説明

ヒト硬膜を修復および再生するための組成物

【課題】硬膜組織が、傷害、外傷、手術などの結果として損傷した場合に、哺乳動物の硬膜組織を修復および再生するための、実質的に非多孔性のウマコラーゲン箔を使用する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題は、弾性であり、液密であり、かつ高い引っ張り強度を有する置換硬膜を提供する組成物を提供するコラーゲン繊維を含む、本発明の非多孔性のウマコラーゲン箔を提供することにより解決された。この非多孔性のウマコラーゲン箔は、さらに再吸収可能であり、そして生体マトリクスを提供し、ここで、およそ数週間の間に自己由来の硬膜から判別不可能になる新規硬膜が、急速に形成される。このウマコラーゲン箔を作製するためのプロセスは、疾患伝播の可能性を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許文献の開示の一部は、著作権保護の対象となる材料を含む。著作権の所有者は、それが特許庁の特許ファイルまたは特許記録中に現われる限りは、特許文献または特許公開のいずれかによる複製に対して意義を唱えないが、そうでない場合はいかなるものでも全て著作権を保有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、実質的に非多孔性であるコラーゲン箔(foil)組成物の、哺乳動物の硬膜組織を修復および/または再生する移植片材料としての使用に関する。より具体的には、本発明は、置換硬膜材料として、および硬膜再生のための生体マトリクスとしての、非ヒト起源コラーゲン箔組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
硬膜は、中枢神経系の解剖学的構造において機能的に重要な構造であり、全中枢神経系を覆い、かつそれを外部の影響から保護する膜系を形成する。
【0004】
この硬膜は、外傷、炎症性または腫瘍性のプロセス、外科的な処置、あるいは先天的な異常を含む多くの原因に起因する修復を必要とし得る。硬膜の欠損(特に外科的処置後および外傷後のフィステルの存在において)を閉じる必要性は、理想的な硬膜置換物に対する探求を促した。これらの欠損は、術後の合併症、特に脳脊髄液の漏出、感染、および結果として生じる大脳の発作を生じ得る。硬膜移植処置のいくつかの形態は、約30%の開頭術に関して必要とされる。硬膜欠損の主な閉鎖はしばしば失敗するので、上記合併症を避けるための硬膜置換物の利用可能性は、非常に実用的な意義を有する。
【0005】
硬膜の永続的な液密閉鎖は、頭蓋の損傷後、または脳または脊柱における悪性の腫瘍を除去するための外科的な介入後の、脳脊髄液の漏出を避けるために必要とされる。神経外科医は現在、再吸収可能な硬膜置換物または再吸収不可能な硬膜置換物を使用し、そして通常はそれらを頭蓋または脊柱の硬膜に、縫合および/またはフィブリン糊で結合する。再吸収可能な材料の例としては、ヒト死体硬膜、ヒト大腿筋膜、ウシ心膜、外因性コラーゲンスポンジ、および再吸収可能なポリエステル(ポリグラクチンおよび/またはポリ−p−ジ−オキサノン)からなる織物材料からの移植片が挙げられてきた。再吸収不可能な硬膜置換物の例としては、ポリ−テトラ−フルオロ−エチレン(PTFE)またはポリエステルウレタンから作られる材料が挙げられる。
【0006】
今日までのほとんど全ての硬膜移植片研究は、いくつかの主要な合併症に関する。報告されてきた主な合併症は慢性炎症および拒絶反応、ならびに、とりわけてんかんを誘発する病巣の発達を生じる皮質髄膜接着の形成である。血腫および脳脊髄液フィステルもまた観察され、これは次いで、種々の疾患を引き起こす生物にとっての侵入点となる。
【0007】
多数の材料および方法が、理想的な硬膜移植片(種々の金属、移植片、合成材料、自己由来組織移植片、および保存されたヒト死体硬膜を含む)の探求において、過去数十年にわたって評価されてきた。これらの製品のほとんどは、術後の合併症(それらのいくつかは重篤である)に関連するので不適切である。この合併症の例としては、慢性炎症および拒絶反応、皮質髄膜の接着の発達、出血ならびに結合組織の薄層における硬膜移植片の被包が挙げられる。適切な硬膜置換物を対象とする先行研究は、内因性の新規硬膜(neodura)の形成と合わさった早期の移植片吸収が、問題が無く、かつ永続的な硬膜融合の、予測される主要な要因であるということを示す。
【0008】
いくつかの自己由来の組織が、硬膜置換物として、過去において使用されてきた。1911年に、Kostlingは、硬膜移植片を形成するために、患者のヘルニア嚢を使用した。非特許文献1。他の自己由来組織(例えば、側頭筋膜、大腿筋膜および骨膜の弁)が、それ以降使用されてきた。Barrowらは、大きな硬膜損傷を、内因性のより大きい網によって首尾良く再構築した。非特許文献2。自己由来の移植片の利点は、病原体の伝播および組織拒絶の危険性が無いということである。しかしながら、組織のさらなる除去は、外科的外傷を増大させ、そしておそらくいかなる場合においても、複雑な外科的処置を長引かせる。
【0009】
保存されたヒト死体硬膜は、ヒト被験体における硬膜置換のための硬膜置換物として、長年にわたって慣用的に使用されてきた。これらの調製物は、生体自体の硬膜のような織り合わされた結合組織繊維からなる。このヒト死体硬膜が神経外科的方法において利用されると、これらのヒト死体硬膜は、生体自体の硬膜と類似して、液密性閉鎖を形成するとされており、最終的には、さらに長期間にわたる分解過程の間にその生体自体の組織によって置換される。この死体由来の材料は、凍結乾燥(freeze dry,lyophilization)およびガンマ線滅菌(Lyodura,B.BraunMelsungen Akiengesellschaft,Melsungen,Germany)によって保存されるか、または多段階化学的処理(Tutoplast(登録商標)処理;Tutoplast(登録商標)Dura,Tutogen Medical GmbH,Neunkirchen am Brand,Germany)で保存される。しかし、ヒト死体硬膜移植片は、懸念されている疾患である海綿状脳症(クロイツフェルト−ヤーコプ病またはゲルストマン−シュトロイスラー症候群)を引き起こし得るウイルスおよびプリオンを持ち込むという重大な危険性を伴う。ヒト硬膜の移植後に多数死亡者が発生したために、ヒト死体硬膜移植片は、多くの国おいて、使用制限されているかまたは使用禁止となっている。
【0010】
また、ヒトの大腿筋膜および心膜の調製物が、ヒトの死体硬膜よりも感染性因子を伝播する危険性が少ないとして、硬膜置換物用材料として使用されてきた。これらの調製物は、疾患を伝播させる危険性は少ないものの、数ヶ月または数年の期間に間に、ゆっくりと吸収され、瘢痕が形成され、そして、その硬膜置換物材料が被包され得る。
【0011】
硬膜置換物はまた、皮膚または腱から単離されたウシまたはブタのコラーゲンおよびウシ心膜組織のような非ヒト供給源にも由来する。ヒトに由来する供給源と同様に、ある種のウシ硬膜置換物は、疾患、すなわち、牛海綿状脳症(BSE)を、その硬膜移植片を受け取った患者に伝播させると考えられている。しかしブタ由来の硬膜置換物を使用したとしても、その硬膜置換物の下にある大脳組織と接着することになる。
【0012】
Narotamら(米国特許第5,997,895号)は、多孔性コラーゲンの、スポンジ、フェルトまたはフィルムの形態である処理異種移植コラーゲンに由来する硬膜置換物を開示する。コラーゲンを処理することで、ウイルスおよびプリオンによる夾雑物が不活性化され、その結果、この置換物は、感染量のウイルスおよびプリオンを含まないようになる。硬膜置換物の有孔性は、血管、細胞および髄膜組織を硬膜置換物に浸潤させるために必要であると開示される。しかしながら、臨床的な実施において、形状の安定性および主な液密性は必ずしも保証されているわけではないので、利用可能な多孔性材料の適用は、不利益と結びつき得る。Narotamらはまた、コラーゲンのスポンジ、フェルトまたはフィルムの2つ以上の形態のサンドイッチである硬膜置換物を開示し、ここで、少なくとも一つの形態は、髄膜組織の内植のために十分に多孔性である。
【0013】
再吸収可能なポリエステルはまた、臨床的使用のために利用可能であるが、低い弾性および遅い分解という不利益を有する。特定の状況において、これらの移植物は、創傷治癒の問題を引き起こし、そして感染を増大させ得る。
【0014】
金属(例えば、金、白金、銀、ニッケル、タンタル、またはスチール)、またはポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または他のポリエステル)からなる箔またはシートはまた、硬膜置換物として使用されてきた。しかしながら、これらの置換物は患者によって吸収されず、結合組織の硬い層の中に被包され、そして生体自体の構築物によって置換されることなく、異物として患者の生涯にわたり体内に残る。これは、PTFE箔膜の多孔性の構造に起因する、その生体自体の防御機構によっては制御され得ない内孔における微生物増殖の高い危険を生じ得る。コラーゲンベースの製品は、徐々に一般的になりつつある。化学的処理は、無細胞性の、抗原を含まないコラーゲン骨格のみが保存されるように、高い結合組織成分(例えば、心膜または真皮)を有する構造を改変するために使用され得る。全体的に、コラーゲン繊維またはコラーゲンでコートされた合成材料からなる製品は、利用可能である。両方の場合において、このコラーゲン繊維ネットワークは、内因性結合組織を成長させるためのマトリクスとして作用する。
【0015】
Chaplinらは、モルモットの皮膚から得られた製品(XenoDerm,Lifecell Corp.,The Woodlands,TX)を、動物モデルにおいて試験した。非特許文献3。比較するものは、自己由来の頭蓋骨膜であった。表皮、全ての細胞構成成分、および他の潜在的な抗原性要素または感染性要素は、製造プロセスにおいて化学的に除去された。コラーゲン繊維および構造的な皮膚の構築は、変化せずに保存された。この製品は、中程度の細胞応答の存在下で、周囲の硬膜と共に組み込まれることが即座に報告された。浸潤する繊維芽細胞が、移植部位で優先的に観察された。移植片および元々の硬膜は、術後6ヶ月の研究の終わりに、かろうじて判別できると考えられていた。
【0016】
これらの結果に続いて、Warrenら(2000)は、ヒト被験体において硬膜置換のためのAlloDerm(登録商標)(LifeCell Corp.,The Woodlands,TX)を研究した。非特許文献4。200人の患者が、この研究の間、AlloDerm硬膜移植片を受容した。この材料は、ヒト真皮から得られる。その製造プロセスは、XenoDermについてのプロセスと同一であると考えられ、主要組織適合複合体(MHC)抗原を含まない、無細胞のコラーゲン生体マトリクスを生成する。200人の患者のうち7人が、術後の合併症(例えば、感染および脳脊髄液(CSF)のフィステル)を発症したが、これらの事象のうち移植片自体によって引き起こされたと報告されたものは無かった。外科的な修正は、これらの患者のうち、誰も、硬膜移植部位で接着または拒絶反応を発症しなかったということを示すと考えられた。この材料は、顕微鏡試験において、周囲の硬膜と非常に類似していると考えられていた。この製品に関する長期の研究データは、まだ利用可能ではない。
【0017】
