超えての非対称もしくは誘導の明白な証拠によって臨床的に同定される。局所的に進行した前立腺癌は、腫瘍が前立腺嚢を侵襲または貫通し、外科的余地に拡張するか、または精嚢を侵襲した場合、現在、過激な前立腺削除後に病理学的に診断される。
【0022】
本発明において使用される場合、用語「転移性前立腺癌」および「転移性疾患」は、領域性のリンパ節または離れた部位に広がっている前立腺癌を意味し、そしてAUAシステム下でのD段階の疾患およびTNMシステム下でのTxNxM+段階を含むことを意味する。局所的に進行した前立腺癌の場合と同様に、外科手術は、一般的に、転移性疾患を有する患者のために指示されておらず、そして体液性(アンドロゲン切除)治療は、好ましい処置態様である。転移性の前立腺癌を有する患者は、最終的には、処置の開始後12〜18ヶ月内にアンドロゲン抵抗性の状態を発症し、そしてこれらの患者の約半分がその後6ヶ月以内に死亡する。前立腺癌転移についての最も一般的な部位は、骨である。前立腺癌の骨転移は、全てを考慮して、特徴的には、溶骨性であるというよりむしろ造骨細胞的である(正味の骨形成を生じる)。骨転移は、脊椎において最も頻繁に見出され、続いて大腿、骨盤、胸郭、頭蓋骨、および上腕骨である。転移についての他の一般的な部位には、リンパ節、肺、肝臓、および脳が含まれる。転移性前立腺癌は、代表的には、オープンまたは腹腔鏡検査胎盤リンパ節切除、全身放射核種スキャン、骨格ラジオグラフィー、および/または骨病変生検によって診断される。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドのいずれかまたはいずれかの型のヌクレオチドの改変された形態の、少なくとも10塩基または塩基対長のヌクレオチドのポリマー形態を意味し、そしてDNAの一本鎖および二本鎖の形態を含むことを意味する。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「ポリペプチド」は、少なくとも10個のアミノ酸のポリマーを意味する。本明細書の全体を通じて、アミノ酸についての標準的な3文字または1文字標記が使用される。
【0025】
本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドの状況で使用される用語「ハイブリダイズ(hybridize)」、「ハイブリダイズする(hybridizing)」、「ハイブリダイズする(hybridizes)」などは、従来のハイブリダイゼーション条件、好ましくは、例えば、50%ホルミルアミド/6×SSC/0.1%SDS/100μg/ml ssDNA中でのハイブリダイゼーション(ここで、ハイブリダイゼーションの温度は、37℃を超え、そして0.1×SSC/0.1%SSC/0.1%SDSにおける洗浄についての温度は55℃を超える)、そして最も好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件をいうことを意味する。
【0026】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定可能であり、そして一般に、プローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、より長いプローブは、適切なアニーリングのためにより高い温度を必要とする一方、より短いプローブは、より低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは、一般に、相補的な鎖が、溶融温度より低い環境に存在する場合、再アニーリングする変性したDNAの能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能な配列との間の所望の相同性の程度が高いほど、使用され得る相対的な温度は高くなる。結果として、より高い相対的温度は、よりストリンジェントな反応条件を作成する傾向がある一方、より低い温度はそのような傾向は少ない。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細および説明については、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers(1995)を参照のこと。
【0027】
本明細書中に規定される場合、「ストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、以下の条件によって同定され得る:(1)洗浄のために低いイオン強度および高い温度を使用する条件(例えば、0.015M 塩化ナトリウム/0.0015M クエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、50℃);(2)ハイブリダイゼーションの間に変性剤(例えば、ホルムアミド)を使用する条件(例えば、50%(v/v)ホルムアミドおよび0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.5)および750mM 塩化ナトリウム、75mM クエン酸ナトリウム、42℃);または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×Denhardt’s溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストラン、42℃、さらに以下の洗浄工程、42℃において0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および50%ホルムアミド、55℃、続いて、高ストリンジェンシー洗浄(EDTAを含む0.1×SSCからなる、55℃)を使用する条件。
【0028】
「中程度にストリンジェントな条件」は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Press,1989によって記載されたように同定され得、そして洗浄溶液およびハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度、およびSDS)の使用を含む。これは、上記に記載されたものよりもよりストリンジェントではない。中程度にストリンジェントな条件の例は、以下を含む溶液中での37℃、一晩のインキュベーションである:20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mM クエン酸三ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH7.6)、5×Denhardt’s溶液、10% 硫酸デキストラン、および20mg/ml変性剪断サケ精子DNA、続いて約37℃〜50℃で1×SSC中でフィルターを洗浄する。当業者は、温度、イオン強度などを、因子(例えば、プローブ長など)を適応させるのに必要なように調整する方法を認識する。
【0029】
アミノ酸比較の状況において、用語「同一性」は、同一である同じ相対的位置のアミノ酸残基のパーセンテージを表現するために使用される。この状況においてはまた、用語「相同性」は、BLAST分析の保存性アミノ酸の判断基準を使用して、当該分野において一般的に理解されるように、同一であるかまたは類似であるかのいずれかである、同じ相対位置でのアミノ酸残基のパーセンテージを表現するために使用される。例えば、同一性%の値は、WU−BLAST−2(Altschulら、Methods in Enzymology,266:460−480(1996);http://blast.wustl/edu/blast/README.html)によって生成され得る。アミノ酸置換(これは、このような判断基準の下では保存性であると見なされる)に関するさらなる詳細は以下に提供される。
【0030】
さらなる定義が、引き続くサブセクションを通して提供される。
【0031】
(PC−LECTINポリヌクレオチド)
本発明の一つの局面は、PC−LECTIN遺伝子、mRNAおよび/またはコード配列(好ましくは、PC−LECTINタンパク質およびそのフラグメント、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドならびに関連分子をコードするポリヌクレオチド、PC−LECTIN遺伝子もしくはmRNA配列またはその一部分に相補的な、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、ならびにPC−LECTIN遺伝子、mRNAもしくはPC−LECTINをコードするポリヌクレオチド(集合的に、「PC−LECTINポリヌクレオチド」)にハイブリダイズする、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含む単離形態における)のすべてもしくは一部分に対応するか、またはそのすべてもしくは一部分に相補的なポリヌクレオチドを提供する。本明細書中で使用される場合、PC−LECTIN遺伝子およびタンパク質は、本明細書中で具体的に記載されるPC−LECTIN遺伝子およびタンパク質、ならびに他のPC−LECTINタンパク質および前述の構造的に類似の改変体に対応する、遺伝子およびタンパク質を含むことが意味される。このような他のPC−LECTINタンパク質および改変体は、一般的に、PC−LECTINコード配列に高度に相同なコード配列を有し、そして好ましくは、少なくとも約50%のアミノ酸同一性、そして少なくとも約60%のアミノ酸相同性を共有し(BLAST標準を使用して)、より好ましくは、70%以上の相同性を共有する(BLAST標準を使用して)。
【0032】
PC−LECTINポリヌクレオチドの1つの実施形態は、図1A〜1D(配列番号1)に示される配列を有するPC−LECTINポリヌクレオチドである。PC−LECTINポリヌクレオチドは、図1A〜1D(配列番号1)に示されるようなヒトPC−LECTINのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド(ここで、Tはまた、Uであり得る);PC−LECTINタンパク質のすべてまたは一部分をコードするポリヌクレオチド;前述のポリヌクレオチドに相補的な配列;あるいは前述のうちのいずれかのポリヌクレオチドフラグメントを含み得る。別の実施形態は、図1A〜1D(配列番号1)に示されるような、ヌクレオチド残基番号380〜ヌクレオチド残基番号1201の配列、ヌクレオチド残基番号443〜ヌクレオチド残基番号1018、またはヌクレオチド残基番号443〜ヌクレオチド残基番号1201の配列を有するポリヌクレオチドを含み、ここで、Tはまた、Uであり得る。別の実施形態は、配列が、American Type Culture Collectionに登録番号207152として1999年3月10日に寄託された、プラスミドp58P1D12−2に含まれるcDNAによってコードされる、PC−LECTINポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、図1A〜1D(配列番号1)に示されるヒトPC−LECTIN cDNA、またはそのポリヌクレオチドフラグメントにハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含む。
【0033】
本明細書中で開示される本発明の代表的な実施形態は、PC−LECTIN mRNA配列の特定の一部分をコードするPC−LECTINポリヌクレオチド(例えば、タンパク質およびそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド)を含む。例えば、本明細書中で開示される本発明の代表的な実施形態は、以下を含む:図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質のおよそアミノ酸1〜およそアミノ酸10をコードするポリヌクレオチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質のおよそアミノ酸20〜およそアミノ酸30をコードするポリヌクレオチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質のおよそアミノ酸30〜およそアミノ酸40をコードするポリヌクレオチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質のおよそアミノ酸40〜およそアミノ酸50をコードするポリヌクレオチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質のおよそアミノ酸50〜およそアミノ酸60をコードするポリヌクレオチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質のおよそアミノ酸60〜およそアミノ酸70をコードするポリヌクレオチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質のおよそアミノ酸70〜およそアミノ酸80をコードするポリヌクレオチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質のおよそアミノ酸80〜およそアミノ酸90をコードするポリヌクレオチド、および図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質のおよそアミノ酸90〜およそアミノ酸100をコードするポリヌクレオチドなど。このスキームの後、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質のアミノ酸100〜273のアミノ酸配列の一部分をコードするポリヌクレオチド(少なくとも10アミノ酸の)は、本発明の代表的な実施形態である。PC−LECTINタンパク質のより大きな部分をコードするポリヌクレオチドがまた意図される。例えば、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質のおよそアミノ酸1(または20、または30、または40など)〜およそアミノ酸20(または30、または40、または50など)をコードするポリヌクレオチドは、当該分野で周知の種々の技術によって生成され得る。
【0034】
本明細書中で開示される本発明のさらなる例示的な実施形態は、PC−LECTINタンパク質配列内に含まれる、1つ以上の生物学的モチーフをコードするPC−LECTINポリヌクレオチドフラグメントを含む。1つの実施形態において、本発明の代表的なポリヌクレオチドフラグメントは、ハムスターレイリン(layilin)との相同性を示すPC−LECTINの1つ以上の領域をコードし得る。本発明の別の実施形態において、代表的なポリヌクレオチドフラグメントは、PC−LECTINタンパク質およびポリペプチドを議論する以の本文において非常に詳細に開示されるように、PC−LECTIN C型レクチンドメインまたは膜貫通ドメインの1つ以上をコードし得る。本発明のさらに別の実施形態において、代表的なポリヌクレオチドフラグメントは、1つ以上のPC−LECTIN選択的スプライシング改変体に独特である配列をコードし得る。
【0035】
前述の段落のポリヌクレオチドは、多くの異なる特定の使用を有する。PC−LECTINは、前立腺癌において過剰発現されることが示されるので、これらのポリヌクレオチドは、正常な組織対癌性組織におけるPC−LECTIN遺伝子産物の状態を評価する方法において使用され得る。代表的には、PC−LECTINタンパク質の特定の領域をコードするポリヌクレオチドが使用されて、PC−LECTIN遺伝子産物の特定の領域(膜貫通ドメインを含むような領域)において、混乱状態(例えば、欠失、挿入、点変異など)の存在を評価し得る。例示的なアッセイは、RT−PCRアッセイ、ならびに一本鎖高次構造多型(SSCP)分析(例えば、Marrogiら、J.Cutan.Pathol.26(8):369−378(1999)を参照のこと)の両方を含み、これらの両方は、タンパク質の特定の領域をコードするポリヌクレオチドを利用して、タンパク質内のこれらの領域を試験する。
【0036】
本明細書中で開示される本発明の他の具体的に意図された実施形態は、ゲノムDNA、cDNA、リボザイムおよびアンチセンス分子、ならびに天然の供給源または合成由来にせよ、代替の骨格に基づくか、または代替の塩基を含む核酸分子である。例えば、アンチセンス分子は、RNA、あるいは他の分子(ペプチド核酸(PNA)または塩基対依存様式でDNAもしくはRNAに特異的に結合する非核酸分子(例えば、ホスホロチオエート誘導体)を含む)であり得る。当業者は、PC−LECTINポリヌクレオチドおよび本明細書中で開示されるポリヌクレオチド配列を使用して、核酸分子のこれらのクラスを容易に獲得し得る。
【0037】
アンチセンス技術は、細胞内部に位置する標的ポリヌクレオチドに結合する外因性オリゴヌクレオチドの投与を必然的に伴う。用語「アンチセンス」は、このようなオリゴヌクレオチドが、その細胞内標的(例えば、PC−LECTIN)に相補的であるという事実をいう。例えば、Jack Cohen,OLIGODEOXYNUCLEOTIDES,Antisense Inhibitors of Gene Expression,CRC Press,1989;およびSynthesis 1:1−5(1988)を参照のこと。本発明のPC−LECTINアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Sオリゴヌクレオチド(ホスホロチオエート誘導体またはS−オリゴ、Jack Cohen、前出を参照のこと)のような誘導体を含み、この誘導体は、癌細胞増殖阻害作用の増大を示す。S−オリゴ(ヌクレオシドホスホロチオエート)は、オリゴヌクレオチド(O−オリゴ)の等電子アナログであり、リン酸基の非架橋酸素原子は、硫酸原子に置換される。
本発明のS−オリゴは、3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシド(これは、硫酸転移試薬である)での対応するO−オリゴの処理によって調製され得る。Iyer,R.P.ら、J.Org.Chem.55:4693−4698(1990);およびIyer,R.P.ら、J.Am.Chem.Soc.112:1253−1254(1990)(これらの開示は、本明細書中で参考として完全に援用される)を参照のこと。本発明のさらなるPC−LECTINアンチセンスオリゴヌクレオチドは、当該分野で公知のモルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む(Partrigeら、1996,Antisense&Nucleic Acid Drug Development 6:169−175を参照のこと)。
【0038】
本発明のPC−LECTINアンチセンスオリゴヌクレオチドは、代表的に、PC−LECTINゲノムもしくは対応するmRNAの、最初の100個のN末端コドンまたは最後の100個のC末端コドンに相補的であり、そしてこれらのコドンと安定にハイブリダイズする、RNAまたはDNAであり得る。完全な相補性は必要ではないが、高い程度の相補性が好ましい。この領域に相補的なオリゴヌクレオチドの使用は、PC−LECTIN mRNAへの選択的ハイブリダイゼーションを可能にし、そしてタンパク質キナーゼの他の調節サブユニットを特定するmRNAへの選択的ハイブリダイゼーションを可能にしない。好ましくは、本発明のPC−LECTINアンチセンスオリゴヌクレオチドは、PC−LECTIN mRNAにハイブリダイズする配列を有するアンチセンスDNA分子の15〜30merフラグメントである。必要に応じて、PC−LECTINアンチセンスオリゴヌクレオチドは、PC−LECTINの最初の10個のN末端コドンおよび最後の10個のC末端コドンにおける領域に相補的な30merオリゴヌクレオチドである。あるいは、アンチセンス分子は、PC−LECTIN発現の阻害において、リボザイムを利用するように改変される。L.A.CoutureおよびD.T.Stinchcomb;Trends Genet 12:510−515(1996)。
【0039】
本発明のこの局面のさらなる特定の実施形態は、プライマーおよびプライマーペアを含み、これは、本発明のポリヌクレオチドまたはその任意の特定の部分の特異的増幅、および本発明の核酸分子またはその任意の部分に選択的もしくは特異的にハイブリダイズするプローブの特異的増幅を可能にする。プローブは、検出可能なマーカー(例えば、放射性同位体、蛍光化合物、生体発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素のような)で標識され得る。このようなプローブおよびプライマーが、サンプルにおけるPC−LECTINポリヌクレオチドの存在を検出するために使用され得、そしてPC−LECTINタンパク質を発現する細胞を検出するための手段として使用され得る。
【0040】
このようなプローブの例としては、図1A〜1D(配列番号1)に示されるヒトPC−LECTIN cDNA配列の、すべてまたは一部分を含むポリペプチドが挙げられる。
PC−LECTIN mRNAを特異的に増幅し得るプライマーペアの例はまた、続く実施例において記載される。当業者に理解されるように、非常に多くの異なるプライマーおよびプローブが、本明細書中に提供される配列に基づいて調製され得、そしてPC−LECTIN mRNAを有効に増幅および/または検出するために使用され得る。
【0041】
本明細書中で使用される場合、ポリヌクレオチドは、PC−LECTIN遺伝子ではない遺伝子に、対応するかまたは相補的である混入ポリヌクレオチド、またはPC−LECTIN遺伝子産物もしくはそのフラグメントではないポリペプチドをコードする混入ポリヌクレオチドから実質的に分離されている場合、「単離された」と言われる。当業者は、容易に核酸単離手順を利用して、単離されたPC−LECTINポリヌクレオチドを獲得し得る。
【0042】
本発明のPC−LECTINポリヌクレオチドは、種々の目的に有用である。この目的としては、PC−LECTIN遺伝子、mRNAまたはそのフラグメントの、増幅および/または検出のための、プローブおよびプライマーとしての使用;前立腺癌および他の癌の、診断および/または予後のための試薬としての使用;前立腺細胞へのカルシウムの侵入を特異的に阻害する分子を同定するための手段としての使用;PC−LECTINポリペプチドの発現を指向し得るコード配列としての使用;PC−LECTIN遺伝子の発現および/またはPC−LECTIN転写物の翻訳を、調節または阻害するための手段としての使用;ならびに治療薬としての使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
(PC−LECTINの分子的特徴および生化学的特徴)
以下の実施例においてさらに記載されるように、PC−LECTIN遺伝子およびタンパク質は、種々の方法で特徴付けられてきた。例えば、ヌクレオチドコード配列およびアミノ酸配列の分析は、PC−LECTIN配列内の保存された構造的要素、位相幾何学的特徴、および潜在的に関連する分子を同定するために行われた。PC−LECTIN mRNA発現のPT−PCRおよびノーザンブロット分析は、種々のPC−LECTINメッセージを発現する正常な組織および癌組織の範囲を確立するために行われた。実験的にトランスフェクトした細胞におけるPC−LECTINタンパク質発現のウエスタンブロット分析は、細胞表面局在化を決定するために行われた。
【0044】
PC−LECTINタンパク質は、「ライリン(layilin)」と称されるハムスタータンパク質(これは、次いでC型レクチンと相同性を共有する(BrowskyおよびHynes,J.C II Biol:143:429−42,1998))に対して相同性を有する、約252アミノ酸の1a型膜貫通細胞表面タンパク質(前駆体タンパク質を含む273アミノ酸のシグナル配列として最初に発現される)である。PC−LECTINはまた、身体壁損傷後にSarcophaga peregrina幼生の血リンパから最初に精製されたガラクトース結合タンパク質のレクチンドメイン(Sarcophagaレクチンという)に対して相同性を示し(Komanoら、980,J.Biol.Chem.255:2919−2924)、続いてクローン化された(Takahashiら、1885,J.Biol.Chem.22:12228−12233;Kobayashiら、1989,Biochimica et Biophysica Acta 009:244−250)。PC−LECTINタンパク質の細胞表面位置は、以下の実施例の節においてさらに記載されるように、実験的に確認された。