Filippiら(2001)は、γ線滅菌されたウシ心膜(Tutopatch(登録商標),Tutogen Medical GmbH,Neunkirchen,Germany)保存溶媒の、32被験体における硬膜置換のための使用における実験を記載した。非特許文献5。術後の経過は、心臓が原因で術後まもなく死亡した一人の患者以外は、全体としては何事も無かったと考えられた。移植片は、扱い易く、耐久性があり、そして低コストであると記載された。ありうる後期合併症を除外する長期研究データは、まだ利用可能ではない。
【0018】
コラーゲン製品は、多くのことを考慮すると、生体材料としての使用に適切である:これらのコラーゲン製品が関与する走化性相互作用は、内皮細胞および繊維芽細胞の迅速な浸潤を容易にし、次いで、これらの細胞は、新たなコラーゲン繊維を産生し、および堆積させる;周囲の構造における随伴する制限されたリンパ球性炎症応答は、コラーゲン生体マトリクス(biomatrix)の吸収を容易にする。コラーゲンはまた、治療的使用にする止血特性を有する。コラーゲン構造上の血小板堆積物自体は、崩壊し、そうすることによって、血漿因子とともにフィブリン形成を容易にする、凝固因子を放出する。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Kostling,W.,Med Wochenschr,58,1042(1911)
【非特許文献2】Barrowら、J.Neurosurg.60;305−1(1987)
【非特許文献3】Chaplinら、Neurosurgery,45:2,320−7(1999 8月)
【非特許文献4】Warrenら、Neurosurgery 46(6):1391−96(2000)
【非特許文献5】Filippiら、Neurosurg.Rev.,24:103−107(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
公知の硬膜置換材料およびこのような材料を使用する関連する方法は、被包、硬膜瘢痕形成、または大脳組織への接着を避け、さらに、海綿状脳炎または他の疾患を引き起こし得る微生物、ウイルスおよびプリオンを伝播する危険性が低い、液密の再吸収性置換硬膜を提供していない。理想的な硬膜置換物は、免疫防御応答または炎症を生じるべきではなく、非毒性でなければならない。理想的な硬膜置換物は、迅速に吸収されるべきであり、同時に、内因性の新規硬膜が発生するように、結合組織構造が構築され得るべきである。移植片は、このプロセスの間、大脳組織にも骨にも接着も融合もするべきではない。この材料は、引き裂きに対して抵抗性であり、その形状を維持し、脳脊髄液浸潤に抵抗するべきである。置換硬膜はまた、その体積および形状が安定であるべきであり、移植後、膨張または収縮に抵抗する。他の重要な基準は、ウイルスおよびプリオンに対する安全性、ユーザーフレンドリー性および経済的な製造コストである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の要旨)
従って、本発明の種々の局面において、再吸収性であり、液密であり、弾性であり、その体積および形状が安定である置換硬膜材料が提供され、疾患伝播の危険に関する優れた安全性プロフィールを提供する。
【0022】
従って、簡単に述べると、本発明は、哺乳動物において硬膜組織を修復および/または再生するための方法に関する。硬膜組織は、コラーゲン繊維の生体マトリクスを含むウマコラーゲン箔と接触させられる。ウマコラーゲン箔は、コラーゲン繊維の懸濁液を沈降させて、コラーゲン繊維の箔を形成させるプロセスによって形成される。ここで、このコラーゲン繊維は、化学的にも放射線的にも架橋されていない。
【0023】
別の局面において、本発明は、哺乳動物において硬膜組織を修復するための方法に関し、この方法は、硬膜組織を、コラーゲン繊維の非天然生体マトリクスを含む実質的に非多孔性のウマコラーゲン箔と接触させる工程を包含し、ここで、このウマコラーゲン箔は、無細胞成分から本質的になり、このコラーゲン繊維は、化学的にも放射線的にも架橋されていない。
【0024】
別の局面において、本発明は、哺乳動物において硬膜組織を修復および/または再生するための方法に関し、この方法は、硬膜組織を、コラーゲン生体マトリクスから本質的になる実質的に非多孔性のウマコラーゲン箔と接触させる工程を包含し、ここで、このコラーゲン生体マトリクスは、化学的にも放射線的にも架橋されていない。
【0025】
本発明の他の局面および特徴は、一部明白であり、一部、本明細書において後に示される。
【0026】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
硬膜組織とウマコラーゲン箔(foil)とを接触させることによって哺乳動物において硬膜組織を修復および再生するための医薬の製造における、ウマコラーゲン箔の使用であって、該ウマコラーゲン箔は、化学物質によっても、放射線によっても架橋されていない天然に存在しないウマコラーゲン繊維の生体マトリクスを含み、ここで、該生体マトリクスは、実質的に非多孔性であり、かつ本質的に無細胞の成分からなり、該成分は、結合組織タンパク質を含む、使用。
(項目2)
前記ウマコラーゲン箔は、コラーゲン繊維の複数の層を含む、項目1に記載の使用。
(項目3)
前記ウマコラーゲン箔は腱に由来する、項目1または2に記載の使用。
(項目4)
前記腱はアキレス腱である、項目3に記載の使用。
(項目5)
前記ウマコラーゲン箔は再吸収可能である、項目1〜4のいずれか1項に記載の使用。
(項目6)
前記硬膜組織は、先天的な状態、出生時欠損、疾患、損傷または外科的処置の結果として修復および再生を必要とする、項目1〜5のいずれか1項に記載の使用。
(項目7)
前記外科的処置は腫瘍の除去である、項目6に記載の使用。
(項目8)
前記硬膜組織が頭蓋に位置する、項目1〜7のいずれか1項に記載の使用。
(項目9)
前記硬膜組織が脊柱に位置する、項目1〜7のいずれか1項に記載の使用。
(項目10)
前記ウマコラーゲン箔は、その乾燥形状において、0.01mmと3.0mmとの間の厚み、例えば、0.02mmと2.0mm、0.03mmと1.5mm、または0.05mmと1.0mmとの間の厚みを有する、項目1〜9のいずれか1項に記載の使用。
(項目11)
前記ウマコラーゲン箔は、その乾燥形状において、1.0mm以下の厚みを有する、項目1〜9のいずれか1項に記載の使用。
(項目12)
前記接触させる工程は、前記ウマコラーゲン箔を前記硬膜組織に、フィブリンシーラント、組織糊および/もしくは外科的縫合により、ならびに/または加圧フィッティング技術の利用、または該ウマコラーゲン箔と該硬膜組織との間の自然接着の利用により接着する工程を包含する、項目1〜11のいずれか1項に記載の使用。
(項目13)
前記ウマコラーゲン箔は実質的に液密である、項目1〜12のいずれか1項に記載の使用。
(項目14)
前記ウマコラーゲン箔は、前記接触させる工程の前に、5秒間〜10分間、好ましくは1分間〜6分間、生理食塩水中で水和される、項目1〜13のいずれか1項に記載の使用。
(項目15)
前記ウマコラーゲン箔は、前記接触させる工程の前に水和されない、項目1〜13のいずれか1項に記載の使用。
(項目16)
前記ウマコラーゲン箔は、完全に水和された場合に、その乾燥重量の15倍まで、好ましくは10倍までだけまたは5倍までだけ重くなる、項目1〜15のいずれか1項に記載の使用。
(項目17)
前記ウマコラーゲン箔は、乾燥している場合に、1mg/cmと50mg/cmとの間、例えば2.5mg/cmと10mg/cmとの間の重さである、項目1〜16のいずれか1項に記載の使用。
(項目18)
前記ウマコラーゲン箔の表面積は、完全に水和された場合に、その乾燥形状における場合より、−5%と20%との間大きい、好ましくは−5%〜10%または−5%〜5%大きい、例えば、その乾燥形状における場合より約4%まで大きい、項目1〜16のいずれか1項に記載の使用。
(項目19)
前記ウマコラーゲン箔の厚みは、完全に水和された場合に、その乾燥形状の厚みの約2倍または3倍である、項目1に記載の使用。
(項目20)
前記ウマコラーゲン箔は、髄膜細胞での細胞器質化後は、神経組織にも脳組織にも接着しない、項目1〜19のいずれか1項に記載の使用。
(項目21)
前記ウマコラーゲン箔は、髄膜細胞での細胞器質化後は、前記頭蓋にも脊柱組織にも接着しない、項目1〜20のいずれか1項に記載の使用。
(項目22)
前記哺乳動物は、ヒト、ウマ、ヒツジ、サルおよび実験動物からなる群より選択される、項目1〜21のいずれか1項に記載の使用。
(項目23)
前記ウマコラーゲン箔は、保存剤、成長因子、該ウマコラーゲン箔の可撓性および弾性を促進する添加物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される賦形剤をさらに含む、項目1〜22のいずれか1項に記載の使用。
(項目24)
前記ウマコラーゲン箔は、ウイルスもタンパク質も含まない、項目1〜23のいずれか1項に記載の使用。
(項目25)
前記コラーゲン繊維は、実質的にI型コラーゲンからなる、項目1〜24のいずれか1項に記載の使用。
(項目26)
前記髄膜細胞の細胞器質化は、術後約16週間後で完全に器質化される、項目1〜25のいずれか1項に記載の使用。
(項目27)
前記ウマコラーゲン箔は、0.5N/cm細片と30N/cm細片との間、例えば、1N/cm細片と6N/cm細片との間の極限引っ張り力を有する、項目1〜26のいずれか1項に記載の使用。

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、乾燥ウマコラーゲン箔の表面を示すSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。コラーゲン繊維が明瞭に示される。表面の実質的な非多孔性が、この写真から明らかである。
【図2】図2Aおよび2Bは、ESEM(環境制御走査型電子顕微鏡)条件(わずかに湿気のある大気中の自然の条件に近いことを意味する)下で撮られた写真であり、上側表面を示し、ウマコラーゲン箔の側面から見られる。実質的な非多孔性は、この写真から明らかである。
【図3】図3Aおよび3Bは、ESEM条件下で撮られた写真であり、ウマコラーゲン箔の下側表面を示す。コラーゲン繊維は、図3Aに示される。表面の実質的な非多孔性は、この写真から明らかである。
【図4】図4は、水和したウマコラーゲン箔の表面を示すSEM写真である。コラーゲン繊維は、図4に明瞭に示される。表面の実質的な非多孔性は、この写真から明らかである。
【図5】図5A、5Bおよび5Cは、ウマコラーゲン箔の断面を示す、ESEM条件(湿気大気)下で撮られた写真である。この材料は、非常に密に一緒になって詰められたシートの積み重ねのような構造を明らかにする。コラーゲン層間の間隙が写真で示される。
【図6】図6Aおよび6Bは、乾燥ウマコラーゲン箔の断面を示すSEM写真である。コラーゲンの複数の層およびコラーゲン層間の間隙が写真に示される。
【図7】図7は、ウマコラーゲン箔の挿入後の左側硬膜欠損の手術中の局面を示す写真であり、周囲の硬膜縁部が、血餅で覆われている。
【図8】図8は、手術部位のTrichrom染色顕微鏡外観(正面部分)を示す写真であり、皮質構造および両方の移植片(右側にウマコラーゲン箔;左側にTutoplast(登録商標)Dura)を乗せた硬膜を示す(8倍の倍率)。
【図9】図9は、手術8週間後の硬膜移植片を示す写真である。左側において、Tutoplast(登録商標)Dura死体硬膜移植片は、明瞭に視認可能な縁部を有し、変化がないようである。移植片を覆う薄い結合組織膜の残りの部分が見られ得る。右側において、ウマコラーゲン箔生体マトリクス移植片は、周囲の硬膜内に十分に組み込まれているようである。新規硬膜内に存在する小さな血餅によって、暗いスポットがもたらされる。