【0045】
ヒトPC−LECTINのcDNAヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列は、図1A〜D(配列番号1、2)に示される。PC−LECTIN抗原のアミノ酸配列(配列番号2)とハムスターライリンの報告された配列(配列番号3)との整列を、図2に示す。
PC−LECTINは、ハムスターライリンと近接した相同性を有する(265残基の重複にわたって、約44.9%同一)が、ライリンタンパク質に対して提案された重要な機能ドメインにおいては著しく異なる。詳細には、PC−LECTINタンパク質は、ライリン構造において見出された約10アミノ酸配列を有さず、この配列は、ライリンタンパク質の細胞膜のひだ(ruffule)における細胞骨格タンパク質タリンとの結合に関与すると考えられているドメインを表す(BorowskyおよびHynes,J.Cell Biol:143:429−42,1998;Crithleyら、Biochem Soc Symp 65:79−99,1999)。遺伝子レベルでは、2550pbのPC−LECTIN cDNAとハムスターライリンcDNAの1747bpのcDNAとの整列は、591bpの領域にわたって相同性を示す。PC−LECTIN領域の残りは、ライリンと著しく異なり、これは細胞外ドメインのc末端の半分および全細胞質ドメインのアミノ酸配列における違いを示す。このことは、PC−LECTINおよびライリンは、レクチンのサブファミリーに関連し、おそらく構成するが、PC−LECTINは、ライリンのヒト形態ではなさそうであるということを示唆する。
【0046】
タリンとのライリンの結合は、細胞運動性において機能すると仮定される。PC−LECTIN構造におけるタリン結合ドメインの非存在は、ライリンと同じ様式でPC−LECTINがタリンまたは細胞骨格と相互作用し得ないということを示唆する。タリン結合ドメインの非存在に加えて、PC−LECTIN構造は、ライリン構造に対する挿入された配列ストレッチおよび欠失した配列ストレッチを含む。PC−LECTIN発現プロフィールはまた、報告されたライリンの発現プロフィールと異なる。ライリンは、複数のマウス組織(例えば、卵巣、肺、脾臓、心臓、肝臓、膀胱、リンパ節、乳腺、脳、甲状腺および腎臓)および細胞株において発現されることが報告され、PC−LECTINは、正常なヒト組織の中でも精巣に非常に特異的であるようであり、そして前立腺癌において上方制御される。このことは、PC−LECTINが、前立腺癌および潜在的に他の癌において、転移および侵襲における細胞接着分子として機能し得ることを示唆する。ライリンおよび他のC型レクチンとの構造的関係が与えられると、PC−LECTINは、確認されたように、糖質部分に結合すると予想される。従って、PC−LECTIN活性を妨げるための、PC−LECTIN結合糖質分子を用いる治療戦略は、PC−LECTINを発現する癌の処置において治療的に有用であり得る。
【0047】
PC−LECTIN発現は、RT−PCRおよびノーザンブロット分析の両方によって決定されるように、正常なヒト組織において、本質的に精巣特異的である。癌においては、PC−LECTIN mRNAは、SCIDマウスにおいて増殖されたヒト前立腺腫瘍異種移植片において過剰発現され、そしてある場合においては、非常に高レベルの発現が見られる。従って、前立腺癌におけるその細胞表面局在化およびその高レベルの発現を与えられると、PC−LECTINは、前立腺癌の処置のための優れた治療標的の顕著な特徴のすべてを有する。これらの同じ理由のために、PC−LECTINはまた、特に診断画像化と関連して、理想的な診断マーカーを示し得る。さらに、PC−LECTIN発現が疾患の進行とともに、および/または非常に攻撃的な腫瘍の発生とともに増加する。この点で、PC−LECTINの非常に高レベルの発現が検出されたLAPC−9前立腺腫瘍異種移植片は、前立腺癌の非常に攻撃的な骨芽細胞の骨転移により誘導された。
【0048】
(PC−LECTINをコードする核酸分子の単離)
本明細書中に記載されるPC−LECTIN cDNA配列は、PC−LECTIN遺伝子産物をコードする他のポリヌクレオチドの単離、ならびにPC−LECTIN遺伝子産物ホモログ、選択的にスプライシングされたアイソフォーム、対立遺伝子改変体、およびPC−LECTIN遺伝子産物の変異体形態をコードするポリヌクレオチドの単離を可能にする。PC−LECTIN遺伝子をコードする全長cDNAを単離するために利用され得る種々の分子クローニング方法は、周知である(例えば、Sambrook,J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Press,New York,1989;Current Protocols in Molecular Biology.Ausubelら編、Wiley and Sons,1995を参照のこと)。例えば、λファージクローニング方法論が、市販のクローニング系を使用して慣用的に利用され得る(例えば、Lambda ZAP Express,Stratagene)。PC−LECTIN遺伝子cDNAを含むファージクローンは、標識されたPC−LECTIN cDNAまたはそのフラグメントを用いて調べることにより同定され得る。例えば、一つの実施形態において、PC−LECTIN cDNA(図1A〜1D;配列番号1)またはその一部分が、合成され、そしてプローブとして使用されて、PC−LECTIN遺伝子に対応する重複するcDNAおよびPC−LECTIN遺伝子に対応する全長cDNAを回収し得る。PC−LECTIN遺伝子自体は、PC−LECTIN DNAプローブまたはプライマーを使用して、ゲノムDNAライブラリー、細菌人工染色体ライブラリー(BAC)、酵母人工染色体ライブラリー(YAC)などをスクリーニングすることによって単離され得る。
【0049】
(組換えDNA分子および宿主−ベクター系)
本発明はまた、PC−LECTINポリヌクレオチドを含む組換えDNAまたはRNA分子(これには、当該分野において周知のファージ、プラスミド、ファージミド、コスミド、YAC、BAC、ならびに種々のウイルス性および非ウイルス性ベクターが含まれるが、これらに限定されない)、およびこのような組換えDNAまたはRNA分子で形質転換またはトランスフェクトされた細胞を提供する。本明細書中で使用される場合、組換えDNAまたはRNA分子は、インビトロでの分子操作に供されたDNAまたはRNA分子である。このような分子を生成するための方法は周知である(例えば、Sambrookら、1989(前出)を参照のこと)。
【0050】
本発明はさらに、適切な原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞においてPC−LECTINポリヌクレオチドを含む組換えDNA分子を含む、宿主−ベクター系を提供する。適切な真核生物宿主細胞の例としては、酵母細胞、植物細胞、または動物細胞(例えば、哺乳動物細胞または昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス感染可能細胞(例えば、Sf9細胞)))が挙げられる。適切な哺乳動物細胞の例としては、種々の前立腺癌細胞株(例えば、LnCaP、PC3、DU145、LAPC4、TsuPr1、他のトランスフェクト可能であるかまたは形質導入可能な前立腺細胞株)、ならびに組換えタンパク質の発現のために慣用的に使用される多くの哺乳動物細胞(例えば、COS細胞、CHO細胞、293細胞、293T細胞)が挙げられる。より詳細には、PC−LECTINのコード配列を含むポリヌクレオチドを使用し、当該分野で慣用的に使用され、そして広く知られたかなり多数の宿主−ベクター系を用いて、PC−LECTINタンパク質またはそれらのフラグメントを生成し得る。
【0051】
PC−LECTINタンパク質またはそれらのフラグメントの発現に適切な広範な種々の宿主−ベクター系が利用可能である(例えば、Sambrookら、1989(前出);Current Protocols in Molecular Biology、1995(前出)を参照のこと)。哺乳動物での発現に好ましいベクターとしては、pcDNA 3.1 myc−His−tag(Invitrogen)およびレトロウイルスベクターpSRαtkneo(Mullerら、1991、MCB 11:1785)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの発現ベクターを使用して、PC−LECTINは、好ましくは、いくつかの前立腺癌細胞株および非前立腺癌細胞株(例えば、293、293T、rat−1、NIH3T3、PC3、LNCaPおよびTsuPr1を含む)において発現させ得る。本発明の宿主−ベクター系は、PC−LECTINタンパク質またはそれらのフラグメントの産生のために有用である。このような宿主−ベクター系は、PC−LECTINおよびPC−LECTIN変異の機能的特性を研究するために使用され得る。
【0052】
PC−LECTIN遺伝子またはそれらのフラグメントによってコードされるタンパク質は、種々の用途を有する。これには、以下が挙げられるが、これらに限定されない:抗体の産生、およびPC−LECTIN遺伝子産物に結合する、リガンドおよび他の因子および細胞構成要素を同定するための方法において。PC−LECTINタンパク質またはそれらのフラグメントに対して惹起された抗体は、診断および予後アッセイにおいて、画像化方法(特に、癌画像化方法を含む)において、そしてPC−LECTINタンパク質の発現によって特徴付けられるヒト癌(前立腺の癌を含むが、これに限定されない)の管理における治療方法において有用であり得る。PC−LECTINタンパク質の検出のために有用な種々の免疫学的アッセイが意図され、これには、種々の型のラジオイムノアッセイ、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、酵素結合免疫蛍光アッセイ(ELIFA)、免疫細胞学的方法などが挙げられるが、これらに限定されない。このような抗体は、標識され得、そして前立腺細胞を検出し得る免疫学的画像化試薬として使用され得る(例えば、ラジオシンチグラフィ(radioscintigraphic)画像化方法において)。PC−LECTINタンパク質はまた、以下にさらに記載されるように、癌ワクチンを生成するにおいて特に有用であり得る。
【0053】
(PC−LECTINタンパク質)
本発明の別の局面は、PC−LECTINタンパク質およびそのポリペプチドフラグメントを提供する。本発明のPC−LECTINタンパク質としては、本明細書中で特に同定されたタンパク質、ならびに対立遺伝子改変体、保存的置換改変体およびホモログ(このような改変体およびホモログが以下に概説される方法に従って過度な実験を伴わずに単離/生成および特徴付けされ得る限り)が挙げられる。異なるPC−LECTINタンパク質またはそのフラグメントの部分を組合せる融合タンパク質、ならびにPC−LECTINタンパク質および異種ポリペプチドの融合タンパク質もまた含まれる。このようなPC−LECTINタンパク質は、集合的に、PC−LECTINタンパク質、本発明のタンパク質、またはPC−LECTINという。本明細書中で使用される場合、用語「PC−LECTINポリペプチド」は、少なくとも10個のアミノ酸(好ましくは、少なくとも15個のアミノ酸)のポリペプチドフラグメントまたはPC−LECTINタンパク質をいう。
【0054】
PC−LECTINタンパク質の特定の実施形態は、図1A〜D(配列番号2)に示されるようなヒトPC−LECTINのアミノ酸配列(そこに示されるように、アミノ酸残基番号1〜おおよそアミノ酸残基番号273)を有するポリペプチドを含む。PC−LECTINタンパク質の別の特定の実施形態は、図1A〜D(配列番号2)に示されるようなヒトPC−LECTINのアミノ酸配列(そこに示されるように、おおよそアミノ酸残基番号22からおおよそアミノ酸残基番号273)を有するポリペプチドを含む。PC−LECTINフラグメントの特定の実施形態は、WIGFTYKTA、ATGEHQAFT、FGNCVRELQA、NCVELQASA、およびDNHGFGNCV(それぞれ、配列番号6〜10)からなる群より選択されるペプチド、またはGLWRNGDGQTSGAC(配列番号25)、GGPYLYQWNDDRCNM(配列番号26)、EARLACESEGGVLL(配列番号27)、およびPC−LECTINの細胞外ドメイン(配列番号2のアミノ酸22〜213)からなる群より選択されるペプチドを含む。他の特定の実施形態は、C型レクチンドメインおよび/または図1A〜D(配列番号2)で同定される膜貫通ドメインのうちの1つまたは両方を含む。
【0055】
一般的に、ヒトPC−LECTINの天然に存在する対立遺伝子改変体は、高い程度の構造的同一性および相同性(例えば、90%以上の同一性)を共有する。代表的に、PC−LECTINタンパク質の対立遺伝子改変体は、本明細書中に記載されるPC−LECTIN配列内に保存的アミノ酸置換を含むか、またはPC−LECTINホモログにおいて対応する位置に由来するアミノ酸の置換を含む。PC−LECTIN対立遺伝子改変体の1つのクラスは、特定のPC−LECTINアミノ酸配列の少なくとも小さな領域と高い程度の相同性を共有するが、この配列とは根本的な背反(例えば、非保存的置換、短縮化(truncation)、挿入、またはフレームシフト)をさらに含むタンパク質である。
【0056】
保存的アミノ酸置換はしばしば、タンパク質のコンフォメーションも機能も変更することなく、タンパク質中で作製され得る。このような変化としては、以下が挙げられる:任意のイソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)の、任意の他のこれらの疎水性アミノ酸についての置換;グルタミン酸(E)に対するアスパラギン酸(D)、およびその逆の置換;アスパラギン(N)に対するグルタミン(Q)、およびその逆の置換;ならびに、スレオニン(T)に対するセリン(S)、およびその逆の置換。他の置換はまた、タンパク質の三次元構造における特定のアミノ酸の環境およびその役割に依存して、保存的とみなされ得る。例えば、グリシン(G)およびアラニン(A)は、しばしば交換可能であり得、アラニン(A)およびバリン(V)も同様であり得る。比較的疎水性であるメチオニン(M)はしばしば、ロイシンおよびイソロイシンと交換可能であり得、そして時としてバリンと交換可能であり得る。リシン(K)およびアルギニン(R)はしばしば、そのアミノ酸残基の重要な特徴がその電荷であり、そしてこれら2つのアミノ酸残基の異なるpKが重要でない位置において、交換可能である。さらに他の変化が、特定の状況において、「保存的」とみなされ得る。
【0057】
PC−LECTIN(改変体を含む)は、図1(配列番号2)のアミノ酸配列を有するPC−LECTINタンパク質と共通の少なくとも1つのエピトープを含み、その結果、PC−LECTINタンパク質に特異的に結合する抗体はまた、図1(配列番号2)のアミノ酸配列を有するPC−LECTINタンパク質に特異的に結合する。PC−LECTINタンパク質改変体の1つのクラスは、図1(配列番号2)のアミノ酸配列と90%以上の同一性を共有する。PC−LECTINタンパク質改変体のより特定のクラスは、C型レクチンドメインを含む。好ましいPC−LECTINタンパク質改変体は、糖質部分と、特に高マンノース残基および/またはN−アセチルグルコサミンに対して特異的に結合し得る。
【0058】
PC−LECTINタンパク質は、多くの形態、好ましくは単離された形態で具体化され得る。本明細書中で使用される場合、このタンパク質と正常に関連する細胞構成成分からPC−LECTINタンパク質を取り出すために、物理的方法、機械的方法または化学的方法が使用される場合、タンパク質は「単離された」という。当業者は、単離されたPC−LECTINを得るために、標準的な精製方法を容易に使用し得る。精製されたPC−LECTINタンパク質分子は、抗体または他のリガンドへのPC−LECTINの結合を損なう他のタンパク質または分子を実質的に含まない。単離および精製の性質および程度は、意図される用途に依存する。PC−LECTINタンパク質の実施形態は、精製されたPC−LECTINおよび機能的な可溶性PC−LECTINタンパク質を含む。
1つの形態においては、このような機能的な可溶性PC−LECTINタンパク質またはそのフラグメントは、抗体または他のリガンドに結合する能力を保持する。
【0059】
本発明はまた、PC−LECTINアミノ酸配列の生物学的に活性なフラグメントを含むPC−LECTINポリペプチド(例えば、図1A〜D(配列番号2)に示されるようなPC−LECTINのアミノ酸配列の部分に対応するポリペプチド)を提供する。本発明のこのようなポリペプチドは、PC−LECTINタンパク質の特性(例えば、PC−LECTINタンパク質に関連するエピトープに特異的に結合する抗体の産生を誘発する能力)を示す。
【0060】
本明細書中に開示される本発明の実施形態は、広範な種々の当該分野で認められたPC−LECTINタンパク質の改変体(例えば、アミノ酸の挿入、欠失および置換を有するポリペプチド)を含む。PC−LECTIN改変体は、当該分野において公知の方法(例えば、部位特異的変異誘発、アラニンスキャニング(alanine scanning)、およびPCR変異誘発)を使用して作製され得る。部位特異的変異誘発[Carterら、Nud.Acids Res.13:4331(1986);Zollerら、Nud.Acids Res.10:6487(1987)]、カセット式変異誘発[Wellら、Gene 34:315(1985)]、制限選択的変異誘発[Wellsら、Philos.Trans.R.Soc.London SerA 317:415(1986)]または他の公知技術を、クローン化されたDNAにおいて実施し、PC−LECTIN改変体DNAを産生し得る。走査型アミノ酸分析もまた、連続配列に沿って1以上のアミノ酸を同定するために使用され得る。とりわけ好ましい走査アミノ酸は、比較的小さい中性アミノ酸である。このようなアミノ酸としては、アラニン、グリシン、セリン、およびシステインが挙げられる。アラニンが、代表的に、この群の中で好ましい走査アミノ酸である。なぜなら、アラニンは、β炭素を越えて側鎖を排除し、そして改変体の主鎖コンフォメーションを変更する可能性が低いからである。アラニンもまた、代表的に好ましい。なぜなら、アラニンは、最も一般的なアミノ酸であるからである。さらに、埋没位置および露出位置の両方において、頻繁に見出される[Creighton、The Proteins(W.H.Freeman&Co.、NY);Chothia、J.Mol.Biol.150:1(1976)]。アラニン置換が適切な量の改変体を生じない場合には、同配体アミノ酸が使用され得る。
【0061】
上記で考察したように、特許請求された本発明の実施形態は、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質の273未満のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。例えば、本明細書中に開示される本発明の代表的な実施形態は、以下が挙げられる:図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質の約アミノ酸1個〜約アミノ酸10個からなるポリペプチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質の約アミノ酸20個〜約アミノ酸30個からなるポリペプチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質の約アミノ酸30個〜約アミノ酸40個からなるポリペプチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質の約アミノ酸40個〜約アミノ酸50個からなるポリペプチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質の約アミノ酸50個〜約アミノ酸60個からなるポリペプチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質の約アミノ酸60個〜約アミノ酸70個からなるポリペプチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質の約アミノ酸70個〜約アミノ酸80個からなるポリペプチド、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質の約アミノ酸80個〜約アミノ酸90個からなるポリペプチド、および図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質の約アミノ酸90個〜約アミノ酸100個からなるポリペプチドなど。このスキームに従って、PC−LECTINタンパク質のアミノ酸100〜273のアミノ酸配列の部分からなるポリペプチドが、本発明の代表的な実施形態である。PC−LECTINタンパク質のより大きな部分からなるポリペプチドもまた意図される。例えば、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINタンパク質の約アミノ酸1(または、20もしくは30もしくは40など)個〜約アミノ酸20(または、30もしくは40もしくは50など)個からなるポリペプチドが、当該分野において周知の種々の技術によって生成され得る。
【0062】
本明細書中に開示される本発明のさらなる例示的な実施形態は、図1A(配列番号2)に示されるようなPC−LECTINポリペプチド配列内に含まれる1以上の生物学的モチーフのアミノ酸残基を含むPC−LECTINポリペプチドを含む。1つの実施形態では、本発明の代表的ポリペプチドは、図1A〜1D(配列番号2)で同定されるハムスターライリン、および/または1以上の膜貫通領域もしくはC型レクチンドメインに対して相同性を示すPC−LECTINの1以上の領域を含み得る。別の実施形態では、本発明の代表的ポリペプチドは、残基86〜89(図1に示される最初のアミノ酸残基から番号付ける)でNLTK(配列番号33)、および/または残基255〜258におけるNQST(配列番号34)のような1以上のPC−LECTIN N−グリコシル化部位を含み得る。別の実施形態では、本発明の代表的ポリペプチドは、残基266〜269におけるRKES(配列番号35)のような1以上のPC−LECTIN cAMP/cGMP依存性タンパク質キナーゼリン酸化部位を含み得る。別の実施形態では、本発明の代表的ポリペプチドは、残基49〜51におけるSSR、残基141〜143におけるSEK、残基264〜266におけるSTR、および/または残基264〜267におけるTRKのような1以上のPC−LECTINタンパク質キナーゼCリン酸化部位を含み得る。別の実施形態では、本発明の代表的ポリペプチドは、残基53〜56でSFQE(配列番号36)、残基95〜98におけるSDGD(配列番号37)、残基265〜268におけるTRKE(配列番号38)、および/または残基269〜272におけるSGME(配列番号39)のような1以上のPC−LECTINカゼインキナーゼIIリン酸化部位を含み得る。別の実施形態では、本発明の代表的ポリペプチドは、残基27〜32におけるGQKVCF(配列番号40)、残基66〜71におけるGVLLSL(配列番号71)、残基91〜96におけるGTGISD(配列番号42)、残基93〜98におけるGISDGD(配列番号43)、残基102〜107におけるGLWRNG(配列番号44)、残基109〜114におけるGQTSGA(配列番号45)、残基140〜145におけるGSEKCV(配列番号46)、および/または残基212〜217におけるGIIPNL(配列番号47)のような1以上のN−ミリストイル化部位を含み得る。これらの本発明の関連した実施形態としては、上記で考察された異なるモチーフの組合せを含むポリペプチドが挙げられ、好ましい実施形態は、これらのポリペプチドのモチーフまたは介在配列のいずれにも、挿入も欠失も置換も含んでいないポリペプチドである。
【0063】
PC−LECTINポリペプチドは、本明細書中に開示されるヒトPC−LECTINタンパク質のアミノ酸配列に基づいて、当該分野において周知の、標準的なペプチド合成技術または化学切断方法を使用して生成され得る。あるいは、組換え方法を使用して、PC−LECTINタンパク質のポリペプチドフラグメントをコードする核酸分子を生成し得る、この点において、本明細書中に記載されるPC−LECTINコード核酸分子は、PC−LECTINタンパク質の規定のフラグメントを生成するために手段を提供する。
PC−LECTINポリペプチドは、ドメイン特異的抗体(例えば、PC−LECTINタンパク質の細胞外エピトープおよび細胞内エピトープを認識する抗体)の生成および特徴付け、PC−LECTINまたはその特定の構造ドメインに結合する薬剤または細胞因子の同定、および種々の治療状況(癌ワクチンを含むが、これらに限定されない)において、特に有用である。特定の興味深い構造を含むPC−LECTINポリペプチドは、例えば、以下:Chou−Fasman、Garnier−Robson、Kyte−Doolittle、Eisenberg、Karplus−SchultzまたはJameson−Wolf分析の方法を含む、当該分野で周知の種々の分析技術を使用するか、または免疫原性に基づいて、予測および/または同定され得る。このような構造を含むフラグメントは、サブユニット特異的抗PC−LECTIN抗体の生成、またはPC−LECTINに結合する細胞因子の同定において、特に有用である。
【0064】
以下の実施例に記載される特定の実施形態において、PC−LECTINの分泌形態は、C末端6×HisおよびMYCタグを含む、PC−LECTINをコードするCMV駆動発現ベクター(pcDNA3.1/mycHIS、Imvitrogen))でトランスフェクトされた293T細胞において、簡便に発現され得る。培養培地中の分泌されたHISタグ化PSCAは、標準的な技術を使用して、ニッケルカラムを使用して精製され得る。あるいは、AP−タグ系が使用され得る(実施例7を参照のこと)。
【0065】
PC−LECTINの改変(例えば、共有結合性改変)は、本発明の範囲内に含まれる。1つの型の共有結合性改変としては、PC−LECTINの選択された側鎖あるいはN末端残基またはC末端残基と反応し得る有機誘導体化薬剤での、PC−LECTINポリペプチドの標的化されたアミノ酸残基の反応が挙げられる。本発明の範囲内のPC−LECTINポリペプチドの別の型の共有結合性改変としては、このポリペプチドのネイティブなグリコシル化パターンの変更が挙げられる。「ネイティブなグリコシル化パターンの変更」は、本明細書中の目的のために、ネイティブ配列PC−LECTINに見い出される1以上の糖質部分の欠失(基礎となるグリコシル化部位の除去、または化学的手段および/または酵素的手段によるグリコシル化の欠失のいずれかによって)、および/またはネイティブ配列PC−LECTINに存在しない、1以上のグリコシル化部位の付加を意味することが意図される。さらに、この句は、存在する種々の糖質部分の性質および割合の変更を含む、ネイティブタンパク質のグリコシル化の質的変化を含む。PC−LECTINの別の型の共有結合性改変としては、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号または同第4,179,337号に示されるような様式の、種々の非タンパク質様ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン)のうちの1つへの、PC−LECTINポリペプチドの連結が挙げられる。
【0066】
本発明のPC−LECTINはまた、別の異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合されたPC−LECTINを含むキメラ分子を形成する様式で、改変され得る。1つの実施形態において、このようなキメラ分子としては、ポリヒスチジンエピトープタグを有するPC−LECTINの融合体が挙げられ、このタグは、固定されたニッケルが選択的に結合し得るエピトープを提供する。このエピトープタグは、一般に、PC−LECTINのアミノ末端またはカルボキシル末端に配置される。代替的実施形態において、このキメラ分子は、PC−LECTINの免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域との融合体を含み得る。キメラ分子の二価形態(「免疫付着因子(immunoadhesin)」とも呼ばれる)について、このような融合体は、IgG分子のFc領域に対するものであり得る。このIg融合体は、好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の代わりに、PC−LECTINポリペプチドの可溶性(膜貫通ドメインを欠失または不活性化した)形態での置換を含む。特に好ましい実施形態において、免疫グロブリン融合体は、IgGI分子のヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域、またはヒンジ領域、CH1領域、CH2領域およびCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の産生については、米国特許第5,428,130号(1995年6月27日公布)もまた参照のこと。
【0067】
(PC−LECTIN抗体)
本発明の別の局面は、PC−LECTINタンパク質およびポリペプチドに結合する抗体を提供する。最も好ましい抗体は、PC−LECTINタンパク質に選択的に結合し、そして非PC−LECTINタンパク質およびポリペプチドに結合しない(または、弱く結合する)。特に意図される抗PC−LECTIN抗体としては、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびにこれらの抗体の抗原結合ドメインおよび/または1以上の相補性決定領域を含むフラグメントが挙げられる。本明細書中で使用される場合、抗体フラグメントは、その標的に結合する免疫グロブリン分子の可変領域(すなわち、抗原結合領域)の少なくとも一部として定義される。
【0068】
いくつかの適用のために、特定のPC−LECTINタンパク質および/または特定の構造ドメイン内のエピトープと特異的に反応する抗体を産生することが所望され得る。例えば、癌治療および画像診断の目的に有用である好ましい抗体は、癌細胞において発現されるようなPC−LECTINタンパク質の細胞外領域におけるエピトープと反応する抗体である。このような抗体は、免疫原として、本明細書中に記載されたPC−LECTINを使用することによってかまたは予想されるその細胞外ドメインから誘導されるペプチドを使用することによって産生され得る。これに関連して、図1に示されるPC−LECTINタンパク質配列を参照すると、膜貫通ドメインに関するアミノ末端配列中の領域は、細胞外特異的PC−LECTIN抗体を産生および選択するために、適切な免疫原およびスクリーニング薬剤を設計するために使用する場合に選択され得る。
【0069】
本発明のPC−LECTIN抗体は、前立腺癌の治療戦略、診断アッセイおよび予後アッセイ、ならびに画像化方法において特に有用であり得る。同様に、このような抗体は、PC−LECTINが他の型の癌でもまた発現または過剰発現される限り、他の癌の処置、診断および/または予後に有用であり得る。本発明はまた、PC−LECTINおよび変異体PC−LECTINのタンパク質およびポリペプチドの、検出および定量に有用な種々の免疫学的アッセイを提供する。このようなアッセイは、一般に、適切には、PC−LECTINまたは変異体PC−LECTINタンパク質を認識および結合し得る、1以上のPC−LECTIN抗体を含み、そして、以下を含むが、これらに限定されない当該分野で周知の種々の免疫学的アッセイ形式で行われ得る:種々の型のラジオイムノアッセイ、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素連結免疫蛍光アッセイ(ELIFA)など。さらに、前立腺癌を検出し得る、免疫学的画像化方法もまた、本発明によって提供され、これらには、標識したPC−LECTIN抗体を使用するラジオシンチグラフィー画像化方法が挙げられるが、これらに限定されない。このようなアッセイは、前立腺癌の検出、モニタリングおよび予後において、臨床的に有用であり得る。
【0070】
PC−LECTIN抗体はまた、PC−LECTINおよび変異体PC−LECTINのタンパク質およびポリペプチドの精製、ならびにPC−LECTINホモログおよび関連分子の単離のための方法において使用され得る。例えば、1つの実施形態において、PC−LECTINタンパク質を精製する方法は、PC−LECTIN抗体(これは、固体マトリックスに結合されている)を、PC−LECTINを含有する溶解物または他の溶液と共に、このPC−LECTIN抗体がPC−LECTINに結合するのを可能にする条件下でインキュベートする工程;固体マトリックスを洗浄して不純物を除去する工程;およびPC−LECTINをその結合された抗体から溶出する工程を包含する。本発明のPC−LECTIN抗体の他の用途としては、PC−LECTINタンパク質を模倣する抗イディオタイプ抗体の生成が挙げられる。
【0071】
PC−LECTIN抗体はまた、例えば、PC−LECTINタンパク質の生物学的な活性を調節もしくは阻害することによって、またはPC−LECTINタンパク質を発現する前立腺癌細胞を標的もしくは破壊することによることによって治療学的に使用され得る。前立腺癌および他の癌の抗体治療は、以下の別々の小段落により具体的に記載されている。
【0072】
抗体の調製のための種々の方法が、当該分野で周知である。例えば、抗体は、単離または免疫結合体化された形態の、PC−LECTINのタンパク質、ペプチドまたはフラグメントを使用して、適切な哺乳動物宿主を免疫することによって調製され得る(Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press編、HarlowおよびLane(1988);Harlow、Antibodies,Cold Spring Harbor Press,NY(1989))。タンパク質免疫原の例としては、組換えPC−LECTIN(バキュロウイル系、哺乳動物系などにおいて発現される)、PC−LECTIN細胞外ドメイン、AP−タグ化PC−LECTINなどが挙げられる。さらに、PC−LECTINの融合タンパク質(例えば、PC−LECTIN GST融合タンパク質)もまた使用され得る。特定の実施形態において、図1A〜1D(配列番号2)のオープンリーディングフレームアミノ酸配列の全てまたはほとんどを含むGST融合タンパク質が生成され得、そして適切な抗体を生成するための免疫原として使用され得る。PC−LECTINを発現または過剰発現する細胞が使用され得る。
同様に、PC−LECTINを発現するために操作される任意の細胞が、使用され得る。
このような戦略により、結果として、内因性PC−LECTINを認識する増強した能力を有する、モノクローナル抗体の産物が得られ得る。別の有用な免疫原は、ヒツジの赤血球の原形質膜に結合するPC−LECTINペプチドを含む。
【0073】
図1A〜1D(配列番号2)に示されるようなPC−LECTINのアミノ酸配列を使用して、抗体を生成するためにPC−LECTINタンパク質の特定の領域を選択し得る。例えば、PC−LECTINアミノ酸配列の疎水性および親水性分析を使用して、PC−LECTIN構造の疎水性領域を同定し得る。免疫原性構造を示すPC−LECTINタンパク質の領域、ならびに他の領域およびドメインは、以下のような当該分野で公知の種々の他の方法を使用して容易に同定され得る:Chou−Fasman、Garnier−Robson、Kyte−Doolittle、Eisenberg、Karplus−SchultzまたはJameson−Wolf分析。HLA−A2(例えば、WIGFTYKTA(配列番号6)、ATGEHQAFT(配列番号7)、FGNCVELQA(配列番号8)、NCVELQASA(配列番号9)、およびDNHGFGNCV(配列番号10))と結合すると予想されるPC−LECTINのペプチドは、抗体の産生のために選択され得る。以下の実施例に記載されるように、免疫原性は、ペプチドであるGLWRNGDGQTSGAC(配列番号25)、GGPYLYQWNDDRCNM(配列番号26)、EARLACESEGGVLL(配列番号27)、およびPC−LECTINの細胞外ドメイン(配列番号2のアミノ酸22−213)を用いて証明され、これは、それぞれウサギおよびマウスを使用するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生するために使用された。
【0074】
免疫原としての使用のためのタンパク質またはポリペプチドを調製するための方法、およびキャリア(例えば、BSA、KLHまたは他のキャリアタンパク質)とのタンパク質の免疫結合体を調製するための方法は、当該分野で周知である。いくつかの状況下で、例えば、カルボジイミド試薬を使用する直接的な結合体化が使用され得;他の例において、連結試薬(例えば、Pierce Chemical Co.,Rockford,ILによって供給される連結試薬)が、効果的であり得る。PC−LECTIN免疫原の投与は一般に、当該分野で一般に理解されるように、適切な期間にわたって、適切なアジュバントの使用を伴う注射によって行われ得る。免疫スケジュールの間、抗体の力価は、抗体形成の能力(adequacy)を決定することによって理解され得る。
【0075】
PC−LECTINモノクローナル抗体が好ましく、そして当該分野で周知の種々の手段によって産生され得る。例えば、所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株が、一般に公知のように、KohlerおよびMilsteinの標準的なハイブリドーマ技術、または産生性(producing)B細胞を不死化する改変を使用して調製され得る。所望の抗体を分泌する不死化細胞株は、抗原がPC−LECTINタンパク質またはPC−LECTINフラグメントである免疫アッセイによってスクリーニングされる。
所望の抗体を分泌する適切な不死化細胞培養物が同定される場合、これらの細胞を拡大し、そしてインビトロ培養物または腹水のいずれかから抗体が産生され得る。
【0076】
抗体またはフラグメントはまた、現在の技術を使用する、組換え手順によって産生され得る。PC−LECTINタンパク質の所望の領域に特異的に結合する領域はまた、複数の種起源のキメラ抗体またはCDR移植化(grafted)抗体の状況下で産生され得る。ヒト化PC−LECTIN抗体またはヒトPC−LECTIN抗体もまた産生され得、そして治療的状況下での使用のために好ましい。1以上の非ヒト抗体CDRを対応するヒト抗体配列と置換することによる、マウス抗体および他の非ヒト抗体をヒト化するための方法は、周知である(例えば、Jonesら、1986、Nature 321:522−525;Riechmannら、1988、Nature 332:323−327;Verhoeyenら、1988、Science 239:1534−1536を参照のこと)。Carterら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285、およびSimsら、1993、J.Immunol.151:2296もまた参照のこと。完全なヒトモノクローナル抗体を産生するための方法としては、ファージディスプレイ法およびトランスジェニック動物法が挙げられる(概要について、Vaughanら、1998、Nature
Biotechnology 16:535−539を参照のこと)。
【0077】
完全なヒトPC−LECTINモノクローナル抗体は、大きいヒトIg遺伝子コンビナトリアルライブラリー(すなわち、ファージディスプレイ)を使用するクローニング技術を使用して生成され得る(Protein Engineering of Antibody Molecules for Prophylactic and Therapeutic Applications(Man.Clark,M.編)、Nottingham Academic、45−64頁(1993)のGriffithsおよびHoogenboom、Building an in vitro immune system:human antibodies from phage display libraries;BurtonおよびBarbas、Human Antibodies from combinatorial libraries(同書)65−82頁)。完全なヒトPC−LECTINモノクローナル抗体はまた、PCT特許出願WO98/24893(KucherlapatiおよびJakobovitsら、1997年12月3日提出)に記載されるように、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されたトランスジェニックマウスを使用して産生され得る(Jakobovits、1998、Exp.Opin.Invest.Drugs 7(4):607−614もまた参照のこと)。この方法は、ファージディスプレイ技術に必要とされるインビトロ操作を回避し、そして高親和性の真正ヒト抗体を効率的に産生する。
【0078】
PC−LECTIN抗体のPC−LECTINタンパク質との反応性は、適切には、PC−LECTINタンパク質、PC−LECTINペプチド、PC−LECTIN発現細胞またはその抽出物を使用する、多くの周知の手段(ウエスタンブロット、免疫沈降、ELISAおよびFACS分析を含む)によって確証され得る。
【0079】
本発明のPC−LECTIN抗体またはそのフラグメントは、検出可能なマーカーで標識され得るか、または第2の分子(例えば、細胞傷害性薬剤)に結合体化され、そして第2の分子をPC−LECTIN陽性細胞に標的するために使用され得る(Vitetta,E.S.ら、1993、Immunotoxin therapy,in DeVita,Jr.,V.T.ら編、Cancer:Principles and Practice of Oncology,第4版,J.B.Lippoincott Co.,Philadelphia,2624−2636)。細胞毒性薬剤の例としては、以下が挙げられが、これらに限定されない:リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウムブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、プセウドモナス体外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、α−サルシン(sarcin)、ジェロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、リトストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン(curicin)、クロチン(crotin)、カリケアマイシン(calicheamicin、サパオナリア(sapaonaria)薬用インヒビター、グルココルチコイド、および他の化学療法剤、ならびに放射性同位体(例えば、212Bi、131I、131In、90Y、および186Re)。適切な検出可能なマーカーとしては、放射性同位体、蛍光化合物、生体発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素が挙げられるが、これらに限定されない。抗体はまた、プロドラックをその活性形態に変換し得る、抗癌プロドラック活性酵素に結合され得る。例えば、米国特許第4,975,287号を参照のこと。
【0080】
さらに、2以上のPC−LECTINエピトープに特異的な二特異的抗体が、当該分野で一般に公知の方法を使用して生成され得る。さらに、抗体効果機能は、癌細胞上でのPC−LECTIN抗体の治療効果を増強するために改変され得る。例えば、システイン残基は、Fc領域に操作され得、鎖間のジスルフィド結合の形成、内在化、ADCCおよび/または補体媒介細胞死の能力を増強し得るホモダイマーの産生を可能にする(例えば、Caronら、1992、J,Exp.Med.176:1191−1195,Shopes,1992,J.Immunol.148:2918−2922を参照のこと)。ホモダイマー性の抗体もまた、当該分野で公知の架橋技術によって生成され得る(例えば、Wolffら、Cancer Res.53:2560−2565)。
【0081】
(PC−LECTINトランスジェニック動物)
PC−LECTINまたはその改変形態をコードする核酸はまた、トランスジェニック動物または「ノックアウト」動物のいずれかを生成するために使用され得、これらの動物は、次いで、治療的に有用な試薬の開発およびスクリーニングにおいて有用である。トランスジェニック動物(例えば、マウスまたはラット)は、導入遺伝子を含む細胞を有する動物であり、その導入遺伝子は、その動物に、または出生前(例えば、胚段階)でその動物の祖先に導入される。導入遺伝子は、細胞のゲノム内に組み込まれるDNAであり、トランスジェニック動物は、その細胞から発生する。1つの実施形態において、PC−LECTINをコードするcDNAが、確立された技術に従って、PC−LECTINコードするゲノムDNAをクローニングするために使用され得、そしてそのゲノム配列は、PC−LECTINをコードするDNAを発現する細胞を含むトランスジェニック動物を生成するために使用され得る。
【0082】
トランスジェニック動物(特に、マウスまたはラットのような動物)を生成するための方法は、当該分野で慣用的となり、そして例えば、米国特許第4,736,866号および4,870,009号に記載される。代表的に、特定の細胞が、組織特異的エンハンサーと共にPC−LECTIN導入遺伝子の組み込みのために標的化される。胚段階の動物の生殖系列に導入された、PC−LECTINをコードする1コピーの導入遺伝子を含むトランスジェニック動物を使用して、PC−LECTINをコードするDNAの発現の増大の効果を試験し得る。このような動物は、例えば、その過剰発現と関連する病理学的状態からの防御を付与することが考えられる試薬についての、試験動物として使用され得る。本発明のこの局面に従って、動物をその試薬で処置し、そしてこの導入遺伝子を保有する処置していない動物と比較した、その病理学的状態の発生率の減少は、その病理学的状態についての潜在的な治療的介入を示す。
【0083】
あるいは、PC−LECTINの非ヒトホモログを使用して、PC−LECTIN「ノックアウト」動物を構築し得、この動物は、PC−LECTINをコードする内因性遺伝子とその動物の胚細胞に導入されたPC−LECTINをコードする改変ゲノムDNAと間の相同組換えの結果として、PC−LECTINをコードする欠損性または改変型遺伝子を有する。例えば、PC−LECTINをコードするcDNAを使用して、確立された技術に従って、PC−LECTINをコードするゲノムDNAをクローニングし得る。PC−LECTINをコードするゲノムDNAの一部は、欠失され得るか、または別の遺伝子(例えば、組み込みをモニターするために使用され得る、選択マーカーをコードする遺伝子)で置換され得る。
【0084】
代表的に、数キロベースの変更されていない隣接DNA(5’末端および3’末端の両方)が、そのベクターに含まれる(相同組換えベクターの記載については、例えば、ThomasおよびCapecchi、1987、Cell、51:503を参照のこと)。