【図10】図10は、手術8週後の皮質に面するウマコラーゲン箔生体マトリクス移植片の巨視的局面を示す写真である。この移植片は、滑らかで、可動性であり、周囲の硬膜内に十分に組み込まれているようである。皮質損傷は、見られ得ない。
【図11】図11は、手術8週後の皮質に面するTutoplast(登録商標)Dura死体硬膜の巨視的局面を示す写真である。移植片は、滑らかで均質であるが、移植片組み込みの徴候は、存在しない。皮質髄膜接着は不存在である。
【図12】図12は、手術2週間後のウマコラーゲン箔生体マトリクスの細胞内フラグメントを伴う、2つの多核巨細胞を示す写真である(ヘマトキシリン−エオシン(HE)染色;800倍の倍率)。
【図13】図13は、手術の4週間後の、ウマコラーゲン箔生体マトリクスが浸潤した繊維芽細胞および食細胞を示す写真である。赤血球を有する新規毛細管(neocapillary)もまた視認され得る(HE染色、600倍の倍率)。
【図14】図14は、手術の4週間後の、食細胞によって取り囲まれたウマコラーゲン箔生体マトリクス移植片のフラグメントおよび中程度のリンパ球炎症を示す写真である(HE染色、600倍の倍率)。
【図15】図15は、手術の4週間後の、Tutoplast(登録商標)Dura死体硬膜を示す写真である。死体硬膜は、大脳浸潤または移植片リモデリングについて最小の徴候を示す。密なリンパ球炎症反応が、移植片の上および下に見出される(HE染色、250倍の倍率)。
【図16】図16は、コラーゲン繊維、繊維芽細胞およびウマコラーゲン箔生体マトリクス移植片の残りの新たに形成された層を示す、手術の8週間後の新規硬膜の顕微鏡局面の写真である。(Trichrom染色、150倍の倍率)。
【図17】図17は、ウマコラーゲン箔の移植の16週間後の新規硬膜の顕微鏡局面の写真であり、密なコラーゲン繊維および新たに形成された毛細管を示し、赤血球で満たされている(van Gieson染色、200倍の倍率)。
【図18】図18は、置換硬膜材料の水密性、引っ張り強さおよび弾性/可撓性を測定するために使用される試験装置を示す図である。特定の水柱高さから生じる材料の凸面の程度を測定して、弾性/可撓性のレベルを決定した。試験材料を通して押される水の量を、水密性を試験するために測定した。
【図19】図19は、静水圧(水柱高さ)の増加に対するウマコラーゲン箔の凸面の程度(コラーゲン含有量:5.6mg/cm)を示すグラフである。
【図20】図20は、静水圧(水柱高さ)の増加に対するコラーゲン箔の凸面の程度(コラーゲン含有量:4mg/cm)を示すグラフである。
【図21】図21は、静水圧(水柱高さ)の増加に対するDuraGenの凸面の程度を示すグラフである。DuraGenは、200cm HO静水圧で破裂した。
【図22】図22は、静水圧(水柱高さ)の増加に対するいくつかの硬膜置換産物の凸面の程度を示すグラフである。
【図23】図23は、静水圧(水柱高さ)の増加に対するウマコラーゲン箔の凸面の程度および水の損失を示すグラフである。
【図24】図24は、静水圧(水柱高さ)の増加に対するコラーゲン箔の凸面の程度および水の損失を示すグラフである。
【図25】図25は、静水圧(水柱高さ)の増加に対するDuraGenの凸面の程度および水の損失を示すグラフである。
【図26】図26は、静水圧(水柱高さ)の増加に対するいくつかの硬膜置換産物の凸面の程度および水の損失を示すグラフである。
【図27】図27は、種々のコラーゲン性移植片の引き裂き抵抗/極限引っ張り強さを示すグラフである。サンプルEは、ウマコラーゲン箔である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明によれば、驚くべきことに、天然には存在しない生体マトリクス中にあるウマのコラーゲン繊維からなる実質的に非多孔性の箔が、ヒト、実験動物などを含む哺乳動物における硬膜修復、再生、および回復のための再吸収可能な硬膜として有効に利用され得ることが発見された。本発明のウマのコラーゲン-箔は、液密であり、そしてウイルスまた
はプリオンの伝播のリスクに対して高い安全性特徴を提供する。さらに、このウマの箔は、高い抗張力を維持しながら、本来柔軟でかつ弾性である。この箔は、本明細書で以後「ウマコラーゲン箔」と称され、移植されるとき、重要な性質で、ヒト硬膜に対応する。このウマコラーゲン箔は、インビボの細胞内生長のための生体マトリクスの足場として供され、そして再生および回復の間に新規硬膜によって置換される。
【0029】
1つの実施形態では、このウマコラーゲン箔生体マトリクスは、本質的にコラーゲン繊維から構成される結合組織タンパク質からなる。好ましくは、このウマコラーゲン箔生体マトリクスは、コラーゲン繊維からなる連結組織タンパク質からなる。より好ましくは、このウマコラーゲン箔生体マトリクスは、I型コラーゲン繊維からなる結合組織タンパク質からなる。
【0030】
コラーゲン繊維から構成されることに加え、このウマコラーゲン箔生体マトリクスは、最終産物の柔軟性および弾性を促進する賦形剤、保存剤、成長因子、または添加剤をさらに含み得る。
【0031】
(ウマコラーゲン箔)
本発明のウマコラーゲン箔は、細胞成分を除去し、かつコラーゲン繊維のシートを形成するよう処理されたコラーゲン繊維の生体マトリクスである。
【0032】
本発明の1つの実施形態で利用されるウマコラーゲン繊維は、多くの多方向性の絡み合ったコラーゲン繊維からなる天然に存在しない多層コラーゲン膜である。乾燥ウマコラーゲン箔の実例が図1に観察され得る。この顕微鏡写真(SEM)は、ウマコラーゲン箔の表面を示し、そこでは、コラーゲン繊維が包埋されている。写真は、ESEM(環境走査電子顕微鏡法)状態下、上記ウマコラーゲン箔の上面の図2A−2Bに観察され得、そこでは、僅かに湿気のある雰囲気がほぼ天然の状態を提供している。上記コラーゲン繊維は、この面上に見られる。この面は、平滑かつ実質的に非多孔性であるように見える。ウマコラーゲン箔の下面の写真(ESEM)は、図3Aおよび3Bに提供される。この下面の写真はまた、ウマコラーゲン箔の実質的な非多孔性を示す。
【0033】
哺乳動物の硬膜組織を修復するためにウマコラーゲン箔を用いる前に、上記乾燥ウマコラーゲン箔材料は水和され得る。図4は、水和されたウマコラーゲンの表面を示すSEM写真であり、ここで、コラーゲン繊維が明瞭に示されている。この表面の実質的な非多孔性は、この写真から明らかである。
【0034】
多層で二次元方向にあるコラーゲン繊維の特有の配向は、高静水学的圧力下でさえ液密であるための主な原因であり、そして高弾性とともに大きな強度を提供する。このウマコラーゲン箔のこの多くの平行に配向された薄いコラーゲン繊維層に起因して、この材料は、移植後の欠陥を覆うことで身体自体の硬膜を一時的に置換するために最適であり、液密な脳−脊髄液−漏出閉鎖を達成し、かつ新規硬膜を形成するための細胞内方成長の生体マトリクス足場を提供する。この性質は、創傷治癒プロセスで重要である。なぜなら、それは、液漏出の症状を発症する患者のリスクを低減するからである。
【0035】
(ウマコラーゲン箔構造および再吸収特徴)
ウマコラーゲン箔は、それが移植される哺乳動物によって再吸収可能である。この性質は、このウマコラーゲン箔の構造によって増大されると考えられる。このウマコラーゲン箔を生成するために利用されるプロセスは、コラーゲン繊維の積み重ねられた層を形成する。各層の間は、患者の細胞および脈管系が移動かつ新規硬膜組織を形成し得る隙間である。
【0036】
コラーゲン繊維の各層は、実質的に非多孔性である。存在し得る小数のポアは、代表的には、互いから隔離され、そしてコラーゲン繊維の多層を通って相互接続しない。本発明の多層構造は、ウマコラーゲン箔の液密特徴を増大する。図1〜4の走査電子顕微鏡写真は、このウマコラーゲン箔の非多孔性性質を示す。
【0037】
このウマコラーゲン箔は実質的に非多孔性であるが、コラーゲン繊維の層の間には、隙間が存在する。これらの隙間および層である特徴は、図5A、5B、および5Cで容易に観察され得、これらは、ESEM条件下(湿潤雰囲気)の上記ウマコラーゲン箔の断面写真である。図6Aおよび6Bは、乾燥ウマコラーゲン箔のSEM写真である。このように、このウマコラーゲン箔は、ページのスタックに類似であり、こここで、各ページは、実質的に平滑であり、そして非多孔性であり、各ページの間には空間がある。その乾燥形態にあるとき(図6Aおよび6B)、これら間隙はよりはっきりしている。これら間隙は、このウマコラーゲン箔が、僅かに湿気のある雰囲気ではほぼ自然の状態下で観察されるとき、減少されるようになる。図5A、5Bおよび5Cは、湿潤雰囲気にあるウマコラーゲン箔の断面の写真であり、ここでは、このウマコラーゲン箔の間隙の減少が示される。
【0038】
液密性質を促進することに加え、このウマコラーゲン箔の多くの平行に配向された薄いコラーゲン繊維層は、同時に、身体自体の硬膜のデノボ構築のための細胞内生長のための生体マトリクス足場として供される。以前は、多孔性足場構造が置換硬膜組織に自立性組織および脈管系の内方成長を促進するために必要であったと一般に考えられていた。驚くべきことに、このウマコラーゲン箔の非多孔性の層となる構造が、細胞、脈管系の内方成長、およびこのウマコラーゲン箔を横切り、かつその多層の間存在する隙間で新たなコラーゲン構造の形成を促進し、移植の数週間以内に自然の硬膜の代表的な層構造をもつ新規硬膜を形成することが発見された。以下および実施例1でさらに記載されるように、細胞、脈管系、および新たなコラーゲン構造の内方成長は大規模であるため、手術後数週間で、この新規硬膜は、患者の先に存在する硬膜組織と区別することは困難になる。手術後ほぼ4〜8週間で、髄膜細胞の細胞組織化は約40%〜70%である。約16週後、移植片は完全に組織化される(100%)。
【0039】
動物実験は、多層ウマコラーゲン箔の領域中の迅速細胞浸潤を示す。組織学的には、コラーゲン生体マトリクスのリンパ球、マクロファージおよび繊維芽細胞の密な浸潤が、移植後14日以内に観察された。毛細血管が後の時間にこの移植片に形成される。コラーゲン繊維の新生に起因するウマコラーゲン箔と周辺硬膜との間の連続的遷移は、容易に明白である。僅か4週間後に、このウマコラーゲン箔は、身体自体の緩い構造の組織によって部分的に置換される。24週間後、患者の先に存在する硬膜を、欠陥領域にあるこの移植されたウマコラーゲン箔を置換する新たに形成された新規硬膜様結合組織構築と区別することは困難である。
【0040】
(疾患伝播/免疫応答)
本発明のウマコラーゲン箔を使用する大きな利点は、疾患を、そのウマコラーゲン箔を移植された患者に伝播させる危険性が実質的に低いことである。コラーゲン原繊維が酸(例えば、塩酸、酢酸など)および塩基(例えば、水酸化ナトリウム)で処理されて、ウマコラーゲン箔を生成する製造プロセスは、存在し得る細菌、ウイルス、およびプリオンの感染レベルを不活性化または減少させるように有利に働く。塩酸、水酸化ナトリウム、エチレンオキシド(ETO)などでの生体材料の処理は、プリオンおよびウイルスを不活性化する薬物および生体材料の規制内の認可された方法として、政府機関により認識されてきた。このような処理は、いくつかの規制の下で、バッチ間ベースでウマコラーゲン箔を試験するための規制要件を減少し得る。従って、製造プロセスの間のコラーゲン原繊維の処理は、製品の安全性を高め、患者へ疾患が伝播する危険性を減少する。
【0041】
上記の製造プロセスに供されるウマ材料は、いかなる病原体も患者に伝播させないことが知られている。よって、その製造プロセスに加えて、ウマベースのコラーゲンの利用は、以前にはヒト死体の代替物と関連していた海綿状脳炎を伝播する危険性をさらに避ける。ウマ由来のコラーゲン(例えば、ウマアキレス腱由来のコラーゲン)の使用により、伝播性海綿状脳炎(TSE)を伝播する危険性が避けられ、この脳炎は、ウシの海綿状脳炎(BSE)またはスクレイピーとしても公知である。この疾患の伝播は、反芻動物供給源から得られた生物学的材料(例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジなどに由来する生物学的材料)の使用と関連していた。
【0042】
本発明のウマコラーゲン箔(ここでこのコラーゲンは、ウマ起源であり、処理されている(例えば、酵素で))は、免疫応答を誘発させる危険性をさらに減少させる。ウマベースのコラーゲンが(硬膜以外の組織について)組織置換手順において使用された10年を超える期間にわたって、免疫応答は何ら報告されていない。
【0043】
ウマ由来のコラーゲン箔はまた、炎症性応答の減少を生じる。ヒト大腿筋膜のような供給源に由来するコラーゲンを含む硬膜代替物と比較した場合、置換ウマコラーゲン箔の移植から生じる炎症性細胞の数は、有意に低い。ウマコラーゲン箔の移植により惹起される炎症プロセスはまた、他の供給源に由来する置換硬膜デバイスに比較して、持続時間が遙かに短い。これらの特性は、患者の免疫系によるウマコラーゲン箔の移植片拒絶の危険性を有意に減少し、それによって、硬膜置換に必要な神経外科的手順の成功を改善する。
【0044】
(容積/サイズ安定性)
水和される場合に、置換硬膜が有意に拡大するかまたは収縮すると、問題が生じ得る。先行技術の多孔性コラーゲン硬膜置換製品は、いくらかの場合、水和の後に有意に収縮する傾向があった。そのような場合において、その置換硬膜は、これを患者の硬膜に結合させる縫合部分で強く引っ張り得る。このことは、移植物に損傷を与え、そして自己の硬膜および手術部位に損傷を与える。他の合併症としては、置換硬膜が、移植した後に拡大し続ける場合に手術部位に働く圧力(隣接する神経学的組織に対して望ましくない圧力を与える)が挙げられる。
【0045】
本発明のウマコラーゲン箔の容積の変化は、水和される場合に、小さいかまたは無視できる。多孔性代替製品とは対照的に、このウマコラーゲン箔は、水和されるときに、そのサイズおよび形状を実質的に維持し、優れた形状安定性を有し、水和の後でも生体安定性を維持し、移植後に、脳において腫脹の問題も萎縮の問題も引き起こさない。一旦水和され、移植されると、ウマコラーゲン箔は、手術縫合を裂く程度にまで、またはウマコラーゲン箔を患者の硬膜に維持するフィブリン接着剤シールを壊す程度にまで、面積または厚みが有意に拡張も収縮もしない。
【0046】
一実施形態において、乾燥ウマコラーゲン箔の面積の縮小または腫脹は、完全に水和した場合、約−5%〜約20%で変動し得る。別の実施形態において、この乾燥ウマコラーゲン箔の面積は、完全に水和した場合、約−5%〜約10%で変動し得る。別の実施形態において、この乾燥ウマコラーゲン箔の面積は、完全に水和した場合、約−5%〜約5%で変動し得る。別の実施形態において、この乾燥ウマコラーゲン箔の面積は、完全に水和した場合、約4%以下で増大する。
【0047】
一実施形態において、そのウマコラーゲン箔は、完全に水和した場合、その乾燥状態の厚みの約4倍まで増大する。別の実施形態において、そのウマコラーゲン箔は、完全に水和した場合、その乾燥状態の厚みの約3倍まで増大する。別の実施形態において、そのウマコラーゲン箔は、その乾燥状態の厚みの約2倍まで増大する。
【0048】
成体のヒト硬膜の厚みは、頭蓋底において約0.5mmから約2.0mmまで変化する。この硬膜の厚みはまた、患者の年齢に依存して変化し得る。ここで幼児および若年の小児は、代表的には、成体よりも薄い硬膜組織を有すると予測される。本発明のウマコラーゲン箔の厚みは、適用の所望の面積および処置される患者について変動するように、処方され得る。
【0049】
一実施形態において、本発明のウマコラーゲン箔は、その乾燥形態にある場合は、約0.01mm〜約3.0mmの間の厚みを有する。別の実施形態において、このウマコラーゲン箔は、約0.02mm〜約2.0mmの間の厚みを有する。別の実施形態において、このウマコラーゲン箔は、約0.03mm〜約1.5mmの間の厚みを有する。別の実施形態において、このウマコラーゲン箔は、約0.05mm〜約1mmの間の厚みを有する。さらに別の実施形態において、このウマコラーゲン箔は、約1.0mm以下の厚みを有する。
【0050】
このウマコラーゲン箔の乾燥重量は、その望ましい厚みに依存する。一実施形態において、このウマコラーゲン箔の乾燥重量は、約1mg/cm〜約50mg/cmの間である。別の実施形態において、このウマコラーゲン箔の乾燥重量は、約1.5mg/cm〜約30mg/cmの間である。別の実施形態において、このウマコラーゲン箔の乾燥重量は、約2mg/cm〜約20mg/cmの間である。別の実施形態において、このウマコラーゲン箔の乾燥重量は、約2.5mg/cm〜約15mg/cmの間である。別の実施形態において、このウマコラーゲン箔の乾燥重量は、約3mg/cm〜約10mg/cmの間である。
【0051】
一実施形態において、このウマコラーゲン箔の重量は、水和すると、その乾燥重量の約15倍まで増大する。別の実施形態において、このウマコラーゲン箔の重量は、水和すると、その乾燥重量の約10倍まで増大する。別の実施形態において、このウマコラーゲン箔の重量は、水和すると、その乾燥重量の約7倍まで増大する。なお別の実施形態において、このウマコラーゲン箔の重量は、その乾燥状態から水和すると、約5倍まで増大する。
【0052】
適切な硬膜代替物として働くように、移植した硬膜代替物は、水和した場合ですら、たるみはないが、代わりに、かなりの高い安定性/引っ張り強さを有する。本発明のウマコラーゲン箔は、有利には、高い引っ張り強度を有し、このことは、その外科手術適用の間のウマコラーゲン箔の取り扱いを改善および支援し、その移植後の増大した機械的安定性を提供する。比較実験は、以下の実施例において概説され、その実施例において、ウマコラーゲン箔の引っ張り強度は、多孔性コラーゲン調製物(例えば、コラーゲン発泡体)と比較して、優れていた。さらに、ウマコラーゲン箔の厚みを増大させると、引っ張り強度が有意に増大し得る。
【0053】
ウマコラーゲン箔材料が与えられる圧の下で裂ける傾向は、その「極限引っ張り荷重」または「極限引っ張り力」(本明細書中以降、「極限引っ張り力」という)として測定され得る。ウマコラーゲン箔の極限引っ張り力は、特定の幅を有するウマコラーゲン箔の細片に圧力を供し、ウマコラーゲン箔の破損(例えば、裂けまたは破壊)を生じる付与された圧力量を決定することにより決定され得る。極限引っ張り力は、以下の等式を用いて定量化され得る:
「極限引っ張り力」=付与された力/ウマコラーゲン箔細片の幅=N/cm細片。
【0054】
一実施形態において、このウマコラーゲン箔は、約1N/cm細片と約30N/cm細片との間、好ましくは、約1.5N/cm細片と約15N/cm細片との間、好ましくは、約2N/cm細片と約10N/cm細片との間、なおより好ましくは、約3N/cm細片と約6N/cm細片との間の極限引っ張り力を有する。
【0055】
本発明のウマコラーゲン箔は、高い引っ張り強度を有する一方で、水和したときに、弾性および可撓性を維持している。この特徴は、ウマコラーゲン箔が、最適に、その移植部位に存在する解剖学的状態(例えば、曲線)に適合することを可能にする。
【0056】
その水和状態にある場合、このウマコラーゲン箔は、手術部位において容易に周りを動いて、移植される欠損の形状に最適に組織され得る。一旦移植されると、このウマコラーゲン箔移植片は、滑らかかつ易動性を保持する。時間を経るにつれて、細胞および脈管構造は、ウマコラーゲン箔にわたって移動し、ついには、硬膜様の新規硬膜に取って代わる。髄膜細胞での細胞性組織化の後、このウマコラーゲン箔は、神経組織にも、脳組織にも、頭蓋組織にも、脊柱組織にも接着しない。
【0057】
(ウマコラーゲン箔の調製)
本発明のウマコラーゲン箔は、制御された乾燥プロセスを介して、高分子量コラーゲン原繊維の懸濁液から生成され得る。コラーゲン原繊維懸濁液の段階的沈殿は、水の蒸発および同時にpH上昇から生じる。この制御された乾燥プロセスは、ヒト硬膜の代替物として神経外科医によって移植され得るコラーゲン箔の多層化構築物を生じる。この多層化コラーゲン箔構築物は、硬膜代替物において有益な、かつ生硬膜組織の再生のためのバイオマトリクスとして有益である、多くの上記の特性を提供する。
【0058】
一実施形態において、本発明のウマコラーゲン箔を生成するプロセスは、コラーゲン原繊維のウマコラーゲン箔(無細胞成分から本質的になる)を生成する全ての細胞成分を除去する。
【0059】
コラーゲン化学における確立された手順を用いて、コラーゲン含有組織は、本発明のウマコラーゲン箔の調製のための出発物質として使用される。一実施形態において、ウマの腱が、出発物質として使用される。さらなる実施形態において、ウマのアキレス腱が出発物質として使用される。
【0060】
一実施形態において、その出発物質(例えば、ウマのアキレス腱)は、まず挽かれ、少なくとも1時間、1N 水酸化ナトリウムで処理され、塩酸で中和される。このコラーゲン出発物質は、pH2の酸性条件で処理される。利用される酸は、塩酸、酢酸などであり得る。その後、出発物質に存在する非コラーゲン性タンパク質および分子間架橋結合がペプシンにより酵素分解されて、コラーゲン懸濁液を形成する。
【0061】
この懸濁液は、次いで、中和される。一実施形態において、この懸濁液は、約pH6.5〜約pH8.0の間に中和される。別の実施形態において、この懸濁液は、約pH6.9〜約pH7.5の間に中和される。別の実施形態において、この懸濁液は、約pH7に中和される。
【0062】
このコラーゲン懸濁液は、遠心分離され、上清が除去され、沈殿物が約pH2〜4.5の酢酸中で再懸濁される。非コラーゲン性タンパク質は、それにより、首尾よくコラーゲンの懸濁液から除去される。
【0063】
上記工程の反復は、必要に応じて行われて、沈殿物に存在する残りの非コラーゲン性タンパク質を除去し得る。
【0064】
このウマコラーゲン箔の生成プロセスの驚くべき結果は、酢酸中のコラーゲン懸濁液の制御されたpH上昇が、長期間(例えば、24時間)にわたるエバポレーションによる、水の特有の除去に起因して達成されることである。pHの特有の上昇は、ウマコラーゲン箔の多層化構築物を形成する二次元方向の層において、多方向に相互にからみついたコラーゲン原繊維の調製物を引き起こす。一実施形態において、このプロセスは、スチームの除去および同時に酢酸のスチーム中和を行う装置を装備した、約20℃〜約55℃の温度の乾燥オーブン中で行われる。別の実施形態において、このプロセスは、約30℃〜約45℃の温度で、乾燥オーブン中で行われる。
【0065】
この生成プロセスから生じるウマコラーゲン箔は、さらなる水の損失が検出されなくなったかまたは無視できるほどになった場合に、その乾燥形態で存在すると考えられる。ウマコラーゲン箔の「乾燥形態」の水分含有量は、代表的には、約2重量%〜約18重量%の間である。ウマコラーゲン箔の「乾燥形態」に存在する残りの水分含有量が相対的に高いと、ウマコラーゲン箔を構成するコラーゲン分子の変性が防止または抑制される。
【0066】
上記のプロセスは、懸濁液からコラーゲン原繊維が沈殿する原因である。なぜなら、低溶解度を有する成分は、低pH上昇でのそのプロセスのはじめに沈殿してくるからである。この技術は、水のエバポレーション、および同時にpH上昇の間にコラーゲン原繊維の沈殿を生じる。
【0067】