このベクターは、胚性幹細胞株に(例えば、エレクトロポレーションによって)導入され、そして導入されたDNAが内因性のDNAと相同組換えした細胞が、選択される(例えば、Liら、Cell、1992、69:915を参照のこと)。次いで、この選択された細胞を、動物(例えば、マウスまたはラット)の胚盤胞に導入し、凝集キメラを形成させる(例えば、Bradley、Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach、E.J.Robertson編(IRL,Oxford、1987)、113−152頁を参照のこと)。
【0085】
次いで、キメラ性の胚を、適切な偽妊娠雌性養母動物に移植し、そしてその胚は、満期まで育成させて、「ノックアウト」動物を作製し得る。生殖細胞中に相同組換えされたDNAを有する子孫は、標準的な技術によって同定され得、そしてその子孫を用いて、全ての細胞が相同組換えDNAを含む動物を育種し得る。ノックアウト動物は、例えば、PC−LECTINポリペプチドの非存在に起因する、特定の病理学的状態に対して防御する能力および病理学的状態の発生について、特徴付けられ得る。
【0086】
(PC−LECTINの検出のための方法)
本発明の別の局面は、PC−LECTINポリヌクレオチドおよびPC−LECTINタンパク質ならびにそれらの改変体を検出するための方法、ならびにPC−LECTINを発現する細胞を同定するための方法に関する。PC−LECTINは、前立腺癌のリンパ節転移および骨転移に由来するLAPC異種移植片において発現されるようであり、そしてPC−LECTINの発現プロフィールは、それを転移された疾患についての潜在的な診断マーカーにする。この状況において、PC−LECTIN遺伝子産物の状態は、進行した状態の疾患に対する感受性、進行速度および/または腫瘍の凝集性を含む、種々の因子を予測するために有用な情報を提供し得る。以下で詳細に議論されるように、患者サンプル中のPC−LECTIN遺伝子産物の状態は、以下を含む当該分野で周知の種々のプロトコルによって分析され得る:免疫組織化学分析、インサイチュハイブリダイゼーションを含む種々のノーザンブロット技術、RT−PCR分析(例えば、レーザー捕捉微小分析サンプルに対して)、ウエスタンブロット分析および組織アレイ分析。
【0087】
より詳細には、本発明は、生物学的サンプル(例えば、血清、骨、前立腺および他の組織、尿、精液、細胞調製物など)中のPC−LECTINポリヌクレオチドの検出のためのアッセイを提供する。検出可能なPC−LECTINポリヌクレオチドとしては、例えば、PC−LECTIN遺伝子またはそのフラグメント、PC−LECTIN mRNA、選択的スプライシング改変体PC−LECTIN mRNA、およびPC−LECTINポリヌクレオチドを含む組換えDNAもしくはRNA分子が挙げられる。PC−LECTINポリヌクレオチドを増幅し、そして/またはPC−LECTINポリヌクレオチドの存在を検出するための多くの方法は、当該分野において周知であり、そして本発明のこの局面の実施に用いられ得る。
【0088】
1つの実施形態において、生物学的サンプル中のPC−LECTIN mRNAを検出するための方法は、少なくとも1つのプライマーを使用して、逆転写によってサンプルからcDNAを産生する工程;その中のPC−LECTIN cDNAを増幅するために、センスおよびアンチセンスのプライマーとしてPC−LECTINポリヌクレオチドを使用して、そのように産生されたcDNAを増幅する工程;および増幅されたPC−LECTIN cDNAの存在を検出する工程、を包含する。必要に応じて、増幅されたPC−LECTIN cDNAの配列が、決定され得る。別の実施形態において、生物学的サンプル中のPC−LECTIN遺伝子を検出する方法は、サンプルからゲノムDNAを最初に単離する工程;その中のPC−LECTIN遺伝子を増幅するために、センスおよびアンチセンスのプライマーとしてPC−LECTINポリヌクレオチドを使用して単離されたゲノムDNAを増幅する工程;および増幅されたPC−LECTIN遺伝子の存在を検出する工程、を包含する。任意の多くの適切なセンスプローブおよびアンチセンスプローブの組合せが、PC−LECTINについて提供されるヌクレオチド配列(図1A〜1D;配列番号1)から設計され、そしてこの目的のために使用され得る。
【0089】
本発明はまた、他の生物学的サンプルの組織(例えば、血清、骨、前立腺、および他の組織、尿、細胞調製物など)中のPC−LECTINタンパク質の存在を検出するためのアッセイを提供する。PC−LECTINタンパク質を検出するための方法もまた、周知であり、そして例えば、免疫沈降、免疫組織化学分析、ウエスタンブロット分析、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFAなどが挙げられる。例えば、1つの実施形態において、生物学的サンプル中のPC−LECTINタンパク質の存在を検出する方法は、PC−LECTIN抗体、そのPC−LECTIN反応性フラグメント、またはPC−LECTIN抗体の抗原結合領域を含む組換えタンパク質と、サンプルとを最初に接触させる工程;ならびに次いで、それに対するサンプル中のPC−LECTINタンパク質の結合を検出する工程、を包含する。
【0090】
PC−LECTINを発現する細胞を同定するための方法もまた、提供される。1つの実施形態において、PC−LECTIN遺伝子を発現する細胞を同定するためのアッセイは、細胞中のPC−LECTIN mRNAの存在を検出するための工程を包含する。細胞中の特定のmRNAを検出するための方法は、周知であり、そして例えば、相補DNAプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、標識されたPC−LECTINリボプローブを使用するインサイチュハイブリダイゼーション、ノーザンブロットおよび関連技術)ならびに種々の核酸増幅アッセイ(例えば、PC−LECTINに特異的な相補プライマーを使用するRT−PCR、および例えば、分岐DNA、SISBA、TMAなどの他の増幅型検出方法)が挙げられる。あるいは、PC−LECTIN遺伝子を発現する細胞を同定するためのアッセイは、細胞中のPC−LECTINSタンパク質または細胞によって分泌されたPC−LECTINタンパク質の存在を検出する工程を包含する。タンパク質を検出するための種々の方法が、当該分野において周知であり、そしてPC−LECTINタンパク質およびPC−LECTIN発現細胞の検出のために用いられ得る。
【0091】
PC−LECTIN発現分析はまた、PC−LECTIN遺伝子発現を調節する薬剤を同定かつ評価するためにツールとして有用であり得る。例えば、PC−LECTIN発現は、正常な精巣および前立腺癌に限定され、そしてPC−LECTINはまた、他の癌において発現され得る。癌細胞でのPC−LECTIN発現または過剰発現を阻害し得る分子または生物学的薬剤の同定は、治療上の価値があり得る。このような薬剤は、RT−PCR、核酸ハイブリダイゼーションまたは抗体結合によってPC−LECTIN発現を定量するスクリーニングを使用して、同定され得る。
【0092】
(PC−LECTINおよびその産物の状態のモニタリング)
個体におけるPC−LECTIN遺伝子およびPC−LECTIN遺伝子産物の状態を評価するアッセイは、この個体に由来する生物学的サンプルの増殖または腫瘍能力に関する情報を提供し得る。例えば、PC−LECTIN mRNAは、正常組織に比べて前立腺癌においてかなり多く発現されるので、生物学的サンプル中のPC−LECTIN mRNA転写物またはタンパク質の相対レベルを評価するアッセイは、PC−LECTIN調節不全と関連する疾患(例えば、癌)を診断するために使用され得、そして適切な治療オプションを規定するに有用である予後情報を提供し得る。同様に、生物学的サンプルにおけるPC−LECTINヌクレオチドおよびアミノ配列の完全性を評価するアッセイもまた、この状況において使用され得る。
【0093】
PC−LECTIN mRNAが前立腺癌においてかなり多く発現され、そして正常組織においてほとんど発現されないという知見は、この遺伝子が細胞増殖の調節不全に関連するという証拠を提供し、それによってこの遺伝子およびその産物を、当業者がPC−LECTIN調節不全に関連する疾患を有することが疑われる個体由来の生物学的サンプルを評価するために使用し得る標的として同定する。別の例において、PC−LECTINの発現が精巣に限定されるので、転移の指標としてPC−LECTIN発現を検出するために、他の組織から採取した生物学的サンプルを評価し得る。この状況において、PC−LECTIN遺伝子およびその産物の発現状態の評価は、組織サンプルに潜在的な疾患に関する情報を得るために使用され得る。この状況における用語「発現状態」は、遺伝子およびその産物の発現、機能および調節(例えば、mRNA発現レベル、発現された遺伝子産物(例えば、核酸およびアミノ酸配列)の完全性、ならびにこれらの分子に対する転写改変および翻訳改変)に関与する種々の因子を広範にいうために使用される。
【0094】
PC−LECTINの発現状態は、特定の疾患の状態、進行および/または腫瘍攻撃性に対する感受性を推定するために有用な情報を提供し得る。本発明は、PC−LECTIN発現状態を決定し、そしてPC−LECTINを発現する癌(例えば、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、骨の癌、結腸癌、膵臓癌、精巣癌、子宮頸部癌および卵巣癌)を診断するための方法およびアッセイを提供する。特定のサンプルにおけるPC−LECTIN発現状態は、当該分野で周知の多数の手段(免疫組織化学的分析、インサイチュハイブリダイゼーション、レーザ捕捉マイクロ精査(micro−dessected)サンプルに対するRT−PCR分析、臨床サンプルおよび細胞株のウエスタンブロット分析、ならびに組織アレイ分析が挙げられるがこれらに限定されない)によって分析され得る。PC−LECTIN遺伝子および遺伝子産物の発現状態を評価するための代表的なプロトコルは、例えば、Current Protocols In Molecular Biology,Units 2[Northern Blotting],4[Southern Blotting],15[Immunoblotting]および18[PCR Analysis],Frederick M.Ausubulら(編)(1995)に見出され得る。
【0095】
1つの局面において、本発明は、細胞増殖の調節不全と関連する疾患(例えば、過形成または癌)を有すると疑われる個体に由来する試験組織サンプル中の細胞によって発現されるPC−LECTIN遺伝子産物の状態を決定して、次いでそのように決定された状態を、対応する正常サンプル中のPC−LECTIN遺伝子産物の状態に対して比較することによってPC−LECTIN遺伝子産物をモニタリングするための方法であって、正常サンプルと比較して試験サンプルにおける異常なPC−LECTIN遺伝子産物の存在は、この個体の細胞において細胞増殖の調節不全の存在を指標を提供する、方法を提供する。
【0096】
別の局面において、本発明は、個体における癌の存在の決定に有用なアッセイを提供する。このアッセイは、対応する正常細胞または組織における発現レベルと比べて、試験細胞サンプルまたは組織サンプルにおけるPC−LECTIN mRNAまたはタンパク質の発現における有意な増加を検出する工程を包含する。PC−LECTIN mRNAの存在は、例えば、組織サンプル(結腸、肺、前立腺、膵臓、膀胱、乳房、卵巣、頸部、精巣、頭部および首、脳、胃、骨などが挙げられるが、これらに限定されない)において評価され得る。任意のこれらの組織におけるPC−LECTINの有意な発現の存在は、これらの癌の発生、存在および/または重篤度、または別の組織に由来する癌の転移を示すために有用であり得る。なぜなら、対応する正常組織は、PC−LECTIN mRNAを発現しないか、またはこれを低レベルで発現するからである。
【0097】
関連する実施形態において、PC−LECTIN発現状態は、核酸レベルではなくタンパク質レベルで決定され得る。例えば、このような方法またはアッセイは、試験組織サンプル中の細胞によって発現されるPC−LECTINタンパク質のレベルを決定する工程、およびそのように決定されたレベルを、対応する正常サンプルにおいて発現されるPC−LECTINのレベルに対して比較する工程を包含する。1つの実施形態において、PC−LECTINタンパク質の存在は、例えば、免疫組織化学方法を使用して評価される。PC−LECTINタンパク質発現を検出し得るPC−LECTIN抗体または結合パートナーが、この目的のために、当該分野で周知の種々のアッセイ形式で使用され得る。
【0098】
他の関連する局面において、これらの分子の構造における混乱(perturbation)(例えば、挿入、欠失、置換など)を同定するために、生物学的サンプル中のPC−LECTINヌクレオチドおよびアミノ酸配列の完全性を評価し得る。このような実施形態は、有用である。なぜなら、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列における混乱は、増殖調節不全の表現型と関連する多くのタンパク質で観察されるからである(例えば、Marrogiら、J.Cutan.Pathol.26(8):369〜378(1999)を参照のこと)。この状況において、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列における混乱を観察するための広範な種々のアッセイが、当該分野において周知である。例えば、PC−LECTIN遺伝子産物の核酸配列またはアミノ酸配列のサイズおよび構造は、本明細書中で議論されるノーザン、サザン、ウエスタン、PCRおよびDNA配列決定プロトコルによって観察され得る。さらに、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列における混乱を観察するための他の方法(例えば、一本鎖高次構造多型分析)が、当該分野で周知である(例えば、米国特許第5,382,510号および同第5,952,170号を参照のこと)。
【0099】
別の実施形態において、生物学的サンプル中のPC−LECTIN遺伝子のメチル化状態を試験し得る。遺伝子の5’調節領域におけるCpG島の異常な脱メチル化および/または過メチル化(hypermethylation)はしばしば、不死化され形質転換された細胞において生じ、そして様々な遺伝子の改変された発現を生じ得る。例えば、パイクラスのグルタチオンS−トランスフェラーゼ(正常な前立腺において発現されるが、前立腺癌の90%より多くでは発現されないタンパク質)のプロモーターの過メチル化は、この遺伝子の転写を永久的に止めるようであり、前立腺癌において最も頻繁に検出されるゲノム変化である(De Marzoら、Am.J.Pathol.155(6):1985〜1992(1999))。さらに、この変化は、高度な前立腺上皮新形成(PIN)の少なくとも70%の場合に存在する(Brooksら、Cancer Epidemiol.Biomarkers Prev.,1998,7:531〜536)。
【0100】
別の例において、LAGE−I腫瘍特異的遺伝子(これは、正常な前立腺において発現しないが、25〜50%の前立腺癌において発現する)の発現は、リンパ芽球腫細胞中のデオキシアザシチジンによって引き起こされ、このことは腫瘍発現が脱メチル化に起因することを示唆している(Letheら、1998,Int.J.Cancer 76(6):903〜908)。この状況において、遺伝子のメチル化状態を試験するための様々なアッセイが、当該分野で周知である。例えば、サザンハイブリダイゼーションアプローチにおいて、CpG島の全メチル化状態を評価するために、メチル化CpG部位を含む配列を切断し得ないメチル化感受性制限酵素を使用し得る。
【0101】
さらに、MSP(メチル化特異的PCR)は、所定の遺伝子のCpG島に存在する全てのCpG部位のメチル化状態を迅速にプロフィールし得る。この手順は、重亜硫酸ナトリウムによるDNAの最初の改変(これは、全てのメチル化されていないシトシンをウラシルに変換する)、続いてメチル化されたDNA対メチル化されていないDNAに対して特異的なプライマーを使用する増幅を包含する。メチル化の妨害を包含するプロトコルはまた、Current Protocols In Molecular Biology,Units 12,Frederick M.Ausubelら編、1995の実施例に見出され得る。
【0102】
別の関連する実施形態において、本発明は、個体における癌の存在の決定に有用なアッセイを提供する。このアッセイは、対応する正常細胞または組織における発現レベルに対して、試験細胞サンプルまたは組織サンプル中に発現されるPC−LECTIN選択的スプライシング改変体における有意な変化を検出する工程を包含する。PC−LECTIN選択的スプライシング改変体のモニタリングは、有用である。なぜなら、タンパク質の選択的スプライシングの変化は、癌の進行を引き起こす一連の事象における段階の1つとして示唆されるからである(例えば、Garstensら、Oncogene 15(250:3059〜3065(1997)を参照のこと)。
【0103】
遺伝子増幅は、PC−LECTINの状態を評価するさらなる方法を提供する。遺伝子増幅は、サンプルにおいて、例えば、本明細書中に提供される配列に基づいて、適切な標識プローブを使用して、従来のサザンブロッティング、mRNAの転写を定量するノーザンブロッティング[Thomas,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:5201〜5205(1980)]、ドットブロッティング(DNA分析)、またはインサイチュハイブリダイゼーションによって直接的に測定され得る。あるいは、特定の二重鎖(例えば、DNA二重鎖、RNA二重鎖、およびDNA−RNAハイブリッド二重鎖またはDNA−タンパク質二重鎖を含む)を認識し得る抗体が、用いられ得る。次いで、この抗体が、標識され得、そしてアッセイ(ここで二重鎖が表面に結合され、その結果、この表面上での二重鎖の形成により、二重鎖に結合した抗体の存在が検出され得る)が、行われ得る。
【0104】
上記で議論される組織に加えて、末梢血が、PC−LECTIN発現を検出するためにRT−PCRを使用して、癌細胞(前立腺癌を含むがこれに限定されない)の存在について従来通りにアッセイされ得る。RT−PCRにより増幅可能なPC−LECTIN mRNAの存在は、癌の存在の指標を提供する。末梢血中の腫瘍細胞についてのRT−PCR検出アッセイは、多数のヒト固形腫瘍の診断および管理における使用について現在評価されている。前立腺癌の分野において、これらは、PSAおよびPSMを発現する細胞の検出のためのRT−PCRアッセイを含む(Verkaikら、1997、Urol.Res.25:373〜384:Ghosseinら,1995,J.Clin.Oncol.13:1195〜2000;Hestonら,1995,Clin.Chem.41:1687〜1688)。RT−PCRアッセイは、当該分野で周知である。
【0105】
本発明の関連する局面は、個体における癌の発症の感受性の推定に関する。1つの実施形態において、癌に対する感受性を推定するための方法は、組織サンプル中のPC−LECTIN mRNAまたはPC−LECTINタンパク質を検出する工程であって、その存在が、癌に対する感受性を示し、ここで存在するPC−LECTIN mRNA発現の程度が感受性の程度に比例する、工程を提供する。特定の実施形態において、前立腺組織中のPC−LECTINの存在が、試験され、ここでこのサンプル中のPC−LECTINの存在は、前立腺癌の感受性(または前立腺腫瘍の発生もしくは存在)の指標を提供する。密接に関連する実施形態において、これらの分子の構造における混乱(例えば、挿入、欠失、置換など)を同定するために、生物学的サンプルにおけるPC−LECTINヌクレオチドおよびアミノ酸配列の完全性を評価し得、ここでサンプル中のPC−LECTIN遺伝子産物における1以上の混乱の存在が、癌の感受性(または前立腺腫瘍の発生もしくは存在)の指標を提供する。
【0106】
本発明のなお別の関連する局面は、腫瘍攻撃性を測定するための方法に関する。1つの実施形態において、腫瘍の攻撃性を測定するための方法は、腫瘍サンプル中の細胞によって発現されるPC−LECTIN mRNAまたはPC−LECTINタンパク質のレベルを決定する工程、そのように決定されたレベルを、同じ個体から採取された対応する正常組織または正常組織参照サンプル中に発現されるPC−LECTIN mRNAまたはPC−LECTINタンパク質のレベルに対して比較する工程であって、ここで正常サンプルに対する腫瘍サンプルにおけるPC−LECTIN mRNAまたはPC−LECTINタンパク質発現の程度が、攻撃性の程度を示す、工程を包含する。特定の実施形態において、前立腺腫瘍の攻撃性は、PC−LECTINが腫瘍細胞中に発現される程度を決定することによって評価され、ここでより高い発現レベルは、より攻撃性の腫瘍を示す。
密接に関連する実施形態において、これらの分子の構造における混乱(例えば、挿入、欠失、置換など)を同定するために、生物学的サンプルにおけるPC−LECTINヌクレオチドおよびアミノ酸配列の完全性を評価し得、ここで1以上の混乱の存在は、より攻撃性の腫瘍を示す。
【0107】
本発明のなお別の関連する局面は、個体の悪性疾患の進行を経時的に観察するための方法に関する。1つの実施形態において、個体における悪性疾患の進行を経時的に観察するための方法は、腫瘍サンプル中の細胞によって発現されるPC−LECTIN mRNAまたはPC−LECTINタンパク質のレベルを決定する工程、そのように決定されたレベルを、同じ個体から異なる時間に採取された等価な組織サンプル中に発現されるPC−LECTIN mRNAまたはPC−LECTINタンパク質のレベルに対して比較する工程であって、ここで腫瘍サンプルにおける経時的なPC−LECTIN mRNAまたはPC−LECTINタンパク質発現の程度が、癌の進行に関する情報を提供する、工程を包含する。特定の実施形態において、癌の進行は、腫瘍細胞におけるPC−LECTIN発現が経時的に変化する程度を決定することによって評価され、ここでより高い発現レベルは、癌の進行を示す。密接に関連する実施形態において、これらの分子の構造における混乱(例えば、挿入、欠失、置換など)を同定するために、生物学的サンプル中のPC−LECTINヌクレオチドおよびアミノ酸配列の完全性を評価し得、ここで1以上の混乱の存在は、癌の進行を示す。
【0108】
上記の診断アプローチは、当該分野で公知の種々の予後プロトコルおよび診断プロトコルのいずれか1つと組み合わされ得る。例えば、本明細書中に開示される本発明の別の実施形態は、組織サンプルの状態を診断し、かつ予後を判定する手段として、PC−LECTIN遺伝子およびPC−LECTIN遺伝子産物の発現(またはPC−LECTIN遺伝子およびPC−LECTIN遺伝子産物における混乱)と、悪性疾患に関連する因子との間の一致を観察するための方法に関する。この状況において、悪性疾患に関連する広範な種々の因子(例えば、そうでなければ悪性疾患と関連する遺伝子の発現(PSA、PSCAおよびPSM発現を含む))および肉眼的細胞学的観察(例えば、Bockingら,Anal Quant Cytol.6(2):74〜88(1984);Eptsein,Hum Pathol.1995年2月;26(2)223〜9(1995);Thorsonら,Mod Pathol.1998;11(6):543〜51;Baisdenら,Am.J.Surg Pathol.23(8):918〜24(1999)を参照のこと)が、利用され得る。PC−LECTIN遺伝子およびPC−LECTIN遺伝子産物の発現(またはPC−LECTIN遺伝子およびPC−LECTIN遺伝子産物における混乱)と、悪性疾患に関連するさらなる因子との間の一致を観察するための方法が、有用である。なぜなら、例えば、一致する一連のまたは一群の特定の因子の存在は、組織サンプルの状態を診断し、かつ予後を判定するために重要な情報を提供するからである。