沈殿プロセスの間、このコラーゲン原繊維は、溶液から原繊維が沈殿して、コラーゲン箔を形成するにつれて、ひとりでに架橋される。増大した吸収時間を生じ得る、コラーゲン原繊維を化学物質または照射(例えば、イオン化または紫外線照射)で架橋することとは異なり、コラーゲン原繊維を天然に架橋させると、一旦ウマコラーゲン箔が移植された後の吸収時間の減少を促進する。本発明において利用されるコラーゲン箔における原繊維の自然の架橋は、自然の生理学的手段で起こる。主に、この自然の架橋は、非共有結合相互作用(例えば、ファンデルワールス相互作用または双極子−双極子相互作用)を介するか、またはコラーゲン分子のアミノ酸側鎖間の容易に分離できるシッフ塩基結合の形成による。コラーゲンの分子間架橋は、物理的安定性および化学的安定性を担う。コラーゲン架橋の形成においてこの重要な工程は、リジン残基またはヒドロキシリジン残基の酵素的変換に依存し、アルデヒド、アリシンおよびヒドロキシアリシンを生じる。これらのアルデヒド基は、反応性アミノ基と自発的に反応して、不安定なアルジミン連結(−CH=N−)を有する不安定なアルドール縮合生成物を含むシッフ塩基成分の形成を生じる。従って、本発明の生成物の原繊維は、例えば、弱酸での処理によって解離され得る。化学的架橋剤の使用から生じる架橋は、安定な共有結合により架橋した架橋部分の存在から検出され得る。通常は、これは、シッフ塩基試薬(例えば、グルタルアルデヒド)を用いて、シッフ塩基反応生成物を形成し、次いで、Amadori転位または還元条件のいずれかを介して結合を安定化させることにより達成される。さらに、コラーゲンは、種々の二官能性カルボジイミド試薬により架橋され得る。照射を使用することにより生じる架橋は、照射の間に生じたフリーラジカル部分の反応によって引き起こされる、コラーゲン原繊維の間の安定な共有結合の存在によって検出され得る。本発明の生成物中の原繊維は、他方、安定な共有結合で実質的に架橋されておらず、化学的様式において処理されてもいないし、照射様式においても処理されていない。従って、本発明の生成物における原繊維の任意の会合は、実質的に非共有結合であるかまたは容易に可逆性であり、安定に架橋されていない。化学物質(例えば、シアナミド、グルタルアルデヒド、ホルムアミド、アクリルアミド、カルボジイミドジオン、ジイミデート、ビスアクリルアミドなど)は、硬膜代替物においてコラーゲン原繊維を化学的に架橋するために過去に用いられてきた。しかし、このような化学物質の使用は、脳組織と、硬膜代替物中の残りの化学物質とが偶然にも接触することと関連する、毒性の危険性を生じ得る。この沈殿プロセスは、それにより、架橋化学物質の毒性の危険性、コラーゲン原繊維を化学物質または照射で架橋することと関連するより長い吸収時間を回避する。
【0068】
得られた乾燥し、沈殿したコラーゲン組成物は、多くの多方向に自然に相互にからみついたコラーゲン原繊維からなる高分子量多層化コラーゲン膜から構成されるウマコラーゲン箔を形成する。このウマコラーゲン箔は、主に、間質のI型コラーゲンを含む。このウマコラーゲン箔は、実質的に孔を有さず、主に液密である。免疫拡散試験が、外来タンパク質の非存在を保証するために、その生成物に対して行われ得る。
【0069】
本発明において使用するためのウマコラーゲン箔を生成するために使用される上記のプロセスはまた、Baxter AG,Vienna,Austriaから市販されているコラーゲン箔の製造において、Resorba Wundversorgung GmbH & Co.KG,Nuremberg,Germanyによって利用される。市販の箔は、止血剤として、一時的な組織代替物として、創傷を覆うために、そしてフィブリンシーラントキャリア物質として、の使用が示されている。
【0070】
本発明における使用のためのウマコラーゲン箔の厚みは、特定の適用によって必要とされるように、変動し得る。例えば、小児の硬膜組織の修復において、より薄いウマコラーゲン箔が利用され得るのに対して、成体の硬膜組織の修復において、より厚いウマコラーゲン箔が利用され得る。
【0071】
ウマコラーゲン箔の厚みは、ウマコラーゲン箔の特定のサイズを生成するために利用される出発物質の量を変動させることによって制御され得る。
【0072】
このウマコラーゲン箔は、エチレンオキシド(ETO)または類似の滅菌ガスでガス滅菌されるか、または照射により滅菌される。
【0073】
(付着手順)
使用前に、乾燥ウマコラーゲン箔は、例えば、生理食塩水中で水和され得る。一実施形態において、その生理食塩水は、0.9%塩化ナトリウム溶液を含む。別の実施形態において、そのウマコラーゲン箔は、賦形剤中または薬物含有溶液中で水和される。そのウマコラーゲン箔を水和するために必要な時間は、その箔の厚さに関連する。そのウマコラーゲン箔は、その箔の面積全体にわたってその箔の厚さが一致するまで、水和される。一実施形態において、そのウマコラーゲン箔は、生理食塩水中で、約5秒間と約1時間との間の時間、水和される。別の実施形態において、そのウマコラーゲン箔は、生理食塩水中で、約5秒間と約30分間との間の時間、水和される。別の実施形態において、そのウマコラーゲン箔は、生理食塩水中で、約5秒間と約20分間との間の時間、水和される。別の実施形態において、そのウマコラーゲン箔は、生理食塩水中で、約5秒間と約10分間との間の時間、水和される。なお別の実施形態において、そのウマコラーゲン箔は、生理食塩水中で、約1分間と約6分間との間の時間、水和される。別の実施形態において、そのウマコラーゲン箔は、生理食塩水中で、約5分間水和される。別の実施形態において、そのウマコラーゲン箔は、移植前に水和されない。
【0074】
そのウマコラーゲン箔は、確立された外科技術により(例えば、フィブリンシーラント、組織のり、外科用縫合糸によって)、または圧力ばめ外科技術によって、患者の硬膜に付着され得る。あるいは、上記ウマコラーゲン箔と硬膜組織との間の自然の引力が、いかなるシーラントも、のりも、縫合糸も、圧力ばめ技術も使用することなく、そのウマコラーゲン箔を硬膜組織に付着するために使用され得る。一旦水和された後、そのウマコラーゲン箔は、患者の硬膜中の外科開口部よりもわずかに大きく切断され得る。そのウマコラーゲン箔は、それによって、そのウマコラーゲン箔が付着している患者の硬膜とわずかに重なる。一実施形態において、水和したウマコラーゲン箔は、硬膜と約0.5cm〜約1cm重なるような大きさである。その重なりの量は、神経外科医の好みおよび技術に依存して変化し得る。
【0075】
一実施形態において、コラーゲンとフィブリンとの周知の相互作用に従って、上記ウマコラーゲン箔は、神経学的使用について認可されたフィブリンシーラントを用いて硬膜に付着され得る。神経学的使用について認可されたフィブリンシーラントの例としては、TissucolフィブリンシーラントおよびTisseelフィブリンシーラント(Baxter AG,Vienna,Austria)が挙げられる。あるいは、神経学的使用について認可された組織のりもまた、利用され得る。そのフィブリンシーラントまたは組織のりは、液密シールを形成するために硬膜と重なる上記ウマコラーゲン箔部分の周囲に、連続線の状態で適用され得る。上記のように、液密シールは、有利である。なぜなら、液密シールは、脳脊髄液の損失に関連する合併症(例えば、髄液漏)を回避するからである。
【0076】
別の実施形態において、上記ウマコラーゲン箔は、連続線状のフィブリンシーラントまたは組織のりによって自己由来硬膜に付着された場合には、液密シールを生じる。
【0077】
別の実施形態において、硬膜と重なるウマコラーゲン箔は、そのウマコラーゲン箔を硬膜に付着させるために、フィブリンシーラントまたは組織のりを点々と打ち得る。
【0078】
別の実施形態において、上記ウマコラーゲン箔は、一旦そのウマコラーゲン箔が望ましい移植部位に配置された後に、そのウマコラーゲン箔を硬膜に外科的に縫合することによって付着される。この実施形態は、上記ウマコラーゲン箔を患者の自己由来硬膜に付着させるために使用され得るが、その縫合糸によって、分枝管状構造が生じ得、これはその後、瘻孔と脳脊髄液の漏出とを生じ得る。上記ウマコラーゲン箔が縫合された場合、引っ張りの少ない(tensionless)縫合技術が、その箔の裂けを防ぐために使用されなければならない。縫合線を、例えばフィブリンシーラントでシールすることが、推奨される。
【0079】
別の実施形態において、上記ウマコラーゲン箔は、当該分野で公知である圧力ばめ技術に従って、配置および移植される。この技術において、上記ウマコラーゲン箔は、望ましい移植部位に配置され、そして頭蓋または脊柱に存在する自然の内圧によって適所に保持される。従って、その移植物は、外科用縫合糸も、フィブリンシーラントも、組織のりも使用することなく、適所に存在したままである。
【0080】
別の実施形態において、上記ウマコラーゲン箔は、いかなるシーラントも、のりも、縫合糸も、圧力ばめ技術も使用することなく、配置および移植される。この技術において、そのウマコラーゲン箔は、望ましい移植部位に配置され、そしてそのウマコラーゲン箔と硬膜組織との間に存在する自然の引力または接着力によって、適所に保持される。
【0081】
本発明のウマコラーゲン箔は、先天性状態、出生時欠損、疾患、損傷、腫瘍除去、または患者の硬膜を破壊もしくは貫通する他の外科手順、あるいは硬膜を修復する必要がある他の任意の状態に起因して、ヒト硬膜組織を修復するための置換硬膜移植物として使用され得る。上記ウマコラーゲン箔はまた、他の哺乳動物(ヒツジ、サル、ウマ、実験室動物、もしくは他の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない)の硬膜組織を修復するために、利用され得る。上記ウマコラーゲン箔は、頭蓋中の硬膜組織または脊柱に沿った硬膜組織を修復するために、使用され得る。
【0082】
本発明はさらに、ウマコラーゲン箔と、そのウマコラーゲン箔を調製して置換硬膜として使用するための指示書とを備える、キットに関する。
【0083】
(禁忌)
ウマまたはウマ生成物に対するアレルギー反応を有することが既知である患者は、ウマコラーゲン箔を受容することは禁止される。
【0084】
他の禁忌としては、外科手術のすぐ後に放射線療法を受ける患者が、挙げられ得る。例えば、脳腫瘍切除のすぐ後に放射線療法を受容する患者は、本発明のウマコラーゲン箔のレシピエントであるための良い候補ではない。この放射線療法は、新生硬膜(これは、迅速に分裂している細胞から構成される)の成長を遅くするかまたは阻害するかし得、上記ウマコラーゲン箔が、再吸収される。このような状況において、非吸収性置換硬膜(例えば、Teflon)が、より適切である。しかし、熟練した外科医は、非吸収性置換が必要である処置を認識する。
【0085】
(定義)
「ウマコラーゲン箔」とは細胞成分を除去しコラーゲン原繊維シートを形成するように処理された、ウマコラーゲン原繊維の生体マトリクス(すなわち、生体適合性材料のマトリックス)を意味する。用語「ウマコラーゲン箔」は、1つ以上の多孔性コラーゲンシートに結合された、1つ以上の実質的に非多孔性のコラーゲンシートの複合箔は包含しない。
【0086】
「硬膜組織」とは、哺乳動物の自己由来硬膜組織を意味する。
【0087】
「天然に存在しない生体マトリクス」とは、(1)天然に存在する材料(すなわち、天然材料)(これは、天然材料中に含まれるコラーゲン原繊維がその天然材料のコラーゲン構造内にある天然に存在する配置から移動または再配置されている様式で処理もしくは加工されている)からか、あるいは(2)コラーゲン原繊維で処理または加工されている、天然に存在しない材料(すなわち、非天然材料)から形成された、コラーゲン原繊維を含む製造されたマトリックスもしくはフレームワークを意味する。例えば、天然に存在しない生体マトリクスは、機械的または化学的に加工されている(例えば、粉砕されている、刻まれている、など)、コラーゲンを含む出発材料から形成され得る。対照的に、上記コラーゲンフレームワークの構造を保存する様式での出発材料の処理または加工から形成されているコラーゲン生体マトリクスは、天然に存在しない生体マトリクスではない(例えば、天然に存在するコラーゲン構造を保存しつつ細胞成分を除去するように処理された、上皮組織)。
【0088】
「実質的に非多孔性」とは、コラーゲンシートを形成するためのコラーゲン原繊維の沈殿の結果としてウマコラーゲン箔中に存在する何らかの孔が、互いから本来隔てられていることを意味する。互いに接続され得る孔は、上記ウマコラーゲン箔の厚みを横断する様式では相互接続されない。上記ウマコラーゲン箔中に穴を作製する機械的穿孔は、孔ではない。好ましくは、その材料は、1500×倍率にて走査電子顕微鏡を使用して可視である孔を、実質的には含まないようである。
【実施例】
【0089】
以下の実施例により、本発明をさらに説明する。
【0090】
(実施例1)
本実施例は、硬膜組織を修復するために使用される硬膜置換物として、そして硬膜再生のための生体マトリクスとしての適性についてウマコラーゲン箔を評価するための、ヒツジにおける実験の結果を示す。
【0091】
頭蓋硬膜置換物としての使用について、ヒツジモデルにおいて調査したようにウマコラーゲン箔の特性を評価する実験を行った。ウマコラーゲン箔は、細かく刻んだウマアキレス腱から精製したネイティブなウマコラーゲン原繊維(5.6mg/cm)を含み、細胞成分を含まない。
【0092】
使用した参照製品は、保存したヒト死体の硬膜(Tutoplast(登録商標)Dura)であった。両方の製品を、フィブリン糊(Tissucol Duo S Immuno,Baxter AG,Vienna,Austria)のみを使用して、所定の位置に接着させた。
【0093】
以下の項目を研究した:
2つの移植片の併合の巨視的外観;
隣接組織構造の反応(炎症、接着、繊維症、壊死);ならびに
併合プロセスおよび結合組織の組織化の組織学的査定。
【0094】
ウマコラーゲン箔を生成するための精製プロセスは、腱出発材料の、少なくとも1時間の水酸化ナトリウム溶液処理により始め、その後塩酸によって中和する。次いで、ペプシンを用いてこの腱を解体する。このように生成されたコロイド状のコラーゲンを原繊維として沈殿させる。次いで、乾燥させ、そしてガス滅菌により、1平方センチメートルあたり5.6mgのネイティブコラーゲン原繊維とともにウマコラーゲン箔を得る。添加したものは何もなく、架橋(すなわち、化学物質または放射線を必要とする)のための人工的な方法も実施していない。外来のタンパク質が存在しないことを、免疫拡散試験により確認する。
【0095】
(材料および方法)
(実験動物)
研究を25匹の成体ヒツジにて実施した。ヒツジを、農業において使用された家畜動物と交配した。動物の体重は、手術時に平均53.0kgであり、ヒツジの平均齢は、2歳であった。全ての動物は雌性であった。これらの動物を、屋根のある構造および野外の囲いを備えたLuebeck Medical Universityの動物小屋で管理した。動物に、慣習的な混合飼料を与えた。動物を、組織学的試験および移植併合の多様な段階(群1〜群5)の特徴付けために5群にわけた。1群あたりの生存時間は、2週間、4週間、8週間、16週間および24週間であった。
【0096】
(研究製品)
治験のウマコラーゲン箔を、ネイティブなウマコラーゲン原繊維(主として間質性I型コラーゲン)から作製する。この材料の1平方センチメートルには、細胞成分を含まないコラーゲン原繊維(5.6mg)を含む。比較物(Tutoplast(登録商標)Dura,Tutogen Medical GmbH,Neunkirchen a.Brand,Germany)は、組織スペアリングプロセス(sparing process)により保存したヒト頭蓋硬膜である。
【0097】
フィブリン糊(Tissucol Duo S)を、硬膜に移植片を接着させるために使用した。この生物学的硬膜成分糊は、ヒト血漿タンパク質、フィブリノゲン、第XIII凝固因子、血漿ファイブロネクチンおよびアプロチニンを含めた予め充填したシリンジ、ならびにトロンビンおよび塩化カルシウムを含めた別の予め充填したシリンジからなる。
【0098】
(麻酔)
動物を、注射カクテル中、塩化キシラジン(Rompun 2%,Bayer AG,Leverkusen,Germany)(投薬量:体重1kgあたり0.1mg)、(S)−ケタミン(Ketanest S,Parke−Davis GmbH,Karlsruhe,Germany)(投薬量:体重1kgあたり2mg)、および0.5mgアトロピン(1ml注射溶液)(Atropinsulfat Braun 0.5 mg,B.Braun Melsungen AG,Melsungen,Germany)の筋肉内注射により前投与した。静脈経路および動脈経路を、右耳から挿入した。プロポフォール(Disoprivan 2%,AstraZeneca GmbH,Wedel,Germany)(体重1kgあたり1mg)を麻酔のために投与した。この動物に、内生的に挿管(I.D.7.0mm)し、そして100%酸素を、制御された正常血液量のために投与した(Sulla 808V麻酔ベンチレーター,Drager,Luebeck,Germany)。
【0099】
プロポフォール、(S)−ケタミン、およびセボフルランを、平衡した麻酔を維持するために投与した。呼吸サイクル内の血圧および体積比率、吸息性酸素画分(Oxydig,Drager,Luebeck,Germany)、呼気終末炭水化物濃度(Kapnodig,Drager,Luebeck,Germany)、心電図および侵襲的動脈圧を、手術の間モニタリングした。
【0100】
(手術前の抗生物質予防)
手術直前に、各動物に、2.0gのセファゾリン(Basocef 2.0g,Curasan AG,Kleinostheim,Germany)の静脈内投与を与えた。抗生物質予防を、貯蔵製品であるStrepdipen−Suspension(1.0
mlに、100000 IUベンジルペニシリンベンザチンおよび100000IUジヒドロストレプトマイシンサルフェート;投薬量、体重1kgあたり1.0 ml)の2回の皮下投与により、手術後さらに4日間続けた。皮下注射を、手順の完了直後に投与し、そして48時間後に再び投与した。
【0101】
(手術技術)
既に挿管した動物を、左側面体位にして置いた。次いで頭部を右に向け、そして手術台に鉗子で留めて水平位置に保った。次いで頭蓋を完全に剃毛し、その皮膚をペトロールで脱脂し、次いで消毒した。手術する領域を開いて露出させている滅菌シートを貼り、そして動物全体を滅菌カバーで覆った。
【0102】
第一の皮膚切開を、正中の左1.5cmに作り、約6cmに広げた。頭皮からの出血は、双極鉗子を用いてすべて凝固させた。開創器を適応させ、帽状腱膜を収縮および拡張させることによって側頭の頭頂領域の頭蓋骨を露出させた。次いで、約5cm間隔で2つの穴(直径0.8cm)を手動ドリルであけた。次いでのこぎり(Mikrotom,Aesculap,Melsungen,Germany)を使用して、穿頭孔間の頭蓋から骨の縦卵形ディスクを取り出した。
【0103】
骨ワックスを用いて頭蓋からのすべての出血を止めた。メスを用いて硬膜に約0.5cm長の切開を作った。次いで、硬膜鋏を使用して、骨の縁に沿って寸法(が約3×2cmの硬膜の卵型片を切断した。くも膜を損傷しないように、特に注意を払った。止血剤であるTachoComb(登録商標)(Nycomed Austria GmbH,Linz,Austria)を使用して、硬膜の血管からのすべての出血止めた。
【0104】
次いで、ウマコラーゲン箔の卵型片(3.5×2.5cmの寸法)の大きさを揃えて切断し、滅菌0.9%生理食塩水に5分間浸漬した。欠損を閉じるために、ウマコラーゲン箔を、硬膜縁下の全周囲に詰め込み、そしてその場所に維持するためにフィブリン糊を点在させた。図7を参照のこと。
【0105】
次いで、頭蓋のディスクを、2つのミニプレート(Bioplates,Codman,Norderstedt,Germany)を用いて再接着させた。帽状腱膜を、吸収性縫合糸(Vicryl 2.0)を用いて閉じ、そして皮膚をEthilon 3.0で縫合した。
【0106】
Tutoplast(登録商標)Dura製品を、頭蓋の右側に同様の様式で適応させた。図8を参照のこと。両方の創傷を、スプレー式包帯(Hansaplast Spruhpflaster,Beiersdorf AG,Hamburg,Germany)で最終的に処置した。
【0107】
平均の開口時間は、120分間であった。麻酔導入から手術開始までの平均時間は、約60分間であり、そして縫合終了から麻酔が切れるまでの平均時間は、5〜10分間であった。
【0108】
(動物の手術後観察)
これらの動物を、抜管の約30分後に動物小屋にもどした。外科医、獣医師および動物介護士が、炎症の兆候または神経学的異常について動物を定期的に確認した。これらの動物を、手術8日後に野外の囲いに入れた。
【0109】
(動物安楽死)
上記動物を、サンプリング目的で、事前に定義された、術後2週、4週、8週、16週および24週の生存期間にて殺した。
【0110】
殺す前に、動物を、体重1kgあたり1mgの2%ロムプン(Rompun)を筋肉内注射することにより落ち着かせた。心電図(ECG)モニターを接続し、静脈経路および動脈経路を右耳に配置した。次いで、深く落ち着いた動物を、T−61(登録商標)(Hoechst Roussel Vet,Somerville,New Jersey;1mlの注射溶液は、0.2gのエンブトルアミド(embutramide)、0.05gのヨウ化メベゾニウムおよび0.005gのテトラカイン塩酸を含有する;体重1kgあたり0.3mlの投薬量)の静脈内注射によって殺した。このプロセスを、ECGおよび動脈内の測定によってモニタリングした。
【0111】
(サンプリング)
上記動物を、その頭を剃毛し、手術手順について記載したように配置した。直径が約9cmの寸法の円形切開を、2つの手術の痕の周りの皮膚に作製した。帽状腱膜を引っ込めて頭蓋冠の大きな切片を露出し、そして穴を、右前頭部にドリルで開けた。寸法が約8cmの、頭蓋骨の円板を、のこぎりで取り除いた。骨、硬膜および大脳実質からなる移植部位の全体に、骨の縁に沿ってメスで切ることによって接近した。次いで、硬膜および脳組織を、上を覆う骨から注意して切り離し、そして組織学的検査のためにホルマリン中に固定した。その移植サンプルを、直径が約7cmと測定した。
【0112】
(組織学的方法)
上記移植サンプルを、顕微鏡で検査し、前頭部切片に分けた。2つの外科手術部位を、同時に作製した。厚さが約2〜3μmの5つの切片を、各サンプルから採取した。
【0113】
変化を評価するために使用した標準的な染色法は、細胞構成要素のためのヘマトキシリン−エオシン、間葉構造のためのElastica van Giesonを含み、コラーゲン繊維新生を評価するための、間葉構造のためのトリクロムを含み、出血の程度を決定するための鉄染色を含んだ。
【0114】
(結果)
(術中および術後経過)
麻酔、手術および術後追跡期間は、2匹以外の全ての動物において何事もなかった。1匹の動物は、抵抗性の心不整脈の結果として麻酔導入の間に死んだ。もう1匹の動物は、それまでに何事もない術後経過が続いていたが、手術の14日後に突然予期せずに死んだ。脳の顕微鏡検査は、瘢痕の証拠により、広範な皮質壊死を示した。従って、最も可能性の高い死因は、未知の病因である、長期にわたる脳虚血である。