【0109】
代表的な実施形態において、PC−LECTIN遺伝子およびPC−LECTIN遺伝子産物の発現(またはPC−LECTIN遺伝子およびPC−LECTIN遺伝子産物における混乱)と、悪性疾患に関連する因子との間の一致を観察するための方法は、組織サンプルにおいて、PC−LECTIN mRNAまたはタンパク質の過剰発現を検出する工程、組織サンプルにおいてPSA mRNAまたはタンパク質の過剰発現を検出する工程、ならびにPC−LECTIN mRNAまたはタンパク質の過剰発現とPSA mRNAまたはタンパク質の過剰発現との一致を観察する工程を包含する。特定の実施形態において、前立腺組織におけるPC−LECTIN mRNAおよびPSA mRNAの発現が、試験される。好ましい実施形態において、サンプルにおけるPC−LECTIN mRNA過剰発現とPSA mRNA過剰発現との一致は、前立腺癌、前立腺癌感受性、または前立腺腫瘍の発生もしくは存在の指標を提供する。
【0110】
PC−LECTIN mRNAまたはタンパク質の発現を検出および定量するための方法が、本明細書中に開示され、そして標準的な核酸およびタンパク質の検出技術および定量技術の使用が、当該分野において周知である。PC−LECTIN mRNAの検出および定量のための標準的な方法としては、標識されたPC−LECTINリボプローブを使用するインサイチュハイブリダイゼーション、PC−LECTINポリヌクレオチドプローブを使用するノーザンブロットおよび関連する技術、PC−LECTINに特異的なプライマーを使用するRT−PCR分析、ならびに他の増幅型検出方法(例えば、分岐DNA、SISBA、TMAなど)が挙げられる。特定の実施形態において、半定量的RT−PCRが、以下の実施例に記載されるように、PC−LECTIN mRNA発現を検出および定量するために使用され得る。PC−LECTINを増幅し得る任意の数のプライマー(本明細書中に詳細に記載される種々のプライマーセットを含むがこれらに限定されない)が、この目的のために使用され得る。タンパク質の検出および定量のための標準的な方法が、この目的のために使用され得る。特定の実施形態において、野生型PC−LECTINタンパク質と特異的に反応するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体が、生検組織の免疫組織化学的アッセイにおいて使用され得る。
【0111】
(PC−LECTINと相互作用する分子の同定)
本明細書中に開示されるPC−LECTINタンパク質配列により、当業者は、種々の当該分野で受け入れられるプロトコルのいずれか1つを通じて、この配列と相互作用する分子を同定し得る。例えば、種々のいわゆる相互作用捕捉系(「ツーハイブリッドアッセイ」ともいわれる)のうちの1つを利用し得る。このような系において、相互作用する分子は、転写因子およびレポーター遺伝子の直接的な発現を再構成し、次いで、その発現をアッセイする。代表的な系は、真核生物転写アクチベーターの再構成を通じて、インビボでタンパク質間相互作用を同定し、そして例えば、米国特許第5,955,280号、同第5,925,523号、同第5,846,722号および同第6,004,746号に開示されている。
【0112】
あるいは、ペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって、PC−LECTINタンパク質配列と相互作用する分子を同定し得る。このような方法において、選択されたレセプター分子(例えば、PC−LECTIN)に結合するペプチドが、アミノ酸の無作為または制御された収集物をコードするライブラリーをスクリーニングすることによって同定される。このライブラリーによってコードされるペプチドは、バクテリオファージコートタンパク質の融合タンパク質として発現され、次いで、バクテリオファージ粒子が、目的のレセプターに対してスクリーニングされる。それによって、広範な種々の使用(例えば、治療用試薬または診断用試薬)を有するペプチドが、予期されるリガンド分子またはレセプター分子の構造に関する任意の予備情報を必要することなく同定され得る。
PC−LECTINタンパク質配列と相互作用する分子を同定するために使用され得る代表的なペプチドライブラリーおよびスクリーニング方法が、例えば、米国特許第5,723,286号および同第5,773,731号に開示されている。
【0113】
あるいは、PC−LECTINを発現する細胞株が、PC−LECTINによって媒介されるタンパク質間相互作用を同定するために使用され得る。この可能性は、他の研究者によって示されるような免疫沈降技術(Hamilton BJら、Biochem.Biophys.Res.Commun.1999,261:646〜51)を使用して試験され得る。代表的には、PC−LECTINタンパク質は、抗PC−LECTIN抗体を使用して、PC−LECTINを発現している前立腺癌細胞株から免疫沈降され得る。
あるいは、Hisタグに対する抗体が、(例えば、上記のベクターを使用して)PC−LECTINを発現するように操作された細胞株において使用され得る。免疫沈降した複合体は、ウエスタンブロッティング、タンパク質の35S−メチオニン標識、タンパク質微量配列決定、銀染色および2次元ゲル電気泳動のような手順によってタンパク質の結合に対して試験され得る。
【0114】
このようなスクリーニングアッセイの関連する実施形態としては、PC−LECTINと相互作用する低分子を同定するための方法が挙げられる。代表的な方法は、例えば、米国特許第5,928,868号に議論されており、そして少なくとも1つのリガンドが低分子であるハイブリッドリガンドを形成するための方法が挙げられる。例示的な実施形態において、このハイブリッドリガンドは、細胞中に導入され、次いでこの細胞は、第1および第2の発現ベクターを含む。各発現ベクターは、転写モジュールについてのコード配列に連結された標的タンパク質をコードするハイブリッドタンパク質を発現するためのDNAを含む。各細胞は、レポーター遺伝子をさらに含み、その発現は、第1および第2のハイブリッドタンパク質の互いに対する近接性の条件下に置かれており、ハイブリッドリガンドが、両方のハイブリッドタンパク質上の標的部位に結合する場合のみに、事象が生じる。レポーター遺伝子を発現するそれらの細胞が選択され、そして未知の低分子または未知のハイブリッドタンパク質が、同定される。
【0115】
本発明の代表的な実施形態は、図1A〜1D(配列番号2)に示されるPC−LECTINアミノ酸配列と相互作用する分子についてスクリーニングする方法からなる。この方法は、分子集団とPC−LECTINアミノ酸配列とを接触させる工程、相互作用を促進する条件下で、分子集団とPC−LECTINアミノ酸配列とを相互作用させる工程、PC−LECTINアミノ酸配列と相互作用する分子の存在を決定する工程、次いでPC−LECTINアミノ酸配列と相互作用する分子からPC−LECTINアミノ酸配列と相互作用しない分子を分離する工程を包含する。特定の実施形態において、この方法はさらに、PC−LECTINアミノ酸配列と相互作用する分子を精製する工程を包含する。好ましい実施形態において、PC−LECTINアミノ酸配列は、ペプチドのライブラリーと接触される。
【0116】
(治療方法および組成物)
PC−LECTINの前立腺腫瘍関連タンパク質としての同定は、このような癌の処置に対する多くの治療アプローチを開放する。上記で議論されるように、PC−LECTINは、糖部分に結合し、そして侵撃、接着または転移に関与し得る。さらに、PC−LECTINな、治療のために標的とされ得る細胞表面上にエピトープを提示する。
【0117】
PC−LECTINの発現プロフィールは、MAGE、PSA、およびPMSAを暗示し、MAGE、PSA、およびPMSAは、黒色腫および他の癌にてアップレギュレートされる、組織特異的遺伝子である(Van de EyndeおよびBoon、Int J Clin Lab Res.27:81〜86、1997)。癌におけるその組織特異的発現および高レベル発現に起因して、これらの分子は、癌ワクチンについての標的として現在調査されている(Durrant、Anticancer Drugs 8:727〜733、1997;Reynoldsら、Int J Cancer 72:972〜976、1997)。PC−LECTINの発現パターンは、PC−LECTINが同様に、前立腺癌および他の癌に対する癌ワクチンアプローチのための潜在的標的であるという証拠を提供する。なぜなら、その発現が最も正常な組織に限定されるからである。
潜在的レセプターとしてのその構造的特徴もまた、PC−LECTINが、低分子標的であり得ること、ならびに抗体に基づく治療ストラテジーのための標的であり得ることの証拠を提供する。この治療ストラテジーは、分子のカルシウム輸送機能を阻害するかまたはPC−LECTIN分子自体を標的化するように設計され得る。
【0118】
従って、PC−LECTINの細胞外部分を標的とする治療アプローチまたはPC−LECTINタンパク質の活性を阻害することを目指す治療アプローチが、前立腺癌、精巣癌、およびPC−LECTINを発現する他の癌に罹患する患者に有用であることが予期される。PC−LECTINタンパク質の活性を阻害することを目指す治療アプローチは、一般的に、2つの種類に分類される。1つの種類は、その結合パートナーまたは他のタンパク質との、PC−LECTINタンパク質の結合または会合を阻害するための、種々の方法を包含する。別の種類は、PC−LECTIN遺伝子の転写またはPC−LECTIN mRNAの翻訳を阻害するための、種々の方法を包含する。
【0119】
(抗体に基づく治療のための細胞表面標的としてのPC−LECTIN)
PC−LECTINの構造的特徴は、この分子がおそらく細胞表面抗原であることを示し、抗体に基づく治療ストラテジーのための魅力的な標的を提供する。PC−LECTINは最も正常な細胞では発現されず、癌細胞にて発現されるので、PC−LECTIN免疫反応性組成物の全身投与は、非標的器官および非標的組織へのその免疫治療分子の結合により引き起こされる、毒性効果、非特異的効果および/または非標的効果のない、良好な感受性を示すことが予期される。PC−LECTINの細胞外ドメインと特異的に反応性である抗体は、毒素または治療薬剤との結合体、あるいは細胞の増殖または機能を阻害し得る裸の抗体のいずれかとして、PC−LECTINを発現する癌を全身的に処置するために有用であり得る。
【0120】
PC−LECTIN抗体は、癌細胞上のPC−LECTINにその抗体が結合しかつ細胞および腫瘍の破壊を媒介し、かつ/または細胞もしくは腫瘍の増殖を阻害するように、患者に導入され得る。このような抗体が治療効果を発揮する機構は、補体媒介性細胞溶解、抗体依存性細胞性細胞傷害、PC−LECTINの生理学的機能を調節すること、リガンド結合またはシグナル伝達経路を阻害すること、腫瘍細胞分化を調節すること、腫瘍脈管形成因子プロフィールを変化させること、および/またはアポトーシスを誘導することを包含し得る。PC−LECTIN抗体は、毒性薬剤または治療薬剤に結合され得、そしてPC−LECTINを保有する腫瘍細胞に直接その毒性薬剤または治療薬剤を送達するために使用され得る。毒性薬剤の例としては、カルケマイシン(calchemicin)、マイタンシノイド(maytansinoid)、放射性同位体(例えば、131I、イットリウム、およびビスマス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
抗PC−LECTIN抗体を使用する癌免疫治療法は、以下を含むがこれらに限定されない、他の型の癌の処置にて首尾良く使用されている種々のアプローチから生じる技術に従い得る:結腸癌(Arlenら、1998、Crit.Rev.Immunol.18:133〜138)、多発性骨髄腫(Ozakiら、1997、Blood 90:3179〜3186;Tsunenariら、1997、Blood 90:2437〜2444)、胃癌(Kasprzykら、1992、Cancer Res.52:2771〜2776)、B細胞リンパ腫(Funakoshiら、1996、J.Immunother.Emphasis Tumor Immunol.19:903〜101)、白血病(Zhongら、1996、Leuk.Res.20:581〜589)、結腸直腸癌(Mounら、1994、Cancer Res.54:6160〜6166;Veldersら、1995、Cancer Res.55:4398〜4403)、および乳癌(Shepardら、1991、J.Clin.Immunol.11:117〜127)。いくつかの治療アプローチは、毒素への裸の抗体の結合(例えば、抗CD20抗体への131Iの結合(例えば、RituxanTM、IDEC Pharmaceuticals Corp.)を含むが、一方他のアプローチは、抗体と他の治療薬剤との(例えば、HerceptinTM(トラスツズマブ(trastuzumab)とパクリタキセル(Genentech,Inc.)との)同時投与を含む。前立腺癌の処置のために、例えば、PC−LECTIN抗体が、照射、化学療法またはホルモン切除と組み合わせて、投与され得る。
【0122】
PC−LECTIN抗体治療は癌のすべての病期について有用であり得るが、抗体治療は、進行性または転移性の癌にて特に適切であり得る。本発明の抗体療法での処置は、以前に1つ以上の化学療法を受けている患者に示され得、一方、化学療法レジメンまたは照射レジメンと本発明の抗体療法を組み合わせることが、化学療法処置を受けていない患者に好ましくあり得る。さらに、抗体療法は、減少した投薬量の同時化学療法の使用を、特に、非常に十分にはその化学療法薬剤の毒性を許容しない患者にとって、可能にし得る。
【0123】
好ましくは、腫瘍組織の免疫組織化学的評価、定量的PC−LECTIN画像化、またはPC−LECTIN発現の存在および程度を確かに示し得る他の技術を使用して、何人かの癌患者がPC−LECTIN発現の存在およびレベルについて評価されることは、好ましくあり得る。腫瘍生検または外科的生検の免疫組織化学分析が、この目的に好ましくあり得る。腫瘍組織の免疫組織化学的分析のための方法が、当該分野で周知である。
【0124】
前立腺癌および他の癌を処置する際に有用な抗PC−LECTINモノクローナル抗体としては、その腫瘍に対する強力な免疫応答を示し得る抗体、および直接細胞傷害性であり得る抗体が挙げられる。これに関して、抗PC−LECTINモノクローナル抗体(mAb)は、補体媒介性細胞傷害または抗体依存性細胞傷害(ADCC)のいずれかの機構によって、腫瘍細胞溶解を惹起し得、これらの機構の両方が、エフェクター細胞Fcレセプター部位または補体タンパク質との相互作用のために、その免疫グロブリン分子のインタクトなFc部分を必要とする。さらに、腫瘍増殖に対する直接の生物学的効果を発揮する抗PC−LECTIN mAbが、本発明の実施にて有用である。このような直接細胞傷害性のモノクローナル抗体が作用し得る可能な機構としては、細胞増殖の阻害、細胞分化の調節、腫瘍脈管形成因子プロフィールの調節、およびアポトーシスの誘導が、挙げられる。特定の抗PC−LECTIN mAbが抗腫瘍効果を発揮する機構は、当該分野で一般的に知られているように、ADCC、ASMCC、補体媒介性細胞溶解などを決定するように設計されたかなり多数のインビトロアッセイを使用して、評価され得る。
【0125】
マウスまたは他の非ヒトのモノクローナル抗体の使用、あるいはヒト/マウスキメラ mAb抗体の使用が、何人かの患者で、中程度から強力な免疫応答を誘導し得る。いくつかの場合において、これは、循環からの抗体のクリアランスおよび減少した効力をもたらす。最も深刻な場合において、このような免疫応答は、潜在的に腎不全を引き起こし得る、免疫複合体の広範な形成をもたらし得る。従って、本発明の治療法の実施にて使用される好ましいモノクローナル抗体は、高い親和性で標的PC−LECTIN抗原に特異的に結合するが、患者において低い抗原性を示すかまたは全く抗原性を示さない、完全にヒトであるかまたはヒト化されているかのいずれかである抗体である。
【0126】
本発明の治療法は、単一の抗PC−LECTIN mAb抗体の投与、ならびに異なるmAb抗体の組み合わせまたはカクテルの投与を意図する。このようなmAbカクテルは、それらが、異なるエピトープを標的とするmAbを含むか、異なるエフェクター機構を使用するか、または免疫エフェクター機能性に依存するmAbと直接細胞傷害性mAbを組み合わせるのと同じ程度だけ、特定の利点を有し得る。組み合わせたこのようなmAbは、相乗的治療効果を示し得る。さらに、抗PC−LECTIN mAbの投与は、種々の化学療法薬剤、アンドロゲン遮断薬、および免疫モジュレーター(例えば、IL−2、GM−CSF)を含むがこれらに限定されない、他の治療薬剤と組合され得る。抗PC−LECTIN mAbは、その「裸」の形態または非結合形態で投与され得るし、またはそれらに結合した治療薬剤を有し得る。
【0127】
抗PC−LECTIN抗体処方物は、腫瘍部位にその抗体を送達し得る任意の経路を介して投与され得る。投与の潜在的に有効な経路としては、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路、腫瘍内経路、皮内経路などが挙げられるが、これらに限定されない。処置は一般的に、受容可能な投与経路(例えば、静脈注射(IV))を介する、代表的には約0.1〜約10mg/kg体重の範囲の用量での、抗PC−LECTIN抗体調製物の反復投与を包含する。10〜500mg mAb/週の範囲の用量が、効果的であり得かつ十分に許容され得る。
【0128】
転移性乳癌の処置においてHerceptin mAbを用いる臨床実験に基づいて、初回負荷量約4mg/kg患者の体重のIVに続いての、毎週の用量約2mg/kgの抗PC−LECTIN mAb調製物のIVが、受容可能な投薬レジメンを示し得る。好ましくは、この初回負荷量が、90分以上注入として投与される。周期的維持用量は、30分以上の注入として投与され得るが、ただし、その初回量が十分に許容された場合に限る。しかし、当業者が理解するように、種々の因子が、特定の場合における初回量レジメンに影響する。このような因子としては、例えば、使用される抗体(Ab)またはモノクローナル抗体(mAb)の結合親和性および半減期、患者におけるPC−LECTIN発現の程度、循環する落ちた(shed)PC−LECTIN抗原の程度、所望される安定状態の抗体濃度レベル、処置の頻度、ならびに本発明の処置方法と組み合わせて使用される化学療法薬剤の影響が、挙げられ得る。
【0129】
必要に応じて、患者は、最も有効な投薬レジメンおよび関連因子の決定を補助するために、血清中の循環する落ちたPC−LECTIN抗原のレベルについて評価されるべきである。このような評価はまた、治療を通じモニターする目的のために使用され得、そして他のパラメーター(例えば、前立腺癌治療における血清PSAレベル)を評価することと組み合わせて、治療の成功を判断するために有用であり得る。
【0130】
(PC−LECTINタンパク質機能の阻害)
本発明は、その結合パートナーまたはリガンドへのPC−LECTINの結合あるいは他のタンパク質とのPC−LECTINの会合を阻害するための、種々の方法および組成物、ならびにPC−LECTIN機能を阻害するための方法を包含する。
【0131】
(細胞内抗体を用いるPC−LECTINの阻害)
1つのアプローチにおいて、PC−LECTINに特異的に結合する単鎖抗体をコードする組換えベクターが、PC−LECTINを発現する細胞中へと遺伝子移入技術を介して導入され得、その遺伝子移入技術において、そのコードされる単鎖抗PC−LECTIN抗体が細胞内発現され、PC−LECTINタンパク質に結合し、そしてそれによりPC−LECTINタンパク質の機能を阻害する。このような細胞内単鎖抗体を操作するための方法は、周知である。このような細胞内抗体(「内部抗体(intrabody)」としても公知)は、その細胞内の特定の区画に特異的に標的化され得、その処置の阻害活性が焦点を合わせる制御を提供する。この技術は、当該分野で首尾良く適用されている(概説として、RichardsonおよびMarasco、1995、TIBTECH、第13巻を参照のこと)。内部抗体は、他に豊富な細胞表面レセプターの発現を事実上除去することが示されている。例えば、Richardsonら、1995、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3137〜3141;Beerliら、1994、J.Biol.Chem.289:23931〜23936;Deshaneら、1994、Gene Ther.1:332〜337を参照のこと。
【0132】
単鎖抗体は、可撓性のリンカーポリペプチドにより結合された、重鎖および軽鎖の可変ドメインを含み、そして単一のポリペプチドとして発現される。必要に応じて、単鎖抗体は、その軽鎖定常領域に結合された単鎖可変領域フラグメントとして発現され得る。周知の細胞内輸送シグナルが、発現される内部抗体を所望の細胞内区画に正確に標的化するために、このような単鎖抗体をコードする組換えポリヌクレオチドベクター中に操作され得る。例えば、小胞体(ER)に標的化された内部抗体は、リーダーペプチドを組み込むように、そして必要に応じてC末端ER保持シグナル(例えば、KDELアミノ酸モチーフ)を組み込むように、操作され得る。核において活性を発揮することが意図される内部抗体は、核局在化シグナルを含むように操作され得る。脂質部分が、原形質膜の細胞質ゾル側に内部抗体をつなぐために、その内部抗体に結合され得る。内部抗体はまた、細胞質ゾルにおいて機能を発揮するように標的化され得る。例えば、細胞質内部抗体が、細胞質ゾル内に因子を隔離し、それによりそれらの因子がその天然での細胞での終着点に輸送されることを防ぐために、使用され得る。
【0133】
1つの実施形態では、PC−LECTIN内部抗体は、特定のPC−LECTINドメインに特異的に結合するように設計される。例えば、PC−LECTINタンパク質に特異的に結合する細胞質ゾル内部抗体は、PC−LECTINが核へアクセスすることを防ぎ、それによりPC−LECTINが核内で任意の生物学的活性を及ぼすのを防ぐ(例えば、PC−LECTINが他の因子と転写複合体を形成するのを防ぐ)ために使用され得る。
【0134】
このような内部抗体の発現を特定の腫瘍細胞に特異的に向けるために、その内部抗体の転写が、適切な腫瘍特異的プロモーターおよび/またはプロモーターの調節制御下に配置され得る。前立腺に特異的に内部抗体発現を標的化するために、例えば、PSAプロモーターおよび/またはプロモーター/エンハンサーが、利用され得る(例えば、米国特許第5,919,652号を参照のこと)。
【0135】
(組換えタンパク質を用いるPC−LECTINの阻害)
別のアプローチにおいて、PC−LECTINに結合し得、それによりPC−LECTINがその結合パートナーに接近/結合することまたは他のタンパク質と会合することを妨げ得る、組換え分子が、PC−LECTIN機能を阻害するために使用される。このような組換え分子は、例えば、PC−LECTIN特異的抗体分子の反応性部分を含み得る。特定の実施形態において、PC−LECTIN結合パートナーのPC−LECTIN結合ドメインが、ヒトIgG(例えば、ヒトIgG1)のFc部分に連結された2つのPC−LECTINリガンド結合ドメインを含む、二量体融合タンパク質へと操作され得る。
このようなIgG部分は、例えば、GH2ドメインおよびGH3ドメインならびにヒンジ領域を含み得るが、GH1ドメインは含まないかもしれない。このような二量体融合タンパク質は、可溶性形態で、PC−LECTINの発現と関係する癌(前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、骨癌、大腸癌、膵臓癌、精巣癌、子宮頸部癌および卵巣癌が挙げられるがこれらに限定されない)に罹患する患者に投与され得、ここでこの二量体タンパク質はPC−LECTINに特異的に結合し、それにより結合パートナーとのPC−LECTINの相互作用をブロックする。このような二量体融合タンパク質は、公知の抗体連結技術を使用してさらに組み合わされて、多量体タンパク質にされ得る。
【0136】
(PC−LECTINの転写または翻訳の阻害)
別の種類の治療アプローチにおいて、本発明は、PC−LECTIN遺伝子の転写を阻害するための、種々の方法および組成物を提供する。同様に、本発明はまた、PC−LECTIN mRNAからタンパク質への翻訳を阻害するための、方法および組成物も提供する。
【0137】
1つのアプローチにおいて、PC−LECTIN遺伝子の転写を阻害する方法は、PC−LECTIN遺伝子をPC−LECTINアンチセンスポリヌクレオチドと接触させる工程を包含する。別のアプローチにおいて、PC−LECTIN mRNAの翻訳を阻害する方法は、PC−LECTIN mRNAをアンチセンスポリヌクレオチドと接触させる工程を包含する。別のアプローチにおいて、PC−LECTIN特異的リボザイムが、PC−LECTINメッセージを切断し、それにより翻訳を阻害するために使用され得る。このようなアンチセンスに基づく方法およびリボザイムに基づく方法はまた、PC−LECTIN遺伝子の調節領域(例えば、PC−LECTINプロモーターエレメントおよび/またはエンハンサーエレメント)に関し得る。同様に、PC−LECTIN遺伝子転写因子を阻害し得るタンパク質が、PC−LECTIN mRNA転写を阻害するために使用され得る。上述の方法において有用な種々のポリヌクレオチドおよび組成物が、上記に記載されている。転写および翻訳を阻害するためのアンチセンス分子およびリボザイム分子の使用は、当該分野で周知である。
【0138】
PC−LECTIN転写活性化を妨害することを介してPC−LECTINの転写を阻害する他の因子もまた、PC−LECTINを発現する癌の処置に有用であり得る。同様に、PC−LECTINのプロセシングを妨害し得る因子は、PC−LECTINを発現する癌の処置に有用であり得る。このような因子を利用する癌の処置方法もまた、本発明の範囲内にある。
【0139】
(治療ストラテジーについての一般的な考慮)
遺伝子移入および遺伝子治療の技術は、PC−LECTINを合成している腫瘍細胞に、治療用ポリヌクレオチド分子(すなわち、アンチセンス、リボザイム、内部抗体をコードするポリヌクレオチドおよび他のPC−LECTIN阻害分子)を送達するために使用され得る。多数の遺伝子治療アプローチが、当該分野で公知である。PC−LECTINアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、PC−LECTIN転写を妨害し得る因子などをコードする組換えベクターは、このような遺伝子治療アプローチを使用して標的腫瘍細胞に送達され得る。
【0140】
上記の治療アプローチは、広範な種々の化学療法または放射線療法のレジメンのいずれか1つと組み合わされ得る。これらの治療アプローチはまた、特に、化学療法剤の毒性に十分に寛容ではない患者において、化学療法の投薬量の減少、および/またはより頻度の少ない投与の使用を可能にし得る。
【0141】
特定の組成物(例えば、アンチセンス、リボザイム、内部抗体)、またはこのような組成物の組合せの抗腫瘍活性は、種々のインビトロおよびインビボアッセイ系を使用して評価され得る。治療の可能性を評価するためのインビトロアッセイとしては、細胞増殖アッセイ、軟質ゲルアッセイおよび腫瘍促進活性を示す他のアッセイ、治療用組成物が結合パートナーへのPC−LECTINの結合を阻害する程度を決定し得る結合アッセイなどが挙げられる。
【0142】
インビボでは、PC−LECTIN治療用組成物の効果は、適切な動物モデルにおいて評価され得る。例えば、外因性前立腺癌モデル(ここで、ヒト前立腺癌外植片または継代された異種移植組織が、免疫無防備動物(例えば、ヌードマウスまたはSCIDマウス)に導入される)は、前立腺癌に関して適切であり、そして記載されている(Kleinら、1997,Nature Medicine 3:402〜408)。例えば、PCT特許出願WO98/16628,Sawyersら(1998年4月23日公開)は、原発性腫瘍の発生、微小転移、および後期段階疾患の特徴である骨芽細胞性転移の形成を要約し得る、ヒト前立腺癌の種々の異種移植モデルを記載している。効力は、腫瘍形成、腫瘍後退または転移などの阻害を測定するアッセイを使用して推定され得る。以下の実施例もまた参照のこと。
【0143】
アポトーシスの促進を和らげる(qualify)インビボアッセイもまた、潜在的な治療用組成物の評価において有用であり得る。1つの実施形態において、治療用組成物で処置された保有マウス由来の異種移植片は、アポトーシス病巣の存在について試験され得、そして未処置のコントロール異種移殖片保有マウスに比較され得る。アポトーシス病巣が処置マウスの腫瘍に見出される程度は、この組成物の治療効力の指標を提供する。
【0144】
前述の方法の実施において使用される治療用組成物は、所望の送達方法に適切なキャリアを含む薬学的組成物中に処方され得る。適切なキャリアとしては、治療用組成物と組み合わされる場合に、治療用組成物の抗腫瘍機能を保持し、かつ患者の免疫系と非反応性である、任意の物質が挙げられる。例としては、任意の多数の標準的な薬学的キャリア(例えば、滅菌リン酸緩衝化生理食塩水溶液、静菌水など)が挙げられるがこれらに限定されない(一般には、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第16版),A.Osal.編,1980を参照のこと)。
【0145】
治療用処方物は、可溶化され得、そして腫瘍部位に治療用組成物を送達させ得る任意の経路を通じて投与され得る。潜在的に効果的な投与経路としては、静脈内、非経口、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮内、器官内、眼内などが挙げられるがこれらに限定されない。静脈内注射に好ましい処方物は、保存された静菌水、滅菌非保存水の溶液における治療用組成物を含み、そして/または注射用0.9%滅菌塩化ナトリウム(USP)を含むポリビニルクロリドまたはポリエチレンバッグに希釈される。治療用タンパク質調製物は、凍結乾燥され得、そして滅菌粉末として、好ましくは減圧下で貯蔵され得、次いで注射する前に、例えば、ベンジルアルコール保存剤を含む静菌水中に、または滅菌水中に再構成され得る。
【0146】
前述の方法を使用する癌の処置についての投薬量および投与プロトコルは、方法および標的の癌とともに変化し、そして一般に、当該分野で理解される多数の他の因子に依存する。
【0147】
(癌ワクチン)
本発明はさらに、PC−LECTINタンパク質またはそのフラグメントを含む癌ワクチン、およびDNAベースのワクチンを提供する。PC−LECTINの腫瘍により制限される発現を考慮すると、PC−LECTIN癌ワクチンは、非標的組織に対して非特異的効果を生成することなく、PC−LECTINを発現している癌の特異的な予防および/または処置に効果的であることが予期される。抗癌療法での使用について、液性免疫および細胞媒介性免疫を生成するワクチンにおける腫瘍抗原の使用は、当該分野で周知であり、そしてヒトPSMAおよびげっ歯類PAP免疫原を使用して、前立腺癌に使用されている(Hodgeら、1995,Int.J.Cancer 63:231〜237;Fongら、1997、J.Immunol.159:3113〜3117)。このような方法は、PC−LECTINタンパク質もしくはそのフラグメント、またはPC−LECTINをコードする核酸分子、およびPC−LECTIN免疫原を発現し、かつ適切に提示し得る組換えベクターを用いることによって容易に実施され得る。
【0148】
例えば、ウイルス遺伝子送達系は、PC−LECTINをコードする核酸分子を送達するために用いられ得る。本発明のこの局面の実施において使用され得る種々のウイルス遺伝子送達系は、以下を包含するが、これらに限定されない:ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、およびシンドビスウイルス(Restifo、1996、Curr.Opin.Immunol.8:658−663)。非ウイルス送達系もまた、抗腫瘍応答を誘導するために患者に導入される(例えば筋内で)、PC−LECTINタンパク質またはそのフラグメントをコードする裸のDNAを用いることにより用いられ得る。1つの実施形態では、全長ヒトPC−LECTIN cDNAが用いられ得る。
【0149】
1つの実施形態では、PC−LECTIN癌ワクチンは、図1A〜D(SEQ
ID NO:2)に示されるPC−LECTINアミノ酸配列内の免疫原性ペプチドの同一性に基づく。以下の実施例でさらに議論するように、PC−LECTINの特定の部分は、T細胞またはB細胞の応答を増加させることが示されている。PC−LECTINの細胞外ドメイン(図1A〜D(SEQ ID NO:2)のアミノ酸22〜213)は、モノクローナル抗体の産生のためのマウスにおける免疫応答を生じさせるために使用され;そしてこのドメイン内のペプチド(GLWRNGDGQTSGAC(SEQ ID NO:25))、(GGPYLYQWNDDRCNM(SEQ ID NO:26))、(EARLACESEGGVLL(SEQ ID NO:27))は、ポリクローナル抗体の産生のために、ウサギにおける免疫応答を生じさせるために使用されてきた。従って、PC−LECTINのこれらの特定の部分およびこれらの部分をコードするポリヌクレオチドは、癌ワクチンの生成のために選択され得る。
【0150】
別の実施形態では、特定の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープをコードするPC−LECTIN核酸分子が用いられ得る。CTLエピトープは、特定化されたHLA対立遺伝子に最適に結合し得る、PC−LECTINタンパク質内のペプチドを同定するための特定のアルゴリズム(例えば、Epimer、Brown University)を用いて決定され得る。1つの適切なアルゴリズムは、Bioinformatics and Molecular Analysis Section(BIMAS)ウェブサイト(http://bimas.dcrt.nih.gov/)において利用可能であるHLA Peptide Motif Searchアルゴリズムである。このアルゴリズムは、HLAクラスI分子そして具体的にはHLA−A2の溝における特定のペプチド配列の結合に基づく(Flakら、1991、Nature 351;290−6;Huntら、1992、Science 255:1261−3;Parkerら、1992、J.Immunol.149:3580−7;Parkerら、1994、J.Immunol.152:163−75)。HLA Peptide Motif Searchアルゴリズムは、HLA−A2および他のクラスI分子への推定される結合について、完全タンパク質配列からの8マー、9マーおよび10マーのペプチドの配置および順位を可能にする。ほとんどのHLA−A2結合ペプチドは、9マーであり、好適には、2位でロイシンを含み、そして9位でバリンまたはロイシンを含む(Parkerら、1992、J.Immunol.149:3580−7)。
【0151】
以下の実施例で議論されるように、PC−LECTINについての推定結合ペプチドは、WIGFTYKTA、ATGEHQAFT、FGNCVELQA、NCVELQASAおよびDNHGFGNCV(それぞれ、SEQ ID NO:6〜10)を含む。HLA−A2へのペプチドの実際の結合は、抗原プロセシング欠損細胞株T2上のHLA−A2発現の安定化により評価され得る(Xueら、1997、Prostate 30:73−8;Peshwaら、1998、Prostate 36:129−38)。特定のペプチドの免疫現性は、樹状細胞の存在下でのCD8+CTLの刺激によりインビトロで評価され得る(Xueら;Peshwaら、前出)。
【0152】
種々のエキソビボストラテジーが、用いられ得る。1つのアプローチは、患者の免疫系にPC−LECTIN抗原を呈示するための樹状細胞の使用を包含する。樹状細胞は、MHCクラスIおよびII、B7副刺激因子(co−stimulator)、およびIL−12を発現し、そして従って高度に特化された抗原提示細胞である。前立腺癌では、前立腺特異的膜抗原(PSMA)のペプチドでパルスされた自己樹状細胞が、第I相臨床試験において、前立腺癌患者の免疫系を刺激するために使用されている(Tjoaら、1996、Prostate 28:65−69;Murphyら、1996、Prostate 29:371−380)。樹状細胞は、MHCクラスI分子およびクラスII分子の関連においてT細胞に対してPC−LECTINペプチドを提示するために使用され得る。1つの実施形態では、自己樹状細胞は、MHC分子に結合し得るPC−LECTINペプチドでパルスされる。別の実施形態では、樹状細胞は、完全PC−LECTINタンパク質でパルスされる。さらに別の実施形態は、当該分野で公知の種々の実行ベクター(例えば、アデノウイルス(Arthurら、1997、Cancer Gene Ther.4:17−25)、レトロウイルス(Hendersonら、1996、Cancer Res.56:3763−3770)、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、DNAトランスフェクション(Ribasら、1997、Cancer Res.57:2865−2869)、および腫瘍由来RNAトランスフェクション(Ashleyら、1997、J.Exp.Med.186:1177−1182))を用いて樹状細胞におけるPC−LECTIN遺伝子の過剰発現を操作することを含む。PC−LECTINを発現する細胞は、免疫調節因子(例えば、GM−CSF)を発現するように操作され得、そして免疫剤として使用され得る。
【0153】
抗イディオタイプ抗PC−LECTIN抗体もまた、抗癌療法において、PC−LECTINタンパク質を発現する細胞に対する免疫応答を惹起するためのワクチンとして使用され得る。詳細には、抗イディオタイプ抗体の生成は、当該分野で周知であり、そしてPC−LECTINタンパク質上のエピトープを模倣する抗イディオタイプ抗PC−LECTIN抗体を生成するように容易に適合され得る(例えば、Wagnerら、1997、Hybridoma 16:33−40;Foonら、1995、J Clin Invest 96:334−342;Herlynら、1996、Cancer Immunol Immunother 43:65−76を参照のこと)。このような抗イディオタイプ抗体は、癌ワクチンストラテジーにおいて使用され得る。
【0154】
遺伝子免疫法は、PC−LECTINを発現する癌細胞に対する予防的または治療的な体液性免疫応答および細胞性免疫応答を生成するために使用され得る。PC−LECTINタンパク質/免疫原をコードするDNAおよび適切な調節配列を含む構築物は、個体の筋肉または皮膚に直接的に注射され得、それにより、筋肉または皮膚の細胞が、この構築物を取り込み、そしてコードされたPC−LECTINタンパク質/免疫原を発現する。
PC−LECTINタンパク質免疫原の発現は、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、骨癌、大腸癌、膵臓癌、精巣癌、子宮頸部癌および卵巣癌に対する予防的または治療的な体液性免疫および細胞性免疫の生成を生じる。当該分野で公知の種々の予防的および治療的遺伝子免疫技術が使用され得る(検討のために、インターネットアドレスwww.genweb.comで公開されている情報および参考文献を参照のこと)。
【0155】
(キット)
上記で記載または示唆された診断適用および治療適用における使用のために、本発明によって、キットもまた提供される。このようなキットは、1つ以上のコンテナ手段(例えば、バイアル、チューブなど)を厳重に閉じ込めて受容するように区画化されるキャリア手段を備え得る。コンテナ手段のそれぞれは、本方法において、使用されるべき別々の要素の1つを含む。例えば、コンテナ手段の1つは、検出可能に標識された、または検出可能に標識され得るプローブを含み得る。このようなプローブは、それぞれPC−LECTINタンパク質もしくはPC−LECTIN遺伝子またはメッセージに特異的な抗体またはポリヌクレオチドであり得る。キットが、標的核酸配列を検出するために核酸ハイブリダイゼーションを利用する場合、キットはまた、標的核酸配列の増幅用のヌクレオチドを含むコンテナ、および/またはレポーター分子(例えば、酵素標識、蛍光標識、または放射性同位体標識)に結合されるレポーター手段(例えば、ビオチン結合タンパク質(例えば、アビジンまたはストレプトアビジン)を含むコンテナを有し得る。
【0156】
本発明のキットは、代表的には、上記コンテナ、および使用説明書と共に、市販および使用者の観点で所望の材料(緩衝液、希釈剤、フィルター、ニードル、シリンジ、およびパッケージ挿入物を含む)を含む1つ以上の他のコンテナを含む。表示は、組成物が、特定の治療または非治療適用について使用されることを示し、そしてまたインビボまたはインビトロのいずれかの使用(例えば、上記の使用)についての説明を示し得るために、コンテナ上に存在し得る。
【0157】
PC−LECTIN cDNAは、ブダペスト条約の下でアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC;10801 University Blvd.Manassas、VA 20110−2209 USA)に、プラスミドp58P1D12−2として1999年3月10日に寄託され、そしてATCC受託番号207152で承認されている。
【実施例】
【0158】
(実施例)
本発明の種々の局面を、以下に続くいくつかの例によってさらに記載および例示する。
これらはいずれも、本発明の範囲の制限を意図するものではない。
【0159】
(実施例1:PC−LECTIN遺伝子のcDNAフラグメントのSSH生成単離)
(材料および方法)
(LAPC異種移植片)
LAPC異種移植片を、Charles Sawyers博士(UCLA)から入手し、記載のように生成した(Kleinら、1997、Nature Med.3:402−408;Craftら、1999、Cancer Res.59:5030−5036)。アンドロゲン依存性LAPC−4異種移植片およびアンドロゲン非依存性LAPC−4異種移植片(それぞれLAPC−4 ADおよびAI)ならびにアンドロゲン依存性LAPC−9異種移植片およびアンドロゲン非依存性LACP−9異種移植片(それぞれLACP−9 ADおよびAI)をそれぞれインタクトな雄SCIDマウスまたは雄去勢マウスにおいて増殖させ、そしてレシピエント雄に小組織塊として継代させた。LAPC−4 AI異種移植片は、LAPC−4 AD腫瘍から誘導し、LAPC−9 AI異種移植片は、LAPC−9 AD腫瘍から誘導した。AI異種移植片を生成するために、LAPC AD腫瘍を有する雄マウスを去勢し、そして2〜3ヶ月間飼育した。LAPC腫瘍が再増殖した後、この腫瘍を採集し、そして去勢雄SCIDマウスにおいてまたは雌SCIDマウスにおいて継代させた。
【0160】
(細胞株)
ヒト細胞株(例えば、HeLa)を、ATCCから入手し、そして10%ウシ胎児血清を有するDMEM中で維持した。
【0161】
(RNA単離)
腫瘍組織および細胞株を、10ml/g組織または10ml/108細胞を用いてTrizol試薬(Life Technologies、Gibco BRL)においてホモジナイズし、総RNAを単離した。ポリA RNAを、Qiagen’s Oligotex mRNA MiniキットおよびMidiキットを用いて総RNAから精製した。総RNAおよびmRNAを、分光光度計分析(O.D. 260/280nm)によって定量し、そしてゲル電気泳動によって分析した。
【0162】
(オリゴヌクレオチド)
以下のHPLC精製オリゴヌクレオチドを使用した。
【0163】
【化1】

【0164】
(抑制サブトラクティブ(suppression subtractive)ハイブリダイゼーション)
抑制サブトラクティブハイブリダイゼーション(SSH)を使用して、アンドロゲン非依存性癌と比較して、アンドロゲン依存性前立腺癌でアップレギュレートされ得る遺伝子に対応するcDNAを同定した。
【0165】
LAPC−9 AD異種移植片(テスター)およびLAPC−9 AI組織(ドライバー)に対応する二本鎖cDNAを、CLONTECHのPCR−Select cDNA Subtraction Kitおよびプライマーとして1ngのオリゴヌクレオチドDPNCDNを使用して、上記のように、異種移植片組織から単離された2μgのポリ(A)’RNAから合成した。第一鎖および第二鎖合成を、キットの使用者マニュアルプロトコル(CLONTECHプロトコール番号PT1117−1、カタログ番号K1804−1)に記載のように実施した。得られたcDNAをDpnIIで37℃で3時間消化した。消化したcDNAをフェノール/クロロホルム(1:1)で抽出し、そしてエタノール沈殿した。
【0166】
ドライバー(diriver)cDNA(LAPC−9AI)を、1:1比で、DpnII消化LAPC−9AI cDNAを、BPH組織、およびヒト細胞株HeLa、293、A431、Colo 205、およびマウス肝臓由来の消化cDNAの混合物と組み合わせることにより生成し、マウス遺伝子が、テスターcDNA(LACD−9 AD)から差し引きされることを確実にした。
【0167】
テスター(tester)cDNA(LAPC−9 AD)を、5μlの水中に1μlのDpnII消化LAPC−9 AD cDNA(400ng)を希釈することにより生成した。次いで、希釈したcDNA(2μl、160ng)を、総容量10μlで16℃で一晩、400uのT4 DNAリガーゼ(CLONTECH)を用いて、別の連結反応中で、2μlのアダプター1およびアダプター2(10μM)に連結した。連結を、1μlの0.2M EDTAで、そして72℃で5分間加熱して終結させた。
【0168】
第一のハイブリダイゼーションは、1.5μl(600ng)のドライバーcDNAを、1.5μl(20ng)のアダプター1連結のおよびアダプター2連結のテスターcDNAを含む2つの各チューブに添加することにより実施した。4μlの最終容量で、サンプルに鉱油を重層し、MJ Research サーマルサイクラー中で、98℃で1.5分間変性し、次いで、68℃で8時間ハイブリダイズさせた。次いで、2つのハイブリダイゼーションを、さらなる1μlの新鮮な変性ドライバーcDNAと一緒に混合し、そして68℃で一晩ハイブリダイズさせた。次いで、第二のハイブリダイゼーションを、200μlの20mM Hepes、pH8.3、50mM NaCl、0.2mM EDTA中で希釈し、70℃で7分間加熱し、そして−20℃で貯蔵した。
【0169】
(SSHから生成した遺伝子フラグメントのPCR増幅、クローニング、および配列決定)
SSH反応から生じる遺伝子フラグメントを増幅するために、2つのPCR増幅を行った。第一のPCR反応において、1μlの希釈最終ハイブリダイゼーション混合物を、最終容量25μlの1μlのPCRプライマー1(10μM)、0.5μl dNTP混合物(10μM)、2.5μlの10×反応緩衝液(CLONTECH)、および0.5μlの50×Advantage cDNA polymerase Mix(CLONTECH)に添加した。PCR1を、以下の条件を用いて実施した:75℃で5分、94℃で25秒、次いで27サイクルの94℃で10秒、66℃で30秒、72℃で1.5分。
5つの別の第一のPCR反応を各実験について行った。産物をプールし、そして水で1:10に希釈した。第二のPCR反応については、プールし、そして希釈した第一のPCR反応物からの1μlを、プライマーNP1およびNP2(10μM)をPCRプライマー1の代わりに使用したことを除き、PCR1について用いたものと同じ反応混合物に添加した。PCR2を、10〜12サイクルの94℃で10秒、68℃で30秒、72℃で1.5分を用いて実施した。PCR産物を、2%アガロースゲル電気泳動を用いて分析した。