【0115】
術中の出血は非常に少なく、この出血は、軽度であり、多くの場合、硬膜の小血管由来である。この出血を、双極鉗子または止血剤を使用した制御下で迅速にとめた。
【0116】
術後追跡の間に神経異常を示した動物はいなかった。同様に、炎症も、脳脊髄液漏も、障害性創傷治癒も、示した動物はいなかった。
【0117】
(肉眼検査)
以下のパラメーターを、外科手術部位からのサンプルの取り出しの間、試験して定量した:
−頭蓋と硬膜との間の接着の形成;
−脳脊髄液漏および炎症の変化;
−硬膜移植片の見た目の変化;ならびに
−髄膜皮質接着および皮質反応。
【0118】
(顕微鏡)
組織学切片を、以下を考慮して体系的に評価した:
−移植部位(硬膜外、硬膜下、硬膜と移植片との間の移行帯)における炎症反応の説明および定量;
−上記移植片の結合組織構築の程度;
−異物反応の程度;
−くも膜下腔の変化(炎症進行、繊維症対開口くも膜下腔);ならびに
−皮質の変化(炎症、壊死)。
【0119】
(肉眼検査および組織学結果)
以下に記載する組織学結果は、同じ動物由来の異なる前頭部切片、および同じ群の動物全てにおける細胞組成(強度が変化しながら)に関して同定される。
【0120】
(移植片挿入の肉眼評価)
2週間後の頭蓋の取り出しは、フィブリンのり残留物と上を覆う骨との間の両側の最小接着を明らかにする。この接着は、容易にゆるめられる。いずれの硬膜移植部位において、炎症または脳脊髄液の浸出の徴候はない。両移植片を、直径が数mmの寸法の個々の血餅でスポットする。
【0121】
左半球において、ウマコラーゲン箔は、それ自体依然外接可能であり、そのもとのすりガラス状の見た目よりも透明性が少なくなるようである。そのコラーゲン製品は、硬膜が注意深く皮質から取り出された場合、硬膜の縁へのそのコラーゲン製品の付着を保持する。皮質を損傷することなく非常に容易にゆるめられる、非常にわずかな接着が存在する。
【0122】
右半球におけるTutoplast(登録商標)Duraは、肉眼では変化していない。このTutoplast(登録商標)Duraは、この製品が取り出されるときに移植片−硬膜の接触帯において所定の場所で剥がされる。硬膜が皮質から取り外されるときにいくらかのくも膜下接着が存在するが、それらは鉗子で容易にゆるめられる。
【0123】
術後4週間で、上を覆う骨の縁と硬膜下との間に依然いくらかの接着が存在する;これらは、フィブリンのり残留物に起因する。上記骨は、引くことなく硬膜または移植片の損傷を引き起こすことなく、硬膜から容易にゆるめられる。左半球のウマコラーゲン箔において、硬膜と移植片との間の境界帯は、もはや明らかではない。その移植片は、以前よりも透明性が少なく、淡赤色となっていた。脳表面に面する移植片の局面は、均質であり、滑らかであり、そして移動性である。硬膜下接着は、もはや存在しない。いくらかの血餅残留物が目に見える。
【0124】
Tutoplast(登録商標)Duraは、肉眼ではまだ変化していないように見える。移植片と硬膜との接触領域の検査は、不適切な、容易にゆるめられる付着を明らかにする。
【0125】
術後8週間後、左半球における硬膜とウマコラーゲン箔移植片との移行帯は、もはや存在しない。構造的な連続性は、髄膜の両面において明らかである。ウマコラーゲン箔が配置された領域は、膜がわずかに薄くなったことおよび外見がわずかに赤色になったことのみが明らかである。図9および図10を参照のこと。右半球におけるTutoplast(登録商標)Duraは、この時点で、薄い結合組織膜により両面が覆われている。図11を参照のこと。上記移植片の縁は、重なり合った硬膜の下で依然はっきりと見ることができる。Tutoplast(登録商標)Duraをわずかに引くことは、それを予備形成硬膜から取り外すために十分である。
【0126】
16週間後、新生硬膜形成が、上記ウマコラーゲン箔部位のおよび硬膜においてさらに進行し、そしてその新生硬膜はほとんど識別できない。
【0127】
右半球におけるTutoplast(登録商標)Dura移植片の結合組織被包は、より顕著となった。
【0128】
24週間後、両移植部位の切片は、上記群の切片と肉眼では異ならない。
【0129】
(移植片挿入の顕微鏡評価)
術後2週間後、予測したとおり、上記ウマコラーゲン箔移植部位は、広範な炎症変化領域を明らかにする。くも膜下腔の全体は、リンパ球、セグメント化された顆粒球およびマクロファージからの大量の浸出に起因する接着により、閉じられる。非常に広範な炎症性浸出のいくらかの領域はまた、上記移植片の上で明らかである。リンパ球構成要素および単球構成要素に加えて、多核巨細胞による対応する異物反応によって骨の小さな破片もまた、ここに存在する。
【0130】
ウマコラーゲン箔の移植片自体は、同種の構造をゆるめること、および炎症性細胞、ハート型で広範な炎症細胞の侵潤を示す。図12を参照のこと。いくつかの場合において、大脳皮質の表面区域の(外科手術関連)虚血性壊死が存在する。
【0131】
Tutoplast(登録商標)Duraサンプルはまた、広範な炎症性応答を、特にくも膜下腔において示す。この移植片自体は、炎症細胞によって侵入されないが、炎症性のリンパ球および単球ならびに異物反応が、両端において同定可能である。
【0132】
4週間後、上記ウマコラーゲン箔移植部位における炎症性変化は、有意に退行したが、芝生様(lawn−like)リンパ球および単球の浸出は、依然存在する。図13および図14を参照のこと。多核異物巨細胞は、特に骨の破片の近くでより多く見られる。多くの繊維芽細胞は、もともとのウマコラーゲン箔移植片内部に見られ得る。代表的な同種移植片構造は、HE(ヘマトキシリン−エオシン染色)切片において検出できない。EVG(Elastica von Gieson)およびトリクロムで染色されたサンプルは、以前の移植部位における広範なコラーゲン繊維新生を示す。実際の硬膜は、炎症性浸潤を示す新たに形成されたコラーゲン繊維からなる、大まかに構造された組織に円滑に取って代わられる。以前に観察された軟髄膜の炎症性接着は、もはや存在しない。くも膜下腔は、再びはっきりと見え、裂け目が残っている。軟膜は、所定の場所でのリンパ球−単球浸潤の小さな小節を示し続ける。
【0133】
Tutoplast(登録商標)Dura部位において結合組織構築の兆候はない。炎症性浸出は、移植された組織の上下に存在し、炎症性浸潤は、予備形成硬膜への移行帯に存在する。くも膜下腔は、検出可能であり開存性である。図15を参照のこと。
【0134】
術後8週間で、ウマコラーゲン箔群において、新生硬膜における炎症進行がさらに退行した。リンパ球浸潤および単球浸潤の小さな塊のみが、依然存在する。くも膜下腔は明らかであり、さらに、炎症性活性の小さな病巣のみが、依然存在する。EVGおよびトリクロムで染色された切片は、高度にコラーゲン性の内在性硬膜と、新生硬膜の新たに形成されたコラーゲン繊維との間の顕著な連続性を示す。この新たな膜は、厚さが変化したように見え、部分的な構造弛緩を示す。図16を参照のこと。
【0135】
炎症性活性はまた、Tutoplast(登録商標)Dura部位においてはっきりと明らかになった。隣接する硬膜を使用する取り込みは、所定の場所で存在せず、他においては、隣接する硬膜による炎症性浸潤および接着の兆候はない。
【0136】
16週後、上記ウマコラーゲン箔群において、リンパ球および単球の結節性炎症浸潤の塊を、依然見ることができる。高度にコラーゲン性の実際の硬膜と新生硬膜との間の連続性は、変化せず、構造は、8週における知見に対して主な変化を示さない。変動する厚さのコラーゲン繊維が存在し、いくらかの構造弛緩が所定の場所にて存在する。
【0137】
Tutoplast(登録商標)Dura部位はさらに、炎症性変化および周囲の硬膜との接着を示す;これらの知見は、強度が変化する。
【0138】
24週後、上記ウマコラーゲン箔群において、細胞炎症応答のさらなる退行は別として、16週の移植片取り込み段階に対して明らかな組織学的差異はない。図17を参照のこと。
【0139】
(組織学結果)
移植部位ならびに硬膜下腔および硬膜上腔における炎症応答、結合組織構築ならびに異物反応の程度の定量化を、以下の表1に提供する。
【0140】
【表1−1】

【0141】
【表1−2】

【0142】
【表1−3】

炎症(炎症反応):
−− 炎症反応の目に見える兆候はない
u 限局性炎症浸潤のみ
+ 軽い炎症応答
++ 有意な炎症反応
+++ 重篤な炎症浸潤
移植片の構築:
−− 結合組織器質化は存在しないかまたはわずかである
+ 移植片内の単離された繊維芽細胞
u 限局性組織器質化(40%〜70%)
u/K 組織器質化>70%
K 新生硬膜と硬膜との視覚的連続性、移植片の完全な器質化(100%)
多核巨細胞による異物反応:
−− 異物反応なし
u 局限性異物反応のみ
+ 軽い異物反応
++ 有意な異物反応
+++ 広範な異物反応。
【0143】
両移植部位におけるくも膜下腔の組織学的試験の結果を、以下の表2に提供する。
【0144】
【表2−1】

【0145】
【表2−2】

(炎症)
−− 炎症応答なし
+ 軽い炎症反応
++ 有意な炎症応答、重篤な炎症反応
(閉鎖したSAS(くも膜下腔))
−− 散在した炎症細胞
+ 細胞浸潤により閉鎖したSAS
u SASにおける単離した炎症浸潤
pF/F 部分的繊維症/SASの繊維症
(SAS開放)
−− 単離した細胞群とともにSAS大概ははっきりしている
+ くも膜下腔がはっきりしている
(考察)
(両方の移植片の外科手術方法および取扱いの評価)
問題のない術中の取扱いによってウマコラーゲン箔を特徴付けた。生理食塩水中での5分間の再水和により、非常に頑丈な約2mm厚のフィルムを生じ、このフィルムは、その形状を失わず、接着せず、そして、形を合わせるために切断することが容易であった。鉗子および鈍鉤を使用して、上記材料を硬膜の欠損に配置することが容易であった。その移動性により、所定の場所に固定する前に、脳表面におけるウマコラーゲン箔の位置を補正することもまた容易であった。上記移植片は、フィブリン糊を使用して、硬膜の縁に素早くかつ容易に付着したので、フィルムを縫合する必要性はなかった。先行する研究はまた、フィブリン糊が、硬膜の閉鎖のための信頼性のある密封剤であることを示している。
【0146】
実験的に与えられた保持縫糸は、最小の引きでウマコラーゲン箔を引き裂き、このことは、フィブリン糊が、この移植片にとってより優れたアプローチであることを示す。
【0147】
後に上記製品を除去した場合、いくつかの症例において、過剰なフィブリン糊の塗布は、所定の場所で上を覆っている付加骨との接着を引き起こしたという証拠が存在した。髄膜および皮質を引っ張ることを避けるために、解剖器具を用いてこれらの接着を慎重に緩めなければならない。この問題は、控えめな量のフィブリン糊を塗布または点在させることによって避けられた。上記製品が除去された場合、それぞれの製品のフィブリン糊の塗布は、硬膜閉鎖を確実にし、かつ脳脊髄液の浸出を防ぐことが、明らかであった。皮下CSF漏出または脳脊髄液フィステルを発生した動物がいない場合、これは、早くも術後2週で明らかであった。
【0148】
Tutoplast(登録商標)Dura製品はまた、数分の短い再水和期間の後に取扱うことが容易であるが、これは、さらにより強固であり、品質に関して良好な変動を示す。
【0149】