【0170】
PCR産物を、T/Aベクタークローニングキット(Invitrogen)を用いてpCR2.1に挿入した。形質転換E.coliを青/白およびアンピシリン選択に供した。白色コロニーを釣り上げ、96ウェルプレート中に並べ、そして液体培養中で一晩増殖させた。挿入物を同定するために、PCR増幅をPCR1の条件ならびにプライマーとしてNP1およびNP2を用いて1mlの細菌培養物において実施した。PCR産物を2%アガロースゲル電気泳動を用いて分析した。
【0171】
96ウェルフォーマットで20%グリセロール中に細菌クローンを貯蔵した。プラスミドDNAを調製し、配列決定し、そしてGenBank、dBest、およびNCI−CGAPデータベースの核酸相同性検索に供した。
【0172】
(RT−PCR発現分析)
第一鎖cDNAを、Gibco−BRL Superscript Preamplificationシステムを用いるオリゴ(dT)12〜18プライミングによって1μgのmRNAから生成した。製造者プロトコルを使用し、そしてこれは、42℃で50分間の逆転写酵素とのインキュベーション、続いて37℃で20分間のRNAse H処理を包含した。反応を完了した後、この容積を、標準化の前に水で200μlに増大させた。16の異なる正常ヒト組織からの第一鎖cDNAを、Clontechから入手した。
【0173】
複数の組織からの第一鎖cDNAの標準化を、プライマー5’atatcgccgcgctcgtcgtcgacaa3’(配列番号19)および5’agccacacgcagctcattgtagaagg3’(配列番号20)を用いてβアクチンを増幅することにより実施した。第一鎖cDNA(5μl)を、0.4μMプライマー、0.2μM各dNTP、1×PCR緩衝液(Clontech、10mM Tris−HCL、1.5mM MgCl2、50mM KCl、pH8.3)、および1×Klentaq DNAポリメラーゼ(Clontech)を含む総容量50μlで増幅した。18サイクル、20サイクルおよび22サイクルで、5μlのPCR反応物を取り出し、そしてアガロース電気泳動のために使用した。PCRを、以下の条件下で、MJ Researchサーマルサイクラーを用いて実施した:初期変性は94℃で15秒間であり、続いて18サイクル、20サイクル、および22サイクルの94℃で15、65℃で2分、72℃で5秒。72℃での最終伸長を2分間行った。アガロースゲル電気泳動後、複数の組織からの283bpのβアクチンバンドのバンド強度を可視検査によって比較した。22サイクルのPCR後に全ての組織において等しいβアクチンバンド強度を生じるように、第一鎖cDNAの希釈因数を算定した。22サイクルのPCR後に全ての組織において等しいバンド強度を達成するには、3ラウンドの標準化が必要であった。
【0174】
PC−LECTIN遺伝子の発現レベルを決定するために、5μlの標準化された第一鎖cDNAを、以下のプライマー対を用いる25、30、および35サイクルの増幅を用いるPCRによって分析した。これらプライマーは、(MIT;詳細については、www.genome.wi.mit.eduを参照のこと)の補助により設計した(それぞれ、配列番号21および22):
【0175】
【化2】

【0176】
半定量発現分析を、軽度のバンド強度を与えるサイクル数でPCR産物を比較することにより達成した。
【0177】
(結果)
いくつかのSSH実験を上記の材料および方法に記載されるとおりに行い、そして多数の候補遺伝子フラグメントクローンの単離がもたらされた。すべての候補クローンを配列決定し、そして主要な公の遺伝子およびESTのデータベースにおけるすべての配列に対して相同性分析を行って、対応する遺伝子の同一性についての情報を提供し、そして示差的発現のための特定の遺伝子を分析するための決定をガイドすることを支援した。一般に、検索した任意のデータベースにおける任意の公知配列に何ら相同性を有せず、従って新規遺伝子をあらわすと考えられる遺伝子フラグメント、およびこれまでに配列決定された発現配列タグ(EST)に対して相同性を示す遺伝子フラグメントを、RT−PCRおよび/またはノーザン分析による示差的発現分析にかけた。
【0178】
cDNAクローンの1つの58P1D12と呼ばれるものは、427bp長であり、そしてブタ筋肉に由来するESTに対して弱い相同性、およびC型レクチンに対して相同性を有する細胞表面分子であるハムスターライリン(layilin)に対して顕著な相同性を示した。SSHフラグメントは、129アミノ酸のORFを含んでおり、これはライリンに対して有意な相同性を示した。このフラグメントのORFは、ライリンの中央領域に対応し、そして膜貫通ドメインを含む。続いて、58P1D12遺伝子をコードする全長cDNAをこのcDNAを用いて単離し、そして構造分析し(実施例2、下記)、そしてPC−LECTINと再命名した。
【0179】
PC−LECTIN SSHクローンに由来するプライマーを用いたRT−PCRによるディファレンシャル発現分析は、58P1D12/PC−LECTIN遺伝子が、試験した正常精巣および前立腺腫瘍外植片において本質的に発現されることを示した(図3)。より高いサイクルの増幅(すなわち、30より多い)では、より低いレベルの発現が、前立腺、脾臓および胎盤において検出された。全長PC−LECTIN cDNAをプローブとして用いたノーザンブロット分析(図3を参照のこと、下記)により、正常精巣およびLAPC9 AD RNAにおいてのみ1.8kbおよび3.0kbの転写物の発現が示された(図4)、より低い発現レベルが、LAPC−4AD、LAPC−4AIおよびLAPC−9 AIにおいて検出される。
【0180】
(実施例2:全長PC−LECTIN PC−LECTINコードcDNAの単離)
427bpの58PlD12/PC−LECTIN遺伝子フラグメント(実施例1)を用いてPC−LECTIN遺伝子をコードする、30のさらなるcDNAを単離した。PC−LECTINに対する全長cDNAを、LAPC−9 ADライブラリーから単離した。cDNA(クローン2)は、25510bp長であり、そして274アミノ酸のORFをコードするORFの分析により、N末端のシグナル配列および膜貫通ドメインが同定され、これは、PC−LECTINが1a型膜貫通タンパク質であり、N末端が外側にあり、そしてC末端は細胞質内にあることを示す。全長PC−LECTIN cDNAは、American Type Culture Collection(「ATCC」) (Mannassas,VA)に、プラスミドp58PlD12−2に1999年3月10日にATCC受託番号207152として寄託された。その中にあるPC−LECTIN cDNAクローンは、EcoRIIXbaI 2連の消化(5’末端にはEcoRI、3’末端にはXbaI)を用いてそこから切り出され得る。
【0181】
PC−LECTIN配列とハムスターライリンとのアミノ酸整列により、ライリンとの関係が示された(図2A)。しかし、PC−LECTINは、タリン関連ドメインを示さず、このことは、PC−LECTINがライリンと同じ様式で細胞骨格と相互作用しないことを示唆する。他の構造的相違もまた、明白である(図2A)。2550bpのPC−LECTIN cDNAと1747bpのハムスターライリンcDNAcDNAとの整列により、591bp領域に亘る相同性が示された(図2B)。PC−LECTINの残りの領域は、ライリンとは顕著に異なり、このことは、細胞外ドメインのC末端の半分および細胞質ドメイン全体のアミノ酸配列における相違を反映する。このことは、PC−LECTINおよびライリンが関連し、そしてレクチンのサブファミリーをおそらく構成するものの、PC−LECTINがヒト形態のライリンではないようであることを示唆する。
【0182】
(実施例3:PC−LECTIN遺伝子発現分析)
正常ヒト組織におけるPC−LECTIN mRNA発現の初期の分析は、Clontech(Palo Alto, California)から得られた2つの多重組織ブロットをノーザンブロットすることによって行った。このブロットは、標識されたPC−LECTIN cDNAをプローブとして用いた合計16の正常ヒト組織を含む。発現は、正常精巣にのみ検出された。これらのノーザンブロットにより、およそ1.8kbおよび3.0kbの2つの転写物が示された。
【0183】
この初期の分析は、PC−LECTINプローブを用いて50の正常ヒト組織(Clontech, Palo Alto, CA,; Human Master BlotTM)のRNAドットブロットマトリクスを分析した。この結果は、精巣および胎児脾臓においてのみ強力なPC−LECTIN発現を示す(図14)。より低いレベルの発現は、唾液腺および胎児腎臓において検出された。以下においては発現は検出されなかった:脳、扁桃、尾状核、小脳、大脳皮質、前葉、海馬、延髄、後頭葉、被核、黒質、側頭葉、視床、視床下部核、脊髄、心臓、動脈、骨格筋、結腸、膀胱、子宮、前立腺、胃、卵巣、膵臓、下垂体腺、副腎、甲状腺、乳腺、腎臓、肝臓、小腸、脾臓、胸腺、末梢白血球、リンパ節、骨髄、盲腸、肺、気管、胎盤、胎児脳、胎児心臓、胎児肝臓、胎児胸腺、胎児肺。
【0184】
ヒト前立腺癌組織におけるPC−LECTIN発現を分析するために、ヒト前立腺癌外植片由来のRNAもまた分析した。すべてのRNAサンプルを、エチジウムブロミド染色および続いて標識されたβアクチンプローブでの分析により定量的に正規化した。この結果(図4C)は、特にLAPC−9 AD外植片において高レベルのPC−LECTIN発現を示し、より低いが有意なレベルの発現が残りの外植片において検出された。
【0185】
PC−LECTIN SSHフラグメントプローブを用いたノーザンブロット分析は、PC−LECTINがマウス骨内で皮下(sc;図5;レーン2)または脛骨内(it;図5;レーン1)のいずれかで増殖することを示す。PC−LECTIN発現がアンドロゲンの存在に依存するかどうかを調べるために、LAPC−9 AD腫瘍を雄性SCIDマウスにおいて成長させた。このマウスを去勢し、そして腫瘍を28日後に採取した。28日後に去勢した雄性マウスの腫瘍におけるPC−LECTIN発現を、インタクトの雄性マウスの腫瘍における発現と比較した。この結果は、PC−LECTIN発現が去勢した雄性からの腫瘍が劇的に減少することを示す(図6)。コントロールとして、公知のアンドロゲンにより調節される遺伝子TMPRSS2(WO99/62942を参照のこと)の発現もまた、去勢後に下方調節されることが示された(図6)。これらのデータは、前立腺腫瘍におけるPC−LECTIN発現がアンドロゲンの存在に依存することを示す。
【0186】
さらに、RT−PCRを用いて患者由来の癌を含む種々の組織におけるPC−LECTINの発現を分析した。第一の鎖のcDNAを、1gのmRNAから、オリゴ(dT)12−18プライミングを用い、Gibco−BRL Superscript Preamplification系を使用して作製した。製造者のプロトコールが用いられ得、そしてこれは、42℃で逆転写酵素と50分間インキュベーション、続いて20分間に亘り37℃でのRNAse処理を包含する。反応を完了した後、その容量を水で200μlにまで増加させた後正規化した。第一の鎖のcDNAを、目的の種々の組織から調製した。正規化は、アクチンおよびGAPDHに対するプライマーを用いたPCRにより行った。半定量的PCRを、PC−LECTINに対するプライマーを用いて行った。
【0187】
(実施例4:PC−LECTINタンパク質の生化学的特徴づけ)
PC−LECTINタンパク質を最初に特徴付けるため、PC−LECTIN
cDNAを、6Hisタグをカルボキシ末端含むpcDNA3.1 myc−His−プラスミド(Invitrogen)中にクローニングし、293T細胞中にトランスフェクトし、そして生の細胞から除外される水溶性ビオチン化試薬で標識する。ビオチン化細胞表面タンパク質を、ストレプトアビジン−sepharoseでアフィニティー精製し、そしてトランスフェクトした293T細胞中のPC−LECTINの抗His抗体でプローブした(図7)。PC−LECTINタンパク質は、非ビオチン化のトランスフェクトされた細胞からのストレプトアビジン沈降物中には検出されなかった(図7)。
【0188】
(実施例5:哺乳動物系における組換えPC−LECTINタンパク質の発現)
哺乳動物発現のために、PC−LECTIN cDNAをpcDNA3.1 Myc−His−tag(Invitrogen)、およびレトロウイルス発現ベクターpSRαtkneo(Muller et al.、1991、MCB
11:1785)を含む、いくつかのベクター中に中にクローニングし得る。これらの発現ベクターを用いて、PC−LECTINを、PC−3、NIH 3T3、マウスL細胞線維芽細胞および293Tを含む、いくつかの細胞株中に発現させ得る。
【0189】
PC−LECTINタンパク質をコードする組換えレトロウイルスを、ヒト293T細胞(Pear et al.1993、PNAS 90:8392−8396)中に作製し、そしてこれを用いてNIH 3T3細胞に感染させ、これを、2週間にわたりG418中で選択して安定株を生成した。PC−LECTINの発現は、PC−LECTIN cDNAプローブを用いてノーザンブロットを行うことによって確認した。
【0190】
PC−LECTINを発現する哺乳動物細胞株を、インビトロおよびインビボのいくつかのアッセイ(組織培養における細胞増殖、アポトーシスシグナルの活性化、SCIDマウスにおける腫瘍形成、および膜侵入培養系(MICS)を用いたインビトロ侵入を含む)において用いた。
【0191】
(実施例6:バキュロウイルス系における組換えPC−LECTINの生成)
バキュロウイルス発現系において組換えPC−LECTINタンパク質を生成するために、PC−LECTIN cDNAをバキュロウイルス移入ベクターpBlueBac4.5(Invitrogen)中にクローニングした。このベクターは、N末端にHisタグを提供する。具体的には、pBlueBac−−PC−LECTINを、ヘルパープラスミドpBac−N−Blue(Invitrogen)とともにSF9(Spodoptera frugiperda)昆虫細胞中へ同時トランスフェクトして、組換えバキュロウイルスを生成した(詳細はInvitrogen指示マニュアルを参照のこと)。ついで、バキュロウイルスを細胞上清から収集し、そしてプラークアッセイにより精製した。
【0192】
次いで、組換えPC−LECTINタンパク質を、精製されたバキュロウイルスでのHighFive昆虫細胞(InVitrogen)の感染により作製した。組換えPC−LECTINタンパク質を、抗PC−LECTIN抗体を用いて検出し得る。PC−LECTINタンパク質が精製され得、種々の細胞ベースのアッセイにおいて使用され得るか、または免疫原として使用されて、PC−LECTInに対して特異的なポリクローナルまたはモノクローナルの抗体を精製し得る。
【0193】
(実施例7:分泌された組換えPC−LECTINアルカリホスファターゼ融合タンパク質の生成)
PC−LECTINと相互作用するタンパク質の同定により、機能の割り当ての補助となり得、そして前立腺癌についての新規治療標的および診断マーカーを同定し得る。アルカリホスファターゼ−PC−LECTIN融合タンパク質の構築を用いて、PC−LETCINと相互作用するタンパク質を検出および同定し得、他方でモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の生成のための免疫原を生成し得る。
【0194】
GenHunter Corporation(Nashville、TN,cat#Q202)からのAP−TAG系を利用して、その融合タンパク質を作製し得、PC−LECTIN結合を検出し得る。シグナル配列のないPC−LECTIN cDNA(配列番号1A〜D;配列番号1)をpAPtag−5(GenHunter Corp.Nashville、TN)中にクローニングした。以下に示すPC−LECTIN.HindIIIおよびPC−LECTIN.BamHIプライマーを用いて、プラスミドテンプレートであるPC−LECTINクローン2から、アミノ酸22から213までのPC−LECTINオープンリーディングフレームを増幅した。このHindIIIおよびBamHI消化されたPCR産物を、IgGKシグナル配列、PC−LECTIN ORFおよびアルカリホスファターゼをすべてインフレームに保持しながらHindIIIおよびBglII消化したpAPtag−5へと連結した。このPC−LECTIN−AP融合タンパク質は、アルカリホスファターゼのカルボキシ末端においてmyc/Hisタグに沿った分泌を促進するためにIgGKシグナル配列を含む。
【0195】
PC−LECTINHINDIII プライマー(配列番号23):
GTGTAAGCTTCCCGCCGCGTGGTCAGCGGC
PC−LECTIN. BAMHI プライマー(配列番号24):
CACAGGATCCTATACCTGCTTCAGTAAC。
【0196】
このPC−LECTIN−AP融合タンパク質構築物を、293T細胞をトランスフェクトするために使用し、そして培養培地中へ分泌される融合タンパク質の存在を、抗アルカリホスファターゼ抗体および抗HIS抗体を使用するウェスタンブロット分析によってモニターした。この分析の結果は、図8に示され、これは、馴化培地中でのトランスフェクトされた293T細胞の約100kDa融合タンパク質の検出を示す。
【0197】
アミノ酸22〜213もまた、制限酵素HindIIIおよびXhoIを含むプライマーを用いるPCRを使用して、pAPTag−5ベクター中にクローニングして、PC−LECTIN細胞外ドメインのN末端にIgGKシグナル配列融合およびC末端にmyc/Hisタグを生成した。この構築物は、上記58P1D12pAPtagと類似するが、AP融合を含まない。
【0198】
PC−LECTIN(アミノ酸1〜273)のコード配列全体を、pSRaにクローニングした。ORFならびに制限部位EcoRIおよびXbaIをコードするプライマーは、PC−LECTINクローン2(pBK.CMV)からインサートを増幅した。このインサートを、EcoRIおよびXbaIの両方での消化の後、pSRaに連結した。この構築物を使用して、ウイルスを生成し、そしてPC−LECTINタンパク質を安定に発現する細胞株を生成した。
【0199】
PC−LECTIN(アミノ酸1〜273)のコード配列全体を、pcDNA3.1/myc−HIS(Invitrogen)にクローニングした。ORFおよび制限部位EcoRIおよびXbaIをコードするプライマーは、PC−LECTINクローン2(pBK.CMV)からインサートを増幅した。このインサートを、EcoRIおよびXbaIの両方での消化の後、pcDNA3.1/myc−HIS(Invitrogen)に連結した。ウェスタンブロット分析により、293T細胞をこの構築物でトランスフェクトした場合の、PC−LECTINタンパク質の発現を確認した。
【0200】
(実施例8:PC−LECTIN結合パートナーの検出およびクローニング)
PC−LECTINは、結合パートナータンパク質と相互作用し得るレクチンC型ドメインを含む、膜貫通タンパク質である。PC−LECTINレセプター結合を検出するために、いくつかの細胞株、組織、ならびに糖タンパク質(例えば、ヒトIgGもしくはマウスIgG、ウシRNアーゼ、オボアルブミン、ヒトトランスフェリン、フェチュイン(fetuin)グリコホリン、シアログリコホリン)でコートされたプレートを、ChengおよびFlanagan、1994、Cell 79:157〜168における手順を使用して、PC−LECTIN−AP融合タンパク質とともインキュベートする。その細胞を洗浄しそしてAP基質BCIP(脱リン酸化の際に不溶性青色沈殿を形成する)を添加した後、細胞表面レセプターへのPC−LECTIN結合を、青に染まっている細胞を探すために顕微鏡を使用して、検出し得る。スクリーニングし得る細胞株としては、LNCaP、PC−3、DU145、TSUPR、PREC、LAPC4、293T、NIH3T3および他の癌細胞株が挙げられる。LAPC異種移植片、前立腺組織および前立腺癌のような組織もまたスクリーニングし得る。一旦、PC−LECTIN−AP細胞表面結合が観察されると、平衡解離速度定数を、結合相互作用の強度を評価するために算出し得る。さらに、細胞あたりの細胞表面レセプターの数を決定し得る。次いで、PC−LECTINの最高の結合能力を有する細胞株または組織を使用して、レセプターをクローニングし得る。特定の等部分へのPC−LECTINの結合を、低濃度の特定の関連単糖による結合阻害を示すことによって確認し得る。
【0201】
Tartagilaら、1995、Cell 83:12631271、ChengおよびFlanaganなどに記載される戦略のような、発現クローニング戦略を使用して、PC−LECTINについてのレセプターをクローニングし得る。1つのアプローチにおいて、発現ライブラリーを、PC−LECTINーAP結合を示す細胞から構築する。
このライブラリーを、約1000クローンのプールとして作製し、そして同胞選択(sib selection)手順によりスクリーニングする。各プール由来のDNAによるCOS細胞の一過性トランスフェクション、およびその後のPC−LECTIN−AP結合、洗浄および染色を用いたAP活性についてのスクリーニングによって、PC−LECTINを結合する細胞および結果的なPC−LECTINレセプターの発現を同定する。
連続する回のプール部分分割およびスクリーニングの後、PC−LECTIN−APに結合する単コロニーを同定する。
【0202】
あるいは、発現ライブラリーを、標準的技術(Stone J.、Current Protocols in Molecular Biology(1997):20.3.1−20.3.9)を使用して、ファージ中に生成する。膜リフトを、実施例6に従ってPC−LECTIN−AP融合タンパク質を使用してプロービングし、そしてBCIPアルカリホスファターゼアッセイを検出に使用する。PC−LECTIN−APを結合しかつ青色沈殿を生成するプラークを選択し、そしてそのレセプターについての遺伝子を含むプラスミドを切り出す。このアプローチの重要な利点は、PC−LECTINと相互作用する細胞質タンパク質または分泌タンパク質もまた同定することである。
【0203】
(実施例9:PC−LECTIN細胞外ドメインの発現および精製)
293T細胞を、C末端6×HisタグとともにPC−LECTINの細胞外ドメイン(アミノ酸22〜213)をコードするTag5分泌発現ベクターでトランスフェクトした。次いで、安定な細胞株を、ゼオシン選択により生成した。この細胞株を、293 SFMII無血清培地(Gibco)中でスピナー(spinner)培養にて増殖させ、そして馴化培地を精製用に収集した。馴化培地を濃縮し、そして緩衝液を結合緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)、500mM NaCl、および10mMイミダゾール)に交換し、そしてNi−NTAアガロース(Qiagen)を使用する固定化金属アフィニティークロマトグラフィーに供した。出発馴化培地、フロースルー、および溶出した精製物質を、10〜20% SDS−PAGEゲル上で泳動し、そして銀染色した(図9A)か、またはニトロセルロースにトランスファーして抗Hisポリクローナル抗体(pAb)を使用するウェスタンブロットに供した(図9B)。
【0204】
(実施例10:PC−LECTINに対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体)
PC−LECTINに対するポリクローナル抗体を生成するために、3つの異なるペプチドを、PC−LECTINの細胞外ドメインに対して作製した。このペプチド配列は、以下である:
GLWRNGDGQTSGAC(14マー、配列番号25)、
GGPYLYQWNDDRCNM(15マー、配列番号26)、および
EARLACESEGGVLL(14マー、配列番号27)。
【0205】