フィブリン糊は、初めは所定の場所にTutoplast(登録商標)Duraを保持するための適切な接着をもたらしたが、元の硬膜と移植片との間の結合は、外科手術部位が再び開かれた場合にはゆるかった。なおこれは、Tutoplast(登録商標)Dura自体が自己の硬膜と融合されていなかったという事実に起因した、術後24週での症例であった。従って、知見が、適切な取り込みが他に生じないことを示す場合、この移植片と個々の縫合との付着を行うことは、フィブリン糊の使用よりも優れているようである。Tutoplast(登録商標)Duraと皮質との間の移行帯における非常にまれな接着が存在し、この接着は、解剖器具を使用して緩めることが容易であった。
【0150】
硬膜と皮質との間にウマコラーゲン箔を挿入するために使用される技術は、特定の外科手術の状況に不適切であるようである。特に、適切な固定は、大脳実質の大きな欠損(例えば、腫瘍腔)に関与する手順での上記方法では達成されないようである。
【0151】
肉眼的には、全ての動物が、移植片拒絶反応を伴わない硬膜の欠損の信頼性のある閉鎖を示した。移植物(implant)と皮質構造との間の小さい接着が、おそらく、外科手術の間のクモ膜に対する小さな損傷に起因して少ない症例で発症した。いくつかの動物において、過度に豊富なフィブリン糊の使用により、容易に緩くなる上を覆う骨との小さな接着区域が生じた。
【0152】
組織学的に、リンパ球、マクロファージおよび繊維芽細胞によるウマコラーゲン箔の高密度の浸潤は、移植後14日以内に見られた。時間が経つと、その後移植片において毛細管が形成する。くも膜下腔および硬膜下/硬膜外の腔ならびに硬膜−移植片移行性ゾーンにおける随伴性の炎症変化は、術後ちょうど4週で良好に退行した。コラーゲン繊維の新生に起因する、ウマコラーゲン箔移植片と周囲の硬膜との間の連続的な移行はまた、この時点で明らかである。
【0153】
ウマコラーゲン箔により誘導されたこの新生硬膜(neodura)は、術後24週では元の硬膜ほどの厚さはない。おそらくだが、なぜなら、硬膜箔が、最初から特定の厚さのみを提供したからである。しかしながら、この差異は、より多くのコラーゲン繊維が生産されるように、後で補うことが可能である。
【0154】
術後2週で、Tutoplast(登録商標)Duraは、時間が経つにつれてより厚くなる結合組織の薄い層において、上記製品の肉眼で確認できる被包を示す。また、全ての動物は、CSFフィステルなしで適切な硬膜閉鎖を示し、移植片と皮質または骨との間に少しの接着が存在する。
【0155】
上記移植片の周囲の構造における類似の炎症反応にもかかわらず、術後の組織化プロセスの徴候はなく、かつ細胞浸潤および移植片の再活性化の証拠はほとんどない。
【0156】
意図される局所的に含まれるリンパ性炎症応答および単球性炎症応答は別として、神経学的異常またはされた創傷感染を発症した動物はいなかった。
【0157】
(実施例2−ウマコラーゲン箔の膨潤受容能力)
ウマコラーゲン箔の膨潤受容能力に関する調査を以下のとおり行った:
1)まず、ウマコラーゲン箔を1cmの正方形片に切断した。
2)膨張手順を参照して、おおまかな形態的一貫性および上記材料の厚さを決定するために、従来の走査型顕微鏡下で、これらの切断した片のサンプルを試験した。
3)次いで、これらの片をプラスチック培養皿に入れた。
4)上行性量の流体を使用して(10μl/cmで開始して150μl/cmまで)Eppendorfマイクロピペットで投与する生理食塩水溶液を用いた連続的な滴定により、流体取り込みの受容能力および膨張受容能力を試験した(表3を参照のこと)。
【0158】
【表3】

(結果)
ウマコラーゲン箔中に浸漬した流体量を、上に列挙されるように1時間、2時間および3時間の後に決定した。
【0159】
1cmに測定したウマコラーゲン箔材料の片は、有意な目に見える厚さの膨張なく、完全に、10μl量の生理食塩水液を吸収した。
【0160】
20μl量の生理食塩水液は、ウマコラーゲン箔の1cm片によって完全に吸収され、上記材料の厚さのわずかな増加を導いた。
【0161】
ウマコラーゲン箔の厚さの最小の増加のみが、全系列において観察された。厚さの最大増加は、3時間後でさえ、初めの体積の約2倍だけであることが推測される。
【0162】
厚さ、または流体の吸収の有意な増加は、初めの1時間後には観察されなかった。
【0163】
(実施例3−水和したウマコラーゲン箔の長さの増大)
1.0cmに測定したウマコラーゲン箔材料の7つの乾燥片を、1時間、等張性の塩化ナトリウム中で水和した。ウマコラーゲン箔の乾燥片の水和により生じる平均長の伸長は、約3.4%であった。
【0164】
【表4】

(実施例4−水和したウマコラーゲン箔の重量の増加)
1.0cmに測定したウマコラーゲン箔材料の7つの乾燥片を、1時間、等張性の塩化ナトリウム中で水和した。ウマコラーゲン箔の水和した片は、乾燥状態の場合より、約5倍重くなった。
【0165】
【表5】

(実施例5−ウマコラーゲン箔の引っ張り強度および弾性/可撓性)
いくつかの硬膜製品および本発明のウマコラーゲン箔の引っ張り強度を測定した。サンプルをチューブの下端に備え付け、最大300cmまで持続的に増大する柱の水によって、引っ張り強度を増加した。図18は、試験チャンバの例示を提供する。
【0166】
試験チャンバは、製品の引っ張り強度を超える圧力に起因して製品が不具合を生じる点を同定することにより、硬膜置換製品の強度を決定し得る。本発明のウマコラーゲン箔(コラーゲン含有量:5.6mg/cm)およびコラーゲン箔(コラーゲン含有量:4.0mg/cm)を、Duragen(Integra NeuroSciences,Plainsboro,NJ)と比較した。
【0167】
試験結果は、上記ウマコラーゲン箔(コラーゲン含有量:5.6mg/cm)および上記コラーゲン箔(コラーゲン含有量:4.0mg/cm)は、不具合を生じることなく、300cmの柱の水まで持ちこたえたことを示す。図19および20を参照のこと。相対的に、健全な頭蓋骨内に加えられた圧力は、約15cmの高さの水柱よりも超えず;病理学的状態において、上記圧力は、約50cmまで上昇し得る。
【0168】
DuraGenは、200cmの水柱の圧力下で破けて、有意により低い引っ張り強度を測定した。図21を参照のこと。
【0169】
上記試験チャンバはまた、上記圧力下で上記製品が伸びる程度を同定することによって、この製品の弾性を比較し得た。従って、上記水柱の重量下で、この製品の凸性を測定することにより、製品の弾性/可撓性を決定した。
【0170】
上記ウマコラーゲン箔(コラーゲン含有量:5.6mg/cm)および上記コラーゲン箔(コラーゲン含有量:4.0mg/cm)の弾性/可撓性を、DuraGen、コラーゲン試験箔、Tutoplast Fascia lata(Tutogen Medical GmbH,Neunkirchen am Brand,Germany)、およびEthisorb Dura Patch(Ethicon GmbH & Co.KG,Nordstedt.Germany)と比較した。図22〜25を参照のこと。
【0171】
他の製品と比較して、上記ウマコラーゲン箔(コラーゲン含有量:5.6mg/cm)は、弾性/可撓性とともに有意な引っ張り強度を合わせたものを示した。これは、可撓性および弾性を保持しながら、置換硬膜としてそれに対して加えられた圧力に持ちこたえることを可能とし、それを脳および頭蓋の輪郭に形成させる。対照的に、EthisorbおよびTutoplastは、水柱の実験において高い引っ張り強度を示したが、はるかに低い弾性/可撓性を有した。
【0172】
(実施例6−液密特性)
実施例5で考察したものと同一の実験設定を使用して、置換硬膜製品の液密特性の測定を決定した。
【0173】
この実験において、上記水柱の高さと関連して、水滴の発生および喪失した水の体積を測定した。この実験の結果を、図23〜26に例示する。
【0174】
この実験において、上記ウマコラーゲン箔(コラーゲン含有量:5.6mg/cm)は、300cmよりも高い高さの水柱下で液密を保持した。上記コラーゲン箔(コラーゲン含有量:4.0mg/cm)は、300cmの高さの水柱下で細かい水滴の喪失を示した。多孔性構造を有するDuraGenは、水密ではなかったが、低い水圧下でさえ、明らかに目に見える水の喪失を示した。同様に、Tutoplast Fascia Lataはまた、水密ではなく、低い圧力下で水の喪失を示した。
【0175】
(実施例7−安定性および引き裂き抵抗)
湿潤環境および乾燥環境において十分に安定であり、弾性があり、引き裂き抵抗である唯一の材料は、特定の外科手術状況における移植物として(例えば、置換硬膜にとって)適切である。従って、湿らせた材料の引き裂き抵抗/極限引っ張り力の決定は、構造、安定性、および外科手術部位における所定の場所で保持する可能性に関する有用な情報を提供する。
【0176】
身体における一般的な状態を模倣するために、水和した検体においてコラーゲンの外科移植物の引き裂き抵抗を試験した。等張性生理食塩溶液中に5分間、上記材料を置いた。
【0177】
引き裂き抵抗/極限引っ張り力を測定するために、コラーゲン移植物の細片を、Zwick Model 1120多目的型試験機(Zwick GmbH & Co.KG,Ulm,Germany)にクランプした。試験したコラーゲン移植物を表6に提供する。
【0178】
【表6】

機械制御、データ取得、および試験(統計学的評価を含む)は、TestExpertソフトウェア(Zwick GmbH & Co.KG,Ulm,Germany)を使用して実行した。試験スポンジ検体A、B、およびCは、かなり壊れやすいようである。検体A、B、およびCを、幅1.4cmを有する4cmの細片に切断した。全ての検体の試験結果を、1.0cmの幅の細片について比例計算した。N/cm細片において、試験細片の極限引っ張り力値を測定した。試験結果を、表7および図27に提供する。
【0179】
【表7】

(結論)
ウマコラーゲン箔の独自の製法は、その引き裂き抵抗/極限引っ張り力を増加させる。
【0180】
コラーゲン箔は、コラーゲンスポンジと比較して、有意により高い引き裂き抵抗/極限引っ張り力を示した。
【0181】
コラーゲン箔の引き裂き抵抗は、1cmの正方形あたりのコラーゲン含有量とともに増加した(例えば、4.0mg/cmのコラーゲン含有量:3.21N/cmの細片;5.6mg/cmのコラーゲン含有量:4.09N/cmの細片)。
【0182】
上記を考慮すると、本発明のいくつかの目的は、達成されたことがわかる。
【0183】
種々の変更が、本発明の範囲を逸脱することなく、上記組成物およびプロセスになされ得るように、上記明細書に含まれる全ての事項は、例示として解釈され、限定する意味はないことが企図される。
【0184】
この明細書全体(添付の特許請求の範囲を含む)における単語「含む(comprise)」もしくは「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」の使用に関して、本出願人らは、その内容が他に必要としない限り、これらの単語が、排他的よりも包含的に解釈されるべきであるということに基づいておよびその明らかな理解において使用されること、ならびに本出願人らが、この明細書全体を構成する際にそのように解釈されるべき、各々のこれら単語を意図することを注釈する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−201179(P2010−201179A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96487(P2010−96487)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【分割の表示】特願2006−515237(P2006−515237)の分割
【原出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】