これらのペプチドを、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)に結合し、そしてウサギを免疫するために使用した。これらのウサギ由来の血清を、細胞溶解物のウェスタンブロッティングおよび全細胞に対するFACSを使用して、PC−LECTINタンパク質に対する反応性について試験した(下記実施例11を参照のこと)。力価を、そのペプチドに対するELISAおよびPC−LECTIN cDNAを発現する組換え細胞株を使用するウェスタンブロットによって、モニターした。続く実験を、PC−LECTINタンパク質のアミノ酸204〜217(GLWRNGDGQTSGAC(配列番号25))から生成した抗体を用いて実施した。
【0206】
モノクローナル抗体を生成するために、PC−LECTINの細胞外ドメインを有効に発現させ、そして上記実施例9に記載されるようなTg5 PC−LECTIN分泌ベクターを発現する293T細胞の馴化培地から精製した。この精製したタンパク質を、BalbCマウスを免疫するために使用した。マウスに、完全フロイントアジュバント中のタンパク質50μgを最初に腹腔内注射し、そして3週間後に、不完全フロイントアジュバント中のタンパク質50μgでブーストした。次いで、2週間免疫スケジュールでブーストを続け、そして免疫したマウス血清の力価を、標的としてTag5 PC−LECTINを使用するELISA、ならびに細胞株および組織溶解物のウェスタンブロット分析による特異性によって、モニターした。
【0207】
(実施例11:組換え細胞株および精巣におけるPC−LECTIN発現)
免疫したマウスの血清を使用して、組換え細胞株および正常な精巣の細胞溶解物を使用する、ウェスタンブロットおよび免疫沈降によって、PC−LECTIN発現を分析した。さらに、Rat1−PC−LECTIN細胞の細胞表面上のPC−LECTIN発現を、その免疫したマウスの血清を使用するフローサイトメトリーによって分析した。
【0208】
neoコントロールウイルスまたはPC−LECTINをコードするウイルスのいずれかに安定に感染したRat1細胞を、RIPA緩衝液(25mM Tris(pH7.5)、150mM NaCl、1% Triton X−100、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、2mM EDTA、100μg/ml PMSF、および2μMロイペプチン)中に溶解した。次いで、溶解物200μgを、精製Tag5−PC−LECTINタンパク質で免疫したマウス由来の血清を用いる免疫沈降に供した。
手短かに言えば、血清3μlを、溶解物(1ml中200μgタンパク質)とともにインキュベートし、そして4℃で一晩インキュベートした。次いで、RIPA緩衝液中のプロテインGビーズの50%スラリー50μlを添加し、そして室温で1時間、さらにインキュベートした。免疫沈降物を、RIPA緩衝液で4回洗浄し、そして3×SDS−PAGEサンプル緩衝液40μl中に溶解し、そして100℃で加熱した。可溶化した免疫沈降物25μlまたは示したRIPA溶解物25μgを、10〜20% SDS−PAGEゲル上で分離し、そしてニトロセルロースにトランスファーした。
【0209】
次いで、ウェスタンブロット分析を、アフィニティー精製したウサギ抗PC−LECTINペプチドポリクローナル抗体(pAb)(2μg/ml、図10A)を用いてか、または0.15% Tween−20を含むTris緩衝化生理食塩水(TBS−T、pH7.5)および1%脱脂乳中に希釈した免疫したマウスの血清の1:1000希釈物を用いて(図10B)のいずれかで実行した。ブロットを、血清とともに室温で2時間インキュベートし、次いで、TBS−Tで3回洗浄した。次いで、免疫反応性バンドを、抗ウサギIgまたは抗マウスIgG HRP結合体化二次抗体(Ab)のいずれかとのインキュベーションにより発色させ、そして、増強化学発光基質(ECL、Amersham)とのインキュベーションおよびオートラジオグラフフィルムへの曝露により可視化した。
【0210】
pCDNA3.1 Myc/His PC−LECTINまたは空のベクターのいずれかで一過性トランスフェクトした293T細胞の細胞溶解物、およびneoコントロールまたはPC−LECTINレトロウイルスのいずれかに安定に感染したRat1細胞の細胞溶解物、および正常な精巣の細胞溶解物を、SDS−PAGEにより分離し、そしてニトロセルロースにトランスファーした。次いで、ウェスタン分析を上記のように実行した。結果を、図11に示す。矢印で示すのは、全長PC−LECTINを示す47kDバンド、40kD細胞外ドメイン、および55kD Myc/Hisタグ化タンパク質である。
【0211】
Tag5 PC−LECTINで免疫したマウスの血清によるRat1細胞上のPC−LECTINの細胞表面認識を、フローサイトメトリーにより分析した。Rat1−neo細胞またはRat1−PC−LECTIN細胞(5×105)を、1% FBSおよび0.002% NaN3を含むPBS(フロー緩衝液)中のTag5 PC−LECTINで免疫したマウスの血清の1:2000希釈物とともに氷上で1時間インキュベートした。細胞を、氷冷フロー緩衝液で2回洗浄し、次いで抗マウスIgG−FITC結合体の1:2000希釈物とともに氷上で30分間インキュベートした。細胞を、フロー緩衝液で2回洗浄し、そして1%パラホルムアルデヒドを含むPBS中に再懸濁した。次いで、各サンプル由来の3,000個の細胞を、PC−LECTINの細胞表面染色についてフローサイトメトリーにより分析した。結果を図12に示す。
【0212】
PC−LECTINの細胞表面発現を、ホルマリン固定しパラフィン包埋した細胞ペレットの免疫組織化学分析を使用してさらに分析した。PC−LECTINでトランスフェクトした293T細胞を、7.5μg/mlのウサギポリクローナル抗体(SHIER II前処理)で標識した。PC−LECTINの細胞表面発現を、図13に示すように検出した。この抗体は、親293T細胞を染色しなかった。
【0213】
(実施例12:PC−LECTINの糖質結合特異性)
PC−LECTINを、馴化培地から精製したPC−LECTINのTag5
細胞外ドメインを使用する96ウェルマイクロアッセイを使用して、糖質結合特異性について分析した。精製タンパク質調製物上の種々の糖質部分にPC−LECTINが結合する能力の分析は、高マンノース残基ならびにN−アセチルグルコサミンについての特異性を示す。この特異性は、レクチン コンカナバリンAについて観察される特異性と同様である。
【0214】
96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを、PBS中1μg/ウェルの適切な糖タンパク質でコートし、そして37℃で一晩インキュベートする。このウェルを、1×Tris緩衝化生理食塩水(TBS)で1回洗浄し、次いでPBS中3%BSA(Sigma)で1時間、揺らしながらブロックした。このウェルを、緩衝液コントロール、あるいは2mM CaCl2を補充した1×TBS中の50ngのPC−LECTINまたは50ngのコンカナバリンA(ConA)のいずれかとともにインキュベートした。次いで、このプレートを、室温で2時間、揺らしながらインキュベートした。次いで、このプレートを、TBS、2mM CaCl2、0.05% Tween−20で3回洗浄し、そしてTBS、2mM CaCl2で1回洗浄した。次いで、このウェルを、室温で1時間、各々TBS、2mM CaCl2+1% BSA中で1/1000に希釈した、抗His6ウサギポリクローナル抗体(pAb)(Santa Cruz Biotechnology)(PC−LECTIN検出のため)または抗CoAウサギポリクローナル抗体(Vector Laboratories)(ConA検出のため)のいずれかとともにインキュベートした。このウェルを、上記のように洗浄した。次いで、このウェルを、TBS、2mM CaCl2+1%BSAで1/3,000に希釈した抗ウサギIg HRP結合体とともにインキュベートした。このウェルをまた洗浄し、次いで、製造業者の指針に従って、TMB ELISA(GIBCO−BRL)を使用して発色し、そしてその光学密度を、450nMにて測定した。データが、表1に示され、このデータは、2連決定の平均値を示す。
【0215】
(表1.PC−LECTIN糖質結合特異性)
【0216】
【表1】

−:試験せず
ConA:コンカナバリンA
1:C−7913カルボキシエチルチオエチル2−アセトアミド−2−デオキシ−4−o−B−s−ガラクトピラノシル−b−d−グルコピラノシドBSA
GlcNAc:N−アセチルグルコサミン
GalNAc:N−アセチルガラクトサミン
GalB1:ガラクトースβ 1結合。
【0217】
(実施例13:HLA−A2へのPC−LECTINペプチドの推定結合)
ヒトMHCクラスI分子HLA−A2に結合すると推定されるPC−LECTINペプチドを同定するために、58P1D12(PC−LECTIN)−F3C4ファミリーメンバータンパク質の完全アミノ酸を、Bioinformatics and Mlecular Analysis Section(BIMAS)ウェブサイト(http://bimas.dcrt.nih.gov/)中に見出されるHLA Peptide Motif Searchアルゴリズムに入力した。58P1D12−F3C4推定結合ペプチドの結果を、表2に示す。トップ5にランクする候補を、その位置、各特定のペプチドのアミノ酸配列、および推定結合スコアとともに示す。この結合スコアは、37℃、pH6.5におけるそのペプチドを含む複合体の解離の推定半減期に対応する。最高の結合スコアを有するペプチドは、細胞表面上のHLAクラスIに最も緊密に結合しており、従って、T細胞認識についての最良の免疫原性標的を示すと推定される。HLA−A2へのペプチドの実際の結合は、抗原プロセッシング欠損細胞株T2上でのHLA−A2発現の安定性により評価し得る(Xueら、1997、Prostate 30:73〜8;Peshwaら、1998、Prostate 36:129〜38)。特定のペプチドの免疫原性を、樹状細胞の存在下でのCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の刺激によって、インビトロで評価し得る(Xueら、1997、Prostate 30:73〜8;Peshwaら、1998、Prostate 36:129〜38)。
【0218】
(表2.推定ペプチド結合スコア)
【0219】
【表2】

【0220】
(実施例14:潜在的なシグナル伝達経路の同定)
PC−LECTINが細胞中の既知のシグナル伝達経路を直接的または間接的に活性化するか否かを決定するために、ルシフェラーゼ(luc)を基礎にした転写レポーターアッセイを、PC−LECTINを発現する細胞中で実施する。これらの転写レポーターは、良く特徴付けられたシグナル伝達経路の下流にある、既知の転写因子のためのコンセンサス結合部位を含む。これらのレポーターおよびそれらの関連転写因子、シグナル伝達経路、および活性化刺激物の例を、以下に列挙する。
1.NFκB−luc、NFκB/Rel;Ik−キナーゼ/SAPK;成長/アポトーシス/ストレス
2.SRE−luc、SRF/TCF/ELK1;MAPK/SAPK;成長/分化
3.AP−1−luc、FOS/JUN;MAPK/SAPK/PKC;成長/アポトーシス/ストレス
4.ARE−luc、アンドロゲンレセプター;ステロイド類/MAPK;成長/分化/アポトーシス
5.p53−luc、p53;SAPK;成長/分化/アポトーシス
6.CRE−luc、CREB/ATF2;PKA/p38;成長/アポトーシス/ストレス。
【0221】
PC−LECTIN媒介効果を、mRNA発現を示す細胞中でアッセイし得る。ルシフェラーゼレポータープラスミドを、脂質媒介トランスフェクション(TFX−50、Promega)により導入し得る。ルシフェラーゼ活性(相対的転写活性の指標)を、ルシフェリン基質との細胞抽出物のインキュベーションにより測定し、そして反応の化学発光がルミノメーター中でモニターする。
【0222】
(実施例15:PC−LECTIN機能のインビトロアッセイ)
前立腺癌におけるPC−LECTINの発現は、この遺伝子が腫瘍進行および/または腫瘍開始において機能的役割を有するという証拠を提供する。PC−LECTINが、増殖シグナルを活性化することに関与するレセプターとして機能する可能性がある。PC−LECTIN機能を、インビトロアプローチを用いて哺乳動物細胞中で評価し得る。哺乳動物発現には、PC−LECTINを、pcDNA 3.1 myc−His−タグおよびレトロウイルスベクターpSRαtkneo(Mullerら、1991、MCB 11:1785)を含む多くの適切なベクター中にクローン化し得る。このような発現ベクターを用い、PC−LECTINを、PC−3、NIH3T3、LNCaPおよび293Tを含むいくつかの細胞株で発現し得る。PC−LECTINの発現を、抗−PC−LECTIN抗体およびノザンブロット分析を用いてモニターし得る。
【0223】
PC−LECTINを発現する哺乳動物細胞株を、いくつかのインビトロアッセイおよびインビボアッセイで試験し得、このアッセイには、組織培養中の細胞増殖,アポトーシスシグナルの活性化、SCIDマウスにおける腫瘍形成、および膜侵襲培養系を用いるインビトロ侵襲(MICS;Welchら、Int.J.Cancer 43:449−457)が含まれる。PC−LECTIN細胞表現型を、PC−LECTINの発現を欠く細胞の表現型と比較する。
【0224】
PC−LECTINを発現する細胞株はまた、マトリゲルでコートされた多孔性膜チャンバ(Becton Dickinson)を通る細胞の通過を測定することにより、侵襲特性および遊走特性の改変についてアッセイし得る。向かい合う側への膜を通る細胞の通過を、カルセイン−Am(Molecular Probes)を負荷したインジケーター(indicator)細胞を用いる蛍光アッセイ(Becton Dickinson Technical Bulletin #428)を用いてモニターする。分析される細胞株は、親およびPC−LECTINを過剰発現する、PC3細胞、NIH3T3細胞ならびにLNCaP細胞を含む。PC−LECTIN発現細胞が化学誘引物質の性質を有するか否かを決定するために、インジケーター細胞を、コントロール培地に比較してPC−LECTIN馴化培地の勾配に向かっての多孔性膜を通る通過についてモニターする。このアッセイはまた、候補の癌治療組成物によるPC−LECTINで誘導される効果の特異的中和を定性および定量するために用い得る。
【0225】
PC−LECTINの機能は、上記の種々の機能的アッセイ(例えば、成長、侵襲および移動)と連結された抗アンチセンスRNA技術を用いて評価し得る。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを、PC−LECTIN発現細胞中に導入し得、それによってPC−LECTINの発現を防ぐ。コントロール細胞およびアンチセンス含有細胞を、増殖、侵襲、遊走、アポトーシスおよび転写能力について分析し得る。PC−LECTIN発現の損失の局所効果および全身効果を評価し得る。
【0226】
(実施例16:PC−LECTIN腫瘍成長促進についてのインビボアッセイ)
腫瘍細胞増殖に対するPC−LECTINタンパク質の影響を、腫瘍をもつマウス中の遺伝子過剰発現によりインビボで評価し得る。例えば、SCIDマウスに、各脇腹上に、tkNeo空ベクターまたはPC−LECTINを含む、PC3、TSUPR1、またはDU145細胞のいずれか1×106を皮下注射し得る。少なくとも以下の2つの戦略を用い得る:(1)ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日に公開されたUK2,211,504)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびシミアンウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得られた構成的プロモーター、または異種哺乳動物プロモーター(例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター(このようなプロモーターが宿主細胞系と適合するという条件で)から得られた構成的プロモーターのような、プロモーターの調節下での構成的PC−LECTIN発現、および(2)(このようなプロモーターが宿主細胞系と適合するという条件で)ecdysone、tetなどのような、誘導性ベクター系の制御下の調節発現。次いで、腫瘍容積を、触知可能な腫瘍の出現時にモニターし、そして、経時的に、PC−LECTIN発現細胞が、より速い速度で成長するか否か、およびPC−LECTIN発現細胞により生成される腫瘍が、改変された攻撃性の特徴(例えば、増大した転移、血管形成、化学的治療薬物に対して減少した応答性)を示すか否かを測定する。さらに、マウスに、1×105の同じ細胞を同所移植し得、PC−LECTINが、前立腺における局所成長に対する影響、または特に肺、リンパ節、および骨髄に転移する細胞の能力に対する影響を、有するか否かを決定する。
【0227】
このアッセイはまた、PC−LECTIN内部抗体(intrabody)、PC−LECTINアンチセンス分子およびリボザイムのような、候補治療組成物のPC−LECTIN阻害効果を決定するために有用である。
【0228】
(実施例17:細胞下(subcellular)画分中のPC−LECTIN発現のウェスタン分析)
PC−LECTINの配列分析は、2つのC型レクチンドメインおよび膜貫通ドメインの存在を示した。PC−LECTINの細胞位置は、細胞生物学で広く用いられる細胞下分画技法を用いて評価し得る(Storrie Bら、Methods Enzymol.1990;182:203−25)。前立腺細胞株を、核画分、細胞質ゾル画分および膜画分に分離し得る。異なる画分中のPC−LECTIN発現を、ウェスタンブロッティング技法を用いて試験し得る。
【0229】
あるいは、PC−LECTINの細胞下局在化を決定するために、293T細胞を、HISタグ化PC−LECTINをコードする発現ベクター(PCDNA
3.1 MYC/HIS、Invitrogen)でトランスフェクトし得る。このトランスフェクトされた細胞を収集し、そして先に記載のように(Pemberton、P.A.ら、1997、J of Histochemistry and Cytochemistry、45:1697−1706)、差次的細胞下分画プロトコルに供し得る。このプロトコルは、細胞を、核、重い膜(リソソーム、ペルオキシソーム、およびミトコンドリア)、軽い膜(原形質膜および小胞体)、および可溶性タンパク質について濃縮された画分に分割する。
【0230】
本出願を通じて、種々の刊行物が参照されている。これらの刊行物の開示は、それらの全体が本明細書に参考として援用されている。
【0231】
本発明は、本明細書に開示される実施形態により範囲を限定されるべきではない。これら実施形態は、本発明の個々の局面の単なる例示として意図され、そして機能的に等価であるすべてのものが、本発明の範囲内にある。本明細書に記載のモデルおよび方法に加えて、本発明のモデルおよび方法に対する種々の改変が、上記の記述および教示から当業者に明らかとなり、そして本発明の範囲内にあることが同様に意図される。このような改変またはその他の実施の形態は、本発明の真の範囲および趣旨から逸脱することなく実施され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のアミノ酸配列をその全長にわたって含むポリペプチドと、賦形剤を含む、免疫応答を誘発するための医薬組成物。
【請求項2】
前記ポリペプチドは配列番号2のアミノ酸配列を含むこと
を特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記免疫応答はB細胞又はT細胞の活性化を含むこと
を特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
B細胞の活性化により、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体が産生されること
を特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
活性化されるT細胞は細胞傷害性T細胞(CTL)であり、活性化されたCTLは配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現する自己細胞を殺滅すること
を特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
活性化されるT細胞はヘルパーT細胞(HTL)であり、活性化されたHTLはCTLの細胞傷害活性又はB細胞の抗体産生活性を促進するサイトカインを分泌すること
を特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
配列番号2のアミノ酸配列にその全長にわたり少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現する癌細胞に生物剤を送達するための医薬組成物であって、
該医薬組成物は、該ポリペプチドに特異的に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメントと、賦形剤を含むこと
を特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
前記抗体又はその抗原結合性フラグメントはモノクローナルであること
を特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記抗体又はその抗原結合性フラグメントは検出可能なマーカーに結合体化されていること
を特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記検出可能なマーカーは、放射性同位体、蛍光化合物、生体発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤および酵素からなる群より選択されること
を特徴とする請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗体又はその抗原結合性フラグメントは細胞傷害性薬剤に結合体化されていること
を特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記細胞傷害性薬剤は、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウムブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、ゲロニン、マイトゲリン、リトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロチン、カリケアマイシン、サポナリアオフィシナリスインヒビター、212Bi、131I、131In及び186Reからなる群より選択されること
を特徴とする請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗原結合性フラグメントはFab又はF(ab)フラグメントであること
を特徴とする請求項7〜12の何れか1項に記載の医薬組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−235109(P2009−235109A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172429(P2009−172429)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【分割の表示】特願2001−517695(P2001−517695)の分割
【原出願日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【出願人】(500553659)アジェンシス,インコーポレイテッド (35)
【Fターム(参考)】